先輩ifシリーズ
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先輩はいつも笑っていた。
1つ上の性格が破綻している先輩達さえ
手玉にとり、飼い慣らすような
普通に見えて、普通じゃない先輩だった。
2つ上の先輩達は
誰よりもお人好しな2人だ。
底抜けに明るくて
お節介好きな
後輩達を可愛がってくれる人達。
名前先輩の第一印象?
そう聞かれたら
自分はきっとこう答える。
ーーーいつも幸せそうに笑っている人。
彼女に出会った時から
彼女はニコニコと笑いながら
何かしらお土産やらお菓子を持っていて
あげる!!と灰原と共に貰っていた。
小さな身体で
問題児である巨体な後輩2人を伸し
ケラケラと笑いながら罰ゲームを言い渡し
後輩2人は顔を歪ませながら
しぶしぶ従っていたところを見たときは
純粋に尊敬した。
強い先輩だと思っていた。
いつも笑っている先輩だと思っていた。
だけど、彼女は人間だ。
「………何しているんですか?」
一人の後輩が命を落とし
一人の先輩が離反し
全てが終わった後に帰って来た彼女。
そんな彼女が今
謎な行動をしている。
「灰原君の葬式?」
「…………」
「ほらほら、七海君もやるよー」
「コーラとお菓子並べた
ただのおやつ会の間違いでは?」
「しみったれた葬式なんて
やるわけないじゃん」
「名前、七海も捕まえたの?」
「大和、硝子連れてきたー?」
「おう!!」
「うわっ、ちゃんと遺影ある」
「ほら、七海君も座って座って」
名前先輩の隣にいつもいる
問題児の先輩が見当たらない。
「五条は任務だぞ」
「そうですか」
「ではこれより!!
灰原君のお別れ会を始めまーす」
コーラで乾杯し始めた名前先輩に
やっぱりこの人も頭おかしくて
イカれてると思ってしまう。
憧れや尊敬はするが
どこかおかしいのは呪術師の定めなのか…。
「灰原君はさ、優しすぎたね」
「そーだな」
「いいこだったのになぁ……」
「いい奴からいなくなってくのかな……」
「それなら大和、お前は大丈夫だ」
「ですね」
「おぉい!!何でだよ!!
さりげなく硝子まで!!」
「だってあんた滑稽じゃん
いい奴ではあるけど……
うん、わりと性格悪いし」
「え、俺ほどの善人いなくね?
七海!!俺っていい奴だよね?ね?」
「うざいです」
「距離感遠いっ!!」
コントのような先輩達は
クスクスと笑いだす。
「ねぇ、七海君。
灰原君の最期は誰か見てくれた?」
「……夏油さんと大和先輩が」
「そっか。
傑は灰原君に慕われていたからね」
「そうですね」
誰もがその話題に触れないのに
ズケズケと踏み込むこの人は
心が足りないのかと思ってしまう。
「七海君」
「………何ですか」
「辛いなら呪術師辞めなよ」
「は……」
「君、以前よりも危ういよ。
一般からこの世界に入って来るなら
多少のイカれ具合は大事だからね。
真面目で優しい君は
君自身が納得する理由が無ければ
この世界で生きて行けないよ」
「………自分は」
「傑も一般からだったけどイカれてた。
けど
あの子は真面目で優しくて
真がある強さがあった」
「自分が弱いって言いたいんですか」
「弱いよ。
今の七海君は空っぽでスカスカだ。
そんなんじゃすぐ死んじゃうから
死ぬ前に辞めな」
「おい、名前……」
「自分の弱さ棚に上げて
他人の強さ妬むくらいなら辞めな」
「名前!!」
大和先輩が声を張り上げる。
しかし、名前先輩は止めない。
「大和から聞いたよ。
二級だったはずなのに一級だったって。
その代わりを悟が引き継いだことも
七海君
君が悟のこと
一人でもいいんじゃないかって溢したことも」
「それの何が?」
「悟が好きだから怒ってるんじゃないよ。
七海君達が不運だったのも
予想と現場で違ってくることは
どんなことをしていても多々あること。
私が怒ってるのはね
強くなろうともせず
他人の強さばかり妬んで
毎日死んだように生きて
仲間の死からも目を背けて
