五万企画
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「ヤドカリくんよ……知ってるかい?
拗らせた女ほど、面倒な事はないんだぜ」
そう。拗らせ女とは私……通行人名前のことよ!!
荒れ果てた時代もありました。
学生時代とか、ちょっとハメ外してしまったりしたが、まぁ……ね?
お酒って怖いよね(意味深)
まぁ、そのおかげ?でやっぱり彼が好きなのかもしれないと深みにはまり……拗らせてたわけだが……うっ、胸がイタイ…。
「生まれ変わったらヤドカリになりたい…」
みろよ。一面うじゃうじゃ仲間だらけだぜ!!
出会いたい放題だぜ!!
ポケモンゲットだぜ!!
「………はっ!!
炎タイプが好きな私が、いつの間にか水ポケ使いに……!!
お転婆人魚も夢じゃないな」
うんうん、と一人納得する寂しいやつ。
ねぇ、お願い。
通報やめて?不審者じゃないよ!!!
「………やば」
うん、すんごいドン引いた声やめて。
ガチに傷つくやつだから。
誰だよ、と振り向けば
袈裟姿のヤベェ奴がいた。
思わずビール落とした。
「やっ」
え、怖い怖い怖い!!!!
なんか!!声、掛けてきてる?
いやいや、私にあんなヤベェ知り合いいねーし!!!
シカトだシカト。
たまーにいんだよな……旅行でウカれてナンパとかしちゃう奴。
そんなのに引っ掛かるの馬鹿だけだからな。
袈裟姿でナンパってどーなの?
ここ一応沖縄だよ?OKINAWA!!!
絶対暑いじゃん絶対汗だくだくじゃん。
頭湧いてんな。
ビールの空き缶を袋に詰めて浜辺を歩く。
このまま帰って後つけられたら嫌だからな。
適当に歩いて時間潰そう。
「おや?もう帰るのかい?」
「もしもし?警察ですか?」
不審者に肩捕まれました。
これ、通報ですね……と、スマホで電話を掛けようとしたら、頭叩かれた。
見知らぬ人に叩かれて、真顔でキレそうになった。
「………あれ?前髪?」
「やぁ、久しいね」
「頭湧いた格好してんね」
「ヤドカリに向かって話しかけていた低能な人間の言葉とは思えないね」
まともに不審者の顔をみたら、ハーフアップでお団子にまとめ、後ろ髪をそのままに流している袈裟姿の前髪がいた。
「何か雰囲気変わった?」
「やりたいようにやろうと思ったのさ」
「普段からやりたい放題のくせに」
「否定はしないね」
くすくすと笑う前髪。
何年か会っていなかっただけなのに雰囲気が変わっていた。
学生の頃から大人っぽくて落ち着きがあったが……なんと言えば良いのやら…
凄く落ち着いている。
「あんた馬鹿みたいに真面目で潔癖なところあったから白髪や美少女より生き辛そうなとこあったもんね」
「は?」
「何でも出来て優等生だったのかもしれないけど不器用で融通のきかない頑固親父だもんなぁ」
まぁ、私が語るには前髪とそう関わってはいないのだが。
ポカンとした表情でこちらを見る前髪。
「なに?」
「……そんなこと初めて言われたよ」
「そう?じゃあ皆あんたを受け入れていてくれてたんだよ」
「名前は?」
「んー?」
「名前は不器用で融通のきかない頑固親父な私は嫌だったかい?」
「根に持ってね?
