幼馴染は生き残りたい
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さて、傑に連絡……と思うがなかなか出来ずにいる名前です。
ごめんね?
……謝る気も無いのに謝るなって言われそう。
好きだよ?
……ご機嫌取りしようって思っていないか?と言われそう。
愛してる?
……随分と軽いスカスカの愛してるだねと言われそう。
つまり、私の手持ちのカードは無い。
考えてみたら傑との喧嘩は全て拳で語り合ってきたし、なんなら体を繋げるようになってからは喧嘩らしい喧嘩なんてしていない。
傑が距離を置こうとするほど怒った事が無い。
硝子ちゃんと華ちゃんにはどうにかしろと言われたが……そもそも傑が何に怒ってるのかわかっていない。
わからないのに謝っても火に油を注ぎ込むだけだ。
とりあえず一つずつ考えてみよう、と傑の言葉を思い出す。
〜全て終わった後に知る私の気持ちも考えてくれない。信用されていない。
……どんなに名前に私の気持ちを伝えても信じようとしてくれないなら、頼ってすら貰えないなら私はキミに必要無いんじゃないのか?
キミの考えが分からない〜
報・連・相をしなかったのは私が悪い。
けど私で解決出来たことだった。
そして傑も基本報・連・相はない。
自分の事は棚に上げて私には怒る……理不尽!って思ってしまうのは私がひねくれているからか?
傑より劣るとはいえ……私は何も出来ない子供じゃない。
傑に全て解決してもらわなきゃ駄目なレベルに落ちてしまったわけじゃない。
むしろ信用してないの傑じゃね?
私は傑の子供か?子供なのか?バブちゃんかよ?
オマエに面倒見て貰わなきゃいけないほど幼稚だと思われてんの?我、精神年齢上だぞ?
イライラしてきた。
だが落ち着け、私はクールな女だ。
報・連・相は大人として当り前のルールだ。
それが出来なかった私はあの時確かに冷静では無かったし、いっぱいいっぱいで忘れていた。
出来る女の私はその愚かさを認めよう。
報・連・相の出来なかった大人だと認めよう。
忘れていました、は社会じゃ通じないからね!
で、だ。
事後報告ではあったが報告したよね。
連絡と相談はしなかったけど……傑は私の取締役じゃ無いので。
無事終わった事愚痴らないでくれ。
こっちは最善を尽くしたんだ。
宛てに出来ない彼氏にどう連絡と相談しろと?
……いや、まて。
傑が忙しいと決めつけてしまい元々頭に無かった。むしろ当てにして負担を増やすことを良しと思わなかったが……実はそれが良くなかった?
私に置き換えて考えてみよう。
傑が男と揉めて……この時点で傑が勝つ未来しか見えないな。むしろ私よりも上手く切り抜けたり暴力で全て解決した後、事後報告を受ける私。
………傑何してんの!?しかなんねーわ。
やり過ぎた相手大丈夫!?って相手の心配してしまうわ。
逸れた。で、相談しなかったのは私が忙しく?て負担になると思って、と理由を付けられたとしたら。……うーーん、ちょっとイラッとくる?かな?
当てに出来ないと決め付けられ解決されたとしたら……うん、イラッとするかなぁ。
傑よりしてあげられる事は確かに少ない。
傑の方が良い解決方法を見出だしそう。
それはそれでいいんだが……少しは頼られたいな、と思ってしまうかもしれない。
当てに出来ないということは
信用出来ない、頼れないと決めつけて最初から選択肢の中にいない存在として扱っているのだから反論なんて出来ない。
傑が嫌な思いするのは当然で
報・連・相もせず、当てにされないなら怒る……か。
で、次。
傑の想いを信用してない。
これはアレですよ。
未来の呪詛師のお言葉を信用出来るか?
できませーーーん!!!
で、き、まっっっせーーーーん!!
と、頑なに思っていましたが……華ちゃんと硝子ちゃんにクソ扱いされてしまいました。
殺人犯と思いながら付き添うヒロインごっこクソ野郎が何言ってんだよって怒られちゃいました。
そりゃそーですよね……ごめんなさい。
あんな重い想いを信用出来ないとか嘘だよ。
重すぎて逃げ出してます。
なのに離れるのは嫌だと傑に甘えて引っ付いていたのは私なのでこれは私が本当に最悪でクソ野郎。
反省しております。
原作や未来ばかりを気にして今の傑を見ていなかった。これは五条の事を何も怒れないじゃないか……ごめんよ、五条。
君の方が傑をよく見て、よく知っているよ。偉そうに説教しておいて本当に……。
で、私に傑はいらないか?
答え:こんな身体にしておいていらないわけがない。
傑以外で満足出来ないのにいらないって簡単に言えてしまえれば良いが………うん、無理!
私の考えがわからない?
奇遇だね、私もわからないんだよ!!
………。
これ、全面的に私が悪いのでは?
私が悪いわ。
庇って貰えるって何で思った?
傑が怒るのも無理無いわ。本当にごめんなさい。
頭を抱えて布団に転がる。
こりゃ周りが傑を可哀想だと思って私がクソ扱いされても仕方がねぇ!!!
さて………自分がドブカスだったと理解をした上で傑に謝る。
かなり上級コースじゃん?
あれからもう三週間よ?
怒りすぎて下手すりゃ自然消滅狙われてる?
普通の人々は距離を置こうっていわれたらどーしてんの?
距離を置こう=別れ話って事だった?
考えがまとまらないのでコンビニまで散歩しながら頭冷やして考えよう、と財布と携帯を持ち外に出る。
薄暗い道は人気がない。
静かな道は虫の声がよく聞こえる。
今、か。
今の傑の事を考えていないと言われると考えていなかったし、自分の事ばからで今の傑を見ていなかった。
未来や過去の事を言い訳にして逃げている。
付き合い始めは丸め込まれたとしても……そこから付き合い始めたのは私の意思だ。
そして今も離れられず理由をつけては傑の側に居ようと必死に考えている。
切り捨てるという考えは無い。
仲直りはしたいし、側に居たい。
いつの間にか私は傑と居るのが当たり前になっていて……離れようと思っていたのに、離れられなくなっていた。
魅力的な傑に私なんか勿体ないと思って、どうして傑が私に執着するのかわかろうとするのを拒んでいた。
……受け入れてしまえば"幼馴染"としての私の価値は"彼女"へと変わり……"非術師"だからという理由だけで切り捨てられるのが嫌だったから。
わからないフリをしとけば、"幼馴染"の私の価値があるんじゃないかと……。
切り捨てられない為に傑にとっての抑止力にならないか、と思ってしまった。
彼女はいつでも切り捨てられるが
幼馴染なら……心のどこかに引っ掛からないかな、と。
どちらの価値が高いなんて傑にしかわからないだろうが……
幼馴染として過ごした私。
彼女として過ごした私。
どちらも同じだが、別々な存在でありたかった。
そう思うが、傑が私のドブクソな性格に呆れて手離されるのならそれは仕方ない事だと受け入れるつもりでいる。
結局私は傑に判断を委ねたいのだろう。
自分から動いて何かが変わるのが怖いから、傑の出方を伺っている。
傑任せで逃げ道を探している。
それじゃ駄目だとわかっていても……いざ行動に移せる根性が無い。
これじゃ誰から見ても傑を好きになろうとしているが好きじゃないと言われて当然だ。
自分のやらかしてしまった重大さに頭が痛い。
許してください、なんて都合が良すぎる。
土下座でもすべきか?
