十万企画
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「ここ?」
「だな」
人々の多い会場。
弁当にグッズにファンクラブ会員受付など、様々な店が並んでいる。
「何か食い物頼む?」
「それなら宮兄弟のところ行こうぜ」
「ウマイよね」
「今回は俺もゆっくり一般見学が出来るからな」
「呑まないでよ?鉄朗呑むと喧しいから」
「そんな事言うなよ悟くーん」
190オーバーと180オーバーのモデル体型二人が色々な屋台を見学している。
「オーッス、繁盛してるカナ?」
「ドモ。猫チャンとこのMBやないですか」
「あ……」
「お?赤葦じゃん」
「久しぶりですね、黒尾さん」
宮のおにぎり屋台の前でおにぎりを頬張る赤葦が黒尾を見て頭を下げる。
「今日はお仕事お休みですか?」
「まぁね!」
「今日はお二人で?弧爪や名前は?」
「来てるぞ。今日は仲良く幼馴染トリオ+αデース」
「人をオマケみたいに言うなよ。どっちかと言えばオマケは鉄朗だから」
「ひっど!!確かにそうだけどひっど!!」
「………そちらの方は…」
赤葦の記憶の中には学生時代初めての合コンで名前とご飯食べに行った時に居た人だよな?と記憶が巡る。
ならば、ここに居るということは……
いつぞや出会った学生達に威嚇されながらも、幸せだと笑っていた名前を思い出す。
なるほど、彼のことだったのか。
「名前の彼氏さんですね」
「そーだけどどっかで会ったことある?」
「学生の頃に合コン帰りの牛丼屋で一度だけ」
「あー……」
「ナニナニ?キミらバッチバチにバトルなら向こうでやってね?」
しっし、と手で払う黒尾。
なぜそんな事しなきゃいけないんだと赤葦と五条は小首を傾げる。
「「なんで?」」
「赤葦、名前の元彼」
「ちょっと黒尾さん、やめてもらえます?俺は元彼とは名ばかりの保護者でしたから」
「もしかして学生時代の苦労人?」
「はい」キッパリ
「馬鹿がご迷惑をおかけしました」
「俺は何もしていませんよ」
くすり、と笑う赤葦。
なるほど、彼が名前の忘れられなかった人であり、今幸せにしてくれている人なのか、と納得した。
「ちょいとお客さーん。店の前でドロドロの昼ドラは勘弁」
「お宅の片割れもそろそろ大量の荷物送るの止めてもらうよう言っといてくれない?」
「………ツムがご迷惑おかけしたみたいで」
大量の荷物の言葉にピンっときた治は帽子を取って深々と頭を下げた。
「何コレ?」
「名前関係のやらかしなことは確実ですよね」
「合ってるけど」
おにぎり、焼き鳥、ポテト、飲み物を買い込んで袋をぶら下げながら歩く三人。
その顔面偏差値の高さにたまたま来ていたフリーの女子達が騒ぎ出す。
どうにか声を掛けられないかとソワソワ様子をうかがっているが、当人達はまるで気にしていない。
「赤葦普通の席?」
「はい。黒尾さん達は?」
「僕ら招待客だから多分わりといい席だと思う」
「VIP席ってやつだな」
「羨ましい……どうしたんですか?」
「MSBYメンバーが毎回誘っても試合見に来ない名前にこぞって送ってきた」
「なるほど?」
まったく意味のわからなかった赤葦だったが、多分名前を中心に何かしらメンバーとやらかし、縁が出来た結果なんだろうな……と一人納得した。
ふと、会場入口横に何やら男達に言い寄られている人達が見えた。
こんなところまで来てナンパなんて……と思って見ていたら、隣を歩く二人の気配が変わった事に赤葦はビクッと身体が跳ねた。
「あーあ、やっぱ鉄朗が残れば良かったんじゃ?」
「嘘だろ?ウチの子達が可愛すぎるあまりに……」
目が二人とも据わってる。
「………嘘ですよね?仮に片方男ですよ?」
「馬鹿なんだろ」
「馬鹿なんだよ」
ほぼ190とオーバーの男二人がスタスタとナンパ男達に近付いていくのを見て赤葦は合掌した。
やほやほ!!みんな元気?
私、通行人名前は元気だぉぉーーー!!
今日はね、なんと!!!