前髪らしくて嫌いじゃないよ」
自由な白髪と一緒に笑う前髪に呆れながらも一緒に居る美少女。
その中に一緒に入って遊ぶことが好きだった。
過去を思い出せば楽しかった時間ばかり思い出す。
その度にあいつの私を見る目が忘れられなかった。
「で?あんたは何しにここに?旅行?」
「随分トゲトゲしいね」
「お仕事ですか?なら坊主はナンパなんかやめて禁欲してお帰りくださーい」
「目的を達成したら帰るさ。
……まさかこんなところに居るなんて思わなかったからね」
ドサリ、と隣に座り込む前髪。
「何年か前に任務で来て以来だよ」
「あー、お前らが音信不通になりやがった任務か」
「悪かったね。……悟も私も忙しくなって」
「ふーん」
「護衛任務で守っていた子を守りきれず任務失敗だったんだ」
なんてことないように話す前髪。
任務失敗。それが意味することなんてーーー。
「………ごめん」
「謝る必要なんてないさ。
私の力不足だっただけだから」
「謝るだろ。少なくともその任務は前髪にとって今でも引きずってる出来事なんだから」
「私が?引きずってる?」
「目的とやらが無ければ来たくなかったんでしょ?ここ」
自分でも気付いて無かったらしい。
「んで、目的は?達成出来そう?」
「さあ?相手次第かなぁ」
「なに?結婚でも申し込みに行くの?」
「そんな感じ」
まぁ、そろそろ結婚してもおかしくない年齢だもんな。
……おいそこ!!相手いないだろ、プギャーって指さして笑うんじゃねぇ!!!
「リア充滅びろ」
「さっきからその話題になると敏感だね」
「すいませんねぇ!!!恋愛引きずってる馬鹿で!!」
「なんだい?悟のこと引きずって他の男と遊び歩いたけどやっぱ何か違うと別れて悟がいいと泣いてたのかい?」
「え?キモッ。ドンピシャで当てられると引くわ」
「キミが単純なんだよ」
「うるせーやい」
「あと悟を美化し過ぎ」
「………否定はしない」
美化してるし、私のが固執して色々相手にイチャモンつけて勝手に幻滅しているところはある。
「好きだった。
気付くのが遅かったけど……
確かに私は白髪に恋をして、好きだった」
「知っているよ」
私の話を静かに聞いてくれて、小さく呟く前髪。
「あいつが笑って私の頭を撫でるのも
一回り以上も大きな手で私の手を包むのも
あいつと過ごす日々が楽しかった」
「知ってる」
「他の人を好きになろうとしてもあいつと違う部分を比べて、そんな失礼な事をしてしまう自分に嫌になる」
「そうか」
「今でもあいつが私を迎えに来てくれるんじゃないかって……馬鹿みたいな事を願ってしまっている」
いつも迎えに来てくれていたから。
「あいつにとって私は面白い玩具だった。
興味を無くされたら見向きもされない……
そんなことわかっているのに……
未練タラタラでこんなとこで待ってる私を馬鹿だと笑う?」
何度連絡しても返って来ない電話とメール。
もう諦めろと言われていてもわかっていると口先ばかりで引きずって
会いに来ない、会えるはずのない一人を待ち続けている。
「笑わないさ」
ふわり、と頭に乗せられた大きな手のひら。
壊れ物を扱うように優しく優しく撫でる手。
「純粋なキミが羨ましいよ」
「そう?重たいっしょ」
「確かに重いな」
「お前さっきから私のことフォローしてるようで突き落としてるからな?」
「そうかい?」
ちょいちょい傷口広げてますけど!?
無自覚とか質悪いぞ!!
「私じゃ駄目か?」
「……は?」
こいつ頭本当に大丈夫か?
「あり得ないものを見る目やめようか」
「いや、いやいやいや。
今のところ完全に慰めるとこだよね?
普通自分売り込む?」
「キミこそそこはキュンッとすべきところでは?親友の想い人の弱ったところを慰める親友の友達……ラブロマンスの始まりじゃないか」
「頭イッてんな。そんな暑苦しい服着てるから常夏の日差しにやられたか……」
「ほんっとキミは色々残念だな……」
はぁぁぁぁ……と大きなため息をつかれた。
いやいや、そんな漫画みたいな展開あるわけないっしょ。
「一度も考え無かったのかい?