それともやっぱり別れた方が傑の為になるか……。
私の脳ミソでは最適な答えが出ず悶々とするしかなかった。
コンビニについて適当に雑誌を立ち読みする。
ふむ、彼氏とのエッチな事情赤裸々告白とな?
若い子向けの雑誌ってファッションだけじゃなくこーゆーお年頃のお悩み特集もあるのね。
どうせなら仲直り方法の特集してくれよ。
さっと目を通すが特に興味が湧かない。
私、モデル雑誌より漫画の週刊誌のが好きだし。
雑誌を戻してお菓子と飲み物を吟味していたら若い声が聞こえる。
楽しそうにキャッキャとしていてこんなとこに若いカップル居るんだなーと思いながらレジへ。
お金を支払おうとレジにお金を置くが、店員がミスってお金を落としてしまった。
「すいません!」
「大丈夫ですよ」
コロコロ転がるお金を目で追う。
黒い靴にお金が当り、誰かが拾ってくれた。
「すいません」
「いえ、どう………」
「?」
不自然に途切れた声に、お金しか見て無かった私が顔を上げたら……傑がいた。
そしてひょっこり顔を出す可愛い女の子。
「傑先輩?」
「………」
「お金、ありがとうございます」
女の子にジロッと見られたぞ?
お金を受け取ろうと手を差し出すがなかなかくれない。
店員さんが困っておるぞ。
しゃーない、とお金を諦めて先に支払いをしてしまおう。
「ごめんなさい。これで」
「こちらこそ大変申し訳ありませんでした!」
隣に立つ黒い巨体がお金を差し出して来たので受け取る。
まさかのエンカウントに顔には出さないが……うん、ドッキドキやで?
華ちゃん、想定外な人物居るなら教えてくれよ。私聞いてないんだが?
しかもめっちゃ傑の腕に絡み付いたまま睨まれてるんだが?
私この子と初対面だよな?
この場合一体どうすべき?
教えてくれよ。りっちゃぁぁああんっっ!!!
心の友に叫ぶが、りっちゃんは笑顔でグッドラックと親指を立てていた。
何故か無言で後ろに並ぶ傑と後輩ちゃん。
さっさと袋持って立ち去ろう。
頭整理するはずが頭パニックなんだが?
コンビニの外に出て一息吐く。
きっっっまず!!!!
「あれ?名前じゃん」
「……五条さん」
「今傑コンビニ行かなかった?」
「いましたよ。後輩っぽい子と」
「ふーん。今から帰んの?」
「散歩がてら寄ったので」
あと出来るならさっさと帰りたい。
こちとら諸々の準備が出来ておらずパニックなんだが?
さっさと謝れって?
今、この状況で?
ハードじゃん。上級コースからエベレストコースなんだが?
とかやっていたら後ろのドアが開く気配にドアの目の前に居たら邪魔か、と横に避けた。
そしたらやはり腕を組んだ後輩ちゃんと傑。
バッチリ視線が噛み合ってしまう。
「悟先輩!どーしたんですか?」
「おっせーよ。硝子に様子見てこいって追い出された」
「先輩達が色々頼むからじゃないですか!!」
「はいはい」
わー、青春してんなぁ。
学生って感じがするぅ。
って一人現実逃避してみる。
さしす+αの学生時代を妄想するのは楽しいし、聞くのも楽しいが……そこ、に居られない私は部外者だから肩身が狭い。
私、いつもどーやって話聞いていたかなと思うと情けないやら、聞きたくないやらで此処に居る意味あるか?と思う。
私の知らない内にヒロインが登場していて、邪魔なモブ(私)はお払い箱だ。
距離を置こう=別れ話だったんだな、やっぱ。
帰るか……と歩き出す。
「名前」
久しぶりに声聞いたなーと、立ち止まる。
「何か言う事は無いか」
あるよ。
あるけど……今口を開けばひねくれた考えしか出て来ない。
傑は悪くないし、これは……私の一方的なヤキモチだ。
八つ当たりなんてした日には私はドブクソからウンコクズとなり社会の粗大ゴミとなる。
傑の顔を見れば何か言いたげに顔を歪めているし、後輩ちゃんは視線だけで人殺せるんか?ってくらいギラついている。
なのに傑の腕からは離れないので、あの子が傑を救う救世主なのかな……と思う。
五条はよくわからん真顔でじっと見てくるし。
「傑」
「………何だい」
「顔色が悪い。しっかりご飯食べて寝なよ。
君達は身体が大事なんだから」
じゃあ、と今度こそ帰ろうとしたのだが
突然身体を引かれて倒れ込む。
尻が痛い。
何事だと顔を上げれば後輩ちゃんの姿。
え、何?と思っていたらバチーーーンッと頬を叩かれた。
無茶苦茶痛ェ。
「水瀬!!」
「浮気者の癖にっ!!傑先輩を弄ぶならさっさと別れて下さいよ!!」
「オイオイ何してんだよ水瀬」
「アンタのせいで傑先輩がどれだけ傷付いているとっ!!」
よくわからんがキレられた。
棒立ちの傑とまぁまぁ、と止めに入る五条。
ぶちギレて罵倒する初対面の女の子。
えーっと?今のキレる要素ありました?
そして、オマエ私が傑の彼女だと知っていながら腕に張り付いていたのか後輩ちゃん。
「ちょっと乳がデカイからっていい気にならないで!!傑先輩は貧乳派なんだから!!」
「水瀬」
「傑先輩とのエッチが気持ちいいから手離したくないなんて理由、傑先輩可哀想!!」
「水瀬、落ち着けよ」
「傑先輩のエッチは確かに気持ちいいけど、エッチだけが目的ならさっさと別れなさいよド変態!!」
「え、傑水瀬に手出したの?」
「違う!!」
………どーゆー状況?
私後輩ちゃんにキレて良いのでは?
つか傑手出したの?
いや、自然消滅狙って距離を置かれている私に傑を怒る立場は無いのでは?
実際グダグダと連絡取らなかったのだから、自然消滅だと思われて他のヒロインに気持ちがいっても不思議じゃないし。
私が全面的に悪いので怒れない。
「あー……ごめんなさい」
「何の謝罪ですか?」
「傑が何で怒っていたかわからなかったから落ち着いて話せるまで言葉通り距離を置いていたけど……自然消滅じゃハッキリしなくて新しい彼女には気分良くなかったですよね。
彼女面して申し訳ありませんでした。
連絡先も消すし私からは連絡しませんので」
悪役令嬢ポジションかよ、私。
確かにヒロイン出てきたら私悪役令嬢ポジションだわ。
なるほど、これが断罪イベントですか。
「夏油さん、今までありがとうございました。
最後まで察しの悪い女で申し訳ありませんでした」
「待っ」
「では失礼。さようなら」
悪役令嬢はここで悪足掻きするとよろしくないバッドエンドしかないはずだ。
なら悪足掻きせず受け入れてしまった方が良いだろう。
お尻の砂利を払い立ち上がる。
冷蔵庫に冷えピタあったかな……無さそうだからコンビニで買うか。
コンビニの店員が凄い顔をして見ているが、冷えピタを探していれば傑が慌てて中入ってきた。
無視してレジに持っていけばめっちゃ店員に見られてる。
お金を支払おうとしたら傑がお金を出して冷えピタと私の腕を掴んで外に出る。
すげー怖い顔をしてる後輩と、ニヤニヤしてる五条がいる。
「すまない。痛かったろ」
「………」
頬に冷えピタが貼られる。
何故か傑が泣きそうなんだが。
「別れない」
「は?」
「水瀬とは本当に何もしてない。意地張っててこんな事になってごめん。別れてない」
「意味わからない」
「やだ。別れたくない」
駄々っ子のように抱き着いてきた傑。
おかしいな?さっきから私は何に巻き込まれているんだ?
