十万企画
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高専の中庭に漂う香ばしい匂い。
「へいらっしゃい!!」
「何してんの」
ハチマキ巻いてたこ焼き転がす彼女に五条はツッコんだ。
どーも!毎度お馴染み通行人名前と申しまーす!
近所のおいたんとおばたんと仲良く話していたら、冷凍のタコを大量に頂いた。
1人で食べるよりは食べ盛りの子供らもいるわけだし、たこ焼きパーチー開催すべきじゃね?と脳内0.5秒の解答。
そして私はタコパを開催すべくスーパーへ走ったのだった。
「はい、悟の分」
「どーも」
食欲旺盛な子供達に1人じゃ太刀打ちできないので、今回はアシスタントを頼んだ。
「伏黒、これ出来たよー」
「ん」
「真希さぁぁあああん!!!これ私が丹精込めて育てたたこ焼きです!!」
「ちょっと野薔薇ちゃんズルいよ!!私だって真希ちゃんに私のたこ焼き食べて欲しいのに!!」
「ハッ!!私のたこ焼きが真希さんの血となり肉となるのよ」
「オマエらうぜーぞ」
「棘、まだか?」
「しゃけ」
悠仁くん、棘くんが今回はアシスタントとなってくれましたー!パチパチ。
野薔薇ちゃんはやりたい時に焼いて食べたいときに食べる係らしい。
「いいもの食べてるな」
「硝子じゃん」
「硝子ちゃんこれ塩辛入りの食べる?」
「いる」
「え?」
「キムチ入りもあるよ」
「食べる」
「待って。たこ焼きってタコ以外も入れるの?」
それってたこ焼きじゃなくない?
なーんて悟が言い出したから周りが固まった。
「五条先生……たこ焼き作ったことねぇの?」
「無いかなぁ」
「あんた……もしかしてタコ以外のたこ焼き知らないの?」
「タコ入ってるからたこ焼きでしょ?
他の具材入れるなんて邪道じゃん」
「悟、あーん」
「あーん?」
冷めたたこ焼きを口に入れてやる。
もぐもぐする悟だったが、ピタリと止まった。
「………なにこれ」
「チーズとウインナー」
「うまっ」
「お子様向けのたこ焼きとなっております」
「硝子、塩辛の食べてみたい」
「やらん」
ウキウキし始めた悟。
学生の頃にやっていそうなのにやったことなかったのか。
「そんな五条先生にはこれ食べてー!!」
「しゃけしゃけ」
満面の笑顔で悠仁くんと棘くんが差し出したたこ焼き。
キラキラ輝く笑顔に悟もウキウキワクワクで口の中へ。
「あっ!!ちょっと悟それは!!」
「……………」
「どう?どう?先生!!」
「ツナツナ」
「あーぁ……」
固まった悟。
可哀想に……純粋に楽しんで味の感想を求めている2人に怒るに怒れないのだろう。
「何食べたんだ、あれ」
「多分生姜か山葵か……」
「チョコかベビースターか漬物ね」
「オマエら何混ぜてんだよ」
「漬物美味しそうだな」
「棘くんには変わり種担当してもらっているから……まぁ、不味くはないと思うけど」
「え、うま。面白いくらい不協和音なのにうまっ」
「やったー!!」「しゃけ!」
「ちなみに何食べたの悟」
「チョコ」
嬉しそうにもぐもぐする悟。
野薔薇ちゃんとめぐみんから舌打ちが。
「ほら、もっと食べなさいよ」
「五条先生これとかどうですか」
「えー?他に何あるの?」
「豚たま、ベビーホタテ、塩辛、キムチ、ウインナー、チーズ、チョコ、ベビースター、山葵、生姜、漬物かな」
「タコどこいったの?」
「たまに入ってるぞ」
「うおおおおおおおっ!!!」
パンダが叫び地面に転がる。
「なお、山葵と生姜はエグい量を入れてます」
「しゃけ」
「何してんのキミたち」
「ちなみに作った俺らも覚えてない!!」
「何してんのまじで」
「責任者」
「監督不届きでした。さーせん」
いい笑顔の悠仁くんと棘くん。
てへぺろ、なんて可愛いから許したくなるが……
「この大量のたこ焼きの中に罰ゲームが仕込まれているとは……」
「ロシアンルーレットね」
「一応わかる範囲で分けてますが、保証は出来ません」
美味しいタコパから、突然開催された恐怖のロシアンタコパに全員が喉をならす。
「まぁ、言っても山葵と生姜だしね。
芸人顔負けの反応なんて大袈裟だって」
