君の一番になれたら
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夏油の前で溢した"本音"は
私を塗り潰していく。
灰原が亡くなって、夏油の言葉を聞いて考える事が増えた。
呪霊がいるから私達は存在する。
人々の、非術師の生活を守るために。
けれど現実は非術師の生み出す呪霊に翻弄され、仲間が減っていく日々。
綺麗事だけじゃ世界は救えない。
どんなに凄い力があってもたった一人では世界は救えない。
増え続ける呪霊に対し、圧倒的に少ない呪術師。
可能性の秘めた原石を一般家庭から見つけ出す方法も無く、見つけられたとしても力を扱えるまで育てる期間を考えると時間も人材も足りない。
呪術界に生まれたからと言って戦えるかと言われると微妙だ。血を、術式を求め掛け合わせた結果……強者の地位に立てるのは一握り。
術式を受け継がない事の方が多く、最低限見える者達はどうしたってサポートにしか回れない。
あとは数で呪具を使いながら攻めるしか方法が無い。
呪具も限られているし、誰もが強い武器を手にする事は出来ない。階級の高い武器こそ扱いを間違えればただの棒と変わり無いのだから。
呪術界にも非術師は存在する。
夏油や九十九の話す呪霊のいない世界なんてお伽噺でしかない。
才ある人間同士を掛け合わせても必ず綻びは生まれる。その者達を生かせないなどと淘汰していけば……人間の最期など呆気なく終わるのだろう。
昔からそうなのだから。
異物を恐れ、異物を排除してきた結果…牙を向けられ手酷い痛手を負う物語は数知れず。
呪術界の人間は臆病な者達が多いというのに……なりふり構わず牙を向く者を相手になど無理な話だ。
勝てば英雄、負ければ家畜。
もしも呪術界が非術師に負けたのなら……今以上に飼い殺しとされ、人権など与えられず家畜以下の扱いとなるだろう。
御三家など解体され、不平等など無く扱われはするだろうが……力を求めた結果は、何度も繰り返される歴史と同じ。
より強さを求め掛け合わされるだけ。
ならばその行いを認めたくない愚か者はどうなるか?
己を呪い、世界を呪い、堕ちるだけ。
ほら。
呪霊のいない世界なんて無い。
人は誰もが憎まず、怨まず、負の感情を持たず過ごすなんて事出来やしない。
感情全てを取り除かない限り続く。
そんな世界、誰が幸せになれるというのか。
そんな世界、誰が笑って過ごせるのか。
そんな世界を本当に求めたいのか。
否。
その他大勢も
見知っただけの者も
家族も婚約者も誰も幸せになれない。
けど、私は誰もが幸せになって欲しいわけじゃない。
その他大勢なんて興味がない。
見知っただけの関係も興味がない。
家族や婚約者など地獄より深い苦しみに叫びながら堕ちろと願っている。
……高専の人々は少しだけ好き。
出来るなら傷付かず、死んで欲しくないと思うくらいに。死んでしまえば悲しいし、寂しい。でも、仕方ないと割り切れる。
いつ死ぬかわからない死と隣り合わせの状況を嘆き悲しむより、生き残った手札で次に進まなくてはいけないから。
夏油はそんな世界が嫌で悩んでいるみたいだけど。
私は?
もしも、という夢物語を現実に考えるとしたら。
何を優先させたい?
何を叶えたい?
綺麗事抜きで、私一人ででも出来る事……。
目を閉じて思い浮かぶのは
「聞いているのか?」
思考の邪魔をしてきたのは父親だった。
ツマラナイ話を淡々と聞かされていたので思考を飛ばしていた。こんなこと、以前ならしなかったのに……変わった自身に笑ってしまう。
私はどうしてこの人が、この家が怖かったのだろう。
不機嫌そうに顔をしかめて声を低くし、唸るように文句を言う父はただの年老いた男だ。
実力も無く、金とコネで地道にのしあがろうとしてきたただの男。
この男の一言にいつも諦めてきた。
この男の決定にいつも頷いてきた。
兄弟も皆逆らうことなどせずに。
唯一、この男に逆らった姉は今思い返せばとても強い人だったのかもしれない。
惨めで、自暴自棄に見えたのに……今は自分の立場や力や先を見据えた結果、この男やこの世界から逃げ出す方法を見つけ、この男や相手の婚約者やこの世界が嫌がるであろう最高の方法があの日の"死"だったのだとしたら。
自らの恐怖に打ち勝ち、逃げ切った姉はとても心の強い人であり、最期まで自分の意志を貫き通したのかもしれない。
夢など持つな。
夢など見るな。
幸せを願うな。
幸せになろうとするな。
夢は夢で現実は変わらない。
どんなに足掻いても無理だ。
ーーーお前に未来などない。
そう呪いながら死んだ姉は救われたのだろうか?
