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五条も夏油も特別任務で居ない。
なので、授業が無い。
「素晴らしいのぉ」
「無駄遣いをするな」
「クソ共が居ない今が使い時じゃ」
「無駄遣いだな」
本来の姿で教室でダラダラと過ごしていたら……
ビービーと喧しいアラートが。
「あーぁ、名前がハメ外すから」
「名前、見てこい」
「最悪じゃ。これでクソの呪霊だったら私は今日一日逃亡する」
担任と硝子に見送られ、窓から飛び降りて呪いの気配が大きな場所へ。
蠅頭だらけの気持ち悪さに何事かととりあえず全て焼き払う。
一瞬で燃え尽きた蠅頭から出て来た血塗れの死体。
「おやおや?」
死体は五条だった。
特別任務だったんじゃないのか?
呼吸が止まっている。
致死量の出血。
頭に喉に足に……
「駄目じゃな、コレ」
完全に死んでるわ。
俺達最強!!と凄かった同期をこんなズタボロにする敵に敵うわけ無い。
悲惨な最後だが成仏してくれ、と背を向けて走る。
再び窓から戻れば、補助監督が慌ただしく報告している。
「何事だ?」
「わからぬ。が、侵入者に五条悟が殺られてた」
「!!」
「先生天元様のとこじゃろ?硝子連れて一緒に行く」
五条と夏油の任務が何かはわからない。
極秘任務の為、2人とそれを告げた先生しか知らない。
侵入者に五条が殺られ、まだ高専内に居る可能性を考えたら……守るべきは硝子だ。
私が侵入者を追いかけるより、確実に守るべき者を守る事にして硝子と担任と共に薨星宮へ向かう。
「おやまぁ」
「……コレは」
メイド姿の女性が事切れていた。
そのまま進むと夏油が倒れていた。
「まだ生きておる」
「硝子、夏油を。名前、頼んだぞ」
「……期待はせぬように」
夏油の側にある別の血溜まり。
出血量が多いのに、死体がない。
「お前達、知ってることはあるか?」
小さな小さな呟きに耳を傾ける。
「導いておくれ」
私が管理する島を荒らした不届き者がどこへ行ったか。
今、何が起こっているのか。
全て私に知らせておくれ。
私のか弱く可愛い魑魅魍魎達よ……。
補助監督と共に高専に残っている術師へ散り散りに残る蠅頭の位置を伝え、始末と現在状況を調べる。
「名前」
「おぉ、硝子。
私はちょっと当たりをつけた場所を見てくるからいい子で待っていておくれ」
「夏油も連れていけ」
「要らん。硝子が面倒見ておれ。
治ったとはいえ表面だけじゃろ?
気力でどーにかなる相手では無かろう」
「時間」
「……ふむ、それもそうか」
時計を確認して見ればそろそろタイムリミットだ。
困った身体に呆れてしまう。
「車を一台頼む」
「用意出来ています」
「乗れ。行き先は伝えておる」
困惑している夏油に説明している暇は無い。
先程から不可思議な事に、死体が動いているのだから。
「行かなくて良かったのか?」
「時間切れじゃ」
ボフンッ、と元に戻った身体。
彼等に任された任務だ。
どんな結末だろうと……。
結果的には、任務失敗。
護衛対象が死に、彼等にとっての分かれ道となってしまった。
2人で最強だと言っていたのに、最強となったのは一人だけ。
残された片方は必死に後を追いかけるが……格の違いに心が折れていく。
疑念、疑惑、不信、不安、嫉妬…
怒り、憎しみ、恨み、嫉み、悲しみ、苦しみ…
どんなに飲み込んでも消化しきれず
どんなに言い聞かせても納得できず
悪感情だとわかっていても抜け出せない。
そこへ、飛び込んできた後輩の死。
心が、限界を迎えていた。
「どうしたい?」
目の前に広がるのは幼き幼女が2人。
顔は血で汚れ、腫れている。
小さな身体は栄養が足りていないのかガリガリで、何時風呂に入ったのかわからない。
木で覆われた牢屋に入れられていた。
幼き子が受ける仕打ちではない。
夏油と共に訪れた村。
そこで呪霊をサッと祓ったのはいいが……まだ終わっていないと連れられて来たのは古い蔵。
何時の時代なのか……人を閉じ込める柵のある家を持つ古い集落で産まれた子は呪われた悪魔の子だと此処に閉じ込められていた。
村の怪奇を祓ったと言っても信じず、
村の怪奇の原因をどうにかしてくれと騒ぐ村人達。
親がどうなったのかわからないが……この子供達を見るといないのだろう。
表情を無くし、必死に冷静に居ようとする夏油。
だが……何かを諦めたかのように、何かを手放すかのように全ての感情を圧し殺して笑う。
「皆さん、一旦外に出ましょうか」
同期としては夏油が闇落ちしようがどうだっていい。
人を殺しちゃいけません。
人を傷付けちゃいけません。
どんな理由があろうとも……なーんて聖人のようなもの持ち合わせちゃいない。
「夏油」
「何だい?あぁ、キミが居たか……」
「どうしたい?」
が、此処で夏油を見捨てるのは私の仁義に反する。
だから、聞いてみた。
「キミに答えなければいけない事か?」
「お前さんが何を目的とし、何を成し遂げようとしているのか……私には関係無い。
出来ることなら関わりたくも無いし、お前さんだけなら切り捨てる」
あぁ、今宵は月が隠れてしまっている。
厚い雲が月明かりを閉ざし、暗闇になる。
「お前さんの考えを悪いとも思わんし、良いとも思わん」
「………キミは」
「だが、今お前さんが背負うべきものだとも思わん」
指を一振。
すると、バキバキと木の柵が壊れる。
驚く者達を放置し、幼子へ近寄る。
「人とは実に弱く臆病な生き物じゃ。
誰かのせいにし、己の罪を認めず、集団で1つのものを悪とし己の罪を軽くしようとする。
哀れで醜い生き物じゃ」
痛いなぁ。
顔が傷だらけで腫れているだけじゃなく化膿までしている。
痛いなぁ。
大人から振り上げられる拳を避けられず力任せに殴られる恐怖。
痛いなぁ。
助けてと呼べない環境。
「ば、化け物っ」
「人が化けた……!?」
「おやおや?随分な言い様じゃ。
化けの皮を被っておるのはお主らじゃろ?」
幼子を殴るのは気持ち良かったか?
