満月の夜に
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不意に意中の人の声がして私は思わず、ターンに失敗して転びそうになってしまいました。
それを咄嗟に「危ない……!」と抱き留めてくださったのは、他でもない白澤様です。
片腕を捕まれ、背中をしっかりと押さえられ……なんとか転倒を免れた身体は今、彼にしっかりと支えられています。
兎としてその胸に抱かれたことは何度かあるはずなのに、今までとは比べものにならないくらいドキドキしました。
「ごめんね、僕が急に声を掛けたから……」
「いえ……」
「君、すごく可愛いね。
名前は?」
私には名前なんてありません。
兎には人間のように名を名乗る必要はなかったので、現世にいた頃は必要がなかったのです。
「●名前●、です」
「へぇ~、●名前●ちゃんかぁ」
咄嗟に名乗ったのは、いまこの場で何となく思いついたものでした。
自分が本当は彼の元で働くあの兎だと、白状すべきでしょうか?
本当ならそうすべきです。
けれど、私は欲をかきました。
正体が兎と知ったら、これ以上、彼が私を『人間の女性』として見てくれない気がしたのです。
私は知りたくなってしまいました。
人間の女性として、彼に愛される幸せを……
――人間になれたのなら、兎としての自分は捨ててしまってもいい
兎のままで良い。愛されなくても良い。
そんな謙虚な想いは、幸せを手にした瞬間から消え去っていました。
私は人間としての自分を――●名前●を演じました。
「こんな時間にこんなところで、何してるの?」
「月を、見に来ました」
「へぇ、そうなんだ。
奇遇だね、実は僕もそうなんだ」
それが本音なのか、咄嗟に私に合わせただけなのかは分かりません。
さりげなく握られた手だけじゃなく心まで熱くなって、もうそれどころではありませんでした。
それを咄嗟に「危ない……!」と抱き留めてくださったのは、他でもない白澤様です。
片腕を捕まれ、背中をしっかりと押さえられ……なんとか転倒を免れた身体は今、彼にしっかりと支えられています。
兎としてその胸に抱かれたことは何度かあるはずなのに、今までとは比べものにならないくらいドキドキしました。
「ごめんね、僕が急に声を掛けたから……」
「いえ……」
「君、すごく可愛いね。
名前は?」
私には名前なんてありません。
兎には人間のように名を名乗る必要はなかったので、現世にいた頃は必要がなかったのです。
「●名前●、です」
「へぇ~、●名前●ちゃんかぁ」
咄嗟に名乗ったのは、いまこの場で何となく思いついたものでした。
自分が本当は彼の元で働くあの兎だと、白状すべきでしょうか?
本当ならそうすべきです。
けれど、私は欲をかきました。
正体が兎と知ったら、これ以上、彼が私を『人間の女性』として見てくれない気がしたのです。
私は知りたくなってしまいました。
人間の女性として、彼に愛される幸せを……
――人間になれたのなら、兎としての自分は捨ててしまってもいい
兎のままで良い。愛されなくても良い。
そんな謙虚な想いは、幸せを手にした瞬間から消え去っていました。
私は人間としての自分を――●名前●を演じました。
「こんな時間にこんなところで、何してるの?」
「月を、見に来ました」
「へぇ、そうなんだ。
奇遇だね、実は僕もそうなんだ」
それが本音なのか、咄嗟に私に合わせただけなのかは分かりません。
さりげなく握られた手だけじゃなく心まで熱くなって、もうそれどころではありませんでした。