自分可哀想って浸ってるからだよ」
「何を…言って…」
「熱い少年漫画だったら
仲間の死を糧に強くなれ!!なーんて
王道な展開なんだろうけど
七海君には向かないよ」
怒っていたとおもえば
フザケテ笑う先輩。
「逃げてもいいよ。
誰も責めないし、責める奴がいるなら
私が殴っておくから」
「なんで……」
「友を亡くすことは辛くて悲しいよ。
自分がいつそうなるかわからないと重ねる。
この世界は死と隣り合わせだから」
「………」
「空っぽのまま、目標も目的も無く
日々を生きることは苦痛だよ。
そのまま何も無く死ぬこともね。
なら、七海君がやりがいのあることをして
何かのために命を使いなよ。
君はまだ生きなきゃ」
コーラを差し出され
それを反射的に受けとる。
「呪術師はクソだからね。
クソなことに命をかけられるくらい
イカれた奴じゃないとやってけないよ」
「それ、俺らもクソってこと?」
「ははっ、クソだよ。
じゃなきゃこんなとこに居て
葬式したりしないよ」
灰原の写真を入れた額縁の前に
コーラの口を開けて置く。
先輩はどこか寂しそうだったが
穏やかに笑っていた。
「灰原君はいい子だから
来世はきっとこんな世界とは無縁な世界で
幸せに孫や曾孫に囲まれて
大往生だろうね」
「いい奴だからこそ
"戻って来ちゃいました!!
次は俺、もっと強くなります!!"
って、王道主人公っぽく戻ってこない?」
「灰原君が主人公か……
悟と傑ラスボス?勝て……いや、勝てそう。
主にコミュ力で」
「夏油には勝てても五条が負けます?」
「悟、なんだかんだ
後輩に優しいからね。
後々理不尽なことするけど」
「「あー…」」
ふざけて笑って
お菓子食べて
コロコロと話題が変わって……
いつも通りの談話室があった。
いない人がいるのに
まるで
また、ここに皆が集まるかのような
錯覚を覚えるくらい
穏やかな時間。
灰原と夏油さんと五条さんは今任務中で
ただいまって帰って来そうな程
変わらない。
「……名前先輩」
「なぁに?七海君」
「もう少し、呪術師続けます」
「そっか」
「すいません………」
「謝ること無いよ。
命を大切にしなさい」
くしゃりと撫でられた手は小さいのに
とても暖かくて
彼女の強さを感じた。
そんな先輩が成人していないのに
学生である五条さんと入籍したことにも
驚いたが……
そのすぐ後に子供を作ったことにも驚いた。
見るたび大きくなるお腹と
"女性"から"母親"になっていく彼女に
戸惑いを覚えたことを覚えている。
大きくなったお腹で
辛そうに歩く姿。
けど、彼女は幸せそうに笑っていた。
「随分大きくなりましたね」
「七海君!!もう重たくて重たくて」
ぽっこりと膨らんだお腹。
人が人を産む神秘さはあれど
間近で目にすると
不思議さと奇妙さがあった。
「触ってみる?」
「は?」
「その顔傷付く」
「すいません……けど、遠慮しま」
「ほらほら」
強引さもあるこの人は
自分の手を取ると、お腹に手を当てる。
暖かくて、柔らかいのに固さがあり
その中で生きている1つの命が
そこにあった。
お腹に手を当てているだけなのに
命はうごうごと動き回り
何となく人の形をしていることも
触っていてわかる。
「凄いよね」
「凄いですね」
「もうすぐ産まれるよ」
「……生きているんですね」
「もちろん」
なぜだか、泣きたくなった。
その数日後に
名前先輩が産気付き
産まれたことを聞いた。
翌日に家入さんや大和先輩、夜蛾先生が
大量の荷物を手に持ち
病院に行くのに誘われたが
大勢で行っても邪魔になるだろうと断った。
あの大荷物をなぜ病院に
持っていくのか謎でしかない。
後々持って帰ってくるなら
帰って来てから渡せばいいのに……
なんて考えていたはずなのに
その翌日には
ベビータオルが入ったセットを買い
病室の前に立つ自分がいた。
ノックをすれば先輩の声が聞こえる。
「わぁ!!七海くん来てくれたの?」
「おめでとうございます…」
「わざわざありがとう!!