姉が私を思ったなどと美化するつもりはない。
姉はあの日、憎々しげに私を見ながら笑っていたのだから。
この先、自分を良いように利用しようとしていた者達の事を。
この先 、自分に無い未来の事を。
この先、私の救えない未来の事を。
世界を嘲笑い、家族を呪い、自分の未来を恨んで。
私はキツイ鍛練よりも姉の作法などの授業がいいなと羨んでいたが、姉からすればまだ逃げ道のあった鍛練やその先の未来の方が良かったなどと怨まれていたのかもしれない。
だとしたら、笑ってしまう。
どの道だろうと逃げ道など初めから無いのだから。
私にとって救いとなったのは後輩達に恵まれた事。
だから
「お前の後輩に反転術式を扱う者がいたな。
従兄弟のところの息子が同じくらいの年だからお前が繋がりを作れ。
血筋は良くなくとも今後良き胎となり我が家に良い兆しを」
私に出来る事があるというのなら。
「五条の子を孕め」
後悔の無い
「でしゃばりな粋がった若造を黙らすには少々痛い目にあっても良かろう」
"道"を選ぶのなら。
「私、悟の事を愛しています」
「だから何だ。あの方との婚約は破棄出来んぞ」
「悟だけじゃなく、家入も夏油も七海達も大切だなと思ってます」
「そうか。なら大切な者達の為にも…」
「オマエ達が殺した灰原も私の数少ない大切な一部だったのに」
「残念だったな」
顔色一つ変えず、我関せず。
それが何だと、話の腰を折るなと言うように嫌そうに顔を歪める父親。
「貴方は…」
「先程から何だ。言いたいことがあるなら言え」
「私も、姉も、他の兄弟も貴方にとっては家の為の道具でしかないんだね」
「当たり前の事だ」
「貴方も"道具"の一人にしか過ぎないのに?」
「口を慎め!誰に向かってそんな発言をしているんだ!!」
「貴方に大切なものはあるの?」
父親の口からいかに自分が凄いか話されても全く響かない。
「……大切なものは無さそうだね」
「五条と付き合っているからと自分も偉くなったと勘違いしていないか?」
「貴方の自慢は地位と金。母すら今の地位の為に血の為に契っただけの関係。
まるで自分が偉くなったように勘違いさしているのはアナタの方では?」
「黙れ!!」
「アナタも、血と地位の為につくられ親の道具の一つでしか無いのに」
「黙れぇっ!!!誰に向かって!!」
「アナタみたいな人達が最も醜くて底辺な人種だと思う」
振り上げられた拳は怖くなかった。
パァンッーーー
響いた一発の銃声。
思っていたよりも反動が強い。
今後扱うなら事前に練習が必要そうだ。
ドサッと倒れた物体は部屋を汚していく。
ドタドタと慌てたような騒がしい複数の足音が聞こえる。
「そんなアナタ達の血を受け継ぎ、生み出された私は
もっと醜く、低俗で、愚かな生き物だね」
悲鳴と罵倒の中
私だけは笑っていた。
報告
・実家へ(高専4年 苗字 名前)帰宅から3日後苗字家に住む15名の死亡が確認される
・刀傷や銃創から苗字 名前の使用していた呪具や武具と断定
・苗字 名前は逃走
呪術規定に基づき呪詛師として処刑対象となる
「この……血族殺しがっ!!」
忌々しげに聞き慣れた言葉を吐いて絶命した。
今更何を言われたところで気にならない。
むしろ喜べばいいのに。
「随分逃げ回ってくれたからゆーっくり殺していくしか無かった私に何か一言ございますか?」
「狂人だな」
「随分老けたなぁ。
でも、相変わらず若い子がお好きなようで……お元気ですね」
クスクス嗤う私の前には怯えきった若い娘と老人。
私の元、婚約者だ。
「私が呪詛師扱いとなってから娶った若い娘?」
「屋敷の者はっ」
「みんな寝てるよ」
「クソォッ!!」
「アナタ方が色々としてくれたから関係者を探して殺し回るの大変だったんだ。
身内に腐りきったものがいれば遅かれ早かれ傷みは早まる。