「距離を置こうって言ったのは私だけど自然消滅してない。別れない!!」
「ん?」
「ちょっと私の事気に掛けて欲しかっただけなのに本当に距離置かれて名前は平気そうだから不安だった!!」
「あの…」
「何で連絡しないんだ。何で落ち着く。何で距離を置いたら自然消滅という思考回路になる!?
女と腕組んで居るなら妬くだろ!!疑うだろ!?
私は!!ただ!!名前に追われたかったのに!!」
「…えーっと」
「誰も私の顔色の悪さなんて気付かなかったのに何で気付く!?好きだ!!」
「普通に気付くよ。目の隈あるし、疲れた顔してるし」
「名前が居なきゃ駄目なのは私の方だよ……やだ、別れない。ごめん。本当にごめん」
「傑先輩!!何で非術師なんかに構うんですかっ」
「黙れ」
「黙りません!!傑先輩は私と居た方が幸せになれます!!」
劇団呪術の新喜劇かな?
ボーッと見ていたら隣に五条が立つ。
「大変そうだね」
「私は新手のコントに巻き込まれてしまったのでしょうか?」
「お疲れ。硝子呼ぶ?」
「……いや、いいです。
元は私が悪いので家入さんも治してくれませんよ」
後輩ちゃんと言い合う傑。
「ところであの子は?」
「俺らの一個下。水瀬 朋。
傑に一目惚れしたみたいであぁなんだよ」
頬がジンジンする。
やっぱ呪術師のヒロインとバトルって無理だよ。圧倒的に力強すぎじゃん。頬抉りとられたのかと思ったわ。
それより私頬叩かれ過ぎじゃね?
そんなに叩きやすい?
「本当にごめん、名前。
頬、硝子呼ぶから治してもらおう」
「痛いけどいい。家入さんや竈門さんから怒られたのにグダグダしていたの私だから」
「硝子と華が?」
「傑は悪くないから気にしないで。
……私こそごめんね。
傑の事ちゃんと考えていなくて」
「喧嘩の事と水瀬の事は別だろ。
いや、意地張って水瀬の事好きにさせておいたから私のせいだ……すまない」
目尻を下げてオロオロする傑。
自分の方が痛そうにする姿が面白くて、可愛らしくて、愛おしい。
……硝子ちゃん、華ちゃん。
やっぱ私傑が好きだよ。
「何笑っているんだ?」
「……傑が好きだなぁ、って思って」
「………っ」
「ごめんね、傑。大好きだよ」
屈んで頬に手を当てていてくれた傑に背伸びして己の唇を押し当てる。
目を見開き耳を赤くした傑は抱き着いてきた。
「私も好きだよ。別れたくない」
「私でいいの?自分で言うのもアレだけど私かなりドブクソだよ?」
「名前が酷いのは今に始まった事じゃないから気にしていないさ」
ぎゅーぎゅー抱き締められて首筋にすり寄る傑。
可愛いらしい甘えたな姿に頭を撫でてしまう。
「イチャイチャすんのもいーけど俺いるからな。買い出しの物持ってくぞー」
「よろしく、悟。
私は名前送り届けてくるよ」
「傑先輩!!」
「送り狼になんなよ」
ギャーギャー騒ぐ後輩ちゃんを引きずって行く五条。
騒がしかったな……と思いながら見ていたら傑に手を引かれて歩き出す。
「名前」
「なぁに?傑」
「家、行ってもいい?」
「外泊届けは?」
「朝帰れば問題無いさ」
おじぃちゃんもおばぁちゃんもぐっすり眠っていたので静かに2階へ。
傑がベッドに座り、両手を広げるので抱き着いて膝の中に座る。
「寂しかった」
「私も」
久しぶりの傑の匂いをいっぱい吸い込む。
今まで気にしたことは無かったが、異性の匂いが嫌じゃなかったり好きだなと思う場合……遺伝子レベルで相性がいいって聞いたような。
フンフンと犬のように嗅いでたらクスクス笑う傑の声に、夢中になりすぎたと恥ずかしくなる。
「何していたんだい?この三週間」
「特に何も無いよ。
あ、家入さんと竈門さんと喫茶店行ったくらいかな」
「あの二人と連絡とってたのかい?」
「傑の八つ当たりが酷いから浮気したのか?って拉致られた」
「あぁ…うん、なるほど」
思い当たるフシはあるのだろう。
気まずそうに視線を逸らす傑。
「……本当にごめんね、傑。
傑の事、ちゃんと考えていなくて。
傑はいつも私の事大事にしていてくれたのに……私、自分の事しか考えてなかった」
「名前……。名前が自分勝手なのは今更だから気にしていないさ。
私こそ悪かった。
いつもいつも私ばかりが好きでいるみたいで……名前からも好かれていると試したかったんだ」
ちゅっ、ちゅっ、と首筋に何度も軽く触れるだけのキスをしている傑。
所々棘がある言い方をされるが、こればかりは仕方ない。
好きにさせておいたが、突然ガブリと歯を立てられて痛みに跳び跳ねる。
「い"っ」
「なのに離れてみたら名前は平気そうだし、私の知らない男と会ったりこの家に出入りさせてみたり、私じゃなくその男を頼って解決して……名前は私を妬かせる天才なのかな?」
「あれ?待って待って待って?
仲直りからのイチャイチャな雰囲気どこいった?」
「連絡を何度か無視しただけで諦めて連絡も無く、本当に言葉通り距離を置くし……。その間に私は意味のわからない勘違い女の相手をさせられ、周りは面白がってくっ付けようとするし、挙げ句の果てには夜這いされて寝不足の日々を過ごす中………名前は硝子と華と連絡を取って楽しいお茶会をしていたんだね」
「お、おぉ………」
どんどんと肩に食い込む歯が痛いなぁ……。
どんよりと据わった目をした傑の瞳とかち合う。
あっっれぇぇええええ????
思っていた仲直り(キラキラ)と違うぞ?
仲直り(ギラギラ)になってるぞ?
「硝子と華に怒られた?そりゃそうだろうね。
どう考えても名前のがクズだから」
「は、ハッキリ言うね……」
「名前が私を好きだけど完全に堕ちずに一線引いている事は分かりきってるんだよ。
けど私は名前がいいからそんな事にイチイチ腹を立てるのはもう諦めてるからお仕置きはするが気にしてない」
「え?じゃあ何で怒ってたの?」
「連絡してこないことに怒ってたんだよ。あと、あの後輩へのイライラ」
嘘だろ。
私真剣に真面目に頭巡らせて反省していたのに、怒ってんのそこ!?
「あの……報・連・相をしなくて、当てにしなくて、傑の事殺人犯扱いしていた事を怒っているんじゃ?」
「は?殺人犯扱いって何」
「あー……私が、その……いつか傑が殺人しそうだな、と思って……その……距離を置いて…」
「………それが私と一線引いている理由?」
「傑、頻繁に闇堕ちするから……可能性の一つとして……えーっと、その…」
さっ、と目を逸らす。
が、顎を捕まれて無理矢理戻された。
「私がいつか人殺しになるかもしれないから一線引いていたのか」
「……ひゃい」
「へぇ……名前はずっとそう、思ってたんだね」
「ひゅいまへん」
お、怒っておられる!!!
