十万企画
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朝起きて目を開けると、いつも隣にはぬくもりがなくなっている。
夜中、気が付いたら帰って来ていて、朝方私が起きる前にはいなくなっているし、そもそも家に帰って来る方が少ない悟。
私はもうその生活に慣れてきていたし、今さら寂しいとも思っていない。
だけど、この日は身体に巻き付く腕の重さを感じ、少し見上げた先には長い睫を閉じたままの綺麗な顔。
そんな姿を目覚めてすぐに見れると寂しくないとは言ったが、嬉しくなる。
細いくせにがっしりとした腕を退けてベットから抜け出す。
あくびを一つ溢しながら洗面所へ行き顔を洗って、眠気を覚ます。
そして簡単な朝食作り。
珈琲の豆をセットしてスイッチを入れる。
キャベツを千切りにし、水にさらしてしっかり水切り。そこへ塩胡椒を少々とマヨネーズ。隠し味に鶏ガラスープの粉末を少々加えて混ぜてしんなりするまで置いておく。
その間に食パンにもマヨネーズを少し塗り、ハムにチーズを乗せてトースターへ。
焼けたパンの上に先ほどのキャベツをたっぷり乗せてパンで挟み、ラップをする。
珈琲の落ちるいい匂いを嗅ぎながら、パンを半分に切り分ける。
適当にフルーツを切って器へ。
これじゃ悟は足りないだろうから、と卵焼きを焼いておく。勿論甘めだ。
「おはよ」
後ろからのし掛かってきた巨体。
さわさわと胸元で怪しい動きをする手を叩き落とす。
「おはよ、悟」
「うん」
ぐりぐりと頭を擦り付けてくる悟に笑って、後片付けをしてしまう。
「座ってて」
「うん」
まだ寝ぼけているのか頭をかきながら大人しく座る悟にミルクと砂糖を入れた甘めなカフェラテを渡す。
私はブラックだ。
朝食を並べれば黙って食べ始めた。
「今日は?」
「休み」
「珍しい」
「久しぶりにまったり名前と居れるよ」
にこり、と笑う悟に今日の予定はどうしようかと考える。
特に予定は無いのだが、せっかくだからどこか行こうか……と考えていると悟の指が私の指と絡む。
「今日はゆっくりお家に居よ」
お家デート、なんて笑って言う悟。
「そう考えると、お家デートってしたことないね」
「同棲してるのにデートってのもおかしいけど」
「………お家デートって何するの?」
「さあ?」
あっという間に朝食を食べ終える。
お家デートと決めたからには、特に気合いを入れて化粧をするわけでもないので部屋着のまま2人でソファーに座り込む。
「ヘイ、SIRI。
お家デートについて教えて」
「検索するの?」
2人でクスクス笑いながら検索すると
「お家デートだとイチャイチャし放題です」
「お家デートだとイチャイチャからエッチな気分に、だーってさ」
「こちら、健全な全年齢対象なのでお断り申し上げます」
「えーー」
「こらっ、裾から手を入れるな」
「スキンシップだって」
ふざけて脇腹をくすぐってくる悟。
「や、やめっ」
「脇腹弱」
「ひーっひっひっひっ!!くすぐった!!」
身をよじりながら逃げても悟の長い手は離れない。
私も負けじと悟をくすぐるものの、悟には効かないらしい。
いつの間にやら悟の膝の上に居たので悟を跨ぐように膝立ちし、見下ろせばドロリと熱を持った蒼い瞳が笑う。
「スケベ」
「どっちが」
どちらからでもなく、引き寄せ合うように唇を重ねる。
何度も啄むようにキスをして、お互いの顔を見て笑った。
「ヤる?」
「ヤりませーん」
「僕元気なのにー」
「朝からあんたに付き合っていたら私死ぬって」
「死ぬほど愛してあげるけど?」
「お断りします」
悟の膝の上に座って悟によりかかる。
じっと悟の顔を見上げれば憎らしいことにどの角度から見ても美しい。
「そんな熱い視線向けられると反応しちゃうじゃん」
「鼻毛出てないかな、と思って」