MSBYの試合を見に研磨とクロと悟と来ちゃいました!!ドームでやるって言うからいい加減見に来いと臣くんにまでチケット送られてきたら観に行くしかないよね。
会場入る前に小腹減った時用の買っておくかーと皆で行こうとしたが、グッズもあるし……2手に別れて買いに行こうとなり、私と研磨はグッズ購入。悟とクロが食べ物購入に別れて入り口で合流しようと先に着いたのでゲームしながら待っていたら……
「可愛いねー?お揃いコーデで応援?」
まさかのナンパ。
少し大きめのパーカーにジーンズの研磨とショートパンツの私。頭にはお互い白いニット帽。
どう見ても研磨は男なのに……え?コイツら目が腐ってる?それともそーゆー趣味?と研磨を見たら顔が死んでいた。
関わりたくないし、関わらないでおこうとアイコンタクトで無視を決め込む私達。
「ねーねー、無視しないでこっち向いてよ」
「俺ら何か買ってこようか?」
「試合より向こう行かない?」
しつこかった。
早く悟とクロ来ないかなーと思っていたら
「すいませーん、その子ら僕らのツレなんで」
「お待たせ」
男達を押し退けて来た二人。
クロと悟の身長差にビビったのかそそくさと逃げ出すナンパ男ら。
「混んでた?」
「まぁまぁ混んでた」
「早く行こ」
「まーまー、そう急ぐ前に」
「久しぶり、弧爪、名前」
「「赤葦!」」
久しぶりの赤葦に研磨と近寄る。
「観に来てたんだー!!」
「弧爪が会場来るなんて珍しいね」
「名前に引っ張り出された」
「たまには研磨もお外出ないと」
和気あいあいと話をしていれば、会場から少し盛り上がっている声が。
「入るか」
「ミャーサムのおにぎり!!売り切れてなかったの?」
「バッチリ買ったよ」
「やったね!!」
中に入ればまだ選手達はウォーミングアップ中だった。
赤葦と別れて席を探してクロ、研磨、私、悟の順に座れば、さっそく翔陽が気付いてブンブン手を振ってるのに笑い、私も振り返す。
翔陽が何か言って臣くんや宮くんやぼっくんも気付いてそれぞれ手を上げてくれたので手を振る。
「何か久々だなーエアーサロンパスの匂い」
「そーいやなんで名前って部活はいらなかったの?
幼馴染達やってたらマネとか憧れない?」
「「「そんな夢もありました」」」
三人で声が揃う。
そう、私も最初は研磨やクロのためにマネージャーって良くない?
青春っぽくない?と思っていた時期もありました。
「時々合宿の手伝いとかはしてたけどさ……」
「名前いると具合悪くなる生徒出たり」
「不審な怪我続いたり」
「呪いの影響が凄いし、なんなら引き込まれそうになるし、女子の嫉妬に殺されそうだったからやるの止めた」
「なるほど」
なので音駒ではサポートはしてもマネージャーとして活動は控えた。
その結果が悟達との出会いにも繋がったのだが……。
アップも終了し、一度引っ込む選手達。
そして会場が暗くなり、オープニング入場。
子供らと手を繋いで両チームが入ってくる。
「今回木兎は大人しかったな」
「だね」
「なに?ぼっくん何かやらかすの?」
「前回はマスコットのバク転真似してたな」
「マジで?」
コートの位置に着く選手達。
ボールを持っているのは……宮くんだ。
キュッキュッキュッ、と歩くたび鳴り響く床。
応援団の音楽や声援の中、宮くんが片手で音を切るように指示すればピタリと音が鳴りやんだ。
審判の笛と共に上がったボール。
「せーのっ」
「「アツムくぅーーーん!!」」
女子の黄色い声援がまた一段と響く。
それにギョッとする研磨とクロ。
「あっ、すいませんがお静かにお願いしますっ」
「なによー!!」
ボールを上げてドパァンッってあり得ない音がしてボールが勢いよく飛んでいき……
「「「「うわぁ……」」」」
ネットに当たった。
頭を抱えて崩れ落ちる宮くん。
「カッコつけてあれはダサイ」
「普通にダサイ」
「そう言うなって。ダサイけど」
ニヤニヤ笑っている研磨。
だが、あのボール普通に腕に当たったら腕吹き飛びそう。
くるっ、と観客席を見た宮くんは殺気立ちながら先ほどの女子達を睨み付けている。
「宮くん性格悪くない?」
「アイツ学生の頃からサーブの時邪魔されるの嫌がるんだよ」
「へー。やっぱスポーツ選手になると自分のルーティーン大事にするって事かな?」
私は口元に手を当て、大きく息を吸った。
