十万企画
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最近見られている。
自意識過剰かもしれないが視線を感じる。
私の一挙一動を監視しているような……厭らしいものとは違うような……
視線を追おうにも上手くはぐらかされてしまい一体何に私は狙われているんだと聞きたくなる。
「ねぇ、悟」
「なに?」
「最近誰かを私のとこに派遣した覚えは?」
「ないけど何で?」
「デスヨネー」
出来れば呪術関連であってほしかった。
何かやらかした覚えはないが、呪術関連ならきっと悟が手配したんだねって安心出来たのに。
長々と前置きしましたが、ガックリ肩を落とす通行人名前です。
「悟じゃないとしたらただただ恐怖なんだが?」
「何よ?何かあったの?」
「五条先生また何かしたのー?」
「早く吐いた方がいいですよ」
「待って。僕が何かしたって前提止めて」
はぁ、とため息をつく。
悟じゃないなら、という恐怖に頭を悟に押し付ければ何かしらあったのだと理解の早い子供達が心配そうに見てくる。
「なしたの?言って」
「えー」
「言わなきゃ生徒の目の前だけど言わせるよ?」
「最近さぁー」
顔がマジだった。
これは良くない……!!と切り出したのだが
「自意識過剰かもしれないが見られている気がするんだよね」
「「「「は?」」」」
「女の敵ね」
「俺殴る?」
「虎杖、釘崎、物理はやめろ。証拠が残る」
「怖い怖い怖い。やだーほら、過激派が出てくるじゃーん!!」
「駄目だよ三人共。
殺るなら後悔させてから殺らなきゃ」
「何ってことを指導してんの!?」
過激派には言葉が通じないらしい。
「僕の名前に手を出そうなんていい度胸じゃん」
「そんな感じじゃないんだよなー」
「ストーカーにそんなもこんなも無いわよ。もっと危機感どうにかしなさいよ」
「ほんっと、見られているだけなの」
「だからそれが問題だっつってんですよ」
「一挙一動、私の癖から仕草。身体の動かし方……観察されてるから凄い違和感があるんだよ」
悪意がないからこそ不思議で仕方ない。
私を観察してどうしたいのか。
「私ってそんな珍獣かな?それとも真似したくなるほどの美人?」
「「それは無い」」
「めぐみん、野薔薇ちゃん泣くよ?」
「じゃあその人は名前姉を厭らしく見ていると言うよりは、名前姉に成り代わろうとしてる?」
「予想外の動きしかしない生き物の観察日記じゃないっスか?」
「名前さんに成り代わるなんて物好きかアホか頭の一部分が重症よ」
「生徒にどんな教育してんの悟?」
「事実だから仕方ないよ」
そこまで酷くないやい!!と拗ねて泣いてしまう。
「けど虎杖の線でいくと狙われているのは名前さんじゃなくて五条なんじゃ?」
「僕?」
「アンタ最近女性助けたりとかは?」
「んー記憶の中では特に無いよ」
「じゃあ勝手に一目惚れした感じかしら?」
「名探偵野薔薇ちゃんの名推理をお願いいたします」
「そうね……」
街中を歩く五条(サングラス姿)
その横顔に惚れてしまったモブ……そうね、B子とするわ。B子は電灯に群がる蛾のように五条に引き寄せられ想いを膨らませていく。
しかし!!五条には既に恋仲の名前さんが!!
名前さんに嫉妬の炎を燃やしたものの、2人の隙間無い愛情にやがて諦めようかとするが……ふと、思い付いた。
「『そうよ、私が彼女になればいいんだわ!彼女になれば私も彼に愛される……!!』
そうしてB子の名前さん成り代わり計画が始まりました」
「「こわっ!!!」」
「釘崎怖いって!!それ推理なの?まじのやつなの?」
「この場合、名前さんは用済みとなると消されるわ」
「物騒!!物騒だよ!?」
「電灯扱いされたことにツッコむべき?
それとも犯人が蛾扱いなのをツッコむべき?」
「言っても聞いてないかと」
野薔薇ちゃん劇場は物騒でした。
「名前さん、似たような格好の女見つけたら気を付けた方がいいわよ」
「え?なんで?」
「既に試しているかもよ?貴女に成り代わろうとした女が……」
「そんな都合よく現れるわけ……」
ピロンッ、と鳴ったスマホ。
学生時代の友人からだ。
どうしたんだと画像付きの内容を読んで……ゾッとした。
「…………」
「どうかしたんですか?」
「……めぐみん」
めちゃくちゃ青ざめる私。
めぐみんは失礼します、とスマホの中を見て驚いた。
"今アンタとすれ違ったけど米花にいた?"
写真は確かに私っぽい。
セクシーめに背中の開いた服に、タイトなスカート。私はこんな服持っていないし、着る勇気も無いがなぜか似合っている大人女性コーデの姿だったり
だが、現時点で私は米花などにはいない。
スマホを覗き込む野薔薇ちゃんも悠仁くんも青ざめている。
「「うわぁ……」」
「我が推理ながら引いたわ」
「釘崎名探偵なれるよ」
「……この人、名前さんじゃないっスね」
「だねー」
「いや、今ここに居るんだから違うに決まってるじゃない」
「名前さんならもう少し髪が長くて足が短いです」
「そーだね。あと胸ももーちょい盛っていいし、肩幅ももう少し華奢だよ」
めぐみんと悟の考察に悠仁くんと野薔薇ちゃんと共に引く。
「「「うわぁ……」」」
「どうかした?」
「どうもこうも気持ち悪いわよアンタ達」
「普通写真でそこまでわかる!?」
「わかるだろ」
「だってこの人どう見ても男だよ?」
「「「は?」」」
悟に言われてまじまじとよく見るが……
「野薔薇ちゃんわかる?」
「写真じゃわからないわよ」
「うーん……言われたら何となく?姿勢もこの人のが良さそう」
本人はわからないのになぜわかるんだ男子達。
友人には私じゃない、と送ったらだよね、と返ってきた。
"突撃したら挙動不審で狼狽えてた。
アンタなら絶対にしない反応だった
……何に巻き込まれてんの?(笑)"
(笑)に友人らしさが滲み出ている。
とりあえず友人にはまた会ったら教えて欲しいと送り、私も何に巻き込まれているのかわからないから怖いと送った。
"あと触った感じ男だったよ。
まじで何に巻き込まれててんの?(笑)"
友人ンンンンンンッ!?