幼子を蹴るのは楽しかったか?
「人の血を浴び、人の骨を砕き、人の肉を削ぐ事に喜びを、快感を、興奮を覚え罪を罪とも思わず言い逃れしようとする貴様らこそ人の皮を被って見くれは人間じゃが………中身は畜生じゃな。
見よ。
こやつらのが自分に素直な姿をしている分可愛いかろぅ?」
悲鳴を上げる村人達は我先にと逃げていく。
幼子2人を片方づつ抱き上げて柵から出る。
「お前達……少し遊んでおやり」
闇より動き出す魑魅魍魎。
ケタケタ楽しげに村を右往左往と走り出す。
ぬるりと出てきた白い布。
「これ、幼子を脅かしてはならん」
よっこらせ、と布に腰掛ければヒラヒラとしながら宙を舞う。
驚きしがみつく双子を落ち着かせるように撫でる。
「ホッホッホッ、無様じゃのぉ。
みっともなく腰を抜かし、大声を上げて逃げ惑い、親も子も簡単に見捨て逃げ惑う。
実に醜く哀れじゃ」
同じように宙に浮き……難しい顔をする夏油。
その反対、名前は楽しそうだ。
「お前達は互いに身売りする事も出来たのに……偉いのぉ。
大事なモノが何か、幼いのに分かっておる」
悲鳴を聞きながら楽しそうに笑う名前は双子の頭を撫で回す。
「それに比べてお前は何じゃ?
中途半端な正義を翳してどうする?
お前さん一人が世界に喧嘩を売って勝てるとでも?」
「………キミには関係無い」
「お前さんの大事なものは何じゃ?」
夏油を見る名前の目は冷たい。
「誰かの為に、なんて理由じゃいつか限界が来る。
色々な理由に捕らわれ動く度お前さんに鎖が絡み、身動きが取れず最後は打ち首を待つのみ」
「キミに何がわかる」
「嫌なら辞めてしまえ。
大事なものの無いお前さんに救えるものなぞ無い」
いつの間にか村人達が魑魅魍魎によって集落の真ん中に集められる。
高みの見物をする名前達に向かって手を伸ばす者達が。
「命だけは……っ」
「私じゃない、あの人が手を上げたんだっ」
「違うっ!!あいつがっ」
お互いに擦り付けあう者。
頭を地に伏せ命を乞う者。
息を殺す者。
何が起きているのかわからぬ者。
「力とは、なんじゃ?
弱き者が持てぬと決まっているものか?」
否
「強き者が弱き者へ使うものか?」
否
「力とは、覚悟じゃ。
弱き者を救う覚悟。
弱き者を終わらせる覚悟。
強き者が奮う覚悟。
強き者が背負う覚悟。
どんな力であれ、覚悟の無い奴が使うべきモノではない」
もう一度、問おう。
「夏油傑。お前さんはどうしたい?」
「………殺したい」
「ふむ。それも1つの答えじゃな。
ではどう殺す?
お前さんの力で殺すか?社会的に殺すか?精神的に殺すか?」
「………私の手で」
「その手で殺し、何か得るものはあるのか?」
「…………私の、覚悟が決まる」
「覚悟の無い奴が手を下しても何も感じん。
一捻りで容易く消える命じゃ……得るものは呆気なく狩り取れるのか、と命の重みを軽んじるだけじゃ」
周りは魑魅魍魎。
村人達は震え、奥歯を鳴らす。
「非呪術師は呪いを生み出す。そのせいで呪術師が命を落とさなければならないのなら猿共を減らしていけばいい」
「一理あるのぉ」
「ならば、私がそれをする。
呪術師でいても上が邪魔で身動きが取れず、猿共のせいで仲間が死ぬ未来……私は耐えられない。
私は私の方法で呪術師を守る」
「……それが、覚悟か?」
「あぁ」
夏油の後ろには彼が使役する呪霊。
「まったく……0か100かしか考えられぬのか」
「退けてくれないか」
「だが断る!