私がキミを好ましいと思っていたと」
「友達としてじゃん」
「まぁそうだけど」
「オイ。
傷心中だって言ってんのにトドメ刺す気か」
「新しい恋をしたいんだろ?」
「そりゃーね」
「だから私じゃ駄目かい?」
からかってんのかと前髪を見れば、前髪は笑っていた。
頭を撫でていた手が頬を滑る。
「名前を好ましいと思ってるよ。
友人としても一人の女性としても。
キミとなら私は笑って居られる」
「………」
「悟とキミを見てきたから私はキミを友人として扱ったし、そーゆー目で見なかった。
それはキミも同じだろ?」
「………まぁ、うん」
「友人からでもいい。
また私と繋がってくれないかい?」
「…………」
「なんだい?その不細工な顔は」
苦虫を噛み潰したような顔をしていたのを指摘されたが……
「ダウト」
「は?」
「いや、うん……多分本音も混じってんだろうけどさ……さっきから胡散臭くて結婚詐欺持ち掛けられてる気持ちになってる」
「キミは私を何だと思ってるんだ」
本当ならきっと前髪に惚れるシーンなのかもしれんが……格好といい胡散臭くて。
「ぶっちゃけると?」
「………引かないかい?」
「え?そんなヤバい………あ、私年上でもなければ人妻でもないから前髪の守備範囲じゃないとか?」
「待て。何の話だ」
「学生の頃そんな話してなかった?」
「忘れろ」
ねぇ、頬を撫でていた手でアイアンクローやめてくれない?そんな痛くないけどビビる。
すぐに手を話してくれ、クックックッ、と笑いだす前髪。
やっぱ暑さで頭やられた?
「名前」
「何?」
「キミを好ましいと思っているのは本当だ」
「ふむ」
「悟ならキミが苦労をしても幸せに出来るだろうと思っていた。
悟はキミを手離さないと思っていたし」
「へー」
「悟なら、と思って手を引いたが
悟がキミをいつまでも迎えに行かないなら私が貰っても文句は言えないだろ?」
クスリ、と怪しげに笑う前髪。
「何より見知らぬ猿共の隣でキミが笑うことも
キミが猿共のモノになるのも私が耐えられないんだよ」
「さ、猿…?」
「キミを殺したくはない。
出来るなら私の隣で馬鹿みたいに笑っていてほしい」
泣きそうな顔で笑う前髪。
「泣くほど嫌?」
「……泣いてないよ。
ただ、見ないふりが出来なくなってしまったんだ」
「あんたはそれが正しいと思っているんでしょ?」
「後悔はしていない。
悟と道を違えても、犯罪者となっても
私は私のやりたいように進むことを決めたのだから」
「その道に私は邪魔になるんじゃないの?
あんた矛盾してるよ」
猿、がどこまでの人間を指しているのかはわからないが……
少なくとも私も彼の言う"猿"の一人なのだろう。
なのに前髪は私が欲しいと手を伸ばしている。
「駄々っ子か」
「そうかもしれないね」
「そんなに私のこと大好きだったなんて知らんかったわ」
「あれだけわかりやすい悟の好意すら気付いてないなら無理だろ」
「いや……都合のいい玩具扱いされてたのに
実は好きだったからなの〜って信じられる?
確かに途中からめちゃくちゃ優しかったからお?もしかして…って思ったけどさぁ」
「悟は好きな子を虐めたいタイプだからな」
「小学生かよ」
私からしたら前髪も変わらんと思うんだが?
