十万企画
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「んー……」
「さっきから何唸ってんのよ。便秘か」
「快便でした。いや、あのさぁ」
「オマエのウンコ事情とかいらねーよ。何だ」
「名前姉って学生時代から変な人に付きまとわれてたりする?」
虎杖の言葉に釘崎と伏黒は頭を傾げた。
「俺さ、死んでるって事になってた間暇だったから何か面白い記事無いかなーって2チャンネルって言うの?ホラーチャンネルとか色々見ててさ」
「本当はスケベなとこばっか見てたんじゃないの?」
「違いますぅ!!ホラーチャンネルなら呪いの情報も真偽はどうであれ事実になりやすいって伊地知さんも言ってたし」
「確かにな。皆が騒ぎ、恐怖することで呪いは生まれるからな」
「だからさ、見るようになったんだけど……二人もこれ見てよ」
【俺の街】(ヤバい!!)通行人さん【都市伝説】
と題名のついているものを開く。
ズラズラと文字だけ書かれたそれはとある男が恋をし、見てきた女性の話だった。
見えるらしい男は同じ見える存在の女性を気にしていた話。そして女性の奇行。
「名前さんならやりそうよね」
「けど10年も前の話だろ?」
「そうよ。学生の頃に想いを告げられなかった男が女性の事祝福してる内容じゃない」
「10年前の名前さんだとは言いきれないだろ」
「そうなんだけどさぁ……何でこの"イッチ"は10年間の女の人の行動把握してんの?」
「「………は?」」
最初の触りしか見ていなかった二人はゾッとした。
今、何と言ったこの男。
「俺の知る限り、なんか名前姉っぽい内容だから気になって」
「虎杖、そのURS送れ」
「伏黒のパットで大きくして見るわよ」
始めから読み進めていく。
学生服らしき画像……顔を隠されているが、どこか雰囲気は似ている。
「これ、名前さんの高校と同じ制服だぞ」
「何でアンタが知ってんのよ伏黒」
「昔のプリクラ見たことあるからだよ」
「何それ。私も見たい」
「後でデータ渡す。続き読むぞ」
なぜ伏黒はプリクラの写真を持っているのか虎杖は聞かなかった。
聞いたら負けな気がしたから。
今はそれどころじゃないと読み進めれば……彼女の武勇伝の数々。それはチラホラ聞いたことのあるものだった。
そして出てきた"黒い制服の白髪頭の最強の見える祓えるDK"
「……五条先生っぽいな」
「そうね」
「俺の事も書かれてんだよね……
ほら、伏黒と初めて会った日」
「確かにオマエ包含ぶっ飛ばしてたな」
「どんな状況よ」
「だからさ、名前姉って今もこの"イッチ"に付きまとわれてるって事になるよね?」
「……まだ決定的な事が」
「よく読み返したら完全に名前さんだと思うわ。
沖縄に白髪が迎えに行ってハッピーエンドなんて早々いないわよ」
「「だな」」
「五条先生に聞いてくる!!」
走り出した虎杖。
次々に上がっていく情報に何やってんだ名前さんって気持ちとその度補足するように詳しい情報を出す"イッチ"
「コイツよく今まで五条にバレずに居たわね」
「だな」
「五条の事だから虫除けは完璧だと思ってたわ」
「俺もだ」
この"イッチ"終わったな……と既に終わりが見えている釘崎と伏黒。
見付けた虎杖に良くやった!!という気持ちと10年も行動を把握されていた事実にこんなん知りたくなかったと人間の怖さにゾッとする。
「五条先生連れてきた!」
「お疲れ〜。面白い記事あるんだって?」
面白いでは済まされないと思うが……最初の部分にして五条へとパットを渡す伏黒。
最初はあはは、なんて笑って名前みたいな奴いるんだね〜と言っていたのにどんどん口数が減っていき表情も真顔になっていく。
「悠仁、これ僕のスマホに送れる?」
「うん!」
「伊地知に教えてもらったんだっけ?」
「そう。伊地知さんに何か暇潰しになるような事無いかって聞いたら教えてもらったよ。
伊地知さんもたまに呪い関係の噂が大きくなってきたらチェックする程度らしいけど暇潰しになるだろうって」
「………もしもし伊地知?」
すぐに伊地知に電話で確認する五条。
「今すぐ"イッチ"って奴の身元探って」
"え?あの、ですが…"
「一般人が呪術界の情報持ってる時点でどっかから漏れてるか探られてるって事だろ。
少なくともコイツはうちの生徒の情報持ってんぞ」
"すぐに調べます"
「絶対逃すな」
いつもと違う少し低い声で話す五条。
「よく見付けたね、悠仁」
「最初は楽しく見てたけどなんか聞き覚えある話が多過ぎて」
「はははっ。こんな馬鹿な事する奴なかなかいないよね」
「五条先生……大丈夫なんですか?」
「情報ハッキングされてる可能性あるからまず情報部で強化してもらわなきゃね。
野薔薇的に最近変わった事は?」
「特に思い当たらないわ」
「ん。狙いは名前だろうけど野薔薇も気をつけて。真希にも伝えなきゃ」
よっこらせ、と立ち上がる五条。
思いの外ちゃんとした大人の教師らしさが見られ感心する三人。
「アンタ、教師だったのね」
「わりとまともだ」
「キミら失礼じゃない?」
「俺ら五条先生の事だからこの"イッチ"を追いつめてボッコボコにするんだと思ってた」
「やだなぁ、悠仁。
殺さないけど生きてきた事後悔させつつ2度と社会復帰なんか出来ないよう精神的に追いつめてコイツの記憶から名前の記憶は勿論生徒の記憶も飛ぶまで洗脳しパソコンなんか弄れないよう一本一本指粉々にへし折ってから僕らの目の前に2度と現れないようにするつもりだよ?」
「「「…………ん?」」」
「ん?」
きょるん☆とお茶目な雰囲気を醸し出しているが……聞き間違いだろうか?
