幼馴染は生き残りたい
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やほやほ!少し出番が無かったけれど、みんな僕を覚えているかなぁー?
華ちゃんだぉ!!!
ここ数年の事をこの華ちゃんが語りましょう。
まず、夏油くんがいなくなってそれはそれは大荒れだよぉ。
夏油くんを呪詛師にしたい派とぉ、夏油くんを呪術師に残したい派でそれは大モメ。
本人は何処へ行ったのやらフラフラしてるしぃ、真面目に大変。
だって僕らに任務クソ増えたんだよぉ?
主に五条くん。
僕はぺーぺーだから変わらなかったけどぉ!!!
なんやかんや上のゴチャゴチャは五条くんによる五条家の圧と夜蛾先生が頑張って夏油くんは謹慎という自由を得たのだぁ。
本人に戻る気があればねぇ。
で、帰って来ない本人は音信不通かと思い、心配で名前ちゃんに連絡したらぁ……今も普通に連絡取ってて笑ったぁ。
オマエらッッッ!!ってなったよねぇ。
いや、僕らも話聞いてパニックなって連絡しなかったからぁ僕らの勘違いだったわけだけどぉ。メールも送れたし電話も繋がったがぁ……ワンギリされたぁ。
いっけなーい☆殺意殺意ぃ☆
名前ちゃんは夏油くんがいなくなって落ち込んでいるかと思ったら平気だしぃ。
僕らが知っている未来とは少し違う道を歩み出せているぅ。
そうそう、灰原気になるよねぇ?
あの子も無事なんだよぉ!だって水瀬が任務一緒だったから大怪我はしたものの無事さぁ。
水瀬が悪い子だったとは思っていないよぉ。
好きになれないのは僕からしたら水瀬が明る過ぎたからかなぁ。
僕みたいな引きこもりニートがあんな光の女子とお話出来ると思う?
硝子ちゃん?
硝子ちゃんは別枠。美人だけどぉ……アレもなかなか残念な美人だからさぁ。
で、だ。
僕らの心配を他所に名前ちゃんは日々幼女の信用を取り戻すべく可愛い幼女のお世話に必死。
落ち込んでる暇とか無いと。
私も硝子ちゃんも出来ることは手伝うと女の友情を育んでいたのだがぁ、名前ちゃんからわりとマジトーンで僕の手伝いはいらないと言われて泣いたぁ。
ちょっっとお風呂入ろうとしたりぃ、可愛いお洋服着せて写真撮っただけなのにぃ……双子に怯えられぇ、なぜか名前ちゃんにしがみつき隠れる双子ちゃん。はて?何かしたかなぁ、僕。
「や」
「「…………」」
「ひどい顔だね、二人とも」
バタバタと夏油くんと水瀬問題で慌ただしく日々が過ぎて落ち着きを見せた頃………サラッと高専に来た夏油くんに硝子ちゃんと思わずジト目を向けてしまう。
以前よりもラフな姿で気軽に声を掛けてきた男がつい先日まで呪詛師疑いを掛けられていたとは思わない。
「元気にしてたかい?」
「逃亡者じゃん。何か用?」
「間違っていないけど犯罪者みたいだね」
「夏油くんのメンタルヤバいわぁ」
クスクスと笑いながら近寄ってくる色男。
前世同じ男としてはこんなイケメンぶん殴りたくて仕方がねぇ。
おっと、いけないいけなぁーい☆華ちゃんは可愛いおんにゃのこ、だからねぇ!
で、夏油くんは憑き物が落ちたようにスッキリしている様子。
「一応聞くけど何しに?」
「え?勿論休学届け出しにだけど?」
「「真面目かっ」」
夏油くんの思わぬ発言に硝子ちゃんと突っ込みをいれてしまう。
そして三人で顔を見あわせ……爆笑したぁ。
「夏油くん、元気そーじゃん」
「まぁまぁかな」
「此処に居た時よりイキイキしてるな」
「まぁね」
三人で外に出て自販機で飲み物を買う。
五条くんは朝から任務中だからいなーい。
まぁそろそろ戻るっつってたからブッキングしそーだけどぉ。
煙草を咥えた硝子ちゃんにぃ、夏油くんはいつものように火をつけていたぁ。
そして夏油くんも自身の煙草に火をつけるので一気に煙草の臭いが広がっているぅ。
「今は?」
「フラフラ歩いてるだけだよ」
「ふーん。楽しぃ?」
「嫌なとこばかり目につくよ。その度に猿共を皆殺ししたくなる」
「「精神大丈夫かよ」」
やっぱ夏油くんアウトじゃねぇ?
目からハイライト消え去ってんだけどぉ?
しかしクスリ、と笑って何事も無かったように戻る表情。
「そう簡単には殺さないさ」
「発言が物騒」
「まぁ……中には優しい人もいるし……
呪術師がそもそも人間の底辺だと言うことを忘れていたよ」
「「それ、オマエが言う?」」
「……私が私らしく居られるには、まだ少し時間が欲しいんだ」
「ガキかよ」
「誰でも彼でも理解して欲しいとは思わないさ」
寂し気で、でもまだ困惑している様子がある。
「認めたくない。けど、認めなきゃいけない。
私が私で在るために……」
「面倒な生き方してんな」
「尻の穴ちっさいなぁ」
「………キミら、もう少し言い方をさ」
クスリ、と三人で笑う。
そんな中……夏油くんの横を抉るナニカ。
硝子ちゃんとダッシュでその場から逃げたら……
「説明しろ、傑」
「先生から聞いただろ?