「それをオレの顔見ながら言えるか?名前」
「………大袈裟だって」
「まだ鼻がツーンとしてるぞ」
「ほらパンダ、たこ焼きだよ」
「真っ赤すぎない?ねぇ、そのたこ焼き真っ赤すぎない?キムチにしては赤すぎない?」
「大丈夫大丈夫。硝子ちゃんは美味しかったと言ってたから」
「ウマイぞ」
「あ、まじだ。ウマイ。中にチーズ入ってる」
「名前姉、俺も俺も」
「しゃけ」
「はい、二人もお疲れ様。ちゃんと食べてね」
遊び心満載な棘くんを焼き係から外す。
そしてパクパク食べ始める悠仁くんと棘くん。
「よし、真希さん次は何食べます?」
「まだ余ってんぞ」
「冷めたのは野郎共が食べますから」
「名前さん、豚たまとホタテ食いたい」
「今焼いてるよー」
「私もそれ食う」
「なら私もー」
「僕もー」
途中、出汁をかけて食べたりと、バラエティー豊富なタコパにみんなお腹も心も満たされる。
「さて、諸君」
ここに残った10個のたこ焼き。
「なんやかんやありまして、なんと外れの山葵たっぷりたこ焼きがまだ残っているらしいです」
「しゃけ!!」
得意気な棘くん。
可愛らしいが、中に入っているエグいレベルの山葵は可愛らしくない。
「ヤバいぞ、あれは」
被害者1:パンダ
口と鼻の中が刺激しかなかった
「止めなさいよ」
「楽しくなってつい」
被害者2と3:野薔薇、悠仁
地獄をみた
「五個作ったらしいから、残り二個必ず入っているらしい」
「他のたこ焼きは?」
「ウインナーかチョコか普通のやつかな」
「よりによって微妙な残り」
「棘、目印とかつけなかったのかよ」
「おかか」
全員で顔を見合わせる。
「お腹大丈夫な人」
念のため聞いてみたが、誰も手を上げない。
そりゃそーだ。残った分以上にめちゃくちゃ食べたもんな、たこ焼き。
「ここで提案があります」
「発言を許そう」
「夜蛾先生、伊地知くん、七海くんとその後輩が今高専内にいます」
「OK。伊地知と七海の口に詰め込もう」
「オマエはどうして後輩を苛めるんだ」
「伊地知はいつものことだし、七海は個人的に
名前と仲良すぎてムカつく」
「名前、この馬鹿の口の中に詰め込め」
硝子ちゃんが後輩を守ってる……!!!
そして理不尽な理由で七海くんが危ないっ!!
「そしてもう1人、スペシャルゲストが間もなく到着しそうです」
「誰だよ」
「私らが知ってる奴?」
真希ちゃんと野薔薇ちゃんが注目してくれる。
「東堂くんです」
「何で!?」
「流石ブラザー悠仁くん。反応が速い」
「あのゴリラ何しに来るのよ」
「そもそもなんでアンタ来るって知ってんスか」
「東堂くんとは交流会の時に連絡先交換したんだよね、なぜか。
そしたら今日推しの個握があるとかでわざわざ東京を応募したら当たったらしい」
「仲良しかよ」
「名前って本当変なのに好かれるナ」
「しゃけ」
「待たせたな、ブラザーにシスター」
「来ちゃった!!!!」
悠仁くんが一目散に走り去る。
「ブラザー!!!」
「東堂くんおっつー。道は迷わなかったかい?」
「あぁ。乗り換えや会場までの道のりを詳しく送ってくれて助かった」
「いやいや。ところでお腹空いてない?」
「空いているが」
「此方に悠仁くんが焼いたたこ焼きがあります」
「貰おう」
流れるようにたこ焼きを受け取り、口へと運ぶ東堂くん。
「遊び心で何が当たるかわかりません」
「ウインナーとチーズか」
「ちなみに東堂くん」
「どうした?」
「こちら、ロシアンルーレットのため二個ほど山葵たっぷりです」
「ふむ。なかなか攻めたな」
「ブラザーの作ったロシアンたこ焼きを君は残さず食べきれるか!?」
「フッ、その挑戦受けてやろう!!」
バサッ、と上着を脱ぎ捨てる東堂くん。
うん、ノリがいいよね。
ラインしててもなかなかのノリの良さに私は嫌いじゃないよ。
「いや、何でアンタそんなに仲良いんスか」
「流石下手物担当」
「いくら」
「パンダ、下手物担当はやめて。
もれなく君たち全員下手物のカテゴリー入るよ」
「私と真希さんを下手物扱いしてんじゃないわよ。
旦那とそこのゴリラは確実に下手物枠よ」
「野薔薇酷すぎない?