突撃って何をしたんだ!?
"胸揉んだがアレは作り物だったね!"
コイツ何してんの?
見知らぬ私に何でセクハラぶっかましてんの?
悟は内容見て笑っているし、子供らは困っている。
「友人は選んだら?」
「ちょっといきなりセクハラはどうかと思う」
「名前さんの友人らしいですね」
「何も言えない……」
面白そうだから、という理由で私は今後も追跡するわー、と返ってきた。
ありがたいが複雑だ。
「よし、じゃあ行くわよ」
ビシッと決めた野薔薇ちゃんが立ち上がる。
「どこに?」
「決まってるじゃない。この偽物が一体何をしたいのかボコ……確認しによ」
「物騒だよ野薔薇ちゃん」
「そうだよな!こんな面白そ……こんな不振人物名前姉の気が休まらねぇよな!!」
「ちょい待て悠仁くん。今なんて?」
「見つけ次第理由を吐かせて殴ります」
「めぐみんはもうちょっとオブラートに包もう!?」
「そうと決まれば皆!課外授業の時間だよ」
「嘘でしょ!?」
おー!!と乗り気な生徒達。
「ってことで、やってきたのはいいのだが米花町………」
「手を上げろ!!!」
なぜか警察に包囲された。
「お前がキッドだろ!?」
「すいませんがどんな状況?」
「今すぐその面剥がしてやるからな!!」
「いや、あのお願いだから聞いて?」
「総員、かかれ!!!」
「聞いて!?」
わーーーと、大量の警察官が押し寄せてくるが
「ちょっとアンタ達」
「俺らの名前姉に」
「触るな」
体術のみで怪我をさせずにポイポイと警察をぶん投げる一年生達。
わー、心強い。
「何だ貴様ら!?貴様らもキッドの仲間か!!」
「中森警部待って!!そのお姉さんは本物だよ!!」
「なにぃ!?」
どこからともなくひょっこりと現れた毎度お馴染み探偵ボーイ。
「何よこの子供」
「お姉さん!!いつこの街に来たの?」
「今、かな……?」
「お昼ぐらいにはどこに!?」
「子供達と学校にいたよ?東京の」
「ほらね!お姉さんは姿を利用されていただけだよ!!」
何やら少年が必死に頑張ってくれたお陰で誤解?は解けた。
少年の話によると、私の姿をした女がとある美術館で目撃され、宝石に興味を示していたらしく防犯カメラに映っていたらしい。
「なんで美術館で目撃されただけで私逮捕されそうになってんの?」
「今夜キッドが宝石を狙ってくるからだよ」
「キッド?」
「え?お姉さん……知らないの?」
子供らや悟を見たら、頭を傾げる。
あの……え?そんなに有名?と少年を見たら頭を抱えられた。
「ビックジュエルを狙う怪盗キッドだよ!」
「「ビックジュエル……」」
「怪盗なんてこの時代にいるんだな!」
「ただの泥棒だろ」
「何か面白くなってきたね」
「怪盗キッドは変装術とマジックで宝石を奪い去るんだ」
「で、私の姿が使われたと?」
「うん!
だから美術館近くに現れたお姉さんを警察の人が捕まえようとしたんだ……」
なんっっって迷惑な怪盗だ!!!
「ちなみに私、今からおうちに帰ったり……」
「お姉さんの姿をして一度現れている以上、難しいかな」
「どうしよう?」
「ねーねー。それさぁ、僕らも勿論一緒に居てもいいよね?
コソ泥が僕の可愛い可愛い恋人の姿を使って悪事を働いているなら、恋人の僕が守らなきゃ」
「悟くーん、本音は?」
「自分の手で捕まえてボコりたい」
逃げて!!!怪盗キッドまじ逃げて!!!
絶対コイツに捕まったらあんたの人生終わりだよ!!
「だけど……」
「いいじゃないか!!」
「次郎吉おじさん!!」
なんか金持ちって感じのおじいさまが……。
「恋人の無実の為にキッドを捕らえるなんて泣ける話じゃないか!!
よかろう。儂が許可する!!」
「僕の生徒もいいですよね?」
「勿論!許可しよう」
「あ、ちなみにそのコソ泥捕まえた場合は?
殴ってから引き渡せばいい?」
「捕まえられたならな」
豪快に笑っていなくなったおじいさん。
なんか……大変なことになってない?
「って事でみんな」
「うす」「おう」「はい」
「今回の課外授業はコソ泥を捕まえてボコります」
「「「了解」」」
「まっっっって!!!」
絶対それアカン!!
このメンバー見たらわかる……今まで捕まらずに逃げて何度も犯行してきたキッドも絶対捕まって殴られるやつ!!!