「で、返事は貰えないのかい?」
「私取り合われて喜べばいいの?」
「硝子みたいな美人なら喜んで取り合ったかもしれないね」
「馬鹿野郎。
あの子と一般人の私の顔の出来比べんなよ!!」
「黙っていればキミも美人なんだけど
奇行が全てを台無しにするってなかなかだと思うよ」
「奇行?」
「………ふふっ。
ほんっとキミは飽きないなぁ」
目を細めて楽しそうに笑う前髪。
普通はそこにドキッとするのがお約束なんだろうけど……
「私悟が好きだよ」
「あぁ」
「けどね、友人として三人と過ごした日々の方がもっと好きだったんだ」
四人で馬鹿みたいなこと話して騒いで笑って。
あの日々が本当に楽しかった。
「あんたの信念ねじ曲げてまであんたの人生に私は必要なの?」
「必要か不必要かなら必要ない」
「なら」
「けど私個人の我が儘として名前と共に居られたらいいな、と思っているんだ」
「超我が儘じゃん」
「素直になっただけさ。
もう我慢はやめたんだ」
ゆっくりと前髪の顔が近付く。
前髪の伸ばされた髪がカーテンのように降りてきて私と彼の顔を隠してしまう。
ただ、触れるだけのキス。
「期待してもいいのかい?」
呆れたことに嫌じゃないと思ってしまった。
そして間近で見た前髪の顔に私は自分でも驚くことに気付いてしまった。
「……内緒だけどね」
ーーー傑の顔好きだよ。
「………は?」
「今気付いたけど好みに近い」
「嘘だろ」
「そこ疑うとこ?」
「………はぁ。
キミのそーゆーとこには本当参るよ」
目尻を下げて呆れながらも嬉しそうに笑う傑がいた。
幼馴染がいたらまたか、って呆れた顔をされそうだ。
そろそろ私も前に進もうと思った。
想い人が迎えに来てくれるなんてハッピーエンドは作り話の中だけだった。
それからなんやかんやあって丸め込まれ付き合うことになったのだが……
「………」
「どうかしたかい?」
「聞いてないんだけど?
おまっ!!!どこから幼女拐ってきたの!?
犯罪者とは聞いていたけどノータッチロリショタ!!!」
「私の家族だよ」
「人妻好きだとは聞いてたが……え?何歳時の子……?」
「その設定いい加減やめてくれないか?」
まさか空港に迎えにきた彼氏が子持ち(女子2名)だとは思わないだろ!!!!
「ねぇ私めちゃくちゃ殺意向けられてない?」
「美々子、菜々子。
このお馬鹿なお姉さんが2人のお母さんだよ」
「待て。私はいつお前の嫁になった」
「今すぐにでも役所行くかい?」
「殺意増した!!!ちょっと本当大丈夫!?
私ポックリ逝きそう!!!」
「大丈夫大丈夫。
名前なら私の家族と打ち解けられるよ。
さあ、帰ろう」
差し出された手に自分の手を重ねる。
嬉しそうに笑う傑に呆れながらも笑ってしまう。
「お近づきの印に紅いもタルトはお好きかな?」
「「…………」」
「あ、シークワーサーハイチュウのがいい?」
「「…………」」
「ここはスターフルーツの出番か?」
「「…………」」
「よしきた!!いでよ、ドラゴンフルーーーツ!!」
「「…………」」
「もってけ泥棒!!ちんすこうだ!!」
「「…………」」
「助けてすぐえもん!!嫌悪しか向けられない!!」
「二人は私が大好きだからね。
私を盗った名前が大嫌いなんだよ」
「おまっ!!それ言ったらおしまいじゃねーか!!」
双子には暫く嫌われました。
けど乳首にハートのシール貼った変な人とはちん○すこうを渡したら仲良くなれました。
え?商品名おかしいって?
いや沖縄行ったらあるから。
チョコレート味のおいしいちんすこうだから。
「名前」
「なに?傑」
初恋は実らない。
白馬に乗った王子様なんか来なくて
私を迎えに来たのは袈裟姿の胡散臭い犯罪者。
だけど
「寂しくないだろ?」
不器用で真面目な心優しい人でした。
あとがき
「通行人のお迎えが傑だった場合」
のリクエストでした!!
リクエストくださった方ありがとうございます!!
傑……まともに絡んでいなかったのでなかなか難しかったです……。迎えに来ない悟への想いに終止符をつけに来てくれた傑に流されちゃった軽い女感つぉくなってる……が、大人なので綺麗な恋愛ではないwww
学生時代ならもうちょい綺麗に……いやうーん……どうだろ?
離別のときに迎えにとなると、通行人病みそうwww
ヤンデレっぽくなっていますが……傑なのでいいかな(笑)
親友になら譲れるけど猿には譲れない。
見えているならセーフなのかな?
術式無いなら猿か?
通行人には是非脳ミソに「やぁ」とか言われたら回し蹴りしてほしい。
誰だテメー!!って。
またはどこほっつき歩いて!!……え?ドチラサマ?ってなる。
お読みいただきありがとうございました!!
