五万企画
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※名前は輝
※息子
1週間程の入院が終わると自宅での生活が始まる。
「ちっちゃい。可愛い。ふにゃふにゃ」
「ね……」
悟は顔を緩ませて赤ちゃんの手を握る。
私もそんな悟の姿を見て笑う。
「名前親のとこ行かなくて平気?」
「………今さら親に頼るのもね」
産後の身体を気にしてくれた悟は何度か実家で休まなくて大丈夫かと言ってくれた。
しかし、私は少しだけ怖かった。
悟との結婚を認めてくれたものの産まれたばかりの子を本家に取られてしまったり、もしもの事ばかり考えてしまう。
「悟もいるし大丈夫だよ」
「絶対無理は禁止ね」
「わかってるよ」
毎日2〜3時間ごとにお乳を与え、オムツを取り替え、お風呂に入れる。
赤ちゃんは寝るのが仕事だから手がかからないなんて誰が言ったことか……。
「名前、やば!!オムツ外したらおしっこされた!!」
「悟でも防げないものあるんだね」
「いやこれに術式使うって僕アホじゃん」
疲れることは沢山ある。
それよりも日々必死に生きる幼い命に私達も必死にそのサポートをした。
「待って待って待って。
お風呂怖い。は?背中洗うとかどーすんの?」「こーやって首を腕に枕にするようにして……」
「首!!!首がくってなる!!」
「………悟ビビりすぎじゃ?」
「くにゃってなる!!ってか腰痛いんだけどこの体勢!!」
「………こう」
「ヤバい滑るヤバい」
「ふみゃぁーーー」
「泣いた!!ヤバい!!どーしよ名前!?」
「パパ不器用だねぇ」
「………」
悟も手が空いたときは自分から進んで育児に参加してくれた。
寝不足を理解して授乳じゃなくてもミルクを上げるからと寝かせてくれた。
「………」
「なに?」
「ずっと抱っこしてて大変じゃないの?」
「なにが?」
片手で息子を抱きながらくつろぐ悟に笑ってしまう。
小さな悟と大きな悟が二人でくっついて寝ていた時は静かに写真を撮ってしまった。
静かに眠る赤ちゃんは病院では突然呼吸が止まってもコットンに入っていて異常があれば警報が鳴る。
しかし家にいれば胸の動きを見ていなければわからないほど静かに眠る。
何度も気になって赤ちゃんの呼吸を確かめていれば睡眠どころではない。
寝たと思えば飲み過ぎやゲップが不充分だと吐き戻しがありシーツや衣類の着替え。
吐いたお乳やミルクは直ぐに水で落とさないとシミとなってしまう。
酷いときには1日に何度も衣類を汚してしまう日もある。
一息ついた頃にはまたお乳の時間。
お乳やミルクを飲んだ時に空気も一緒に飲み込むのでその空気を逃がしてやるため背中をさすったり、ポンポンと叩く。
看護師さんはとても上手なのに自分でやるとなかなか上手くゲップができない。
上手くゲップが出ないときは15分ほど縦に抱くといいと言われてもふにゃふにゃで柔らかな赤ちゃんを縦に抱く恐怖に身体に力が入る。
その結果、腕はパンパンだし肩こりは酷いし身体中が重く感じる。
24時間の間に取れる睡眠などたかが知れている。
それが日々積み重なると自分の身だしなみに気を使っている余裕などない。
「名前、本当に大丈夫?
