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通行人が高専に通ったら 4
一年の七海くんと灰原くんと派遣された二級任務。
しかし、目の前には明らかにレベチの呪霊。
驚く一年の襟を引っ張りダッシュで逃げた。
ヤバイ。
アレはヤバイヤバイヤバイ。
「先輩っ」
「喋んな舌噛むぞさっさと足を動かせ!!」
「先輩!!後ろからっ」
「黙って走るよ!!」
カッコ悪い?
そんなもん関係あるか!!
自分達の力量をわかった上でアレには敵わないと私の第六感が告げている。
山道を走って走って走って
目の前は崖。
「ヤックルどこ!?私の体力ヤバイ!!」
「先輩こそフザケナイでください!!」
「タタリ神に触れてはならぬ!!」
「先輩実は余裕ですか!?」
余裕ねーからおかしくなってんだよ!!
三人で覚悟を決めて飛び降りる。
ヤバい呪霊は山の上から獲物を逃したと佇んでいた。
山道を転げ落ちながら三人で帳の外に転がり出た。
驚く補助監督が帳を消そうとしたのを三人で声を張り上げて止める。
「「「消すな!!!」」」
あまりの迫力にチビりそうだったと当時の補助監督は語る。
こっちも必死だったから察してくれ。
「お疲れ。大変だったみたいだね」
前髪が苦笑しながら見舞いに来た。
私達三人は無事だった。
火事場のなんとやらで痛みすら気にせず山道を転げ落ちた結果………
灰原は肋骨を三本骨折、打撲。
七海は頭部打撲に腕骨折。
私は……全身打撲に足にヒビ。
今考えたらよく生きてたな、私達と三人で笑いあった。
ちなみにあのヤバそうな呪霊は白髪が引き継いだ。
「ヤバくない?
山道をノーガードで転げ落ちたらこうなる」
「普通は死ぬよ」
「まさか崖飛び降りて逃げ切れるとは思って無かった」
「凄いね」
「結果、帳の外で動けなくなったけど」
報告後、安心した後に襲ってきた痛み。
それにより私達三人は揃って気絶。
気付いたら高専に居た。
「判断が良かったね」
「あんなの一目みたらわかるわ」
ふざけんな。あんなのは命いくつあっても足りない。
それと戦う前髪と白髪はガチでヤバい。
「前髪」
「……なんだい?」
「大丈夫?アンタ」
あまり顔色が良くない。
確かに今年の呪霊祭りは良くない。忙しい。
しかも、三人も怪我したとなれば負担は前髪や白髪へ。
「夏バテさ」
「違うでしょ」
ちょっと、来い。
バシバシベッドを叩けば、遠慮がちに座る前髪。
隈は酷いし、顔色が悪いし、少し痩せた。
何より目付きが違う。
「ゾンビかよ」
「酷くないかい?」
「そんだけ酷いっつってんの」
前髪の額に手を当て熱を測る。
そこまで熱くはない。
じゃあ寝不足か?毛穴開くぞ。
「あまり近付かれると悟が妬いてしまうな」
「何で?あぁ、お前らニコイチだもんな。
前髪取ったら寂しがるとかガキかよ」
「いや、そうじゃなくて……」
「それとも前髪の方が今寂しいのか?」
「………何を、言って」
「オマエ、悟が憎らしいんだろ?」
違った?と声を掛ければ黙り込む。
星漿体任務後から白髪は明らかに実力が違った。
特級任務を軽々とやるし、前髪との任務もなくなり単独任務ばかり。
前髪も勿論強いから単独で任務に行くが……二人で最強、というには実力に差がある。
「………キミには、わからないよ」
私の気持ちなんて。
吐き捨てるように言われた言葉。
冷めた目で見つめる前髪。
しかし、ハッとしたように自分の顔を覆うと立ち上がる。
「……すまない。八つ当たりだ。
ゆっくり休んでくれ」
じゃあ、といなくなろうとする前髪に
私は容赦なくベッドの上から飛び蹴りした。
「ぐふっ」
「おいおいおーい。お話はまだ途中だろ?
なーに一人で終わった気になってんの?」
「いや、キミ……怪我人の癖に何して……」
「アンタさぁ、何大人ぶってんの?