「私がキッドやその協力者じゃないって証明されればいいんだから……
君達、呪い相手に無双してんだから人間相手に本気になるの良くないって」
「だから捕まえて吐かせたら解決じゃない」
「ボコりますけど」
「君達私のこと大好きだね!!!!ありがとう!!!」
「うん。名前姉好き」
無垢な悠仁くんにきゅんときた。
「じゃあ、こうしよう」
「どうぞ、悟くん」
「僕が名前に付き添う。三人は呪霊を祓いながらキッドの捕獲。
僕なら絶対名前を見間違えないし、僕がいるのにすり変わるなんてさせない。
三人は実績を積める。この街は呪霊だらけだからね」
「確かに」
「って事で作戦は三人で考えな」
なぜかやる気に溢れている三人。
「悟、一体何でこんなやる気なの?」
「普通に僕の名前が犯人扱いは腹立つし」
「ふむふむ」
「彼らも大好きな名前を利用されて腹立ってるし」
「ふむ………その心は?」
「怪盗なんて珍しい生き物を捕獲するってちょっとワクワクするよね」
「だと思ったよ!!!!」
どうやら少年の話を聞いて呑気にYouTubeでキッドを確認したらしい。
その鮮やかかつ豪快な手口。
大衆を虜にさせるマジック。
絶対に捕まらない今世紀に現れた怪盗。
「キッド終わったな」
一度も出会ったことないが、見知らぬ友人にセクハラされ、ヤベェ呪術師の卵(成長無限大)に追われることになり、最強に目をつけられた怪盗………。
なぜ私の姿を選んだんだ……。
君の計画はそこから間違えたな、と同情してしまう。
そんなこんなで夜
悟と刑事さんとおじいさまと少年と待機してモニターを見ていたら突然宝石のある部屋が白い煙でいっぱいに。
しかし、中森警部はすぐさま巨大扇風機を始動。
いつもこんな攻防してんの?この人達。
煙の中からバサリッ、と白いコートが。
宝石のケースの上に立つのは紳士のような出で立ちの白いスーツにシルクハットにマント。
「こんばんは、警察の皆さん」
「キッドだ!!!」
警察達が一斉にキッドへと襲いかかるが、一人に対して大人数で向かうがキッドはひょいひょいと警察の手をすり抜けていく。
「こちらのビックジュエル、いただきますね。中森警部」
「キッドォォオオオオ!!!」
見事に待機している警察をすり抜けて、鮮やかに外へ。
無駄の無い動きに感心してしまう。
「凄いね、彼」
「ねー」
悟も感心している。
しかしキッド……君、今回本当に運が無かったと思う。
「来たわね、コソ泥」
「えっ」
「無能な警察に変わってキュートな野薔薇様が月に代わってお仕置きよ」
「……可憐なお嬢さん、そんなところにいては危険ですよぉっ!?」
「チッ、避けんなよ」
釘をキッドに向けて打つ野薔薇ちゃん。
私は顔を手で覆う。
「ひとーつ!!!」
「!?」
「人の世生き血をすすり」
「……二つ、不埒な悪行三昧」
「えっと、三つ!!醜い浮き世の呪いを、退治てくれよう」
「「俺達呪術師!!」」
バーンッと左右のめぐみんと悠仁くんが少し膝を折って真ん中に立つ野薔薇ちゃん。
三人の黒いシルエットは月明かりでよく目立ち……謎の決めポーズを決めている。
「ぶふっ!!」
「………何やってんのあの子達」
悟は私に凭れてめちゃくちゃ笑っている。
キッドも監視していた方々もポカンだ。
「大怪盗だかなんだか知らないけど!!!
うちの馬鹿の姿を借りて悪行なんて黙ってらんないわ」
「そーそー。名前姉はめちゃくちゃ善人だから勝手に姿使われて困ってるんだよ」
「だからボコらせろ」
「まっ、待ってください。君たちは……」
「「「問答無用」」」
特攻かます悠仁くんの拳をギリギリ避けるキッド。白いコートを靡かせあの悠仁くんの攻撃をギリギリとはいえ避けている。
「凄いね、キッド」
「だね。まぁ悠仁には一応手を抜くようには言ってるけど」
「だよね」
本来の半分くらいでもやりすぎだと思うが……思ったよりもフィジカルが素晴らしい。
野薔薇ちゃんの釘責めも、めぐみんの影の落とし穴もギリギリで避けている。
思わず悟と拍手した程だ。
「追い詰めたぜ、キッド!!」
「ややこしい時に出て来ないでいただけますか?名探偵!!」
三つ巴な状況に絶対絶命のキッド。
物理で追われ、精神的に追われ……
「さあ、今日こそは捕まえるぜ」
「………あの子供性格変わってない?」
「うん」
「早く捕まえてボコる」
「伏黒そればっかじゃん」
「あんたどんだけ名前さんが好きなのよ」
「大事な人の姿を使って犯罪に加担されたら怒るに決まってるだろ」
「「そうね/そうだな」」
「……あぁ、お姿をお借りした彼女ですか?
すいません。悪気は無かったのですが……そうですね。彼女にはご迷惑をお掛けしてしまいました」
「謝るなら本人に謝りなさいよ」
「そうですね。
では、ささやかではございますが……
3・2・1」
ポンッ、と私の頭に何かが破裂?した。
悟も少し驚いている。
恐る恐る耳の上辺りを触ると……花が。
「今頃お嬢様の頭に私の気持ちが届いているかと」
「意味わかんねーこと言ってねぇでボコらせろ」
「伏黒、どうどう」
いつの間に?とか、仕込まれるタイミングあった?とか色々思うことはあるが……
「ヤバい。きゅんときた」
「凄いね。僕も仕掛けわからないや」
「もうこれ私の疑い晴れたかな?」
「本人が認めたんだから晴れたんじゃない?」
モニター越しのキッドより、本物見たくなってきた悟とうずうず。
警察を見るが、本人達は下っぱなので許可出来ないと謝っていた。
「ねーねー、何で大怪盗なんてやってんの?」
「アンタ今それ聞くとこ?」
「空気読め虎杖」
「だってさ、怪盗って盗んだら自分の物にするだろ?キッドって自分の目的の品物じゃなかったらちゃんと戻してるから悪いやつじゃないのかなーって思って」
「泥棒は泥棒だよ、お兄ちゃん」
「確かに泥棒は悪いことだけどさ、キッドはキッドなりの理由があるから盗んでいるんだろ?
誰かを傷付けるわけでもないし」
「出たわ……コイツのいい人節」
「まじで空気読めよ」
「泥棒は悪いこと。例えどんな理由があろうと、キッドが宝を返そうと、盗みは悪い罪だから裁かれなくちゃいけないんだよ、お兄ちゃん」
少年の言葉に確かに、と納得してしまう。
「けどさー、やっぱ一方的に悪い!って決めつけるのは良くないと思うよ。
今回名前姉の姿をしたのはなんで?」
「そうですね……彼女の姿は普通でありながら目立つからですね」
「「「確かに」」」
「彼女にはご迷惑おかけしてしまいましたが……私も最高のパフォーマンスを行い皆さんに楽しんで頂く事も一興」
あれ?これ私が愉快って言われてる?
馬鹿にされてんの?誉められてんの?
