通行人 番外編
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これは……私が中学生だった頃のお話である。
幼馴染のクロと研磨と帰宅途中、何やら時代遅れでズボンをずり下げパンツをほぼ見せびらかし、短い足をより短く見せつけつつも道幅を短い足を大きく見せるかのような矛盾した歩幅で練り歩き、フランスパンを前髪に全集中し、タバコを吹かす野郎共に絡まれた。
オラオラしか言わないその時代遅れの風物詩を前に、相手を睨み付けながら私と研磨を背中に隠す幼馴染のクロは震えていた。
それでも自分が一番年上だから、と一個上なだけなのに勇ましく守ろうとしてくれるクロ。
そんなクロは時代遅れの風物詩より数倍かっこよくて私は…………
「あの時、オラつく不良の股間を蹴りあげて迷わず防犯ブザーを鳴らしたんだ」
「しみじみ何言ってんの?」
「そのあと騒ぎだした不良達一人残らず股間を狩り沈め」
「何してんの?」
「助けに入ろうとしてくれたチームの総長すら狩ろうと荒ぶっていた私を研磨が必死に引き止めた」
「「王蟲じゃん」」
「気付けば東京で名のある不良達に知れわたり」
「気付けばの間何やらかしたの?」
「気付けばダサい異名………【神-コウカン-艦】なんて言われてたんだよね」
「それ股間から来てる?」
お腹抱えて笑っている美少女。
ひきつった笑いを浮かべる前髪。
ドン引く白髪。
いつもの某バーガーショップにてポテトをつまみながら最近の面白い事は?と聞かれたので、最近あったとあるヤンチャ達をシバいた話をするとどーしてそうなった?と聞かれたので中学の頃の話を溢した。
「別に奇妙なあだ名なんていいの。今更だから」
「気にしろよ」
「気にした方がいいよ」
「何を思ったのか、勝手に下に付かれる方が迷惑でさ」
「もっと気にするところあるだろ」
「ズレてるね」
「中学の頃色々巻き込まれたのはいい思い出だよね」
はははっと笑う。
あの頃は楽しかったなぁ、なんてしみじみ思い返す。
「不良なんて悪い事してオラついてるだけの黒歴史じゃないか」
「「おまいう?」」
「今も黒歴史作成してる奴の台詞じゃないな」
「美少女シャラッッップ!!」
「ちなみに楽しかった黒歴史は?」
「楽しい黒歴史とは?
そーだなぁ……深夜出歩くのが楽しくて歩いていたら小学生がバイク屋に泥棒に入っててさぁ」
「「「物騒」」」
「止めようとしたら見付かった!って焦って攻撃してきたから思わず近くにあった消火器噴射させちゃって店の中真っ白にしちゃったんだよね」
「………真相は?」
「歯向かう度に冷静になるまで顔面噴射してあげた」
※良い子のみんなは絶対にやめましょう
「……最近っちゃ最近といえば帰り道に女の子まわされそうだったから教育的指導」
「当然の報いだな」
「クロと研磨とお祭り行ったら、お祭りではしゃいだ馬鹿がナイフ持ってたから教育的指導」
「物騒」
「研磨が拉致されて連れていかれた場所で"悪い奴殺せば英雄だ!"とかほざいてる馬鹿いてナイフ出したから喧嘩に武器はよくないってタイヤのホイール投げて当てた」
「物騒通り越して呪われてんの?」
「あぁ、名前の由来は股間と戦艦合わせての神艦ってことか」
「失礼だよね」
プンスコ怒る私と反対にドン引く前髪と白髪。
「正当防衛だよ」
「「過剰防衛だよ」」
「そもそもクロ達が不良っぽいから良くない。絡まれ過ぎ」
そう。そこなのだ。
クロは髪型が尖っているし、虎くんはそもそも頭も中身も尖っているし、研磨は裏で手引きしていそうな参謀だし、やっくん先輩も手が早そうだし。
「スポーツ選手とは思えない髪の毛パリピってて絡まれるし、最近は絡まれてもクロが面白がって私の名前出すと、一気に静まるらしいからその度に研磨に引かれる」
「引かれるだろ。それは」
「全員内股で前屈みなるからキモいって」
「「うわぁ……」」
失礼しちゃうわ!と愚痴ってもうわぁ……と引かれる。
「流石に高校内ではそんなことしてないから。
大人しくしてるよ」
「「「大人しく?」」」
「頭大丈夫か」
「辞書で改めて調べ直した方がいいよ?」
「大人しい奴は歩くたび黒歴史作らないぞ」
「キミら酷いな」
今日のポテトは塩が濃いな。
店長に塩濃いよーって言ったらすまーん!娘が反抗期に入って涙が止まらないって返ってきた。
「そーいや最近変な服着た奴多くね?」
「君らも充分変な服だよ。制服改造自由って自由すぎん?」
「特攻服なんて父親世代の不良達が着てるイメージだったけどよく見るね」
「学生服をボンタンにしている君も立派な不良だよ前髪」
「頭や身体に墨入ってる奴ら多いよな。将来的に後悔しそう」
「遠回しに若気の至りではしゃいでんなって煽るのよくないよ白髪」
「女の扱い悪すぎ」
「不良な俺ら格好いいウェーイってイキッて色々勘違いしてんだろうね。沈めたい」
「「「……………」」」
何か静かになったな。
珍しい。どした?と聞いたら向こうもどうした?と心配された。
「オマエ、不良に当たり強くね?」
「そうかな?」
「不良に親でも殺られたかい?」
「殺られはしないけど、親兄弟友人全員ブッコロしてやんよ!って吠えられる事はよくある」
「「あんのかよ」」
「大丈夫なのか?」
「えっ、美少女が優しい……。
特に困った事は無いから平気だよ」
「一応キミも女の子何だから無理はよくないよ」
「一応はいらねーんだわ。女の子な、前髪。私は女の子。はい、リピートアフトュミー」
「発音悪すぎな」
別に不良が嫌いなわけじゃない。
伝説を作った兄さんは喧嘩弱いけど人柄が良すぎるし、そのお仲間もなんやかんや優しい。
昔の武勇伝を聞いていれば凄いなーって思うし、男が憧れるのもわかる気がする。
「やっぱ天下統一って心を擽るじゃん」
「そうかぁ?」
「弱い者が高みを目指すのいいと思うよ」
「何俺ら強者って面してんの?
