五万企画
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「お姉さん、僕のお嫁さんになってくれる?」
小さな小さな男の子。
どこかで見たことある気がするが思い出せない。
「お前に相応しい男になったら必ず迎えに行く」
にやりと笑いながら美しい銀髪と黒髪のツートンカラーを靡かせる男。
着流しがよく似合っている。
「貴方は………」
「俺の名はリクオ。覚えとけ
子供の頃の約束を今……」
私の手を取り、口付けていなくなった男。
それはとある満月の美しい夜のことだった。
ボーッとすることが増えた。
今日も何だか変な夢を見て頭がボーッとしてる。
「痛っ」
「大丈夫?」
指を切ってしまったら、悟が声に反応して見に来た。
ドクドクと血が溢れ出る感覚に眉をしかめてしまう。
「痛そ」
「あー……絆創膏あったかな」
「絆創膏より僕が舐めてやろうか?」
「汚いからおやめ」
消毒して絆創膏を貼る。
ジワジワと染み込む血が出るたび、痛みを感じる。
「ボーッとしてたけど何かあった?」
「んー」
「熱ある?」
額を悟の大きな手で触られる。
目元が暗くなり、悟の体温になんだか安心して身を任せてしまえば支えてくれた。
「本当に大丈夫?生理?」
「……ちがう」
「弱ってる?」
今日も仕事があるのだが、何だかやる気どころか気力がない。
悟に抱えられてソファーに。
悟にもたれかかるようにぐったりとしてしまう。
「………悟」
「なに」
「そのままでいて」
「なにかあった?」
「………夢」
「夢?」
「どんな夢か起きたら覚えてないんだけど……ここんとこ、同じ夢を見てくる気がする」
それがいいものか、悪いものかすら覚えてない。
起きたら疲れている。
「頭にモヤがかかってるみたいに
何か変な感じする」
「………」
「けど、悟の手……落ち着く」
そのままぐっすりと寝入ってしまったらしく、職場への連絡をしてベットに寝かせてくれた悟には頭が上がらなかった。
目が覚めると、なんかよくわからんツートンカラーのイケメンに抱かれていた。
「目ェ覚めたかい?」
「ちぇすとっ!!」
「ぐっ!!」
おでこに向かって正拳付き。
見事にヒットだぜ。
「お前はどこのどいつだ誘拐犯!!」
「痛ってーな。言ったろ?嫁にくるって」
「は?睫毛むしるぞ」
「強気な女だな。だが、嫌いじゃねぇ」
ニヤリと笑うイケメン。
着物の似合いすぎてるイケメン。
しかし、腹が立つのでスッと拳を構える。
「暴力的な女だな」
「ここどこだコラ」
「オレん家」
「は?」
ぐるりと見渡せば、なんかデカい屋敷。
今時和風なお家って珍しいねーって思いながら襖を開けてダッシュで逃げ出した。
「うわぁあああっ!!!!
なんだここなんだここなんだここぉ!?!?」
「待てよー花嫁」
「逃げるな花嫁」
「捕まえろー」
「こっち来るんじゃぬぇぇえええっ!!!」
ちっちゃい納豆やら、3の口のやつやら、1つ目のやつやら、身体が蛇だったりとかなにこの妖怪大戦争!?
なんなのこの屋敷!!妖怪しかいねぇ!!
「つーかまーえ」
「らぁっ」ドガッ
「よし、今だ!!」
「へーい!!」バキッ
「ここは通しま」
「らっしゃい!!」ドゴッ
出入り口どこ!?
わけわかんない屋敷を走りながら妖怪を千切っては投げ、出てきては蹴り飛ばし、私は止まらないぜ!!と走る。
「よっしゃ!!出口発見!!」
「通しませんよっ!!」
「女の子!?」
「はーい、若のお相手さん確保」
「毛!!」
なんか美人なお姉さんに毛で拘束された。
いや、まじで嘘でしょ!?
この屋敷人間いないの!!?
「お前ェら人間相手に何手間取ってんだよ」
「若!!」
「ツートンカラーおい、お前おいっ」
「ん?どうした?」
「誘拐だぞ」
「同意の下だろ」
ひょいっと毛から救出される。
けど、こいつから逃げ出したのに捕まったら意味ない。
さーて、どうしたものかと考えていたら、携帯が鳴った。
相手が誰か見ずに電話に出る。
「ヘルプッ」
『は?名前さんあんた今どこにいるんですか?
何回連絡しても繋がらなくて』
「男か?」
『は?』
「おまっ、携帯返せ!!誘拐犯!!」
「誘拐犯じゃなく旦那だろ?」
「ふ、ざ、け、ん、な!!」
『名前さん?大丈夫ですか?』
「若、祝言の準備を進めても?」
「頼んだ」
毛でグルグルに巻かれ、引きずられていく私。
なんやかんや暴れて抜け出そうとしたが残念なことに拘束されて白無垢を着せられた。
「ではこれより!!
三代目奴良リクオ様と名前様の婚姻の儀を行いたいと思います」
おい。
婚姻の儀でなんで花嫁が縛られなきゃいけないんだ。
「不服そうだな」
「拉致られて結婚なんて怒らない人いる?