お前さんの理論でいくと私らは困るからのぉ」
「は?」
「いい叫び声を上げてくれぬと私らの存在はどんどん消え失せてしまう。
それは宜しくないんじゃ」
うんうん、と一人頷く名前。
周りの魑魅魍魎達も同じように頷いている。
「……さっきからキミは何の立場でいるんだ?
そもそも、その姿は…」
「私の父は半妖でね。この身体には妖の血が混じっておるんじゃよ。
四分の一日しか本来の姿に戻れんから普段は本来の四分の一しか出せぬ」
「……じゃあ、普段の姿は」
「天与呪縛じゃ。あの姿で居ることでこの姿に戻れば実力以上を発揮出来るようにのぉ」
人の恐れ……ではないが、負の感情を向けられれば向けられるほど、本来の姿に戻れば強くなる。
不便ではあるが、困った事でもない。
「普段のプリチィーな肉厚な身体も一興。
世の視線の暑さ寒さをこの身1つで体験出来るのじゃ。愉快よのぉ。
面白くない人生など死と同じじゃ」
「メンタル強すぎないか」
「何はともあれ、お前さんが非呪術師を減らし全滅させてしまえば私ら妖は朽ちてしまう。
呪霊と違って由緒正しく古来より名を残してきておるというのに……脅かしがいの無い世になって祓われるだけに怯える人生なぞごめんじゃ」
「知らないよ、キミの事情なんて」
「そもそも呪術師だって非呪術師が居らんと商売にならぬであろう」
「そこは上手くやるさ」
「呪術師同士を掛け合わせるにしてもいつか限界が来るぞ。
現に呪術界であろうと非呪術師は生まれておる。
それらも排除していくとなれば……世界は成り立たぬ」
「………」
「お前さんがやろうとしている事でこの子達のように救われる者もおれば、その影に殺される者も居るということじゃ。
非呪術師から産まれた呪術師が優秀か?……否
呪術師から産まれた呪術師が優秀か?……否
腐っている者は腐っておる」
地上で命乞いをする者達のように。
「お前達が望むとしたらどんな罰が良い?」
「「………」」
「一瞬で終わらせる苦しみか、永遠に続く苦しみか」
「長く」
「辛く」
「「死より重い苦しみを」」
「ホッホッホッ。むーさん、出番じゃ」
象のような、アリクイのような何とも言えない不気味な生き物が村人達に向かって怪しい煙を吐き出す。
恐怖に怯える村人達はお互いに意味のわからないことを言っては怯え、叫び、謝っている。
「可哀想に……この先死ぬまで己が最も恐れる出来事から抜け出す事は無い」
「笑っているじゃないか」
「無様にのたうち回る愚か者を見るのは愉快じゃろ?」
「………酷いな」
ひくり、と口元を歪ませる夏油。
ケタケタ笑う名前は子供達を抱き締める。
「さらに、このような写真を匿名で送り、警察に連絡すれば未来は真っ暗じゃ!」
「いつの間に……」
「連行され、テレビで騒がれ、しかし本人達は意思の疎通難しく病院行き……そこで新たに呪いと出会い生涯気の休まる日など無かろう」
それで良いか、と聞けば子供達は頷いた。
「すまぬな。
お前さん達を思うならこの者達を一思いに殺してしまうのが良かろう。
……が、憎しみは空しさしか生み出さん。
今この者達を殺し、スッキリしても……お前さん達に残った心の傷は他の無関係な者達を憎みだす。
それは悲しき負の連鎖じゃ」
「………」
「憎むのはとても疲れる事じゃ。
何もかも憎しみに囚われてしまっては……お前さん達の目に映る世界は濁ったまま。
そんな世界、何にも楽しくなかろう」
スーっと、村から離れて空へ上がる。
無言で着いてくる夏油。
「お前さん達の傷を作ったのも人間じゃが……それを癒すのも人間じゃ。
人は人を傷つけ、人によって救われる。
……世界はそうやって巡る」
星空が目の前に広がる。
夜空の空は少し肌寒いので、学ランの上で子供達を包んでやる。
「恨むな、なぞ言わん。
しかし濁った目で見る世界にどんな希望を抱いても輝きはせぬ。
納得は出来ぬかもしれぬ。心にずっと残るであろうが……お前さん達は二人だから互いに分け合い、共有し、区切りをつけろ。
憎しみは憎しみしか生まぬ。仕返せば違う者から仕返しされる。
それをよく理解した上でお前さんらが復讐する事を止めはせぬが……お勧めもせん」