しかもお祝いまで」
病室の中にいた、小さな命は
ぷぅぷぅと寝息をたててぐっすりと寝ていた。
「抱いてみたら?」
「嫌です」
「即答!!」
クスクスと笑いながら
赤ん坊の眠っているコットから
赤ん坊を抱いてこちらの腕に乗せてきた。
ぎょっとしたのもつかの間
腕の形を作らされて
そのまま離れていく先輩を
怨めしく見るが
先輩はクスクスと笑っていた。
「七海君が赤ちゃん抱いてるって
なんかウケるね」
「写真撮らないでください」
「昨日はね
先生と硝子と大和が大荷物で来たよ」
「知ってますし、シカトしないでください」
「七海君、来てくれてありがとう」
にこにこと幸せが伝わってくるような
軟らかな笑顔に
こちらも思わず口許が緩む。
産まれたばかりの
新しい命は
とても小さくて
とても重たくて
少しだけ目尻に涙が浮かぶ。
ーーカシャリ
聞こえたシャッター音に
原因である方を見たら
先ほどとは違った
ニヤニヤした顔。
「七海君、イケメンだよ」
「消してください」
「やばいね、これ飾るよ」
「消してください」
「大丈夫。悟に内緒にする」
「………はぁ」
言っても聞いてくれない先輩に
大きなため息をついた。
彼女はいつも笑っている先輩だった。
けど
彼女も悲しむし、泣くんだと知ったのは
ずっと後のことだった。
1人の男の存在があるからこそ
彼女が笑っているんだと知った。
「おかえり、七海君」
「………」
「難しい顔してどうしたの?」
「いえ、ただいまと言うには
この職場はクソだな、と」
「ははっ!!
呪術師がクソだから一般企業行ったのにね」
「一般企業もクソでした」
「仕事運ないねー」
「どうせクソなら
自分に合った職場に来ただけです」
ケラケラと笑う先輩は
あの頃よりも綺麗になっていた。
「七海君、いい顔になったね」
「お陰様で」
「期待してるよ、後輩」
中身は変わっていないらしい。
「あぁ、そうだ。
七海君が抱いたあの子
こんなに大きくなったよ」
「………こんにちは。五条 輝です」
「うわ……
五条さんにそっくりじゃないですか」
「ははっ!!似せてるからね」
ちっちゃい五条さんがいた。
しかし、なぜだろう。
苦手意識はあるものの
こちらは可愛らしく思えるのは。
「輝、七海君だよ」
「七海…さん?」
「初めまして。七海です」
「僕を抱いてたイケメンの人!!」
「そうそう、その人」
「………あの写真、消さなかったんですか」
「もちろん。
これから忙しくなるけど
親子共々迷惑かけるからよろしくね」
「迷惑かけないでくださいよ」
「無理。旦那アレだよ?」
「あぁ……」
「酷かったら言ってね
ちゃんとしつけるから」
クスクスと笑う彼女は幸せそうにして
あの頃と変わらずに笑っていた。
あとがき
初七海!!