「彼女にはお世話になったので是非私のパフォーマンスを見ていただけたら、と思っただけですよ」
「………ってことは」
「気付かぬ内に何かしらやらかしたのは名前さんって事ね」
「いつもの事か」
「じゃあ自業自得だよね、名前姉だし」
「そうね」
「撤収するか」
「あ、2度と名前さんの姿使わないって約束しなさいよ!!」
「次は俺達じゃなく五条先生だと逃がしてもらえねーよ?」
「あ、はい……?」
生徒三人がキッドに手を振るので、キッドも手を振り返している。
なんかマイペースに場を荒らしてしまった感があるが……まぁ、いいか。
結論として、今回もキッドに逃げられたらしい。
三人が居なくなったら敵はいないとさっさと逃げられたんだとか。
「今度はゆっくり見てみたいわね」
「確かに!!身のこなしも離れた場所で名前姉に使ったマジックも見たい!!」
「オマエら……あんなんでも怪盗だし、悪党だぞ」
「けど悪いやつではないじゃん」
「あのな、そいつがどんな奴だろうと犯罪者だ。いいも悪いもない。罪は罪だ」
「そーだけどさぁ……揺るぎ無い覚悟がある奴だからこそ、なんっか憎みきれないんだよなぁ」
悠仁くんの言葉に呆れてしまうめぐみん。
「俺達もさ、呪詛師相手に手を下すじゃん。
改造呪霊だって元は人間だし。
これだって世間から見たら悪行に入るよ」
「………」
「殺していい命なんて無いと思っているし、わかり合えないから対立してる。
頭ではわかってんだよ。
けど、俺は人を殺してでも生きて他を救わなきゃならない」
「罪は、罪だからな」
「うっざいわね。何しんみりしてんのよ」
「「ぶっ!!」」
野薔薇ちゃんが二人の背中へと蹴りを入れる。
あまりの勢いに地面に手をつく二人。
「私達の業?そんなもんわかりきってることでしょ。
今さら罪だ罰だと女々しいこと考えてんじゃないわよ。
罪を重ねても譲れないモノがある。
業に首を絞められても私が選んだのはこの道なんだから後悔はしないつもりよ。
背負う覚悟が無いくせに呪術師やってんの?
それならやめちまえ」
堂々と言い放つ野薔薇ちゃん。
思わず拍手してしまった。
「呪術女子の強さが美しい」
「呪術界のヴィーナスとお呼び」
「月明かりが眩く神々しいです、ヴィーナス」
「お腹減ったわ。ヴィーナスはご飯を所望する」
「ははぁ。今宵は何にいたしましょう?」
「釘崎って格好いいよな」
「だな」
「恵も悠仁もまだまだだね!野薔薇くらいドーンと構えててくれなきゃ」
ケラケラ笑う悟。
立ち上がった二人もついてくる。
「さあ、シースーに行くわよ!」
「「「ヴィーナスの名の元に」」」
「ほら、どこの寿司屋?また新幹線くるとこでいいの?」
そんな騒動から後日
見られている視線も無くなり、いつもの日常に戻ってきたと思っていたら
「あっ」
「あ、すいません」
ドンッ、と高校生とぶつかった。
その拍子に鞄が落ちてしまい中身をぶちまける。
「あー、やっちゃった」
「すいません!!俺も手伝いますよ!」
「ごめんね?」
テキパキと拾ってくれた少年。
にっこりと笑顔で手渡してくれる。
「ありがとう、少年。お礼に奢りたいんだけどお姉さんとお茶でもいかが?」
「いや、俺がお姉さんにぶつかっちゃったから!お礼するなら俺の方だよ」
少年が見てて、と手を握る。
「3・2・1」
ポンッ、と赤い薔薇の花。
紳士のように腰に手を当て腰を折って薔薇を差し出してくる。
「お気持ちだけどこちらをどーぞ!」
「うっわ!!すごっ!!少年すごっ!!」
「俺マジック得意なんだ!」
「なーにやってんの?浮気?」
「うわっ!?悟じゃん」
突然現れた悟に驚く。
少年は目隠ししたデカイ男の出現に驚いている。
「落としたもの拾ってくれたんだよ」
「へー」
「えーっと……俺はこれで」
「少年、本当にありがと!」
そそくさと通り過ぎようとした少年。
だが、悟が少年の前に立つ。
「何してんのさ悟」
「んー、一応忠告。コイツの姿使うのは
次、は無いから」
「ん?何のこと?」
「べっつにー!!
あ、胸はもう少し大きめだし肩は華奢だよ。
あと、背中の右の肩甲骨に黒子が一つあるから」
「おまっ!?何言ってんの!!?あとそんなとこに黒子あるの私!?」
「あるよー」
悟に押されて歩かされる。
待って?見知らぬ少年に私の身体を暴露する必要あった?
「今の怪盗だよ」
「は!?あんな少年が!?」
「うん」
再び驚くべき暴露。
「ほら、オマエの姿借りた時背中がわりと開いてる服着てたじゃん」
「確かに攻めてたね」
「男だからこそ、誤魔化すために露出多めにしたかもしれないけどさー
見る人が見たらわかるんだよって話」
「………悟」
「なぁに?名前」
「だからって私の知らない身体の事情を他に話すなよ」
「あとねー、内腿のここらへんにも黒子あるし」
「お外でおさわり禁止!!」
怪しい手の動きで触る悟の手を叩き落とす。
そんな馬鹿ップル丸出しな私達の後ろ姿を見ていた少年は顔色悪く呟いた。
「………人選ミスった」
あとがき
リクエスト「キッドとクロスオーバー」
難産でした……!!!
通行人よりも野薔薇ちゃんが輝いてしまった気が……(笑)
けど、キッド見ていると思うんですよ。
悪行をする悪で罰せられなきゃいけなくても
譲れないモノがある。
後悔はしない生き方。
業を背負い、突き進む者。
呪術っぽいなーと。
通行人に目を付けたのは多分青子ちゃんとデートで水族館行ったらやたら目立つ人がいて、魚嫌いでぐったりした快斗を気に掛けて介抱した通行人……って話も入れたかったが、断念しました(笑)
悟相手に小細工は通用しなさそうだし、見破られそう(笑)
きっともう2度と通行人の格好で調査に行かないwww
リクエストありがとうございました!
