桃源郷での再会
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次に気がついたとき、私は草原に寝転がって空を仰いでいました。
まるで筋斗雲のような雲が、長閑な空気の中をするりするりと滑るように流れていきます。
鼻先をくすぐる甘い香りは桃でしょうか?
あまりにも幸せに満ちた空気に包まれすぎて、うっかりすると先程味わったはずの恐怖を忘れてしまいそうになります。
――ここは、まさか……
苦しくて藻掻いたはずの身体には、あの恐怖について一切の形跡が残っていません。
毛並みも全く濡れていなければ、恐怖のあまり凍りついてしまったようだった心臓も静かに落ち着いた脈を刻んでいます。
まるで全てが夢だったみたいですが、どうやらこの場所が『あれが夢ではなかった』ということを決定づける証拠になってしまいそうです。
穏やかな気候と幸せに満ちた空気、そしてたくさん生い茂った桃の木々。
それは、木霊さんから教えていただいた桃源郷の景色そのものでした。
私は黙ったままその場に立ち尽くします。
ここが桃源郷だとして、白澤様にお会いできることを素直に喜んで良いのか、せっかく救っていただいた命を粗末にしたことを悔やむべきなのか、分かりません。
本当はどちらも私の気持ちなのですが、心は1つしかないので感情は曖昧に揺れました。
やがてその感情は溜め息となり、私の口から零れます。
そのとき、目の前にころころと桃の実が転がってきました。
「?」
反射的にその実に鼻を寄せてくんくんと嗅いでいると、傾斜になっていた近くの丘の向こうから誰か人が走ってきます。
その人は桃のたくさん入った籠を背負い、額に桃のマークの付いた三角巾という出で立ちでした。
桃の農家さんでしょうか?
「あれ? お前、うちの従業員か?」
「??」
「……」
「……」
「ダメだ、区別がつかん……
逃げないみたいだし、とりあえず連れて帰って白澤様に聞いてみるか」
「!!」
確かに聞こえた『白澤様』の名前に、私の耳はぴんと立ちました。
するとその反応に、その男の人は「反応した。てことはやっぱうちの従業員か?」と今度は独り言でぶつぶつと漏らします。
この人について行けば白澤様にお会いできるのかと期待していると、その人はひょいと私を落ちていた桃と一緒に拾い上げました。
そして私はその人に運ばれて、桃畑の中を抜けていったのでした。
まるで筋斗雲のような雲が、長閑な空気の中をするりするりと滑るように流れていきます。
鼻先をくすぐる甘い香りは桃でしょうか?
あまりにも幸せに満ちた空気に包まれすぎて、うっかりすると先程味わったはずの恐怖を忘れてしまいそうになります。
――ここは、まさか……
苦しくて藻掻いたはずの身体には、あの恐怖について一切の形跡が残っていません。
毛並みも全く濡れていなければ、恐怖のあまり凍りついてしまったようだった心臓も静かに落ち着いた脈を刻んでいます。
まるで全てが夢だったみたいですが、どうやらこの場所が『あれが夢ではなかった』ということを決定づける証拠になってしまいそうです。
穏やかな気候と幸せに満ちた空気、そしてたくさん生い茂った桃の木々。
それは、木霊さんから教えていただいた桃源郷の景色そのものでした。
私は黙ったままその場に立ち尽くします。
ここが桃源郷だとして、白澤様にお会いできることを素直に喜んで良いのか、せっかく救っていただいた命を粗末にしたことを悔やむべきなのか、分かりません。
本当はどちらも私の気持ちなのですが、心は1つしかないので感情は曖昧に揺れました。
やがてその感情は溜め息となり、私の口から零れます。
そのとき、目の前にころころと桃の実が転がってきました。
「?」
反射的にその実に鼻を寄せてくんくんと嗅いでいると、傾斜になっていた近くの丘の向こうから誰か人が走ってきます。
その人は桃のたくさん入った籠を背負い、額に桃のマークの付いた三角巾という出で立ちでした。
桃の農家さんでしょうか?
「あれ? お前、うちの従業員か?」
「??」
「……」
「……」
「ダメだ、区別がつかん……
逃げないみたいだし、とりあえず連れて帰って白澤様に聞いてみるか」
「!!」
確かに聞こえた『白澤様』の名前に、私の耳はぴんと立ちました。
するとその反応に、その男の人は「反応した。てことはやっぱうちの従業員か?」と今度は独り言でぶつぶつと漏らします。
この人について行けば白澤様にお会いできるのかと期待していると、その人はひょいと私を落ちていた桃と一緒に拾い上げました。
そして私はその人に運ばれて、桃畑の中を抜けていったのでした。