少なくとも私はボコりたい」
「酷ェな。昔は俺と結婚してくれるって言ったのに」
「妄想乙」
「………本当に覚えてねぇのか?」
「お前のような非常識知らん」
傷付いた顔をするツートンカラー。
しかし、すぐに強気な顔をする。
「忘れてんならまた惚れさせればいいだけだ」
「惚れないって」
「愛してるぜ、名前」
「ヤメロ」
一方的にイチャイチャしてくるツートンカラー。
かわしたくても縛られていて身動き出来ない。
出来る限り離れようとしてもがいていたら、バタバタと走ってくる足音。
そして慌ただしく開く襖。
「わ、若!!大変です!!」
「なんでぇ、騒がしい」
「花嫁を奪いに族が!!」
小さな妖怪が言った瞬間……
バキバキバキッ、と襖が抉れた。
わーきゃーと、逃げる妖怪達。
お外がスッキリと見えるようになった頃……
夜空に浮かぶ白く黒い何か。
「何だアイツ」
「皆のもの!!若を御守りしろ!!」
「若と花嫁を守れ!!」
「くたばりたくなかったらさっさと名前出しな」
ヒュッ、と寒気がした。
おやおやまぁまぁ………
悟くん、ガチギレモードです。
「アイツは?」
「私の旦那」
「は?」
「ってことで返してくださる?
うちの旦那怒るとまじでここら一体さら地になるから」
「へぇ……強ぇのか」
「最強にお強いので帰して」
「やだね。
やっと妖怪の主として認められたんだ。
お前の隣に立つに相応しい男になったんだから負けられねーよ」
ガチギレの悟の前に立つとかあのツートンカラー自殺志願者かな?
「お前が名前の元旦那だって?」
「気安く呼ぶんじゃねーよ」
「残念ながらアイツは俺が昔から予約してたんだ。
返してもらうぜ」
「ざけんな」
チート術式VS妖怪の主
刀で悟を切りつけようとしても悟の術式により届かない。
悟が蹴りを入れようとしたら妖怪の主も刀でいなす。
空中でバチバチとやり合う男二人。
やめてー私のために争わないでーとか言えないくらいのガチバトル。
ここらへんさら地になるんじゃね?
「あんたの元旦那凄いわね」
「美人さん、この拘束ほどいて?」
「若相手に引けを取らないとは…」
「首浮いてる人、離して?」
「いい男ね」
「強いな」
「ねぇ、話聞いてよ」
首ふわふわ浮いてる男の人と髪の毛が伸びる美人さん。
「あ、名前姉いた!!」
「何してんのよ名前さん」
「あら?どちら様?」
「………侵入者か」
「その人返してもらうぞ」
一年生達が現れるが、首なし男が紐を構える。
「毛倡妓、その方を奥へ」
「氷羅行くわよ」
「ハイ!!」
「待ちなさいよ!!」
「虎杖」
「おう!」
凄い瞬発力で目の前にきた悠仁くんが私を抱き上げる。
気付いた美人さんとマフラーをした女の子が悠仁くんへ向かって伸ばした髪や氷の息吹きを吹く。
しかしそこは悠仁くん。
私を抱えていても忍者のごとく避けて野薔薇ちゃんとめぐみんのとこへ。
「祓い屋か」
「嫌ねぇ」
「若の奥方様を返してください!!」
「ふざけんじゃないわよ」
「その人の意見無視して行う婚儀なんてクソ食らえだな」
「名前姉の気持ち無視して結婚とかないわ」
「その人と若は昔、きちんと約束した仲なんです!!
貴方方に若とその方の仲を引き裂くような真似はさせません!!」
「それはこっちの台詞よ。
オマエら妖怪がこの人の何を知ってるの?
昔の約束だか何だか知らないけど嫌がってる女を無理矢理囲うなんて野郎なんて私が打ち抜くわ」
私の為に争わないで!!
って空気じゃないけど、可愛い子達が怪我するのは本当困る。
なので先程から必死に思い出そうとしているが、記憶の中にまじでツートンカラーの俺様妖怪なんて記憶がない。
どんだけ幼い子供の約束なの?
もう20年前とかそれ以上の記憶なんて朧気だよ?
うーん、うーん、と頭を悩ます。
しかし記憶に該当する者はいない。
………なんて呑気に悩んでいたのが悪かったのか、真横に何かが飛んできた。
バキバキと家屋が倒壊。
そちらを見たら妖怪の主がフルボッコ。
「若!!」
妖怪達がこぞって集まっていくなか、真横に来た一年生達がなぜか私の後ろに隠れる。
「覚悟は出来てるよね?」
瞳孔開いてますよー。
生徒の目の前ですよー。
「愛されてるね、私」
「こんな時でも悪ふざけですかアンタ」
「こっわ!!普通にマジギレじゃない」
「伏黒の電話から先生ずーっと黙ってんのも怖かったけど、あれはあれで怖い」
「最初本気で焦ったけど……
あんなん見たら冷静なるわ」
妖怪の主を守ろうと小さいのから強そうな奴まで身を盾に守ろうとしている。
ふと、隙間から見えた傷だらけの子供に目を見開いて、悟の腕を取った。
「ストップ悟!!」
「誘拐犯なんか庇うな」
「違う違う違う!!まじでストップ悟!!」
「大丈夫。2度と無いように息の根止めてやる」
「止めちゃダメ止めちゃダメ!!