お前らちょっと天下統一にソワッとしたの知ってるかんな」
「「…………」」
「不良って字面が悪いし大半が悪いことしちゃうし道から外れて警察のお世話とかなっちゃうから煙たがられるけどさ……
悪いもんでは無いと思ってる」
「へぇ」「ふーん?」
「そりゃ悪いこと自体はよくないし、人様に迷惑かけんのも良くないぞ。
悪いことや馬鹿馬鹿しい事して笑いあえる仲間といる楽しさとか、居場所がない奴ら集めて居場所を作ったり受け入れて貰えるって必要だと思うからさ」
大人には作れない、子供の居場所。
大人では見えない、子供の裏の顔。
「私ら子供は何かしら息抜きが必要で、その方法がスポーツなり読書なりゲームなり様々でさ。
不良の道もその一つ。
それ事態は悪いことではないと思ってる」
「イイコちゃんの発想だな。耳が痒くなる」
「自分で言っててサブイボ立ったわ」
「真面目な言い分はわかったよ」
「本音は?」
「駄目って言われる事程楽しいよね。
要領、方法、加減さえ守れば不良いいと思うって話」
「「「薬かよ」」」
ちゃんと守れば薬も不良も変わらん。
使用方法を間違えれば毒になるんだから。
「身一つで勝負し、仲間と背中を守り支え合い、どんなにボロクソでも最後まで倒れなけりゃカッコいいと思う」
「だよな」
「誰だよ」
ピンクゴールドの髪色に黒い服を着た男の子がにこにこしていた。
……と思うんだけど私の目に映る彼は黒いモヤモヤに覆われていて時折チラッと顔が見えるくらい。
そっと白髪と前髪と美少女を見るが目付きが険しい。こっっっわ!?
こいつらがこんな険しい顔するってわりとレアなんだけどぉぉぉおおおおおっ!!!!こっっっわ!!!!
「俺らアンタのこと探してたんだ」
「どちら様?」
「俺のダチの友達を助けてくれたのも、ケンチン助けてくれたのも、カズトラや場地助けてくれたのも……シンイチロー助けてくれたのもアンタだったんだな」
「いや、誰?」
「ありがとう!俺の大切なもん助けてくれて」
ペコッと頭を下げてくるピンクゴールド。
いや、まじで誰?
そして何の話?
「アンタにとっては些細な事だったかもしれない。けど、俺にとってはみんな大切なもんだから……東卍を代表してお礼を言わせて。ありがとう」
「お、おぅ……?」
まじで何の話?
いきなり語られても私ついていけないんだけど?チラッと白髪達を見るが……知らないフリされた。
目の前のピンクゴールドはにこにことしている。
「まぁ、良かったね?」
「アンタがやったのに他人事みてーに言うじゃん」
すまん。まったく話がわからんから他人事だわ。
「あれだよ。えーっと、その……強くいきろ?」
「アンタ変」
「喧嘩売ってんならいますぐその髪ムシるぞ」
ポテト付き出したら食べられた。
あーんってまた口開けるからまた入れたらモグモグして口を開け出す。雛鳥か?
白髪になぜか頭叩かれた。いてーよクソッッ。
「マイキー!?何やってんだ!!」
「ケンチン、神艦見つけた」
「餌付けされてんじゃねぇ!!」
何かデカくてはしゃいだ頭をした子がきた。
ボソッと白髪が厳ついラーメンマンって言ったから前髪と美少女が顔を背けた。やめてさしあげろ。カッコいいと思ってやってんだから。
「コイツが神艦?」
「うん」
「次々と不良の股間ばかり狙う女とは聞いてたが……」
「初対面で喧嘩売られてる?」
勝手にポテト食うなピンクゴールド。
そしてラーメンマン(仮)は見下すな。デケェんだよ。
「その節はどうもありがとうございました」
「どの節?」
「お陰様で命を救われたからアンタは恩人だ」
「話聞け?」
「ありがとう」
まったく話聞かねぇ。
よくわからないが下げられた頭を撫でてみた。ジョリジョリしてない、だと!?
毎日剃ってんのかな?
「ちなみに人違いって事は?」
「「無い」」
おっかしーなー。
私人助けしたそんな記憶無いよ?
「さっき自分で話していた内容じゃないか」
「ん?」
前髪が何か言い出した。
「女子が強姦されそうなところ助けただろ」
「何人かで女の子の服剥いでたから教育的指導で潰した」
「祭り」
「人を助けた覚えないが?」
「俺が刺されても巾着回して、財布返せって無双してたから」
「クロの財布盗んで研磨突き飛ばして逃げてったからシバいた記憶はある。ナイフ出してた奴もいたから教育的指導をしたはず」
「的確に股間潰しながら無双する浴衣の女が現れたって恐怖が走ったやつな」
「英雄のやつ」
「白いパーカー着た研磨が召集に遅れてんなって拉致されたから追いかけて保護しに行ったんだけど、頭の悪い事言って馬鹿な事し始めたから沈めた」
「「「お前じゃん」」」
わぉ。いつの間に?
「いや、まて。シンイチローは知らん。まじで」
「何年か前にバイク屋で消火器使って小学生に盗みについて語った覚えは?」
「バッチリあるなぁ」
「あの時の店の店主俺の兄貴のシンイチロー」
「は?あの人シンって名前じゃないの?」
「あだ名でシンって呼ばれてる」
バッチリかかわり合ったわ。
シン君を兄貴って言ってたってことは……
「マンタロウ君か」
「誰だよソイツ」
「シン君の弟のマンタロウ君。喧嘩強いけど甘えん坊の弟って聞いてる」
「万次郎だし」
「って事は、ラーメンマン(仮)はエマちゃんの旦那のケン君か」
「何でケンチンの名前覚えてるのに俺の名前覚えてねーの?」
「ラーメンマン……」
何か間違えてた?まぁ気にすんなよ少年。
私より年下だったはずだから先輩ムーヴかましたる。
「偶然の結果が重なっただけだから感謝される覚えはないよ」
「それでもお礼言いたかったんだ」
「律儀だねぇ。気にしなくていーよ。ほら、ポテトをお食べ」
「硬ぇし塩濃いんだけど」
モソモソしてきたし、あとやっぱ塩辛い。
店長、塩加減控えて。
娘の反抗期は仕方ない事だから。
ポテトをマンタロウ君とケン君にそれぞれ与えて完食する。口の中がとにかく塩辛いので研磨と一緒に食べるアップルパイを頼んでおこう。
見ただけでOKサインしないで、店員さん。
今日はそんな数頼まないから。
「おねーさーん。アップルパイ3個お願いしまーす」
「ねぇ」
「何?」
お姉さん、それだけでいいの?って顔しないで。今日はそれだけでいいの。
30個とかじゃないから。だから安心して普通に3個でお願い。
「俺のチーム入ってよ」
「だが断る」
「何で?」
「ヤダ。ただでさえ治安悪い奴に絡まれてるのにチーム入りしたらアウトじゃん」
