短編
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「面倒臭ェ奴」
いつも似た事で喧嘩をする私達。蘭は面倒臭そうな表情をして私から視線を逸らす。そして自身の自慢の金色のおさげを弄りもう私に興味が無いらしい。
顔の向きどころか体勢すら此方を見ようともせず、私に背を向けてしまう。
いつものこと。
学校で人気者の灰谷兄弟。その幼馴染だというだけで女という生き物は色気付くと愚痴愚痴と私に対して釘を刺したり、陰口を叩かれたり、無い噂を囁かれる。距離の近しい私達は男女の友情など無いと言われながらも程よく男女の友人としていい関係を築いている。
今回も蘭がちょっかいかけて勘違いしたか、蘭に一方的に惚れたか、蘭の気紛れで結果的に助けられたかの女に突撃された。いつものことなので私に文句言う前に蘭に直接言えと放置したら、なぜか私から蘭を紹介されたことになっていた。
誰がそんなことするか。
今日も帰り道、何気無い会話から蘭が変な女押し付けるなと軽く言われ、何の事かと聞いたら私が紹介した女が言い寄ってきているとのこと。そんなことをするわけないと言い返し前もあったよな、と女関係で言った、言わないの問答で蘭と喧嘩になった。
お菓子の取り合いの喧嘩や、蘭の理不尽への喧嘩、私のやり過ぎる悪戯の喧嘩などよくあることだけど女関係の喧嘩が私にとって一番心が痛む。
勘違いさせる蘭は基本自分を良く魅せたいだけなのでその場にいる女が目当てではないと私はわかっていても、相手の女には伝わらない。誰が悪い、と言いたくないが私を巻き込み私が蘭と喧嘩する意味が毎回わからない。
悔しい。
幼稚園や低学年までは仲がいい、というのは許されていたのに高学年に上がると巻き込まれ始めた。
私も蘭も竜胆も。その他より特別お互いを大切にしているだけなのに。
私達の仲を何故その他の人々に口うるさく指図されなきゃいけないのか。
そもそも蘭を制御出来る女がいるなら是非応募願いたいくらいだ。
自称彼女への対応、自称セフレへの対応、一目惚れ対応、紹介して欲しい対応などなど……全て引き受けてくれる女神みたいな奴っている?目の敵にしつつ、私利私欲で利用されて微笑める奴いるの?
蘭にも私は関係無いと。むしろ、身に覚えの無い噂や侮辱を流され迷惑している事を告げても面倒そうな顔をされる。
何度もぶつかり、言い合っても直らない。
毎回蘭が不機嫌となり話を終わらせ繰り返す。
「まだ拗ねてんの?そろそろ帰るぞ」
プチっ、と私の中の何かがキレた。
「………蘭がかっこいいのは事実だし、自分を魅せる事を悪いとは言わない」
「あ"?」
「蘭と一緒にいるの楽しいし、蘭と一緒に居たいから私は一緒に居る」
「だから?」
「蘭の自称彼女、自称セフレ、自称一目惚れ女などなどが毎回私の名前を悪いように流したり、私の名前使って蘭に近寄っていくのに何で私が蘭に怒られなきゃいけないわけ?」
こちらを睨み付ける蘭を私も仁王立ちで睨み付ける。
「被害者私。怒りたいの私。
その他の人間のせいで蘭と喧嘩しなきゃいけないのも、私が蘭から離れなきゃいけないのも嫌だっっって何回も言ってんだけど?」
「まだその話続けんの?」
「続けたくないなら2度と蘭と関わらなくていいってことだよね」
「はぁ?そんな話してねぇだろ」
「そんな話になるって事。
そもそもさ」
私が一番悲しくて、怒っているのは
「私の事特別扱いしてくれているのに、私の言うことよりその他の事信じるのあり得ない」
その他より大切にされている。
その他より優遇されている。
その他より近しい位置にいる。
なのに、私の言葉は届かない。
「蘭のばか」
悔しい。
蘭の特別の一人だと扱われても信用無かった事が。
自惚れ過ぎていたことが。
此処で泣くのは負けた気がするから泣かないが、怒りと悔しさで感情が制御出来ない。
「………」
「ばーか。ばかばか。ばーーーか」
「ボキャブラリー無さ過ぎ」
「髪の毛ダメージ受けまくってギシギシになれ」
「……悪かったよ」
気まずそうに此方に来てくれる蘭。
「その他の言葉を信じてるわけじゃねぇって。お前こそ俺が女癖悪いって偏見辞めろ」
「実際遊んでるじゃん」
「遊んでるだけ。疚しい行為求められてもシてねーわ」
「……蘭、童貞だったの?イケイケな雰囲気滲ませてるし、抱かれたって女いるのに?」
「ほら。お前も俺の言葉信じてねぇ」
ジトリ、と見られて困ってしまう。
童貞をカミングアウトされたことを弄るべきか、童貞なのに百戦錬磨のフリを弄るべきか。
「勘違いさせてる」
「あー…」
童貞は一先ず置いておいて……。
言い返せないあたり身に覚えがあるから気まずそうにする蘭。
「蘭、ちゃんと話そ?」
「……お前に迷惑かける奴は俺がシメる。お前の話信じる。なるべく迷惑かけない」
「なるべく?」
「なるべく」
絶対と言わないあたりが蘭らしい。
「離れるとか関わらないなんて言うな」
ムスッとしながらこちらにきた蘭。
去る者追わずな蘭ではあるが気に入った人物には甘くなる傾向がある。兄であるからか、面倒見が良く周りを見ているし気に掛けてくれる。
私を引き止めてくれる程度、蘭にとっての内側にいると思えば悪い気はしない。
「蘭」
だがしかし
「かはっ!?」
目の前の蘭の無防備な腹へ膝を叩き込む。
ノーガードで腹に入った膝に踞る蘭。
「テ、メェ…」
「知ってた?私この間蘭のこと誑かすなって女に突然お腹蹴られたし、前々から何度も髪引っ張られたり、噂流されて変な男達に追いかけられてんの。
蘭と話してもいっつも聞いてくれないでなぁなぁにされてたから」
「話し合いっつったろ………お前じゃなかったらぶん殴ってるぞ」
「だからこの一発で許してあげる心の広い私に感謝しなさい」
にこっと笑えば忌々しそうに睨み付けてくるものの、罰が悪そうにしている。
「痛い?」
「身長差考えろよ。使い物にならなかったらどうすんだよ」
「急所蹴ったみたいな言い方やめてよ。腹筋のせいで私の膝痛いんだけど」
「俺の膀胱破裂したらお前責任取れよ」
「お医者さんごっこが希望なんて蘭のエッチ」
「医者よりナースがいい」
こうやって馬鹿な会話して笑いあえる私達は幼馴染であり、友人だ。
「甘いもん食いてぇ」
「竜胆誘って行こうか」
いつまで蘭の特別の内側にいられるのか。
いざこざが多くなってくる度、頭を過る。
いつか離れてしまう日が来るかもしれない。
そんな先ことを考えるよりも
今、楽しい事を優先させたい。
「昨日のホラー録画一緒に見るぞ」
「やだ。蘭絶対脅かしてくる」
「一緒に竜胆脅かそうぜ」
「それなら見る」
だって、まだまだ私達は子供な13歳なのだから。