いつか書こうと思って
中途半端だったのを
書き上げました(笑)(笑)
七海って人気あるよね
けど私、七海の特徴掴みきれてない(笑)
頑張ろう。
1つ上の性格が破綻している先輩達さえ
手玉にとり、飼い慣らすような
普通に見えて、普通じゃない先輩だった。
2つ上の先輩達は
誰よりもお人好しな2人だ。
底抜けに明るくて
お節介好きな
後輩達を可愛がってくれる人達。
名前先輩の第一印象?
そう聞かれたら
自分はきっとこう答える。
ーーーいつも幸せそうに笑っている人。
彼女に出会った時から
彼女はニコニコと笑いながら
何かしらお土産やらお菓子を持っていて
あげる!!と灰原と共に貰っていた。
小さな身体で
問題児である巨体な後輩2人を伸し
ケラケラと笑いながら罰ゲームを言い渡し
後輩2人は顔を歪ませながら
しぶしぶ従っていたところを見たときは
純粋に尊敬した。
強い先輩だと思っていた。
いつも笑っている先輩だと思っていた。
だけど、彼女は人間だ。
「………何しているんですか?」
一人の後輩が命を落とし
一人の先輩が離反し
全てが終わった後に帰って来た彼女。
そんな彼女が今
謎な行動をしている。
「灰原君の葬式?」
「…………」
「ほらほら、七海君もやるよー」
「コーラとお菓子並べた
ただのおやつ会の間違いでは?」
「しみったれた葬式なんて
やるわけないじゃん」
「名前、七海も捕まえたの?」
「大和、硝子連れてきたー?」
「おう!!」
「うわっ、ちゃんと遺影ある」
「ほら、七海君も座って座って」
名前先輩の隣にいつもいる
問題児の先輩が見当たらない。
「五条は任務だぞ」
「そうですか」
「ではこれより!!
灰原君のお別れ会を始めまーす」
コーラで乾杯し始めた名前先輩に
やっぱりこの人も頭おかしくて
イカれてると思ってしまう。
憧れや尊敬はするが
どこかおかしいのは呪術師の定めなのか…。
「灰原君はさ、優しすぎたね」
「そーだな」
「いいこだったのになぁ……」
「いい奴からいなくなってくのかな……」
「それなら大和、お前は大丈夫だ」
「ですね」
「おぉい!!何でだよ!!
さりげなく硝子まで!!」
「だってあんた滑稽じゃん
いい奴ではあるけど……
うん、わりと性格悪いし」
「え、俺ほどの善人いなくね?
七海!!俺っていい奴だよね?ね?」
「うざいです」
「距離感遠いっ!!」
コントのような先輩達は
クスクスと笑いだす。
「ねぇ、七海君。
灰原君の最期は誰か見てくれた?」
「……夏油さんと大和先輩が」
「そっか。
傑は灰原君に慕われていたからね」
「そうですね」
誰もがその話題に触れないのに
ズケズケと踏み込むこの人は
心が足りないのかと思ってしまう。
「七海君」
「………何ですか」
「辛いなら呪術師辞めなよ」
「は……」
「君、以前よりも危ういよ。
一般からこの世界に入って来るなら
多少のイカれ具合は大事だからね。
真面目で優しい君は
君自身が納得する理由が無ければ
この世界で生きて行けないよ」
「………自分は」
「傑も一般からだったけどイカれてた。
けど
あの子は真面目で優しくて
真がある強さがあった」
「自分が弱いって言いたいんですか」
「弱いよ。
今の七海君は空っぽでスカスカだ。
そんなんじゃすぐ死んじゃうから
死ぬ前に辞めな」
「おい、名前……」
「自分の弱さ棚に上げて
他人の強さ妬むくらいなら辞めな」
「名前!!」
大和先輩が声を張り上げる。
しかし、名前先輩は止めない。
「大和から聞いたよ。
二級だったはずなのに一級だったって。
その代わりを悟が引き継いだことも
七海君
君が悟のこと
一人でもいいんじゃないかって溢したことも」
「それの何が?」
「悟が好きだから怒ってるんじゃないよ。
七海君達が不運だったのも
予想と現場で違ってくることは
どんなことをしていても多々あること。
私が怒ってるのはね
強くなろうともせず
他人の強さばかり妬んで
毎日死んだように生きて
仲間の死からも目を背けて