「治安悪い原因が何か言ってら」
「無自覚だよ。質悪いね」
「治安悪い代表オメーらだよ」
「「???」」
頭傾げて何の事?って顔をすんな。
見た目バリバリ不良だし怪しい学校だし改造制服なんて治安悪すぎだろ。
「色んなチーム潰して回るくらいなら入ってくれてもいいじゃん」
「待って。潰してない」
「何年か前から男の股間潰して回ってるのアンタでしょ」
「理由があれば潰して回る」
「ほら」
何がほら、だよ。
チームなんて入らないから。
「んーっと……諦めてくれる?私もうすでに入ってるから」
「どこ?」
「音駒」
「ネコマ?ケンチンそんなチームあった?」
「聞いたことねぇな」
嘘は言ってない。
だって高校音駒だし。たまにだけどバレーのチームに貢献してるし。
「チームカラーは?」
「赤」
「強ェの?」
「(バレーが)強いよ」
「ふーん」
嘘は言ってない。
だけど不良に嘘はよくないと思うのできちんと釘はさしておこう。
「うちのメンバーに手ェ出したら許さないからね?」
「アンタのことちょーだいって言うのも駄目?」
「駄目」
「オイ白髪。なぜ貴様が答える」
「おいガキ共。コイツはお前らなんかが扱える女じゃねーぞ」
突然馴れ馴れしくバックハグしてくる白髪にイラッとした。
止めていただけるか?私を肘おきにするな。
重いと払うが首を捕まれた。手のひらデケェ。
「悪いけどこの子は私達が先に見付けたんだ」
「今口説いてる最中だから」
「美少女に口説かれてた、だと!?私は美少女とと結婚した?」
「即離婚してもいいなら」
「えー。せめてハネムーンまでは奥さんでいてください」
「ハネムーンまででいいのか?」
にたりと笑う美少女に私の胸は撃ち抜かれた。
アカンって。美しい。大しゅきが止まらん。
「同じ墓に入って下さい……」
「だが断る」
「何の茶番劇見せられてんだ」
「ケンチン、コイツ頭やべーね」
「引いてんじゃねーぞガキ共」
失礼なお子ちゃまだ。
大人の恋愛は常に駆け引きなんだよ。
フラれてもへこたれてる場合じゃねぇんだよ。
「ガキにコイツはまだまだ早ぇよ」
「あ?」
白髪とマンタロウ君が睨みあってる。
つかモヤモヤが突然刺々しくなって痛いんですけど。これモヤじゃねーの?普通に突き刺さるとか何事!?
タイミングよろしくお姉さんがアップルパイ出来たよーと袋見せてくれたので、食べ終わったトレイを片付ける。
アップルパイの料金を支払ってマンタロウ君とケン君を見る。
「悪いことはほどほどにね」
「俺ら悪いことしねーもん」
「悪い事し過ぎる子は容赦なく潰すよ」
「せめて違う場所狙ってくれ」
「か弱い女子だぞ。一撃必殺狙うだろ」
「「か弱い?」」
「前髪、白髪。いい度胸だ」
表出ろや!って吼える私をお店の迷惑だから騒いじゃ駄目とか言って引きずる前髪と白髪。
「コイツは俺らのだから」
「自分を制御出来ないようなお子様には渡せないな」
「………ムカつく」
白髪と前髪がマンタロウ君の肩に手を置くとモヤモヤがさーーっと散っていった。
ついでにケン君の肩に乗ってるちっさい雑魚も前髪が黒い玉にしていた。
「すげーな。アイツ呪霊ホイホイ?」
「普通あそこまで纏わりつかれていたら何かしら害がありそうなのに」
「ピンクゴールドなんてイカれた髪色してっから君らと同類なんじゃないの?」
「呪力もねぇのに平気そうだから異質なの」
「案外アンタと同じかもね」
「……私異質って言われてる?」
気付いて無いの?って三人に引かれた。
いやいや、私あそこまで酷くなったことねーから!!!
「引き寄せやすいって体質でも無さそうだったけど」
「……まさか呪いを生み出すって事かい?単体で?」
「人の負の感情で呪いが生まれるならおかしなことじゃないだろ」
「個人で特級相当の呪霊生み出せる人間はもはや人間じゃねーよ」
「呪いを宿して産む人間も過去にはいたからおかしなことではない、か?」
「女だろ?アレはもっと厄介な気ィする」
チラリと先ほど出た店に視線を送る白髪。
美少女と前髪も険しい顔だ。
「一応補助監督に連絡しておこうか」
「だな」
シリアスな雰囲気ではあるが、此処で気付いて欲しい。
道行く人々がチラチラと此方を見ていることに。
子供がポカンと口を開けていることに。
「おい」
「先生にも話しておかないと後が怖そうだ」
「おい」
「そーだな。また拳骨は勘弁」
「おい」
「調査結果によっては監禁も有り得そうだな」
「おいって」
「だな。ただの非呪術師が呪い溜め込んで呪霊作れるだなんて知られたら上が黙ってねーだろ」
「おいってば」
「慎重にいかないとね」
「オイイィィィィィイイイイイッッッ!!!!!
いい加減シリアスぶっかまして真剣な面しながら私を宇宙人状態にすんのヤメィッ!!!」
脇が辛いんじゃボケェッ!!と叫べば、子供が「おかーさーん!宇宙人が捕まってるよ!」とか言われた。
吹き出す前髪と白髪。美少女は距離を置いて歩きだす。
「活きのいい異質な人間よ」
「我々の力で浄化されたまへ」
「お前らの常識を覆してやんよ!!」
まず放せ!!!
そして下ろせ!!!
自動販売機の間に吊るされた気持ちなんか嫌だわ!!
地面に降りてシャーーッと威嚇すればケラケラ笑う2人の脛を蹴ろうとしたが頭を押さえ付けられ何事も出来ずに終わった。
「本当にホイホイだよな、オマエ」
「駄目だよ?犬猫ならまだしも変なもの拾ってきたら」
「拾ってないから!!むしろお前らこそ変なの代表だからな!!」
「失礼だな。こんなイケメンを捕まえといて」
「だよな。稀代のイケメンだぞ」
「中身は稀代のクソとクズとゴミの合わせだけどな」
「「…………」」
「美少女容赦ねぇ」
この2人を一瞬で黙らせる事が出来るってすごいな。
やっぱ美少女しか勝たん。
美少女の腕に張り付こうと近寄ったが苦虫を噛み潰したような顔をされた。ひどい。
でもめげずに手を繋ごうとしたところ、何やら金髪のもじゃもじゃの髪の男の子が目の前に来た。
何だ?と頭を傾げたら、まるで戦地に行くかのように決意に満ち溢れた顔をしている。
「あのっ!!!俺、花垣 武道って言います!」
「何か始まったんだが」
「うわぁ……」
「絶対厄介事だろ」
「キミ取り憑かれてる?」
「いきなりこんなこと言って頭おかしいって思われても仕方ないんですけど、俺未来から来ていて貴女しかマイキーくんを助けられないんです!!」
「誰だよマイキー君」
「五条さん!!お願いします!!