ステイ!!おすわり!!まて!!」
「犬じゃないんだけど」
「今悟があの子フルボッコにしたら社会的にも、職業的にもアウト」
「は?」
妖怪の主がいつの間にか
茶髪の幼いベビーフェイスの子供に……。
ポカン、とする悟に一年生。
「久しぶりだね、妖怪少年」
「久しぶり、名前お姉さん」
この少年とは知り合いでした。
落ち着いて話し合おうとのことで
手当てをされる妖怪少年。
私は動きづらいので白無垢を脱がせてもらい、なぜか白いワンピースを着せられた。
普通にフリルとか控え目で可愛いのだが、なぜサイズピッタリなのかが怖い。
「で、どーゆー知り合い?」
「悟くん、お腹に食い込む腕が痛いなぁ」
「アンタまた人タラシたのかよ」
「めぐみん、右腕つねるのやめよ?」
「年下タラすとかアンタロリコンなの?」
「野薔薇ちゃん、左腕も痛いからつねらないで?」
「名前姉ロリコンは駄目だよ?」
「悠仁くん、私はロリコンではないよ?」
悟に後ろから抱かれ、右に座りながら腕をつねるめぐみん。
その反対、左に座りながら腕をつねる野薔薇ちゃん。
めぐみんの隣に座る悠仁くんが困った顔をしながら言ってくるが、冤罪だ。
私はロリコンではない!!!
「って言っても……私がこの妖怪少年と会ったことがあるのはもう5年くらい前なんだけど」
「大学生?」
「うん」
〜回想〜
レポートに疲れ、男に疲れ
現実から逃げ出そうとトボトボ帰宅途中のことでした。
一人で公園で遊ぶ子供がいた。
「なーにしてんの?」
「………お姉さん誰」
薄暗くなってきているのに一人公園にいた少年。
泣く事を耐えるようにぐっと唇を噛み締めていた。
「お姉さんはお姉さんだよ」
「知らない人と話しちゃ駄目って言われた」
「それ大事だわ。
子供はそろそろ帰る時間だよ。
危ない人に拐われる前にお帰り」
しっし、と追い払う動作をするが少年は動かない。
ますます唇を噛み締めて泣きそうな顔となる。
「………皆が」
「うん?」
「皆が……妖怪は悪いやつだって」
「そらそーでしょ」
「え……」
「妖怪は人の悪意やら妄想やら悪いことを詰め込んで創られたもんだし」
「けど!!みんながみんな、悪いやつじゃ!!」
「って言っても、中には妖怪に助けられたり、神様みたいに祀られたりしてるのもいるんだから一概に全てが悪いなんて言えないよねぇ」
ポカン、とする少年の頭を撫でる。
「妖怪のこと知らないから怖い、悪いってイメージあるけど
中にはヒーローみたいな凄い妖怪や
神様みたいな凄い妖怪もいるんだぞって知ってる少年がいるなら妖怪も喜ぶんじゃない?」
本当の話なんて、当人しかわからないものがある。
実は人助けしたのに、見た目のせいで怖がられたなんて人間にもある話なんだから。
「皆もったいないね?
妖怪のいいとこ知らないなんて」
「……お姉さんは馬鹿にしないの?」
「馬鹿にしないよ。
お姉さんだってお化け見えるんだよーって言ったら少年は馬鹿にする?」
「しないよ」
「いい子だね」
よしよし、と撫でると嬉しそうに笑う少年。
「少年は妖怪好き?」
「うん!!
雪女のご飯は冷めてるけどとっても料理が美味しいし、納豆小僧は臭いけどいいやつだし、青田坊は力持ちなんだ!!」
「はははっ、楽しそう」
「みんな凄くて、みんな楽しい奴らなんだよ!!」
「そっかー」
楽しそうに話す少年。
妖怪に憧れることってあるよね、わかるわかる。
少年の話を聞きながら頷いていたのだが、夕暮れ時はやはり湧くもので……
"サミ、シイ………サミシ、イ……"
「………あれは」
"サミシイサミシイサミシイサミシイ"
「お姉さん、逃げっ」
"イッショニ イコウ"
大きな口を開けて少年もろとも食べようとする化物。しかし、そんなの長年の経験上何度もあるので………
「未成年へのおさわりは当店禁止となっておりまーす」
"ぐふぅっ!!"
「え?えぇぇええええっ!?」
蹴り飛ばした。
ズザザザザ、と顔からスライディングする化物。
"なにすんだ!!"
「さあ、少年。
危ない変態さんに捕まる前に帰ろうか」
"シカトすんな!!"
「親御さんが心配するよー」
"シカト!!すんな!!"
再び駆け寄ってきた化物。
少年と手を繋いで歩きだし、化物をシカトする。
「ねぇ、お姉さん」
「なぁに?少年」
「お姉さんも見えてるの?」
「そーだね。見えてるんだ」
「怖くない?」
「怖くないよ」
本当に怖いことを知ってるからね。
騒ぐ化物は途中から泣きながら後ろを着いてきていたがシカト。
チラチラ少年が気にしていたが、見せないようにシカトして歩いた。
「お姉さん、ここで大丈夫だよ!!」
「そう?
今度から遅くまで遊んでいたら駄目だよ」
「うん!!気を付けるね」
少年がしっかりお家に入るまで見届けようと
立ち止まって手を振って見送った。
その後日。
再び出会った少年はニコニコと笑って駆け寄ってきた。
「お姉さん!!」
「おや、妖怪少年。元気そうだね」
「うん!!