「出てない?」
「腹立つほど美の塊かよ」
どこが一番不細工に見えるか探し始めた私。
結論、どこから見ても美の塊だった。解せぬ。
「中身が一番残念だという結果になりました」
「ひっど!!」
ケラケラ笑いだす悟に抱き締められて、私も抱き締め返す。
2人でぎゅーぎゅーに抱き締めあってまた笑った。
そんな悪ふざけをしつつ、何かやってないかとテレビをつけるが面白そうな番組はない。
ならば映画はと、興味を引かれる内容を見ていく。
「悟ってわりとB級映画好きだよね」
「くだらないけど面白くない?」
「わかる」
有名な映画のパロディやら、雑なホラーやら、恋愛ものかと思ったらギャグやら……2人で気になったものを片っ端から見ていく。
「なんでこう、B級映画って濡れ場あるんだろうね?」
「濡れ場だけねっとりやるし」
「それな」
厭らしい雰囲気になるどころか、2人で濡れ場のダメ出しをはじめる。
「ちょっと最中にコメディ入れないでほしい」
「これ見て興奮する奴いんのかな?」
「それっぽい雰囲気に持ち込みやすくすれば後がどうなろうとヤったもん勝ちなんじゃない?」
「なるほど」
ぐっ、と顔を近付けてくる悟。
そして耳元で囁く。
「一発どう?」
「-10点、雑な誘い過ぎる」
「名前、お腹減ってきた」
「何食べる?」
「んー……ガッツリがいい」
「ガッツリ……」
冷蔵庫を見に行き何にしようかと考える。
後ろから着いてきた悟も中を一緒に覗く。
「キーマカレーあるよ」
「いいね」
「目玉焼き作って乗せるか」
「やった。豪華じゃん」
悟が卵を持っていく。
鼻歌を唄いながら片手で卵を割り、フライパンへ。
器用になんでもこなせる奴は凄いな、と思いながらキーマカレーを温める。
その間に野菜を千切ってサラダ作り。
「半熟でいい?」
「頼んだ」
簡単に出来たキーマカレーと野菜サラダ。
「こないだ伊知地と硝子と飲みに行ったらさー」
「うわっ、楽しそう」
「硝子がどんどん顔色変えずに呑むペースに付き合った伊知地が直ぐに倒れた」
「それアル中ならない?」
「何口か呑んで倒れたから平気」
「それは平気と言っていいの?」
「伊知地だからいいの」
「伊知地さんの扱い」
最近あった事をお互いに話ながら食べる。
私の職場のなっちゃんの恋の話、悟の最近の任務の話、硝子ちゃんと話したこと、七海くんと話したこと、生徒のことなどお互い思い付いたことを気ままに話す。
少し遅めのお昼も終わり、映画の続き。
お腹も満たされ、ポカポカと暖かな日差しに悟の体温を感じているとウトウトと睡魔に襲われる。
「寝ててもいいよ」
ポンポン、と悟が寝かしつけるように頭を撫でるものだからより眠たくなる。
目を擦り、まだ眠らないと意識を保とうとするものの、眠気はどんどん襲ってくる。
「さとる」
「んー?」
「傍に居てね」
「ん」
悟の服を掴みながら、優しく撫でられる手を受け入れて悟に寄りかかる。
そのまま私は夢の世界へ。
「可愛いことして」
くすり、と笑った悟は引っ付いて眠る恋人を愛しそうに眺めて撫でる。
目が覚めると、いつの間にやらソファーに横たわり、毛布をかけられていた。
今は何時だろうと時計を見る。
午後6時。
どうやらぐっすり寝すぎたらしい。
「あ、起きた?」
夕御飯の支度でもしていたのか、悟が何やら作っている。
ヨタヨタと寝起きのまだぼんやりする頭のまま悟の腰に抱き付く。
「甘えたさん?」
「んー」
「もうちょいで終わるから待って」
「んん」
長い手足を動かしてパパっと仕込みを終えたららしい悟。
どうやら今日は角煮らしい。
圧力鍋に残りは任せて私を抱き上げる。
再びソファーに戻り、私を膝に乗せたままテレビのチャンネルを変えている。
「よく寝てたね」
「まだ寝れそう」
「悟くん枕は安眠出来ましたか?」
「よく眠れました」