拗らせた女ほど、面倒な事はないんだぜ」
そう。拗らせ女とは私……通行人名前のことよ!!
荒れ果てた時代もありました。
学生時代とか、ちょっとハメ外してしまったりしたが、まぁ……ね?
お酒って怖いよね(意味深)
まぁ、そのおかげ?でやっぱり彼が好きなのかもしれないと深みにはまり……拗らせてたわけだが……うっ、胸がイタイ…。
「生まれ変わったらヤドカリになりたい…」
みろよ。一面うじゃうじゃ仲間だらけだぜ!!
出会いたい放題だぜ!!
ポケモンゲットだぜ!!
「………はっ!!
炎タイプが好きな私が、いつの間にか水ポケ使いに……!!
お転婆人魚も夢じゃないな」
うんうん、と一人納得する寂しいやつ。
ねぇ、お願い。
通報やめて?不審者じゃないよ!!!
「………やば」
うん、すんごいドン引いた声やめて。
ガチに傷つくやつだから。
誰だよ、と振り向けば
袈裟姿のヤベェ奴がいた。
思わずビール落とした。
「やっ」
え、怖い怖い怖い!!!!
なんか!!声、掛けてきてる?
いやいや、私にあんなヤベェ知り合いいねーし!!!
シカトだシカト。
たまーにいんだよな……旅行でウカれてナンパとかしちゃう奴。
そんなのに引っ掛かるの馬鹿だけだからな。
袈裟姿でナンパってどーなの?
ここ一応沖縄だよ?OKINAWA!!!
絶対暑いじゃん絶対汗だくだくじゃん。
頭湧いてんな。
ビールの空き缶を袋に詰めて浜辺を歩く。
このまま帰って後つけられたら嫌だからな。
適当に歩いて時間潰そう。
「おや?もう帰るのかい?」
「もしもし?警察ですか?」
不審者に肩捕まれました。
これ、通報ですね……と、スマホで電話を掛けようとしたら、頭叩かれた。
見知らぬ人に叩かれて、真顔でキレそうになった。
「………あれ?前髪?」
「やぁ、久しいね」
「頭湧いた格好してんね」
「ヤドカリに向かって話しかけていた低能な人間の言葉とは思えないね」
まともに不審者の顔をみたら、ハーフアップでお団子にまとめ、後ろ髪をそのままに流している袈裟姿の前髪がいた。
「何か雰囲気変わった?」
「やりたいようにやろうと思ったのさ」
「普段からやりたい放題のくせに」
「否定はしないね」
くすくすと笑う前髪。
何年か会っていなかっただけなのに雰囲気が変わっていた。
学生の頃から大人っぽくて落ち着きがあったが……なんと言えば良いのやら…
凄く落ち着いている。
「あんた馬鹿みたいに真面目で潔癖なところあったから白髪や美少女より生き辛そうなとこあったもんね」
「は?」
「何でも出来て優等生だったのかもしれないけど不器用で融通のきかない頑固親父だもんなぁ」
まぁ、私が語るには前髪とそう関わってはいないのだが。
ポカンとした表情でこちらを見る前髪。
「なに?」
「……そんなこと初めて言われたよ」
「そう?じゃあ皆あんたを受け入れていてくれてたんだよ」
「名前は?」
「んー?」
「名前は不器用で融通のきかない頑固親父な私は嫌だったかい?」
「根に持ってね?