僕はイケメン枠だって」
もぐもぐと食べている東堂くん。
顔色一つ変えてない……だと!?
「どちらかと言えば私はイケメン担当だと思うなぁ」
「ほらね!名前も僕の魅力にとりつかれてるよね」
「めぐみんはクールビューティーだし、悠仁くんは女心がわかってる子だし、棘くんは気遣いの出来る心優しい子だし、真希ちゃんは全てが格好いいし、野薔薇ちゃんは己を貫ける男前だし……そもそも全員顔がいい」
「待ってオレは?」
「パンダは……パンダの中のパンダかな」
なぜか照れ始める子供達。
コソッと戻ってきた悠仁くんもいる。
「東堂くんはね、外見はゴリゴリしくすぐ脱ぎたがるし、年齢が不明なほど上から目線だけどさ」
「どこにイケメン要素があるのよ」
「優しいんだよねぇ」
「ブラザー」
空になったお皿。
そして隠れている悠仁くんを見つめる。
「大丈夫だ、わかっている。
俺はオマエに兄弟として試されていたのだろう?」
「いや……あの……」
「オマエが作ったたこ焼き、美味しかった。
少々刺激の強いものもあったが……オマエの作ったものを残す俺ではない」
「と、東堂……お前っ」
「このツンッと貫く痛みと痺れこそオマエからのメッセージ……しかと受け取った。
俺はオマエの親友であり兄弟だ。
この山葵の様な刺激こそ時に必要な事もある」
空を見上げる東堂くん。
「どんなメッセージだよ」
「食わせたアンタがツッコむのかよ」
「だってめぐみん……」
東堂くん……山葵辛かったんだね。
涙でびちょびちょで、なおかつ鼻がツンッとするせいで中心に顔が寄ってるよ。
それでも悠仁くんへ感想を伝える心意気。
「山葵の花言葉は"目覚め"と"嬉し涙"。
つまり、ブラザー!!
兄弟として"目覚め"た俺との再開を"嬉し涙"が溢れるほどの山葵を詰め込んだこのたこ焼きを完食したことにより!!俺達の絆はますます深まったと!!」
「何でそうなんの!?」
カッ、と目を見開き叫ぶ東堂くん。
「ほら、優しいでしょ?
罰ゲームだって言ってんのに完食して」
「ただの馬鹿じゃない」
「この茶番見てなきゃ駄目か?」
「おかか」
「そうだな。棘、戻ろうゼ」
ぞろぞろと片付けを始める子供達。
「東堂くん、熱いお茶あげる」
「すまない、シスター」
「熱いからね」
「ふぅ……。俺はそろそろ帰りの電車の時間だから帰ることにする」
「気を付けてね。あ、これ東京限定高田ちゃんグッズ」
「悪いな。代金と京都のお土産だ」
「わざわざお土産までありがとー」
「じゃあブラザー虎杖。シスター苗字。
また会おう」
嵐のように帰って行った東堂くん。
「名前姉……アイツ何しに来たの?」
「山葵入りたこ焼きの処理かな」
「そのためだけに葵呼んだの?」
「いや、数日前に任務帰りに個握に行く事が決まってて、その時間の乗り換えの方法詳しく教えたら、帰りの時間的に高田ちゃんの東京限定グッズが買えないと嘆いていたので代わりに買っておくと言ったらお金届けに顔を出すって」
「あ、大吾の爾比久良じゃん」
「なにそれ?」
「高級な和菓子だよ」
悟に値段を見せられて驚いた。
値段は見なかったことにして、東堂くんに後でまたお礼を言おうと決めた。
「オマエは猛獣担当だな」
「突然なしたの?硝子ちゃん」
「ここにいる猛獣達を飼育しているんだ。
猛獣担当枠だろ」
「間違いではないが……いや、猛獣か」
「よく飼い慣らしているが、一番の猛獣の手綱はしっかり握っててくれ」
「だーれが猛獣だよ」
のしっ、と後ろからのし掛かる悟。
君、猛獣の自覚あるの?