「ヘイヘイへーーーい!!宮くんビビってるぅー!!」
「うっっっさいねん!!ビビってへんし!!」
「宮くんのぉー、かっこいいとこ見てみたーい!!」
ヒュゥーーー!!と一人デカイ声で言えば、宮くんは拳を上げて此方を指さしていた。
口パクで「見とけ」と言っているのににっこり笑って手を振ればすぐに相手コートを見た。
「「………………っ」」
「ん?クロも研磨もどしたの?」
「ぶっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」
「…………っ」プルプル
「あんなことミャーツムに言えるのお前だけだわ!!」
「宮くんには遠慮しないって決めてますので」
「後から文句言われるよ」
「差し入れで黙らす」
笑う二人に宮くん相手にヤジくらい怖いことなどない。
相手チームのサーブの威力も凄まじい。
それを取るだけでパァンッて叩かれたような音。それでもボールを落とさず綺麗な弧を描き宮くんへ。宮くんがボールに触れた瞬間スパーンッと相手コートに突き刺さるボール。撃ったのは翔陽だ。
「しょーーーよーーーー!!!すごっ!!」
「おチビちゃんの化物速攻か」
「楽しそうだね翔陽」
「へー」
決めたのは翔陽だが、それを操ったのは俺ですとでも言いたげにドヤ顔をする宮くん。
いいえ、決めた翔陽がカッコ良かったので宮くんの活躍期待、とアイコンタクト。
伝わったのかわからないが、微妙に悔しそうな顔をして次だ次と言ってる。
翔陽はとにかく目で追っていないと突然飛び出してくる。
相手チームじゃないが、居なかったはずのところに居る翔陽はボールを上げたら直ぐに走り出す。
「翔陽すご」
「体力あるね」
「悟追えてる?」
「うん。けど翔陽が物理でくるなら僕の苦手なタイプかな」
「わかる。翔陽は魔法耐性より物理特化型攻撃タイプだから単身で攻撃のゴリ押ししてきそう」
「そっちのが僕は怖いや」
「翔陽は魔法使えない代わりに体力とスピードに恵まれたのか」
「待って。君ら突然ゲーム思考?な方向で話すのヤメテ?
僕ついていけません」
ぴょんぴょん無邪気に飛び回る翔陽は見ていて気持ちがいい。
こちらも楽しくワクワクしてくる。
そんな中、手拍子をして会場を盛り上げるのはぼっくんだ。
合わせて手拍子をすれば、そのままサーブがエグい音と共に入る。
会場も大盛り上がり。
「ぼっくんらしーね」
「ねー」
スパイクもキレッキレで翔陽に負けず劣らず活躍するぼっくん。
例えボールより前に出てもなぜか胸で受けとめて上げだすので会場は笑いの渦に。
「「「〜〜〜〜っ!!!」」」
クロが一番過呼吸気味だが、私も悟もなかなかやばい。
ぼっくんが真面目にコントしている。
そして臣くんもしっかりと上げられたボールを決めている。回転が掛かっていて取りにくいだとかクロと研磨からの解説がちょくちょく入るが……
決めるたび、喜びに群がる翔陽とぼっくんをするする交わす臣くんに爆笑する私。
せめてタッチくらいしてあげて!!
交わされてもめげない陽キャ二人。そしてニヤニヤしながら宮くんを煽るように笑う臣くん。
「そろそろミャーツムもエンジンかかってきたかもな」
「だね」
クロと研磨がニヤリ、とする。
二人の言葉通り翔陽、ぼっくん、臣くんが攻撃体勢に入っていて誰を使っても決めてくれそうだという中………宮くんは誰も使わずボールを相手コートに押し込んだ。
「ハァァアアアアッ!!」
「鉄朗どっち目線?」
「豪華なメンバーを使わずツー。いいね」
「やられたら地味に腹立つよね、あれ」
「それな」
「やる方は気持ちいいんだよ」
盛り上がる会場。
相手チームも負けず劣らずのプレーに楽しく魅入ってしまった。
結果はBJの勝ち。パチパチと拍手を送る。
「よし、じゃあ行こうか」
買った物とは別に持ってきた差し入れ。
翔陽に連絡したら控え室まで来れるよう迎えに行くと試合後だと言うのにすぐに来てくれた。
「翔陽すごい!!まじで面白くて凄くてカッコ良かった!!」
「名前さん来てくれてありがとー!!研磨も久しぶり!!」
「お疲れ、翔陽。面白かったよ」
「ウーッス。チビちゃんお疲れ」
「お疲れ」
「黒尾さんに五条さん!!来てくれたんですね!!」
アザーッスと頭を下げる元気な翔陽。
手を引かれ控え室へと飛び込んでいくが、ちょっと君まじで元気過ぎない?めっちゃ早いんだが?
「名前さんが差し入れだって!!」
「ドーモー。ムスビィの選手さん達お疲れ様でーす。あとお疲れ後なのに控え室にすいません 」
「なら来るな」
「OK。臣くんにはやらんからな」
早々にしっしっ、と手で追い払う臣くん。その黒子押すぞ。
クロと悟が持っていてくれた例のものを差し出す。
「なーにウマイもん持ってきてくれた………
はぁ!?なんなん?これ」
ガサゴソと漁り出した宮くん。
しかし中身を見て少しガッカリした表情にイラッとする。
「見たらわかるでしょ。
入浴剤、ホットマスク、マスクです」
「そんなん差し入れすんな!!ここは食べ物やろ!?」
「宮くん馬鹿なの?知り合いとはいえプロのスポーツ選手が試合期間なのに食べ物渡すわけないでしょ?ドーピング引っ掛かったらどーすんの」
「名前チャンはそないなことせーへん」
「そうですよ!!名前さんはしません!!」
「ありがとう、翔陽」
「なんで翔陽くんだけ!?」
知り合いとはいえ、シーズン中にそんな食べ物の差し入れは迷惑だと思ってマスクやら快眠グッズにしたんだよ。
「ちゃーんと別の差し入れも頼んどいたよ」
「ヘイヘイへーい!!名前の彼氏さん何頼んだの?」
「おにぎり。後から信用度抜群のとこから届くと思うよ」
「ドーモー。おにぎりの宮です」
「サム!?」
「依頼通りおにぎりのお届けでーす」
ほっかほかの出来立ておにぎり。
目を輝かせる選手達。
「君らいつそんなの頼んだの?」
「試合後だしお腹減ってるだろうからスポンサーのおにぎり屋なら大丈夫だと思って先に依頼しておいたの」
「めっちゃ儲かりました」
「あれくらいなら大したことないよ」
「出た。悟の金銭馬鹿」
「研磨だって大したことないって思うよ?」
領収書に悟と研磨はこれくらいなら……と納得しているが、その料金は普通ではないと私とクロは知っている。
「ありがとうございました!!名前さん、五条さん!!」
「こちらこそ面白かったよ」
「まともにスポーツ観戦ってしたことなかったから面白かったよ」
「また来てください!!」
長居しては良くないと控え室を出た。
多分後から連絡すると言っていたのでそれぞれからお礼の連絡やらが来るであろう。
帰りは研磨とクロと悟で外食。バレーの事で盛り上がる私達。
二人と別れて悟と家までの帰り道もまだ興奮が冷めない。
「楽しかった」
「そりゃ良かった」
「悟は?」
「楽しかったよ」
忙しくてなかなか行くタイミングが無かったが、またすぐに会場で試合の興奮を味わいたくなるほどだった。
この興奮を伝えたくて、後日めちゃくちゃ真希ちゃん達学生を巻き込んでバレーしたのだが……
「やめて、真希ちゃん!!もう私のライフはとっくにゼロよぉっ!!」
「避けんな」
「オーライオーライ」
「しゃけ!!」
「ヘイッ、真希さんパスパス。私が殺ります」
「野薔薇ちゃん物騒!!!」
「頑張って名前姉!!ボール回してくれたら俺ら頑張るから!!」
「なぁ、これ……ドッジボールじゃね?」
めぐみん正解。
なぜかバレーじゃなくドッジボールをした。
後日、テレビにて
『ヘイヘイへーーーい!!宮くんビビってるぅー!!』
『うっっっさいねん!!ビビってへんし!!』
『宮くんのぉー、かっこいいとこ見てみたーい!!』
『見せたるわ!!』
「……嘘だろ、オイ」
「うわー、ヤジ飛ばしてる人がいるね」
「名前さん…」
「名前姉…」
「何やってんのよアンタ」
ガッツリテレビで放送されていて、昔の友人やら諸々から連絡の嵐に私は通知を切った。
あとがき
リクエスト「通行人でムスビィの試合を観に行く」
遅くなってしまい、申し訳ないです!
試合を詳しく書くにはちょっと技術が足りていないので詳しく書けなくてすいません!!
研磨とお揃いコーデのナンパと、ミャーツムにヤジ飛ばしたかった(笑)
臣くんとぼっくんの絡み少なめなのはほんっと申し訳ない……うまく特徴がつかみきれない……。
ミャーツムはエセですが、喧しいから会話入ってくるんです(笑)
リクエストいただき、訪問いただき、サイトの夢を見ていただきありがとうございます。
これからも明星をよろしくお願いいたします!!
「だな」
人々の多い会場。
弁当にグッズにファンクラブ会員受付など、様々な店が並んでいる。
「何か食い物頼む?」
「それなら宮兄弟のところ行こうぜ」
「ウマイよね」
「今回は俺もゆっくり一般見学が出来るからな」
「呑まないでよ?鉄朗呑むと喧しいから」
「そんな事言うなよ悟くーん」
190オーバーと180オーバーのモデル体型二人が色々な屋台を見学している。
「オーッス、繁盛してるカナ?」
「ドモ。猫チャンとこのMBやないですか」
「あ……」
「お?赤葦じゃん」
「久しぶりですね、黒尾さん」
宮のおにぎり屋台の前でおにぎりを頬張る赤葦が黒尾を見て頭を下げる。
「今日はお仕事お休みですか?」
「まぁね!」
「今日はお二人で?弧爪や名前は?」
「来てるぞ。今日は仲良く幼馴染トリオ+αデース」
「人をオマケみたいに言うなよ。どっちかと言えばオマケは鉄朗だから」
「ひっど!!確かにそうだけどひっど!!」
「………そちらの方は…」
赤葦の記憶の中には学生時代初めての合コンで名前とご飯食べに行った時に居た人だよな?と記憶が巡る。
ならば、ここに居るということは……
いつぞや出会った学生達に威嚇されながらも、幸せだと笑っていた名前を思い出す。
なるほど、彼のことだったのか。
「名前の彼氏さんですね」
「そーだけどどっかで会ったことある?」
「学生の頃に合コン帰りの牛丼屋で一度だけ」
「あー……」
「ナニナニ?キミらバッチバチにバトルなら向こうでやってね?」
しっし、と手で払う黒尾。
なぜそんな事しなきゃいけないんだと赤葦と五条は小首を傾げる。
「「なんで?」」
「赤葦、名前の元彼」
「ちょっと黒尾さん、やめてもらえます?俺は元彼とは名ばかりの保護者でしたから」
「もしかして学生時代の苦労人?」
「はい」キッパリ
「馬鹿がご迷惑をおかけしました」
「俺は何もしていませんよ」
くすり、と笑う赤葦。
なるほど、彼が名前の忘れられなかった人であり、今幸せにしてくれている人なのか、と納得した。
「ちょいとお客さーん。店の前でドロドロの昼ドラは勘弁」
「お宅の片割れもそろそろ大量の荷物送るの止めてもらうよう言っといてくれない?」
「………ツムがご迷惑おかけしたみたいで」
大量の荷物の言葉にピンっときた治は帽子を取って深々と頭を下げた。
「何コレ?」
「名前関係のやらかしなことは確実ですよね」
「合ってるけど」
おにぎり、焼き鳥、ポテト、飲み物を買い込んで袋をぶら下げながら歩く三人。
その顔面偏差値の高さにたまたま来ていたフリーの女子達が騒ぎ出す。
どうにか声を掛けられないかとソワソワ様子をうかがっているが、当人達はまるで気にしていない。
「赤葦普通の席?」
「はい。黒尾さん達は?」
「僕ら招待客だから多分わりといい席だと思う」
「VIP席ってやつだな」
「羨ましい……どうしたんですか?」
「MSBYメンバーが毎回誘っても試合見に来ない名前にこぞって送ってきた」
「なるほど?」
まったく意味のわからなかった赤葦だったが、多分名前を中心に何かしらメンバーとやらかし、縁が出来た結果なんだろうな……と一人納得した。
ふと、会場入口横に何やら男達に言い寄られている人達が見えた。
こんなところまで来てナンパなんて……と思って見ていたら、隣を歩く二人の気配が変わった事に赤葦はビクッと身体が跳ねた。
「あーあ、やっぱ鉄朗が残れば良かったんじゃ?」
「嘘だろ?ウチの子達が可愛すぎるあまりに……」
目が二人とも据わってる。
「………嘘ですよね?仮に片方男ですよ?」
「馬鹿なんだろ」
「馬鹿なんだよ」
ほぼ190とオーバーの男二人がスタスタとナンパ男達に近付いていくのを見て赤葦は合掌した。
やほやほ!!みんな元気?
私、通行人名前は元気だぉぉーーー!!
今日はね、なんと!!!
MSBYの試合を見に研磨とクロと悟と来ちゃいました!!ドームでやるって言うからいい加減見に来いと臣くんにまでチケット送られてきたら観に行くしかないよね。
会場入る前に小腹減った時用の買っておくかーと皆で行こうとしたが、グッズもあるし……2手に別れて買いに行こうとなり、私と研磨はグッズ購入。悟とクロが食べ物購入に別れて入り口で合流しようと先に着いたのでゲームしながら待っていたら……
「可愛いねー?お揃いコーデで応援?」
まさかのナンパ。
少し大きめのパーカーにジーンズの研磨とショートパンツの私。頭にはお互い白いニット帽。
どう見ても研磨は男なのに……え?コイツら目が腐ってる?それともそーゆー趣味?と研磨を見たら顔が死んでいた。
関わりたくないし、関わらないでおこうとアイコンタクトで無視を決め込む私達。
「ねーねー、無視しないでこっち向いてよ」
「俺ら何か買ってこようか?」
「試合より向こう行かない?」
しつこかった。
早く悟とクロ来ないかなーと思っていたら
「すいませーん、その子ら僕らのツレなんで」
「お待たせ」
男達を押し退けて来た二人。
クロと悟の身長差にビビったのかそそくさと逃げ出すナンパ男ら。
「混んでた?」
「まぁまぁ混んでた」
「早く行こ」
「まーまー、そう急ぐ前に」
「久しぶり、弧爪、名前」
「「赤葦!」」
久しぶりの赤葦に研磨と近寄る。
「観に来てたんだー!!」
「弧爪が会場来るなんて珍しいね」
「名前に引っ張り出された」
「たまには研磨もお外出ないと」
和気あいあいと話をしていれば、会場から少し盛り上がっている声が。
「入るか」
「ミャーサムのおにぎり!!売り切れてなかったの?」
「バッチリ買ったよ」
「やったね!!」
中に入ればまだ選手達はウォーミングアップ中だった。
赤葦と別れて席を探してクロ、研磨、私、悟の順に座れば、さっそく翔陽が気付いてブンブン手を振ってるのに笑い、私も振り返す。
翔陽が何か言って臣くんや宮くんやぼっくんも気付いてそれぞれ手を上げてくれたので手を振る。
「何か久々だなーエアーサロンパスの匂い」
「そーいやなんで名前って部活はいらなかったの?
幼馴染達やってたらマネとか憧れない?」
「「「そんな夢もありました」」」
三人で声が揃う。
そう、私も最初は研磨やクロのためにマネージャーって良くない?
青春っぽくない?と思っていた時期もありました。
「時々合宿の手伝いとかはしてたけどさ……」
「名前いると具合悪くなる生徒出たり」
「不審な怪我続いたり」
「呪いの影響が凄いし、なんなら引き込まれそうになるし、女子の嫉妬に殺されそうだったからやるの止めた」
「なるほど」
なので音駒ではサポートはしてもマネージャーとして活動は控えた。
その結果が悟達との出会いにも繋がったのだが……。
アップも終了し、一度引っ込む選手達。
そして会場が暗くなり、オープニング入場。
子供らと手を繋いで両チームが入ってくる。
「今回木兎は大人しかったな」
「だね」
「なに?ぼっくん何かやらかすの?」
「前回はマスコットのバク転真似してたな」
「マジで?」
コートの位置に着く選手達。
ボールを持っているのは……宮くんだ。
キュッキュッキュッ、と歩くたび鳴り響く床。
応援団の音楽や声援の中、宮くんが片手で音を切るように指示すればピタリと音が鳴りやんだ。
審判の笛と共に上がったボール。
「せーのっ」
「「アツムくぅーーーん!!」」
女子の黄色い声援がまた一段と響く。
それにギョッとする研磨とクロ。
「あっ、すいませんがお静かにお願いしますっ」
「なによー!!」
ボールを上げてドパァンッってあり得ない音がしてボールが勢いよく飛んでいき……
「「「「うわぁ……」」」」
ネットに当たった。
頭を抱えて崩れ落ちる宮くん。
「カッコつけてあれはダサイ」
「普通にダサイ」
「そう言うなって。ダサイけど」
ニヤニヤ笑っている研磨。
だが、あのボール普通に腕に当たったら腕吹き飛びそう。
くるっ、と観客席を見た宮くんは殺気立ちながら先ほどの女子達を睨み付けている。
「宮くん性格悪くない?」
「アイツ学生の頃からサーブの時邪魔されるの嫌がるんだよ」
「へー。やっぱスポーツ選手になると自分のルーティーン大事にするって事かな?」
私は口元に手を当て、大きく息を吸った。
「ヘイヘイへーーーい!!宮くんビビってるぅー!!」
「うっっっさいねん!!ビビってへんし!!」
「宮くんのぉー、かっこいいとこ見てみたーい!!」
ヒュゥーーー!!と一人デカイ声で言えば、宮くんは拳を上げて此方を指さしていた。
口パクで「見とけ」と言っているのににっこり笑って手を振ればすぐに相手コートを見た。
「「………………っ」」
「ん?クロも研磨もどしたの?」
「ぶっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」
「…………っ」プルプル
「あんなことミャーツムに言えるのお前だけだわ!!」
「宮くんには遠慮しないって決めてますので」
「後から文句言われるよ」
「差し入れで黙らす」
笑う二人に宮くん相手にヤジくらい怖いことなどない。
相手チームのサーブの威力も凄まじい。
それを取るだけでパァンッて叩かれたような音。それでもボールを落とさず綺麗な弧を描き宮くんへ。宮くんがボールに触れた瞬間スパーンッと相手コートに突き刺さるボール。撃ったのは翔陽だ。
「しょーーーよーーーー!!!すごっ!!」
「おチビちゃんの化物速攻か」
「楽しそうだね翔陽」
「へー」
決めたのは翔陽だが、それを操ったのは俺ですとでも言いたげにドヤ顔をする宮くん。
いいえ、決めた翔陽がカッコ良かったので宮くんの活躍期待、とアイコンタクト。
伝わったのかわからないが、微妙に悔しそうな顔をして次だ次と言ってる。
翔陽はとにかく目で追っていないと突然飛び出してくる。
相手チームじゃないが、居なかったはずのところに居る翔陽はボールを上げたら直ぐに走り出す。
「翔陽すご」
「体力あるね」
「悟追えてる?」
「うん。けど翔陽が物理でくるなら僕の苦手なタイプかな」
「わかる。翔陽は魔法耐性より物理特化型攻撃タイプだから単身で攻撃のゴリ押ししてきそう」
「そっちのが僕は怖いや」
「翔陽は魔法使えない代わりに体力とスピードに恵まれたのか」
「待って。君ら突然ゲーム思考?な方向で話すのヤメテ?
僕ついていけません」
ぴょんぴょん無邪気に飛び回る翔陽は見ていて気持ちがいい。
こちらも楽しくワクワクしてくる。
そんな中、手拍子をして会場を盛り上げるのはぼっくんだ。
合わせて手拍子をすれば、そのままサーブがエグい音と共に入る。
会場も大盛り上がり。
「ぼっくんらしーね」
「ねー」
スパイクもキレッキレで翔陽に負けず劣らず活躍するぼっくん。
例えボールより前に出てもなぜか胸で受けとめて上げだすので会場は笑いの渦に。
「「「〜〜〜〜っ!!!」」」
クロが一番過呼吸気味だが、私も悟もなかなかやばい。
ぼっくんが真面目にコントしている。
そして臣くんもしっかりと上げられたボールを決めている。回転が掛かっていて取りにくいだとかクロと研磨からの解説がちょくちょく入るが……
決めるたび、喜びに群がる翔陽とぼっくんをするする交わす臣くんに爆笑する私。
せめてタッチくらいしてあげて!!
交わされてもめげない陽キャ二人。そしてニヤニヤしながら宮くんを煽るように笑う臣くん。
「そろそろミャーツムもエンジンかかってきたかもな」
「だね」
クロと研磨がニヤリ、とする。
二人の言葉通り翔陽、ぼっくん、臣くんが攻撃体勢に入っていて誰を使っても決めてくれそうだという中………宮くんは誰も使わずボールを相手コートに押し込んだ。
「ハァァアアアアッ!!」
「鉄朗どっち目線?」
「豪華なメンバーを使わずツー。いいね」
「やられたら地味に腹立つよね、あれ」
「それな」
「やる方は気持ちいいんだよ」
盛り上がる会場。
相手チームも負けず劣らずのプレーに楽しく魅入ってしまった。
結果はBJの勝ち。パチパチと拍手を送る。
「よし、じゃあ行こうか」
買った物とは別に持ってきた差し入れ。
翔陽に連絡したら控え室まで来れるよう迎えに行くと試合後だと言うのにすぐに来てくれた。
「翔陽すごい!!まじで面白くて凄くてカッコ良かった!!」
「名前さん来てくれてありがとー!!研磨も久しぶり!!」
「お疲れ、翔陽。面白かったよ」
「ウーッス。チビちゃんお疲れ」
「お疲れ」
「黒尾さんに五条さん!!来てくれたんですね!!」
アザーッスと頭を下げる元気な翔陽。
手を引かれ控え室へと飛び込んでいくが、ちょっと君まじで元気過ぎない?めっちゃ早いんだが?
「名前さんが差し入れだって!!」
「ドーモー。ムスビィの選手さん達お疲れ様でーす。あとお疲れ後なのに控え室にすいません 」
「なら来るな」
「OK。臣くんにはやらんからな」
早々にしっしっ、と手で追い払う臣くん。その黒子押すぞ。
クロと悟が持っていてくれた例のものを差し出す。
「なーにウマイもん持ってきてくれた………
はぁ!?なんなん?これ」
ガサゴソと漁り出した宮くん。
しかし中身を見て少しガッカリした表情にイラッとする。
「見たらわかるでしょ。
入浴剤、ホットマスク、マスクです」
「そんなん差し入れすんな!!ここは食べ物やろ!?」
「宮くん馬鹿なの?知り合いとはいえプロのスポーツ選手が試合期間なのに食べ物渡すわけないでしょ?ドーピング引っ掛かったらどーすんの」
「名前チャンはそないなことせーへん」
「そうですよ!!名前さんはしません!!」
「ありがとう、翔陽」
「なんで翔陽くんだけ!?」
知り合いとはいえ、シーズン中にそんな食べ物の差し入れは迷惑だと思ってマスクやら快眠グッズにしたんだよ。
「ちゃーんと別の差し入れも頼んどいたよ」
「ヘイヘイへーい!!名前の彼氏さん何頼んだの?」
「おにぎり。後から信用度抜群のとこから届くと思うよ」
「ドーモー。おにぎりの宮です」
「サム!?」
「依頼通りおにぎりのお届けでーす」
ほっかほかの出来立ておにぎり。
目を輝かせる選手達。
「君らいつそんなの頼んだの?」
「試合後だしお腹減ってるだろうからスポンサーのおにぎり屋なら大丈夫だと思って先に依頼しておいたの」
「めっちゃ儲かりました」
「あれくらいなら大したことないよ」
「出た。悟の金銭馬鹿」
「研磨だって大したことないって思うよ?」
領収書に悟と研磨はこれくらいなら……と納得しているが、その料金は普通ではないと私とクロは知っている。
「ありがとうございました!!名前さん、五条さん!!」
「こちらこそ面白かったよ」
「まともにスポーツ観戦ってしたことなかったから面白かったよ」
「また来てください!!」
長居しては良くないと控え室を出た。
多分後から連絡すると言っていたのでそれぞれからお礼の連絡やらが来るであろう。
帰りは研磨とクロと悟で外食。バレーの事で盛り上がる私達。
二人と別れて悟と家までの帰り道もまだ興奮が冷めない。
「楽しかった」
「そりゃ良かった」
「悟は?」
「楽しかったよ」
忙しくてなかなか行くタイミングが無かったが、またすぐに会場で試合の興奮を味わいたくなるほどだった。
この興奮を伝えたくて、後日めちゃくちゃ真希ちゃん達学生を巻き込んでバレーしたのだが……
「やめて、真希ちゃん!!もう私のライフはとっくにゼロよぉっ!!」
「避けんな」
「オーライオーライ」
「しゃけ!!」
「ヘイッ、真希さんパスパス。私が殺ります」
「野薔薇ちゃん物騒!!!」
「頑張って名前姉!!ボール回してくれたら俺ら頑張るから!!」
「なぁ、これ……ドッジボールじゃね?」
めぐみん正解。
なぜかバレーじゃなくドッジボールをした。
後日、テレビにて
『ヘイヘイへーーーい!!宮くんビビってるぅー!!』
『うっっっさいねん!!ビビってへんし!!』
『宮くんのぉー、かっこいいとこ見てみたーい!!』
『見せたるわ!!』
「……嘘だろ、オイ」
「うわー、ヤジ飛ばしてる人がいるね」
「名前さん…」
「名前姉…」
「何やってんのよアンタ」
ガッツリテレビで放送されていて、昔の友人やら諸々から連絡の嵐に私は通知を切った。
あとがき
リクエスト「通行人でムスビィの試合を観に行く」
遅くなってしまい、申し訳ないです!
試合を詳しく書くにはちょっと技術が足りていないので詳しく書けなくてすいません!!
研磨とお揃いコーデのナンパと、ミャーツムにヤジ飛ばしたかった(笑)
臣くんとぼっくんの絡み少なめなのはほんっと申し訳ない……うまく特徴がつかみきれない……。
ミャーツムはエセですが、喧しいから会話入ってくるんです(笑)
リクエストいただき、訪問いただき、サイトの夢を見ていただきありがとうございます。
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