「五条先生?今なんて?」
「要約するとぶっ潰すかな?」
「そんな穏やかな内容じゃなかったでしょ」
「僕の可愛い生徒の情報を悪用されたらたまったもんじゃないからね」
「本音は?」
「僕でも知らない情報ドヤ顔で語って名前の全てを理解した気でいやがるのが腹立つ」
禍々しい様子の五条にビクリとする1年トリオ。
「さぁーて……どうしてやろうか」
悪魔だ!ここに悪魔がいるっ!!
"イッチ"探しは五条の圧と権力で早急に解析された。
ハッキングされてる形跡は見られなかったものの、五条の圧で生徒の情報が漏れる事の無いよう厳重注意というオメーらわかってるよな?と恐怖政治により情報担当は己の知識を振り絞ってとにかく強化しまくった。
めちゃくちゃ有能な伊地知は僅かなハッキングの痕跡まで突き止め、そこから逆探知まで行い犯人を突き止めるまで僅か1日。
伊地知さんはげっそり痩せた。
臨時緊急会議と召集されたのは生徒と五条と伊地知と硝子。
現時点でもホラーチャンネルでは昔の情報から昨日の情報が飛び交っていて一目見ようと水族館に行く者まで現れている。
「……以上の報告となります」
「流石伊地知」
「それで、あの」
「何」
「この"イッチ"という男の居場所はまだ特定出来ていないんです」
「そんな事か」
「え?」
「簡単だよ。名前が狙われているなら名前を囮に使う」
「そんなっ!?何かあっては!!」
「何かする勇気が無いから厄介なんだよ。
遠目から見守って10年もコソコソしてる意気地無しだよ?今さら行動する勇気なんかねーよ」
「だとしてもお一人では…」
「僕1人で囮なんて言ってないよ?」
って事で付き合ってくれるよね?と視線を向けた先は釘崎と真希の姿。
「胸糞悪ィな」
「私と真希さんがボディーガードって事ね」
「普通に買い物してきてよ。
勿論真希と野薔薇の好きな物を買っていいよ。支払いは僕がやるし」
「乗った」
「別にいらねーよ」
「僕の可愛い名前の為に協力してくれるんだから遠慮なんかいらないよ?」
「だからだよ。
私らにとっても名前は他人じゃねぇ。
アイツから笑顔を奪う糞野郎は私が捻り潰す」
「真希さん私も打ち抜くお手伝いします」
「ありがとね、真希、野薔薇。
けど今回は気付けなかった僕の落ち度でもあるから二人は普通に名前とのお出かけ楽しんでよ。あ、領収書は僕に渡してね。後でお金渡すから」
「悟が気付かなかったとか相手は随分臆病というか慎重なんだな」
「僕の家に引っ越しする時に一掃したと思ったんだけどなぁ」
「昆布」
「ストーカー初めてじゃないんだよ。
沖縄居たときもこっち戻って少しの間一人暮らししてた時も」
はぁ、とため息つく五条。
「沖縄ではクローゼットに見知らぬ男が潜んでたからボッコボコにしたし」
「は!?こわっ!!」
「戻って来てからは何か毎回物が動いてる気がするけど呪霊のせいかなーとか言ってたから
まさかと思って盗聴機やカメラ探したら普通に出てきたし」
「名前さんって厄介ホイホイですね」
「寝静まった後にナイフ持って乗り込んで来た奴もいたなぁ」
「……よく無事に生きてたわね、あの人」
「だから僕の家に引っ越しさせたんだよ」
ほっといたら近々この子死ぬ、と思ったよ。
名前本人が気付いていないからこそ無事だったのか、男が出来たから周りが暴走したのかはわからないが……五条と付き合ってからは過激派ばっかりだった。
「粗方一掃したからもう大丈夫だと判断したのが間違いだったね」
「他の奴はどーすんだ?」
「棘、悠仁、恵はさらに離れた位置から名前と野薔薇と真希の監視と不審人物がいないか捜索。
パンダと伊地知はチャンネル担当」
くれぐれも名前に気付かれないで、と話す五条。
気付かれた瞬間この"イッチ"まで気付き雲隠れされる方が厄介だ。
「いつやるんだ?」
「任務が無いメンバーで2〜3日名前の監視かな。チャンネル確認しながら動けば何度も現れる不審な奴が絶対にいるはずだから」
「名前さんの休みの日に誘った方がいい?」
「早出の時は帰り早いからその日に買い物誘ったら?」
「聞いてみるわ」
野薔薇がそれっぽく誘えばノリノリで週末は早出だと返ってきた。
週末なら幾日か余裕があるので目星をつける監視も出来る。
「さあ、獲物を狩りに行こうか」
コッソリと呪術師達が本人の知らぬところで動き出した。
パンダは外出出来ないし目立つ為、チャンネルのチェック係となり、各々が変装して距離を置きながら怪しい人物を探る。
そんな生徒達の活躍により何人かの候補が絞れた。
「むしろ何で何人かいるんだよ」
「普通に怖いわ」
女子としてドン引く釘崎と真希。
下手すりゃ"イッチ"以外のストーカー候補まで見付けてしまう己の優秀さを褒めるべきか……。
〜当日〜
何も知らない名前が楽しそうに真希と野薔薇と歩く。
三人がギリギリ視界に入る位置から伏黒、虎杖、狗巻、五条が目的の人物を探す。
「五条先生、居たよ」
「こっちも違う奴見付けました」
「しゃけ」
まさかのストーカー大集合。
呪霊だけじゃなく犯罪者までホイホイするとかどんな特典だよ、と笑ってしまう。
名前達から程よく距離を置いてつけているらしい。
「それぞれ追って」
ーーーどうしてやろうか?