傷みが広がる前に分別しなきゃ」
「くるなっ!!」
怯えきって自身の嫁すら盾にする老害。
腐りきっている。
「一つ一つ分別するのって手間暇かかるから、未来の若い芽を潰される前に全部捨ててしまった方が楽になるんじゃないかなって思って」
「く、狂った戯れ言をっ」
「狂わせてくれたアナタ方に感謝してもいいかな。
最低な人生を死んだように生きるより、最低な人生を死ぬ気で生きた方が何倍も楽になれたから」
「出来損ないがっ!!」
呪力を練る前に一発。
使い慣れた、手に馴染むもの。
「本当は苦しんで嘆いて命乞いして欲しかったけど時間が無いんだ」
呆気なく倒れた老人。
震えながら怯えた目を向ける娘に銃口を合わせた。
「ひとごろしッッ!!」
「この"道"を選んだ時点で後悔してないよ」
他人の命を終わらせる重さ。
他人の未来を奪う罪。
他人の今を否定する傲慢。
「ごめんね。
私はどうでもいいその他より、私の為に生きて私の為に終わらせるの」
「………」
「貴女に罪も恨みも無いけれど。
私の大切な人の未来に貴女はいらない」
パァンッ
涙を流したまま倒れた娘。
「決めたんだ」
後ろで一つの屋敷が大きな火の手が上がる。
騒がしく響く悲鳴と叫び声。
それをのみ込むように火の周りは早く、そして大きくなっていった。
「私にとっての"世界"は悟がいい。
悟の周りはあたたかくて楽しくて輝いているから……
その"世界"を壊す奴ら。壊そうとする奴らはいらない」
私の世界を壊すというのなら。
世界を変えようとする邪魔をするのなら。
「私に出来る事は清算するだけ。
悟を汚す血が流れて消えてしまえば……少しは、悟の為になれるかな」
敵の多い悟は強いけど、少しでも減らせるなら……なーんて。
「………間に合うかな?」
さぁ、行こうか。
私の愛したあの人の元へ。
私を塗り潰していく。
灰原が亡くなって、夏油の言葉を聞いて考える事が増えた。
呪霊がいるから私達は存在する。
人々の、非術師の生活を守るために。
けれど現実は非術師の生み出す呪霊に翻弄され、仲間が減っていく日々。
綺麗事だけじゃ世界は救えない。
どんなに凄い力があってもたった一人では世界は救えない。
増え続ける呪霊に対し、圧倒的に少ない呪術師。
可能性の秘めた原石を一般家庭から見つけ出す方法も無く、見つけられたとしても力を扱えるまで育てる期間を考えると時間も人材も足りない。
呪術界に生まれたからと言って戦えるかと言われると微妙だ。血を、術式を求め掛け合わせた結果……強者の地位に立てるのは一握り。
術式を受け継がない事の方が多く、最低限見える者達はどうしたってサポートにしか回れない。
あとは数で呪具を使いながら攻めるしか方法が無い。
呪具も限られているし、誰もが強い武器を手にする事は出来ない。階級の高い武器こそ扱いを間違えればただの棒と変わり無いのだから。
呪術界にも非術師は存在する。
夏油や九十九の話す呪霊のいない世界なんてお伽噺でしかない。
才ある人間同士を掛け合わせても必ず綻びは生まれる。その者達を生かせないなどと淘汰していけば……人間の最期など呆気なく終わるのだろう。
昔からそうなのだから。
異物を恐れ、異物を排除してきた結果…牙を向けられ手酷い痛手を負う物語は数知れず。
呪術界の人間は臆病な者達が多いというのに……なりふり構わず牙を向く者を相手になど無理な話だ。
勝てば英雄、負ければ家畜。
もしも呪術界が非術師に負けたのなら……今以上に飼い殺しとされ、人権など与えられず家畜以下の扱いとなるだろう。
御三家など解体され、不平等など無く扱われはするだろうが……力を求めた結果は、何度も繰り返される歴史と同じ。
より強さを求め掛け合わされるだけ。
ならばその行いを認めたくない愚か者はどうなるか?