まーだまだケツの青いガキの分際で世界知った気分?」
「………」
「アンタが何を見て、何に悩んで、何をしたくて、迷子みたいに一人で抱え込んでるのか知らんけど」
「………キミには関係無い」
「仲間にすら相談出来ないことって何?」
一応こっちは心配してんだぞ?
「そりゃあ人生色々あるけどさ、一人で全て解決出来ることなんか限られてるし一人で悩むから一人の答えしか出ないじゃん」
「これは私の問題だよ」
「アンタの問題でも、アンタ一人で解決出来てないから悩んでるんでしょ?」
「………それは」
「ほら、ゲロっちまいな。
お姉さんは心が広いから聞いても聞かなかったフリして、一人言のアドバイスしてやっから」
「お姉さんって……同じ年だろ」
「男の固い頭より、女の子の柔らかな妄想豊かな方が答えは出やすいっしょ」
ほらほら、と言えば床に転がったまま動かなくなった前髪。
仕方ない、手助けしてやろう。
「まず、前髪。
自分に心当たり無いならDNA鑑定だ」
「は?」
「心当たりがあってもDNA鑑定は大事だ。もしかしたらオマエが本命じゃないが金目当てにオマエ選ばれた可能性がある」
「……ん?」
「そりゃあオマエさんが好きで趣味に走っても仕方ない。そこをとやかく言う必要はないし、オマエだけじゃなく相手にも問題がある。だって相手もオマエを受け入れたんだから」
「待て。何の話をしてるんだ?」
「あ、相手に旦那はいるのか?それともシングルマザー?」
「ちょっと待て。本当に待ってくれ」
突然起き上がった前髪のせいで、床に転がる。
おい。頭ぶったぞ。
「痛い」
「まず聞かせてくれ。何の話をしているんだ?」
「人妻孕ませてその責任を取らされそうな事に頭抱えてる前髪へのアドバイス」
「なぜそうなった」
「好きだろ?人妻NTRもの」
「違う!!」
アイアンクロー食らった。
頭が痛い。
「あ、じゃあアレか!?
我慢出来ずに幼女に悪戯してしまった!?」
「違う!!」
「えーっと、ナースだと思ってた彼女が実はキャバ嬢だった!!」
「合ってるけど違う!!誰に聞いたそれ!?」
「まじかよ。適当に言ったのに。
んじゃ、実家の親が仲良くて新しく兄弟が出来たから仲良く出来るかわからない、とか?」
「違う!!」
ゼーハーと息荒くする前髪。
「じゃあ何?」
「……キミは非呪術師をどう思う」
「パンピー」
「………そうじゃ、なくて」
「どうも思わないけど?」
「は?」
きょとん、とした前髪。
あれ?何でそんなビックリしてんの?
「キミ……幼馴染や友達、非呪術師だろ?」
「そうだね」
「その人らをどうも思わない?」
「正解に言えば、私の大切な人以外どーでもいい。
勿論幼馴染や友人らは大切だけど、関わりもないようなそこらのパンピーを大切な人と同等の価値は無いと思ってる」
私、そんなに優しい人間に見えるのかな?
「困ってる人に手を差し出すくらいはするかもしれないけど」
「………」
「こっちの世界基準で考えるとしたら……
自分の命と相手の命が天秤にかけられるとしたら……多分私は私の命を選ぶよ。
相手の命が、大切なもの以外なら」
自分の命を掛けてまで、救った命に何の意味がある?
それは自己満足。
「強い奴は選べるかもしれないけど、弱い私は他人を守れるほどの選択肢なんかないわ。
見知らぬ他人の肉壁になれとかそれこそ私の意味って何?
呪術師って弱かったらパンピーの肉壁となって死ぬのが名誉なの?
なら、そんな名誉いらん。
私は自分の命を誰かの為に使うより自分の為に使いたいからね」
「……結果、非呪術師の為に使うことになったら?キミは後悔しないのかい?」
「さあ?