自分可哀想って浸ってるからだよ」
「何を…言って…」
「熱い少年漫画だったら
仲間の死を糧に強くなれ!!なーんて
王道な展開なんだろうけど
七海君には向かないよ」
怒っていたとおもえば
フザケテ笑う先輩。
「逃げてもいいよ。
誰も責めないし、責める奴がいるなら
私が殴っておくから」
「なんで……」
「友を亡くすことは辛くて悲しいよ。
自分がいつそうなるかわからないと重ねる。
この世界は死と隣り合わせだから」
「………」
「空っぽのまま、目標も目的も無く
日々を生きることは苦痛だよ。
そのまま何も無く死ぬこともね。
なら、七海君がやりがいのあることをして
何かのために命を使いなよ。
君はまだ生きなきゃ」
コーラを差し出され
それを反射的に受けとる。
「呪術師はクソだからね。
クソなことに命をかけられるくらい
イカれた奴じゃないとやってけないよ」
「それ、俺らもクソってこと?」
「ははっ、クソだよ。
じゃなきゃこんなとこに居て
葬式したりしないよ」
灰原の写真を入れた額縁の前に
コーラの口を開けて置く。
先輩はどこか寂しそうだったが
穏やかに笑っていた。
「灰原君はいい子だから
来世はきっとこんな世界とは無縁な世界で
幸せに孫や曾孫に囲まれて
大往生だろうね」
「いい奴だからこそ
"戻って来ちゃいました!!
次は俺、もっと強くなります!!"
って、王道主人公っぽく戻ってこない?」
「灰原君が主人公か……
悟と傑ラスボス?勝て……いや、勝てそう。
主にコミュ力で」
「夏油には勝てても五条が負けます?」
「悟、なんだかんだ
後輩に優しいからね。
後々理不尽なことするけど」
「「あー…」」
ふざけて笑って
お菓子食べて
コロコロと話題が変わって……
いつも通りの談話室があった。
いない人がいるのに
まるで
また、ここに皆が集まるかのような
錯覚を覚えるくらい
穏やかな時間。
灰原と夏油さんと五条さんは今任務中で
ただいまって帰って来そうな程
変わらない。
「……名前先輩」
「なぁに?七海君」
「もう少し、呪術師続けます」
「そっか」
「すいません………」
「謝ること無いよ。
命を大切にしなさい」
くしゃりと撫でられた手は小さいのに
とても暖かくて
彼女の強さを感じた。
そんな先輩が成人していないのに
学生である五条さんと入籍したことにも
驚いたが……
そのすぐ後に子供を作ったことにも驚いた。
見るたび大きくなるお腹と
"女性"から"母親"になっていく彼女に
戸惑いを覚えたことを覚えている。
大きくなったお腹で
辛そうに歩く姿。
けど、彼女は幸せそうに笑っていた。
「随分大きくなりましたね」
「七海君!!もう重たくて重たくて」
ぽっこりと膨らんだお腹。
人が人を産む神秘さはあれど
間近で目にすると
不思議さと奇妙さがあった。
「触ってみる?」
「は?」
「その顔傷付く」
「すいません……けど、遠慮しま」
「ほらほら」
強引さもあるこの人は
自分の手を取ると、お腹に手を当てる。
暖かくて、柔らかいのに固さがあり
その中で生きている1つの命が
そこにあった。
お腹に手を当てているだけなのに
命はうごうごと動き回り
何となく人の形をしていることも
触っていてわかる。
「凄いよね」
「凄いですね」
「もうすぐ産まれるよ」
「……生きているんですね」
「もちろん」
なぜだか、泣きたくなった。
その数日後に
名前先輩が産気付き
産まれたことを聞いた。
翌日に家入さんや大和先輩、夜蛾先生が
大量の荷物を手に持ち
病院に行くのに誘われたが
大勢で行っても邪魔になるだろうと断った。
あの大荷物をなぜ病院に
持っていくのか謎でしかない。
後々持って帰ってくるなら
帰って来てから渡せばいいのに……
なんて考えていたはずなのに
その翌日には
ベビータオルが入ったセットを買い
病室の前に立つ自分がいた。
ノックをすれば先輩の声が聞こえる。
「わぁ!!七海くん来てくれたの?」
「おめでとうございます…」
「わざわざありがとう!!