あのね、お姉さんちょっと耳を貸して」
内緒話をするように、手を当ててこそこそ耳元で感じる息に擽ったさを感じながらも少年の話を聞く。
「あのね、僕が大きくなったらね」
「うん」
「お姉さん、僕のお嫁さんになってくれる?」
照れながら話す可愛らしい少年の姿。
日々の疲れなど吹き飛ぶ内容に笑みが溢れる。
「ふふふっ、お姉さんをお嫁さんにしてくれるの?」
「うん!!」
「けど少年が大きくなる頃にはお姉さんおばちゃんになってしまうよ」
「大丈夫!!
ちゃんと迎えに行くからね!!」
「少年が凄く強くていい男になったら考えるよ」
〜回想終了〜
「ってことがあった」
「オイ」
「うわ……いたいけな子供に…」
「罪作りっすね」
「まさか本気にしてると思わないじゃん!!」
ドン引きされたがちょっと待ってくれ。
私は手をだしていないからノータッチショタだ。
そしてまさかさっきのツートンカラーがこの少年だったというのも先程知ったんだぞ!?
「有罪」
「有罪」
「有罪」
「ひっっど!?私そこまで酷いことした!?」
「少年の心を弄んだ、-10点」
「少年の約束を忘れていた、-10点」
「少年の夢を壊した、-10点」
「悠仁くん!!」
「ごめん、名前姉」
有罪、と書かれた紙をどこからか取り出した悠仁くん。
私は崩れ落ちた。
「お姉さんは悪くないよ」
「若…」
「えーっと……その、夜のボクが暴走したみたいでごめんね?
ちょっと夜の姿になると欲望に忠実になるというか…」
「性格まったく違うじゃない」
「夜の姿もボクなんだけど、ちょっと気が大きくなるから……お姉さん、本当にごめんなさい」
ぺこり、と頭を下げる妖怪少年。
少し見ない間に少年は成長するのかとまじまじと見てしまう。
「けど、今の僕も夜の僕も
お姉さんをお嫁さんにしたいと思っていたのは本当だよ」
「少年……」
「お姉さん、今幸せ?」
真っ直ぐこちらを見る少年。
私は悟を見て、少年を見る。
「幸せだよ。とっても」
「………そっか。それなら良かった」
くすり、と笑う少年は美少年でした。
「今回はお姉さんから手を引くよ」
「僕の聞き間違いかな?今回は?」
「うん、今回は。
お姉さんが泣いたり、傷付いたりするなら僕がお姉さんを奪い取りに行く」
きゅっ、と握られた両手。
「今の僕は中学生だけど
夜の僕なら妖怪の世界では成人しているからね」
「………え?少年妖怪なの?」
「4分の1妖怪の血が混じっているんだ」
「わぉ……妖怪の主だ」
「そうだよ」
ニコニコ笑いながら繋がれた手。
ブンブン振っても離れない。
「だからお姉さん
いつでも僕は待ってるからね」
チュッ、と薬指に唇を落とされる。
その瞬間悟に引き寄せられて、めぐみんと野薔薇ちゃんと悠仁くんが前に出た。
「油断も隙もないガキね」
「昼も夜も油断ならねぇ」
「ってゆーか名前姉ちょろすぎ」
「ほんっと、厄介なもん引き寄せるよね」
「あはは、お姉さん大事にされてるね」
少年にゾッとした瞬間でした。
なんやかんや今夜は解放されたのだが……
「名前さん厄介事に巻き込まれすぎよ」
「私も驚いた」
「名前姉厄介事に呪われてる?」
「かもしれない」
「何でもかんでも構うのやめてください」
「すまない」
一年生達に叱られてしまう。
「皆来てくれてありがとう」
「そりゃ行くわよ」
「俺らが認めていないような輩に取られるなんてゴメンだ」
「そーそー!!
五条先生の隣にいなきゃ、しっくりこない!!」
「嬉しいこと言ってくれるね」
ニヤニヤしながら私の肩を引き寄せる悟。
けどね、私知ってる。
この流れは…
「むしろこんな執着心の塊に捕らえられた時点で可哀想です」
「そーよね。ちょっと引くレベルの執着心よ」
「五条先生っていきすぎた愛情で押し潰しそう!!」
「キミら失礼過ぎ」
だと思った。
この子達が素直に誰かを褒めるわけない。
「五条先生の隣にいる名前姉が一番可愛く笑ってて楽しそうだから五条先生の隣がいい」
「悠仁くん…」
「そうね。
ヘラヘラ楽しそうに笑っているのがらしいわ」
「野薔薇ちゃん…」
「アンタが笑って居られる場所が五条さんの隣だから今はそこにいてください」
「めぐみん……」
「キミら名前のこと大好き過ぎじゃん。
先生ジェラシー」
「五条さんよりは大好きですね」
「そうね」
「俺は先生も好きだよ!!」
「悠仁以外デコピンしていい?」
この生徒らは素直じゃないので。
可愛らしい生徒達をよしよしと撫でる。
「可愛い……。
私は愛されてるっ」
「そーだよ。
だから勝手に誘拐なんかされて挙式なんて挙げようとすんな」
「不本意だけどゴメン」
「まぁそんなこと僕が許さないけど」
繋がれた手がしっかりと握られる。
「オマエは僕のだからね」
「悟も私の」
「余所見したらマジビンタ」
「やだー」
「相手の男は半殺しかな」
「わぁ……」
私、アイサレテルゥ。
あとがき
ぬら孫!!
ぬら孫マイナー扱いな気がするけどみんなわかるかな?
けどしゅきっっっ!!
リクエスト「妖怪関係のお話と通行人」
特に妖怪に指定なかったので、ぬら孫を選ばせていただきましたー!!