「名前、これあーげる」
「あれ?まだ残ってたの?」
「うん。ほらあーん」
口の中に詰め込まれ、もぐもぐと咀嚼。
そして………
「…………!!!!!!!」
鼻からツンッと抜ける辛さに膝から崩れ落ち、必死に吐き出さないように口元を抑える。
えっ?なにこの量えっっっぐ!!!!
噛むほど滲み出てくる緑のアイツが私の舌と口のなかを刺激していやがる……!!
「あーはっはっはっは!!」
悟がケラケラ笑い転げている。
野郎……山葵入りを隠し持っていやがったのか…!!
「名前さん………大丈夫っすか?」
「名前姉、お茶!!ほらお茶!!」
「ちょっと大丈夫?」
なんとかお茶で流し込み、むせる私の背中を撫でてくれる優しい一年達。
「悟やりすぎだぞ。それまじでエグい」
「おかか」
「いやーだってさ、葵に二個食わそうとしてたのは可哀想じゃん?だから責任持って本人が片付けるべきだと僕は判断しました!」
「動かないぞ」
2年達が悟を叱っている。
確かにコレを二個も食べるのはよろしくない。
東堂くんごめんよ……君に押し付けようとして……。
「五条先生やりすぎだよ。名前姉泣いてるじゃん」
「最低ですね」
「最低ね」
野薔薇ちゃんに抱きついてしくしく泣く私。
いや、まだ口のなか纏わりついてる気がする……こんなの食べて話していた東堂くん男前過ぎだろ。
「流石のオマエでも大人しくなるレベルなのか」
「硝子ちゃん……術式使って私を癒して」
「無理だ」
「ごーめんって。ちょっとした悪ふざけじゃん」
「悟………悪いと思うならちょっと」
コイコイ、と手招きする。
大人しくしゃがんでくれる悟。
「これね、たこ焼きついでにホットケーキの粉で作ったんだ…」
「鈴カステラみたい」
「中にチョコ仕込んで美味しく出来たの」
「くれるの?」
「うん。ほら、みんなの分もあるから」
デザートは別腹だとパクパク食べる子供達。
悟も一口で食べる。
「…………」
「美味しいだろ?なぁ、美味しいと言いやがれこの野郎」
「…………」
「勿論吐き出したら駄目だから」
「…………」
無言で固まる悟。
全員が何をしたんだ、と見てくる。
「何やったんだ?」
「中身塩辛突っ込んで焼いただけ」
「うわ……」
「悟に食べさせようと思っていたら先に攻撃された」
「どっちもどっちじゃない」
「勝手にやってろ」
馬鹿馬鹿しい、と呆れて片付けに戻る子供達。
硝子ちゃんもそろそろ戻ると行ってしまい、残されたのは悟と私。
「似た者同士だね、僕ら」
「塩辛パンケーキならまだ可愛いって」
「嫌がらせにも程がある」
「先にやったの悟」
山葵で痺れる口の中。
気分的に舌を出して空気に晒しても変わらない。
「名前」
「ん?」
悟に呼ばれて振り向けば、舌を絡ませて口付ける悟。
一瞬の出来事にポカンとしてしまうが……
「オ"ッエ"」
「ほら、めっちゃ不味い」
「おまっ!!」
「つか僕の舌も痛いんだけど。どんだけ山葵盛ったの?」
不味いし痛いしお揃い、と笑う悟。
馬鹿馬鹿しくなって二人で笑った。
あとがき
リクエスト「高専皆とタコパする話」
まさかの東堂(笑)
東堂入れると不思議と盛り上がる(笑)
最後はちょっと甘さをプラス。
ちなみに高級和菓子は食べたことない(笑)
リクエストありがとうございました!