そりゃ、そーだよな……。
恋人から殺人犯扱いされつつ、恋人としてビクビク隣に居られたなんていい思いしないよね。
「怒ってないよ」
「へ?」
「学校のいざこざ報告してくれたろ。
名前は私を頼らなくても元々やれば出来るんだから、相談されなくてイラッとしたが私も任務や地方に行ってたからね……自力で解決出来たなら何も思って無いよ。イライラするけど」
「あ、うん?」
「犯罪者扱いもイラッとしたけど怒ってない」
「え?じゃあ何であんな怒って距離を置こうとしたの?」
「言ったろ。
私ばかりが好きみたいだから距離を置いたら……名前が焦って必死に繋ぎ止めようとしてくれればいいな、と思ってたのに……オマエと来たらっ!!
連絡諦めるし、連絡してこない」
ガブっ、と再び肩を思いっきり噛み付かれる。
痛い痛い痛い。
すぐに離してくれるが、本当に痛い!!
ヒリヒリしてるが大丈夫!?出血してない!?
「久しぶりに会って謝ってすがり付いてくると思ったら何事も無く普通だし。自然消滅させるし。あの後輩の言いなりになって本当に別れようとするなよ」
「ごめんなさい!!」
傑の勢いに負けてしまうが……。
つまり?
「……私、試されたの?」
「自覚させただけだよ。
私の事を好きなくせに一線引いて我慢しているのを壊したら私に堕ちないかな、と思って」
「……最低だ!!」
「名前がね。
私に殺されると思ってびくびくしながら付き合っていたって事だろ?
傷付いたな……」
「それは……その、ごめんなさい…」
「けど、大好きって思ってくれていたんだ?」
ニヤリ、と笑う傑。
「嬉しいよ」
「……サイコパスだっ」
「人殺しになられるのは怖いが、私が人殺しでも側に居たいと思ってくれるんだろ?」
「それとこれとは話が……」
「嫌われていない筈なのに、毎回周りとくっつけようと手回ししながら離れようとするから何か理由があるのかと思っていたが……まさか殺人犯扱いされてるとは思っていなかったけど、良かった。
私が手離さなければ名前は私から離れないということがわかったから」
何言ってるんだ?と頭を傾げる。
傑はニコリ、と笑って私を抱き締めた。
「気持ちが無くなり離れようとするならどうしてやろうかと思ったけど……思っていたより私は愛されていたみたいだからね」
「……いや、受け入れんなよ。
そこは普通、怒るとこでしょ」
「そうだね。気持ちが無いなら怒っていたけど……私が大好きなんだろう?」
小首を傾げて覗き込んでくる傑。
ニヤニヤと笑う顔にイラッとするが……
格好いい。エロい。
顔が熱くなり視線を逸らそうとするが、顎を捕まれているから目だけ。
「逸らすな。私を見ろ」
やだ、教祖様出てますやん。
ゆーっくり視線を戻せば……嬉そうに笑う傑。
「私が名前を殺すとしたら、私への気持ちが一切無くなった時だよ。
他の男に渡って私以外の男と幸せな人生を送る
のは耐えられないからね」
「重っ!!」
「だから安心して私に堕ちなよ」
にこにこ笑いながら引っ付いてくる傑。
私が一生懸命悩んでいた事は傑にとってわりとどーでも良くて……
怒っていたのは連絡しなかった事。
寛大だと思えばいいのか
行き過ぎた愛情に怯えればいいのか……。
この後の展開に緊張しながら傑を見つめるとクスリ、と笑って額にキスをしてくれる。
色気たっぷりな傑に久しぶりにドキドキと胸が高鳴る。
そのまま、一緒にベッドに寝転び服の中に手が…………入らない。
タオルケットを掛けられて横になるだけ。
「………おや?」
「何?」
「お仕置きされるのかと思ってた」
「気分じゃない」
「………」
「今日はゆっくり名前と寝たい」
てっきり抱き潰されるコースだと思っていたのに……拍子抜けだ。
私だけが発情してるみたいで恥ずかしくなる。
寝かしつけのようにポンポンとされる。
本当に寝るだけの様子だ。
「本当はぐちゃぐちゃに抱き潰したいんだけど」
「お、おぅ……」
「時間がたっぷりある時にするよ」
「………シないの?」
「……可愛い顔して誘ってる?
けどダメ。今日はシない。それが罰」
「……当たってますが?」
「……シない。
これでも少し、安心して気が抜けてるんだよ」
「?」
ぎゅっ、と抱き締められる。
「名前から私の事を好きだって言って貰えて……別れたくないって思って貰えて嬉しいんだよ」
小さな小さな呟き。
「愛してるよ、名前」
額に唇を押し当て……秒でスースーと寝息が聞こえてくる。
え?もう寝たの?と思って顔を覗き込むが……本当に寝ていた。
「まじか」
寝不足や疲労が酷そうだと思っていたが……そんな突然落ちるレベルだったの?
疲れた顔をして眠る傑のお団子を解いてやる。
全く起きる気配も無く、おちんちんを微妙に硬くしたまま寝てしまった傑。
「………うぅぅっ」
欲を発散出来なかった熱と
傑からのピュアな一面と
子供のようにスヤスヤ眠る姿にムラムラとモヤモヤとキュンッが私の中で渦巻いている。
何だ、この可愛い生物は!!!!
「……沼るっ」
ハマりたくないが、ズブズブと沼に堕ちていく感覚に胸の高鳴りが止まらない。
ムラムラを抑え、傑の腕枕でいい位置を探し出来る限り傑に引っ付いて目を閉じて私も眠ることに。
「おやすみ、傑」
ひとまず仲直り……で、いいんだよね?
久しぶりの傑に健全に抱かれながら眠りにつく。
ムラムラは収まらないが、胸の中は幸せで満たされた。
あとがき
なぜかヤンデレに突き進む。
五条の連載も夏油の連載も直哉の連載もヤンデレにいってしまう謎。
なんでキャラ、ヤンデレるん?
勘違いしてる二人。
食い違いを書くって楽しいが難しい……。
・幼馴染ちゃん(サイコパスの姿)
試されていた!?いや、その……人殺し(教祖)の事怒ってないなら良かった……良かったのか?
ヤンデレ悪化してないか?
まぁ……好き、好きですよ。好きですけど何か上手く丸められた?それでいいの?
幼馴染兼彼氏が可愛いし格好いいしエロいしで満点を上げたいからいいか。
・傑くん(サイコパスの姿)
怒っていたのは連絡無いことだよ(プンプン)
後輩うざい(プンプン)
自然消滅って納得するな(プンプン)
へー、私のこと人殺しだと思って一線置いていたのか……まぁ、間違いじゃないしな。(任務で見殺している=人殺しの考え)
殺さないよ?私の元からいなくなるなら考えてしまうけど、君は私が大好き(ハート)なんだもんね!
私が手離さなければ離れないと分かったのはラッキー。当初の目的(追い縋ってくれる)とは違ったけど、これはこれでよし。
後輩に邪魔されずやっと安眠できる(ぐっすり)
お仕置きは後日(力を 溜めている)
・水瀬 朋(当て馬の姿)
七海と灰原と同期。傑に一目惚れ。
彼女の存在は知っていたから諦めて可愛い後輩で居ようと思っていたのに彼女がイケメンなおじさまとイチャイチャしていて激写。
もうこれは私が傑先輩を幸せにするしかないと襲いかかっていくレベルで頑張った。
悪い子ではない。
欲望に素直なだけ。
ちなみに漫画の事は何も知らない。
ごめんね?