ありがとうございました!!
小さな小さな男の子。
どこかで見たことある気がするが思い出せない。
「お前に相応しい男になったら必ず迎えに行く」
にやりと笑いながら美しい銀髪と黒髪のツートンカラーを靡かせる男。
着流しがよく似合っている。
「貴方は………」
「俺の名はリクオ。覚えとけ
子供の頃の約束を今……」
私の手を取り、口付けていなくなった男。
それはとある満月の美しい夜のことだった。
ボーッとすることが増えた。
今日も何だか変な夢を見て頭がボーッとしてる。
「痛っ」
「大丈夫?」
指を切ってしまったら、悟が声に反応して見に来た。
ドクドクと血が溢れ出る感覚に眉をしかめてしまう。
「痛そ」
「あー……絆創膏あったかな」
「絆創膏より僕が舐めてやろうか?」
「汚いからおやめ」
消毒して絆創膏を貼る。
ジワジワと染み込む血が出るたび、痛みを感じる。
「ボーッとしてたけど何かあった?」
「んー」
「熱ある?」
額を悟の大きな手で触られる。
目元が暗くなり、悟の体温になんだか安心して身を任せてしまえば支えてくれた。
「本当に大丈夫?生理?」
「……ちがう」
「弱ってる?」
今日も仕事があるのだが、何だかやる気どころか気力がない。
悟に抱えられてソファーに。
悟にもたれかかるようにぐったりとしてしまう。
「………悟」
「なに」
「そのままでいて」
「なにかあった?」
「………夢」
「夢?」
「どんな夢か起きたら覚えてないんだけど……ここんとこ、同じ夢を見てくる気がする」
それがいいものか、悪いものかすら覚えてない。
起きたら疲れている。
「頭にモヤがかかってるみたいに
何か変な感じする」
「………」
「けど、悟の手……落ち着く」
そのままぐっすりと寝入ってしまったらしく、職場への連絡をしてベットに寝かせてくれた悟には頭が上がらなかった。
目が覚めると、なんかよくわからんツートンカラーのイケメンに抱かれていた。
「目ェ覚めたかい?」
「ちぇすとっ!!」
「ぐっ!!」
おでこに向かって正拳付き。
見事にヒットだぜ。
「お前はどこのどいつだ誘拐犯!!」
「痛ってーな。言ったろ?嫁にくるって」
「は?睫毛むしるぞ」
「強気な女だな。だが、嫌いじゃねぇ」
ニヤリと笑うイケメン。
着物の似合いすぎてるイケメン。
しかし、腹が立つのでスッと拳を構える。
「暴力的な女だな」
「ここどこだコラ」
「オレん家」
「は?」
ぐるりと見渡せば、なんかデカい屋敷。
今時和風なお家って珍しいねーって思いながら襖を開けてダッシュで逃げ出した。
「うわぁあああっ!!!!
なんだここなんだここなんだここぉ!?!?」
「待てよー花嫁」
「逃げるな花嫁」
「捕まえろー」
「こっち来るんじゃぬぇぇえええっ!!!」
ちっちゃい納豆やら、3の口のやつやら、1つ目のやつやら、身体が蛇だったりとかなにこの妖怪大戦争!?
なんなのこの屋敷!!妖怪しかいねぇ!!
「つーかまーえ」
「らぁっ」ドガッ
「よし、今だ!!」
「へーい!!」バキッ
「ここは通しま」
「らっしゃい!!」ドゴッ
出入り口どこ!?
わけわかんない屋敷を走りながら妖怪を千切っては投げ、出てきては蹴り飛ばし、私は止まらないぜ!!と走る。
「よっしゃ!!出口発見!!」
「通しませんよっ!!」
「女の子!?」
「はーい、若のお相手さん確保」
「毛!!」
なんか美人なお姉さんに毛で拘束された。
いや、まじで嘘でしょ!?
この屋敷人間いないの!!?
「お前ェら人間相手に何手間取ってんだよ」
「若!!」
「ツートンカラーおい、お前おいっ」
「ん?どうした?」
「誘拐だぞ」
「同意の下だろ」
ひょいっと毛から救出される。
けど、こいつから逃げ出したのに捕まったら意味ない。
さーて、どうしたものかと考えていたら、携帯が鳴った。
相手が誰か見ずに電話に出る。
「ヘルプッ」
『は?名前さんあんた今どこにいるんですか?
何回連絡しても繋がらなくて』
「男か?」
『は?』
「おまっ、携帯返せ!!誘拐犯!!」
「誘拐犯じゃなく旦那だろ?」
「ふ、ざ、け、ん、な!!」
『名前さん?大丈夫ですか?』
「若、祝言の準備を進めても?」
「頼んだ」
毛でグルグルに巻かれ、引きずられていく私。
なんやかんや暴れて抜け出そうとしたが残念なことに拘束されて白無垢を着せられた。
「ではこれより!!
三代目奴良リクオ様と名前様の婚姻の儀を行いたいと思います」
おい。
婚姻の儀でなんで花嫁が縛られなきゃいけないんだ。
「不服そうだな」
「拉致られて結婚なんて怒らない人いる?