俺と一緒にマイキー君を助けるために手伝ってください!!」
ペコッと頭を下げる少年・タケミチ。
花垣だから頭お花畑かよとか思ってごめん。
全国の花垣さんに謝るわ。
「悟、どこのマイキー君の話だい?」
「知らねーよ」
「白髪、ほら救ってやんなよ」
「知るか」
「まさかの五条だったな」
「あ、旦那さんの方じゃなくて奥さんの方です」
「「「「は?」」」」
すっげー事言い出したお花畑・タケミチ。
「奥さんって事は」
「私ではないな。絶対」
「硝子、奥さんって言われて可能性があるのは硝子達だけだ」
「最強の片割れは奥さん呼びされてんのか」
「おめでとう五条、夏油。ご祝儀は酒でいいか?」
「私も五条夫婦へって花贈るわ」
「「ヤメロ」」
「「触るな」」
全力で顔色を変えて首を振る白髪と前髪。
息ぴったりな夫婦だな、って思ってたら袖を引かれた。
花畑ミチ君が必死な顔でつかんでる。
「貴女しかいないんですっ」
「………嘘だろ。冗談は頭の中身だけにしてくれよ花畑ミチ君」
「花垣武道です!!
五条さんが頷かない理由は旦那さんが嫉妬深いからだってわかってます!!
けど、今しかマイキー君を変えられないんです!!」
「まずはお前のヤベー妄想から変えたいんだが?」
やめろよ。
私と白髪が夫婦だなんて未来の私死にたいんか?
「俺が……コイツと、夫婦?」
「やめろやめろやめろ。見ろよこの鳥肌」
「ラブラブでした!道行く人々を置いていくくらい他人を気にせずラブラブでした!」
「ふっざけんなよお花畑くん!頭の中花垣で埋まってんのか!?」
「花垣です!他の男が近寄ろうものなら旦那さんが容赦なく潰す姿はめちゃくちゃかっこ良かったです!」
「……俺が…コイツ、を?」
「おめでとう五条。幸せにな」
「おめでとう悟。いい奥さんを貰って良かったね」
「止めて止めて止めて。悪のりしないで」
ヒューヒューとか言い出す前髪と美少女。
やめてよぉ!!!白髪も宇宙を背負うな!!
「やっぱ私呪われてる?お祓い受けるべき?」
「お祓いの人紹介してあげようか?」
「美少女、頼む」
「ヤベェ必死じゃん。ウケる」
「死活問題なんだが?
ついでに少年も祓えばいいかな?」
「あの時期特有の病気には効かないよ?」
「あの時期とか言うなって。もしかしたらその手前か過ぎてるかもしれないじゃん。未来ある若者に魔の手が迫ってるの放っておけないじゃん。
花畑少年、君何歳?」
「今は14で、中身は26です」
「中身とか言うな。
OK。病気真っ只中だった。手遅れなやつ」
「目の前で中2のこと病気扱いやめてください」
完全に厨二な病気だよ。
「大丈夫大丈夫。少年、人は誰もが己を最強や特別であると自信過多になる瞬間が訪れ、やがて世界を知る度世界に押し潰され成長していくものだから。
君のそれは病気じゃなく成長過程に必要なあの……あれだよ。その、自信?だよ」
「腫れ物みたいに扱わないでくれます?」
「って事は夏油と五条はまだ病気真っ最中って事だな」
「聞き捨てならないな、硝子。
私達は実績と実力のある本物だよ?」
「本物の病気の持ち主って事か」
「……病気持ちって言い方ヤダな」
「女泣かせの下半身持つクズには似合いだろ?」
「硝子、私のこと嫌いかい?」
何かしょんぼりしている前髪を笑う美少女。
容赦無さすぎて可哀想。
白髪はまだ夫婦にトリップしている。
「仮に。仮に君がタイムトラベラーだとしても未来を変えるために動いて君の重い描く未来になったとしよう。
でも私や白髪や前髪や美少女の未来は?」
「え?」
「君達が幸せになっても、君達の世界が幸せになったとしても。
私達の未来が幸せとは限らないだろ?」
漫画やお話では幸せになろうともがいて幸せをつかみ取る。
「"奇跡"はその瞬間にタイミングが良いから起こることであって、そのタイミングがズレたら奇跡じゃなくなる。
君が世界を弄る程、世界のどこかで救われるはずの奇跡が死んでいく」
「それは……」
「私達も幸せになれるよう君がまた何度も調整する?無理でしょ。
君が救いたい影で君が誰かを殺してる。
その誰かが私達だとしても、君は未来を変えたいって私に頼むの?」
「………っ!!」
厳しいことを言うけど、たらればの世界だ。
この世に絶対などない。
「他を当たってくれないかな?」
「それでもっ!!もう、貴女しかいないんです!!」
「だから…」
「ヒナを助けるために誓ったんです。ヒナが死ぬのも、仲間が死ぬのも、もう嫌なんだ」
「私一般人だぞ?」
「傍観ルートも、裏切り者ルートも、アイドルパロ監禁ルートも、ボスミッチ監禁ルートも、にょたミッチ監禁ルートも色々経験しましたっ!!どんな未来でもみんな幸せになれなかったんです!!」
「だろうな。なんだそのルート」
「貴女ならっ!!マイキーのお兄さんを救ってドラケン君や場地さんやカズトラ君達を救ってきた貴女なら……っ!!世界の断りを壊せるかもしれないからっ」
「期待でかすぎない?」
「少年誌では無理な事でも夢小説なら変えられるかもしれないじゃないですか!!」
「発言には気をつけろぉぉおおおお!!!!
ここ銀魂の世界じゃないんだぞ!?」
アウトだ!!!
このお花畑君頭がアウトだ!!
特殊な病気でございます!!誰か大きな絆創膏か救急車をお呼びください!!!!!
「メロンパンルート一直線の貴女の為なんです!!」
「待て。すっげーその言葉嫌だ」
「奇遇だね。私も鳥肌が立つくらい嫌だ」
「メロンパン……?傑の額に傷は地雷です」
「やめてくれないか?私も地雷だよ」
「一緒に世界を救ってください!」
お願いします!と頭を下げるお花畑君。
鳥肌が止まらない。
「お花畑君……顔をおあげよ」
「花垣です」
「バンブーロード君、お顔をあげて?」
「竹違いです」
「………タケミチ君、顔上げろや」
「はい!」
返事だけはいいな。
若い証拠だね、うんうん。
「色々大変だと思うけど、強く生きて」
「可哀想なものを見る目やめてください」
「アップルパイあげるから勘弁してくれん?」
そう言って全力で逃げ出した私。
のちに不良の戦いに巻き込まれる可能性だけが上がっていくのだがそれはまた気力があったらしよう。
続きは未来の旦那が虚式【紫】でぶっ飛ばしましたとさ。
あとがき
難産もいいところなクロスオーバーでした。
タケミッチがヤバい奴になるしかなかった。
キャラが多すぎると空気になる奴いるよね!!
主に硝子さんは空気になりやすい。
久々の通行人でしたがいかがでしたかー?