それ以上でも以下でもないさ」
「非呪術師が嫌だから休学するってか!?」
「呪術師も嫌だよ?」
「そんな事聞いてんじゃねぇんだよ!!」
この会話だけ聞いてると凄い間抜けな会話に聞こえるねぇ。
「理想を納得するためだけにテメーの都合で振り回される周りの事考えた事あんのかよ!!」
「悟にだけは言われたくないかな」
「あ"!?」
「傲慢だな。
君になら出来るだろ、悟。
自分には出来ることを他人には「できやしない」と言い聞かせるのか?
君は五条悟だから最強なのか?
最強だから五条悟なのか?」
「何が言いてぇんだよ!!」
「もし私が君になれるのなら、この馬鹿げた理想も地に足が着くと思わないか?
生き方を決める為に……後は自分にできることを精一杯考えたいのさ」
夏油くんは煙草を靴ですり潰し五条くんの横を通りすぎる。
五条くんが夏油くんに術式を使おうと構えるので硝子ちゃんとどーしたもんかと顔をしかめる。
「止めたきゃ止めろ。それには意義がある」
五条くんの真横を通り過ぎた夏油くん。
ふと、足を止めた夏油くんは五条の方を見るわけでもなく呟く。
「名前はあぁ見えて寂しがり屋なんだ。
適度に構ってあげてくれ」
「盗るぞ」
「盗むぞぉ」
「ふふっ。硝子と華に盗られるのは痛いなぁ」
「いいのか?」
「名前をよろしく頼むよ」
そう言ってにこやかにいなくなった同級生は姿を消してしまったぁ。
夏油くんがいなくなった後の五条くんはもぬけの殻みたいでぇ……正直彼女を寝盗られた彼氏にしか見えなかったぁ。
いや、確かにあの原作っぽい流れと似てたけど……そもそも内容は休学する同級生の理由が"人助けしたくありません。だから休みます"だしぃ、それを止めようとした同級生の反論が"文句言ってないで働け!!"だしぃ。
結果的に"いつも我が儘押し通す自由人が人に正論ぶつけんな。ちょっと息抜きに旅立つの止めんな"だったからねぇ。
しょぼんとなった五条くんは、その後
今までよりちゃんとするようになったぁ。
その始めとして変わったと言えるのがぁ……
「華、硝子………女って慰めるときどーしたら喜ぶ?」
吹き出すの我慢した僕ら偉くない?
硝子ちゃんとプルプル震えながらなぜそうなった話を聞くとぉ、いなくなった夏油くんの事を想う女を心配しちゃいけないのか?とぉ、至極真っ当な理由だったぁ!
「やっぱ新しい恋か?」
やっぱ狂ってるぜぇ、五条悟!
予想以上にへこんでぇ、勘違いまっしぐらな五条くんにどう対応しようかぁ、と硝子ちゃんと目を合わせるぅ。
俺様な五条くんが一般人を気に掛けるなんてぇ、夏油くんの子守りはちゃんと成果があったよぉ!!と感動しぃ、名前ちゃんを気にしだしたノリで硝子ちゃんと温かく見守ろうと少女漫画をこっそり部屋に置いたのぉ。
ちなみに少女漫画は花より○子だぁ!!
ツンツンしてややこしい恋愛しそうな五条くんにはピッタリだろぃ?
五条くんが朝早くいなくなりぃ、帰りもお迎えに行く姿に漫画効果が出ていると笑っていたぁ。
そしてちょいちょい難しい顔をしながらちょっといいか?と相談に来るので、その度に様々なパターンの少女漫画を渡してみたぁ!
ちなみに少女漫画を手にもって眉間にシワ寄せているので………
硝子ちゃんと爆笑したよねぇ!!!
面白いことになって来ましたぁぁああああ!!と、少女漫画片手に硝子ちゃんと共に五条くんを囲う。
「五条、いいか。よく聞け」
「女の子が弱っている時は黙って側にいるもんだよぉ」
「そうなのか?」
「弱り果てた心(子育て中)、忘れられない男(そもそも別れてない)」
「そこへ!!支えてくれる存在ぃ(ただの邪魔な男)!!」
「………何したら喜ぶ?」
「男は(あの子にいらないから)黙ってろ」
「男は(名前ちゃんにいらないから)黙ってるの大事だよぉ」
「………そうか」
結果、名前ちゃんの送り迎えをし始めたがぁ……名前ちゃんから【五条さん頭打った?】と来て爆笑したぁ。
文句言いながら送り迎えをしてぇ、何かおごってきては感謝しろと褒め言葉を要求しぃ、多大な迷惑らしく……五条くん、何してんのぉ!?と笑ったぁ。
黙るという辞書のページどこ捨ててきたん?
幅広く少女漫画を見るが、素直になれない男の子が好意丸出しで必死だから可愛いんだよぉ?