しかもお祝いまで」
病室の中にいた、小さな命は
ぷぅぷぅと寝息をたててぐっすりと寝ていた。
「抱いてみたら?」
「嫌です」
「即答!!」
クスクスと笑いながら
赤ん坊の眠っているコットから
赤ん坊を抱いてこちらの腕に乗せてきた。
ぎょっとしたのもつかの間
腕の形を作らされて
そのまま離れていく先輩を
怨めしく見るが
先輩はクスクスと笑っていた。
「七海君が赤ちゃん抱いてるって
なんかウケるね」
「写真撮らないでください」
「昨日はね
先生と硝子と大和が大荷物で来たよ」
「知ってますし、シカトしないでください」
「七海君、来てくれてありがとう」
にこにこと幸せが伝わってくるような
軟らかな笑顔に
こちらも思わず口許が緩む。
産まれたばかりの
新しい命は
とても小さくて
とても重たくて
少しだけ目尻に涙が浮かぶ。
ーーカシャリ
聞こえたシャッター音に
原因である方を見たら
先ほどとは違った
ニヤニヤした顔。
「七海君、イケメンだよ」
「消してください」
「やばいね、これ飾るよ」
「消してください」
「大丈夫。悟に内緒にする」
「………はぁ」
言っても聞いてくれない先輩に
大きなため息をついた。
彼女はいつも笑っている先輩だった。
けど
彼女も悲しむし、泣くんだと知ったのは
ずっと後のことだった。
1人の男の存在があるからこそ
彼女が笑っているんだと知った。
「おかえり、七海君」
「………」
「難しい顔してどうしたの?」
「いえ、ただいまと言うには
この職場はクソだな、と」
「ははっ!!
呪術師がクソだから一般企業行ったのにね」
「一般企業もクソでした」
「仕事運ないねー」
「どうせクソなら
自分に合った職場に来ただけです」
ケラケラと笑う先輩は
あの頃よりも綺麗になっていた。
「七海君、いい顔になったね」
「お陰様で」
「期待してるよ、後輩」
中身は変わっていないらしい。
「あぁ、そうだ。
七海君が抱いたあの子
こんなに大きくなったよ」
「………こんにちは。五条 輝です」
「うわ……
五条さんにそっくりじゃないですか」
「ははっ!!似せてるからね」
ちっちゃい五条さんがいた。
しかし、なぜだろう。
苦手意識はあるものの
こちらは可愛らしく思えるのは。
「輝、七海君だよ」
「七海…さん?」
「初めまして。七海です」
「僕を抱いてたイケメンの人!!」
「そうそう、その人」
「………あの写真、消さなかったんですか」
「もちろん。
これから忙しくなるけど
親子共々迷惑かけるからよろしくね」
「迷惑かけないでくださいよ」
「無理。旦那アレだよ?」
「あぁ……」
「酷かったら言ってね
ちゃんとしつけるから」
クスクスと笑う彼女は幸せそうにして
あの頃と変わらずに笑っていた。
あとがき
初七海!!
いつか書こうと思って
中途半端だったのを
書き上げました(笑)(笑)
七海って人気あるよね
けど私、七海の特徴掴みきれてない(笑)
頑張ろう。