その時の私が選んだのなら後悔しないのかも」
「むちゃくちゃだなぁ」
はぁ、とため息をつき目の前に胡座をかく前髪。
ちらり、と此方を見ては再びため息。
バシバシと自分の膝を叩く前髪に頭を傾げる。
「何?」
「ここに来て」
「やだーエッチなことするつもり!?」
「いいから黙って来い」
「ウ、ウス……」
低い声の前髪に黙って彼の膝に乗る。
お腹に回る腕にビクッとする。
特に何かあるわけでもなく……と思っていたら首に顔を埋める前髪。
「おいっ!!」
「呪霊が不味い」
「へ?」
「非呪術師が好きになれない」
「ん?アンタ守らなきゃ〜っていい子ちゃんムーブかましてなかった?」
「そう、思ってたんだ……いや、思い込もうと言い聞かせてた」
ぎゅっ、と力の籠る腕。
話すたび首筋がくすぐったいが、黙って聞く。
「呪術師を蔑ろにする非呪術師に吐き気がする。
奴らのために仲間が危険に晒され、死んでいくのに奴らが生み出す呪霊は増えていく……
その吐瀉物を絞った雑巾のような呪いを祓って飲み込んでいく毎日に嫌気が出てきたんだ」
「………ふーん」
「ゴールの見えないこの道に積み上がるのは呪術師の屍ばかり」
吐瀉物を絞った雑巾ってなに?
絞る勇気ねーよ。
吐瀉物って普通新聞紙じゃね?
そもそも呪霊って美味しそうだとは思って無かったけど……ゲロなの?ま?
「何が正しいのかわからないんだ」
「ふむふむ」
「……聞いてるかい?」
「うぐっ」
締め上げられた。
おまっ、私も吐瀉物出すぞ。
「アンタって潔癖というか、真面目というか……」
「なんだよ」
「辞めちまえ、呪術師」
「は?」
「呪詛師になれって意味じゃないよ?
非呪術師は嫌いだし、助けたくない。
クソみたいな呪いの塊不味い思いしながら飲み込んでメンタルやられて
自分が今まで信じてきた呪術師を壊したくないなら辞めればいーじゃん」
「そんな……簡単に」
「どっちか選ばなきゃいけないなら、どっちも選ばず捨てなよ。
それでも納得出来ないなら……極論で選ぶしかないね」
「極論?」
「殺すか、見捨てるか」
「………キミって狂ってるって言われないかい?」
「奇行が多いとは言われるかな」
ドン引かれるのかよ。
「私としては見捨てていいと思うけどな」
「その心は?」
「仲間の命見捨てて、見知らぬ奴らの命を助けろなんて私は無理。
それなら一般人見捨てるわ」
「……きっぱりしてるね」
「私、この世界が嫌いでさぁ」
「は?」
「大事なものが少なくて、その大事なもの一つ一つが私の世界なんだ」
家族、幼馴染。
友人も大切だけど、今が楽しいだけで連絡が途切れてしまえば疎遠になる。
私の事情を話せていない。話しても受け入れてくれるのは多分数少ない。
そうなっていくと、本当に大事だと言えるのは家族と幼馴染くらい。
「私の命を掛けて守りたいものが決まってるから、私は迷わないよ」
「……凄いね、キミは」
はは、とから笑いする前髪。
見上げてみれば泣きそうな顔をして笑っている。
「どうすればいいと思う?」
「決めるのはアンタだ」
「厳しいね」
「誰かに言われてその道を進むのは楽だよ。
後悔も憎しみもその人のせいに出来る理由になるから。
でも、アンタはそんな事したくないから悩んでる。
誰かに言われても、選んだのは自分だからって自分を追い込む」
「………」
「だから、呪術師辞めて平和に暮らしなよ。
何も考えず、ゆっくり休んで。
そしてまた考えればいい。
自分がどうしたいのか」
前髪の頭をポンポン撫でる。
身体は大きいのに、迷子の子供みたいだ。
「私は特級だから簡単に辞めさせて貰えないよ」
「平気平気。
その時は白髪に全て押し付けて逃げよ。
親友だとか言いながら親友の様子も気付かずにいるアホにぶん投げろ」
「悟キレそうだなぁ」
「その時はアンタもキレるでしょ。
お前らどっちも短気なんだから」
拳で語り合えよ。男だろ。
そう言えば、困った顔をしながら笑う前髪。