僕が見てるから少し寝な」
「ん……」
悟の言葉に甘えてそのまま寝落ちしてしまっても少しでも赤ちゃんが泣けば反応してしまうのが母親で起きてしまえば気になって仕方がない。
「大丈夫」
悟は赤ちゃんを片手で抱いて、私をもう片方の手でポンポンとあやすように背を叩く。
それが気持ちよくて悟に寄りかかって寝てしまう。
一人で子育てする時間はとても大変だが、悟が気にして支えとなってくれるので私はなんとかやっていけている。
世の中のお母さんを尊敬した。
「寝た?」
息子を寝かし付けるとひょっこり後ろから覗き込む悟。
二人でぐっすり眠る息子を眺めて静かに笑う。
そのまま悟が手を引いてソファーに座るので、隣に座ろうとしたら抱き抱えられて膝の上へ。
「お疲れ様、悟」
「俺より名前のが疲れてるじゃん」
普段は"僕"と意識しているのに甘えたい時は一人称が戻ってしまう悟。
輝ばかりで悟との時間を取れず寂しかったのだろう。
よしよし、と撫でてやれば甘えるように首もとに頭をすり寄せる悟。
「くすぐったいよ」
「もう少し」
「ふふっ、甘えん坊だなぁ」
「名前が足りないから補充中なの。
輝の前ではカッコいいパパでいたいじゃん」
「ははっ!!すっかりパパだね」
身体を重ねる事はまだ出来ないので
くっついて、すり寄って、抱き締めて、キスをして。
「くっついてるだけでも幸せだなぁ」
「うん」
「悟、ありがとう」
「なんで?」
「結婚してくれて悟に愛されて輝もいて……
私凄い幸せ」
「僕も幸せだから、ありがと」
遊ぶように軽くキスをして
二人で額をくっつけて笑い合う。
私達は成人していない子供だけど
小さな命の親だ。
まだまだ未熟な私達はお互いの寂しさを埋めるように求め合う。
子供で大人で親になっていく私達。
「好き」
「私も大好き」
世間は年齢だけを見て子供が子供を育てていると指差しても、私達は私達なりに子供の事を考え生きていけるよう、サポートし、子供を通して私達も成長していける。
約1ヶ月。
産後の身体はとても傷付いていて悪露という出血があるし、1ヶ月後の検診で先生の許可があるまで入浴や性行為は出来ない。
そのためシャワーのみでは日々の疲れも取りきれない。
睡眠不足に疲労感に慣れない育児のストレス。
泣き止まない我が子を前に理由もわからず涙を流すこともあった。
悟がいなくて一人で頑張らなきゃと気を張りつめる。
「名前先輩、大丈夫ですか?」
「硝子……」
「顔色悪すぎです。私が輝見てるので少しは寝てください」
「大丈夫。大丈夫だよ」
遊びに来てくれた硝子にこんなボロボロの姿でごめん、と笑うとムッと眉間に皺を寄せられた。
「名前先輩の"大丈夫"は大丈夫じゃないので駄目です」
「硝子……」
「名前先輩一人の身体じゃないんですよ。
名前先輩に何かあってからじゃ遅いんです」
「……硝子ぉ」
「名前先輩は頑張ってます。
だから少しくらい休んでもいいんですよ」
優しい後輩の前でわんわん泣いた日もあった。
2ヶ月からは予防接種に通い始め
4ヶ月経つと首もしっかりしてきて生活のリズムも上手く作っていけるように。
少ない時間で寝ても平気になる身体。
睡眠不足は解消されないが、少しだけ心に余裕を持てるようになるものの、初めてのことだらけの育児は常に不安が付きまとう。
「名前」
「んー?もうすぐご飯出来るから待ってね」
「いや、ねぇ見て。ちょっと見て」
「なぁに?」
「あれ……」
悟が指差すとこを見れば、我が子がなぜか身体を捻ってころん、と転がった。
なぁに?とでもいうようにこちらをじっと見ている。
「………え?寝返った?」
「だよね」
「嘘でしょ!?
出来そうだと思ってたけどカメラも何も用意してないっ!!!!」
「え?あれ初寝返り?」
「ああああ……おめでとう輝っ!!!