名前変換無くて笑うwww
幼馴染のクロと研磨と帰宅途中、何やら時代遅れでズボンをずり下げパンツをほぼ見せびらかし、短い足をより短く見せつけつつも道幅を短い足を大きく見せるかのような矛盾した歩幅で練り歩き、フランスパンを前髪に全集中し、タバコを吹かす野郎共に絡まれた。
オラオラしか言わないその時代遅れの風物詩を前に、相手を睨み付けながら私と研磨を背中に隠す幼馴染のクロは震えていた。
それでも自分が一番年上だから、と一個上なだけなのに勇ましく守ろうとしてくれるクロ。
そんなクロは時代遅れの風物詩より数倍かっこよくて私は…………
「あの時、オラつく不良の股間を蹴りあげて迷わず防犯ブザーを鳴らしたんだ」
「しみじみ何言ってんの?」
「そのあと騒ぎだした不良達一人残らず股間を狩り沈め」
「何してんの?」
「助けに入ろうとしてくれたチームの総長すら狩ろうと荒ぶっていた私を研磨が必死に引き止めた」
「「王蟲じゃん」」
「気付けば東京で名のある不良達に知れわたり」
「気付けばの間何やらかしたの?」
「気付けばダサい異名………【神-コウカン-艦】なんて言われてたんだよね」
「それ股間から来てる?」
お腹抱えて笑っている美少女。
ひきつった笑いを浮かべる前髪。
ドン引く白髪。
いつもの某バーガーショップにてポテトをつまみながら最近の面白い事は?と聞かれたので、最近あったとあるヤンチャ達をシバいた話をするとどーしてそうなった?と聞かれたので中学の頃の話を溢した。
「別に奇妙なあだ名なんていいの。今更だから」
「気にしろよ」
「気にした方がいいよ」
「何を思ったのか、勝手に下に付かれる方が迷惑でさ」
「もっと気にするところあるだろ」
「ズレてるね」
「中学の頃色々巻き込まれたのはいい思い出だよね」
はははっと笑う。
あの頃は楽しかったなぁ、なんてしみじみ思い返す。
「不良なんて悪い事してオラついてるだけの黒歴史じゃないか」
「「おまいう?」」
「今も黒歴史作成してる奴の台詞じゃないな」
「美少女シャラッッップ!!」
「ちなみに楽しかった黒歴史は?」
「楽しい黒歴史とは?
そーだなぁ……深夜出歩くのが楽しくて歩いていたら小学生がバイク屋に泥棒に入っててさぁ」
「「「物騒」」」
「止めようとしたら見付かった!って焦って攻撃してきたから思わず近くにあった消火器噴射させちゃって店の中真っ白にしちゃったんだよね」
「………真相は?」
「歯向かう度に冷静になるまで顔面噴射してあげた」
※良い子のみんなは絶対にやめましょう
「……最近っちゃ最近といえば帰り道に女の子まわされそうだったから教育的指導」
「当然の報いだな」
「クロと研磨とお祭り行ったら、お祭りではしゃいだ馬鹿がナイフ持ってたから教育的指導」
「物騒」
「研磨が拉致されて連れていかれた場所で"悪い奴殺せば英雄だ!"とかほざいてる馬鹿いてナイフ出したから喧嘩に武器はよくないってタイヤのホイール投げて当てた」
「物騒通り越して呪われてんの?」
「あぁ、名前の由来は股間と戦艦合わせての神艦ってことか」
「失礼だよね」
プンスコ怒る私と反対にドン引く前髪と白髪。
「正当防衛だよ」
「「過剰防衛だよ」」
「そもそもクロ達が不良っぽいから良くない。絡まれ過ぎ」
そう。そこなのだ。
クロは髪型が尖っているし、虎くんはそもそも頭も中身も尖っているし、研磨は裏で手引きしていそうな参謀だし、やっくん先輩も手が早そうだし。
「スポーツ選手とは思えない髪の毛パリピってて絡まれるし、最近は絡まれてもクロが面白がって私の名前出すと、一気に静まるらしいからその度に研磨に引かれる」
「引かれるだろ。それは」
「全員内股で前屈みなるからキモいって」
「「うわぁ……」」
失礼しちゃうわ!と愚痴ってもうわぁ……と引かれる。
「流石に高校内ではそんなことしてないから。
大人しくしてるよ」
「「「大人しく?」」」
「頭大丈夫か」
「辞書で改めて調べ直した方がいいよ?」
「大人しい奴は歩くたび黒歴史作らないぞ」
「キミら酷いな」
今日のポテトは塩が濃いな。
店長に塩濃いよーって言ったらすまーん!娘が反抗期に入って涙が止まらないって返ってきた。
「そーいや最近変な服着た奴多くね?」
「君らも充分変な服だよ。制服改造自由って自由すぎん?」
「特攻服なんて父親世代の不良達が着てるイメージだったけどよく見るね」
「学生服をボンタンにしている君も立派な不良だよ前髪」
「頭や身体に墨入ってる奴ら多いよな。将来的に後悔しそう」
「遠回しに若気の至りではしゃいでんなって煽るのよくないよ白髪」
「女の扱い悪すぎ」
「不良な俺ら格好いいウェーイってイキッて色々勘違いしてんだろうね。沈めたい」
「「「……………」」」
何か静かになったな。
珍しい。どした?と聞いたら向こうもどうした?と心配された。
「オマエ、不良に当たり強くね?」
「そうかな?」
「不良に親でも殺られたかい?」
「殺られはしないけど、親兄弟友人全員ブッコロしてやんよ!って吠えられる事はよくある」
「「あんのかよ」」
「大丈夫なのか?」
「えっ、美少女が優しい……。
特に困った事は無いから平気だよ」
「一応キミも女の子何だから無理はよくないよ」
「一応はいらねーんだわ。女の子な、前髪。私は女の子。はい、リピートアフトュミー」
「発音悪すぎな」
別に不良が嫌いなわけじゃない。
伝説を作った兄さんは喧嘩弱いけど人柄が良すぎるし、そのお仲間もなんやかんや優しい。
昔の武勇伝を聞いていれば凄いなーって思うし、男が憧れるのもわかる気がする。
「やっぱ天下統一って心を擽るじゃん」
「そうかぁ?」
「弱い者が高みを目指すのいいと思うよ」
「何俺ら強者って面してんの?