少なくとも私はボコりたい」
「酷ェな。昔は俺と結婚してくれるって言ったのに」
「妄想乙」
「………本当に覚えてねぇのか?」
「お前のような非常識知らん」
傷付いた顔をするツートンカラー。
しかし、すぐに強気な顔をする。
「忘れてんならまた惚れさせればいいだけだ」
「惚れないって」
「愛してるぜ、名前」
「ヤメロ」
一方的にイチャイチャしてくるツートンカラー。
かわしたくても縛られていて身動き出来ない。
出来る限り離れようとしてもがいていたら、バタバタと走ってくる足音。
そして慌ただしく開く襖。
「わ、若!!大変です!!」
「なんでぇ、騒がしい」
「花嫁を奪いに族が!!」
小さな妖怪が言った瞬間……
バキバキバキッ、と襖が抉れた。
わーきゃーと、逃げる妖怪達。
お外がスッキリと見えるようになった頃……
夜空に浮かぶ白く黒い何か。
「何だアイツ」
「皆のもの!!若を御守りしろ!!」
「若と花嫁を守れ!!」
「くたばりたくなかったらさっさと名前出しな」
ヒュッ、と寒気がした。
おやおやまぁまぁ………
悟くん、ガチギレモードです。
「アイツは?」
「私の旦那」
「は?」
「ってことで返してくださる?
うちの旦那怒るとまじでここら一体さら地になるから」
「へぇ……強ぇのか」
「最強にお強いので帰して」
「やだね。
やっと妖怪の主として認められたんだ。
お前の隣に立つに相応しい男になったんだから負けられねーよ」
ガチギレの悟の前に立つとかあのツートンカラー自殺志願者かな?
「お前が名前の元旦那だって?」
「気安く呼ぶんじゃねーよ」
「残念ながらアイツは俺が昔から予約してたんだ。
返してもらうぜ」
「ざけんな」
チート術式VS妖怪の主
刀で悟を切りつけようとしても悟の術式により届かない。
悟が蹴りを入れようとしたら妖怪の主も刀でいなす。
空中でバチバチとやり合う男二人。
やめてー私のために争わないでーとか言えないくらいのガチバトル。
ここらへんさら地になるんじゃね?
「あんたの元旦那凄いわね」
「美人さん、この拘束ほどいて?」
「若相手に引けを取らないとは…」
「首浮いてる人、離して?」
「いい男ね」
「強いな」
「ねぇ、話聞いてよ」
首ふわふわ浮いてる男の人と髪の毛が伸びる美人さん。
「あ、名前姉いた!!」
「何してんのよ名前さん」
「あら?どちら様?」
「………侵入者か」
「その人返してもらうぞ」
一年生達が現れるが、首なし男が紐を構える。
「毛倡妓、その方を奥へ」
「氷羅行くわよ」
「ハイ!!」
「待ちなさいよ!!」
「虎杖」
「おう!」
凄い瞬発力で目の前にきた悠仁くんが私を抱き上げる。
気付いた美人さんとマフラーをした女の子が悠仁くんへ向かって伸ばした髪や氷の息吹きを吹く。
しかしそこは悠仁くん。
私を抱えていても忍者のごとく避けて野薔薇ちゃんとめぐみんのとこへ。
「祓い屋か」
「嫌ねぇ」
「若の奥方様を返してください!!」
「ふざけんじゃないわよ」
「その人の意見無視して行う婚儀なんてクソ食らえだな」
「名前姉の気持ち無視して結婚とかないわ」
「その人と若は昔、きちんと約束した仲なんです!!
貴方方に若とその方の仲を引き裂くような真似はさせません!!」
「それはこっちの台詞よ。
オマエら妖怪がこの人の何を知ってるの?
昔の約束だか何だか知らないけど嫌がってる女を無理矢理囲うなんて野郎なんて私が打ち抜くわ」
私の為に争わないで!!
って空気じゃないけど、可愛い子達が怪我するのは本当困る。
なので先程から必死に思い出そうとしているが、記憶の中にまじでツートンカラーの俺様妖怪なんて記憶がない。
どんだけ幼い子供の約束なの?
もう20年前とかそれ以上の記憶なんて朧気だよ?
うーん、うーん、と頭を悩ます。
しかし記憶に該当する者はいない。
………なんて呑気に悩んでいたのが悪かったのか、真横に何かが飛んできた。
バキバキと家屋が倒壊。
そちらを見たら妖怪の主がフルボッコ。
「若!!」
妖怪達がこぞって集まっていくなか、真横に来た一年生達がなぜか私の後ろに隠れる。
「覚悟は出来てるよね?」
瞳孔開いてますよー。
生徒の目の前ですよー。
「愛されてるね、私」
「こんな時でも悪ふざけですかアンタ」
「こっわ!!普通にマジギレじゃない」
「伏黒の電話から先生ずーっと黙ってんのも怖かったけど、あれはあれで怖い」
「最初本気で焦ったけど……
あんなん見たら冷静なるわ」
妖怪の主を守ろうと小さいのから強そうな奴まで身を盾に守ろうとしている。
ふと、隙間から見えた傷だらけの子供に目を見開いて、悟の腕を取った。
「ストップ悟!!」
「誘拐犯なんか庇うな」
「違う違う違う!!まじでストップ悟!!」
「大丈夫。2度と無いように息の根止めてやる」
「止めちゃダメ止めちゃダメ!!
