幼馴染は生き残りたい
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※こんなの傑じゃない!解釈違い!
と思ってしまった時点で読み飛ばしても大丈夫です。
※捏造いっぱい
私と悟に与えられた星獎体任務。
会ってみれば自分達よりも幼い少女。
悟と私が居たら……出来ないことは無いと思っていたんだ。
なのに
同化まであと少し。
侵入者の対応は悟に任せて奥へ。
理子ちゃんが黒井さんと別れて覚悟を決めるなか、私は彼女の本心を問う。
生きたいと願った。
だから、帰ろうと差し出した私の手に、手を伸ばす理子ちゃん。
そんな彼女の命を奪う一発の銃声。
無気力に倒れる理子ちゃんは虚ろな目をしながら生き絶えている。
「ど、う……して…」
「駄目じゃないですか、傑先輩。
その子逃がしたら傑先輩が上から怒られちゃいますよ?」
煙を上げる拳銃を持ってニコニコと笑っている。
「何故、此処に……」
「依頼者から星獎体の同化阻止をお願いされまして。まさか先輩らが護衛任務しているとは思っていませんでした」
「何故っ」
「だって非術師の事は助けなくちゃいけませんから!
非術師が困っているんですもの。
傑先輩も言っていましたよね?弱者を助けるのが呪術師の務めだって」
「だからって!!」
「星獎体の子だって覚悟があったんですよね?だってそう決まっていたんですもの。
じゃあ、弱者の為に命を使えたなら本望ですよ」
「水瀬っ!!」
「すいません、傑先輩。
その子の遺体依頼主に引き渡すので」
ニコニコ、ニコニコ。
何を言っているんだ、コイツは。
「キミは……何をしたか、わかっているのか!?」
「何で怒っているんですか?
傑先輩と悟先輩はその子を逃がそうとした。つまり、同化を拒否したんですよね?
私の依頼主もその子の同化を止めたい……じゃあ困ることありませんよね!」
「ふざけるな!!」
「ふざけていませんよ。
そりゃ、少し私情も入って思わず殺ってしまいましたが……結果、彼女は役目から解放され、非術師を助けられた」
「水瀬」
「傑先輩。私、非術師って嫌いです。
何も出来ないくせに力を見たら化物だと逃げ出し迫害するのに。私から全て奪っていくのに。……都合のいい時だけ頼る弱者。
でも、傑先輩が私達は強者だから弱者を助けなきゃいけないって言ったじゃないですか。
……だから、弱者を助けました。
何か間違っていますか?」
にこり、にこり。
得体の知れない後輩にコイツは誰だと目を疑う。
理子ちゃんを抱え上げて慈愛に満ちた瞳を向ける。
「可哀想。
呪術師からも非術師からも死ねって言われて。
……自らの役目を放棄するなら解放して自由になれば少しは報われますよね」
「もう黙れ」
「傑先輩も少し休んで下さい。
大丈夫……身体に害はありませんから」
「!?」
くらりとした目眩に足を踏ん張る。
その間に水瀬は理子ちゃんを連れていく。
「おやすみなさい、傑先輩。
傑先輩も私と一緒だって私わかってますから!
……貴方の嫌なことは全部私が代わりますから」
目覚めて水瀬を追いかけたが全て終わっていた。
盤星教へ足を運べば……
理子ちゃんの死を祝う非術師達。
一足先に向かった悟が理子ちゃんの亡骸を抱えている。
「水瀬は」
「逃げたよ」
この任務は何か意味があったのだろうか?
最強と言いながら何も守れなかった私達。
何が最強だ。
いや……違う。
私があの後輩を、水瀬を甘くみていた。
寄せられていた好意を曖昧な態度で弄び、最終的に酷く振った。
水瀬はスカウトされる前まで非術師から酷く扱われていたらしい。
今でこそ明るいが……七海や灰原の話だと虐めにより何度も辛い目にあっていたと。
だから最初は非術師を救うなど嫌だと言っていたが……私が、非術師は守るべきものだと言ったから。
私に惚れたから私の意志を尊重すると。
素直な後輩だと思っていたが……こんなの素直どころではない。
水瀬の行動は呪術界にとって反逆者と同じ行為だが……実際は与えられた任務をこなしていたに過ぎない。
では誰が水瀬にこんな任務を?となったが……不思議なことに誰も任務を言い渡した者がいない。
任務自体は記録が残っているのに……依頼した人物や、任務を告げた人間が誰かわからない。
上層部は面倒だったのか……水瀬の独断での行動として処罰対象に。逃げずに戻れば良かったものの……水瀬は逃げた。
確認の為に見付け次第確保の命令が下されたが……結局は今後天元様に何かあれば星獎体を殺してしまった水瀬に全ての責任を押し付けようとしているに過ぎない。
汚い。
汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い!