お前らちょっと天下統一にソワッとしたの知ってるかんな」
「「…………」」
「不良って字面が悪いし大半が悪いことしちゃうし道から外れて警察のお世話とかなっちゃうから煙たがられるけどさ……
悪いもんでは無いと思ってる」
「へぇ」「ふーん?」
「そりゃ悪いこと自体はよくないし、人様に迷惑かけんのも良くないぞ。
悪いことや馬鹿馬鹿しい事して笑いあえる仲間といる楽しさとか、居場所がない奴ら集めて居場所を作ったり受け入れて貰えるって必要だと思うからさ」
大人には作れない、子供の居場所。
大人では見えない、子供の裏の顔。
「私ら子供は何かしら息抜きが必要で、その方法がスポーツなり読書なりゲームなり様々でさ。
不良の道もその一つ。
それ事態は悪いことではないと思ってる」
「イイコちゃんの発想だな。耳が痒くなる」
「自分で言っててサブイボ立ったわ」
「真面目な言い分はわかったよ」
「本音は?」
「駄目って言われる事程楽しいよね。
要領、方法、加減さえ守れば不良いいと思うって話」
「「「薬かよ」」」
ちゃんと守れば薬も不良も変わらん。
使用方法を間違えれば毒になるんだから。
「身一つで勝負し、仲間と背中を守り支え合い、どんなにボロクソでも最後まで倒れなけりゃカッコいいと思う」
「だよな」
「誰だよ」
ピンクゴールドの髪色に黒い服を着た男の子がにこにこしていた。
……と思うんだけど私の目に映る彼は黒いモヤモヤに覆われていて時折チラッと顔が見えるくらい。
そっと白髪と前髪と美少女を見るが目付きが険しい。こっっっわ!?
こいつらがこんな険しい顔するってわりとレアなんだけどぉぉぉおおおおおっ!!!!こっっっわ!!!!
「俺らアンタのこと探してたんだ」
「どちら様?」
「俺のダチの友達を助けてくれたのも、ケンチン助けてくれたのも、カズトラや場地助けてくれたのも……シンイチロー助けてくれたのもアンタだったんだな」
「いや、誰?」
「ありがとう!俺の大切なもん助けてくれて」
ペコッと頭を下げてくるピンクゴールド。
いや、まじで誰?
そして何の話?
「アンタにとっては些細な事だったかもしれない。けど、俺にとってはみんな大切なもんだから……東卍を代表してお礼を言わせて。ありがとう」
「お、おぅ……?」
まじで何の話?
いきなり語られても私ついていけないんだけど?チラッと白髪達を見るが……知らないフリされた。
目の前のピンクゴールドはにこにことしている。
「まぁ、良かったね?」
「アンタがやったのに他人事みてーに言うじゃん」
すまん。まったく話がわからんから他人事だわ。
「あれだよ。えーっと、その……強くいきろ?」
「アンタ変」
「喧嘩売ってんならいますぐその髪ムシるぞ」
ポテト付き出したら食べられた。
あーんってまた口開けるからまた入れたらモグモグして口を開け出す。雛鳥か?
白髪になぜか頭叩かれた。いてーよクソッッ。
「マイキー!?何やってんだ!!」
「ケンチン、神艦見つけた」
「餌付けされてんじゃねぇ!!」
何かデカくてはしゃいだ頭をした子がきた。
ボソッと白髪が厳ついラーメンマンって言ったから前髪と美少女が顔を背けた。やめてさしあげろ。カッコいいと思ってやってんだから。
「コイツが神艦?」
「うん」
「次々と不良の股間ばかり狙う女とは聞いてたが……」
「初対面で喧嘩売られてる?」
勝手にポテト食うなピンクゴールド。
そしてラーメンマン(仮)は見下すな。デケェんだよ。
「その節はどうもありがとうございました」
「どの節?」
「お陰様で命を救われたからアンタは恩人だ」
「話聞け?」
「ありがとう」
まったく話聞かねぇ。
よくわからないが下げられた頭を撫でてみた。ジョリジョリしてない、だと!?
毎日剃ってんのかな?
「ちなみに人違いって事は?」
「「無い」」
おっかしーなー。
私人助けしたそんな記憶無いよ?
「さっき自分で話していた内容じゃないか」
「ん?」
前髪が何か言い出した。
「女子が強姦されそうなところ助けただろ」
「何人かで女の子の服剥いでたから教育的指導で潰した」
「祭り」
「人を助けた覚えないが?」
「俺が刺されても巾着回して、財布返せって無双してたから」
「クロの財布盗んで研磨突き飛ばして逃げてったからシバいた記憶はある。ナイフ出してた奴もいたから教育的指導をしたはず」
「的確に股間潰しながら無双する浴衣の女が現れたって恐怖が走ったやつな」
「英雄のやつ」
「白いパーカー着た研磨が召集に遅れてんなって拉致されたから追いかけて保護しに行ったんだけど、頭の悪い事言って馬鹿な事し始めたから沈めた」
「「「お前じゃん」」」
わぉ。いつの間に?
「いや、まて。シンイチローは知らん。まじで」
「何年か前にバイク屋で消火器使って小学生に盗みについて語った覚えは?」
「バッチリあるなぁ」
「あの時の店の店主俺の兄貴のシンイチロー」
「は?あの人シンって名前じゃないの?」
「あだ名でシンって呼ばれてる」
バッチリかかわり合ったわ。
シン君を兄貴って言ってたってことは……
「マンタロウ君か」
「誰だよソイツ」
「シン君の弟のマンタロウ君。喧嘩強いけど甘えん坊の弟って聞いてる」
「万次郎だし」
「って事は、ラーメンマン(仮)はエマちゃんの旦那のケン君か」
「何でケンチンの名前覚えてるのに俺の名前覚えてねーの?」
「ラーメンマン……」
何か間違えてた?まぁ気にすんなよ少年。
私より年下だったはずだから先輩ムーヴかましたる。
「偶然の結果が重なっただけだから感謝される覚えはないよ」
「それでもお礼言いたかったんだ」
「律儀だねぇ。気にしなくていーよ。ほら、ポテトをお食べ」
「硬ぇし塩濃いんだけど」
モソモソしてきたし、あとやっぱ塩辛い。
店長、塩加減控えて。
娘の反抗期は仕方ない事だから。
ポテトをマンタロウ君とケン君にそれぞれ与えて完食する。口の中がとにかく塩辛いので研磨と一緒に食べるアップルパイを頼んでおこう。
見ただけでOKサインしないで、店員さん。
今日はそんな数頼まないから。
「おねーさーん。アップルパイ3個お願いしまーす」
「ねぇ」
「何?」
お姉さん、それだけでいいの?って顔しないで。今日はそれだけでいいの。
30個とかじゃないから。だから安心して普通に3個でお願い。
「俺のチーム入ってよ」
「だが断る」
「何で?」
「ヤダ。ただでさえ治安悪い奴に絡まれてるのにチーム入りしたらアウトじゃん」