ステイ!!おすわり!!まて!!」
「犬じゃないんだけど」
「今悟があの子フルボッコにしたら社会的にも、職業的にもアウト」
「は?」
妖怪の主がいつの間にか
茶髪の幼いベビーフェイスの子供に……。
ポカン、とする悟に一年生。
「久しぶりだね、妖怪少年」
「久しぶり、名前お姉さん」
この少年とは知り合いでした。
落ち着いて話し合おうとのことで
手当てをされる妖怪少年。
私は動きづらいので白無垢を脱がせてもらい、なぜか白いワンピースを着せられた。
普通にフリルとか控え目で可愛いのだが、なぜサイズピッタリなのかが怖い。
「で、どーゆー知り合い?」
「悟くん、お腹に食い込む腕が痛いなぁ」
「アンタまた人タラシたのかよ」
「めぐみん、右腕つねるのやめよ?」
「年下タラすとかアンタロリコンなの?」
「野薔薇ちゃん、左腕も痛いからつねらないで?」
「名前姉ロリコンは駄目だよ?」
「悠仁くん、私はロリコンではないよ?」
悟に後ろから抱かれ、右に座りながら腕をつねるめぐみん。
その反対、左に座りながら腕をつねる野薔薇ちゃん。
めぐみんの隣に座る悠仁くんが困った顔をしながら言ってくるが、冤罪だ。
私はロリコンではない!!!
「って言っても……私がこの妖怪少年と会ったことがあるのはもう5年くらい前なんだけど」
「大学生?」
「うん」
〜回想〜
レポートに疲れ、男に疲れ
現実から逃げ出そうとトボトボ帰宅途中のことでした。
一人で公園で遊ぶ子供がいた。
「なーにしてんの?」
「………お姉さん誰」
薄暗くなってきているのに一人公園にいた少年。
泣く事を耐えるようにぐっと唇を噛み締めていた。
「お姉さんはお姉さんだよ」
「知らない人と話しちゃ駄目って言われた」
「それ大事だわ。
子供はそろそろ帰る時間だよ。
危ない人に拐われる前にお帰り」
しっし、と追い払う動作をするが少年は動かない。
ますます唇を噛み締めて泣きそうな顔となる。
「………皆が」
「うん?」
「皆が……妖怪は悪いやつだって」
「そらそーでしょ」
「え……」
「妖怪は人の悪意やら妄想やら悪いことを詰め込んで創られたもんだし」
「けど!!みんながみんな、悪いやつじゃ!!」
「って言っても、中には妖怪に助けられたり、神様みたいに祀られたりしてるのもいるんだから一概に全てが悪いなんて言えないよねぇ」
ポカン、とする少年の頭を撫でる。
「妖怪のこと知らないから怖い、悪いってイメージあるけど
中にはヒーローみたいな凄い妖怪や
神様みたいな凄い妖怪もいるんだぞって知ってる少年がいるなら妖怪も喜ぶんじゃない?」
本当の話なんて、当人しかわからないものがある。
実は人助けしたのに、見た目のせいで怖がられたなんて人間にもある話なんだから。
「皆もったいないね?
妖怪のいいとこ知らないなんて」
「……お姉さんは馬鹿にしないの?」
「馬鹿にしないよ。
お姉さんだってお化け見えるんだよーって言ったら少年は馬鹿にする?」
「しないよ」
「いい子だね」
よしよし、と撫でると嬉しそうに笑う少年。
「少年は妖怪好き?」
「うん!!
雪女のご飯は冷めてるけどとっても料理が美味しいし、納豆小僧は臭いけどいいやつだし、青田坊は力持ちなんだ!!」
「はははっ、楽しそう」
「みんな凄くて、みんな楽しい奴らなんだよ!!」
「そっかー」
楽しそうに話す少年。
妖怪に憧れることってあるよね、わかるわかる。
少年の話を聞きながら頷いていたのだが、夕暮れ時はやはり湧くもので……
"サミ、シイ………サミシ、イ……"
「………あれは」
"サミシイサミシイサミシイサミシイ"
「お姉さん、逃げっ」
"イッショニ イコウ"
大きな口を開けて少年もろとも食べようとする化物。しかし、そんなの長年の経験上何度もあるので………
「未成年へのおさわりは当店禁止となっておりまーす」
"ぐふぅっ!!"
「え?えぇぇええええっ!?」
蹴り飛ばした。
ズザザザザ、と顔からスライディングする化物。
"なにすんだ!!"
「さあ、少年。
危ない変態さんに捕まる前に帰ろうか」
"シカトすんな!!"
「親御さんが心配するよー」
"シカト!!すんな!!"
再び駆け寄ってきた化物。
少年と手を繋いで歩きだし、化物をシカトする。
「ねぇ、お姉さん」
「なぁに?少年」
「お姉さんも見えてるの?」
「そーだね。見えてるんだ」
「怖くない?」
「怖くないよ」
本当に怖いことを知ってるからね。
騒ぐ化物は途中から泣きながら後ろを着いてきていたがシカト。
チラチラ少年が気にしていたが、見せないようにシカトして歩いた。
「お姉さん、ここで大丈夫だよ!!」
「そう?
今度から遅くまで遊んでいたら駄目だよ」
「うん!!気を付けるね」
少年がしっかりお家に入るまで見届けようと
立ち止まって手を振って見送った。
その後日。
再び出会った少年はニコニコと笑って駆け寄ってきた。
「お姉さん!!」
「おや、妖怪少年。元気そうだね」
「うん!!