わかっていたことだが……上の腐りきった考えに吐き気がする。
それと同時に……守るべき弱者によって死を望まれ殺された理子ちゃんのことを思うとやはり猿共は守るに値しないのではと思ってくる。
全から外れた一。それが私達だ。
集団の中に1つでも違うモノが混じれば周りはすぐに気がつく。
そして違うと分かればすぐに追い出そうとする。
それが、弱者なりの強がりだと頭でわかっていても……っ!!
受け入れて貰えない。
外れモノにされる。
奇異の目を向け牙をむく。
弱者は当たり前のように守られるべきだと主張するのに……
力を持つ我々を同じ仲間には入れない。
そんな者を守る必要などどこにある?
……そう、考える事の何が悪い。
選べる権利は私達にあるはずなのに選ばせて貰えない環境に身を置かされる。
水瀬は正しく弱者の訴えを聞いて動いただけ。
大っ嫌いな弱者の訴えを。
「傑先輩……どうして呪術師は非呪術師に気を使わなきゃいけないんですか?
私を虐めていたあの人達が死にかけていて、七海や灰原が危なかったら私は同期を助けます!
その結果……あの人達が死んでも」
「水瀬、私達は呪術師だ。
呪術師は非呪術師を守るために在るんだよ」
「仲間より非呪術師を選べと?」
「七海も灰原も呪術師だ。
優先すべき事は何かわかっているよ」
「でもっ!!」
「悔いの無い死はない。
呪術師である以上私達は常に覚悟が必要だ」
「……傑先輩は、それで…いいんですか!?」
あの時の水瀬は受け入れたくないと叫んでいたが……私がそう在るべきだ、と教えたから?
悪気の無い笑顔で理子ちゃんの死に躊躇う様子は無かった。
自分の言った言葉に嘘は無い。
そして私自身弱者を嫌っている事も否定しない。
どんなに綺麗事を並べても私だって全より一を選ぶ。
「私はずっと決めている」
私の守るべきモノはただ1つだけ。
非術師でもなく
呪術師でもなく
たった一人の為にいる。
水瀬があの時の私の答えをどう受け取り、何を考え私と一緒の思いだと言うのかわからない。
だが……今回の事は少しだけ心を揺さぶられた。
理子ちゃんの理不尽な死に嫌なしこりが残った。
心の奥底に潜ませている非術師を見下す自分が顔をだし耳元で囁く。
ーーーオマエの唯一こそ非術師だろ、と。
考えれば考えるほど私の想いがブレてしまう。
ヤメロ、考えるな。
ヤメロ、囁くな。
ヤメロ……ッ!!!
私の想いがブレてしまえば……私の呪術師としての理由が無くなる。
世界を見下し、世界を嫌い、世界の終わりを願う事しか出来なくなる。
護るべき理由にしたのは私だ。
守ろうと決めたのは私だ。
他の何よりも優先し、私の全てを与えたいと想いこの道へ踏み出したのに……っ。
踏み出した事で大切な仲間が増えた。
その他大勢の弱者よりも優先したいモノが増えた。
なのに奪っていくのはいつだって弱者だ。
そして、その弱者の筆頭が……私の唯一無二、だ。
同じ扱いをしたくないのに、頭を過る。
同じ扱いをしたくないのに、心が騒ぐ。
同じ扱いをしたくないのに、弱者は弱者だ。
彼女を同じにしてしまった時……
私はこの世界で生きる理由を失うことになる。
私の世界を照らしたのは彼女だ。
今もその輝きがあるから私は私で居られる。
私を認めてあげられる。
私の存在する理由となっている。
ーーー彼女は非術師だ。
うるさい。
ーーーオマエの大切なモノを奪う弱者だ。
うるさい。
ーーーあの子も周りと同じように逃げ出そうとしていただろ?
