あきらは、司から攻撃されるかもと思い警戒したが、
司はあきらの横を通りすぎるだけだった。


「始末するんじゃないの？」

恐る恐る聞くと司は答えた。

「うん、君をほっといても俺の計画には支障がないからね
君を生かしも科学の発展には何ら繋がらない」

確かに私がこのまま生きていても司を止める手段はない。

司の邪魔をしないならここで暮らしてもいいという。

一人で暮らしていける自信もないからありがたいが…。


「ああでも、万が一君が激高して襲ってきたら殺すつもりだったから、
君が復讐しなくて良かったよ」

あっさり司は恐怖の言葉を吐く。

「復讐ね、悪いけどめちゃくちゃあんたの事は恨んでる、死ぬほど…
でも、恨みで人を傷つけたり、死なせる事だけはしないと決めてるから
残念だったね」

あきらは司を睨み無言で出て行った。

洞窟を出て無我夢中に走った。

走って、走って、走って、目的地などないけどただ走った。

そうでもしないと心が壊れてしまう気がした。

だって走ってれば余計な事を思いだしてしまう。

彼が…この世にいない事を思い出してしまうから。

「…はあっ！はあっ」

長い事走り続けたせいか疲労で膝から崩れ落ちてしまう。

ぜーぜーと息をして肺に酸素を取り込む。

「……はー、はー、っっ…、っふっ」

目から涙が浮かんでくるのをぐっと堪えた。


「あれ……？もしかしてあきらちゃん…？」

すると誰かが声をかけてきた。

頭を上げるとそこにいたのは杠だった。

「杠………」

「もう復活してたんだね」

会えてよかった、と杠は再会を喜んだがあきらの様子がおかしいことに気づく。

「……さっき…司に…千空の事聞いたの」

「…………！！！！」

杠は戸惑った、本当の事を言いたいがまずここでは誰かに聞かれる恐れがある。

とりあえず杠は普段自分が寝床に使っている場所に案内する事にした。


「そっか…、聞いたんだね」

あきらはこくりと頷く。

「っっっ、千空…！！」

杠は静かにあきらを抱きしめ慰めた。

千空が実は生きていると下手に教えられない。

彼がどこにいるかもわからないのに教えたら彼女は一人飛び出してしまう気がする。

それはあまりにも危険だ。


杠はあきらの背中を撫でながら早く再会できるように祈った。