俺様でみんな俺のこと好きになるから困ったなーな五条様はお呼びじゃないのぉ。
「女子って物贈られたら嬉しくねーの?」
五条くんが女心ってわかんねぇ、と気に掛けてるのかただの優しさなのかわからないので硝子ちゃんと頷く。
そっとラブコメの漫画を渡した。
そんな生活がなんやかんやで3ヶ月以上続いたある日、名前ちゃんから電話が。
五条くんに何を吹き込んだ!?との電話に一緒にダラダラしていた硝子ちゃんとお腹抱えて笑ってしまったぁ。
その日、帰って来た五条くんは両手で顔を覆っていたのでぇ
「五条くん、ドンマイ☆」
「夏油の彼女は無理があったな」
「オマエら俺で遊ばないでっっっ!!!」
爆笑した。
世界は道筋が決まっていてぇ……どんなに足掻いても無駄なことがあると決まっているぅ。
それでも人は奇跡を信じたいしぃ、しゃらくせぇってねじ曲げる人もいるぅ。
夏油くんが闇落ちしなかった。
伏黒甚爾が生きている。
灰原が生きている。
物語に登場しない僕ら。
僕らの誰か一人でも欠けていたならこの世界は悪い方向へと転がっていたのだろう。
名前ちゃんが居たからパパ黒は救われ、夏油は全ての非呪術師を最後まで嫌いになれなかった。
水瀬がいたから灰原は救われた。
その他、死ぬはずであった描かれていなかった人を何人も救ったのは二人のおかげだろう。
じゃあ、僕がいる意味って何だろう……って考えるとまだわからない。
僕は誰かを救えた実績などないし、いつも三人どころか後輩の足手まといなのだから。
一人で部屋にいる寂しさは心が死んでいく。
平気だと思っていても、思い出すのは世界は箱の向こうの名前も感情もわからない知らない人々のみだということ。
顔を知らないから何でも話せる……が、どんな文字の羅列を見ても本心は引きこもりのニートを称賛する事などない。
誰だって自分をよく見せようと多少の話は盛る。そんなの誰だってわかりきっているから結局は仲間だ!なんて言っても虚しいだけ。
親から見放され、居ないもの扱い。
社会からも必要がないと、戦力外通告。
自分自身はまだやれると思っていても……何度も何度も元に戻ろうと自分なりに必死に足掻いたが周りが、世界が自分を拒んでいる気がして………心が折れた。
その内に自分自身にも価値を見出だせず、誰かの為に動く気にもなれず、ただただ息をして生きながらえ、最期は呆気なかったあの頃。
「なんだ?」
「何ボーッとしてんだよ、華」
今でもこれは夢なんじゃないかと思う。
目の前でキョトンとしながらこちらを覗き込む五条くんに硝子ちゃん。
「んー?
僕も夏油くんみたいに自分の価値と人生について考えていたところぉ」
「は?」
「目立った術式も無ければぁ、硝子ちゃんみたいに反転術式も使えないしぃ………ぶっちゃけ補助監督にでもなろうかなぁって」
「「あぁ」」
「納得止めてよねぇ!!」
この身体の本来の持ち主の生きてきた環境は最悪だった。
僕がこの子として目が覚めたのは、この子の心が死んでしまったからこの身体を借りて生きてしまっただけ。
記憶と共に流れる少女の絶望は……わからないけど、わかる気がした。
僕とは違う世界から見捨てられた少女に、世界に絶望した僕が引っ張られただけ。
親が子を道具として扱い、当たり前のように他人の為に身を捧げろと言う世界。
あぁ、この世界も最悪な世界だ。と心が死んでしまう。
そんな中、生きる希望が自分自身であった僕はまだ、幸せなのかもしれない。
目の前に映る可憐な自分に恋をし、可哀想で可愛くて愛おしくて………。
歪むならとことん堕ちてしまえ、と呪術界に身を投げた。
どんなに年数を生きても、生まれた意味などわからない。
どんなに取り繕っても前世の僕はこの世界を受け入れられない。
消えてしまった魂が甦る、なんて思ってはいないが……僕はこの身体を借りているだけの存在で、彼女達とは違う。
この世界を生きる水瀬。
この世界で記憶を取り戻した名前ちゃん。
この世界に代わりに生きる事となった僕。
向こうが良かったのか?と言われると此方の方が断然いいに決まってる。
決まってるのに……
弱虫で意気地無しで引きこもりの僕は僕にとって都合のいいこの世界を受け入れられない。
「いーじゃん補助監督」
「ほぇ?」
「そーだな。弱ェ華が一級とか無理だろうし。死ぬ前に後方支援に回れよ」
「万年三級よりずっといいと思うぞ」
「……それだとぉ、僕…」
必要とされたい。
けど、痛いことも、辛いことも、怖いことも本当は全て"僕ら"は嫌なんだ。
羨ましい。
強い心で己を貫ける水瀬が。
恐ろしい存在を受け入れることの出来る名前ちゃんが。
「華は唯一私や五条や夏油と対等にものを言えるだろ」
「そーそー。融通利く手足欲しかったんだよ」
「………だって、僕…」
「適材適所、だよ」
「上の腐ったミカン共に口で負けるオマエじゃねーだろ?」
僕だけ、この世界で役割が貰えないんだと思っていた。
僕はヒーローにもヒロインにもなれない。
悪役にもなれない。
中途半端な、存在だと……。
そんな僕でも、再び与えられたチャンス。
「……いい、の、かなぁ」
「何が?」
「僕も、呪術師から逃げても」
「逃げんじゃねーよ」
「誰にでも向き不向きはあるだろ」
"人間"に憧れた。
僕も、この子も「家畜より役に立たない」と吐き捨てられ、僕らを受け入れる人などいなかったから。
「無駄死にすんな」
「私は華がいなくなると寂しいよ」
目の前の二人は"僕とこの子"を知ろうとしてくれた。
"僕"を見てくれている。
"この子"を受け入れてくれている。
そんな二人からの声を、僕らは聞かなかった事に出来なかった。
「………っっ!!