「治安悪い原因が何か言ってら」
「無自覚だよ。質悪いね」
「治安悪い代表オメーらだよ」
「「???」」
頭傾げて何の事?って顔をすんな。
見た目バリバリ不良だし怪しい学校だし改造制服なんて治安悪すぎだろ。
「色んなチーム潰して回るくらいなら入ってくれてもいいじゃん」
「待って。潰してない」
「何年か前から男の股間潰して回ってるのアンタでしょ」
「理由があれば潰して回る」
「ほら」
何がほら、だよ。
チームなんて入らないから。
「んーっと……諦めてくれる?私もうすでに入ってるから」
「どこ?」
「音駒」
「ネコマ?ケンチンそんなチームあった?」
「聞いたことねぇな」
嘘は言ってない。
だって高校音駒だし。たまにだけどバレーのチームに貢献してるし。
「チームカラーは?」
「赤」
「強ェの?」
「(バレーが)強いよ」
「ふーん」
嘘は言ってない。
だけど不良に嘘はよくないと思うのできちんと釘はさしておこう。
「うちのメンバーに手ェ出したら許さないからね?」
「アンタのことちょーだいって言うのも駄目?」
「駄目」
「オイ白髪。なぜ貴様が答える」
「おいガキ共。コイツはお前らなんかが扱える女じゃねーぞ」
突然馴れ馴れしくバックハグしてくる白髪にイラッとした。
止めていただけるか?私を肘おきにするな。
重いと払うが首を捕まれた。手のひらデケェ。
「悪いけどこの子は私達が先に見付けたんだ」
「今口説いてる最中だから」
「美少女に口説かれてた、だと!?私は美少女とと結婚した?」
「即離婚してもいいなら」
「えー。せめてハネムーンまでは奥さんでいてください」
「ハネムーンまででいいのか?」
にたりと笑う美少女に私の胸は撃ち抜かれた。
アカンって。美しい。大しゅきが止まらん。
「同じ墓に入って下さい……」
「だが断る」
「何の茶番劇見せられてんだ」
「ケンチン、コイツ頭やべーね」
「引いてんじゃねーぞガキ共」
失礼なお子ちゃまだ。
大人の恋愛は常に駆け引きなんだよ。
フラれてもへこたれてる場合じゃねぇんだよ。
「ガキにコイツはまだまだ早ぇよ」
「あ?」
白髪とマンタロウ君が睨みあってる。
つかモヤモヤが突然刺々しくなって痛いんですけど。これモヤじゃねーの?普通に突き刺さるとか何事!?
タイミングよろしくお姉さんがアップルパイ出来たよーと袋見せてくれたので、食べ終わったトレイを片付ける。
アップルパイの料金を支払ってマンタロウ君とケン君を見る。
「悪いことはほどほどにね」
「俺ら悪いことしねーもん」
「悪い事し過ぎる子は容赦なく潰すよ」
「せめて違う場所狙ってくれ」
「か弱い女子だぞ。一撃必殺狙うだろ」
「「か弱い?」」
「前髪、白髪。いい度胸だ」
表出ろや!って吼える私をお店の迷惑だから騒いじゃ駄目とか言って引きずる前髪と白髪。
「コイツは俺らのだから」
「自分を制御出来ないようなお子様には渡せないな」
「………ムカつく」
白髪と前髪がマンタロウ君の肩に手を置くとモヤモヤがさーーっと散っていった。
ついでにケン君の肩に乗ってるちっさい雑魚も前髪が黒い玉にしていた。
「すげーな。アイツ呪霊ホイホイ?」
「普通あそこまで纏わりつかれていたら何かしら害がありそうなのに」
「ピンクゴールドなんてイカれた髪色してっから君らと同類なんじゃないの?」
「呪力もねぇのに平気そうだから異質なの」
「案外アンタと同じかもね」
「……私異質って言われてる?」
気付いて無いの?って三人に引かれた。
いやいや、私あそこまで酷くなったことねーから!!!
「引き寄せやすいって体質でも無さそうだったけど」
「……まさか呪いを生み出すって事かい?単体で?」
「人の負の感情で呪いが生まれるならおかしなことじゃないだろ」
「個人で特級相当の呪霊生み出せる人間はもはや人間じゃねーよ」
「呪いを宿して産む人間も過去にはいたからおかしなことではない、か?」
「女だろ?アレはもっと厄介な気ィする」
チラリと先ほど出た店に視線を送る白髪。
美少女と前髪も険しい顔だ。
「一応補助監督に連絡しておこうか」
「だな」
シリアスな雰囲気ではあるが、此処で気付いて欲しい。
道行く人々がチラチラと此方を見ていることに。
子供がポカンと口を開けていることに。
「おい」
「先生にも話しておかないと後が怖そうだ」
「おい」
「そーだな。また拳骨は勘弁」
「おい」
「調査結果によっては監禁も有り得そうだな」
「おいって」
「だな。ただの非呪術師が呪い溜め込んで呪霊作れるだなんて知られたら上が黙ってねーだろ」
「おいってば」
「慎重にいかないとね」
「オイイィィィィィイイイイイッッッ!!!!!
いい加減シリアスぶっかまして真剣な面しながら私を宇宙人状態にすんのヤメィッ!!!」
脇が辛いんじゃボケェッ!!と叫べば、子供が「おかーさーん!宇宙人が捕まってるよ!」とか言われた。
吹き出す前髪と白髪。美少女は距離を置いて歩きだす。
「活きのいい異質な人間よ」
「我々の力で浄化されたまへ」
「お前らの常識を覆してやんよ!!」
まず放せ!!!
そして下ろせ!!!
自動販売機の間に吊るされた気持ちなんか嫌だわ!!
地面に降りてシャーーッと威嚇すればケラケラ笑う2人の脛を蹴ろうとしたが頭を押さえ付けられ何事も出来ずに終わった。
「本当にホイホイだよな、オマエ」
「駄目だよ?犬猫ならまだしも変なもの拾ってきたら」
「拾ってないから!!むしろお前らこそ変なの代表だからな!!」
「失礼だな。こんなイケメンを捕まえといて」
「だよな。稀代のイケメンだぞ」
「中身は稀代のクソとクズとゴミの合わせだけどな」
「「…………」」
「美少女容赦ねぇ」
この2人を一瞬で黙らせる事が出来るってすごいな。
やっぱ美少女しか勝たん。
美少女の腕に張り付こうと近寄ったが苦虫を噛み潰したような顔をされた。ひどい。
でもめげずに手を繋ごうとしたところ、何やら金髪のもじゃもじゃの髪の男の子が目の前に来た。
何だ?と頭を傾げたら、まるで戦地に行くかのように決意に満ち溢れた顔をしている。
「あのっ!!!俺、花垣 武道って言います!」
「何か始まったんだが」
「うわぁ……」
「絶対厄介事だろ」
「キミ取り憑かれてる?」
「いきなりこんなこと言って頭おかしいって思われても仕方ないんですけど、俺未来から来ていて貴女しかマイキーくんを助けられないんです!!」
「誰だよマイキー君」
「五条さん!!お願いします!!