「へいらっしゃい!!」
「何してんの」
ハチマキ巻いてたこ焼き転がす彼女に五条はツッコんだ。
どーも!毎度お馴染み通行人名前と申しまーす!
近所のおいたんとおばたんと仲良く話していたら、冷凍のタコを大量に頂いた。
1人で食べるよりは食べ盛りの子供らもいるわけだし、たこ焼きパーチー開催すべきじゃね?と脳内0.5秒の解答。
そして私はタコパを開催すべくスーパーへ走ったのだった。
「はい、悟の分」
「どーも」
食欲旺盛な子供達に1人じゃ太刀打ちできないので、今回はアシスタントを頼んだ。
「伏黒、これ出来たよー」
「ん」
「真希さぁぁあああん!!!これ私が丹精込めて育てたたこ焼きです!!」
「ちょっと野薔薇ちゃんズルいよ!!私だって真希ちゃんに私のたこ焼き食べて欲しいのに!!」
「ハッ!!私のたこ焼きが真希さんの血となり肉となるのよ」
「オマエらうぜーぞ」
「棘、まだか?」
「しゃけ」
悠仁くん、棘くんが今回はアシスタントとなってくれましたー!パチパチ。
野薔薇ちゃんはやりたい時に焼いて食べたいときに食べる係らしい。
「いいもの食べてるな」
「硝子じゃん」
「硝子ちゃんこれ塩辛入りの食べる?」
「いる」
「え?」
「キムチ入りもあるよ」
「食べる」
「待って。たこ焼きってタコ以外も入れるの?」
それってたこ焼きじゃなくない?
なーんて悟が言い出したから周りが固まった。
「五条先生……たこ焼き作ったことねぇの?」
「無いかなぁ」
「あんた……もしかしてタコ以外のたこ焼き知らないの?」
「タコ入ってるからたこ焼きでしょ?
他の具材入れるなんて邪道じゃん」
「悟、あーん」
「あーん?」
冷めたたこ焼きを口に入れてやる。
もぐもぐする悟だったが、ピタリと止まった。
「………なにこれ」
「チーズとウインナー」
「うまっ」
「お子様向けのたこ焼きとなっております」
「硝子、塩辛の食べてみたい」
「やらん」
ウキウキし始めた悟。
学生の頃にやっていそうなのにやったことなかったのか。
「そんな五条先生にはこれ食べてー!!」
「しゃけしゃけ」
満面の笑顔で悠仁くんと棘くんが差し出したたこ焼き。
キラキラ輝く笑顔に悟もウキウキワクワクで口の中へ。
「あっ!!ちょっと悟それは!!」
「……………」
「どう?どう?先生!!」
「ツナツナ」
「あーぁ……」
固まった悟。
可哀想に……純粋に楽しんで味の感想を求めている2人に怒るに怒れないのだろう。
「何食べたんだ、あれ」
「多分生姜か山葵か……」
「チョコかベビースターか漬物ね」
「オマエら何混ぜてんだよ」
「漬物美味しそうだな」
「棘くんには変わり種担当してもらっているから……まぁ、不味くはないと思うけど」
「え、うま。面白いくらい不協和音なのにうまっ」
「やったー!!」「しゃけ!」
「ちなみに何食べたの悟」
「チョコ」
嬉しそうにもぐもぐする悟。
野薔薇ちゃんとめぐみんから舌打ちが。
「ほら、もっと食べなさいよ」
「五条先生これとかどうですか」
「えー?他に何あるの?」
「豚たま、ベビーホタテ、塩辛、キムチ、ウインナー、チーズ、チョコ、ベビースター、山葵、生姜、漬物かな」
「タコどこいったの?」
「たまに入ってるぞ」
「うおおおおおおおっ!!!」
パンダが叫び地面に転がる。
「なお、山葵と生姜はエグい量を入れてます」
「しゃけ」
「何してんのキミたち」
「ちなみに作った俺らも覚えてない!!」
「何してんのまじで」
「責任者」
「監督不届きでした。さーせん」
いい笑顔の悠仁くんと棘くん。
てへぺろ、なんて可愛いから許したくなるが……
「この大量のたこ焼きの中に罰ゲームが仕込まれているとは……」
「ロシアンルーレットね」
「一応わかる範囲で分けてますが、保証は出来ません」
美味しいタコパから、突然開催された恐怖のロシアンタコパに全員が喉をならす。
「まぁ、言っても山葵と生姜だしね。
芸人顔負けの反応なんて大袈裟だって」
「それをオレの顔見ながら言えるか?名前」
「………大袈裟だって」