けど出来ればカメラに残したかった!!」
その後、自分で転がって移動し始める息子に再び目が離せない日々。
床を転がっていたと思っていれば、いつの間にか腕の力でズリズリと前に進むようになり、足を上手く使うことを覚えるとズリバイとなって動き回る。
「子供の成長って早いな……」
「うん、めちゃくちゃ早い」
「こないだまでちっちゃくてふにゃふにゃだったのにな……」
「流石悟の子だよね……力も強くてゴリラかな?って思う時がある」
「ぶふっ!!」
半年も過ぎればハイハイで色んなものに興味を持って動き回る息子。
少しずつ高専の手伝いがてらサークルの中に入れて仕事をさせてもらっているのだが……
動き回る子供に目が離せない大人達。
目が合えばにこりと笑い
ぐるぐるとハイハイで動き回り
玩具で遊んでいたり
サークルをガチャガチャ揺らしてみたり
「癒されるし可愛い」
「名前」
「どーぞー。学長と散歩いってらっしゃい」
学長に抱かれながら高専を散歩したり。
「あれ?輝は?」
「学長とお散歩行ったよ」
「おじーちゃんかよ」
「孫可愛がるおじーちゃんだよな。わかる」
「間違いないね」
つかまり立ちを覚え、つたい歩きを始めると色んなところに登りたがり、サークルを激しく揺らし、登ろうと試みる。
「なるほど、ゴリラだな」
「大和久しぶりに手合わせしようか?」
「いやいや五条ちゃんと見ろよ。
檻に入れられたチビゴリラだろ」
「大和マジビンタね」
「最初に言ったの名前だからな!!」
沢山の人に可愛がられて
大事に愛されて育った子。
「一歳……あっという間だぁ」
「ね」
「つい最近まで名前のお腹にいた気がしたのになぁ」
「そうだな」
一歳おめでとうと書かれたケーキ。
そして沢山のプレゼントに囲まれふにゃりと笑う息子。
「硝子の一眼がヤバい」
「データ渡しますので」
「流石」
「学長、人形毎年あげるつもりですか?」
「む……駄目か?」
「ボディーガードゲットだね」
「いやそれ呪骸」
「悟、名前」
「………なんですか、学長?」
学長から手渡された小包。
悟と二人で頭をかしげながら開けてみると小さなケーキ。
"母親・父親
一年目おめでとう"
チョコに書かれた文字に二人で顔を見合わせる。
「オマエ達にとっても親となって一年目だ。
これからも精進しろ」
「学長……」
「あー、僕の嫁泣かしたー」
「学長泣かしたー」
「む!!」
「……ありがとう、ございます」
必死になって、手探りで駆け抜けた一年。
自分が母親となれていたのか……
きちんと出来ていたのかはわからない。
それでも……親として頑張っていることを認めてくれる人達がいる。
応援してくれる人達がいる。
それはとても心強い事だ。
沢山遊んで
沢山泣いて
沢山笑って
優しさに包まれながら育ち
出会いと別れを繰り返してきた。
「ママ」
「なぁに?輝」
「輝もパパみたいになれる?」
「輝、パパみたいな呪術師になりたいの?」
「だってパパが一番強いんでしょ?」
「そうだね」
「じゃあパパ倒せるくらい強くなったら
ママと輝結婚できる?」
「ママと結婚したいの?」
「うん!!
だからまずはパパを目指してパパを倒すね!!」
お喋りが上手になってくると、子供は面白い事を言ってくれる。
「ママはパパのだから絶対あげないよ」
「パパ!!」
「だから輝には倒されてあげない」
「えーやだー!!」
「ママは絶対あげられないけど
輝は僕に追い付くくらい強くなってよ」
「パパを倒す!!」
「楽しみにしてるよ」
何度も息をしているか不安になった夜
柔らかな身体を落とさないよう抱いていたら筋肉痛となった日々
睡眠不足でイライラとした日々
何をやってもうまくいかず子供に怒鳴った日もあった
イライラして自分は母親として最低なのではと泣いた日もあった
急な熱に夜中に病院に駆け込んだこともあった
重くなるたび成長を喜んだ
親としての喜びを教えてくれた
「子供の成長って早いね」
「ね……僕のこと倒すんだって」
「倒されないよう頑張ってね」
「勿論。僕は誰にも負けないよ」
まだまだ手探りで子供と共に親として成長していく私達だけど
「ママ!!パパ!!」
この子が笑っていられるように
いつか私達の腕の中から巣立つ日まで……
「大好き!!」
一緒に居たいと願う。
あとがき
リクエスト「先輩シリーズの子育て」でしたー!!
リクエストくださった草花さんありがとうございます!!
短くぎゅっとまとめた内容ですが……ご期待に答えられましたか?
五万ヒット、感謝を込めて
本当に皆さんありがとうございます!!