長々お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした!
自意識過剰かもしれないが視線を感じる。
私の一挙一動を監視しているような……厭らしいものとは違うような……
視線を追おうにも上手くはぐらかされてしまい一体何に私は狙われているんだと聞きたくなる。
「ねぇ、悟」
「なに?」
「最近誰かを私のとこに派遣した覚えは?」
「ないけど何で?」
「デスヨネー」
出来れば呪術関連であってほしかった。
何かやらかした覚えはないが、呪術関連ならきっと悟が手配したんだねって安心出来たのに。
長々と前置きしましたが、ガックリ肩を落とす通行人名前です。
「悟じゃないとしたらただただ恐怖なんだが?」
「何よ?何かあったの?」
「五条先生また何かしたのー?」
「早く吐いた方がいいですよ」
「待って。僕が何かしたって前提止めて」
はぁ、とため息をつく。
悟じゃないなら、という恐怖に頭を悟に押し付ければ何かしらあったのだと理解の早い子供達が心配そうに見てくる。
「なしたの?言って」
「えー」
「言わなきゃ生徒の目の前だけど言わせるよ?」
「最近さぁー」
顔がマジだった。
これは良くない……!!と切り出したのだが
「自意識過剰かもしれないが見られている気がするんだよね」
「「「「は?」」」」
「女の敵ね」
「俺殴る?」
「虎杖、釘崎、物理はやめろ。証拠が残る」
「怖い怖い怖い。やだーほら、過激派が出てくるじゃーん!!」
「駄目だよ三人共。
殺るなら後悔させてから殺らなきゃ」
「何ってことを指導してんの!?」
過激派には言葉が通じないらしい。
「僕の名前に手を出そうなんていい度胸じゃん」
「そんな感じじゃないんだよなー」
「ストーカーにそんなもこんなも無いわよ。もっと危機感どうにかしなさいよ」
「ほんっと、見られているだけなの」
「だからそれが問題だっつってんですよ」
「一挙一動、私の癖から仕草。身体の動かし方……観察されてるから凄い違和感があるんだよ」
悪意がないからこそ不思議で仕方ない。
私を観察してどうしたいのか。
「私ってそんな珍獣かな?それとも真似したくなるほどの美人?」
「「それは無い」」
「めぐみん、野薔薇ちゃん泣くよ?」
「じゃあその人は名前姉を厭らしく見ていると言うよりは、名前姉に成り代わろうとしてる?」
「予想外の動きしかしない生き物の観察日記じゃないっスか?」
「名前さんに成り代わるなんて物好きかアホか頭の一部分が重症よ」
「生徒にどんな教育してんの悟?」
「事実だから仕方ないよ」
そこまで酷くないやい!!と拗ねて泣いてしまう。
「けど虎杖の線でいくと狙われているのは名前さんじゃなくて五条なんじゃ?」
「僕?」
「アンタ最近女性助けたりとかは?」
「んー記憶の中では特に無いよ」
「じゃあ勝手に一目惚れした感じかしら?」
「名探偵野薔薇ちゃんの名推理をお願いいたします」
「そうね……」
街中を歩く五条(サングラス姿)
その横顔に惚れてしまったモブ……そうね、B子とするわ。B子は電灯に群がる蛾のように五条に引き寄せられ想いを膨らませていく。
しかし!!五条には既に恋仲の名前さんが!!
名前さんに嫉妬の炎を燃やしたものの、2人の隙間無い愛情にやがて諦めようかとするが……ふと、思い付いた。
「『そうよ、私が彼女になればいいんだわ!彼女になれば私も彼に愛される……!!』
そうしてB子の名前さん成り代わり計画が始まりました」
「「こわっ!!!」」
「釘崎怖いって!!それ推理なの?まじのやつなの?」
「この場合、名前さんは用済みとなると消されるわ」
「物騒!!物騒だよ!?」
「電灯扱いされたことにツッコむべき?
それとも犯人が蛾扱いなのをツッコむべき?」
「言っても聞いてないかと」
野薔薇ちゃん劇場は物騒でした。
「名前さん、似たような格好の女見つけたら気を付けた方がいいわよ」
「え?なんで?」
「既に試しているかもよ?貴女に成り代わろうとした女が……」
「そんな都合よく現れるわけ……」
ピロンッ、と鳴ったスマホ。
学生時代の友人からだ。
どうしたんだと画像付きの内容を読んで……ゾッとした。
「…………」
「どうかしたんですか?」
「……めぐみん」
めちゃくちゃ青ざめる私。
めぐみんは失礼します、とスマホの中を見て驚いた。
"今アンタとすれ違ったけど米花にいた?"
写真は確かに私っぽい。
セクシーめに背中の開いた服に、タイトなスカート。私はこんな服持っていないし、着る勇気も無いがなぜか似合っている大人女性コーデの姿だったり
だが、現時点で私は米花などにはいない。
スマホを覗き込む野薔薇ちゃんも悠仁くんも青ざめている。
「「うわぁ……」」
「我が推理ながら引いたわ」
「釘崎名探偵なれるよ」
「……この人、名前さんじゃないっスね」
「だねー」
「いや、今ここに居るんだから違うに決まってるじゃない」
「名前さんならもう少し髪が長くて足が短いです」
「そーだね。あと胸ももーちょい盛っていいし、肩幅ももう少し華奢だよ」
めぐみんと悟の考察に悠仁くんと野薔薇ちゃんと共に引く。
「「「うわぁ……」」」
「どうかした?」
「どうもこうも気持ち悪いわよアンタ達」
「普通写真でそこまでわかる!?」
「わかるだろ」
「だってこの人どう見ても男だよ?」
「「「は?」」」
悟に言われてまじまじとよく見るが……
「野薔薇ちゃんわかる?」
「写真じゃわからないわよ」
「うーん……言われたら何となく?姿勢もこの人のが良さそう」
本人はわからないのになぜわかるんだ男子達。
友人には私じゃない、と送ったらだよね、と返ってきた。
"突撃したら挙動不審で狼狽えてた。
アンタなら絶対にしない反応だった
……何に巻き込まれてんの?(笑)"
(笑)に友人らしさが滲み出ている。
とりあえず友人にはまた会ったら教えて欲しいと送り、私も何に巻き込まれているのかわからないから怖いと送った。
"あと触った感じ男だったよ。
まじで何に巻き込まれててんの?(笑)"
友人ンンンンンンッ!?