……謝る気も無いのに謝るなって言われそう。
好きだよ?
……ご機嫌取りしようって思っていないか?と言われそう。
愛してる?
……随分と軽いスカスカの愛してるだねと言われそう。
つまり、私の手持ちのカードは無い。
考えてみたら傑との喧嘩は全て拳で語り合ってきたし、なんなら体を繋げるようになってからは喧嘩らしい喧嘩なんてしていない。
傑が距離を置こうとするほど怒った事が無い。
硝子ちゃんと華ちゃんにはどうにかしろと言われたが……そもそも傑が何に怒ってるのかわかっていない。
わからないのに謝っても火に油を注ぎ込むだけだ。
とりあえず一つずつ考えてみよう、と傑の言葉を思い出す。
〜全て終わった後に知る私の気持ちも考えてくれない。信用されていない。
……どんなに名前に私の気持ちを伝えても信じようとしてくれないなら、頼ってすら貰えないなら私はキミに必要無いんじゃないのか?
キミの考えが分からない〜
報・連・相をしなかったのは私が悪い。
けど私で解決出来たことだった。
そして傑も基本報・連・相はない。
自分の事は棚に上げて私には怒る……理不尽!って思ってしまうのは私がひねくれているからか?
傑より劣るとはいえ……私は何も出来ない子供じゃない。
傑に全て解決してもらわなきゃ駄目なレベルに落ちてしまったわけじゃない。
むしろ信用してないの傑じゃね?
私は傑の子供か?子供なのか?バブちゃんかよ?
オマエに面倒見て貰わなきゃいけないほど幼稚だと思われてんの?我、精神年齢上だぞ?
イライラしてきた。
だが落ち着け、私はクールな女だ。
報・連・相は大人として当り前のルールだ。
それが出来なかった私はあの時確かに冷静では無かったし、いっぱいいっぱいで忘れていた。
出来る女の私はその愚かさを認めよう。
報・連・相の出来なかった大人だと認めよう。
忘れていました、は社会じゃ通じないからね!
で、だ。
事後報告ではあったが報告したよね。
連絡と相談はしなかったけど……傑は私の取締役じゃ無いので。
無事終わった事愚痴らないでくれ。
こっちは最善を尽くしたんだ。
宛てに出来ない彼氏にどう連絡と相談しろと?
……いや、まて。
傑が忙しいと決めつけてしまい元々頭に無かった。むしろ当てにして負担を増やすことを良しと思わなかったが……実はそれが良くなかった?
私に置き換えて考えてみよう。
傑が男と揉めて……この時点で傑が勝つ未来しか見えないな。むしろ私よりも上手く切り抜けたり暴力で全て解決した後、事後報告を受ける私。
………傑何してんの!?しかなんねーわ。
やり過ぎた相手大丈夫!?って相手の心配してしまうわ。
逸れた。で、相談しなかったのは私が忙しく?て負担になると思って、と理由を付けられたとしたら。……うーーん、ちょっとイラッとくる?かな?
当てに出来ないと決め付けられ解決されたとしたら……うん、イラッとするかなぁ。
傑よりしてあげられる事は確かに少ない。
傑の方が良い解決方法を見出だしそう。
それはそれでいいんだが……少しは頼られたいな、と思ってしまうかもしれない。
当てに出来ないということは
信用出来ない、頼れないと決めつけて最初から選択肢の中にいない存在として扱っているのだから反論なんて出来ない。
傑が嫌な思いするのは当然で
報・連・相もせず、当てにされないなら怒る……か。
で、次。
傑の想いを信用してない。
これはアレですよ。
未来の呪詛師のお言葉を信用出来るか?
できませーーーん!!!
で、き、まっっっせーーーーん!!
と、頑なに思っていましたが……華ちゃんと硝子ちゃんにクソ扱いされてしまいました。
殺人犯と思いながら付き添うヒロインごっこクソ野郎が何言ってんだよって怒られちゃいました。
そりゃそーですよね……ごめんなさい。
あんな重い想いを信用出来ないとか嘘だよ。
重すぎて逃げ出してます。
なのに離れるのは嫌だと傑に甘えて引っ付いていたのは私なのでこれは私が本当に最悪でクソ野郎。
反省しております。
原作や未来ばかりを気にして今の傑を見ていなかった。これは五条の事を何も怒れないじゃないか……ごめんよ、五条。
君の方が傑をよく見て、よく知っているよ。偉そうに説教しておいて本当に……。
で、私に傑はいらないか?
答え:こんな身体にしておいていらないわけがない。
傑以外で満足出来ないのにいらないって簡単に言えてしまえれば良いが………うん、無理!
私の考えがわからない?
奇遇だね、私もわからないんだよ!!
………。
これ、全面的に私が悪いのでは?
私が悪いわ。
庇って貰えるって何で思った?
傑が怒るのも無理無いわ。本当にごめんなさい。
頭を抱えて布団に転がる。
こりゃ周りが傑を可哀想だと思って私がクソ扱いされても仕方がねぇ!!!
さて………自分がドブカスだったと理解をした上で傑に謝る。
かなり上級コースじゃん?
あれからもう三週間よ?
怒りすぎて下手すりゃ自然消滅狙われてる?
普通の人々は距離を置こうっていわれたらどーしてんの?
距離を置こう=別れ話って事だった?
考えがまとまらないのでコンビニまで散歩しながら頭冷やして考えよう、と財布と携帯を持ち外に出る。
薄暗い道は人気がない。
静かな道は虫の声がよく聞こえる。
今、か。
今の傑の事を考えていないと言われると考えていなかったし、自分の事ばからで今の傑を見ていなかった。
未来や過去の事を言い訳にして逃げている。
付き合い始めは丸め込まれたとしても……そこから付き合い始めたのは私の意思だ。
そして今も離れられず理由をつけては傑の側に居ようと必死に考えている。
切り捨てるという考えは無い。
仲直りはしたいし、側に居たい。
いつの間にか私は傑と居るのが当たり前になっていて……離れようと思っていたのに、離れられなくなっていた。
魅力的な傑に私なんか勿体ないと思って、どうして傑が私に執着するのかわかろうとするのを拒んでいた。
……受け入れてしまえば"幼馴染"としての私の価値は"彼女"へと変わり……"非術師"だからという理由だけで切り捨てられるのが嫌だったから。
わからないフリをしとけば、"幼馴染"の私の価値があるんじゃないかと……。
切り捨てられない為に傑にとっての抑止力にならないか、と思ってしまった。
彼女はいつでも切り捨てられるが
幼馴染なら……心のどこかに引っ掛からないかな、と。
どちらの価値が高いなんて傑にしかわからないだろうが……
幼馴染として過ごした私。
彼女として過ごした私。
どちらも同じだが、別々な存在でありたかった。
そう思うが、傑が私のドブクソな性格に呆れて手離されるのならそれは仕方ない事だと受け入れるつもりでいる。
結局私は傑に判断を委ねたいのだろう。
自分から動いて何かが変わるのが怖いから、傑の出方を伺っている。
傑任せで逃げ道を探している。
それじゃ駄目だとわかっていても……いざ行動に移せる根性が無い。
これじゃ誰から見ても傑を好きになろうとしているが好きじゃないと言われて当然だ。
自分のやらかしてしまった重大さに頭が痛い。
許してください、なんて都合が良すぎる。
土下座でもすべきか?