※息子
1週間程の入院が終わると自宅での生活が始まる。
「ちっちゃい。可愛い。ふにゃふにゃ」
「ね……」
悟は顔を緩ませて赤ちゃんの手を握る。
私もそんな悟の姿を見て笑う。
「名前親のとこ行かなくて平気?」
「………今さら親に頼るのもね」
産後の身体を気にしてくれた悟は何度か実家で休まなくて大丈夫かと言ってくれた。
しかし、私は少しだけ怖かった。
悟との結婚を認めてくれたものの産まれたばかりの子を本家に取られてしまったり、もしもの事ばかり考えてしまう。
「悟もいるし大丈夫だよ」
「絶対無理は禁止ね」
「わかってるよ」
毎日2〜3時間ごとにお乳を与え、オムツを取り替え、お風呂に入れる。
赤ちゃんは寝るのが仕事だから手がかからないなんて誰が言ったことか……。
「名前、やば!!オムツ外したらおしっこされた!!」
「悟でも防げないものあるんだね」
「いやこれに術式使うって僕アホじゃん」
疲れることは沢山ある。
それよりも日々必死に生きる幼い命に私達も必死にそのサポートをした。
「待って待って待って。
お風呂怖い。は?背中洗うとかどーすんの?」「こーやって首を腕に枕にするようにして……」
「首!!!首がくってなる!!」
「………悟ビビりすぎじゃ?」
「くにゃってなる!!ってか腰痛いんだけどこの体勢!!」
「………こう」
「ヤバい滑るヤバい」
「ふみゃぁーーー」
「泣いた!!ヤバい!!どーしよ名前!?」
「パパ不器用だねぇ」
「………」
悟も手が空いたときは自分から進んで育児に参加してくれた。
寝不足を理解して授乳じゃなくてもミルクを上げるからと寝かせてくれた。
「………」
「なに?」
「ずっと抱っこしてて大変じゃないの?」
「なにが?」
片手で息子を抱きながらくつろぐ悟に笑ってしまう。
小さな悟と大きな悟が二人でくっついて寝ていた時は静かに写真を撮ってしまった。
静かに眠る赤ちゃんは病院では突然呼吸が止まってもコットンに入っていて異常があれば警報が鳴る。
しかし家にいれば胸の動きを見ていなければわからないほど静かに眠る。
何度も気になって赤ちゃんの呼吸を確かめていれば睡眠どころではない。
寝たと思えば飲み過ぎやゲップが不充分だと吐き戻しがありシーツや衣類の着替え。
吐いたお乳やミルクは直ぐに水で落とさないとシミとなってしまう。
酷いときには1日に何度も衣類を汚してしまう日もある。
一息ついた頃にはまたお乳の時間。
お乳やミルクを飲んだ時に空気も一緒に飲み込むのでその空気を逃がしてやるため背中をさすったり、ポンポンと叩く。
看護師さんはとても上手なのに自分でやるとなかなか上手くゲップができない。
上手くゲップが出ないときは15分ほど縦に抱くといいと言われてもふにゃふにゃで柔らかな赤ちゃんを縦に抱く恐怖に身体に力が入る。
その結果、腕はパンパンだし肩こりは酷いし身体中が重く感じる。
24時間の間に取れる睡眠などたかが知れている。
それが日々積み重なると自分の身だしなみに気を使っている余裕などない。
「名前、本当に大丈夫?