ニヤリと笑う五条。
そしてそんな五条を乗せている伊地知はドキドキ。
……どうか、自分に飛び火してきませんように。
「明太子」
狗巻から連絡が入った。
どうやら狗巻が追っている人物が名前達へと接近中らしい。
真希と野薔薇へ手短に連絡。
ーーー接近中。
それに静かに反応した真希と野薔薇。
名前は何も知らず二人にどうした?顔をしかめて……生理?と聞いて頭を叩かれていた。
そこへ遭遇した不審者。
「あの……」
「「!!」」
「?」
「ファンです!!握手してください!!」
「「「は?」」」
不審者じゃなくファンだった。
どうやらチャンネルで知り、あれ?そーいや昔助けてもらった記憶があって……貴方でしたか!!となり今もあの時の貴方は輝いていた僕のヒーローです!!と早口で話す男。
よくわかってない名前は宇宙猫状態。
「あの時は本当にありがとうございました!!」
「ん?誰かと勘違いしてない?」
「貴方です!!!!」
「んん?」
「僕、貴方に憧れて虐めっ子の虐めに負けないよう武術を習い、来月世界大会に出場するんです!!貴方があの時僕に希望を見せてくれたから!!僕は世界と戦います!!」
「ん?あー……頑張って?」
「ありがとうございました!僕の希望の星!!
貴方に勝利を!!」
爽やかにいなくなった男。
え?何?と真希と野薔薇と三人で呆然。
勿論名前の記憶になどない男らしく、アイツ誰?これはドッキリ?と看板を探す状態。
狗巻の担当はただの名前に救われたファンだった。
「俺の方も動きました」
伏黒の担当が動き出したらしい。
今はカフェで楽しくお茶をする三人。
そこへ格好つけて現れた不審者。
「やぁ!久しぶりだね」
「……」
「まさかこんなところで会うなんて」
「………」
「これも運命かな?」
完全に名前に話しかけているのにフルシカトな名前。
あれ?知り合い……じゃないの?またさっきのパターン?と真希と野薔薇が困惑している。
「相変わらず照れ屋なのかな?」
「………」
「僕はあの日、君と別れた日から己を磨き……ついに君よりも最高の彼女を探し出せた!!」
「オイ、コイツ語り出したぞ」
「目障りだから殴ります?」
「どうかした?二人とも」
目の前の男を無視出来る名前って逆に凄いね!!
しかも無視されてるのに男も男でペラペラ話して真希と野薔薇のストレスがやばそうだよ!!
「どうだ!!僕の彼女は凄いだろう?名前さん!」
「はいはい」
「誰だよコイツ」
「学生時代の名前さんの彼氏さ!!」
「趣味悪いわね」
「僕の名はマサオ!!」
※思い出せない方は通行人第一部【幼馴染が可愛いんだよね】を見てみよう!!
「今の僕はあの時の彼より美しい!!
まぁ、君がどーーーしても、と言うのなら僕の2番目の」
「マサオくん、悪いね。
今の悟も君の数億倍カッコイイよ」
「そうね。(見た目だけは)アンタよりずっと上ね」
「だな。(中身クズだが)テメーよりはマシだ」
「それにね、私。
2番も3番も嫌なの。
悟の1番以外はいらないからお呼びじゃないよ」
にっこり笑って手を振る名前。
その言葉にハッとしたマサオ。
「………すまない、名前さん。
僕は己を見失っていたようだ……今までの事は忘れてくれ!」
「何だコイツ」
「僕は真実の愛に目を覚まし、エミリだけを愛すると決めたんだ!!」
「はいはい、お幸せに」
「君に出会えてまた一つ、エミリの魅力に気付けたよ!ありがとう!また!」
爽やかにいなくなったマサオ。
「「何アレ?」」
「ただの馬鹿」
定期的に名前の元を訪れ、彼女自慢や自分の自慢をして居なくなっていく。
ちなみに元カレでもなくただの勘違いだと二人に説明。
「名前さんって本当変なの寄ってくるわよね」
釘崎の呆れた声。
どうやら伏黒の担当も外れだったらしい。
残るは虎杖の不審者だが、時間を気にしながら三人の後をつけ回し、夕方になると特に接触無く帰ってしまった。
一応伏黒が虎杖と合流し、不審者の後をつける。
狗巻は女子三人の護衛だ。
何の変哲も無いマンションに戻った不審者。
「気のせいだったのかな?」
「……いや、当たりだ」
険しい表情で不審者の部屋番号を確認する伏黒。外に出てマンションを見上げればただの10階建てのマンションだ。
「伏黒?」
「虎杖は五条先生の家行ったことあるか」
「うん」
「あそこ、誰のマンションだと思う?」
「んー?あ!名前姉の住んで………え」
「望遠レンズでも持ってるなら丸見えだな」
伏黒の指差すマンション。
そこは虎杖も覚えがあった。
伏黒が五条へと連絡を入れるとそんなに待たずに五条を乗せた黒塗りの車が一台。
「うわ……こんな目と鼻の先かよ」
「どうします?」
「勿論カチコミ」
「え?まじで?」
「マジマジ。悠仁も恵も行く?」
五条の笑っているのに笑っていない様子に伏黒は自分で止められるかわからないが、この人に任せちゃいけないと思った。
「虎杖、部屋に証拠あったら即効男を取り押さえろ」
「なんで?」
「五条先生が犯罪者になっていいなら動くな」
「わかった。俺がやる」
お互い五条の様子にヒヤヒヤしながら目的の部屋へ。わざわざインターフォンの視界を閉ざし、出て来るのを待つ。鍵を開けて出て来た男はキョロキョロとしているのをいいことに、五条はドアの隙間に靴を挟んだ。
「ちょーーっとお話いいかな?」
「ヒッ!!」
わかる。
その悲鳴わかる。
しかも対応がヤクザのやり方。
そりゃ怖いよな……と伏黒は遠い目をした。
「な、なんですか……」
「キミホラーチャンネルって知ってる?」
「えっ?」
「その"イッチ"って男を探しているんだけどさぁ」
「何の理由があって僕に」
「キミさ、高校の時名前の年下の学年だよね。たまたま、にしてはよく名前の職場や名前の周りをつけ回しているね?」
「………足どけてください」
「キミがイッチじゃない証拠見せてよ」
「証拠も何も僕は関係ありませんよね?」
「五条先生」
これ、と伏黒が差し出したのは一枚の写真。
カメラと視線が合っていないが……名前がベランダで薄着で涼んでいる姿。
「他にもありますね。隠し撮り」
「!?返せっ!!」
「返せ?おかしいね?コレはキミのだという証拠は?」
「僕のだ!!!僕のっ」
「おにーさん、駄目だって」
写真に手を伸ばす男。虎杖が男の腕を掴む。
ちなみに写真は伏黒が玉犬に持ってこさせた。
虎杖に抑えられながらフーフーと息荒くなる男に対し、五条は家の中へ。
「うわぁ」
壁一面びっしりと貼られた写真。
学生の頃から最近のものまで。
「駄目だよ、こーゆーのって」
ーーー愛ほど歪んだ呪いは無い。
この部屋に溜まったどす黒い男の負の感情。
五条が部屋に踏み入れたことにより虎杖を振り切り五条へと襲いかかる。
しかし、五条へと拳が届く前に虎杖が床へ押さえつけた。
それでも尚、五条へと向かおうとする男。
「オッ、マエが!!!