前髪らしくて嫌いじゃないよ」
自由な白髪と一緒に笑う前髪に呆れながらも一緒に居る美少女。
その中に一緒に入って遊ぶことが好きだった。
過去を思い出せば楽しかった時間ばかり思い出す。
その度にあいつの私を見る目が忘れられなかった。
「で?あんたは何しにここに?旅行?」
「随分トゲトゲしいね」
「お仕事ですか?なら坊主はナンパなんかやめて禁欲してお帰りくださーい」
「目的を達成したら帰るさ。
……まさかこんなところに居るなんて思わなかったからね」
ドサリ、と隣に座り込む前髪。
「何年か前に任務で来て以来だよ」
「あー、お前らが音信不通になりやがった任務か」
「悪かったね。……悟も私も忙しくなって」
「ふーん」
「護衛任務で守っていた子を守りきれず任務失敗だったんだ」
なんてことないように話す前髪。
任務失敗。それが意味することなんてーーー。
「………ごめん」
「謝る必要なんてないさ。
私の力不足だっただけだから」
「謝るだろ。少なくともその任務は前髪にとって今でも引きずってる出来事なんだから」
「私が?引きずってる?」
「目的とやらが無ければ来たくなかったんでしょ?ここ」
自分でも気付いて無かったらしい。
「んで、目的は?達成出来そう?」
「さあ?相手次第かなぁ」
「なに?結婚でも申し込みに行くの?」
「そんな感じ」
まぁ、そろそろ結婚してもおかしくない年齢だもんな。
……おいそこ!!相手いないだろ、プギャーって指さして笑うんじゃねぇ!!!
「リア充滅びろ」
「さっきからその話題になると敏感だね」
「すいませんねぇ!!!恋愛引きずってる馬鹿で!!」
「なんだい?悟のこと引きずって他の男と遊び歩いたけどやっぱ何か違うと別れて悟がいいと泣いてたのかい?」
「え?キモッ。ドンピシャで当てられると引くわ」
「キミが単純なんだよ」
「うるせーやい」
「あと悟を美化し過ぎ」
「………否定はしない」
美化してるし、私のが固執して色々相手にイチャモンつけて勝手に幻滅しているところはある。
「好きだった。
気付くのが遅かったけど……
確かに私は白髪に恋をして、好きだった」
「知っているよ」
私の話を静かに聞いてくれて、小さく呟く前髪。
「あいつが笑って私の頭を撫でるのも
一回り以上も大きな手で私の手を包むのも
あいつと過ごす日々が楽しかった」
「知ってる」
「他の人を好きになろうとしてもあいつと違う部分を比べて、そんな失礼な事をしてしまう自分に嫌になる」
「そうか」
「今でもあいつが私を迎えに来てくれるんじゃないかって……馬鹿みたいな事を願ってしまっている」
いつも迎えに来てくれていたから。
「あいつにとって私は面白い玩具だった。
興味を無くされたら見向きもされない……
そんなことわかっているのに……
未練タラタラでこんなとこで待ってる私を馬鹿だと笑う?」
何度連絡しても返って来ない電話とメール。
もう諦めろと言われていてもわかっていると口先ばかりで引きずって
会いに来ない、会えるはずのない一人を待ち続けている。
「笑わないさ」
ふわり、と頭に乗せられた大きな手のひら。
壊れ物を扱うように優しく優しく撫でる手。
「純粋なキミが羨ましいよ」
「そう?重たいっしょ」
「確かに重いな」
「お前さっきから私のことフォローしてるようで突き落としてるからな?」
「そうかい?」
ちょいちょい傷口広げてますけど!?
無自覚とか質悪いぞ!!
「私じゃ駄目か?」
「……は?」
こいつ頭本当に大丈夫か?
「あり得ないものを見る目やめようか」
「いや、いやいやいや。
今のところ完全に慰めるとこだよね?
普通自分売り込む?」
「キミこそそこはキュンッとすべきところでは?親友の想い人の弱ったところを慰める親友の友達……ラブロマンスの始まりじゃないか」
「頭イッてんな。そんな暑苦しい服着てるから常夏の日差しにやられたか……」
「ほんっとキミは色々残念だな……」
はぁぁぁぁ……と大きなため息をつかれた。
いやいや、そんな漫画みたいな展開あるわけないっしょ。
「一度も考え無かったのかい?