それともやっぱり別れた方が傑の為になるか……。
私の脳ミソでは最適な答えが出ず悶々とするしかなかった。
コンビニについて適当に雑誌を立ち読みする。
ふむ、彼氏とのエッチな事情赤裸々告白とな?
若い子向けの雑誌ってファッションだけじゃなくこーゆーお年頃のお悩み特集もあるのね。
どうせなら仲直り方法の特集してくれよ。
さっと目を通すが特に興味が湧かない。
私、モデル雑誌より漫画の週刊誌のが好きだし。
雑誌を戻してお菓子と飲み物を吟味していたら若い声が聞こえる。
楽しそうにキャッキャとしていてこんなとこに若いカップル居るんだなーと思いながらレジへ。
お金を支払おうとレジにお金を置くが、店員がミスってお金を落としてしまった。
「すいません!」
「大丈夫ですよ」
コロコロ転がるお金を目で追う。
黒い靴にお金が当り、誰かが拾ってくれた。
「すいません」
「いえ、どう………」
「?」
不自然に途切れた声に、お金しか見て無かった私が顔を上げたら……傑がいた。
そしてひょっこり顔を出す可愛い女の子。
「傑先輩?」
「………」
「お金、ありがとうございます」
女の子にジロッと見られたぞ?
お金を受け取ろうと手を差し出すがなかなかくれない。
店員さんが困っておるぞ。
しゃーない、とお金を諦めて先に支払いをしてしまおう。
「ごめんなさい。これで」
「こちらこそ大変申し訳ありませんでした!」
隣に立つ黒い巨体がお金を差し出して来たので受け取る。
まさかのエンカウントに顔には出さないが……うん、ドッキドキやで?
華ちゃん、想定外な人物居るなら教えてくれよ。私聞いてないんだが?
しかもめっちゃ傑の腕に絡み付いたまま睨まれてるんだが?
私この子と初対面だよな?
この場合一体どうすべき?
教えてくれよ。りっちゃぁぁああんっっ!!!
心の友に叫ぶが、りっちゃんは笑顔でグッドラックと親指を立てていた。
何故か無言で後ろに並ぶ傑と後輩ちゃん。
さっさと袋持って立ち去ろう。
頭整理するはずが頭パニックなんだが?
コンビニの外に出て一息吐く。
きっっっまず!!!!
「あれ?名前じゃん」
「……五条さん」
「今傑コンビニ行かなかった?」
「いましたよ。後輩っぽい子と」
「ふーん。今から帰んの?」
「散歩がてら寄ったので」
あと出来るならさっさと帰りたい。
こちとら諸々の準備が出来ておらずパニックなんだが?
さっさと謝れって?
今、この状況で?
ハードじゃん。上級コースからエベレストコースなんだが?
とかやっていたら後ろのドアが開く気配にドアの目の前に居たら邪魔か、と横に避けた。
そしたらやはり腕を組んだ後輩ちゃんと傑。
バッチリ視線が噛み合ってしまう。
「悟先輩!どーしたんですか?」
「おっせーよ。硝子に様子見てこいって追い出された」
「先輩達が色々頼むからじゃないですか!!」
「はいはい」
わー、青春してんなぁ。
学生って感じがするぅ。
って一人現実逃避してみる。
さしす+αの学生時代を妄想するのは楽しいし、聞くのも楽しいが……そこ、に居られない私は部外者だから肩身が狭い。
私、いつもどーやって話聞いていたかなと思うと情けないやら、聞きたくないやらで此処に居る意味あるか?と思う。
私の知らない内にヒロインが登場していて、邪魔なモブ(私)はお払い箱だ。
距離を置こう=別れ話だったんだな、やっぱ。
帰るか……と歩き出す。
「名前」
久しぶりに声聞いたなーと、立ち止まる。
「何か言う事は無いか」
あるよ。
あるけど……今口を開けばひねくれた考えしか出て来ない。
傑は悪くないし、これは……私の一方的なヤキモチだ。
八つ当たりなんてした日には私はドブクソからウンコクズとなり社会の粗大ゴミとなる。
傑の顔を見れば何か言いたげに顔を歪めているし、後輩ちゃんは視線だけで人殺せるんか?ってくらいギラついている。
なのに傑の腕からは離れないので、あの子が傑を救う救世主なのかな……と思う。
五条はよくわからん真顔でじっと見てくるし。
「傑」
「………何だい」
「顔色が悪い。しっかりご飯食べて寝なよ。
君達は身体が大事なんだから」
じゃあ、と今度こそ帰ろうとしたのだが
突然身体を引かれて倒れ込む。
尻が痛い。
何事だと顔を上げれば後輩ちゃんの姿。
え、何?と思っていたらバチーーーンッと頬を叩かれた。
無茶苦茶痛ェ。
「水瀬!!」
「浮気者の癖にっ!!傑先輩を弄ぶならさっさと別れて下さいよ!!」
「オイオイ何してんだよ水瀬」
「アンタのせいで傑先輩がどれだけ傷付いているとっ!!」
よくわからんがキレられた。
棒立ちの傑とまぁまぁ、と止めに入る五条。
ぶちギレて罵倒する初対面の女の子。
えーっと?今のキレる要素ありました?
そして、オマエ私が傑の彼女だと知っていながら腕に張り付いていたのか後輩ちゃん。
「ちょっと乳がデカイからっていい気にならないで!!傑先輩は貧乳派なんだから!!」
「水瀬」
「傑先輩とのエッチが気持ちいいから手離したくないなんて理由、傑先輩可哀想!!」
「水瀬、落ち着けよ」
「傑先輩のエッチは確かに気持ちいいけど、エッチだけが目的ならさっさと別れなさいよド変態!!」
「え、傑水瀬に手出したの?」
「違う!!」
………どーゆー状況?
私後輩ちゃんにキレて良いのでは?
つか傑手出したの?
いや、自然消滅狙って距離を置かれている私に傑を怒る立場は無いのでは?
実際グダグダと連絡取らなかったのだから、自然消滅だと思われて他のヒロインに気持ちがいっても不思議じゃないし。
私が全面的に悪いので怒れない。
「あー……ごめんなさい」
「何の謝罪ですか?」
「傑が何で怒っていたかわからなかったから落ち着いて話せるまで言葉通り距離を置いていたけど……自然消滅じゃハッキリしなくて新しい彼女には気分良くなかったですよね。
彼女面して申し訳ありませんでした。
連絡先も消すし私からは連絡しませんので」
悪役令嬢ポジションかよ、私。
確かにヒロイン出てきたら私悪役令嬢ポジションだわ。
なるほど、これが断罪イベントですか。
「夏油さん、今までありがとうございました。
最後まで察しの悪い女で申し訳ありませんでした」
「待っ」
「では失礼。さようなら」
悪役令嬢はここで悪足掻きするとよろしくないバッドエンドしかないはずだ。
なら悪足掻きせず受け入れてしまった方が良いだろう。
お尻の砂利を払い立ち上がる。
冷蔵庫に冷えピタあったかな……無さそうだからコンビニで買うか。
コンビニの店員が凄い顔をして見ているが、冷えピタを探していれば傑が慌てて中入ってきた。
無視してレジに持っていけばめっちゃ店員に見られてる。
お金を支払おうとしたら傑がお金を出して冷えピタと私の腕を掴んで外に出る。
すげー怖い顔をしてる後輩と、ニヤニヤしてる五条がいる。
「すまない。痛かったろ」
「………」
頬に冷えピタが貼られる。
何故か傑が泣きそうなんだが。
「別れない」
「は?」
「水瀬とは本当に何もしてない。意地張っててこんな事になってごめん。別れてない」
「意味わからない」
「やだ。別れたくない」
駄々っ子のように抱き着いてきた傑。
おかしいな?さっきから私は何に巻き込まれているんだ?