オマエが彼女を誑かした!!オマエが彼女を僕から奪った!!彼女はオマエなんかと出会わない方が幸せになれた!!なんでオマエのせいで彼女は何度も何度も苦しまなきゃいけなかった?なんでオマエの事を想って何度も違う男に?オマエなんかを好きになったせいで彼女は不幸になっていく!!彼女が諦めかけたというのにオマエが彼女を迎えに行くから!!!」
男の負の感情に伴い部屋に溜まった空気が変わっていく。生き物のように形を成そうとする。
「!!」
「五条先生」
「ん、平気平気」
呪いが生まれる。
伏黒も虎杖も空気の変わった部屋にいつでも動けるように……と思っていたが、今回の騒動で1番怒っているのは誰か、を忘れかけていた。
「あのさ」
黒い塊が一瞬で弾ける。
濁った空気がすぐに散り散りになる。
「オマエが名前を語るな」
「っ!!」
「彼女は僕のだよ」
ーーー今も、昔もね。
写真を手に取り唇を寄せる。
男に見せつけるように笑う五条に男は怒りで顔を赤くする。
「………あ」
「どうかしたか?虎杖」
「駄目。伏黒も五条先生も駄目。見ちゃ駄目」
アセアセと、男を抑えながらも何かの写真を隠した虎杖。顔が真っ赤だ。
隠されると見たくなるし、警察に突き出すなら証拠は多い方がいい……ということで
「玉犬」
「ちょっ!!!伏黒!!ほんっとに駄目だって!!」
「良くやった」
「俺が動けないからって!!伏黒、オマエが五条先生どーにかしてよ!!」
「何を………うわ」
「なになに〜………は?」
玉犬で奪った写真を見て固まり伏黒。
覗き込んだ五条は地を這うような低い声を出す。
「コイツ殺さない程度ならやってもいいよね?」
「気持ちはわかりますがやめてください」
「顔面の骨砕くだけだから悠仁、そのまま抑えといて」
「先生ストップ!!目がヤバイって!!」
「もしもし?警察ですか?」
「伏黒!!早く!!早く警察の人来てもらって!!!」
なんやかんやありまして……
警察が来るまで五条の殺意の籠ったアイアンクローを受けた男は気絶した。
そしてストーカーの証拠……は、この部屋を見てもらえば一発だろうとそのままにしておいたが、見渡すだけでも気持ちが悪い。
名前が使用したゴミを保管していたり、名前があまり気にしないような無くしたか落としたかもと言っていた私物があったり……
探せばまだまだ出てきそうな数々の品に伏黒も虎杖も青ざめる。
警察が来てからは事情説明を。
中に入って警察すらどん引く部屋に言い逃れは出来ない。
お縄となった"イッチ"
「……世の中の闇を見た」
「あれは特殊だろ」
どっと疲れた濃い1日となった。
チャンネルを見てみれば、自分達と同じように気づいた人の発言でドン引く観覧者達。
「お疲れ、恵、悠仁」
「これ、どうします?」
「んー。僕が完結にまとめておくよ」
「スレ残り少ないよ?」
「間に合うさ」
伊地知の運転で学校に戻る間にポチポチと打っていく五条。
終わり行く物語に虎杖や伏黒も見守っていたのだが……
「「え」」
「……懲りてないのかな?」
1000に残された"イッチ"の存在。
本人かどうかはわらないが……
「僕から名前を奪えるなら奪ってみてよ」
ーー容赦はしないよ。
にっこりと笑う五条。
五条先生格好いいね!なんて笑う虎杖。
しかし伏黒は青ざめる。
五条から奪う?それってどんな猛者?死ぬ覚悟は出来ているんだろうか?と考えてしまう。
こうして"通行人ストーカー事件"は幕を降ろした。
「あぁ、残念。
見つかっちゃったか」
スレッドを見て笑う。
「仕方ないね。所詮一般人か」
「なに?何か面白いことでもあった?」
「使えない駒が減っただけさ」
「駒?ゲームでもしてた?」
タンタンッとスマホを弄りながら
とある暗闇で笑う。
「そうだね。これはゲーム」
「面白い?」
「キミもきっと気にいるよ」
最高の切り札を手にするため……
彼女の存在は重要だから、ね。
ーーー彼女はボクノ
スレッドは終了しました。
あとがき
リクエスト「悟が知ってイッチを捕まえるまで」
前回の五万の時の呪術ちゃんねるの舞台裏?(笑)ですね。
長々とお待たせしてしまいすいませんでした!