うわぁぁあああんっ!!硝子ちゃん大しゅきーっ!!五条くんはまぁまぁ好きぃっ!!」
「「汚ぇっ」」
僕は"誰かのために"生きたかったわけじゃない。
僕は"僕のために"生きたかった。
そんな僕が、今……"誰かのために"と思えるようになったのはきっと
「あ"っ!!!鼻水つけんなっ!!クソッ!!」
「ごじょうぐーーーんん"ん"っ」
「ははっ、きったね。華の鼻水祭りじゃん」
「くっっそ!!力強ぇなっ!!!」
「う"ぉ"ぉ"お"お"おおんんん"ん"っ」
「ぶっ細工な声出してんじゃねーよっ!!離れろ!!」
「いいぞ華」
五条くんが好きだ。
どんな僕でも見捨てることない甘さと優しさがあるから。
硝子ちゃんが好きだ。
ハッキリキッパリ僕の駄目なところを言うのに、本当に傷付いて悲しいときは黙って側にいてくれるから。
夏油くんが好きだ。
誰かのために自分を犠牲に出来ちゃうヒーローみたいなところがあるから。
僕には大事な"仲間"が出来た。
僕の今、生きるための理由を作るのだとしたら……僕は間違いなく目の前の二人の為に、この子の為にも生きたいと願う。
奇跡というものが僕にも誰かに与えられるのならば
この世界で誰かのために生きたいと願ってしまうほど、いつの間にか僕はこの世界が……好きになっていた。
「とぉ、僕は思ったんだぁ」
「なるほど。ですが私に五条さんを押し付ける理由には全くなりませんね」
冷めた目を向ける名前ちゃんに笑ってしまう。
まぁ、名前ちゃんに僕の生い立ちやら考えやらを同情してもらう気はサラサラないので、僕の心の葛藤は置いといてガチで面白そうだからへこんだ五条くんの相手を押し付けただけだ。
「ほらぁ、僕いきなり補助監督希望したから色々と勉強がねぇ?」
「オイ」
「硝子ちゃんもぉ、医者の免許取るのに大変なんだぞぉ!」
「五条さんが暇人みたいに言うのやめてあげてくださいよ」
ケタケタ笑い飛ばす僕を名前ちゃんはゴミを見る目を向けてくる。
そんな目、向けられ慣れているからへっちゃらさぁ!
「竈門さんが補助監督か……」
「スーツでビシッと出来る女なのよんっ」
「はいはい」
「で、ぶっちゃけ五条くんとはぁ?」
「お友達未満、顔見知り以上ですかね」
「レベルひっっく」
五条くんの初恋を面白おかしく弄った結果惨敗。
ごめーん、五条くーん(笑)(笑)(笑)
笑いが止まらない。
「五条くん、顔よし、金持ち、スタイルよしだよぉ?」
「ぶっちゃけ五条くんは理想ど真ん中ですが……」
「ですがぁ?」
「結婚したいと思うのは傑だけなんですよ」
「わぁー、ラッブラブ過ぎて引くぅ」
「竈門さんもオッサンばっか食べてないで恋愛してみてくださいよ。
恋バナしましょ。恋バナ!!」
「夢と希望と愛を貫いてるじゃーん!」
「人はソレをおっさん狩りと呼ぶんだよ?」
「違う。愛の狩人だもーん」
ちなみに僕の趣味はそのまま貫く。
若人と恋愛?なにそれ?
元おっさんの僕はおっさんを愛でるために産まれ変わったんだから、モブおっさんにアレコレされるのはやめられない。
若人のハッスルさ?
いやいや、僕にはいらないっす。
「……夏油くんは元気してるのぉ?」
「どこここ?って写真送り付けてきます」
ほら、と見せられたのは景色だとか、美味しそうな食べ物だとか、にこにこ笑ったおばーちゃんとか、ボッコボコにされた人の写真とか、様々だった。
「何してるのか、どこにいるのか、何を思っているのかわかりませんが……気ままに生きていてくれているのはわかる写真ばっかりですよ」
「みたいだねぇ」
「寂しくないって言ったら嘘になりますが」
写真を見ながら嬉しそうに、幸せそうに微笑む名前ちゃん。
恋してんなぁ、って思うくらい可愛くて綺麗。
まぁ、僕のが綺麗だけど。
「少しは、傑の生きる理由になれたのかな、とは思います」
「バリッバリ名前ちゃん優先だと思うけどぉ?」
「ハハハッ」
「よしっ!」
名前ちゃんを引き寄せ、唇に近い位置に僕の唇を当てて写真を撮る。
意地悪で名前ちゃんの目元は僕の手で隠して、口元だけのもの。
そのまま夏油くんへと送ればものの数分で返信が。
「ぷっ、くくくくっ」
「そんな変顔でした?私」
「僕、名前ちゃんと同じ時代に産まれて良かったなぁって思った、だーけぇ」
「???」
返信はシンプル。
本当は会いたいのを我慢しているであろう怨念でも飛んで来そうな一言に笑いしか込み上げてこない。
【貸すだけだよ】
誰かを愛すること。
誰かに愛されること。
本人達はあまりわかっていないみたいだけど……僕らからしたら小説のようなお伽噺。
「愛の力は偉大だねぇ」
「???」
「あーぁ、僕も恋人欲しぃー」
僕が、いつか。
僕自身を認めてあげられて、この身体の生い立ちも、ありのままの僕も見てくれる人が現れたならば。
ううん、僕を見てくれる人はいるから……僕が、その人を見つける事ができたなら。
「名前ちゃんと夏油くんみたいな恋がしたーい」
「DEAD OR ALIVEをお望みで?」
僕は一歩。
"人間"として生きる道が増えるかな?
あとがき
華ちゃん目線で書きたかった1話。
人には色々な理由があって、誰もがやり直しを考えて現実逃避したくなりますよねw
私もやり直してぇぇえw
竈門 華の設定補足として……
一般家庭のスカウトです。
竈門 華という本来居た子供の精神が壊れた肉体にとりついちゃった系トリッパーです。
前世でも、今世でも家庭環境が最悪なので自分の価値観がとても低い。
五条や硝子や夏油は華の過去を知らない。
わりと真面目に戦えば強い方。
しかし自分引きこもりなんで!ヒーローとか無理っすわ!精神が強く頑張りたくない。
が、死にたくもないのでほどほどに頑張る程度。
ちなみに元の竈門 華の精神は既にお亡くなりになられているので、とりついちゃったおっさんがメイン。
今後復活することはないし、復活したところで今までの記憶が戻ったら再び死ぬw
おっさんに喰われてるなんて幼女、耐えられない。おっさんだから耐えられた。
華ちゃんだぉ!!!