私がキミを好ましいと思っていたと」
「友達としてじゃん」
「まぁそうだけど」
「オイ。
傷心中だって言ってんのにトドメ刺す気か」
「新しい恋をしたいんだろ?」
「そりゃーね」
「だから私じゃ駄目かい?」
からかってんのかと前髪を見れば、前髪は笑っていた。
頭を撫でていた手が頬を滑る。
「名前を好ましいと思ってるよ。
友人としても一人の女性としても。
キミとなら私は笑って居られる」
「………」
「悟とキミを見てきたから私はキミを友人として扱ったし、そーゆー目で見なかった。
それはキミも同じだろ?」
「………まぁ、うん」
「友人からでもいい。
また私と繋がってくれないかい?」
「…………」
「なんだい?その不細工な顔は」
苦虫を噛み潰したような顔をしていたのを指摘されたが……
「ダウト」
「は?」
「いや、うん……多分本音も混じってんだろうけどさ……さっきから胡散臭くて結婚詐欺持ち掛けられてる気持ちになってる」
「キミは私を何だと思ってるんだ」
本当ならきっと前髪に惚れるシーンなのかもしれんが……格好といい胡散臭くて。
「ぶっちゃけると?」
「………引かないかい?」
「え?そんなヤバい………あ、私年上でもなければ人妻でもないから前髪の守備範囲じゃないとか?」
「待て。何の話だ」
「学生の頃そんな話してなかった?」
「忘れろ」
ねぇ、頬を撫でていた手でアイアンクローやめてくれない?そんな痛くないけどビビる。
すぐに手を話してくれ、クックックッ、と笑いだす前髪。
やっぱ暑さで頭やられた?
「名前」
「何?」
「キミを好ましいと思っているのは本当だ」
「ふむ」
「悟ならキミが苦労をしても幸せに出来るだろうと思っていた。
悟はキミを手離さないと思っていたし」
「へー」
「悟なら、と思って手を引いたが
悟がキミをいつまでも迎えに行かないなら私が貰っても文句は言えないだろ?」
クスリ、と怪しげに笑う前髪。
「何より見知らぬ猿共の隣でキミが笑うことも
キミが猿共のモノになるのも私が耐えられないんだよ」
「さ、猿…?」
「キミを殺したくはない。
出来るなら私の隣で馬鹿みたいに笑っていてほしい」
泣きそうな顔で笑う前髪。
「泣くほど嫌?」
「……泣いてないよ。
ただ、見ないふりが出来なくなってしまったんだ」
「あんたはそれが正しいと思っているんでしょ?」
「後悔はしていない。
悟と道を違えても、犯罪者となっても
私は私のやりたいように進むことを決めたのだから」
「その道に私は邪魔になるんじゃないの?
あんた矛盾してるよ」
猿、がどこまでの人間を指しているのかはわからないが……
少なくとも私も彼の言う"猿"の一人なのだろう。
なのに前髪は私が欲しいと手を伸ばしている。
「駄々っ子か」
「そうかもしれないね」
「そんなに私のこと大好きだったなんて知らんかったわ」
「あれだけわかりやすい悟の好意すら気付いてないなら無理だろ」
「いや……都合のいい玩具扱いされてたのに
実は好きだったからなの〜って信じられる?
確かに途中からめちゃくちゃ優しかったからお?もしかして…って思ったけどさぁ」
「悟は好きな子を虐めたいタイプだからな」
「小学生かよ」
私からしたら前髪も変わらんと思うんだが?