「距離を置こうって言ったのは私だけど自然消滅してない。別れない!!」
「ん?」
「ちょっと私の事気に掛けて欲しかっただけなのに本当に距離置かれて名前は平気そうだから不安だった!!」
「あの…」
「何で連絡しないんだ。何で落ち着く。何で距離を置いたら自然消滅という思考回路になる!?
女と腕組んで居るなら妬くだろ!!疑うだろ!?
私は!!ただ!!名前に追われたかったのに!!」
「…えーっと」
「誰も私の顔色の悪さなんて気付かなかったのに何で気付く!?好きだ!!」
「普通に気付くよ。目の隈あるし、疲れた顔してるし」
「名前が居なきゃ駄目なのは私の方だよ……やだ、別れない。ごめん。本当にごめん」
「傑先輩!!何で非術師なんかに構うんですかっ」
「黙れ」
「黙りません!!傑先輩は私と居た方が幸せになれます!!」
劇団呪術の新喜劇かな?
ボーッと見ていたら隣に五条が立つ。
「大変そうだね」
「私は新手のコントに巻き込まれてしまったのでしょうか?」
「お疲れ。硝子呼ぶ?」
「……いや、いいです。
元は私が悪いので家入さんも治してくれませんよ」
後輩ちゃんと言い合う傑。
「ところであの子は?」
「俺らの一個下。水瀬 朋。
傑に一目惚れしたみたいであぁなんだよ」
頬がジンジンする。
やっぱ呪術師のヒロインとバトルって無理だよ。圧倒的に力強すぎじゃん。頬抉りとられたのかと思ったわ。
それより私頬叩かれ過ぎじゃね?
そんなに叩きやすい?
「本当にごめん、名前。
頬、硝子呼ぶから治してもらおう」
「痛いけどいい。家入さんや竈門さんから怒られたのにグダグダしていたの私だから」
「硝子と華が?」
「傑は悪くないから気にしないで。
……私こそごめんね。
傑の事ちゃんと考えていなくて」
「喧嘩の事と水瀬の事は別だろ。
いや、意地張って水瀬の事好きにさせておいたから私のせいだ……すまない」
目尻を下げてオロオロする傑。
自分の方が痛そうにする姿が面白くて、可愛らしくて、愛おしい。
……硝子ちゃん、華ちゃん。
やっぱ私傑が好きだよ。
「何笑っているんだ?」
「……傑が好きだなぁ、って思って」
「………っ」
「ごめんね、傑。大好きだよ」
屈んで頬に手を当てていてくれた傑に背伸びして己の唇を押し当てる。
目を見開き耳を赤くした傑は抱き着いてきた。
「私も好きだよ。別れたくない」
「私でいいの?自分で言うのもアレだけど私かなりドブクソだよ?」
「名前が酷いのは今に始まった事じゃないから気にしていないさ」
ぎゅーぎゅー抱き締められて首筋にすり寄る傑。
可愛いらしい甘えたな姿に頭を撫でてしまう。
「イチャイチャすんのもいーけど俺いるからな。買い出しの物持ってくぞー」
「よろしく、悟。
私は名前送り届けてくるよ」
「傑先輩!!」
「送り狼になんなよ」
ギャーギャー騒ぐ後輩ちゃんを引きずって行く五条。
騒がしかったな……と思いながら見ていたら傑に手を引かれて歩き出す。
「名前」
「なぁに?傑」
「家、行ってもいい?」
「外泊届けは?」
「朝帰れば問題無いさ」
おじぃちゃんもおばぁちゃんもぐっすり眠っていたので静かに2階へ。
傑がベッドに座り、両手を広げるので抱き着いて膝の中に座る。
「寂しかった」
「私も」
久しぶりの傑の匂いをいっぱい吸い込む。
今まで気にしたことは無かったが、異性の匂いが嫌じゃなかったり好きだなと思う場合……遺伝子レベルで相性がいいって聞いたような。
フンフンと犬のように嗅いでたらクスクス笑う傑の声に、夢中になりすぎたと恥ずかしくなる。
「何していたんだい?この三週間」
「特に何も無いよ。
あ、家入さんと竈門さんと喫茶店行ったくらいかな」
「あの二人と連絡とってたのかい?」
「傑の八つ当たりが酷いから浮気したのか?って拉致られた」
「あぁ…うん、なるほど」
思い当たるフシはあるのだろう。
気まずそうに視線を逸らす傑。
「……本当にごめんね、傑。
傑の事、ちゃんと考えていなくて。
傑はいつも私の事大事にしていてくれたのに……私、自分の事しか考えてなかった」
「名前……。名前が自分勝手なのは今更だから気にしていないさ。
私こそ悪かった。
いつもいつも私ばかりが好きでいるみたいで……名前からも好かれていると試したかったんだ」
ちゅっ、ちゅっ、と首筋に何度も軽く触れるだけのキスをしている傑。
所々棘がある言い方をされるが、こればかりは仕方ない。
好きにさせておいたが、突然ガブリと歯を立てられて痛みに跳び跳ねる。
「い"っ」
「なのに離れてみたら名前は平気そうだし、私の知らない男と会ったりこの家に出入りさせてみたり、私じゃなくその男を頼って解決して……名前は私を妬かせる天才なのかな?」
「あれ?待って待って待って?
仲直りからのイチャイチャな雰囲気どこいった?」
「連絡を何度か無視しただけで諦めて連絡も無く、本当に言葉通り距離を置くし……。その間に私は意味のわからない勘違い女の相手をさせられ、周りは面白がってくっ付けようとするし、挙げ句の果てには夜這いされて寝不足の日々を過ごす中………名前は硝子と華と連絡を取って楽しいお茶会をしていたんだね」
「お、おぉ………」
どんどんと肩に食い込む歯が痛いなぁ……。
どんよりと据わった目をした傑の瞳とかち合う。
あっっれぇぇええええ????
思っていた仲直り(キラキラ)と違うぞ?
仲直り(ギラギラ)になってるぞ?
「硝子と華に怒られた?そりゃそうだろうね。
どう考えても名前のがクズだから」
「は、ハッキリ言うね……」
「名前が私を好きだけど完全に堕ちずに一線引いている事は分かりきってるんだよ。
けど私は名前がいいからそんな事にイチイチ腹を立てるのはもう諦めてるからお仕置きはするが気にしてない」
「え?じゃあ何で怒ってたの?」
「連絡してこないことに怒ってたんだよ。あと、あの後輩へのイライラ」
嘘だろ。
私真剣に真面目に頭巡らせて反省していたのに、怒ってんのそこ!?
「あの……報・連・相をしなくて、当てにしなくて、傑の事殺人犯扱いしていた事を怒っているんじゃ?」
「は?殺人犯扱いって何」
「あー……私が、その……いつか傑が殺人しそうだな、と思って……その……距離を置いて…」
「………それが私と一線引いている理由?」
「傑、頻繁に闇堕ちするから……可能性の一つとして……えーっと、その…」
さっ、と目を逸らす。
が、顎を捕まれて無理矢理戻された。
「私がいつか人殺しになるかもしれないから一線引いていたのか」
「……ひゃい」
「へぇ……名前はずっとそう、思ってたんだね」
「ひゅいまへん」
お、怒っておられる!!!