己を呪い、世界を呪い、堕ちるだけ。
ほら。
呪霊のいない世界なんて無い。
人は誰もが憎まず、怨まず、負の感情を持たず過ごすなんて事出来やしない。
感情全てを取り除かない限り続く。
そんな世界、誰が幸せになれるというのか。
そんな世界、誰が笑って過ごせるのか。
そんな世界を本当に求めたいのか。
否。
その他大勢も
見知っただけの者も
家族も婚約者も誰も幸せになれない。
けど、私は誰もが幸せになって欲しいわけじゃない。
その他大勢なんて興味がない。
見知っただけの関係も興味がない。
家族や婚約者など地獄より深い苦しみに叫びながら堕ちろと願っている。
……高専の人々は少しだけ好き。
出来るなら傷付かず、死んで欲しくないと思うくらいに。死んでしまえば悲しいし、寂しい。でも、仕方ないと割り切れる。
いつ死ぬかわからない死と隣り合わせの状況を嘆き悲しむより、生き残った手札で次に進まなくてはいけないから。
夏油はそんな世界が嫌で悩んでいるみたいだけど。
私は?
もしも、という夢物語を現実に考えるとしたら。
何を優先させたい?
何を叶えたい?
綺麗事抜きで、私一人ででも出来る事……。
目を閉じて思い浮かぶのは
「聞いているのか?」
思考の邪魔をしてきたのは父親だった。
ツマラナイ話を淡々と聞かされていたので思考を飛ばしていた。こんなこと、以前ならしなかったのに……変わった自身に笑ってしまう。
私はどうしてこの人が、この家が怖かったのだろう。
不機嫌そうに顔をしかめて声を低くし、唸るように文句を言う父はただの年老いた男だ。
実力も無く、金とコネで地道にのしあがろうとしてきたただの男。
この男の一言にいつも諦めてきた。
この男の決定にいつも頷いてきた。
兄弟も皆逆らうことなどせずに。
唯一、この男に逆らった姉は今思い返せばとても強い人だったのかもしれない。
惨めで、自暴自棄に見えたのに……今は自分の立場や力や先を見据えた結果、この男やこの世界から逃げ出す方法を見つけ、この男や相手の婚約者やこの世界が嫌がるであろう最高の方法があの日の"死"だったのだとしたら。
自らの恐怖に打ち勝ち、逃げ切った姉はとても心の強い人であり、最期まで自分の意志を貫き通したのかもしれない。
夢など持つな。
夢など見るな。
幸せを願うな。
幸せになろうとするな。
夢は夢で現実は変わらない。
どんなに足掻いても無理だ。
ーーーお前に未来などない。
そう呪いながら死んだ姉は救われたのだろうか?
姉が私を思ったなどと美化するつもりはない。
姉はあの日、憎々しげに私を見ながら笑っていたのだから。
この先、自分を良いように利用しようとしていた者達の事を。
この先 、自分に無い未来の事を。
この先、私の救えない未来の事を。
世界を嘲笑い、家族を呪い、自分の未来を恨んで。
私はキツイ鍛練よりも姉の作法などの授業がいいなと羨んでいたが、姉からすればまだ逃げ道のあった鍛練やその先の未来の方が良かったなどと怨まれていたのかもしれない。
だとしたら、笑ってしまう。
どの道だろうと逃げ道など初めから無いのだから。
私にとって救いとなったのは後輩達に恵まれた事。
だから
「お前の後輩に反転術式を扱う者がいたな。
従兄弟のところの息子が同じくらいの年だからお前が繋がりを作れ。
血筋は良くなくとも今後良き胎となり我が家に良い兆しを」
私に出来る事があるというのなら。
「五条の子を孕め」
後悔の無い
「でしゃばりな粋がった若造を黙らすには少々痛い目にあっても良かろう」
"道"を選ぶのなら。
「私、悟の事を愛しています」
「だから何だ。あの方との婚約は破棄出来んぞ」
「悟だけじゃなく、家入も夏油も七海達も大切だなと思ってます」
「そうか。なら大切な者達の為にも…」
「オマエ達が殺した灰原も私の数少ない大切な一部だったのに」
「残念だったな」
顔色一つ変えず、我関せず。
それが何だと、話の腰を折るなと言うように嫌そうに顔を歪める父親。
「貴方は…」
「先程から何だ。言いたいことがあるなら言え」