「で、返事は貰えないのかい?」
「私取り合われて喜べばいいの?」
「硝子みたいな美人なら喜んで取り合ったかもしれないね」
「馬鹿野郎。
あの子と一般人の私の顔の出来比べんなよ!!」
「黙っていればキミも美人なんだけど
奇行が全てを台無しにするってなかなかだと思うよ」
「奇行?」
「………ふふっ。
ほんっとキミは飽きないなぁ」
目を細めて楽しそうに笑う前髪。
普通はそこにドキッとするのがお約束なんだろうけど……
「私悟が好きだよ」
「あぁ」
「けどね、友人として三人と過ごした日々の方がもっと好きだったんだ」
四人で馬鹿みたいなこと話して騒いで笑って。
あの日々が本当に楽しかった。
「あんたの信念ねじ曲げてまであんたの人生に私は必要なの?」
「必要か不必要かなら必要ない」
「なら」
「けど私個人の我が儘として名前と共に居られたらいいな、と思っているんだ」
「超我が儘じゃん」
「素直になっただけさ。
もう我慢はやめたんだ」
ゆっくりと前髪の顔が近付く。
前髪の伸ばされた髪がカーテンのように降りてきて私と彼の顔を隠してしまう。
ただ、触れるだけのキス。
「期待してもいいのかい?」
呆れたことに嫌じゃないと思ってしまった。
そして間近で見た前髪の顔に私は自分でも驚くことに気付いてしまった。
「……内緒だけどね」
ーーー傑の顔好きだよ。
「………は?」
「今気付いたけど好みに近い」
「嘘だろ」
「そこ疑うとこ?」
「………はぁ。
キミのそーゆーとこには本当参るよ」
目尻を下げて呆れながらも嬉しそうに笑う傑がいた。
幼馴染がいたらまたか、って呆れた顔をされそうだ。
そろそろ私も前に進もうと思った。
想い人が迎えに来てくれるなんてハッピーエンドは作り話の中だけだった。
それからなんやかんやあって丸め込まれ付き合うことになったのだが……
「………」
「どうかしたかい?」
「聞いてないんだけど?
おまっ!!!どこから幼女拐ってきたの!?
犯罪者とは聞いていたけどノータッチロリショタ!!!」
「私の家族だよ」
「人妻好きだとは聞いてたが……え?何歳時の子……?」
「その設定いい加減やめてくれないか?」
まさか空港に迎えにきた彼氏が子持ち(女子2名)だとは思わないだろ!!!!
「ねぇ私めちゃくちゃ殺意向けられてない?」
「美々子、菜々子。
このお馬鹿なお姉さんが2人のお母さんだよ」
「待て。私はいつお前の嫁になった」
「今すぐにでも役所行くかい?」
「殺意増した!!!ちょっと本当大丈夫!?
私ポックリ逝きそう!!!」
「大丈夫大丈夫。
名前なら私の家族と打ち解けられるよ。
さあ、帰ろう」
差し出された手に自分の手を重ねる。
嬉しそうに笑う傑に呆れながらも笑ってしまう。
「お近づきの印に紅いもタルトはお好きかな?」
「「…………」」
「あ、シークワーサーハイチュウのがいい?」
「「…………」」
「ここはスターフルーツの出番か?」
「「…………」」
「よしきた!!いでよ、ドラゴンフルーーーツ!!」
「「…………」」
「もってけ泥棒!!ちんすこうだ!!」
「「…………」」
「助けてすぐえもん!!嫌悪しか向けられない!!」
「二人は私が大好きだからね。
私を盗った名前が大嫌いなんだよ」
「おまっ!!それ言ったらおしまいじゃねーか!!」
双子には暫く嫌われました。
けど乳首にハートのシール貼った変な人とはちん○すこうを渡したら仲良くなれました。
え?商品名おかしいって?
いや沖縄行ったらあるから。
チョコレート味のおいしいちんすこうだから。
「名前」
「なに?傑」
初恋は実らない。
白馬に乗った王子様なんか来なくて
私を迎えに来たのは袈裟姿の胡散臭い犯罪者。
だけど
「寂しくないだろ?」
不器用で真面目な心優しい人でした。
あとがき
「通行人のお迎えが傑だった場合」
のリクエストでした!!
リクエストくださった方ありがとうございます!!
傑……まともに絡んでいなかったのでなかなか難しかったです……。迎えに来ない悟への想いに終止符をつけに来てくれた傑に流されちゃった軽い女感つぉくなってる……が、大人なので綺麗な恋愛ではないwww
学生時代ならもうちょい綺麗に……いやうーん……どうだろ?
離別のときに迎えにとなると、通行人病みそうwww
ヤンデレっぽくなっていますが……傑なのでいいかな(笑)
親友になら譲れるけど猿には譲れない。
見えているならセーフなのかな?
術式無いなら猿か?
通行人には是非脳ミソに「やぁ」とか言われたら回し蹴りしてほしい。
誰だテメー!!って。
またはどこほっつき歩いて!!……え?ドチラサマ?ってなる。
お読みいただきありがとうございました!!