私の想いを知ると、森に住む全ての生き物たちが「不毛な恋だ」と憐れみました。

　中には嘲笑う人や、高貴なお方に対して失礼だと腹を立てる人までいます。

　それほど私の恋は分不相応なものでした。

　だから、浮かない顔をして歩いていたところを心配して声を掛けてくださった木霊さんが、そのことを説明するや否やぎょっとした顔をしても今さら驚きませんでした。


「え！？　白澤様に！？」


　やはり、私みたいな者がお慕いするなんて図々しかったかと肩身が狭くなる私ですが、木霊さんは私の顔を見てすぐにそれを察したのか、首を横に振ります。


「あー、いや……何と言うんでしょう……

　あのお方はあまり、そういう対象とするのにはオススメできない方というか……！」

「？」

「あ、ごめんなさい！

　こんなこと、仮にもあの方に夢を見ている子に言うべきでは……いや、でも後になって知ったらその方がショックというのも……！」


　木霊さんは一人でワタワタと慌てながら、早口で何やら口走ります。

　同時に手足をワタワタと動かすので、並んで座っていた丸太ん棒が少し揺れました。


「言葉は悪いですけど、女性を取っかえ引っかえだとか……」


　それは兎の世界では自然なことですが、人間の世界ではマナー違反だということは知っています。

　彼は厳密に言えば人間ではないわけですが、人間の姿で女性を口説くのだそうです。

　その場合のマナーというのは、どう判断されるのでしょうか？

　とても難しくて、兎の私には分かりません。

　でもきっと、分かる必要なんてないのです。

　だって、私はどう足掻いても兎なんですから。

　そんな多くを望もうとは思いません。

　ただ、お側にいられれば、それで……