千空。それは私の好きな人。

彼に思いを伝える事は出来ないけど、私はただ隣にいれれば十分だった。

何も進展がないのはちょっぴり悲しい事ではあるけれど、友人として接していれば関係が悪くなることもない。

横を歩く千空にいつも通り話しかけたが返事がない。

「………？千空？」

隣にいたはずの千空が見あたらない、一体どこに行ったのか。

すると座り込んでいた千空が目に入る。

「何だ、そんなとこにいたの…」

肩に手を置こうとすると、触れる前に千空の体がぐらりと倒れた。

慌てて、支えようとしたが体は氷かと思うほど冷たかった。

生きているはずなのにまるで死んでいるみたいだ。

「千空、風邪引くよ？ そ、そんな体冷たかったらさ」

嘘だ、そんなの嘘だ。

頭によぎった事を全力で否定する。

「千空、ねえ、返事してよ！」

だが、千空は答えない。

どんどん周りが暗くなっていって、徐々に千空が闇に覆われ見えなくなる。

「千空！千空！こんなの嫌だ！夢だって言って！！」

嫌だ、誰か千空は生きてるって、誰か……！！


すると、どこからか男の声がした。



「千空は俺が殺したんだ」



「はっ」

あきらは勢いよく飛び起きた。

「……夢…」

額はぐっしょり冷や汗をかき、すごく嫌な感じだ。

「……千空……」

寝ても覚めても事実は変わらない。

たった一人この世から消えてしまっただけで、
あきらの見る世界は姿を変えた。

まるで生き地獄だ。

私は彼がいない世界でどうやって生きていけばいいのだろうかーー