「逃げる時に着いてきて……って言ったら?」
「寂しん坊か」
「あぁ。一人は寂しいよ」
「……仕方ないからお供してあげる。
私の身を守って、金銭面頼むぞ。
そんで……
普通の高校生活しよっか」
「いいね、それ。
愛の逃避行みたいで青春っぽい。
定番の海が見えるような田舎目指すかい?」
「いいじゃん。わかってる」
二人で顔を見合わせ、馬鹿みたいだ、と声を出して笑った。
そして、聞いてくれ。
地味にさっきの飛び蹴りで捻った。
あれ?痛いわ。ヤバい。ズキンズキンしてきた。
「へ、ヘルプ……ヘルプだ、前髪っ!!」
「その前にどけてくれないか?重い」
「乙女になんて事を!!」
「いいから。ほら、退いてくれ」
退いて、なんて言いながら抱き上げてくれる。
携帯で美少女を呼び出してくれた。
「何やった馬鹿」
「ごめんなさい……この子も反省していますので」
「は?」
「さーせん」
治してもらい、痛みは無くなった。
しかし、美少女から拳骨を貰った。
「七海や灰原よりアンタが一番重症だったから絶対安静なのに」
「足の骨折だけじゃないのかい?」
「ストップ、ストップだ美少女」
「肋三本折れて肋が内臓突き刺していたし、右の指3本折れて砕けてた。
頭ぶつけていたし、額切れて血が止まらなかったし、足のヒビと全身打撲。
一歩間違えていたら死んでたっつの」
「………」
「無言やめてよー。無事だったからいーじゃーん」
「キミって奴は……本当に……」
米神を押さえる前髪。
「生きてりゃOK。その他掠り傷だ」
「漢前過ぎやしないかい?」
「人生楽しく!!これ私の目標だから」
にっ、と笑えば呆れた顔の二人。
次回「通行人が高専に通ったら 5」
通行人が高専に行ったら 5
あらすじ
任務で怪我したら
同期に相談され
八つ当たりされた。
結論、飛び蹴りした。
「レディーファイっ」
美少女により振り下ろされたフラッグ。
その瞬間、白髪が前髪を殴った。
勿論前髪も白髪を殴り返した。
バキッゴキッって聞こえる殴り合い。
「何事?」
「オマエだろ、原因」
「ホワイ?」
私?ナンノコト?
はて?と頭を傾げたら美少女は少しワクワクしながら此方を見ている。
「夏油と逃避行の予定立ててたろ」
「あぁ、(仮)のやつか」
「二人で駆け落ちでもすんの?」
「うん。やってやるかーとは話した」
「まじかよ」
ニヤニヤする美少女。
で?なぜあぁなる?
「五条が話聞いて焼いてたぞ」
「何で?」
「オマエと夏油が付き合って駆け落ちするって聞いたから」
「何の話?」
「耳の穴詰まってんのかよ」
「いや、だって付き合って無いし」
「まじ?」
「イエス」
こくり、と頷く。
そっと顔を逸らす美少女。
「前髪がこのまま呪術師無理かもって人生悩んでたからじゃあ上に責任ぶん投げて逃げようねー、それって逃避行みたーいって話したけど」
「ノリ軽っ」
「それで何で白髪怒るの?
私に向かって前髪を取りやがって!!って文句言うならわかるけど」
「そこはあれじゃん?惚れた弱み」
「まるで白髪が私の事好きみたいな言い方だねー」
「は?」
「無いでしょ。あの白髪が私を?ナイナイ」
バキャッといい音が入った。
そしてドサドサと二人が倒れ込む。
「青春だねぇ」
「キミのせいだけど」
「なぜ?わぁ、男前じゃん前髪」
「痛いから触らないでくれないか?」
うりうりと前髪の傷口をつつけば、手を握られて止められた。
なので反対の手でカメラで写真を撮っていく。
「こら、止めてくれ」
「ハハハ。スッキリした?」
「そもそも殴られた理由がわからないのにスッキリもしないよ」
「イチャイチャしてんじゃねーぞ!!リア充!!」
「うわっ、怖っ」
白髪に吠えられた。
白髪の顔面ボコボコ姿も撮っておく。
「ちなみにこれ何の喧嘩?」
「オマエらが付き合った事言わねーからだろ!!」
「付き合って無いが?」
「付き合って無いよ?」
「………は?」
ポカーンとする白髪。
その噂どこ情報?