僕が見てるから少し寝な」
「ん……」
悟の言葉に甘えてそのまま寝落ちしてしまっても少しでも赤ちゃんが泣けば反応してしまうのが母親で起きてしまえば気になって仕方がない。
「大丈夫」
悟は赤ちゃんを片手で抱いて、私をもう片方の手でポンポンとあやすように背を叩く。
それが気持ちよくて悟に寄りかかって寝てしまう。
一人で子育てする時間はとても大変だが、悟が気にして支えとなってくれるので私はなんとかやっていけている。
世の中のお母さんを尊敬した。
「寝た?」
息子を寝かし付けるとひょっこり後ろから覗き込む悟。
二人でぐっすり眠る息子を眺めて静かに笑う。
そのまま悟が手を引いてソファーに座るので、隣に座ろうとしたら抱き抱えられて膝の上へ。
「お疲れ様、悟」
「俺より名前のが疲れてるじゃん」
普段は"僕"と意識しているのに甘えたい時は一人称が戻ってしまう悟。
輝ばかりで悟との時間を取れず寂しかったのだろう。
よしよし、と撫でてやれば甘えるように首もとに頭をすり寄せる悟。
「くすぐったいよ」
「もう少し」
「ふふっ、甘えん坊だなぁ」
「名前が足りないから補充中なの。
輝の前ではカッコいいパパでいたいじゃん」
「ははっ!!すっかりパパだね」
身体を重ねる事はまだ出来ないので
くっついて、すり寄って、抱き締めて、キスをして。
「くっついてるだけでも幸せだなぁ」
「うん」
「悟、ありがとう」
「なんで?」
「結婚してくれて悟に愛されて輝もいて……
私凄い幸せ」
「僕も幸せだから、ありがと」
遊ぶように軽くキスをして
二人で額をくっつけて笑い合う。
私達は成人していない子供だけど
小さな命の親だ。
まだまだ未熟な私達はお互いの寂しさを埋めるように求め合う。
子供で大人で親になっていく私達。
「好き」
「私も大好き」
世間は年齢だけを見て子供が子供を育てていると指差しても、私達は私達なりに子供の事を考え生きていけるよう、サポートし、子供を通して私達も成長していける。
約1ヶ月。
産後の身体はとても傷付いていて悪露という出血があるし、1ヶ月後の検診で先生の許可があるまで入浴や性行為は出来ない。
そのためシャワーのみでは日々の疲れも取りきれない。
睡眠不足に疲労感に慣れない育児のストレス。
泣き止まない我が子を前に理由もわからず涙を流すこともあった。
悟がいなくて一人で頑張らなきゃと気を張りつめる。
「名前先輩、大丈夫ですか?」
「硝子……」
「顔色悪すぎです。私が輝見てるので少しは寝てください」
「大丈夫。大丈夫だよ」
遊びに来てくれた硝子にこんなボロボロの姿でごめん、と笑うとムッと眉間に皺を寄せられた。
「名前先輩の"大丈夫"は大丈夫じゃないので駄目です」
「硝子……」
「名前先輩一人の身体じゃないんですよ。
名前先輩に何かあってからじゃ遅いんです」
「……硝子ぉ」
「名前先輩は頑張ってます。
だから少しくらい休んでもいいんですよ」
優しい後輩の前でわんわん泣いた日もあった。
2ヶ月からは予防接種に通い始め
4ヶ月経つと首もしっかりしてきて生活のリズムも上手く作っていけるように。
少ない時間で寝ても平気になる身体。
睡眠不足は解消されないが、少しだけ心に余裕を持てるようになるものの、初めてのことだらけの育児は常に不安が付きまとう。
「名前」
「んー?もうすぐご飯出来るから待ってね」
「いや、ねぇ見て。ちょっと見て」
「なぁに?」
「あれ……」
悟が指差すとこを見れば、我が子がなぜか身体を捻ってころん、と転がった。
なぁに?とでもいうようにこちらをじっと見ている。
「………え?寝返った?」
「だよね」
「嘘でしょ!?
出来そうだと思ってたけどカメラも何も用意してないっ!!!!」
「え?あれ初寝返り?」
「ああああ……おめでとう輝っ!!!