ここ数年の事をこの華ちゃんが語りましょう。
まず、夏油くんがいなくなってそれはそれは大荒れだよぉ。
夏油くんを呪詛師にしたい派とぉ、夏油くんを呪術師に残したい派でそれは大モメ。
本人は何処へ行ったのやらフラフラしてるしぃ、真面目に大変。
だって僕らに任務クソ増えたんだよぉ?
主に五条くん。
僕はぺーぺーだから変わらなかったけどぉ!!!
なんやかんや上のゴチャゴチャは五条くんによる五条家の圧と夜蛾先生が頑張って夏油くんは謹慎という自由を得たのだぁ。
本人に戻る気があればねぇ。
で、帰って来ない本人は音信不通かと思い、心配で名前ちゃんに連絡したらぁ……今も普通に連絡取ってて笑ったぁ。
オマエらッッッ!!ってなったよねぇ。
いや、僕らも話聞いてパニックなって連絡しなかったからぁ僕らの勘違いだったわけだけどぉ。メールも送れたし電話も繋がったがぁ……ワンギリされたぁ。
いっけなーい☆殺意殺意ぃ☆
名前ちゃんは夏油くんがいなくなって落ち込んでいるかと思ったら平気だしぃ。
僕らが知っている未来とは少し違う道を歩み出せているぅ。
そうそう、灰原気になるよねぇ?
あの子も無事なんだよぉ!だって水瀬が任務一緒だったから大怪我はしたものの無事さぁ。
水瀬が悪い子だったとは思っていないよぉ。
好きになれないのは僕からしたら水瀬が明る過ぎたからかなぁ。
僕みたいな引きこもりニートがあんな光の女子とお話出来ると思う?
硝子ちゃん?
硝子ちゃんは別枠。美人だけどぉ……アレもなかなか残念な美人だからさぁ。
で、だ。
僕らの心配を他所に名前ちゃんは日々幼女の信用を取り戻すべく可愛い幼女のお世話に必死。
落ち込んでる暇とか無いと。
私も硝子ちゃんも出来ることは手伝うと女の友情を育んでいたのだがぁ、名前ちゃんからわりとマジトーンで僕の手伝いはいらないと言われて泣いたぁ。
ちょっっとお風呂入ろうとしたりぃ、可愛いお洋服着せて写真撮っただけなのにぃ……双子に怯えられぇ、なぜか名前ちゃんにしがみつき隠れる双子ちゃん。はて?何かしたかなぁ、僕。
「や」
「「…………」」
「ひどい顔だね、二人とも」
バタバタと夏油くんと水瀬問題で慌ただしく日々が過ぎて落ち着きを見せた頃………サラッと高専に来た夏油くんに硝子ちゃんと思わずジト目を向けてしまう。
以前よりもラフな姿で気軽に声を掛けてきた男がつい先日まで呪詛師疑いを掛けられていたとは思わない。
「元気にしてたかい?」
「逃亡者じゃん。何か用?」
「間違っていないけど犯罪者みたいだね」
「夏油くんのメンタルヤバいわぁ」
クスクスと笑いながら近寄ってくる色男。
前世同じ男としてはこんなイケメンぶん殴りたくて仕方がねぇ。
おっと、いけないいけなぁーい☆華ちゃんは可愛いおんにゃのこ、だからねぇ!
で、夏油くんは憑き物が落ちたようにスッキリしている様子。
「一応聞くけど何しに?」
「え?勿論休学届け出しにだけど?」
「「真面目かっ」」
夏油くんの思わぬ発言に硝子ちゃんと突っ込みをいれてしまう。
そして三人で顔を見あわせ……爆笑したぁ。
「夏油くん、元気そーじゃん」
「まぁまぁかな」
「此処に居た時よりイキイキしてるな」
「まぁね」
三人で外に出て自販機で飲み物を買う。
五条くんは朝から任務中だからいなーい。
まぁそろそろ戻るっつってたからブッキングしそーだけどぉ。
煙草を咥えた硝子ちゃんにぃ、夏油くんはいつものように火をつけていたぁ。
そして夏油くんも自身の煙草に火をつけるので一気に煙草の臭いが広がっているぅ。
「今は?」
「フラフラ歩いてるだけだよ」
「ふーん。楽しぃ?」
「嫌なとこばかり目につくよ。その度に猿共を皆殺ししたくなる」
「「精神大丈夫かよ」」
やっぱ夏油くんアウトじゃねぇ?
目からハイライト消え去ってんだけどぉ?
しかしクスリ、と笑って何事も無かったように戻る表情。
「そう簡単には殺さないさ」
「発言が物騒」
「まぁ……中には優しい人もいるし……
呪術師がそもそも人間の底辺だと言うことを忘れていたよ」
「「それ、オマエが言う?」」
「……私が私らしく居られるには、まだ少し時間が欲しいんだ」
「ガキかよ」
「誰でも彼でも理解して欲しいとは思わないさ」
寂し気で、でもまだ困惑している様子がある。
「認めたくない。けど、認めなきゃいけない。
私が私で在るために……」
「面倒な生き方してんな」
「尻の穴ちっさいなぁ」
「………キミら、もう少し言い方をさ」
クスリ、と三人で笑う。
そんな中……夏油くんの横を抉るナニカ。
硝子ちゃんとダッシュでその場から逃げたら……
「説明しろ、傑」
「先生から聞いただろ?
それ以上でも以下でもないさ」
「非呪術師が嫌だから休学するってか!?」
「呪術師も嫌だよ?」
「そんな事聞いてんじゃねぇんだよ!!」
この会話だけ聞いてると凄い間抜けな会話に聞こえるねぇ。
「理想を納得するためだけにテメーの都合で振り回される周りの事考えた事あんのかよ!!」
「悟にだけは言われたくないかな」
「あ"!?」
「傲慢だな。
君になら出来るだろ、悟。
自分には出来ることを他人には「できやしない」と言い聞かせるのか?