ボーッとニュースを見ながら覚めてきた頭。
甘えるように悟の首もとにすり寄れば、キスの嵐が降ってくる。
お返しにと頬へキスをすれば、足りないというように唇を食べられる。
「なぁに?発情したの?」
「好きな女といて発情しない奴いる?」
「あらやだ、獣の目をした美の神が」
「食べてもいーい?」
ぐぅ、と鳴ったお腹。
「………オマエさぁ、タイミング」
「すまない。不可抗力だ」
「………」
「………」
二人で笑った。
悟の作った角煮に、味噌汁。
作り置きの漬物に、蒸し鶏の野菜サラダ、カボチャの煮付け。
「適当に作ったものだから」
「美味しー。料理もチートかよぉ」
「僕って天才だから」
「お主には何が持ち得ないのだ」
「全て完璧の男、それが僕さ」
「なるほど、性格か」
後片付けをすると、悟に手を引かれて風呂場へ。
「ストップ、悟くん。何をする気だ」
「寝てる間に風呂も沸かす僕って優しいよね」
「脱がすな脱がすな」
「はい、ばんざーい」
裸にされ風呂場へ。
後から悟も入って来てシャワーをかけられ洗われる。
「いたせりつくせり」
「僕の頭も洗って」
「へい、お客様。お痒いところはございませをんかー?」
「ありませーん」
二人で湯船に浸かる。
「なんで人に頭洗ってもらうと気持ちいいんだろ?」
「わかるー」
「あー、こんなまったりすんの久しぶりだから仕事したくなくなる」
「そーだねー」
悟が1日中いるなんて、一緒に過ごしていても数えるほどしかない。
それだけ忙しい人であるし、危ない仕事をこなしている。
「昔は朝から夜まで平気で寝てたり起きてたりしたんだけどな」
「今から桃鉄でもする?」
「オマエは寝たから元気かもしれないけど、僕起きてたの」
「あらやだ、もう徹夜出来ないほどお年を召したの?」
「そう思う?」
ザバッ、と抱き上げられて風呂から出される。
ギラギラとこちらを射抜く瞳。
「まだまだ1日は終わってないよ」
「おーっと……」
「どうやら寝て元気な名前ちゃんは徹夜を所望しているみたいだからね。
僕もまだまだ若いって証明しなきゃ」
「わー、逃げられないや」
「逃がすと思う?」
悟の体力馬鹿に付き合わされ、気付けば眠っていた。
辺りはまだ暗いものの、少しだけ明るくなってきている。
身体の節々が痛むが悟がスウェットを着せてくれたらしく、ブカブカな悟のを着せられ、本人は下だけ履いている。
人の胸に顔を埋めて、しっかりと私を抱きながら眠っている悟。
子供のような幼い寝顔が可愛らしくて、髪を撫でるとサラサラとすり抜けていく。
また、数時間もするかしないかのうちに悟は私を残して戦いに行くのだろう。
悟は強いから死なない。
悟は強いから怪我などしない。
悟は強いからいなくならない。
けど、人は人である限りいつかは死んでしまう。
呪術師である以上、覚悟はしなくてはいけない。
それでも私は……。
「悟………」
いかないで。
行かないで。
逝かないで。
考えてしまう。願ってしまう。言葉にしたくなる時が多々ある。
悟のいない時には一人不安に押し潰され涙することもあるし、唐突に襲われる虚無感に耐える日もある。
このぬくもりがいつか、感じられなくなる日が来るのをわかっていてもーーー
私が言葉にして悟を引き留めることはできない。
「好き。大好き」
寂しい時もある。
苦しい時もある。
でも、後悔だけはしたくない。
この恋が、間違っていたと。
「僕は愛してる」
「……起きてたの?」
「ん」
悟の大きな手が私を撫でる。
胸から頭を上げて、抱え込むように私の頭を抱く。
「ほらほら、寝ないと仕事に響くよ」
「響かせる行為をしたのはだぁれ?」
「朝から我慢して、ちゃんと動ける範囲でやめた僕偉いじゃん」
「嘘だろ。まだ抱き潰す気だったの?」
「足りないよ。何度抱いても何度触れても」