「夏油さーん!!先輩とお付き合いしたって本当ですか!!」
「オマエもかい?灰原」
「保健室で抱き合って愛を語りながら逃避行の予定立てていたとお聞きしましたが?」
「七海くん、それ誰情報?」
「「一年の伊地知くんから」」
誰だよ伊地知!!
誤解も解いて美少女がボコボコの二人を治す。
「………まじで付き合ってねーのかよ」
「無いよ」
「本当に?」
「しつこいよ、悟」
「どんだけ前髪取られたく無いの?
寂しん坊過ぎるっしょ」
「傑にオマエを取られたくねーんだよ」
「私の事大好きかよ」
「……別に、そんなんじゃねーし」
「だよね。
ほら、美少女の勘違い勘違い」
「硝子、何言った」
「美少女を威嚇すんなし。
白髪が私のこと大好きって言ってたけどないわーって話。
だって好きなら普通もっと優しいし、こう……キュンッとくるシチュエーションあるじゃん?」
全員が残念なものを見る目を向けてくる。
「キュンッとくるシチュエーションって何?」
「例えば重いもの持ってくれたり」
「やってんだろ」
「お前文句多いだろ。誰が頼んでもいないのに人の荷物奪って腕がはち切れそうとか言われなきゃならんのだ」
「持ってやってんのに文句言うなよ」
「バッカ野郎!!荷物持って片手を開けて手を繋ぐまでがキュンッポイントだろ!!
文句言うとか論外じゃボケェッ」
「知るかよ!!クッソ重たい荷物持って何でデケェ荷物の手引きまでしなきゃなんねーんだよ!!」
「お前がクソ!!」
中指立てておく。
良い子の皆さんは真似しないように。
「あとは!?」
「何で食い気味なの?あと……誉めるときに撫でたり?」
「してんだろ」
「オマエは見下しながら頭わし掴んで馬鹿にするの間違いだ」
「次」
「えーっと……灰原、パス」
「いっぱい食べる子が可愛いと思います!!」
「OK。いっぱい幸せそうに食べる子にキュンッとするって事ね」
「デブになんぞ」
「そーゆーとこだぞ白髪ぁ!!!」
まったくキュンッ!!をわかってない!!
「いいか!!
キュンッはな、大事なんだぞ!!」
「何の話だったっけ?」
「さあ?」
「帰っていいですかね?」
「いつもと違うギャップ
ふとした仕草
狙っていても出せないもの……それがキュンッだ!!」
「だから?」
「キュンッが増えれば増えるほど夢中になるし、好きが増えていく!!」
「へー」
「キュンッの無いとこに恋など生まれぬわ!!」
「じゃあどうしたら俺にキュンとしてくれんの?」
覗き込むように見てくる白髪。
「あ、今のは可愛い」
「は?可愛いって言われても嬉しくねーよ」
「お前背がチョモランマだから話づらいんだよ」
「あ"?」
「そんくらい屈んでくれたら話しやすいし、チューしやすい」
「はぁ!?」
「悟とキスしたいのかい?」
「しない。彼女的に背が高い人とチューしたいなーって時に屈んでくれたらやりやすいじゃん」
「キュンどこいった?」
「さあ?」
ボーッとしてる白髪なした?
不気味だからほっとこ。
「前髪、こないだ言ってた水族館いつにするー?」
「キミと違って私忙しいんだが」
「美少女と明後日買い物行くけど来る?」
「仕方ないね」
あそこ行こう、ここ行こうと三人で話していたら突然頭に重みが。
「俺も行く」
「重たい」
「俺も!!行く!」
「うっせーよ白髪!!」
人の頭の上で叫ぶんじゃぬぇ!!
肘でガスガス後ろの白髪の腹筋を痛め付ける。
が、無下限のせいで当たらない。
「このクソ白髪!!」
「肘おきに丁度いいんだよ」
「OK。貴様は私に喧嘩を売っているな?
喜べ。今すぐに買い取ったからその白髪全て刈り取って売りさばいてくるから頭出せ」
「普通に嫌だっつの」
「はい。バリカンです」
「よくやった七海くん」
「何で七海がバリカン持ってんだよ」
「使うと思ったので」
「七海くん、どんなのがいいかな?