雲を抜けた先……大きな月。
「世界は美しいものでいっぱいじゃ。
短い時を全て濁ったまま過ごすのは虚しい。
汚く、嫌なものばかり探すより美しいものを愛で、楽しむ方がずっと良い人生じゃろ?」
「……綺麗」
「うん…」
沈んでいた瞳が輝く姿に双子の頭を撫でる。
地上に降り、補助監督に村の様子を告げる。
後始末は補助監督に任せてまずは近場のホテルへ。
車の移動で寝てしまった双子はベッドに寝かせてやる。
浴槽に湯を溜め、温かくしたタオルで子供達の汚れを拭いてやる。
傷を治せればいいのだが、まずは少しでも清潔にしてやらないと、と何度も桶のお湯を交換しながら綺麗にしていく。
着ていた子供服は脱がし、子供用の浴衣を着せてシーツを被せた。
汚れた衣類は処分しても良いのだが子供達の着る服が無くなってしまう。
朝に服を買えばいいか、と汚れた衣類は簡単に洗って絞っておく。
ついでに自分もシャワーを浴びて雑に浴衣を羽織って出れば……
「で?お前さんは何じゃ?何故此処に?」
「………」
「……そう、迷子のような顔をするでない」
「私は…」
困った顔をして、双子達を見つめる夏油。
つい先ほどまでは殺気立っていたというのに。
「風呂に入って、食べて、よく眠るんじゃ」
シャワー室に押し込み、適当に夜食を頼む。
髪の毛を部下に任せて乾かしてもらい、煙管に刻み煙草を詰める。
少し窓を開けて夜風に当たりながら一服していれば、水滴を落としながら上がってきた夏油。
部下達に視線をやればわらわらと夏油の背を押し、髪を拭き、ドライヤーまでする優秀な部下達。
終われば近寄ってくるのでそれぞれ褒めてやれば嬉しそうにしている。
「……キミは私と同じ呪霊操術では無かったはずだ」
「そうじゃ。この子達は私の家族同然の子らじゃ」
「家族?呪いが?」
「口を慎め。
同じ人から生まれ落ちたものだとしても、私の家族を愚弄するのは許さんぞ」
「……すまない」
「嫌に素直じゃな。普段の私に対する嫌悪にまみれた嫌味の1つも出んとは」
コロコロと笑えば気まずそうにする。
そんな夏油に向かって煙を吐き出せば嫌そうな顔。
「ホッホッホッ、気にしておらぬよ。
たかが数十年生きた子供に何を言われても。
本当にいい男というのは見た目など気にせぬ器を持つ者じゃ。
お前さんや五条のように見くれだけが良かろうと一時の楽しみには良くても長続きには至らんだろう?」
「………」
「我が美の前に言葉を失い後悔するのも致し方ない。
子供の戯れ言と思うておるのだから気にしてはおらんが、一度ぶん殴りたいとは思うておる」
「めちゃくちゃ気にしているじゃないか」
「そんな事はさておき……」
コンコン、とノックされた部屋。
扉を開ければ夜食が運び込まれる。
「ほれ、腹一杯お食べ」
「私はいい」
「なるほど。私自らのあーんをご所望か……
よかろう。口を開くのじゃ」
「待て。なぜ熱そうなドリアからいく」
グツグツと火傷しそうな勢いのあるドリア。
夏油の口を固定し、スプーンを近づけようとするが手を捕まれて止められる。
「腹が満たされれば自ずと眠たくなるじゃろ」
「だからってグツグツのドリアはちょっと…」
「安心するのじゃ。氷水がある」
「何も安心出来ない」
夏油の目の前に皿を置き、ポテトをつまむ。
「お前さん達からすれば魑魅魍魎は全て同じく呪霊に見えるんじゃろうが……
名のある妖怪は人々から畏れられ、人々から敬われ生き残ってきたんじゃ。
ポッと出の知性も無き獣のような呪霊とは格が違う。
例え弱く幼いモノでも命があり、理性があり、知性がある。
私らにも妖怪としてのプライドがあるのじゃ。
簡単にひとまとめにされてはたまらん」
「………」
「ちなみに私らからすれば呪術師も非術師も変わらん。
寿命の短き実に哀れで弱く愚かな"人間"さ」
「違う」
「ホッホッホッ、怒るでない。
お前さんが私らに言った言葉を返しただけじゃろうに」
キッ、と睨み付ける夏油。
人間らしい反応にニヤニヤとしてしまう。
「さっきからキミは何だ。
四分の一妖怪だったとしてもほとんど人間だろう。
まるで自分は人間では無く妖怪だと言っていて中途半端じゃないか」