君は五条悟だから最強なのか?
最強だから五条悟なのか?」
「何が言いてぇんだよ!!」
「もし私が君になれるのなら、この馬鹿げた理想も地に足が着くと思わないか?
生き方を決める為に……後は自分にできることを精一杯考えたいのさ」
夏油くんは煙草を靴ですり潰し五条くんの横を通りすぎる。
五条くんが夏油くんに術式を使おうと構えるので硝子ちゃんとどーしたもんかと顔をしかめる。
「止めたきゃ止めろ。それには意義がある」
五条くんの真横を通り過ぎた夏油くん。
ふと、足を止めた夏油くんは五条の方を見るわけでもなく呟く。
「名前はあぁ見えて寂しがり屋なんだ。
適度に構ってあげてくれ」
「盗るぞ」
「盗むぞぉ」
「ふふっ。硝子と華に盗られるのは痛いなぁ」
「いいのか?」
「名前をよろしく頼むよ」
そう言ってにこやかにいなくなった同級生は姿を消してしまったぁ。
夏油くんがいなくなった後の五条くんはもぬけの殻みたいでぇ……正直彼女を寝盗られた彼氏にしか見えなかったぁ。
いや、確かにあの原作っぽい流れと似てたけど……そもそも内容は休学する同級生の理由が"人助けしたくありません。だから休みます"だしぃ、それを止めようとした同級生の反論が"文句言ってないで働け!!"だしぃ。
結果的に"いつも我が儘押し通す自由人が人に正論ぶつけんな。ちょっと息抜きに旅立つの止めんな"だったからねぇ。
しょぼんとなった五条くんは、その後
今までよりちゃんとするようになったぁ。
その始めとして変わったと言えるのがぁ……
「華、硝子………女って慰めるときどーしたら喜ぶ?」
吹き出すの我慢した僕ら偉くない?
硝子ちゃんとプルプル震えながらなぜそうなった話を聞くとぉ、いなくなった夏油くんの事を想う女を心配しちゃいけないのか?とぉ、至極真っ当な理由だったぁ!
「やっぱ新しい恋か?」
やっぱ狂ってるぜぇ、五条悟!
予想以上にへこんでぇ、勘違いまっしぐらな五条くんにどう対応しようかぁ、と硝子ちゃんと目を合わせるぅ。
俺様な五条くんが一般人を気に掛けるなんてぇ、夏油くんの子守りはちゃんと成果があったよぉ!!と感動しぃ、名前ちゃんを気にしだしたノリで硝子ちゃんと温かく見守ろうと少女漫画をこっそり部屋に置いたのぉ。
ちなみに少女漫画は花より○子だぁ!!
ツンツンしてややこしい恋愛しそうな五条くんにはピッタリだろぃ?
五条くんが朝早くいなくなりぃ、帰りもお迎えに行く姿に漫画効果が出ていると笑っていたぁ。
そしてちょいちょい難しい顔をしながらちょっといいか?と相談に来るので、その度に様々なパターンの少女漫画を渡してみたぁ!
ちなみに少女漫画を手にもって眉間にシワ寄せているので………
硝子ちゃんと爆笑したよねぇ!!!
面白いことになって来ましたぁぁああああ!!と、少女漫画片手に硝子ちゃんと共に五条くんを囲う。
「五条、いいか。よく聞け」
「女の子が弱っている時は黙って側にいるもんだよぉ」
「そうなのか?」
「弱り果てた心(子育て中)、忘れられない男(そもそも別れてない)」
「そこへ!!支えてくれる存在ぃ(ただの邪魔な男)!!」
「………何したら喜ぶ?」
「男は(あの子にいらないから)黙ってろ」
「男は(名前ちゃんにいらないから)黙ってるの大事だよぉ」
「………そうか」
結果、名前ちゃんの送り迎えをし始めたがぁ……名前ちゃんから【五条さん頭打った?】と来て爆笑したぁ。
文句言いながら送り迎えをしてぇ、何かおごってきては感謝しろと褒め言葉を要求しぃ、多大な迷惑らしく……五条くん、何してんのぉ!?と笑ったぁ。
黙るという辞書のページどこ捨ててきたん?
幅広く少女漫画を見るが、素直になれない男の子が好意丸出しで必死だから可愛いんだよぉ?