突撃って何をしたんだ!?
"胸揉んだがアレは作り物だったね!"
コイツ何してんの?
見知らぬ私に何でセクハラぶっかましてんの?
悟は内容見て笑っているし、子供らは困っている。
「友人は選んだら?」
「ちょっといきなりセクハラはどうかと思う」
「名前さんの友人らしいですね」
「何も言えない……」
面白そうだから、という理由で私は今後も追跡するわー、と返ってきた。
ありがたいが複雑だ。
「よし、じゃあ行くわよ」
ビシッと決めた野薔薇ちゃんが立ち上がる。
「どこに?」
「決まってるじゃない。この偽物が一体何をしたいのかボコ……確認しによ」
「物騒だよ野薔薇ちゃん」
「そうだよな!こんな面白そ……こんな不振人物名前姉の気が休まらねぇよな!!」
「ちょい待て悠仁くん。今なんて?」
「見つけ次第理由を吐かせて殴ります」
「めぐみんはもうちょっとオブラートに包もう!?」
「そうと決まれば皆!課外授業の時間だよ」
「嘘でしょ!?」
おー!!と乗り気な生徒達。
「ってことで、やってきたのはいいのだが米花町………」
「手を上げろ!!!」
なぜか警察に包囲された。
「お前がキッドだろ!?」
「すいませんがどんな状況?」
「今すぐその面剥がしてやるからな!!」
「いや、あのお願いだから聞いて?」
「総員、かかれ!!!」
「聞いて!?」
わーーーと、大量の警察官が押し寄せてくるが
「ちょっとアンタ達」
「俺らの名前姉に」
「触るな」
体術のみで怪我をさせずにポイポイと警察をぶん投げる一年生達。
わー、心強い。
「何だ貴様ら!?貴様らもキッドの仲間か!!」
「中森警部待って!!そのお姉さんは本物だよ!!」
「なにぃ!?」
どこからともなくひょっこりと現れた毎度お馴染み探偵ボーイ。
「何よこの子供」
「お姉さん!!いつこの街に来たの?」
「今、かな……?」
「お昼ぐらいにはどこに!?」
「子供達と学校にいたよ?東京の」
「ほらね!お姉さんは姿を利用されていただけだよ!!」
何やら少年が必死に頑張ってくれたお陰で誤解?は解けた。
少年の話によると、私の姿をした女がとある美術館で目撃され、宝石に興味を示していたらしく防犯カメラに映っていたらしい。
「なんで美術館で目撃されただけで私逮捕されそうになってんの?」
「今夜キッドが宝石を狙ってくるからだよ」
「キッド?」
「え?お姉さん……知らないの?」
子供らや悟を見たら、頭を傾げる。
あの……え?そんなに有名?と少年を見たら頭を抱えられた。
「ビックジュエルを狙う怪盗キッドだよ!」
「「ビックジュエル……」」
「怪盗なんてこの時代にいるんだな!」
「ただの泥棒だろ」
「何か面白くなってきたね」
「怪盗キッドは変装術とマジックで宝石を奪い去るんだ」
「で、私の姿が使われたと?」
「うん!
だから美術館近くに現れたお姉さんを警察の人が捕まえようとしたんだ……」
なんっっって迷惑な怪盗だ!!!
「ちなみに私、今からおうちに帰ったり……」
「お姉さんの姿をして一度現れている以上、難しいかな」
「どうしよう?」
「ねーねー。それさぁ、僕らも勿論一緒に居てもいいよね?
コソ泥が僕の可愛い可愛い恋人の姿を使って悪事を働いているなら、恋人の僕が守らなきゃ」
「悟くーん、本音は?」
「自分の手で捕まえてボコりたい」
逃げて!!!怪盗キッドまじ逃げて!!!
絶対コイツに捕まったらあんたの人生終わりだよ!!
「だけど……」
「いいじゃないか!!」
「次郎吉おじさん!!」
なんか金持ちって感じのおじいさまが……。
「恋人の無実の為にキッドを捕らえるなんて泣ける話じゃないか!!
よかろう。儂が許可する!!」
「僕の生徒もいいですよね?」
「勿論!許可しよう」
「あ、ちなみにそのコソ泥捕まえた場合は?
殴ってから引き渡せばいい?」
「捕まえられたならな」
豪快に笑っていなくなったおじいさん。
なんか……大変なことになってない?
「って事でみんな」
「うす」「おう」「はい」
「今回の課外授業はコソ泥を捕まえてボコります」
「「「了解」」」
「まっっっって!!!」
絶対それアカン!!
このメンバー見たらわかる……今まで捕まらずに逃げて何度も犯行してきたキッドも絶対捕まって殴られるやつ!!!