大きな手が頬を撫でる。
涙なんて出てないのに、涙を拭うように目元を擦る指。
「名前が思っている以上に僕が名前を愛してるのを伝えるには足りない」
「困ったな。
愛され過ぎて溺れるともっと足りなくなるじゃん」
「求めてよ。僕に我が儘言っていいのはオマエだけなんだから」
愛して
あいして
アイシテ
「我慢しなくていいよ。好きなだけ叫んでよ。
オマエが僕に溺れれば溺れるほど、僕から離れられなくなるんだから」
「離れる気ないよ」
「離してやる気もないけど」
人はこれを愛より呪いと言うのかもしれない。
歪んでいると。
「悟」
「なに?」
一度味わってしまったら
二度と抜け出せない麻薬のような恋
「愛してる」
「僕も」
切なくて
甘くて
痛い
「おやすみ、悟」
「おやすみ……名前」
鳴り止まぬ心臓の鼓動を耳にして、少し低めの体温だけど心地よい温かさに包まれて眠る。
この世界で一番安全で、一番安心出来て、一番切なくなり、一番愛おしい悟の腕のなか。
朝日の差し込む眩しさに目を覚ませば、既にいないベットで一人起き涙の出ていない目元を擦る。
「さて、今日も1日頑張るか」
今日も私は
いかないで
の一言を飲み込み愛を口にする。
あとがき
月光様リクエスト「通行人で五条とまったり1日お家デート」
ギャグなしの糖分増し増しで
最後は切ない仕上がりとなってしまいましたが、いかがだったでしょうか?
若干事後の匂わせがあったのですが……まぁ、健全なお話です(笑)
変なところで怖じ気づく通行人と
がっつり甘やかして自分しか見なければいいのにと思ってる悟。
いかないで、と言ってもその願いが叶わないからこそ口にしない。だって虚しくなるだけだと思ってるから。
けど悟はその願いすら自分を想っているなら言葉として欲しい。お互いに気付いているけど言わないし、聞かない。
大人の面倒臭い恋愛が……書きたいけど伝わるかな?(笑)これ(笑)
サンドイッチ、沼さんのサンドイッチをモチーフにしてます。あれ旨かった……うん。
夜中、気が付いたら帰って来ていて、朝方私が起きる前にはいなくなっているし、そもそも家に帰って来る方が少ない悟。
私はもうその生活に慣れてきていたし、今さら寂しいとも思っていない。
だけど、この日は身体に巻き付く腕の重さを感じ、少し見上げた先には長い睫を閉じたままの綺麗な顔。
そんな姿を目覚めてすぐに見れると寂しくないとは言ったが、嬉しくなる。
細いくせにがっしりとした腕を退けてベットから抜け出す。
あくびを一つ溢しながら洗面所へ行き顔を洗って、眠気を覚ます。
そして簡単な朝食作り。
珈琲の豆をセットしてスイッチを入れる。
キャベツを千切りにし、水にさらしてしっかり水切り。そこへ塩胡椒を少々とマヨネーズ。隠し味に鶏ガラスープの粉末を少々加えて混ぜてしんなりするまで置いておく。
その間に食パンにもマヨネーズを少し塗り、ハムにチーズを乗せてトースターへ。
焼けたパンの上に先ほどのキャベツをたっぷり乗せてパンで挟み、ラップをする。
珈琲の落ちるいい匂いを嗅ぎながら、パンを半分に切り分ける。
適当にフルーツを切って器へ。
これじゃ悟は足りないだろうから、と卵焼きを焼いておく。勿論甘めだ。
「おはよ」
後ろからのし掛かってきた巨体。
さわさわと胸元で怪しい動きをする手を叩き落とす。
「おはよ、悟」
「うん」
ぐりぐりと頭を擦り付けてくる悟に笑って、後片付けをしてしまう。
「座ってて」
「うん」
まだ寝ぼけているのか頭をかきながら大人しく座る悟にミルクと砂糖を入れた甘めなカフェラテを渡す。
私はブラックだ。
朝食を並べれば黙って食べ始めた。
「今日は?」
「休み」
「珍しい」
「久しぶりにまったり名前と居れるよ」
にこり、と笑う悟に今日の予定はどうしようかと考える。