うるさい。
ーーーオマエが怖いって
………
ーーーオマエと居たくないって
………
ーーーオマエに何されるかわかんないって
うるさいっ!!!
ーーー結局いい顔をしながらあの女だってその他大勢の非術師と変わらない。
愚かで、醜く、オマエの事なんて何一つ見ないし知ろうとしない。
オマエの嫌いな猿と同じさ。
う る さ い ッッッッッ!!!!
頭の中で警報が鳴っている。
嫌いになんかなりたくない。
大切なのに。
捨てたくないのに。
守りたいのに。
私の想いを踏みつけて無駄な努力だと嘲笑う猿がいる。
自分が揺らいで気持ち悪い。
だけど足は彼女を求めてフラフラと彼女の家へ向かっていく。
何度も何度も立ち止まり、引き返そうとするがゆっくりと歩き出す。
そうしてたどり着いてしまった家は真っ暗で……
そうだ。顔だけ。
顔だけ見たら帰ろう。
この嫌な気持ちも彼女を見ればきっと無くなる。
今は気持ちが不安定だからこんなくだらないことを考えてしまうだけ。
だから、だから……会えばきっと大丈夫。
彼女が、名前が、私の目に……人間として映らなかったら?
ゾクリッと背筋が寒くなる。
そんなわけない。だって、彼女は他の奴等とは違う。違う違う違う違う違う違うっ!!!
頭では否定するのに頭の中の彼女はどんどんと表情がわからなくなる。
目は?口は?どんな、顔を…して……。
記憶の彼女が猿の面をつけている。
にこり、にこりと笑っている顔は………
今日見た猿共と同じ顔。
心が、揺らいで、揺らいで…
連絡するのも、玄関から入るのも億劫で彼女の部屋へ呪霊を使って上がる。
簡単に開いた窓に、相変わらず無用心だと思う。
「傑?」
「………」
「おかえり」
寝ていればいいのに。
そしたら、顔を見て、諦めてしまえたのに。
不思議そうな顔をして手を伸ばすが……身体が拒否でもしているのか触れられない。
「名前……っ」
触れたいのに触れない。
やはり、駄目だ。
顔は認識出来たが……一度混み上がってしまった気持ち悪さはなかなか消えない。
大好きなのに。
守りたいのに。
私の唯一無二の呪術師として在るための理由なのに。
名前を必要と出来ない私は……何のために呪術師でいなくちゃいけない?
「傑」
名前の声に顔を上げる。
真っ直ぐに私を見つめる名前は私の心の中を見え透いているかのようにじっと私の目を見ている。
「今決めて」
「……な、に…を…?」
やめて。やだ。
言わないで。
「私を選ぶか、私を捨てるか」
私から離れ無いって言ったろ?
私が離れようとしてるから?
いやだ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!!!
「私は選んだよ」
ふにゃり、と顔を綻ばせて笑う名前。
あぁ……。
どす黒い気持ちに覆われていたのに……名前が私を受け入れるから……
猿に見えてしまった自分が情けない。
あんな生き物達と同等にしてしまったなんて……。
いつも、そうだ。
私が道を外そうとしたり、間違った道へ行こうとしたら体当たりで真正面からぶつかってくる。
私はその度に間違っていると認めたくなくて、譲りたくなくて遠慮なんかせず八つ当たる。
男だから、女だから、なんて関係無く対等に居ようとしてくれる。
そんな強くてカッコいい名前が好きだ。
いつだって私と対等で居るために隣に並ぶ努力をしてくれる。
置いていかれても諦めず強がって噛み付いてくる姿が可愛くて好きだ。
怖がっても目を合わせて会話しようとしてくれる名前が大好きだ。
好きで、好きで、愛おしくて……
私自身でも引くほどの熱意を、憎悪を、呪いを与えても仕方無いなんて簡単に許して受け入れてしまう名前。
「………名前」
「なぁに?」
「名前」
触りたいんだ。
抱き締めたいんだ。
キスをして、抱き締めて、首筋に私の匂いを移しながら私に名前の匂いをつけてお互いの匂いが同じになりたい。