逆モヒカン?逆剃り込み?逆刈り上げ?」
「そうですね……チョンマゲは?」
「ってことだから頭差し出しやがれ」
「ふっざけんなよブス」
カーン、と美少女がコングを鳴らす。
その瞬間私と白髪は走り出した。
「待てゴラァッ!!」
「やーだね」
「やれやれ。子供だね」
「馬鹿なだけだろ」
今日も高専は平和です。
次「もしも高専で付き合ったら」
もしも通行人が高専行ったら
【もしも高専で夏油と付き合ったら】
「美少女」
「何?」
「男って何で癒されると思う?」
「女」
「わかった」
硝子は 何も 聞かなかった。
「ねーねー七海くん」
「何ですか?」
「男って何で癒される?」
「……リラックスして眠れればいいかと」
「アロマとかは?」
「好みがあると思うので万人受けはしないかと」
「リラックスねぇ……」
「肌触りのいい物とかある方がいいかと」
「肌触りね、肌触り……」
七海は 色々 聞きたかったが スルーした。
「灰原くん」
「どうしました?」
「男って何で癒される?」
「おっぱいです!!」
「……おっぱい…」
「はい!!」
灰原は 何も 疑わなかった。
「白髪」
「何だよ」
「男って何で癒される?」
「そりゃーセッ「黙れ小僧!!」んだよ」
「ここ全年齢だぞ」
「男なんて疲れたら抜いてスッキリするのが癒しに決まってんじゃん」
「お前に聞いたのが間違いだったわ」
「傑オススメのAV貸してやろうか?」
「本当黙ってろ」
白髪を 殴り つけた。
「って事で、どうぞ」
「意味がわからないんだが」
傑の部屋のベッドに座り、両手を広げてみる。
コイツ何考えてる?とでも言うようにジト目を向けるなんて……
「彼女に向ける視線じゃないだろ」
「その彼女が理解不能の行動ばかりだからな。
こないだはそうやってて抱き付いたらスライム背中に入れられたし」
「傑だって入れてきたじゃん」
「小学生みたいにスライム作って悟と散々スライムまみれになった後だったろう」
「傑も小学生みたいなもんじゃん。楽しかったろ?」
「その前は冷やしまくった手をシャツの中に入れてきたし」
「そんなこともあったね」
ケラケラ笑えば困った顔をして着替えだす傑。
「いい身体だねー、おにーさん」
「はいはい、どーも」
「お疲れですかー?」
「そうだね。現在進行形で疲れるよ」
「癒しいりませんかー?」
「癒し?」
「①、ぱふぱふ
②、膝枕
③、胸枕
さあ、どれがいい?」
「………は?」
「皆に男が癒されるのは?って聞いたらそれかなーと思って」
さあ、どれがいい?と着替えてる途中のまま固まった傑。
「傑さぁ、また最近疲れてんじゃん?
ちゃんと食べてる?ちゃんと寝てる?」
「まぁ……ボチボチ…」
「食べたくないのに無理に食べさせるのもおかしいし、まずは乱れた自律神経どーにかすんのに癒されるのが一番かなーと思って」
「……で、3択?」
「うむ」
情報が追い付いていないらしい傑はどこか遠くを見ながら棒立ち。
私は素晴らしい肉体を見れていいのだが……
「おーいで、傑」
両手を広げてみたら、そのまま倒れこむように抱き付いてきた。
思わず私までベッドに転がる。
私の腰に腕を回し、胸に顔を埋めてグリグリしている。
「おっぱい枕ご希望ですかー?」
「全部」
「全部入りましたー!