特に予定は無いのだが、せっかくだからどこか行こうか……と考えていると悟の指が私の指と絡む。
「今日はゆっくりお家に居よ」
お家デート、なんて笑って言う悟。
「そう考えると、お家デートってしたことないね」
「同棲してるのにデートってのもおかしいけど」
「………お家デートって何するの?」
「さあ?」
あっという間に朝食を食べ終える。
お家デートと決めたからには、特に気合いを入れて化粧をするわけでもないので部屋着のまま2人でソファーに座り込む。
「ヘイ、SIRI。
お家デートについて教えて」
「検索するの?」
2人でクスクス笑いながら検索すると
「お家デートだとイチャイチャし放題です」
「お家デートだとイチャイチャからエッチな気分に、だーってさ」
「こちら、健全な全年齢対象なのでお断り申し上げます」
「えーー」
「こらっ、裾から手を入れるな」
「スキンシップだって」
ふざけて脇腹をくすぐってくる悟。
「や、やめっ」
「脇腹弱」
「ひーっひっひっひっ!!くすぐった!!」
身をよじりながら逃げても悟の長い手は離れない。
私も負けじと悟をくすぐるものの、悟には効かないらしい。
いつの間にやら悟の膝の上に居たので悟を跨ぐように膝立ちし、見下ろせばドロリと熱を持った蒼い瞳が笑う。
「スケベ」
「どっちが」
どちらからでもなく、引き寄せ合うように唇を重ねる。
何度も啄むようにキスをして、お互いの顔を見て笑った。
「ヤる?」
「ヤりませーん」
「僕元気なのにー」
「朝からあんたに付き合っていたら私死ぬって」
「死ぬほど愛してあげるけど?」
「お断りします」
悟の膝の上に座って悟によりかかる。
じっと悟の顔を見上げれば憎らしいことにどの角度から見ても美しい。
「そんな熱い視線向けられると反応しちゃうじゃん」
「鼻毛出てないかな、と思って」
「出てない?」
「腹立つほど美の塊かよ」
どこが一番不細工に見えるか探し始めた私。
結論、どこから見ても美の塊だった。解せぬ。
「中身が一番残念だという結果になりました」
「ひっど!!」
ケラケラ笑いだす悟に抱き締められて、私も抱き締め返す。
2人でぎゅーぎゅーに抱き締めあってまた笑った。
そんな悪ふざけをしつつ、何かやってないかとテレビをつけるが面白そうな番組はない。
ならば映画はと、興味を引かれる内容を見ていく。
「悟ってわりとB級映画好きだよね」
「くだらないけど面白くない?」
「わかる」
有名な映画のパロディやら、雑なホラーやら、恋愛ものかと思ったらギャグやら……2人で気になったものを片っ端から見ていく。
「なんでこう、B級映画って濡れ場あるんだろうね?」
「濡れ場だけねっとりやるし」
「それな」
厭らしい雰囲気になるどころか、2人で濡れ場のダメ出しをはじめる。
「ちょっと最中にコメディ入れないでほしい」
「これ見て興奮する奴いんのかな?」
「それっぽい雰囲気に持ち込みやすくすれば後がどうなろうとヤったもん勝ちなんじゃない?」
「なるほど」
ぐっ、と顔を近付けてくる悟。
そして耳元で囁く。
「一発どう?」
「-10点、雑な誘い過ぎる」
「名前、お腹減ってきた」
「何食べる?」
「んー……ガッツリがいい」
「ガッツリ……」
冷蔵庫を見に行き何にしようかと考える。
後ろから着いてきた悟も中を一緒に覗く。
「キーマカレーあるよ」
「いいね」
「目玉焼き作って乗せるか」
「やった。豪華じゃん」
悟が卵を持っていく。
鼻歌を唄いながら片手で卵を割り、フライパンへ。
器用になんでもこなせる奴は凄いな、と思いながらキーマカレーを温める。
その間に野菜を千切ってサラダ作り。
「半熟でいい?」
「頼んだ」
簡単に出来たキーマカレーと野菜サラダ。
「こないだ伊知地と硝子と飲みに行ったらさー」
「うわっ、楽しそう」
「硝子がどんどん顔色変えずに呑むペースに付き合った伊知地が直ぐに倒れた」