「今は妖怪じゃからのぉ。ちなみに私はピチピチの125歳じゃ」
「はぁ!?」
「クォーターといえど妖怪じゃからのぉ。
人間の理から抜けておる。
人として生きるには成長スピードが違うし、倫理観も違う。
妖怪として生きるには寿命も浅く、身体も脆い。
私らのような半端者はどちらからも嫌われやすく生き憎い世じゃ」
全く、と溜め息をついてしまう。
「愛した妖怪は永らえても私は共に歩めず、子を成しても子の方が先に老いる。
置いていく事も置いていかれるのも悲しき事じゃ」
「……結婚して子持ちなのに学生服を着て恥ずかしくないのか」
「馬鹿者。私じゃなく他の経験者の話じゃ」
「な、なるほど…」
「中途半端でも受け入れてくれる者は居るし、居場所を作れば集まる者も居る。
私は高専へ引き入れて貰えたから居を構えておるだけじゃ」
「何故、高専に?」
「私に惚れた馬鹿な呪術師との約束じゃよ。
居場所が無いなら此処に来たら良いと。
此処は変わり者が多いから………とな」
懐かしい。
もう、ずっと昔の事。
「高専周辺のか弱い者達を引き入れて、あの周辺で好きに生きておる。
人里に行ってたまに悪さするくらいじゃ」
「悪さしているんじゃないか」
「脅かし畏れられる事が私らの本分じゃからのぉ。
呪術師の奴らはあまりいい反応せぬからつまらんのじゃ」
再び煙管を口にし、煙を吐き出す。
中の煙草を灰皿へ落とし、入れかえる。
「お前さんは間違えておらんよ」
「!!」
「お前さんが感じる事、考える事、切り捨てようとしておるモノ……間違えてはおらん」
「じゃあ、何故、止めたっ!!」
「お前さんが泣いていたから」
「!?」
「お前さん一人が居なくなっても高専は、世界は変わらず動く。
お前さんの行動1つで救われる者達も居る」
双子へと目配せする。
私が居なければ、夏油は魔の道を歩き……あの双子もついていっただろう。
「だがお前さんはそれで救われるのか?」
「私が決めた事だ」
「頭の固い奴じゃのぉ。
お前さんがその他大勢を救っても……お前さんは救われぬ。
救った者達を背負い縛られていくうちに本当にお前さんがやりたかった事が見えなくなるぞ」
「呪術師の世界を作る。
その為に捨てる覚悟は出来ている」
「作った先に何がある?」
「呪術師の未来だ」
「ソレの中にお前さんが本当に息永らえて欲しかった者達は何人残るんじゃろうな?」
「………っ」
「確かに未来を繋ぐ事は出来るじゃろうが……
今、お前さんが守ろうとしているモノは未来に居るという可能性は低かろう」
「やってみないとわからないだろ」
「背負えるのか?お前さんに」
噛み締めながら耐える夏油。
やれやれ、と煙管を置いて冷めたドリアのスプーンを取る。
「休め。お前さんに今必要なのは休息じゃ」
「んぐっ」
「ほれほれ、たーんとお食べ」
「や、やめっ」
「芋じゃ」
「うぐっ」
口を開ける度に詰めこみ、ちゃんと咀嚼する夏油。
頼んだ食べ物を食べ終えた頃には口を押さえていた。
「ほれ、寝るぞ」
「やめ……今、動くと……っ」
「ドーーンッ」
ベッドに放り投げて添い寝をしてやる。
慌てる夏油にシーツをかけて、ポンポンと背中を叩く。
「1つ2つ手放すくらいならまずは全て捨ててしまえ。
それから己の心に問い、1つづつ始めてみるんじゃ」
「…………」
「呪術師とは本当にか弱き生き物じゃ。
放っておけば死に、愛でても死ぬ。
生き急ぐ子らばかりよ」
ぐっすりと寝てしまった夏油から離れる。
もうすぐ夜明けだ。
「………さて。
私はもう一仕事をしようかのぉ」
携帯を片手に連絡する。
「………硝子、何が起きているのか聞いても?」
「んー、名前に感謝しておけば?」
あの日、夏油が目を覚ますと名前の姿は無かった。
補助監督が子供達に可愛い服を渡し、まずは高専で治療をと言っても怯えて動かない。
困った補助監督がどこかに連絡し、子供達に携帯を渡すと穏やかな顔をして頷き、それぞれ着替え始めた。
夏油も高専に呼ばれており、車の中で朝御飯を食べながらゆっくりと高専につけば……硝子が待っていて子供達を見るなり医務室へ連れていき治してくれた。
「何だか……随分と静かじゃないか?」