あのね、お姉さんちょっと耳を貸して」
内緒話をするように、手を当ててこそこそ耳元で感じる息に擽ったさを感じながらも少年の話を聞く。
「あのね、僕が大きくなったらね」
「うん」
「お姉さん、僕のお嫁さんになってくれる?」
照れながら話す可愛らしい少年の姿。
日々の疲れなど吹き飛ぶ内容に笑みが溢れる。
「ふふふっ、お姉さんをお嫁さんにしてくれるの?」
「うん!!」
「けど少年が大きくなる頃にはお姉さんおばちゃんになってしまうよ」
「大丈夫!!
ちゃんと迎えに行くからね!!」
「少年が凄く強くていい男になったら考えるよ」
〜回想終了〜
「ってことがあった」
「オイ」
「うわ……いたいけな子供に…」
「罪作りっすね」
「まさか本気にしてると思わないじゃん!!」
ドン引きされたがちょっと待ってくれ。
私は手をだしていないからノータッチショタだ。
そしてまさかさっきのツートンカラーがこの少年だったというのも先程知ったんだぞ!?
「有罪」
「有罪」
「有罪」
「ひっっど!?私そこまで酷いことした!?」
「少年の心を弄んだ、-10点」
「少年の約束を忘れていた、-10点」
「少年の夢を壊した、-10点」
「悠仁くん!!」
「ごめん、名前姉」
有罪、と書かれた紙をどこからか取り出した悠仁くん。
私は崩れ落ちた。
「お姉さんは悪くないよ」
「若…」
「えーっと……その、夜のボクが暴走したみたいでごめんね?
ちょっと夜の姿になると欲望に忠実になるというか…」
「性格まったく違うじゃない」
「夜の姿もボクなんだけど、ちょっと気が大きくなるから……お姉さん、本当にごめんなさい」
ぺこり、と頭を下げる妖怪少年。
少し見ない間に少年は成長するのかとまじまじと見てしまう。
「けど、今の僕も夜の僕も
お姉さんをお嫁さんにしたいと思っていたのは本当だよ」
「少年……」
「お姉さん、今幸せ?」
真っ直ぐこちらを見る少年。
私は悟を見て、少年を見る。
「幸せだよ。とっても」
「………そっか。それなら良かった」
くすり、と笑う少年は美少年でした。
「今回はお姉さんから手を引くよ」
「僕の聞き間違いかな?今回は?」
「うん、今回は。
お姉さんが泣いたり、傷付いたりするなら僕がお姉さんを奪い取りに行く」
きゅっ、と握られた両手。
「今の僕は中学生だけど
夜の僕なら妖怪の世界では成人しているからね」
「………え?少年妖怪なの?」
「4分の1妖怪の血が混じっているんだ」
「わぉ……妖怪の主だ」
「そうだよ」
ニコニコ笑いながら繋がれた手。
ブンブン振っても離れない。
「だからお姉さん
いつでも僕は待ってるからね」
チュッ、と薬指に唇を落とされる。
その瞬間悟に引き寄せられて、めぐみんと野薔薇ちゃんと悠仁くんが前に出た。
「油断も隙もないガキね」
「昼も夜も油断ならねぇ」
「ってゆーか名前姉ちょろすぎ」
「ほんっと、厄介なもん引き寄せるよね」
「あはは、お姉さん大事にされてるね」
少年にゾッとした瞬間でした。
なんやかんや今夜は解放されたのだが……
「名前さん厄介事に巻き込まれすぎよ」
「私も驚いた」
「名前姉厄介事に呪われてる?」
「かもしれない」
「何でもかんでも構うのやめてください」
「すまない」
一年生達に叱られてしまう。
「皆来てくれてありがとう」
「そりゃ行くわよ」
「俺らが認めていないような輩に取られるなんてゴメンだ」
「そーそー!!
五条先生の隣にいなきゃ、しっくりこない!!」
「嬉しいこと言ってくれるね」
ニヤニヤしながら私の肩を引き寄せる悟。
けどね、私知ってる。
この流れは…
「むしろこんな執着心の塊に捕らえられた時点で可哀想です」
「そーよね。ちょっと引くレベルの執着心よ」
「五条先生っていきすぎた愛情で押し潰しそう!!」
「キミら失礼過ぎ」
だと思った。
この子達が素直に誰かを褒めるわけない。
「五条先生の隣にいる名前姉が一番可愛く笑ってて楽しそうだから五条先生の隣がいい」
「悠仁くん…」
「そうね。
ヘラヘラ楽しそうに笑っているのがらしいわ」
「野薔薇ちゃん…」
「アンタが笑って居られる場所が五条さんの隣だから今はそこにいてください」
「めぐみん……」
「キミら名前のこと大好き過ぎじゃん。
先生ジェラシー」
「五条さんよりは大好きですね」
「そうね」
「俺は先生も好きだよ!!」
「悠仁以外デコピンしていい?」
この生徒らは素直じゃないので。
可愛らしい生徒達をよしよしと撫でる。
「可愛い……。
私は愛されてるっ」
「そーだよ。
だから勝手に誘拐なんかされて挙式なんて挙げようとすんな」
「不本意だけどゴメン」
「まぁそんなこと僕が許さないけど」
繋がれた手がしっかりと握られる。
「オマエは僕のだからね」
「悟も私の」
「余所見したらマジビンタ」
「やだー」
「相手の男は半殺しかな」
「わぁ……」
私、アイサレテルゥ。
あとがき
ぬら孫!!
ぬら孫マイナー扱いな気がするけどみんなわかるかな?
けどしゅきっっっ!!
リクエスト「妖怪関係のお話と通行人」
特に妖怪に指定なかったので、ぬら孫を選ばせていただきましたー!!
ありがとうございました!!