俺様でみんな俺のこと好きになるから困ったなーな五条様はお呼びじゃないのぉ。
「女子って物贈られたら嬉しくねーの?」
五条くんが女心ってわかんねぇ、と気に掛けてるのかただの優しさなのかわからないので硝子ちゃんと頷く。
そっとラブコメの漫画を渡した。
そんな生活がなんやかんやで3ヶ月以上続いたある日、名前ちゃんから電話が。
五条くんに何を吹き込んだ!?との電話に一緒にダラダラしていた硝子ちゃんとお腹抱えて笑ってしまったぁ。
その日、帰って来た五条くんは両手で顔を覆っていたのでぇ
「五条くん、ドンマイ☆」
「夏油の彼女は無理があったな」
「オマエら俺で遊ばないでっっっ!!!」
爆笑した。
世界は道筋が決まっていてぇ……どんなに足掻いても無駄なことがあると決まっているぅ。
それでも人は奇跡を信じたいしぃ、しゃらくせぇってねじ曲げる人もいるぅ。
夏油くんが闇落ちしなかった。
伏黒甚爾が生きている。
灰原が生きている。
物語に登場しない僕ら。
僕らの誰か一人でも欠けていたならこの世界は悪い方向へと転がっていたのだろう。
名前ちゃんが居たからパパ黒は救われ、夏油は全ての非呪術師を最後まで嫌いになれなかった。
水瀬がいたから灰原は救われた。
その他、死ぬはずであった描かれていなかった人を何人も救ったのは二人のおかげだろう。
じゃあ、僕がいる意味って何だろう……って考えるとまだわからない。
僕は誰かを救えた実績などないし、いつも三人どころか後輩の足手まといなのだから。
一人で部屋にいる寂しさは心が死んでいく。
平気だと思っていても、思い出すのは世界は箱の向こうの名前も感情もわからない知らない人々のみだということ。
顔を知らないから何でも話せる……が、どんな文字の羅列を見ても本心は引きこもりのニートを称賛する事などない。
誰だって自分をよく見せようと多少の話は盛る。そんなの誰だってわかりきっているから結局は仲間だ!なんて言っても虚しいだけ。
親から見放され、居ないもの扱い。
社会からも必要がないと、戦力外通告。
自分自身はまだやれると思っていても……何度も何度も元に戻ろうと自分なりに必死に足掻いたが周りが、世界が自分を拒んでいる気がして………心が折れた。
その内に自分自身にも価値を見出だせず、誰かの為に動く気にもなれず、ただただ息をして生きながらえ、最期は呆気なかったあの頃。
「なんだ?」
「何ボーッとしてんだよ、華」
今でもこれは夢なんじゃないかと思う。
目の前でキョトンとしながらこちらを覗き込む五条くんに硝子ちゃん。
「んー?
僕も夏油くんみたいに自分の価値と人生について考えていたところぉ」
「は?」
「目立った術式も無ければぁ、硝子ちゃんみたいに反転術式も使えないしぃ………ぶっちゃけ補助監督にでもなろうかなぁって」
「「あぁ」」
「納得止めてよねぇ!!」
この身体の本来の持ち主の生きてきた環境は最悪だった。
僕がこの子として目が覚めたのは、この子の心が死んでしまったからこの身体を借りて生きてしまっただけ。
記憶と共に流れる少女の絶望は……わからないけど、わかる気がした。
僕とは違う世界から見捨てられた少女に、世界に絶望した僕が引っ張られただけ。
親が子を道具として扱い、当たり前のように他人の為に身を捧げろと言う世界。
あぁ、この世界も最悪な世界だ。と心が死んでしまう。
そんな中、生きる希望が自分自身であった僕はまだ、幸せなのかもしれない。
目の前に映る可憐な自分に恋をし、可哀想で可愛くて愛おしくて………。
歪むならとことん堕ちてしまえ、と呪術界に身を投げた。
どんなに年数を生きても、生まれた意味などわからない。
どんなに取り繕っても前世の僕はこの世界を受け入れられない。
消えてしまった魂が甦る、なんて思ってはいないが……僕はこの身体を借りているだけの存在で、彼女達とは違う。
この世界を生きる水瀬。
この世界で記憶を取り戻した名前ちゃん。
この世界に代わりに生きる事となった僕。
向こうが良かったのか?と言われると此方の方が断然いいに決まってる。
決まってるのに……
弱虫で意気地無しで引きこもりの僕は僕にとって都合のいいこの世界を受け入れられない。
「いーじゃん補助監督」
「ほぇ?」
「そーだな。弱ェ華が一級とか無理だろうし。死ぬ前に後方支援に回れよ」
「万年三級よりずっといいと思うぞ」
「……それだとぉ、僕…」
必要とされたい。
けど、痛いことも、辛いことも、怖いことも本当は全て"僕ら"は嫌なんだ。
羨ましい。
強い心で己を貫ける水瀬が。
恐ろしい存在を受け入れることの出来る名前ちゃんが。
「華は唯一私や五条や夏油と対等にものを言えるだろ」
「そーそー。融通利く手足欲しかったんだよ」
「………だって、僕…」
「適材適所、だよ」
「上の腐ったミカン共に口で負けるオマエじゃねーだろ?」
僕だけ、この世界で役割が貰えないんだと思っていた。
僕はヒーローにもヒロインにもなれない。
悪役にもなれない。
中途半端な、存在だと……。
そんな僕でも、再び与えられたチャンス。
「……いい、の、かなぁ」
「何が?」
「僕も、呪術師から逃げても」
「逃げんじゃねーよ」
「誰にでも向き不向きはあるだろ」
"人間"に憧れた。
僕も、この子も「家畜より役に立たない」と吐き捨てられ、僕らを受け入れる人などいなかったから。
「無駄死にすんな」
「私は華がいなくなると寂しいよ」
目の前の二人は"僕とこの子"を知ろうとしてくれた。
"僕"を見てくれている。
"この子"を受け入れてくれている。
そんな二人からの声を、僕らは聞かなかった事に出来なかった。
「………っっ!!