「まぁな」
「それよりあの人……名前は?」
「上層部を尻叩きの刑にしてるんじゃないか」
「は?」
硝子の口から出た言葉に頭を傾げてしまう。
その日はゆっくり休めと告げられ、子供達は硝子が見るからと医務室から追い出された。
補助監督に出会えばしっかりご飯を食べさせられ、任務は暫く無いと部屋に戻される。
それが1日、2日、3日とくれば流石におかしいと気付く。
硝子のいる医務室に双子の様子を見るついでに聞いてみれば……名前の名前が出て驚いた。
「名前の姿見たんだろ?」
「あ、あぁ……」
「あんな身なりでも100年以上この土地を守ってきた守り神なんだ。
いくら歴史ある上層部のジーさん達が相手でも名前より長生きしてる奴らはほぼいない。
むしろ、名前が見守ってきた子供同然だ」
「……」
「補助監督と共にここ数年の学生への任務の割り振りを調べてからお尻叩きに行ってくるって言ってから戻って無い」
「……悟は?」
「御三家だからって同じく呼び出し」
「……彼女、何者なんだ?」
「座敷わらし」
「………は?」
まさかの大物の妖怪の名前に驚く。
「座敷わらし」
「……いや、わかる。わかった…が、待ってくれ」
「名前が去ったら高専終わる」
「待ってくれ!理解が……頭が理解しようとしているのを拒否している!!」
「任務なら離れても遊びに行ってる感覚でOKらしい。
が、本格的に移住されるとなると……アレでも座敷わらしだからな。去ったら不幸が襲いかかる」
「……最強の脅しじゃないか」
「硝子、ミミとナナは?」
ガラッと開いた扉。
昼間だというのに妖怪の姿で現れた名前。
名前の姿を見るや双子達は走って抱き付く。
「可愛らしくなっておるじゃないか」
「名前様!」
「おかえりなさい…」
「もう身体は痛くないか?よく食べ、よく寝ておるか?」
「「はい」」
「いい子じゃ」
双子を撫でる姿は母親のような、姉のような姿。
座敷わらしといえば幼い子供をイメージしてしまうので……童子と言えない体つきに思わず目を逸らしてしまう。
「どうだった?」
「んー……とりあえず夏油は呪術師から一度引き離しておいた。
あと七海も」
「は?」
「他にも負担が多そうな術師には一度休みを与えるようにしたし……メンタルケアが出来るよう私の伝で専門家を呼ぶことにした。
ミミナナのような可能性を考え、全国各地の窓への見える人間へのサポートの徹底と採掘、あとはえーっと……」
「待ってくれ。私と七海が術師から引き離すと……」
「……ふむ。少しはマシな面になったかのぉ。
言葉通りじゃ。
お前さんと七海の精神的負担の大きさを考え、一度呪術師から引き離す事が決定した」
「私は……っ」
「勿論丸っきり無いわけでは無い。
本人の希望があればそれぞれの負担と見合った任務に行きながら調整するつもりじゃ。
……安心せぇ。諸々言う者共にはしっかりお尻に灸を据えた。
今頃腫れ上がった尻を冷やしておるところじゃろ」
「……でも」
「呪術師でなければ自分は非呪術師と同じで嫌か?
非呪術師が嫌で救いたくも無いのに呪術師では居たいとな?」
「……」
「呪術師であることに誇りを持つのは良い。
お前さんには他より才能があり、その力を誇りに思うのは良い事じゃ」
双子を撫でるように夏油の頭を撫でる。
背伸びしても背の高い夏油に届くのは額までなのだが……優しく撫でられる子供のように温かくふっくらとした小さな手。
「呪術師としては一人前じゃろう。
いや、お前さんの実力は誰もが認める強き者じゃ」
「………っ」
「じゃが、お前さんはまだ17の子供じゃ。
成人もしておらぬ、子供が世界を背負うには辛かろう。
未来を託すと言いながら押し付けて良い事柄ではない」
一撫で、一撫でが心地よい。
「世界を見限り、世界に絶望するにはまだ早い。
お前さんにはまだ見ぬ、知らぬ世界があるじゃろう」
「………私は、どうしたら」
「ふむ、そこでじゃ!私と共に来い」
「………は?」
「来月は丁度神無月じゃからのぉ。
久しぶりに足を伸ばしてチラッと顔見せに行こうと思ってな。
あぁ、離れても問題無きよう代わりの者が来る手筈は整っておる!