「まだ鼻がツーンとしてるぞ」
「ほらパンダ、たこ焼きだよ」
「真っ赤すぎない?ねぇ、そのたこ焼き真っ赤すぎない?キムチにしては赤すぎない?」
「大丈夫大丈夫。硝子ちゃんは美味しかったと言ってたから」
「ウマイぞ」
「あ、まじだ。ウマイ。中にチーズ入ってる」
「名前姉、俺も俺も」
「しゃけ」
「はい、二人もお疲れ様。ちゃんと食べてね」
遊び心満載な棘くんを焼き係から外す。
そしてパクパク食べ始める悠仁くんと棘くん。
「よし、真希さん次は何食べます?」
「まだ余ってんぞ」
「冷めたのは野郎共が食べますから」
「名前さん、豚たまとホタテ食いたい」
「今焼いてるよー」
「私もそれ食う」
「なら私もー」
「僕もー」
途中、出汁をかけて食べたりと、バラエティー豊富なタコパにみんなお腹も心も満たされる。
「さて、諸君」
ここに残った10個のたこ焼き。
「なんやかんやありまして、なんと外れの山葵たっぷりたこ焼きがまだ残っているらしいです」
「しゃけ!!」
得意気な棘くん。
可愛らしいが、中に入っているエグいレベルの山葵は可愛らしくない。
「ヤバいぞ、あれは」
被害者1:パンダ
口と鼻の中が刺激しかなかった
「止めなさいよ」
「楽しくなってつい」
被害者2と3:野薔薇、悠仁
地獄をみた
「五個作ったらしいから、残り二個必ず入っているらしい」
「他のたこ焼きは?」
「ウインナーかチョコか普通のやつかな」
「よりによって微妙な残り」
「棘、目印とかつけなかったのかよ」
「おかか」
全員で顔を見合わせる。
「お腹大丈夫な人」
念のため聞いてみたが、誰も手を上げない。
そりゃそーだ。残った分以上にめちゃくちゃ食べたもんな、たこ焼き。
「ここで提案があります」
「発言を許そう」
「夜蛾先生、伊地知くん、七海くんとその後輩が今高専内にいます」
「OK。伊地知と七海の口に詰め込もう」
「オマエはどうして後輩を苛めるんだ」
「伊地知はいつものことだし、七海は個人的に
名前と仲良すぎてムカつく」
「名前、この馬鹿の口の中に詰め込め」
硝子ちゃんが後輩を守ってる……!!!
そして理不尽な理由で七海くんが危ないっ!!
「そしてもう1人、スペシャルゲストが間もなく到着しそうです」
「誰だよ」
「私らが知ってる奴?」
真希ちゃんと野薔薇ちゃんが注目してくれる。
「東堂くんです」
「何で!?」
「流石ブラザー悠仁くん。反応が速い」
「あのゴリラ何しに来るのよ」
「そもそもなんでアンタ来るって知ってんスか」
「東堂くんとは交流会の時に連絡先交換したんだよね、なぜか。
そしたら今日推しの個握があるとかでわざわざ東京を応募したら当たったらしい」
「仲良しかよ」
「名前って本当変なのに好かれるナ」
「しゃけ」
「待たせたな、ブラザーにシスター」
「来ちゃった!!!!」
悠仁くんが一目散に走り去る。
「ブラザー!!!」
「東堂くんおっつー。道は迷わなかったかい?」
「あぁ。乗り換えや会場までの道のりを詳しく送ってくれて助かった」
「いやいや。ところでお腹空いてない?」
「空いているが」
「此方に悠仁くんが焼いたたこ焼きがあります」
「貰おう」
流れるようにたこ焼きを受け取り、口へと運ぶ東堂くん。
「遊び心で何が当たるかわかりません」
「ウインナーとチーズか」
「ちなみに東堂くん」
「どうした?」
「こちら、ロシアンルーレットのため二個ほど山葵たっぷりです」
「ふむ。なかなか攻めたな」
「ブラザーの作ったロシアンたこ焼きを君は残さず食べきれるか!?」
「フッ、その挑戦受けてやろう!!」
バサッ、と上着を脱ぎ捨てる東堂くん。
うん、ノリがいいよね。
ラインしててもなかなかのノリの良さに私は嫌いじゃないよ。
「いや、何でアンタそんなに仲良いんスか」
「流石下手物担当」
「いくら」
「パンダ、下手物担当はやめて。
もれなく君たち全員下手物のカテゴリー入るよ」
「私と真希さんを下手物扱いしてんじゃないわよ。
旦那とそこのゴリラは確実に下手物枠よ」
「野薔薇酷すぎない?