「それアル中ならない?」
「何口か呑んで倒れたから平気」
「それは平気と言っていいの?」
「伊知地だからいいの」
「伊知地さんの扱い」
最近あった事をお互いに話ながら食べる。
私の職場のなっちゃんの恋の話、悟の最近の任務の話、硝子ちゃんと話したこと、七海くんと話したこと、生徒のことなどお互い思い付いたことを気ままに話す。
少し遅めのお昼も終わり、映画の続き。
お腹も満たされ、ポカポカと暖かな日差しに悟の体温を感じているとウトウトと睡魔に襲われる。
「寝ててもいいよ」
ポンポン、と悟が寝かしつけるように頭を撫でるものだからより眠たくなる。
目を擦り、まだ眠らないと意識を保とうとするものの、眠気はどんどん襲ってくる。
「さとる」
「んー?」
「傍に居てね」
「ん」
悟の服を掴みながら、優しく撫でられる手を受け入れて悟に寄りかかる。
そのまま私は夢の世界へ。
「可愛いことして」
くすり、と笑った悟は引っ付いて眠る恋人を愛しそうに眺めて撫でる。
目が覚めると、いつの間にやらソファーに横たわり、毛布をかけられていた。
今は何時だろうと時計を見る。
午後6時。
どうやらぐっすり寝すぎたらしい。
「あ、起きた?」
夕御飯の支度でもしていたのか、悟が何やら作っている。
ヨタヨタと寝起きのまだぼんやりする頭のまま悟の腰に抱き付く。
「甘えたさん?」
「んー」
「もうちょいで終わるから待って」
「んん」
長い手足を動かしてパパっと仕込みを終えたららしい悟。
どうやら今日は角煮らしい。
圧力鍋に残りは任せて私を抱き上げる。
再びソファーに戻り、私を膝に乗せたままテレビのチャンネルを変えている。
「よく寝てたね」
「まだ寝れそう」
「悟くん枕は安眠出来ましたか?」
「よく眠れました」
ボーッとニュースを見ながら覚めてきた頭。
甘えるように悟の首もとにすり寄れば、キスの嵐が降ってくる。
お返しにと頬へキスをすれば、足りないというように唇を食べられる。
「なぁに?発情したの?」
「好きな女といて発情しない奴いる?」
「あらやだ、獣の目をした美の神が」
「食べてもいーい?」
ぐぅ、と鳴ったお腹。
「………オマエさぁ、タイミング」
「すまない。不可抗力だ」
「………」
「………」
二人で笑った。
悟の作った角煮に、味噌汁。
作り置きの漬物に、蒸し鶏の野菜サラダ、カボチャの煮付け。
「適当に作ったものだから」
「美味しー。料理もチートかよぉ」
「僕って天才だから」
「お主には何が持ち得ないのだ」
「全て完璧の男、それが僕さ」
「なるほど、性格か」
後片付けをすると、悟に手を引かれて風呂場へ。
「ストップ、悟くん。何をする気だ」
「寝てる間に風呂も沸かす僕って優しいよね」
「脱がすな脱がすな」
「はい、ばんざーい」
裸にされ風呂場へ。
後から悟も入って来てシャワーをかけられ洗われる。
「いたせりつくせり」
「僕の頭も洗って」
「へい、お客様。お痒いところはございませをんかー?」
「ありませーん」
二人で湯船に浸かる。
「なんで人に頭洗ってもらうと気持ちいいんだろ?」
「わかるー」
「あー、こんなまったりすんの久しぶりだから仕事したくなくなる」
「そーだねー」
悟が1日中いるなんて、一緒に過ごしていても数えるほどしかない。
それだけ忙しい人であるし、危ない仕事をこなしている。
「昔は朝から夜まで平気で寝てたり起きてたりしたんだけどな」
「今から桃鉄でもする?」
「オマエは寝たから元気かもしれないけど、僕起きてたの」
「あらやだ、もう徹夜出来ないほどお年を召したの?」
「そう思う?」
ザバッ、と抱き上げられて風呂から出される。
ギラギラとこちらを射抜く瞳。
「まだまだ1日は終わってないよ」
「おーっと……」
「どうやら寝て元気な名前ちゃんは徹夜を所望しているみたいだからね。