七海とミミナナと共にプチ旅行じゃ!」
「いいなー。私も行きてー」
「案ずるな。硝子。日帰り出来るよう祭りに参加する時には呼ぶからのぉ」
「やりぃ!」
「名前様、お出かけ?」
「美々子と菜々子も?」
「うむ!行くぞ!!」
説明も無しに……いや、説明されたが理解する前に捕まれ、あっという間に高専から出てきた。
「……七海は、驚かないんだな」
「名前さんの突拍子の無さはいつもの事なので」
出雲に着くまでは大幅な道草をしながら呪霊を祓う。
北は北海道から南は沖縄まで。
あちこちで寄り道をし、観光をし、呪いを祓う。名前のバフとも言えるような術式効果で祓う事に困ることは無い。
億劫だったはずの呪霊玉を飲み込むことに関しても、名前から止められ……自分の為に飲み込むこと以外を禁止された。
たいした数は集まらなかったが、強い呪霊のみを厳選する事が出来るように。
ついでにたまたま訪れた盤星教を何故か乗っ取り名前はそこを拠点にした。
出雲に行けば神々に挨拶を済ませると早々に硝子を呼び、珍しい酒を浴びるように飲んでいた。
そんな波瀾万丈な生活を約1ヶ月程……教祖紛いの事を名前と共に行い、くだらない話に耳を傾ける毎日。
「何故、こんなことを?」
「んー……こんなんでも信仰されておるなんちゃって神様じゃからのぉ。
信仰無くなれば堕ちていき、堕ちれば祟り神じゃ」
「だからこうして信仰集めですか?」
「そうじゃな。こうやって各地に私を信仰する場所がいくつかあれば安泰じゃ。
たまに顔見せればいいだけじゃし。
あと、金の巡りが良いし、呪いが向こうから来てくれるし、窓でも気付かぬ見える人間の保護も出来るからのぉ」
「そうですね」
やっていることは悪徳な気もするが、世のためになっていて上手くいっている。
「私はそろそろ高専に一度戻らねばならんが……夏油と七海はどーする?」
「私も戻ります。私にこの仕事は合いません」
「ホッホッホッ。七海は素直じゃのぉ」
「……此処を私に任せて貰っても?」
「ふむ」
「正気ですか?夏油さん」
「高専で呪いばかり義務として祓っているより呪いが向こうから来てくれるし……
何より、比べなくて済む。
色々連れ回されても私は猿が嫌いだし、助けてやりたいとも思わない」
「ふむ。じゃが此処はお前さんの嫌いな猿がこぞって救いを求めに来ておるぞ」
「利害の一致だよ。
私は手持ちが増えるし仲間集めに最適、キミは信仰を集められる。猿は悩みが消えるし皆良い結果だろ?」
「ふーむ……しかし、お前さんはまだ学生。
高専を卒業しとらんからのぉ」
連れ戻さなければそれはそれで面倒そうだ。
「学業なら通信で問題無いよ。
私も卒業資格は欲しいからね」
「出席日数なんぞあって無いようなものじゃからな」
「たまに顔出すよ。
……今の私は高専に居るよりこちらの方がずっと息がしやすい。猿の相手は疲れるが……楽しめる。もう少し、気持ちを整理したい。
勿論心配なら猿共を殺さないと縛りを結んでもいい」
「ホッホッホッ、そこまで縛りはせぬ。
世界を見て体験せよ。
その果てにお前さんの出した答えが変わらぬなら私は何も言わぬさ」
楽しそうに笑う名前。
そんな彼女の足元にはピタリと引っ付いた双子。
「名前様、行っちゃうの?」
「すまぬな、ミミナナ。
私が戻らぬと高専にうっかり災いが降り注いでしまうのじゃ。
なぁに……またすぐ会える」
双子の頭を撫で回す。
寂しそうな双子は盤星教に置いて行かれる。
高専は託児所が無いのでずっと保護する事は出来ない。
身寄りの無い双子は保護施設に入らなくてはいけなくなる。
そこで名前は色々と手回しし、無駄に広い盤星教の一室に児童保護施設を設置した。
美々子と菜々子の為に、と近場の保護施設を巡り、訳ありの子供達を引き取ったりもした。
その子達もそれぞれ力の大小はあれど、呪術師としての才能があり周りから蔑まれて来た子供達だった。
心の傷が大きく、普通に馴染めない子供達は学校へは通っているものの……非術師と共に同じクラスには居られず、特別教室での授業がほとんどだ。
それでも学校に通うまでに進歩した。
施設に戻れば理解者が居るし、何より恐怖の対象であった呪霊からも守られる。
子供達には呪術師の事を指南しつつ、未来の術師、補助監督、窓を育てられるクリーンな環境を揃えている。
ちなみに盤星教の経営の上層部は高専で疲れ果てている者や補助監督を数名引き込み、まったりと子育てや宗教活動の広告、宣伝、管理をしている。
前任者?乗っ取った時点でちょっとした魔法(という名の洗脳)を施し退職金と共に隠居して貰っている。
名前や七海や夏油による好き勝手している事業(笑)という宗教活動は思いの外上手くいき、盤星教であった時よりもお布施はガッポガポ。そして未来の仲間も保護出来て問題は多々あれど、スムーズに事が進んでいた。
若い芽が潰されぬようなクリーンな職場環境作りを目指し、第三の呪術界支援施設作りに力をいれるようになったのだった。
「まったく……ちぃと出掛けてみれば困った事になっておるのぉ」