「私も、姉も、他の兄弟も貴方にとっては家の為の道具でしかないんだね」
「当たり前の事だ」
「貴方も"道具"の一人にしか過ぎないのに?」
「口を慎め!誰に向かってそんな発言をしているんだ!!」
「貴方に大切なものはあるの?」
父親の口からいかに自分が凄いか話されても全く響かない。
「……大切なものは無さそうだね」
「五条と付き合っているからと自分も偉くなったと勘違いしていないか?」
「貴方の自慢は地位と金。母すら今の地位の為に血の為に契っただけの関係。
まるで自分が偉くなったように勘違いさしているのはアナタの方では?」
「黙れ!!」
「アナタも、血と地位の為につくられ親の道具の一つでしか無いのに」
「黙れぇっ!!!誰に向かって!!」
「アナタみたいな人達が最も醜くて底辺な人種だと思う」
振り上げられた拳は怖くなかった。
パァンッーーー
響いた一発の銃声。
思っていたよりも反動が強い。
今後扱うなら事前に練習が必要そうだ。
ドサッと倒れた物体は部屋を汚していく。
ドタドタと慌てたような騒がしい複数の足音が聞こえる。
「そんなアナタ達の血を受け継ぎ、生み出された私は
もっと醜く、低俗で、愚かな生き物だね」
悲鳴と罵倒の中
私だけは笑っていた。
報告
・実家へ(高専4年 苗字 名前)帰宅から3日後苗字家に住む15名の死亡が確認される
・刀傷や銃創から苗字 名前の使用していた呪具や武具と断定
・苗字 名前は逃走
呪術規定に基づき呪詛師として処刑対象となる
「この……血族殺しがっ!!」
忌々しげに聞き慣れた言葉を吐いて絶命した。
今更何を言われたところで気にならない。
むしろ喜べばいいのに。
「随分逃げ回ってくれたからゆーっくり殺していくしか無かった私に何か一言ございますか?」
「狂人だな」
「随分老けたなぁ。
でも、相変わらず若い子がお好きなようで……お元気ですね」
クスクス嗤う私の前には怯えきった若い娘と老人。
私の元、婚約者だ。
「私が呪詛師扱いとなってから娶った若い娘?」
「屋敷の者はっ」
「みんな寝てるよ」
「クソォッ!!」
「アナタ方が色々としてくれたから関係者を探して殺し回るの大変だったんだ。
身内に腐りきったものがいれば遅かれ早かれ傷みは早まる。
傷みが広がる前に分別しなきゃ」
「くるなっ!!」
怯えきって自身の嫁すら盾にする老害。
腐りきっている。
「一つ一つ分別するのって手間暇かかるから、未来の若い芽を潰される前に全部捨ててしまった方が楽になるんじゃないかなって思って」
「く、狂った戯れ言をっ」
「狂わせてくれたアナタ方に感謝してもいいかな。
最低な人生を死んだように生きるより、最低な人生を死ぬ気で生きた方が何倍も楽になれたから」
「出来損ないがっ!!」
呪力を練る前に一発。
使い慣れた、手に馴染むもの。
「本当は苦しんで嘆いて命乞いして欲しかったけど時間が無いんだ」
呆気なく倒れた老人。
震えながら怯えた目を向ける娘に銃口を合わせた。
「ひとごろしッッ!!」
「この"道"を選んだ時点で後悔してないよ」
他人の命を終わらせる重さ。
他人の未来を奪う罪。
他人の今を否定する傲慢。
「ごめんね。
私はどうでもいいその他より、私の為に生きて私の為に終わらせるの」
「………」
「貴女に罪も恨みも無いけれど。
私の大切な人の未来に貴女はいらない」
パァンッ
涙を流したまま倒れた娘。
「決めたんだ」
後ろで一つの屋敷が大きな火の手が上がる。
騒がしく響く悲鳴と叫び声。
それをのみ込むように火の周りは早く、そして大きくなっていった。
「私にとっての"世界"は悟がいい。
悟の周りはあたたかくて楽しくて輝いているから……
その"世界"を壊す奴ら。壊そうとする奴らはいらない」
私の世界を壊すというのなら。
世界を変えようとする邪魔をするのなら。
「私に出来る事は清算するだけ。
悟を汚す血が流れて消えてしまえば……少しは、悟の為になれるかな」
敵の多い悟は強いけど、少しでも減らせるなら……なーんて。
「………間に合うかな?」
さぁ、行こうか。
私の愛したあの人の元へ。