僕はイケメン枠だって」
もぐもぐと食べている東堂くん。
顔色一つ変えてない……だと!?
「どちらかと言えば私はイケメン担当だと思うなぁ」
「ほらね!名前も僕の魅力にとりつかれてるよね」
「めぐみんはクールビューティーだし、悠仁くんは女心がわかってる子だし、棘くんは気遣いの出来る心優しい子だし、真希ちゃんは全てが格好いいし、野薔薇ちゃんは己を貫ける男前だし……そもそも全員顔がいい」
「待ってオレは?」
「パンダは……パンダの中のパンダかな」
なぜか照れ始める子供達。
コソッと戻ってきた悠仁くんもいる。
「東堂くんはね、外見はゴリゴリしくすぐ脱ぎたがるし、年齢が不明なほど上から目線だけどさ」
「どこにイケメン要素があるのよ」
「優しいんだよねぇ」
「ブラザー」
空になったお皿。
そして隠れている悠仁くんを見つめる。
「大丈夫だ、わかっている。
俺はオマエに兄弟として試されていたのだろう?」
「いや……あの……」
「オマエが作ったたこ焼き、美味しかった。
少々刺激の強いものもあったが……オマエの作ったものを残す俺ではない」
「と、東堂……お前っ」
「このツンッと貫く痛みと痺れこそオマエからのメッセージ……しかと受け取った。
俺はオマエの親友であり兄弟だ。
この山葵の様な刺激こそ時に必要な事もある」
空を見上げる東堂くん。
「どんなメッセージだよ」
「食わせたアンタがツッコむのかよ」
「だってめぐみん……」
東堂くん……山葵辛かったんだね。
涙でびちょびちょで、なおかつ鼻がツンッとするせいで中心に顔が寄ってるよ。
それでも悠仁くんへ感想を伝える心意気。
「山葵の花言葉は"目覚め"と"嬉し涙"。
つまり、ブラザー!!
兄弟として"目覚め"た俺との再開を"嬉し涙"が溢れるほどの山葵を詰め込んだこのたこ焼きを完食したことにより!!俺達の絆はますます深まったと!!」
「何でそうなんの!?」
カッ、と目を見開き叫ぶ東堂くん。
「ほら、優しいでしょ?
罰ゲームだって言ってんのに完食して」
「ただの馬鹿じゃない」
「この茶番見てなきゃ駄目か?」
「おかか」
「そうだな。棘、戻ろうゼ」
ぞろぞろと片付けを始める子供達。
「東堂くん、熱いお茶あげる」
「すまない、シスター」
「熱いからね」
「ふぅ……。俺はそろそろ帰りの電車の時間だから帰ることにする」
「気を付けてね。あ、これ東京限定高田ちゃんグッズ」
「悪いな。代金と京都のお土産だ」
「わざわざお土産までありがとー」
「じゃあブラザー虎杖。シスター苗字。
また会おう」
嵐のように帰って行った東堂くん。
「名前姉……アイツ何しに来たの?」
「山葵入りたこ焼きの処理かな」
「そのためだけに葵呼んだの?」
「いや、数日前に任務帰りに個握に行く事が決まってて、その時間の乗り換えの方法詳しく教えたら、帰りの時間的に高田ちゃんの東京限定グッズが買えないと嘆いていたので代わりに買っておくと言ったらお金届けに顔を出すって」
「あ、大吾の爾比久良じゃん」
「なにそれ?」
「高級な和菓子だよ」
悟に値段を見せられて驚いた。
値段は見なかったことにして、東堂くんに後でまたお礼を言おうと決めた。
「オマエは猛獣担当だな」
「突然なしたの?硝子ちゃん」
「ここにいる猛獣達を飼育しているんだ。
猛獣担当枠だろ」
「間違いではないが……いや、猛獣か」
「よく飼い慣らしているが、一番の猛獣の手綱はしっかり握っててくれ」
「だーれが猛獣だよ」
のしっ、と後ろからのし掛かる悟。
君、猛獣の自覚あるの?