そりゃ、そーだよな……。
恋人から殺人犯扱いされつつ、恋人としてビクビク隣に居られたなんていい思いしないよね。
「怒ってないよ」
「へ?」
「学校のいざこざ報告してくれたろ。
名前は私を頼らなくても元々やれば出来るんだから、相談されなくてイラッとしたが私も任務や地方に行ってたからね……自力で解決出来たなら何も思って無いよ。イライラするけど」
「あ、うん?」
「犯罪者扱いもイラッとしたけど怒ってない」
「え?じゃあ何であんな怒って距離を置こうとしたの?」
「言ったろ。
私ばかりが好きみたいだから距離を置いたら……名前が焦って必死に繋ぎ止めようとしてくれればいいな、と思ってたのに……オマエと来たらっ!!
連絡諦めるし、連絡してこない」
ガブっ、と再び肩を思いっきり噛み付かれる。
痛い痛い痛い。
すぐに離してくれるが、本当に痛い!!
ヒリヒリしてるが大丈夫!?出血してない!?
「久しぶりに会って謝ってすがり付いてくると思ったら何事も無く普通だし。自然消滅させるし。あの後輩の言いなりになって本当に別れようとするなよ」
「ごめんなさい!!」
傑の勢いに負けてしまうが……。
つまり?
「……私、試されたの?」
「自覚させただけだよ。
私の事を好きなくせに一線引いて我慢しているのを壊したら私に堕ちないかな、と思って」
「……最低だ!!」
「名前がね。
私に殺されると思ってびくびくしながら付き合っていたって事だろ?
傷付いたな……」
「それは……その、ごめんなさい…」
「けど、大好きって思ってくれていたんだ?」
ニヤリ、と笑う傑。
「嬉しいよ」
「……サイコパスだっ」
「人殺しになられるのは怖いが、私が人殺しでも側に居たいと思ってくれるんだろ?」
「それとこれとは話が……」
「嫌われていない筈なのに、毎回周りとくっつけようと手回ししながら離れようとするから何か理由があるのかと思っていたが……まさか殺人犯扱いされてるとは思っていなかったけど、良かった。
私が手離さなければ名前は私から離れないということがわかったから」
何言ってるんだ?と頭を傾げる。
傑はニコリ、と笑って私を抱き締めた。
「気持ちが無くなり離れようとするならどうしてやろうかと思ったけど……思っていたより私は愛されていたみたいだからね」
「……いや、受け入れんなよ。
そこは普通、怒るとこでしょ」
「そうだね。気持ちが無いなら怒っていたけど……私が大好きなんだろう?」
小首を傾げて覗き込んでくる傑。
ニヤニヤと笑う顔にイラッとするが……
格好いい。エロい。
顔が熱くなり視線を逸らそうとするが、顎を捕まれているから目だけ。
「逸らすな。私を見ろ」
やだ、教祖様出てますやん。
ゆーっくり視線を戻せば……嬉そうに笑う傑。
「私が名前を殺すとしたら、私への気持ちが一切無くなった時だよ。
他の男に渡って私以外の男と幸せな人生を送る
のは耐えられないからね」
「重っ!!」
「だから安心して私に堕ちなよ」
にこにこ笑いながら引っ付いてくる傑。
私が一生懸命悩んでいた事は傑にとってわりとどーでも良くて……
怒っていたのは連絡しなかった事。
寛大だと思えばいいのか
行き過ぎた愛情に怯えればいいのか……。
この後の展開に緊張しながら傑を見つめるとクスリ、と笑って額にキスをしてくれる。
色気たっぷりな傑に久しぶりにドキドキと胸が高鳴る。
そのまま、一緒にベッドに寝転び服の中に手が…………入らない。
タオルケットを掛けられて横になるだけ。
「………おや?」
「何?」
「お仕置きされるのかと思ってた」
「気分じゃない」
「………」
「今日はゆっくり名前と寝たい」
てっきり抱き潰されるコースだと思っていたのに……拍子抜けだ。
私だけが発情してるみたいで恥ずかしくなる。
寝かしつけのようにポンポンとされる。
本当に寝るだけの様子だ。
「本当はぐちゃぐちゃに抱き潰したいんだけど」
「お、おぅ……」
「時間がたっぷりある時にするよ」
「………シないの?」
「……可愛い顔して誘ってる?
けどダメ。今日はシない。それが罰」
「……当たってますが?」
「……シない。
これでも少し、安心して気が抜けてるんだよ」
「?」
ぎゅっ、と抱き締められる。
「名前から私の事を好きだって言って貰えて……別れたくないって思って貰えて嬉しいんだよ」
小さな小さな呟き。
「愛してるよ、名前」
額に唇を押し当て……秒でスースーと寝息が聞こえてくる。
え?もう寝たの?と思って顔を覗き込むが……本当に寝ていた。
「まじか」
寝不足や疲労が酷そうだと思っていたが……そんな突然落ちるレベルだったの?
疲れた顔をして眠る傑のお団子を解いてやる。
全く起きる気配も無く、おちんちんを微妙に硬くしたまま寝てしまった傑。
「………うぅぅっ」
欲を発散出来なかった熱と
傑からのピュアな一面と
子供のようにスヤスヤ眠る姿にムラムラとモヤモヤとキュンッが私の中で渦巻いている。
何だ、この可愛い生物は!!!!
「……沼るっ」
ハマりたくないが、ズブズブと沼に堕ちていく感覚に胸の高鳴りが止まらない。
ムラムラを抑え、傑の腕枕でいい位置を探し出来る限り傑に引っ付いて目を閉じて私も眠ることに。
「おやすみ、傑」
ひとまず仲直り……で、いいんだよね?
久しぶりの傑に健全に抱かれながら眠りにつく。
ムラムラは収まらないが、胸の中は幸せで満たされた。
あとがき
なぜかヤンデレに突き進む。
五条の連載も夏油の連載も直哉の連載もヤンデレにいってしまう謎。
なんでキャラ、ヤンデレるん?
勘違いしてる二人。
食い違いを書くって楽しいが難しい……。
・幼馴染ちゃん(サイコパスの姿)
試されていた!?いや、その……人殺し(教祖)の事怒ってないなら良かった……良かったのか?
ヤンデレ悪化してないか?
まぁ……好き、好きですよ。好きですけど何か上手く丸められた?それでいいの?
幼馴染兼彼氏が可愛いし格好いいしエロいしで満点を上げたいからいいか。
・傑くん(サイコパスの姿)
怒っていたのは連絡無いことだよ(プンプン)
後輩うざい(プンプン)
自然消滅って納得するな(プンプン)
へー、私のこと人殺しだと思って一線置いていたのか……まぁ、間違いじゃないしな。(任務で見殺している=人殺しの考え)
殺さないよ?私の元からいなくなるなら考えてしまうけど、君は私が大好き(ハート)なんだもんね!
私が手離さなければ離れないと分かったのはラッキー。当初の目的(追い縋ってくれる)とは違ったけど、これはこれでよし。
後輩に邪魔されずやっと安眠できる(ぐっすり)
お仕置きは後日(力を 溜めている)
・水瀬 朋(当て馬の姿)
七海と灰原と同期。傑に一目惚れ。
彼女の存在は知っていたから諦めて可愛い後輩で居ようと思っていたのに彼女がイケメンなおじさまとイチャイチャしていて激写。
もうこれは私が傑先輩を幸せにするしかないと襲いかかっていくレベルで頑張った。
悪い子ではない。
欲望に素直なだけ。
ちなみに漫画の事は何も知らない。