分不相応な恋
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――絶対に、だめ……
――だめなのに……
小さな胸の中で、まだ生まれたばかりの恋心が火照ります。
次の瞬間、水面に映る私の毛並みは見る見る内にボサボサになっていきました。
「それがお前の未来だ。
お前は死んだとき、そのみすぼらしい姿で恋した男に会う」
「……!」
「今なら、まだ若い毛並みのままで会えるというのに、何を迷う?
お前が望むなら、人間の姿に化けられるようにしてやってもいい」
「……?」
ぽたり、とどこからともなく水面に滴が落ちた気配がします。
すると、みすぼらしい老兎の姿だった私の映されていたそこに、今度は人間の女性が映りました。
白い服から覗く色白な肌は決して健康的とは言えませんが、全身が白い兎の私には親近感を覚えさせます。
日本の人間は何度か見かけたことがありますが、水面に映った瞳の色も髪の色も何だかとっても薄い茶色をしていました。
瞳は大きく丸い形をしていて、そこはちょっと私に似ています。
――あれ……?
ふと首を傾げると、水面の向こうで人間の女性も首を傾げました。
首の左右でゆったりと括られた長いお下げ髪が、それに合わせてさらりと揺れます。
緩やかにうねったその毛の質まで、くせっ毛の私にそっくりです。
「これが……私……?」
心で思った言葉が、人間が発するのと同じ声になります。
思わず伸ばした前足。
同じように差し出された色白のか細い人間の手。
その二つが交わった時でした。
突然水面を激しく突き破るように、黒い手のひらが私の前足を掴みます。
「キャアアアアアッ!!」
「ははは、騙されたね! バカな兎が!!」
我に返ったときには、もう私は沼の中でした。
私を沼に引きずり込んだのは、人を惑わしては沼に落とし、生気を食らっていた悪い妖怪だったのです。
「いやぁぁぁぁぁ」
叫んだ声は、泡となって消えました。
そして、私の命もまた、沼の中で泡となって消し去られたのです。
【続く】
――だめなのに……
小さな胸の中で、まだ生まれたばかりの恋心が火照ります。
次の瞬間、水面に映る私の毛並みは見る見る内にボサボサになっていきました。
「それがお前の未来だ。
お前は死んだとき、そのみすぼらしい姿で恋した男に会う」
「……!」
「今なら、まだ若い毛並みのままで会えるというのに、何を迷う?
お前が望むなら、人間の姿に化けられるようにしてやってもいい」
「……?」
ぽたり、とどこからともなく水面に滴が落ちた気配がします。
すると、みすぼらしい老兎の姿だった私の映されていたそこに、今度は人間の女性が映りました。
白い服から覗く色白な肌は決して健康的とは言えませんが、全身が白い兎の私には親近感を覚えさせます。
日本の人間は何度か見かけたことがありますが、水面に映った瞳の色も髪の色も何だかとっても薄い茶色をしていました。
瞳は大きく丸い形をしていて、そこはちょっと私に似ています。
――あれ……?
ふと首を傾げると、水面の向こうで人間の女性も首を傾げました。
首の左右でゆったりと括られた長いお下げ髪が、それに合わせてさらりと揺れます。
緩やかにうねったその毛の質まで、くせっ毛の私にそっくりです。
「これが……私……?」
心で思った言葉が、人間が発するのと同じ声になります。
思わず伸ばした前足。
同じように差し出された色白のか細い人間の手。
その二つが交わった時でした。
突然水面を激しく突き破るように、黒い手のひらが私の前足を掴みます。
「キャアアアアアッ!!」
「ははは、騙されたね! バカな兎が!!」
我に返ったときには、もう私は沼の中でした。
私を沼に引きずり込んだのは、人を惑わしては沼に落とし、生気を食らっていた悪い妖怪だったのです。
「いやぁぁぁぁぁ」
叫んだ声は、泡となって消えました。
そして、私の命もまた、沼の中で泡となって消し去られたのです。
【続く】