「私がキッドやその協力者じゃないって証明されればいいんだから……
君達、呪い相手に無双してんだから人間相手に本気になるの良くないって」
「だから捕まえて吐かせたら解決じゃない」
「ボコりますけど」
「君達私のこと大好きだね!!!!ありがとう!!!」
「うん。名前姉好き」
無垢な悠仁くんにきゅんときた。
「じゃあ、こうしよう」
「どうぞ、悟くん」
「僕が名前に付き添う。三人は呪霊を祓いながらキッドの捕獲。
僕なら絶対名前を見間違えないし、僕がいるのにすり変わるなんてさせない。
三人は実績を積める。この街は呪霊だらけだからね」
「確かに」
「って事で作戦は三人で考えな」
なぜかやる気に溢れている三人。
「悟、一体何でこんなやる気なの?」
「普通に僕の名前が犯人扱いは腹立つし」
「ふむふむ」
「彼らも大好きな名前を利用されて腹立ってるし」
「ふむ………その心は?」
「怪盗なんて珍しい生き物を捕獲するってちょっとワクワクするよね」
「だと思ったよ!!!!」
どうやら少年の話を聞いて呑気にYouTubeでキッドを確認したらしい。
その鮮やかかつ豪快な手口。
大衆を虜にさせるマジック。
絶対に捕まらない今世紀に現れた怪盗。
「キッド終わったな」
一度も出会ったことないが、見知らぬ友人にセクハラされ、ヤベェ呪術師の卵(成長無限大)に追われることになり、最強に目をつけられた怪盗………。
なぜ私の姿を選んだんだ……。
君の計画はそこから間違えたな、と同情してしまう。
そんなこんなで夜
悟と刑事さんとおじいさまと少年と待機してモニターを見ていたら突然宝石のある部屋が白い煙でいっぱいに。
しかし、中森警部はすぐさま巨大扇風機を始動。
いつもこんな攻防してんの?この人達。
煙の中からバサリッ、と白いコートが。
宝石のケースの上に立つのは紳士のような出で立ちの白いスーツにシルクハットにマント。
「こんばんは、警察の皆さん」
「キッドだ!!!」
警察達が一斉にキッドへと襲いかかるが、一人に対して大人数で向かうがキッドはひょいひょいと警察の手をすり抜けていく。
「こちらのビックジュエル、いただきますね。中森警部」
「キッドォォオオオオ!!!」
見事に待機している警察をすり抜けて、鮮やかに外へ。
無駄の無い動きに感心してしまう。
「凄いね、彼」
「ねー」
悟も感心している。
しかしキッド……君、今回本当に運が無かったと思う。
「来たわね、コソ泥」
「えっ」
「無能な警察に変わってキュートな野薔薇様が月に代わってお仕置きよ」
「……可憐なお嬢さん、そんなところにいては危険ですよぉっ!?」
「チッ、避けんなよ」
釘をキッドに向けて打つ野薔薇ちゃん。
私は顔を手で覆う。
「ひとーつ!!!」
「!?」
「人の世生き血をすすり」
「……二つ、不埒な悪行三昧」
「えっと、三つ!!醜い浮き世の呪いを、退治てくれよう」
「「俺達呪術師!!」」
バーンッと左右のめぐみんと悠仁くんが少し膝を折って真ん中に立つ野薔薇ちゃん。
三人の黒いシルエットは月明かりでよく目立ち……謎の決めポーズを決めている。
「ぶふっ!!」
「………何やってんのあの子達」
悟は私に凭れてめちゃくちゃ笑っている。
キッドも監視していた方々もポカンだ。
「大怪盗だかなんだか知らないけど!!!
うちの馬鹿の姿を借りて悪行なんて黙ってらんないわ」
「そーそー。名前姉はめちゃくちゃ善人だから勝手に姿使われて困ってるんだよ」
「だからボコらせろ」
「まっ、待ってください。君たちは……」
「「「問答無用」」」
特攻かます悠仁くんの拳をギリギリ避けるキッド。白いコートを靡かせあの悠仁くんの攻撃をギリギリとはいえ避けている。
「凄いね、キッド」
「だね。まぁ悠仁には一応手を抜くようには言ってるけど」
「だよね」
本来の半分くらいでもやりすぎだと思うが……思ったよりもフィジカルが素晴らしい。
野薔薇ちゃんの釘責めも、めぐみんの影の落とし穴もギリギリで避けている。
思わず悟と拍手した程だ。
「追い詰めたぜ、キッド!!」
「ややこしい時に出て来ないでいただけますか?名探偵!!」
三つ巴な状況に絶対絶命のキッド。
物理で追われ、精神的に追われ……
「さあ、今日こそは捕まえるぜ」
「………あの子供性格変わってない?」
「うん」
「早く捕まえてボコる」
「伏黒そればっかじゃん」
「あんたどんだけ名前さんが好きなのよ」
「大事な人の姿を使って犯罪に加担されたら怒るに決まってるだろ」
「「そうね/そうだな」」
「……あぁ、お姿をお借りした彼女ですか?
すいません。悪気は無かったのですが……そうですね。彼女にはご迷惑をお掛けしてしまいました」
「謝るなら本人に謝りなさいよ」
「そうですね。
では、ささやかではございますが……
3・2・1」
ポンッ、と私の頭に何かが破裂?した。
悟も少し驚いている。
恐る恐る耳の上辺りを触ると……花が。
「今頃お嬢様の頭に私の気持ちが届いているかと」
「意味わかんねーこと言ってねぇでボコらせろ」
「伏黒、どうどう」
いつの間に?とか、仕込まれるタイミングあった?とか色々思うことはあるが……
「ヤバい。きゅんときた」
「凄いね。僕も仕掛けわからないや」
「もうこれ私の疑い晴れたかな?」
「本人が認めたんだから晴れたんじゃない?」
モニター越しのキッドより、本物見たくなってきた悟とうずうず。
警察を見るが、本人達は下っぱなので許可出来ないと謝っていた。
「ねーねー、何で大怪盗なんてやってんの?」
「アンタ今それ聞くとこ?」
「空気読め虎杖」
「だってさ、怪盗って盗んだら自分の物にするだろ?キッドって自分の目的の品物じゃなかったらちゃんと戻してるから悪いやつじゃないのかなーって思って」
「泥棒は泥棒だよ、お兄ちゃん」
「確かに泥棒は悪いことだけどさ、キッドはキッドなりの理由があるから盗んでいるんだろ?
誰かを傷付けるわけでもないし」
「出たわ……コイツのいい人節」
「まじで空気読めよ」
「泥棒は悪いこと。例えどんな理由があろうと、キッドが宝を返そうと、盗みは悪い罪だから裁かれなくちゃいけないんだよ、お兄ちゃん」
少年の言葉に確かに、と納得してしまう。
「けどさー、やっぱ一方的に悪い!って決めつけるのは良くないと思うよ。
今回名前姉の姿をしたのはなんで?」
「そうですね……彼女の姿は普通でありながら目立つからですね」
「「「確かに」」」
「彼女にはご迷惑おかけしてしまいましたが……私も最高のパフォーマンスを行い皆さんに楽しんで頂く事も一興」
あれ?これ私が愉快って言われてる?
馬鹿にされてんの?誉められてんの?