「あれ?お姉さん誰?」
高専に転入してきた虎杖は今、死亡扱いを受け五条により高専の地下に匿われていた。
いつの間に現れたのか、ソファーの背に腕を組みながら煙管で煙を吐き出している。
映画に集中していたにしてもまったく気配が無く、変わった香りのする煙の匂いに釣られて振り向けば真横にいた。
肩を片方剥き出した着物姿。サラシの巻かれた胸元。花魁、と呼ぶには厭らしさの中にどこか触れてはいけない神々しさがあった。
思わず口から出たのは先程の言葉。
映画に釘付けの視線。難しそうに顔をしかめている。
「あまり面白く無いのぉ」
「まぁ……うん。けど何回か見てたら違う面白さ出てくるよ」
「例えば?」
「………仮想ならではの食い違い?」
「ホッホッホッ、そうかそうか。
で?お前さんが噂の宿儺の器か」
「うん。で、お姉さん誰?ここ入って来たら駄目なのに…」
「私に入れぬとこなど無い」
「あ、うん?」
「……珍しい生き物じゃないか」
「ちょっ、出てくんなよ!」
バチンッ、と頬を叩くが違う場所から口と目が現れる。
「ほぉ!!話せるのか!」
「ケヒヒッ。随分と半端者だ」
「ホッホッホッ。お前さんも似たようなモノじゃろ。
むしろ人間に寄生しておるお前さんの方が半端者じゃなぁ」
「え?何?知り合いですか?」
珍しく仲良さげに話す宿儺に驚く虎杖。
「小娘が調子に乗るなよ」
「怖い怖い。それにしてもお前さん、コヤツの指なぞ食うモノではなかろう。
腹が減り過ぎておったのか?」
「いや、成り行きで」
「拾い食いはオススメせんぞ」
「いつもしてるわけじゃないけど!?」
よくわからないテンションで会話し、ケタケタ笑う女性。
「ふむ……まぁ、ヤツの事じゃから考えがあるのじゃろう。
私のすべきは躾からかのぉ」
「ん?何?」
「少年よ。辛い時はいつでも声を掛けるんじゃぞ。虐められたら名を呼ぶが良い」
何事も無かったかのようにいなくなってしまった女性。
「………名前、知らないんだけどぉっ!?」
「………って事があったんだけど五条先生の知り合い?」
体術を指導してくれる五条に転がされながらふと思い出した事を告げると目隠しで分かりにくいが驚いた表情をする五条。
「まじ?」
「うん。まじ」
「あー……うん。悪いヤツじゃないからいいけど…本当、自由だな」
微妙な反応を見せる五条。
虎杖は頭を傾げる。
「あの人何て名前なの?」
「名前って言って……自由気まま、神出鬼没に現れる会えたらラッキーな座敷わらしだ
よ」
「座敷わらし!?
え?座敷童子って普通こう……子供で、旅館とか家に住み着くんじゃないの?」
「普段は滅多に姿現さないし、姿もその時の気分なんだよね……悠仁が見た姿ってどんな姿だった?」
「ボンキュッボンの花魁みたいなお姉さんだったよ」
「うわ……まじか。羨ましい。
悠仁めっちゃ気に入られてんね」
苦笑する五条。
ますます頭を傾げる虎杖。
「まぁ、悠仁を気に入っているならいっか。
悪いようにはならないよ」
それっきり女性とは出会うことは無く、交流会を迎えた。
交流会が始まると仲間からは手痛い仕打ちをされ(自業自得)、敵対校からは命を狙われ、何故か気に入られて指南を受けていたら特級に襲われる。
五条の圧倒的な実力を前に呆然としていた。
敵のいなくなった緊張感から解放され、一息ついた時だった。
「誰じゃ」
耳元で聞こえた冷たい声に体が強ばる。
「私の土地を荒らす不届き者は何処のどいつじゃ」
「「!!」」
東堂さえも気付かず真横に立たれ、抉られた大地を冷めた瞳で見下ろす女性。
「あ……あの時の!」
「宿儺の器よ……コレは誰の仕業じゃ?」
「えっと、今、特級の呪霊が出て……」
「そんなものどうでも良い」
「え"っ?」
「此処を、抉った、愚か者は………誰じゃ?」
此処、と指差すのは五条が抉った跡。
特級呪霊との交戦があったのにどうでも良いと……。
「誰じゃ」
「五条先生です」
美人の圧程恐いものは無い。
背筋を伸ばして告げた名前により冷たくなる空気。
東堂はどこを仰ぎ見ているのか不自然に美女を見ることはない。
「器よ」
「はいっ!!」
「愚か者に告げよ」
気温が下がる。
特級と戦った時とは違う……背筋がゾクゾクする恐怖心に変な汗が出てくる。
「私の土地を直さぬ限り戻らぬと」
「は、はいっ!!」
ふらり、といなくなった名前。
「ブラザー……」
「ん?何?」
「戻すぞ」
「へ?」
「全員総出で戻すぞ!!」
「え?何そのやる気」
「あの方は高専の守り神だ。
あの方が居なくなるということは今まで受けていた幸運が無くなりその分のリバウンドで不幸が訪れるっ」
「………大袈裟な」
「ここら辺一帯が無くなるぞ」
東堂の嫌に真面目な表情。
様子を見に来た先生や補助監督に同じように説明すると、顔を青ざめて現状把握より先に土地の修繕が優先された。
怪我人以外は全員総出で土地直し。
交流会は無事に終わり……東京が勝利した。
あとがき
書いたはいいが、色々しんどくなって書くのやめちゃった。
設定を練るより見きり発車が多いですのでww