書いては消えてしまい……。
最後の人たちはどなたでしょうかねー?(すっとぼけ)
「さっきから何唸ってんのよ。便秘か」
「快便でした。いや、あのさぁ」
「オマエのウンコ事情とかいらねーよ。何だ」
「名前姉って学生時代から変な人に付きまとわれてたりする?」
虎杖の言葉に釘崎と伏黒は頭を傾げた。
「俺さ、死んでるって事になってた間暇だったから何か面白い記事無いかなーって2チャンネルって言うの?ホラーチャンネルとか色々見ててさ」
「本当はスケベなとこばっか見てたんじゃないの?」
「違いますぅ!!ホラーチャンネルなら呪いの情報も真偽はどうであれ事実になりやすいって伊地知さんも言ってたし」
「確かにな。皆が騒ぎ、恐怖することで呪いは生まれるからな」
「だからさ、見るようになったんだけど……二人もこれ見てよ」
【俺の街】(ヤバい!!)通行人さん【都市伝説】
と題名のついているものを開く。
ズラズラと文字だけ書かれたそれはとある男が恋をし、見てきた女性の話だった。
見えるらしい男は同じ見える存在の女性を気にしていた話。そして女性の奇行。
「名前さんならやりそうよね」
「けど10年も前の話だろ?」
「そうよ。学生の頃に想いを告げられなかった男が女性の事祝福してる内容じゃない」
「10年前の名前さんだとは言いきれないだろ」
「そうなんだけどさぁ……何でこの"イッチ"は10年間の女の人の行動把握してんの?」
「「………は?」」
最初の触りしか見ていなかった二人はゾッとした。
今、何と言ったこの男。
「俺の知る限り、なんか名前姉っぽい内容だから気になって」
「虎杖、そのURS送れ」
「伏黒のパットで大きくして見るわよ」
始めから読み進めていく。
学生服らしき画像……顔を隠されているが、どこか雰囲気は似ている。
「これ、名前さんの高校と同じ制服だぞ」
「何でアンタが知ってんのよ伏黒」
「昔のプリクラ見たことあるからだよ」
「何それ。私も見たい」
「後でデータ渡す。続き読むぞ」
なぜ伏黒はプリクラの写真を持っているのか虎杖は聞かなかった。
聞いたら負けな気がしたから。
今はそれどころじゃないと読み進めれば……彼女の武勇伝の数々。それはチラホラ聞いたことのあるものだった。
そして出てきた"黒い制服の白髪頭の最強の見える祓えるDK"
「……五条先生っぽいな」
「そうね」
「俺の事も書かれてんだよね……
ほら、伏黒と初めて会った日」
「確かにオマエ包含ぶっ飛ばしてたな」
「どんな状況よ」
「だからさ、名前姉って今もこの"イッチ"に付きまとわれてるって事になるよね?」
「……まだ決定的な事が」
「よく読み返したら完全に名前さんだと思うわ。
沖縄に白髪が迎えに行ってハッピーエンドなんて早々いないわよ」
「「だな」」
「五条先生に聞いてくる!!」
走り出した虎杖。
次々に上がっていく情報に何やってんだ名前さんって気持ちとその度補足するように詳しい情報を出す"イッチ"
「コイツよく今まで五条にバレずに居たわね」
「だな」
「五条の事だから虫除けは完璧だと思ってたわ」
「俺もだ」
この"イッチ"終わったな……と既に終わりが見えている釘崎と伏黒。
見付けた虎杖に良くやった!!という気持ちと10年も行動を把握されていた事実にこんなん知りたくなかったと人間の怖さにゾッとする。
「五条先生連れてきた!」
「お疲れ〜。面白い記事あるんだって?」
面白いでは済まされないと思うが……最初の部分にして五条へとパットを渡す伏黒。
最初はあはは、なんて笑って名前みたいな奴いるんだね〜と言っていたのにどんどん口数が減っていき表情も真顔になっていく。
「悠仁、これ僕のスマホに送れる?」
「うん!」
「伊地知に教えてもらったんだっけ?」
「そう。伊地知さんに何か暇潰しになるような事無いかって聞いたら教えてもらったよ。
伊地知さんもたまに呪い関係の噂が大きくなってきたらチェックする程度らしいけど暇潰しになるだろうって」
「………もしもし伊地知?」
すぐに伊地知に電話で確認する五条。
「今すぐ"イッチ"って奴の身元探って」
"え?あの、ですが…"
「一般人が呪術界の情報持ってる時点でどっかから漏れてるか探られてるって事だろ。
少なくともコイツはうちの生徒の情報持ってんぞ」
"すぐに調べます"
「絶対逃すな」
いつもと違う少し低い声で話す五条。
「よく見付けたね、悠仁」
「最初は楽しく見てたけどなんか聞き覚えある話が多過ぎて」
「はははっ。こんな馬鹿な事する奴なかなかいないよね」
「五条先生……大丈夫なんですか?」
「情報ハッキングされてる可能性あるからまず情報部で強化してもらわなきゃね。
野薔薇的に最近変わった事は?」
「特に思い当たらないわ」
「ん。狙いは名前だろうけど野薔薇も気をつけて。真希にも伝えなきゃ」
よっこらせ、と立ち上がる五条。
思いの外ちゃんとした大人の教師らしさが見られ感心する三人。
「アンタ、教師だったのね」
「わりとまともだ」
「キミら失礼じゃない?」
「俺ら五条先生の事だからこの"イッチ"を追いつめてボッコボコにするんだと思ってた」
「やだなぁ、悠仁。
殺さないけど生きてきた事後悔させつつ2度と社会復帰なんか出来ないよう精神的に追いつめてコイツの記憶から名前の記憶は勿論生徒の記憶も飛ぶまで洗脳しパソコンなんか弄れないよう一本一本指粉々にへし折ってから僕らの目の前に2度と現れないようにするつもりだよ?」
「「「…………ん?」」」
「ん?」
きょるん☆とお茶目な雰囲気を醸し出しているが……聞き間違いだろうか?