「彼女にはお世話になったので是非私のパフォーマンスを見ていただけたら、と思っただけですよ」
「………ってことは」
「気付かぬ内に何かしらやらかしたのは名前さんって事ね」
「いつもの事か」
「じゃあ自業自得だよね、名前姉だし」
「そうね」
「撤収するか」
「あ、2度と名前さんの姿使わないって約束しなさいよ!!」
「次は俺達じゃなく五条先生だと逃がしてもらえねーよ?」
「あ、はい……?」
生徒三人がキッドに手を振るので、キッドも手を振り返している。
なんかマイペースに場を荒らしてしまった感があるが……まぁ、いいか。
結論として、今回もキッドに逃げられたらしい。
三人が居なくなったら敵はいないとさっさと逃げられたんだとか。
「今度はゆっくり見てみたいわね」
「確かに!!身のこなしも離れた場所で名前姉に使ったマジックも見たい!!」
「オマエら……あんなんでも怪盗だし、悪党だぞ」
「けど悪いやつではないじゃん」
「あのな、そいつがどんな奴だろうと犯罪者だ。いいも悪いもない。罪は罪だ」
「そーだけどさぁ……揺るぎ無い覚悟がある奴だからこそ、なんっか憎みきれないんだよなぁ」
悠仁くんの言葉に呆れてしまうめぐみん。
「俺達もさ、呪詛師相手に手を下すじゃん。
改造呪霊だって元は人間だし。
これだって世間から見たら悪行に入るよ」
「………」
「殺していい命なんて無いと思っているし、わかり合えないから対立してる。
頭ではわかってんだよ。
けど、俺は人を殺してでも生きて他を救わなきゃならない」
「罪は、罪だからな」
「うっざいわね。何しんみりしてんのよ」
「「ぶっ!!」」
野薔薇ちゃんが二人の背中へと蹴りを入れる。
あまりの勢いに地面に手をつく二人。
「私達の業?そんなもんわかりきってることでしょ。
今さら罪だ罰だと女々しいこと考えてんじゃないわよ。
罪を重ねても譲れないモノがある。
業に首を絞められても私が選んだのはこの道なんだから後悔はしないつもりよ。
背負う覚悟が無いくせに呪術師やってんの?
それならやめちまえ」
堂々と言い放つ野薔薇ちゃん。
思わず拍手してしまった。
「呪術女子の強さが美しい」
「呪術界のヴィーナスとお呼び」
「月明かりが眩く神々しいです、ヴィーナス」
「お腹減ったわ。ヴィーナスはご飯を所望する」
「ははぁ。今宵は何にいたしましょう?」
「釘崎って格好いいよな」
「だな」
「恵も悠仁もまだまだだね!野薔薇くらいドーンと構えててくれなきゃ」
ケラケラ笑う悟。
立ち上がった二人もついてくる。
「さあ、シースーに行くわよ!」
「「「ヴィーナスの名の元に」」」
「ほら、どこの寿司屋?また新幹線くるとこでいいの?」
そんな騒動から後日
見られている視線も無くなり、いつもの日常に戻ってきたと思っていたら
「あっ」
「あ、すいません」
ドンッ、と高校生とぶつかった。
その拍子に鞄が落ちてしまい中身をぶちまける。
「あー、やっちゃった」
「すいません!!俺も手伝いますよ!」
「ごめんね?」
テキパキと拾ってくれた少年。
にっこりと笑顔で手渡してくれる。
「ありがとう、少年。お礼に奢りたいんだけどお姉さんとお茶でもいかが?」
「いや、俺がお姉さんにぶつかっちゃったから!お礼するなら俺の方だよ」
少年が見てて、と手を握る。
「3・2・1」
ポンッ、と赤い薔薇の花。
紳士のように腰に手を当て腰を折って薔薇を差し出してくる。
「お気持ちだけどこちらをどーぞ!」
「うっわ!!すごっ!!少年すごっ!!」
「俺マジック得意なんだ!」
「なーにやってんの?浮気?」
「うわっ!?悟じゃん」
突然現れた悟に驚く。
少年は目隠ししたデカイ男の出現に驚いている。
「落としたもの拾ってくれたんだよ」
「へー」
「えーっと……俺はこれで」
「少年、本当にありがと!」
そそくさと通り過ぎようとした少年。
だが、悟が少年の前に立つ。
「何してんのさ悟」
「んー、一応忠告。コイツの姿使うのは
次、は無いから」
「ん?何のこと?」
「べっつにー!!
あ、胸はもう少し大きめだし肩は華奢だよ。
あと、背中の右の肩甲骨に黒子が一つあるから」
「おまっ!?何言ってんの!!?あとそんなとこに黒子あるの私!?」
「あるよー」
悟に押されて歩かされる。
待って?見知らぬ少年に私の身体を暴露する必要あった?
「今の怪盗だよ」
「は!?あんな少年が!?」
「うん」
再び驚くべき暴露。
「ほら、オマエの姿借りた時背中がわりと開いてる服着てたじゃん」
「確かに攻めてたね」
「男だからこそ、誤魔化すために露出多めにしたかもしれないけどさー
見る人が見たらわかるんだよって話」
「………悟」
「なぁに?名前」
「だからって私の知らない身体の事情を他に話すなよ」
「あとねー、内腿のここらへんにも黒子あるし」
「お外でおさわり禁止!!」
怪しい手の動きで触る悟の手を叩き落とす。
そんな馬鹿ップル丸出しな私達の後ろ姿を見ていた少年は顔色悪く呟いた。
「………人選ミスった」
あとがき
リクエスト「キッドとクロスオーバー」
難産でした……!!!
通行人よりも野薔薇ちゃんが輝いてしまった気が……(笑)
けど、キッド見ていると思うんですよ。
悪行をする悪で罰せられなきゃいけなくても
譲れないモノがある。
後悔はしない生き方。
業を背負い、突き進む者。
呪術っぽいなーと。
通行人に目を付けたのは多分青子ちゃんとデートで水族館行ったらやたら目立つ人がいて、魚嫌いでぐったりした快斗を気に掛けて介抱した通行人……って話も入れたかったが、断念しました(笑)
悟相手に小細工は通用しなさそうだし、見破られそう(笑)
きっともう2度と通行人の格好で調査に行かないwww
リクエストありがとうございました!
長々お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした!