十万企画
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叶わない恋だとわかってた。
敵わない恋だと知っていた。
見慣れない光で輝く銀の髪。
よく分からない目元を隠した布。
時折サングラスになっていて、初めて彼の瞳を見たときは驚いた。
とてもとても、綺麗だったから。
白い肌に似合う、彼だけに許された蒼い瞳。
そして
誰よりも強く、誰にも逆らえさせない強さ。
変わった人だけど、圧倒的強さに憧れた。
自分も呪術師の端くれとして、学生時代から活躍し、特級となった五条さんが恐ろしくも尊敬していた。
聞く噂はとても近寄りがたいものだったが……一目彼を見たときは、多分憧れと同時に恋に落ちていた。
最初は純粋に憧れた。
良くて二級止まりだと言われるこの世の中、大した術式でもなければ抜き出た才能などない私。
それでも呪術師として、五条さんに追い付きたかった。
圧倒的強さは畏怖にもなるが……私にはとても輝いて見えた。
守られているときの安心感。
いつしかその隣に並べたら、なんて夢を持っていた。
なのに
「キミ、強くなると思うんだけどなぁ」
勿体ない戦い方だよ、と五条さんに言われた。
そして五条さんに指南を受ければみるみる強くなっていくことに喜びを感じた。
自分でもわかるほど、戦いの無駄を省けて身体が動く。
諦めかけた強さにまた上を目指そうと思えた。
「随分懐いているな」
ちょっとしたヘマをして家入さんに見てもらった。
「えっと?」
「五条だ」
「五条先輩ですか?」
「アイツに懐くなんてオマエは変わってるな」
「そうですか?」
あまり家入さんとは話さないが、家入さんが五条さんと仲が良いのは周知の事実。
「アイツはやめておけ」
この時はまだよくわかっていなかった。
けれど、五条さんと関わるうちに私はどんどん五条さんに惹かれた。
後輩ではなく、五条さんの特別なのかもなんて浮かれた考えがあった。
そんな考えが出てくると、ふと家入さんの存在が気になった。
五条さんと仲がいいだけ?
そんな時に噂で聞いたのは、五条さんには大切にしている女性がいるということ。
その女性は高専の人達とも友好があるらしく、一度耳にすれば嫌でも耳にはいった。
……家入さんならキッパリと諦められたのかもしれない。
だって彼女は誰もが認める反転術式の使い手だし、綺麗で五条さんの隣に居ても絵になる人だから。
だから、家入さんが五条さんの彼女だと思っていた。
いつも二人で話すときは距離も近いし、どちらも気を許しているように見えたから。
「私と五条が?無いな」
「えっ!?でも、五条さん彼女いるって噂で聞きましたが……」
「あぁ、いるぞ」
「家入さんじゃないなら、やっぱお家的に許嫁とかですかね?」
「いいや」
「………え?」
頭をガツン、と殴られたようだった。
許嫁なら、家入さんなら仕方ない。敵わないと思っていたのに……。
「学生の頃からずっとアイツが片想い拗らせてくっついたんだ」
「学生……から…」
最近入ったばかりの自分の知らない過去の五条さん。そんな学生の頃から……?
彼女がいるなら、諦めなきゃ……と、この恋心を封印する。
だって学生の頃からずっとなんて勝ち目なんかない。私なんかより、ずっとずっと素敵な人なんだ、と言い聞かせる。
じゃないと私はこの恋心を自覚してしまえば……ただ、苦しい思いをするとわかっていたのに。
「平気?」
高い身長を少し屈めて顔を覗き込んでくる姿。
「ほら、頑張って」
私なんかが頑張った所で役に立たないと言っても、何気無い一言とともに背中を押されると頑張れた。
「良くやったじゃん」
出来た時に笑って撫でて貰えた時はもう駄目だった。
私はこの人が好きで、この人に溺れてしまっていた。
だから、少しだけ。
もう少しだけ五条さんにとって可愛い後輩でいたいから……可愛い後輩として可愛がって貰うだけならいいよね?と自分に甘えた。
「五条先輩!!」
「なーに?」
「見てください!!こないだまた二級を1人で倒せましたよ!!」
「頑張ったねー」
「ご褒美ください!」
「よし!なにがいーい?」
「これから帰りですか?それならご飯行きましょ!ご飯!!」
わざと五条さんが帰るのを見計らって声をかけた。
二人っきりでご飯なんて家入さん以外とは行かないと聞いたけど、もしかしたら、と期待してしまう。
だって五条さんは私に優しいから。
私の下心に気付いていたとしても、こうして腕に張り付いたりすることを拒否しない。
「あー、ごめーん。
今日はこれから先約あるから」
「そうでしたか……じゃあ、次はいつ空いてますか?」
「ごめんね」
拒絶だったんだと思う。
顔は笑っているのにスッ、と五条さんは腕を抜いて私の頭を撫でる。
「今度どっか行ったらお土産買ってきてあげる」
「高級で美味しい物がいいです!」
「わかったよ。じゃあね」
今回は少し調子に乗りすぎたかもしれない。
折角可愛い後輩でいようとしたのに、あれじゃ押しが強すぎた。
「………大丈夫」
別に彼女さんに悪いことしているわけじゃないし。
可愛い後輩がご飯ねだっただけ。
頭を撫でて貰っただけ。
これは浮気にもならないし、ただの先輩と後輩のコミュニケーション。
皆の前で五条さんに誉めてもらうのも
皆の前で五条さんと悪ふざけするのも
皆の前で五条さんにくっつくのも
皆の前で五条さんと喧嘩するのも
後輩だから。
私は別に疚しいことなどしていない。
なのに
満たされない。
足りない。
私だけを撫でるわけじゃない。
私だけと悪ふざけするわけじゃない。
私だけと喧嘩するわけじゃない。
私……だけじゃなく、五条さんは自分から誰かにくっつく事はしない。
私は特別にはなれない。
遠目に見える五条さんは私以外の女の横で笑っている。
何かを話す女の言葉を聞くために身を屈め、普段は彼から人へ触れないのに頭や顔を触っている。
わざとのし掛かったり、すり寄って甘えている。
私に見せた笑顔とは全く違う……あの女だけに向けられた笑顔は輝いて見えた。
「五条さんまたイチャついてる」
「やっぱ顔がいいって羨ましいよなー」
「彼女さんも美人だし、気さくないい人だし」
「わかる。あの五条さんの彼女にしてはめちゃめちゃ話しやすい!」
仲間達があの女を誉める。
誰にでもいい顔ばかりする女でしょ、と思うのに……どうして彼はあの女を愛しく囲うの?
どうしてあの女ばかりに触れるの?
どうして、どうして、どうして!!!!
あの女がいれば五条さんの生徒達も集まる。
あの女を中心に皆が笑う。
あの女が………邪魔、だなぁ。
いつもはあそこに私がいるのに。
いつもはあそこで私と皆がふざけ合うのに。
「五条せーんぱいっ」
ドロリ、と溢れた気持ち。
「どーしたの?」
「先輩が見えたので来ちゃいました!!
あれ?もしかして……その方は」
「僕の彼女」
ドロリ、ドロリと溢れる。
あの女にくっついたまま笑顔すら見せずにこちらを見つめる五条さん。
どうして?
どうしてそんな目を向けるの?
「そうだったんですね!はじめまして!
いつも五条先輩にはお世話になってます!!」
「あー、どうも」
「ラブラブなんですね!いいなぁ!
五条先輩みたいなイケメンで優しい彼氏なんて鼻が高いですね!!」
「え?優しい?」
キョトン、とする女。
「イケメンなのは認めるけど優しい……?
この人を優しいと認めたら悠仁くんはもはや天使では?」
「やめてー。俺巻き込まないでよ!」
「今からオマエの愛しのダーリンが優しく愛を囁いて優しくしてわからせてやろうか?」
「あらやだ。お仕事が残っておられるわよダーリン?」
笑いだす周り。
何これ?何でその女を受け入れているの?
いやだ。いやだいやだいやだ。
私が欲しいものをどうして貴女が
「五条先輩……まだご褒美貰っていませんよ?
いつ、私とご飯行ってくれるんですか?」
「おや?悟ってば後輩ちゃんとご飯行ってないの?」
「だって僕忙しいし」
「昨日もぐうたら部屋でゴロゴロしながら映画見てた人の台詞とは思えないな」
「だってさー、せっかくの休みくらい愛してる人と甘い時間過ごしたいじゃん」
ベタベタ張り付く五条さん。
どうしてそんな見せ付けるようにするの?
どうして……私にそんな冷めた目を向けるの?
「真希、パンダ、棘」
「へいへい」
「貸し1ダぞー」
「いくら」
「悟?」
「先に行ってこないだ買ってきたお土産食べてて。
場所は真希達が知ってるから」
甘く蕩けるような笑顔であの女をこの場から追い出す。
2年生の生徒達がジッとこちらを何の感情もない目で見て、あの女と共に居なくなった。
「………私より、あの人が大切なんですか」
だってその人は戦わない。
だってその人じゃ貴方の横に立てない。
だってその人じゃ貴方の背中を守れない。
だってその人じゃ人を救えない。
「私の方が役に立つのに……!!
私の方が皆といるのに!!」
どうして私の邪魔をするの?
どうしてその人を取るの?
その人の隣に居ていいのは!!!
「……あのさぁ」
シンッ、としたこの場にハッとする。
聞きたくない。
私、何かしちゃった?五条さんの可愛い後輩でいたはずなのにどうして……どうしてっ
「僕、キミに興味無いんだよね」
「五条、せん…ぱ、い」
やめて。
そんな興味ないって顔しないでよ。
いつもみたいに笑って?
「わ、私……私っ」
「今までは可愛い後輩だし、頑張ってるなって思っていたけど」
「やだ……先輩…っ」
「僕、あの子に何かありそうなら黙ってらんないよ?」
どうして?
どうして皆まで……っ
その女を守るように立つの?
その女は守られるだけの存在でしょ?
それなら、それなら私の方が……
「アンタ何やったんですか」
「普通に指導しただけ」
「それだけでこうなる?何か勘違いさせたんじゃないの?」
「えー?僕悪くないって」
「五条先生……」
最低だと罵られている五条さん。
違う……だって私が勝手に想っていたの。
だけど、だけど……
ワタシガカレニアイサレタクナッタ
「僕が好きなのは彼女だけ。特別なのも彼女だけ」
ただの後輩でいいと思ってた。
隣に並べなくても、この想いが通じなくても。
「何か期待させたならごめんね?
僕はその想いに答えられないよ」
なのに……私は欲張ってしまった。
この女になら、勝てると思ってしまった。
その結果が後輩の地位すら無くなった。
「じゃあね」
私はもう、彼に近寄ることすら許されない。
一年の生徒達と楽しそうにいなくなってしまった背中を私はただ見ていることしかできなかった。
「言ったろ。
アイツはやめとけって」
「………家入、さん」
呆然と立ち尽くす私の隣に立つ家入さん。
「けど良かったな」
「良かった………?」
好きな人に惨めにフラれたことが?
貴女もあの女の味方なんですか?
「あの馬鹿に気に入られていなかったら今頃生きていられなかったかもしれないぞ」
「まさか……五条先輩が、そんな」
「アイツは殺るぞ」
表情の変えない家入さんになぜか背筋がゾッとした。
嘘……だよね?
だって、私…呪術師で……五条先輩の、後輩……。
「理由は何だってこじつけることができる。
命令違反。
呪詛師との繋がり。
無抵抗の人間を手に掛けようとした罪、とかな」
「!!」
「良かったな」
スタスタ歩いて言ってしまった家入さん。
後日、私は地方へと飛ばされた。
あれから五条さんに会う事も、それどころか高専に戻ることすら出来ずに任地へ駆り出される。
私は一体……
何を間違えてしまったのだろう?
あとがき
リクエスト「彼女持ちの五条に優しくされて勘違いして玉砕」
モブ視点のため、名前変換が無しとなってしまいました……。
彼女は特にイメージしてはいませんが、通行人っぽくなってしまったような……(笑)
我が家の五条はなぜか犬っぽくなるらしい(笑)
自分のに手を出されたり、殺気向けられたら本人よりも先に気付いて排除しようとするセコムとゆーか、番犬(笑)
勿論学生達も番犬(笑)
身を屈めるのは彼女と話すときの癖だったり、
頭撫でるのも彼女によくやる癖が出たりしてそうな、五条さん。
そのくせ、抱き付いたりベタベタするのは彼女だけでその他は自分から進んで触れない。
なので、それで勘違いしてる女はいっぱいいそうだが、彼女以外からの好意はあははは、オメーに興味無いわ、バイバーイとか言っちゃう人。
リクエストありがとうございました!
これからも明星をよろしくお願いいたします!
敵わない恋だと知っていた。
見慣れない光で輝く銀の髪。
よく分からない目元を隠した布。
時折サングラスになっていて、初めて彼の瞳を見たときは驚いた。
とてもとても、綺麗だったから。
白い肌に似合う、彼だけに許された蒼い瞳。
そして
誰よりも強く、誰にも逆らえさせない強さ。
変わった人だけど、圧倒的強さに憧れた。
自分も呪術師の端くれとして、学生時代から活躍し、特級となった五条さんが恐ろしくも尊敬していた。
聞く噂はとても近寄りがたいものだったが……一目彼を見たときは、多分憧れと同時に恋に落ちていた。
最初は純粋に憧れた。
良くて二級止まりだと言われるこの世の中、大した術式でもなければ抜き出た才能などない私。
それでも呪術師として、五条さんに追い付きたかった。
圧倒的強さは畏怖にもなるが……私にはとても輝いて見えた。
守られているときの安心感。
いつしかその隣に並べたら、なんて夢を持っていた。
なのに
「キミ、強くなると思うんだけどなぁ」
勿体ない戦い方だよ、と五条さんに言われた。
そして五条さんに指南を受ければみるみる強くなっていくことに喜びを感じた。
自分でもわかるほど、戦いの無駄を省けて身体が動く。
諦めかけた強さにまた上を目指そうと思えた。
「随分懐いているな」
ちょっとしたヘマをして家入さんに見てもらった。
「えっと?」
「五条だ」
「五条先輩ですか?」
「アイツに懐くなんてオマエは変わってるな」
「そうですか?」
あまり家入さんとは話さないが、家入さんが五条さんと仲が良いのは周知の事実。
「アイツはやめておけ」
この時はまだよくわかっていなかった。
けれど、五条さんと関わるうちに私はどんどん五条さんに惹かれた。
後輩ではなく、五条さんの特別なのかもなんて浮かれた考えがあった。
そんな考えが出てくると、ふと家入さんの存在が気になった。
五条さんと仲がいいだけ?
そんな時に噂で聞いたのは、五条さんには大切にしている女性がいるということ。
その女性は高専の人達とも友好があるらしく、一度耳にすれば嫌でも耳にはいった。
……家入さんならキッパリと諦められたのかもしれない。
だって彼女は誰もが認める反転術式の使い手だし、綺麗で五条さんの隣に居ても絵になる人だから。
だから、家入さんが五条さんの彼女だと思っていた。
いつも二人で話すときは距離も近いし、どちらも気を許しているように見えたから。
「私と五条が?無いな」
「えっ!?でも、五条さん彼女いるって噂で聞きましたが……」
「あぁ、いるぞ」
「家入さんじゃないなら、やっぱお家的に許嫁とかですかね?」
「いいや」
「………え?」
頭をガツン、と殴られたようだった。
許嫁なら、家入さんなら仕方ない。敵わないと思っていたのに……。
「学生の頃からずっとアイツが片想い拗らせてくっついたんだ」
「学生……から…」
最近入ったばかりの自分の知らない過去の五条さん。そんな学生の頃から……?
彼女がいるなら、諦めなきゃ……と、この恋心を封印する。
だって学生の頃からずっとなんて勝ち目なんかない。私なんかより、ずっとずっと素敵な人なんだ、と言い聞かせる。
じゃないと私はこの恋心を自覚してしまえば……ただ、苦しい思いをするとわかっていたのに。
「平気?」
高い身長を少し屈めて顔を覗き込んでくる姿。
「ほら、頑張って」
私なんかが頑張った所で役に立たないと言っても、何気無い一言とともに背中を押されると頑張れた。
「良くやったじゃん」
出来た時に笑って撫でて貰えた時はもう駄目だった。
私はこの人が好きで、この人に溺れてしまっていた。
だから、少しだけ。
もう少しだけ五条さんにとって可愛い後輩でいたいから……可愛い後輩として可愛がって貰うだけならいいよね?と自分に甘えた。
「五条先輩!!」
「なーに?」
「見てください!!こないだまた二級を1人で倒せましたよ!!」
「頑張ったねー」
「ご褒美ください!」
「よし!なにがいーい?」
「これから帰りですか?それならご飯行きましょ!ご飯!!」
わざと五条さんが帰るのを見計らって声をかけた。
二人っきりでご飯なんて家入さん以外とは行かないと聞いたけど、もしかしたら、と期待してしまう。
だって五条さんは私に優しいから。
私の下心に気付いていたとしても、こうして腕に張り付いたりすることを拒否しない。
「あー、ごめーん。
今日はこれから先約あるから」
「そうでしたか……じゃあ、次はいつ空いてますか?」
「ごめんね」
拒絶だったんだと思う。
顔は笑っているのにスッ、と五条さんは腕を抜いて私の頭を撫でる。
「今度どっか行ったらお土産買ってきてあげる」
「高級で美味しい物がいいです!」
「わかったよ。じゃあね」
今回は少し調子に乗りすぎたかもしれない。
折角可愛い後輩でいようとしたのに、あれじゃ押しが強すぎた。
「………大丈夫」
別に彼女さんに悪いことしているわけじゃないし。
可愛い後輩がご飯ねだっただけ。
頭を撫でて貰っただけ。
これは浮気にもならないし、ただの先輩と後輩のコミュニケーション。
皆の前で五条さんに誉めてもらうのも
皆の前で五条さんと悪ふざけするのも
皆の前で五条さんにくっつくのも
皆の前で五条さんと喧嘩するのも
後輩だから。
私は別に疚しいことなどしていない。
なのに
満たされない。
足りない。
私だけを撫でるわけじゃない。
私だけと悪ふざけするわけじゃない。
私だけと喧嘩するわけじゃない。
私……だけじゃなく、五条さんは自分から誰かにくっつく事はしない。
私は特別にはなれない。
遠目に見える五条さんは私以外の女の横で笑っている。
何かを話す女の言葉を聞くために身を屈め、普段は彼から人へ触れないのに頭や顔を触っている。
わざとのし掛かったり、すり寄って甘えている。
私に見せた笑顔とは全く違う……あの女だけに向けられた笑顔は輝いて見えた。
「五条さんまたイチャついてる」
「やっぱ顔がいいって羨ましいよなー」
「彼女さんも美人だし、気さくないい人だし」
「わかる。あの五条さんの彼女にしてはめちゃめちゃ話しやすい!」
仲間達があの女を誉める。
誰にでもいい顔ばかりする女でしょ、と思うのに……どうして彼はあの女を愛しく囲うの?
どうしてあの女ばかりに触れるの?
どうして、どうして、どうして!!!!
あの女がいれば五条さんの生徒達も集まる。
あの女を中心に皆が笑う。
あの女が………邪魔、だなぁ。
いつもはあそこに私がいるのに。
いつもはあそこで私と皆がふざけ合うのに。
「五条せーんぱいっ」
ドロリ、と溢れた気持ち。
「どーしたの?」
「先輩が見えたので来ちゃいました!!
あれ?もしかして……その方は」
「僕の彼女」
ドロリ、ドロリと溢れる。
あの女にくっついたまま笑顔すら見せずにこちらを見つめる五条さん。
どうして?
どうしてそんな目を向けるの?
「そうだったんですね!はじめまして!
いつも五条先輩にはお世話になってます!!」
「あー、どうも」
「ラブラブなんですね!いいなぁ!
五条先輩みたいなイケメンで優しい彼氏なんて鼻が高いですね!!」
「え?優しい?」
キョトン、とする女。
「イケメンなのは認めるけど優しい……?
この人を優しいと認めたら悠仁くんはもはや天使では?」
「やめてー。俺巻き込まないでよ!」
「今からオマエの愛しのダーリンが優しく愛を囁いて優しくしてわからせてやろうか?」
「あらやだ。お仕事が残っておられるわよダーリン?」
笑いだす周り。
何これ?何でその女を受け入れているの?
いやだ。いやだいやだいやだ。
私が欲しいものをどうして貴女が
「五条先輩……まだご褒美貰っていませんよ?
いつ、私とご飯行ってくれるんですか?」
「おや?悟ってば後輩ちゃんとご飯行ってないの?」
「だって僕忙しいし」
「昨日もぐうたら部屋でゴロゴロしながら映画見てた人の台詞とは思えないな」
「だってさー、せっかくの休みくらい愛してる人と甘い時間過ごしたいじゃん」
ベタベタ張り付く五条さん。
どうしてそんな見せ付けるようにするの?
どうして……私にそんな冷めた目を向けるの?
「真希、パンダ、棘」
「へいへい」
「貸し1ダぞー」
「いくら」
「悟?」
「先に行ってこないだ買ってきたお土産食べてて。
場所は真希達が知ってるから」
甘く蕩けるような笑顔であの女をこの場から追い出す。
2年生の生徒達がジッとこちらを何の感情もない目で見て、あの女と共に居なくなった。
「………私より、あの人が大切なんですか」
だってその人は戦わない。
だってその人じゃ貴方の横に立てない。
だってその人じゃ貴方の背中を守れない。
だってその人じゃ人を救えない。
「私の方が役に立つのに……!!
私の方が皆といるのに!!」
どうして私の邪魔をするの?
どうしてその人を取るの?
その人の隣に居ていいのは!!!
「……あのさぁ」
シンッ、としたこの場にハッとする。
聞きたくない。
私、何かしちゃった?五条さんの可愛い後輩でいたはずなのにどうして……どうしてっ
「僕、キミに興味無いんだよね」
「五条、せん…ぱ、い」
やめて。
そんな興味ないって顔しないでよ。
いつもみたいに笑って?
「わ、私……私っ」
「今までは可愛い後輩だし、頑張ってるなって思っていたけど」
「やだ……先輩…っ」
「僕、あの子に何かありそうなら黙ってらんないよ?」
どうして?
どうして皆まで……っ
その女を守るように立つの?
その女は守られるだけの存在でしょ?
それなら、それなら私の方が……
「アンタ何やったんですか」
「普通に指導しただけ」
「それだけでこうなる?何か勘違いさせたんじゃないの?」
「えー?僕悪くないって」
「五条先生……」
最低だと罵られている五条さん。
違う……だって私が勝手に想っていたの。
だけど、だけど……
ワタシガカレニアイサレタクナッタ
「僕が好きなのは彼女だけ。特別なのも彼女だけ」
ただの後輩でいいと思ってた。
隣に並べなくても、この想いが通じなくても。
「何か期待させたならごめんね?
僕はその想いに答えられないよ」
なのに……私は欲張ってしまった。
この女になら、勝てると思ってしまった。
その結果が後輩の地位すら無くなった。
「じゃあね」
私はもう、彼に近寄ることすら許されない。
一年の生徒達と楽しそうにいなくなってしまった背中を私はただ見ていることしかできなかった。
「言ったろ。
アイツはやめとけって」
「………家入、さん」
呆然と立ち尽くす私の隣に立つ家入さん。
「けど良かったな」
「良かった………?」
好きな人に惨めにフラれたことが?
貴女もあの女の味方なんですか?
「あの馬鹿に気に入られていなかったら今頃生きていられなかったかもしれないぞ」
「まさか……五条先輩が、そんな」
「アイツは殺るぞ」
表情の変えない家入さんになぜか背筋がゾッとした。
嘘……だよね?
だって、私…呪術師で……五条先輩の、後輩……。
「理由は何だってこじつけることができる。
命令違反。
呪詛師との繋がり。
無抵抗の人間を手に掛けようとした罪、とかな」
「!!」
「良かったな」
スタスタ歩いて言ってしまった家入さん。
後日、私は地方へと飛ばされた。
あれから五条さんに会う事も、それどころか高専に戻ることすら出来ずに任地へ駆り出される。
私は一体……
何を間違えてしまったのだろう?
あとがき
リクエスト「彼女持ちの五条に優しくされて勘違いして玉砕」
モブ視点のため、名前変換が無しとなってしまいました……。
彼女は特にイメージしてはいませんが、通行人っぽくなってしまったような……(笑)
我が家の五条はなぜか犬っぽくなるらしい(笑)
自分のに手を出されたり、殺気向けられたら本人よりも先に気付いて排除しようとするセコムとゆーか、番犬(笑)
勿論学生達も番犬(笑)
身を屈めるのは彼女と話すときの癖だったり、
頭撫でるのも彼女によくやる癖が出たりしてそうな、五条さん。
そのくせ、抱き付いたりベタベタするのは彼女だけでその他は自分から進んで触れない。
なので、それで勘違いしてる女はいっぱいいそうだが、彼女以外からの好意はあははは、オメーに興味無いわ、バイバーイとか言っちゃう人。
リクエストありがとうございました!
これからも明星をよろしくお願いいたします!