「五条先生?今なんて?」
「要約するとぶっ潰すかな?」
「そんな穏やかな内容じゃなかったでしょ」
「僕の可愛い生徒の情報を悪用されたらたまったもんじゃないからね」
「本音は?」
「僕でも知らない情報ドヤ顔で語って名前の全てを理解した気でいやがるのが腹立つ」
禍々しい様子の五条にビクリとする1年トリオ。
「さぁーて……どうしてやろうか」
悪魔だ!ここに悪魔がいるっ!!
"イッチ"探しは五条の圧と権力で早急に解析された。
ハッキングされてる形跡は見られなかったものの、五条の圧で生徒の情報が漏れる事の無いよう厳重注意というオメーらわかってるよな?と恐怖政治により情報担当は己の知識を振り絞ってとにかく強化しまくった。
めちゃくちゃ有能な伊地知は僅かなハッキングの痕跡まで突き止め、そこから逆探知まで行い犯人を突き止めるまで僅か1日。
伊地知さんはげっそり痩せた。
臨時緊急会議と召集されたのは生徒と五条と伊地知と硝子。
現時点でもホラーチャンネルでは昔の情報から昨日の情報が飛び交っていて一目見ようと水族館に行く者まで現れている。
「……以上の報告となります」
「流石伊地知」
「それで、あの」
「何」
「この"イッチ"という男の居場所はまだ特定出来ていないんです」
「そんな事か」
「え?」
「簡単だよ。名前が狙われているなら名前を囮に使う」
「そんなっ!?何かあっては!!」
「何かする勇気が無いから厄介なんだよ。
遠目から見守って10年もコソコソしてる意気地無しだよ?今さら行動する勇気なんかねーよ」
「だとしてもお一人では…」
「僕1人で囮なんて言ってないよ?」
って事で付き合ってくれるよね?と視線を向けた先は釘崎と真希の姿。
「胸糞悪ィな」
「私と真希さんがボディーガードって事ね」
「普通に買い物してきてよ。
勿論真希と野薔薇の好きな物を買っていいよ。支払いは僕がやるし」
「乗った」
「別にいらねーよ」
「僕の可愛い名前の為に協力してくれるんだから遠慮なんかいらないよ?」
「だからだよ。
私らにとっても名前は他人じゃねぇ。
アイツから笑顔を奪う糞野郎は私が捻り潰す」
「真希さん私も打ち抜くお手伝いします」
「ありがとね、真希、野薔薇。
けど今回は気付けなかった僕の落ち度でもあるから二人は普通に名前とのお出かけ楽しんでよ。あ、領収書は僕に渡してね。後でお金渡すから」
「悟が気付かなかったとか相手は随分臆病というか慎重なんだな」
「僕の家に引っ越しする時に一掃したと思ったんだけどなぁ」
「昆布」
「ストーカー初めてじゃないんだよ。
沖縄居たときもこっち戻って少しの間一人暮らししてた時も」
はぁ、とため息つく五条。
「沖縄ではクローゼットに見知らぬ男が潜んでたからボッコボコにしたし」
「は!?こわっ!!」
「戻って来てからは何か毎回物が動いてる気がするけど呪霊のせいかなーとか言ってたから
まさかと思って盗聴機やカメラ探したら普通に出てきたし」
「名前さんって厄介ホイホイですね」
「寝静まった後にナイフ持って乗り込んで来た奴もいたなぁ」
「……よく無事に生きてたわね、あの人」
「だから僕の家に引っ越しさせたんだよ」
ほっといたら近々この子死ぬ、と思ったよ。
名前本人が気付いていないからこそ無事だったのか、男が出来たから周りが暴走したのかはわからないが……五条と付き合ってからは過激派ばっかりだった。
「粗方一掃したからもう大丈夫だと判断したのが間違いだったね」
「他の奴はどーすんだ?」
「棘、悠仁、恵はさらに離れた位置から名前と野薔薇と真希の監視と不審人物がいないか捜索。
パンダと伊地知はチャンネル担当」
くれぐれも名前に気付かれないで、と話す五条。
気付かれた瞬間この"イッチ"まで気付き雲隠れされる方が厄介だ。
「いつやるんだ?」
「任務が無いメンバーで2〜3日名前の監視かな。チャンネル確認しながら動けば何度も現れる不審な奴が絶対にいるはずだから」
「名前さんの休みの日に誘った方がいい?」
「早出の時は帰り早いからその日に買い物誘ったら?」
「聞いてみるわ」
野薔薇がそれっぽく誘えばノリノリで週末は早出だと返ってきた。
週末なら幾日か余裕があるので目星をつける監視も出来る。
「さあ、獲物を狩りに行こうか」
コッソリと呪術師達が本人の知らぬところで動き出した。
パンダは外出出来ないし目立つ為、チャンネルのチェック係となり、各々が変装して距離を置きながら怪しい人物を探る。
そんな生徒達の活躍により何人かの候補が絞れた。
「むしろ何で何人かいるんだよ」
「普通に怖いわ」
女子としてドン引く釘崎と真希。
下手すりゃ"イッチ"以外のストーカー候補まで見付けてしまう己の優秀さを褒めるべきか……。
〜当日〜
何も知らない名前が楽しそうに真希と野薔薇と歩く。
三人がギリギリ視界に入る位置から伏黒、虎杖、狗巻、五条が目的の人物を探す。
「五条先生、居たよ」
「こっちも違う奴見付けました」
「しゃけ」
まさかのストーカー大集合。
呪霊だけじゃなく犯罪者までホイホイするとかどんな特典だよ、と笑ってしまう。
名前達から程よく距離を置いてつけているらしい。
「それぞれ追って」
ーーーどうしてやろうか?