「名前、これあーげる」
「あれ?まだ残ってたの?」
「うん。ほらあーん」
口の中に詰め込まれ、もぐもぐと咀嚼。
そして………
「…………!!!!!!!」
鼻からツンッと抜ける辛さに膝から崩れ落ち、必死に吐き出さないように口元を抑える。
えっ?なにこの量えっっっぐ!!!!
噛むほど滲み出てくる緑のアイツが私の舌と口のなかを刺激していやがる……!!
「あーはっはっはっは!!」
悟がケラケラ笑い転げている。
野郎……山葵入りを隠し持っていやがったのか…!!
「名前さん………大丈夫っすか?」
「名前姉、お茶!!ほらお茶!!」
「ちょっと大丈夫?」
なんとかお茶で流し込み、むせる私の背中を撫でてくれる優しい一年達。
「悟やりすぎだぞ。それまじでエグい」
「おかか」
「いやーだってさ、葵に二個食わそうとしてたのは可哀想じゃん?だから責任持って本人が片付けるべきだと僕は判断しました!」
「動かないぞ」
2年達が悟を叱っている。
確かにコレを二個も食べるのはよろしくない。
東堂くんごめんよ……君に押し付けようとして……。
「五条先生やりすぎだよ。名前姉泣いてるじゃん」
「最低ですね」
「最低ね」
野薔薇ちゃんに抱きついてしくしく泣く私。
いや、まだ口のなか纏わりついてる気がする……こんなの食べて話していた東堂くん男前過ぎだろ。
「流石のオマエでも大人しくなるレベルなのか」
「硝子ちゃん……術式使って私を癒して」
「無理だ」
「ごーめんって。ちょっとした悪ふざけじゃん」
「悟………悪いと思うならちょっと」
コイコイ、と手招きする。
大人しくしゃがんでくれる悟。
「これね、たこ焼きついでにホットケーキの粉で作ったんだ…」
「鈴カステラみたい」
「中にチョコ仕込んで美味しく出来たの」
「くれるの?」
「うん。ほら、みんなの分もあるから」
デザートは別腹だとパクパク食べる子供達。
悟も一口で食べる。
「…………」
「美味しいだろ?なぁ、美味しいと言いやがれこの野郎」
「…………」
「勿論吐き出したら駄目だから」
「…………」
無言で固まる悟。
全員が何をしたんだ、と見てくる。
「何やったんだ?」
「中身塩辛突っ込んで焼いただけ」
「うわ……」
「悟に食べさせようと思っていたら先に攻撃された」
「どっちもどっちじゃない」
「勝手にやってろ」
馬鹿馬鹿しい、と呆れて片付けに戻る子供達。
硝子ちゃんもそろそろ戻ると行ってしまい、残されたのは悟と私。
「似た者同士だね、僕ら」
「塩辛パンケーキならまだ可愛いって」
「嫌がらせにも程がある」
「先にやったの悟」
山葵で痺れる口の中。
気分的に舌を出して空気に晒しても変わらない。
「名前」
「ん?」
悟に呼ばれて振り向けば、舌を絡ませて口付ける悟。
一瞬の出来事にポカンとしてしまうが……
「オ"ッエ"」
「ほら、めっちゃ不味い」
「おまっ!!」
「つか僕の舌も痛いんだけど。どんだけ山葵盛ったの?」
不味いし痛いしお揃い、と笑う悟。
馬鹿馬鹿しくなって二人で笑った。
あとがき
リクエスト「高専皆とタコパする話」
まさかの東堂(笑)
東堂入れると不思議と盛り上がる(笑)
最後はちょっと甘さをプラス。
ちなみに高級和菓子は食べたことない(笑)
リクエストありがとうございました!