うわぁぁあああんっ!!硝子ちゃん大しゅきーっ!!五条くんはまぁまぁ好きぃっ!!」
「「汚ぇっ」」
僕は"誰かのために"生きたかったわけじゃない。
僕は"僕のために"生きたかった。
そんな僕が、今……"誰かのために"と思えるようになったのはきっと
「あ"っ!!!鼻水つけんなっ!!クソッ!!」
「ごじょうぐーーーんん"ん"っ」
「ははっ、きったね。華の鼻水祭りじゃん」
「くっっそ!!力強ぇなっ!!!」
「う"ぉ"ぉ"お"お"おおんんん"ん"っ」
「ぶっ細工な声出してんじゃねーよっ!!離れろ!!」
「いいぞ華」
五条くんが好きだ。
どんな僕でも見捨てることない甘さと優しさがあるから。
硝子ちゃんが好きだ。
ハッキリキッパリ僕の駄目なところを言うのに、本当に傷付いて悲しいときは黙って側にいてくれるから。
夏油くんが好きだ。
誰かのために自分を犠牲に出来ちゃうヒーローみたいなところがあるから。
僕には大事な"仲間"が出来た。
僕の今、生きるための理由を作るのだとしたら……僕は間違いなく目の前の二人の為に、この子の為にも生きたいと願う。
奇跡というものが僕にも誰かに与えられるのならば
この世界で誰かのために生きたいと願ってしまうほど、いつの間にか僕はこの世界が……好きになっていた。
「とぉ、僕は思ったんだぁ」
「なるほど。ですが私に五条さんを押し付ける理由には全くなりませんね」
冷めた目を向ける名前ちゃんに笑ってしまう。
まぁ、名前ちゃんに僕の生い立ちやら考えやらを同情してもらう気はサラサラないので、僕の心の葛藤は置いといてガチで面白そうだからへこんだ五条くんの相手を押し付けただけだ。
「ほらぁ、僕いきなり補助監督希望したから色々と勉強がねぇ?」
「オイ」
「硝子ちゃんもぉ、医者の免許取るのに大変なんだぞぉ!」
「五条さんが暇人みたいに言うのやめてあげてくださいよ」
ケタケタ笑い飛ばす僕を名前ちゃんはゴミを見る目を向けてくる。
そんな目、向けられ慣れているからへっちゃらさぁ!
「竈門さんが補助監督か……」
「スーツでビシッと出来る女なのよんっ」
「はいはい」
「で、ぶっちゃけ五条くんとはぁ?」
「お友達未満、顔見知り以上ですかね」
「レベルひっっく」
五条くんの初恋を面白おかしく弄った結果惨敗。
ごめーん、五条くーん(笑)(笑)(笑)
笑いが止まらない。
「五条くん、顔よし、金持ち、スタイルよしだよぉ?」
「ぶっちゃけ五条くんは理想ど真ん中ですが……」
「ですがぁ?」
「結婚したいと思うのは傑だけなんですよ」
「わぁー、ラッブラブ過ぎて引くぅ」
「竈門さんもオッサンばっか食べてないで恋愛してみてくださいよ。
恋バナしましょ。恋バナ!!」
「夢と希望と愛を貫いてるじゃーん!」
「人はソレをおっさん狩りと呼ぶんだよ?」
「違う。愛の狩人だもーん」
ちなみに僕の趣味はそのまま貫く。
若人と恋愛?なにそれ?
元おっさんの僕はおっさんを愛でるために産まれ変わったんだから、モブおっさんにアレコレされるのはやめられない。
若人のハッスルさ?
いやいや、僕にはいらないっす。
「……夏油くんは元気してるのぉ?」
「どこここ?って写真送り付けてきます」
ほら、と見せられたのは景色だとか、美味しそうな食べ物だとか、にこにこ笑ったおばーちゃんとか、ボッコボコにされた人の写真とか、様々だった。
「何してるのか、どこにいるのか、何を思っているのかわかりませんが……気ままに生きていてくれているのはわかる写真ばっかりですよ」
「みたいだねぇ」
「寂しくないって言ったら嘘になりますが」
写真を見ながら嬉しそうに、幸せそうに微笑む名前ちゃん。
恋してんなぁ、って思うくらい可愛くて綺麗。
まぁ、僕のが綺麗だけど。
「少しは、傑の生きる理由になれたのかな、とは思います」
「バリッバリ名前ちゃん優先だと思うけどぉ?」
「ハハハッ」
「よしっ!」
名前ちゃんを引き寄せ、唇に近い位置に僕の唇を当てて写真を撮る。
意地悪で名前ちゃんの目元は僕の手で隠して、口元だけのもの。
そのまま夏油くんへと送ればものの数分で返信が。
「ぷっ、くくくくっ」
「そんな変顔でした?私」
「僕、名前ちゃんと同じ時代に産まれて良かったなぁって思った、だーけぇ」
「???」
返信はシンプル。
本当は会いたいのを我慢しているであろう怨念でも飛んで来そうな一言に笑いしか込み上げてこない。
【貸すだけだよ】
誰かを愛すること。
誰かに愛されること。
本人達はあまりわかっていないみたいだけど……僕らからしたら小説のようなお伽噺。
「愛の力は偉大だねぇ」
「???」
「あーぁ、僕も恋人欲しぃー」
僕が、いつか。
僕自身を認めてあげられて、この身体の生い立ちも、ありのままの僕も見てくれる人が現れたならば。
ううん、僕を見てくれる人はいるから……僕が、その人を見つける事ができたなら。
「名前ちゃんと夏油くんみたいな恋がしたーい」
「DEAD OR ALIVEをお望みで?」
僕は一歩。
"人間"として生きる道が増えるかな?
あとがき
華ちゃん目線で書きたかった1話。
人には色々な理由があって、誰もがやり直しを考えて現実逃避したくなりますよねw
私もやり直してぇぇえw
竈門 華の設定補足として……
一般家庭のスカウトです。
竈門 華という本来居た子供の精神が壊れた肉体にとりついちゃった系トリッパーです。
前世でも、今世でも家庭環境が最悪なので自分の価値観がとても低い。
五条や硝子や夏油は華の過去を知らない。
わりと真面目に戦えば強い方。
しかし自分引きこもりなんで!ヒーローとか無理っすわ!精神が強く頑張りたくない。
が、死にたくもないのでほどほどに頑張る程度。
ちなみに元の竈門 華の精神は既にお亡くなりになられているので、とりついちゃったおっさんがメイン。
今後復活することはないし、復活したところで今までの記憶が戻ったら再び死ぬw
おっさんに喰われてるなんて幼女、耐えられない。おっさんだから耐えられた。