挑発的にエロい顔をされるのも、照れて控えめな態度をしながら引っ付くのも、呆れた顔をしながら邪険にするが無理矢理逃げないのも……全部、全部大好き。
なのに、一歩が出ない。
手が触れられない。
世界が違う……なんて分けられてしまった私と名前の距離が遠い。
「すまない。私は……っ」
思い通りにならない身体。
気持ちと身体がバラバラで焦り出すのに上手くいかない。
私の身体なのに他人の身体のようで……っ。
くすり、と笑う名前。
近付けなかった一歩を簡単に乗り越えて私の手に触れる。
思わず離そうとしてしまう。
本気になれば私の方が力が強いしこんな細腕力を入れなくてもすぐに引き離せるのに……離れなかった。
「傑」
「………」
「傑、大丈夫だよ」
「……名前」
「傑が怖がるものから私が守ってあげる」
小さな手が私の手を包む。
見下ろせば頭のつむじが見えるし、屈まないといけないほど目線の高さが違うのに。
幼いあの日
私を助けてくれた馬鹿なヒーローの姿がそこに在った。
「傑を虐める悪い奴らは月に変わってオシオキしてあげる」
にやりと自分を信じて疑わない。
自分なら出来ると思っているお調子者の馬鹿。
「傑が殴れない相手だろうと私なら関係無いもの」
この馬鹿なら本当に上層部だろうが誰であろうが殴りそうだ。
あぁ……懐かしい。
「……名前」
「何時までたっても泣き虫さんだね」
私の首に腕を回して抱きつく名前。
暖かくて、日の光を沢山吸収した布団のような香りがする。
太陽みたいな私の愛しい人。
この暖かさに、この優しさに、この光に何度救われたか。
私が呪術師になろうと決めたのは名前の為。
私を救ってくれた光が消えてしまわぬように、私が守ろうと決めた。
いつだって対等で居てくれようとする。
私達の距離が開いても、諦めようとしても、必死に隣を譲らないで居てくれる。
それがどんなに心強く、嬉しいことか。
望んでいた暖かさに……今度は抵抗出来なかった。
「私と居れば怖くないでしょ?」
「……居て、くれるのかい?」
「いらないなら余所へ行くしかない」
「そんなわけないだろ!!」
行かないで。
側に居て。
私の呪いを解かないで。
名前だけは逃がしてあげられないんだ。
「疲れたね」
「……あぁ」
「頑張ったね。お疲れ様」
「……あぁ」
「一緒に寝よ」
「……寝る」
私の上着やら髪の毛やらを取っ払い、ベッドに転がされる。
もぞもぞといい位置を探しつつ逃がさないように名前を抱き込む。
名前のベッドで名前の匂いに包まれると……緊張していた肩の力が抜けていく。
「……起きたら、聞いて欲しいことが…あるんだ」
話そう。
理子ちゃんと黒井さんが生きていた証を少しでも多くの人の記憶に残るように。
「あの男の事も……ちゃんと、聞きたい」
勘違いしていたとはいえ……知らなかった事を無くしたい。
名前の事を誰よりも理解しているのは私がいい。
「抱きたい」
触れて、舐めて、かじって、引っ付いて……お互いの距離を限りなく0にしたい。
「いいよ。でも今じゃなく明日ね」
「うん。……名前、大好き」
好き。大好き。愛してる。
そんなありきたりの言葉だけじゃ足りないんだ。
私の頭の中に入って貰ってこのどす黒くも熱い気持ちを理解して貰えたら……と思う一方で、知らないで居て欲しいとも思うんだ。
「私も大好き。おやすみ、傑」
「……おや、す…み…」
心地好さと暖かさに包まれているとすぐに意識が落ちていった。
ねぇ、名前。
私はキミが居てくれるから生きていられる。
一人ぼっちの世界から連れ出してくれたのはキミだ。
周りから遠ざけられずに人間として猿共の群れの中に入れたのはキミがいたから。
私は恵まれていたんだ。
幼い頃からキミが隣に居てくれたから寂しくなかった。
愛してる。
私の唯一無二。
あとがき
盲目的な傑は浮き沈み激しそう。
格好いい傑なんてこのシリーズ最初っからいませんが……狂った人しか出てきてないw