ニヤリと笑う五条。
そしてそんな五条を乗せている伊地知はドキドキ。
……どうか、自分に飛び火してきませんように。
「明太子」
狗巻から連絡が入った。
どうやら狗巻が追っている人物が名前達へと接近中らしい。
真希と野薔薇へ手短に連絡。
ーーー接近中。
それに静かに反応した真希と野薔薇。
名前は何も知らず二人にどうした?顔をしかめて……生理?と聞いて頭を叩かれていた。
そこへ遭遇した不審者。
「あの……」
「「!!」」
「?」
「ファンです!!握手してください!!」
「「「は?」」」
不審者じゃなくファンだった。
どうやらチャンネルで知り、あれ?そーいや昔助けてもらった記憶があって……貴方でしたか!!となり今もあの時の貴方は輝いていた僕のヒーローです!!と早口で話す男。
よくわかってない名前は宇宙猫状態。
「あの時は本当にありがとうございました!!」
「ん?誰かと勘違いしてない?」
「貴方です!!!!」
「んん?」
「僕、貴方に憧れて虐めっ子の虐めに負けないよう武術を習い、来月世界大会に出場するんです!!貴方があの時僕に希望を見せてくれたから!!僕は世界と戦います!!」
「ん?あー……頑張って?」
「ありがとうございました!僕の希望の星!!
貴方に勝利を!!」
爽やかにいなくなった男。
え?何?と真希と野薔薇と三人で呆然。
勿論名前の記憶になどない男らしく、アイツ誰?これはドッキリ?と看板を探す状態。
狗巻の担当はただの名前に救われたファンだった。
「俺の方も動きました」
伏黒の担当が動き出したらしい。
今はカフェで楽しくお茶をする三人。
そこへ格好つけて現れた不審者。
「やぁ!久しぶりだね」
「……」
「まさかこんなところで会うなんて」
「………」
「これも運命かな?」
完全に名前に話しかけているのにフルシカトな名前。
あれ?知り合い……じゃないの?またさっきのパターン?と真希と野薔薇が困惑している。
「相変わらず照れ屋なのかな?」
「………」
「僕はあの日、君と別れた日から己を磨き……ついに君よりも最高の彼女を探し出せた!!」
「オイ、コイツ語り出したぞ」
「目障りだから殴ります?」
「どうかした?二人とも」
目の前の男を無視出来る名前って逆に凄いね!!
しかも無視されてるのに男も男でペラペラ話して真希と野薔薇のストレスがやばそうだよ!!
「どうだ!!僕の彼女は凄いだろう?名前さん!」
「はいはい」
「誰だよコイツ」
「学生時代の名前さんの彼氏さ!!」
「趣味悪いわね」
「僕の名はマサオ!!」
※思い出せない方は通行人第一部【幼馴染が可愛いんだよね】を見てみよう!!
「今の僕はあの時の彼より美しい!!
まぁ、君がどーーーしても、と言うのなら僕の2番目の」
「マサオくん、悪いね。
今の悟も君の数億倍カッコイイよ」
「そうね。(見た目だけは)アンタよりずっと上ね」
「だな。(中身クズだが)テメーよりはマシだ」
「それにね、私。
2番も3番も嫌なの。
悟の1番以外はいらないからお呼びじゃないよ」
にっこり笑って手を振る名前。
その言葉にハッとしたマサオ。
「………すまない、名前さん。
僕は己を見失っていたようだ……今までの事は忘れてくれ!」
「何だコイツ」
「僕は真実の愛に目を覚まし、エミリだけを愛すると決めたんだ!!」
「はいはい、お幸せに」
「君に出会えてまた一つ、エミリの魅力に気付けたよ!ありがとう!また!」
爽やかにいなくなったマサオ。
「「何アレ?」」
「ただの馬鹿」
定期的に名前の元を訪れ、彼女自慢や自分の自慢をして居なくなっていく。
ちなみに元カレでもなくただの勘違いだと二人に説明。
「名前さんって本当変なの寄ってくるわよね」
釘崎の呆れた声。
どうやら伏黒の担当も外れだったらしい。
残るは虎杖の不審者だが、時間を気にしながら三人の後をつけ回し、夕方になると特に接触無く帰ってしまった。
一応伏黒が虎杖と合流し、不審者の後をつける。
狗巻は女子三人の護衛だ。
何の変哲も無いマンションに戻った不審者。
「気のせいだったのかな?」
「……いや、当たりだ」
険しい表情で不審者の部屋番号を確認する伏黒。外に出てマンションを見上げればただの10階建てのマンションだ。
「伏黒?」
「虎杖は五条先生の家行ったことあるか」
「うん」
「あそこ、誰のマンションだと思う?」
「んー?あ!名前姉の住んで………え」
「望遠レンズでも持ってるなら丸見えだな」
伏黒の指差すマンション。
そこは虎杖も覚えがあった。
伏黒が五条へと連絡を入れるとそんなに待たずに五条を乗せた黒塗りの車が一台。
「うわ……こんな目と鼻の先かよ」
「どうします?」
「勿論カチコミ」
「え?まじで?」
「マジマジ。悠仁も恵も行く?」
五条の笑っているのに笑っていない様子に伏黒は自分で止められるかわからないが、この人に任せちゃいけないと思った。
「虎杖、部屋に証拠あったら即効男を取り押さえろ」
「なんで?」
「五条先生が犯罪者になっていいなら動くな」
「わかった。俺がやる」
お互い五条の様子にヒヤヒヤしながら目的の部屋へ。わざわざインターフォンの視界を閉ざし、出て来るのを待つ。鍵を開けて出て来た男はキョロキョロとしているのをいいことに、五条はドアの隙間に靴を挟んだ。
「ちょーーっとお話いいかな?」
「ヒッ!!」
わかる。
その悲鳴わかる。
しかも対応がヤクザのやり方。
そりゃ怖いよな……と伏黒は遠い目をした。
「な、なんですか……」
「キミホラーチャンネルって知ってる?」
「えっ?」
「その"イッチ"って男を探しているんだけどさぁ」
「何の理由があって僕に」
「キミさ、高校の時名前の年下の学年だよね。たまたま、にしてはよく名前の職場や名前の周りをつけ回しているね?」
「………足どけてください」
「キミがイッチじゃない証拠見せてよ」
「証拠も何も僕は関係ありませんよね?」
「五条先生」
これ、と伏黒が差し出したのは一枚の写真。
カメラと視線が合っていないが……名前がベランダで薄着で涼んでいる姿。
「他にもありますね。隠し撮り」
「!?返せっ!!」
「返せ?おかしいね?コレはキミのだという証拠は?」
「僕のだ!!!僕のっ」
「おにーさん、駄目だって」
写真に手を伸ばす男。虎杖が男の腕を掴む。
ちなみに写真は伏黒が玉犬に持ってこさせた。
虎杖に抑えられながらフーフーと息荒くなる男に対し、五条は家の中へ。
「うわぁ」
壁一面びっしりと貼られた写真。
学生の頃から最近のものまで。
「駄目だよ、こーゆーのって」
ーーー愛ほど歪んだ呪いは無い。
この部屋に溜まったどす黒い男の負の感情。
五条が部屋に踏み入れたことにより虎杖を振り切り五条へと襲いかかる。
しかし、五条へと拳が届く前に虎杖が床へ押さえつけた。
それでも尚、五条へと向かおうとする男。
「オッ、マエが!!!