僕もまだまだ若いって証明しなきゃ」
「わー、逃げられないや」
「逃がすと思う?」
悟の体力馬鹿に付き合わされ、気付けば眠っていた。
辺りはまだ暗いものの、少しだけ明るくなってきている。
身体の節々が痛むが悟がスウェットを着せてくれたらしく、ブカブカな悟のを着せられ、本人は下だけ履いている。
人の胸に顔を埋めて、しっかりと私を抱きながら眠っている悟。
子供のような幼い寝顔が可愛らしくて、髪を撫でるとサラサラとすり抜けていく。
また、数時間もするかしないかのうちに悟は私を残して戦いに行くのだろう。
悟は強いから死なない。
悟は強いから怪我などしない。
悟は強いからいなくならない。
けど、人は人である限りいつかは死んでしまう。
呪術師である以上、覚悟はしなくてはいけない。
それでも私は……。
「悟………」
いかないで。
行かないで。
逝かないで。
考えてしまう。願ってしまう。言葉にしたくなる時が多々ある。
悟のいない時には一人不安に押し潰され涙することもあるし、唐突に襲われる虚無感に耐える日もある。
このぬくもりがいつか、感じられなくなる日が来るのをわかっていてもーーー
私が言葉にして悟を引き留めることはできない。
「好き。大好き」
寂しい時もある。
苦しい時もある。
でも、後悔だけはしたくない。
この恋が、間違っていたと。
「僕は愛してる」
「……起きてたの?」
「ん」
悟の大きな手が私を撫でる。
胸から頭を上げて、抱え込むように私の頭を抱く。
「ほらほら、寝ないと仕事に響くよ」
「響かせる行為をしたのはだぁれ?」
「朝から我慢して、ちゃんと動ける範囲でやめた僕偉いじゃん」
「嘘だろ。まだ抱き潰す気だったの?」
「足りないよ。何度抱いても何度触れても」
大きな手が頬を撫でる。
涙なんて出てないのに、涙を拭うように目元を擦る指。
「名前が思っている以上に僕が名前を愛してるのを伝えるには足りない」
「困ったな。
愛され過ぎて溺れるともっと足りなくなるじゃん」
「求めてよ。僕に我が儘言っていいのはオマエだけなんだから」
愛して
あいして
アイシテ
「我慢しなくていいよ。好きなだけ叫んでよ。
オマエが僕に溺れれば溺れるほど、僕から離れられなくなるんだから」
「離れる気ないよ」
「離してやる気もないけど」
人はこれを愛より呪いと言うのかもしれない。
歪んでいると。
「悟」
「なに?」
一度味わってしまったら
二度と抜け出せない麻薬のような恋
「愛してる」
「僕も」
切なくて
甘くて
痛い
「おやすみ、悟」
「おやすみ……名前」
鳴り止まぬ心臓の鼓動を耳にして、少し低めの体温だけど心地よい温かさに包まれて眠る。
この世界で一番安全で、一番安心出来て、一番切なくなり、一番愛おしい悟の腕のなか。
朝日の差し込む眩しさに目を覚ませば、既にいないベットで一人起き涙の出ていない目元を擦る。
「さて、今日も1日頑張るか」
今日も私は
いかないで
の一言を飲み込み愛を口にする。
あとがき
月光様リクエスト「通行人で五条とまったり1日お家デート」
ギャグなしの糖分増し増しで
最後は切ない仕上がりとなってしまいましたが、いかがだったでしょうか?
若干事後の匂わせがあったのですが……まぁ、健全なお話です(笑)
変なところで怖じ気づく通行人と
がっつり甘やかして自分しか見なければいいのにと思ってる悟。
いかないで、と言ってもその願いが叶わないからこそ口にしない。だって虚しくなるだけだと思ってるから。
けど悟はその願いすら自分を想っているなら言葉として欲しい。お互いに気付いているけど言わないし、聞かない。
大人の面倒臭い恋愛が……書きたいけど伝わるかな?(笑)これ(笑)
サンドイッチ、沼さんのサンドイッチをモチーフにしてます。あれ旨かった……うん。