俺と一緒にマイキー君を助けるために手伝ってください!!」
ペコッと頭を下げる少年・タケミチ。
花垣だから頭お花畑かよとか思ってごめん。
全国の花垣さんに謝るわ。
「悟、どこのマイキー君の話だい?」
「知らねーよ」
「白髪、ほら救ってやんなよ」
「知るか」
「まさかの五条だったな」
「あ、旦那さんの方じゃなくて奥さんの方です」
「「「「は?」」」」
すっげー事言い出したお花畑・タケミチ。
「奥さんって事は」
「私ではないな。絶対」
「硝子、奥さんって言われて可能性があるのは硝子達だけだ」
「最強の片割れは奥さん呼びされてんのか」
「おめでとう五条、夏油。ご祝儀は酒でいいか?」
「私も五条夫婦へって花贈るわ」
「「ヤメロ」」
「「触るな」」
全力で顔色を変えて首を振る白髪と前髪。
息ぴったりな夫婦だな、って思ってたら袖を引かれた。
花畑ミチ君が必死な顔でつかんでる。
「貴女しかいないんですっ」
「………嘘だろ。冗談は頭の中身だけにしてくれよ花畑ミチ君」
「花垣武道です!!
五条さんが頷かない理由は旦那さんが嫉妬深いからだってわかってます!!
けど、今しかマイキー君を変えられないんです!!」
「まずはお前のヤベー妄想から変えたいんだが?」
やめろよ。
私と白髪が夫婦だなんて未来の私死にたいんか?
「俺が……コイツと、夫婦?」
「やめろやめろやめろ。見ろよこの鳥肌」
「ラブラブでした!道行く人々を置いていくくらい他人を気にせずラブラブでした!」
「ふっざけんなよお花畑くん!頭の中花垣で埋まってんのか!?」
「花垣です!他の男が近寄ろうものなら旦那さんが容赦なく潰す姿はめちゃくちゃかっこ良かったです!」
「……俺が…コイツ、を?」
「おめでとう五条。幸せにな」
「おめでとう悟。いい奥さんを貰って良かったね」
「止めて止めて止めて。悪のりしないで」
ヒューヒューとか言い出す前髪と美少女。
やめてよぉ!!!白髪も宇宙を背負うな!!
「やっぱ私呪われてる?お祓い受けるべき?」
「お祓いの人紹介してあげようか?」
「美少女、頼む」
「ヤベェ必死じゃん。ウケる」
「死活問題なんだが?
ついでに少年も祓えばいいかな?」
「あの時期特有の病気には効かないよ?」
「あの時期とか言うなって。もしかしたらその手前か過ぎてるかもしれないじゃん。未来ある若者に魔の手が迫ってるの放っておけないじゃん。
花畑少年、君何歳?」
「今は14で、中身は26です」
「中身とか言うな。
OK。病気真っ只中だった。手遅れなやつ」
「目の前で中2のこと病気扱いやめてください」
完全に厨二な病気だよ。
「大丈夫大丈夫。少年、人は誰もが己を最強や特別であると自信過多になる瞬間が訪れ、やがて世界を知る度世界に押し潰され成長していくものだから。
君のそれは病気じゃなく成長過程に必要なあの……あれだよ。その、自信?だよ」
「腫れ物みたいに扱わないでくれます?」
「って事は夏油と五条はまだ病気真っ最中って事だな」
「聞き捨てならないな、硝子。
私達は実績と実力のある本物だよ?」
「本物の病気の持ち主って事か」
「……病気持ちって言い方ヤダな」
「女泣かせの下半身持つクズには似合いだろ?」
「硝子、私のこと嫌いかい?」
何かしょんぼりしている前髪を笑う美少女。
容赦無さすぎて可哀想。
白髪はまだ夫婦にトリップしている。
「仮に。仮に君がタイムトラベラーだとしても未来を変えるために動いて君の重い描く未来になったとしよう。
でも私や白髪や前髪や美少女の未来は?」
「え?」
「君達が幸せになっても、君達の世界が幸せになったとしても。
私達の未来が幸せとは限らないだろ?」
漫画やお話では幸せになろうともがいて幸せをつかみ取る。
「"奇跡"はその瞬間にタイミングが良いから起こることであって、そのタイミングがズレたら奇跡じゃなくなる。
君が世界を弄る程、世界のどこかで救われるはずの奇跡が死んでいく」
「それは……」
「私達も幸せになれるよう君がまた何度も調整する?無理でしょ。
君が救いたい影で君が誰かを殺してる。
その誰かが私達だとしても、君は未来を変えたいって私に頼むの?」
「………っ!!」
厳しいことを言うけど、たらればの世界だ。
この世に絶対などない。
「他を当たってくれないかな?」
「それでもっ!!もう、貴女しかいないんです!!」
「だから…」
「ヒナを助けるために誓ったんです。ヒナが死ぬのも、仲間が死ぬのも、もう嫌なんだ」
「私一般人だぞ?」
「傍観ルートも、裏切り者ルートも、アイドルパロ監禁ルートも、ボスミッチ監禁ルートも、にょたミッチ監禁ルートも色々経験しましたっ!!どんな未来でもみんな幸せになれなかったんです!!」
「だろうな。なんだそのルート」
「貴女ならっ!!マイキーのお兄さんを救ってドラケン君や場地さんやカズトラ君達を救ってきた貴女なら……っ!!世界の断りを壊せるかもしれないからっ」
「期待でかすぎない?」
「少年誌では無理な事でも夢小説なら変えられるかもしれないじゃないですか!!」
「発言には気をつけろぉぉおおおお!!!!
ここ銀魂の世界じゃないんだぞ!?」
アウトだ!!!
このお花畑君頭がアウトだ!!
特殊な病気でございます!!誰か大きな絆創膏か救急車をお呼びください!!!!!
「メロンパンルート一直線の貴女の為なんです!!」
「待て。すっげーその言葉嫌だ」
「奇遇だね。私も鳥肌が立つくらい嫌だ」
「メロンパン……?傑の額に傷は地雷です」
「やめてくれないか?私も地雷だよ」
「一緒に世界を救ってください!」
お願いします!と頭を下げるお花畑君。
鳥肌が止まらない。
「お花畑君……顔をおあげよ」
「花垣です」
「バンブーロード君、お顔をあげて?」
「竹違いです」
「………タケミチ君、顔上げろや」
「はい!」
返事だけはいいな。
若い証拠だね、うんうん。
「色々大変だと思うけど、強く生きて」
「可哀想なものを見る目やめてください」
「アップルパイあげるから勘弁してくれん?」
そう言って全力で逃げ出した私。
のちに不良の戦いに巻き込まれる可能性だけが上がっていくのだがそれはまた気力があったらしよう。
続きは未来の旦那が虚式【紫】でぶっ飛ばしましたとさ。
あとがき
難産もいいところなクロスオーバーでした。
タケミッチがヤバい奴になるしかなかった。
キャラが多すぎると空気になる奴いるよね!!
主に硝子さんは空気になりやすい。
久々の通行人でしたがいかがでしたかー?
名前変換無くて笑うwww