けど出来ればカメラに残したかった!!」
その後、自分で転がって移動し始める息子に再び目が離せない日々。
床を転がっていたと思っていれば、いつの間にか腕の力でズリズリと前に進むようになり、足を上手く使うことを覚えるとズリバイとなって動き回る。
「子供の成長って早いな……」
「うん、めちゃくちゃ早い」
「こないだまでちっちゃくてふにゃふにゃだったのにな……」
「流石悟の子だよね……力も強くてゴリラかな?って思う時がある」
「ぶふっ!!」
半年も過ぎればハイハイで色んなものに興味を持って動き回る息子。
少しずつ高専の手伝いがてらサークルの中に入れて仕事をさせてもらっているのだが……
動き回る子供に目が離せない大人達。
目が合えばにこりと笑い
ぐるぐるとハイハイで動き回り
玩具で遊んでいたり
サークルをガチャガチャ揺らしてみたり
「癒されるし可愛い」
「名前」
「どーぞー。学長と散歩いってらっしゃい」
学長に抱かれながら高専を散歩したり。
「あれ?輝は?」
「学長とお散歩行ったよ」
「おじーちゃんかよ」
「孫可愛がるおじーちゃんだよな。わかる」
「間違いないね」
つかまり立ちを覚え、つたい歩きを始めると色んなところに登りたがり、サークルを激しく揺らし、登ろうと試みる。
「なるほど、ゴリラだな」
「大和久しぶりに手合わせしようか?」
「いやいや五条ちゃんと見ろよ。
檻に入れられたチビゴリラだろ」
「大和マジビンタね」
「最初に言ったの名前だからな!!」
沢山の人に可愛がられて
大事に愛されて育った子。
「一歳……あっという間だぁ」
「ね」
「つい最近まで名前のお腹にいた気がしたのになぁ」
「そうだな」
一歳おめでとうと書かれたケーキ。
そして沢山のプレゼントに囲まれふにゃりと笑う息子。
「硝子の一眼がヤバい」
「データ渡しますので」
「流石」
「学長、人形毎年あげるつもりですか?」
「む……駄目か?」
「ボディーガードゲットだね」
「いやそれ呪骸」
「悟、名前」
「………なんですか、学長?」
学長から手渡された小包。
悟と二人で頭をかしげながら開けてみると小さなケーキ。
"母親・父親
一年目おめでとう"
チョコに書かれた文字に二人で顔を見合わせる。
「オマエ達にとっても親となって一年目だ。
これからも精進しろ」
「学長……」
「あー、僕の嫁泣かしたー」
「学長泣かしたー」
「む!!」
「……ありがとう、ございます」
必死になって、手探りで駆け抜けた一年。
自分が母親となれていたのか……
きちんと出来ていたのかはわからない。
それでも……親として頑張っていることを認めてくれる人達がいる。
応援してくれる人達がいる。
それはとても心強い事だ。
沢山遊んで
沢山泣いて
沢山笑って
優しさに包まれながら育ち
出会いと別れを繰り返してきた。
「ママ」
「なぁに?輝」
「輝もパパみたいになれる?」
「輝、パパみたいな呪術師になりたいの?」
「だってパパが一番強いんでしょ?」
「そうだね」
「じゃあパパ倒せるくらい強くなったら
ママと輝結婚できる?」
「ママと結婚したいの?」
「うん!!
だからまずはパパを目指してパパを倒すね!!」
お喋りが上手になってくると、子供は面白い事を言ってくれる。
「ママはパパのだから絶対あげないよ」
「パパ!!」
「だから輝には倒されてあげない」
「えーやだー!!」
「ママは絶対あげられないけど
輝は僕に追い付くくらい強くなってよ」
「パパを倒す!!」
「楽しみにしてるよ」
何度も息をしているか不安になった夜
柔らかな身体を落とさないよう抱いていたら筋肉痛となった日々
睡眠不足でイライラとした日々
何をやってもうまくいかず子供に怒鳴った日もあった
イライラして自分は母親として最低なのではと泣いた日もあった
急な熱に夜中に病院に駆け込んだこともあった
重くなるたび成長を喜んだ
親としての喜びを教えてくれた
「子供の成長って早いね」
「ね……僕のこと倒すんだって」
「倒されないよう頑張ってね」
「勿論。僕は誰にも負けないよ」
まだまだ手探りで子供と共に親として成長していく私達だけど
「ママ!!パパ!!」
この子が笑っていられるように
いつか私達の腕の中から巣立つ日まで……
「大好き!!」
一緒に居たいと願う。
あとがき
リクエスト「先輩シリーズの子育て」でしたー!!
リクエストくださった草花さんありがとうございます!!
短くぎゅっとまとめた内容ですが……ご期待に答えられましたか?
五万ヒット、感謝を込めて
本当に皆さんありがとうございます!!