オマエが彼女を誑かした!!オマエが彼女を僕から奪った!!彼女はオマエなんかと出会わない方が幸せになれた!!なんでオマエのせいで彼女は何度も何度も苦しまなきゃいけなかった?なんでオマエの事を想って何度も違う男に?オマエなんかを好きになったせいで彼女は不幸になっていく!!彼女が諦めかけたというのにオマエが彼女を迎えに行くから!!!」
男の負の感情に伴い部屋に溜まった空気が変わっていく。生き物のように形を成そうとする。
「!!」
「五条先生」
「ん、平気平気」
呪いが生まれる。
伏黒も虎杖も空気の変わった部屋にいつでも動けるように……と思っていたが、今回の騒動で1番怒っているのは誰か、を忘れかけていた。
「あのさ」
黒い塊が一瞬で弾ける。
濁った空気がすぐに散り散りになる。
「オマエが名前を語るな」
「っ!!」
「彼女は僕のだよ」
ーーー今も、昔もね。
写真を手に取り唇を寄せる。
男に見せつけるように笑う五条に男は怒りで顔を赤くする。
「………あ」
「どうかしたか?虎杖」
「駄目。伏黒も五条先生も駄目。見ちゃ駄目」
アセアセと、男を抑えながらも何かの写真を隠した虎杖。顔が真っ赤だ。
隠されると見たくなるし、警察に突き出すなら証拠は多い方がいい……ということで
「玉犬」
「ちょっ!!!伏黒!!ほんっとに駄目だって!!」
「良くやった」
「俺が動けないからって!!伏黒、オマエが五条先生どーにかしてよ!!」
「何を………うわ」
「なになに〜………は?」
玉犬で奪った写真を見て固まり伏黒。
覗き込んだ五条は地を這うような低い声を出す。
「コイツ殺さない程度ならやってもいいよね?」
「気持ちはわかりますがやめてください」
「顔面の骨砕くだけだから悠仁、そのまま抑えといて」
「先生ストップ!!目がヤバイって!!」
「もしもし?警察ですか?」
「伏黒!!早く!!早く警察の人来てもらって!!!」
なんやかんやありまして……
警察が来るまで五条の殺意の籠ったアイアンクローを受けた男は気絶した。
そしてストーカーの証拠……は、この部屋を見てもらえば一発だろうとそのままにしておいたが、見渡すだけでも気持ちが悪い。
名前が使用したゴミを保管していたり、名前があまり気にしないような無くしたか落としたかもと言っていた私物があったり……
探せばまだまだ出てきそうな数々の品に伏黒も虎杖も青ざめる。
警察が来てからは事情説明を。
中に入って警察すらどん引く部屋に言い逃れは出来ない。
お縄となった"イッチ"
「……世の中の闇を見た」
「あれは特殊だろ」
どっと疲れた濃い1日となった。
チャンネルを見てみれば、自分達と同じように気づいた人の発言でドン引く観覧者達。
「お疲れ、恵、悠仁」
「これ、どうします?」
「んー。僕が完結にまとめておくよ」
「スレ残り少ないよ?」
「間に合うさ」
伊地知の運転で学校に戻る間にポチポチと打っていく五条。
終わり行く物語に虎杖や伏黒も見守っていたのだが……
「「え」」
「……懲りてないのかな?」
1000に残された"イッチ"の存在。
本人かどうかはわらないが……
「僕から名前を奪えるなら奪ってみてよ」
ーー容赦はしないよ。
にっこりと笑う五条。
五条先生格好いいね!なんて笑う虎杖。
しかし伏黒は青ざめる。
五条から奪う?それってどんな猛者?死ぬ覚悟は出来ているんだろうか?と考えてしまう。
こうして"通行人ストーカー事件"は幕を降ろした。
「あぁ、残念。
見つかっちゃったか」
スレッドを見て笑う。
「仕方ないね。所詮一般人か」
「なに?何か面白いことでもあった?」
「使えない駒が減っただけさ」
「駒?ゲームでもしてた?」
タンタンッとスマホを弄りながら
とある暗闇で笑う。
「そうだね。これはゲーム」
「面白い?」
「キミもきっと気にいるよ」
最高の切り札を手にするため……
彼女の存在は重要だから、ね。
ーーー彼女はボクノ
スレッドは終了しました。
あとがき
リクエスト「悟が知ってイッチを捕まえるまで」
前回の五万の時の呪術ちゃんねるの舞台裏?(笑)ですね。
長々とお待たせしてしまいすいませんでした!
書いては消えてしまい……。
最後の人たちはどなたでしょうかねー?(すっとぼけ)