桃源郷での再会
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「君、お腹が空いてるの?」
白澤様の問いに、私は思わずこくりと頷きます。
でもすぐに「しまった」と思いました。
普通、兎は頷いたりはしません。
それは人間同士の意思疎通で行われる仕草だからです。
「あれ? もしかして、君……昨日の……?」
「!」
「やっぱりそうだ!
現世のにおいと一緒に、僕の塗った薬のにおいも少しするし」
「え? 白澤様、現世で兎を治療したんスか?」
「うん、たまたま瀕死の状態になっているのを見つけちゃって……。
本来なら現世のことにあまり介入するのは良くないけど、この子、普通の兎とはちょっと違っててさ」
「どう見ても普通の兎に見えますけど……」
「見た目はね。
けど、中身は特別だよ。
だって、まだ現世の兎のはずなのにこっちの言葉を理解してるんだから」
彼は先ほど私が頷く前から――現世で瀕死の状態で会ったあの時から――私が人間の言葉を理解していることを悟っていたのだそうです。
危害は加えないから大人しくしていてほしいと言われた途端、私が抵抗をしなくなったから。
確かに、あのときは必死だったので無意識でしたが、普通の兎であれば言葉の意味も分からず抵抗を続けたでしょう。
「正直、すぐにその場でうちの従業員にスカウトしたいほどの逸材だったけど、僕はどこぞの鬼畜な鬼とは違って、そんな外道な真似はできないからね」
「治療して恩を売って、死後にスカウトする時の成功率を高めたわけっスか」
「言い方が悪いよ!
僕は純粋に、この子はもっと現世でたくさん経験を積んでからこっちに来るべきだと思っただけだよ」
彼は桃タローさんの腕の中から私を拾い上げ、自分と向き合わせるようにお顔の高さに私を掲げます。
その際、胸の周りとお尻をしっかりと触られますが、人間の習慣にも多少知識のある兎の私としては、恥ずべきか平然とすべきか悩むところでした。
ただ、彼が私を彼の元で働く従業員として欲していたという事実の方が嬉しすぎて、どちらかというとそちらに気を取られていたのですが。
白澤様の問いに、私は思わずこくりと頷きます。
でもすぐに「しまった」と思いました。
普通、兎は頷いたりはしません。
それは人間同士の意思疎通で行われる仕草だからです。
「あれ? もしかして、君……昨日の……?」
「!」
「やっぱりそうだ!
現世のにおいと一緒に、僕の塗った薬のにおいも少しするし」
「え? 白澤様、現世で兎を治療したんスか?」
「うん、たまたま瀕死の状態になっているのを見つけちゃって……。
本来なら現世のことにあまり介入するのは良くないけど、この子、普通の兎とはちょっと違っててさ」
「どう見ても普通の兎に見えますけど……」
「見た目はね。
けど、中身は特別だよ。
だって、まだ現世の兎のはずなのにこっちの言葉を理解してるんだから」
彼は先ほど私が頷く前から――現世で瀕死の状態で会ったあの時から――私が人間の言葉を理解していることを悟っていたのだそうです。
危害は加えないから大人しくしていてほしいと言われた途端、私が抵抗をしなくなったから。
確かに、あのときは必死だったので無意識でしたが、普通の兎であれば言葉の意味も分からず抵抗を続けたでしょう。
「正直、すぐにその場でうちの従業員にスカウトしたいほどの逸材だったけど、僕はどこぞの鬼畜な鬼とは違って、そんな外道な真似はできないからね」
「治療して恩を売って、死後にスカウトする時の成功率を高めたわけっスか」
「言い方が悪いよ!
僕は純粋に、この子はもっと現世でたくさん経験を積んでからこっちに来るべきだと思っただけだよ」
彼は桃タローさんの腕の中から私を拾い上げ、自分と向き合わせるようにお顔の高さに私を掲げます。
その際、胸の周りとお尻をしっかりと触られますが、人間の習慣にも多少知識のある兎の私としては、恥ずべきか平然とすべきか悩むところでした。
ただ、彼が私を彼の元で働く従業員として欲していたという事実の方が嬉しすぎて、どちらかというとそちらに気を取られていたのですが。