では、ご希望通りこのままぱふぱふしましょーか?」
「いや……このままで」
「はーい!では、お客様。こちらの当店人気のタオルケットをお掛けくださーい」
「……気持ちいいね」
「でしょ?」
ふわっふわのタオルケットを上半身裸の傑にかけてやる。
お顔にもふわっふわで包むとくすぐったそうに
笑う傑。
「くすぐったいよ」
「七海くんがね、肌触り良いものあってリラックスしながら寝るのが癒されるって」
「へぇ」
「灰原くんはおっぱいって言ってた」
「灰原が?」
「曇りなき眼でした」
「あの子時々ぶっ飛んでるからなぁ」
クスクス笑いながらこれは灰原の助言のおかげか、っておっぱいにすり寄る傑。
頭を撫でれば気持ちいいのか目を閉じている。
「ちなみに硝子と悟は?」
「美少女は女って答えてた」
「シンプル」
「白髪は……頭が常に下半身と繋がってる」
「なるほど」
「あと、傑オススメのAVを」
「後で悟と話し合わなきゃいけないなぁ」
「人妻か?団地妻か?尻?」
「止めてくれ」
「次の映画鑑賞会それね。感想文も真面目に書いて提出すること」
「正気かい?」
「それくらい馬鹿な事してれば難しい事考え無くて済むでしょ?」
まだ私達は学生何だから。
「馬鹿な事、全力で楽しんで笑っていた方がいいよ」
眉間のシワを伸ばすように指先でぐりぐりとする。
泣き出しそうな顔でくしゃりと笑った傑。
「そんなに切羽詰まってるように見えたかい?」
「おぅ。その内誰か殺りそうなくらいには」
「……まさか」
「だから私、考えました。
可愛い彼女セラピーで癒そうと」
「可愛い?」
「前髪引きちぎっぞ」
「嘘だよ。可愛い可愛い」
「……傑」
「ん?」
「癒されそう?」
傑の顔を覗いてみる。
おっぱいに埋まっていてあんまり見えないが。
「癒されるよ」
「なら良かった」
「ついでに疲れている下半身のマッサージも頼みたいくらいだ」
「おっさんかよ」
二人で笑う。
目を細め、強ばっていた顔が少しだけ緩む。
「……ありがと」
この後、白髪がノックもしないでゲームしようぜ!!って乗り込んでくるまで
ベッドで抱き締めあって横になっていた。
白髪?勿論邪魔しやがったから傑の枕ぶん投げてやった。
次→悟ver
もしも通行人が高専行ったら
【もしも高専で悟と付き合ったら】
「ねぇーねぇねぇねぇ」
「重たい」
190レベルの大男に後ろからバックハグされつつ全体重乗せられたら重たいに決まってんだろ。
「暇。構って」
「私報告書ある」
「適当に書いとけよ」
「嫌だよ」
重たい大男を離し、自分の席に座って報告書に手をつける。
隣の席に座ってじーっと此方を見つめる悟。
「なぁ」
「んー」
「キスしたい」
「へぇ」
「オイ」
「うっせぇ。今仕事中だ」
「あっそ!!」
拗ねた。
この大男、拗ねよった。
まぁいっかとほっといて報告書を書き上げる。
ちなみに前髪と美少女はそれぞれ任務でいない。
夕焼けに照らされる教室。
恋仲の男女………廊下に二つの影。
ふむ。
席から立ち上がって、悟の席の前へ。
「さーとーるーくん」
「んだよ」
「…………」
「黙るなら話しかけんな」
おーおー、拗ねておる。
顔を腕に埋めている悟の頭をつんつんした。
「何だよ」
やっと顔を上げた悟は不機嫌です!!って顔。
「悟くん……好き」
「は?」
「好き。好きだよ」
胸に手を当て、恥ずかしそうに。
潤んだ瞳で見つめる。
「この気持ちを悟くんに伝えるには……どうしたら、いいかな?」
「……は?え?」
「悟くん……私、胸が苦しいんだっ」
「ちょ……っ」
「お願い……私の気持ちを受け取って欲しいの」
手を伸ばし、悟の頬に。
「お、れも……好き、だっつの」
「もっと。もっと言って」
「好き」
「やだ。もっと」
「好き、だっつってんじゃん」
「……私はもっと、好き」
両手で悟の横の視界を塞ぐ。
私だけが見えるように。
目を見開き驚く悟に顔を寄せていく。
あと、少し。
ガラッ、と扉が開いた。
「おつー。あ、悪ぃ」
「あれ?邪魔したかい?二人とも」
「「気にせずどーぞ」」
ニヤニヤ、ニヤニヤ。
前髪と美少女が此方を見ている。
「私のこと……弄んだの!?」
「待って。何の話?」
「酷い……っ!!信じてたのに!!」
「待て待て待て待て」
突然ぶわっと泣き真似を始めた私に困惑する悟。
「可哀想に……ほら、こっちにおいで」
「傑」
「貴方を選べば私は……!!」
「キミが苦しむ事は無い。全ての責を私が背負うよ」
「前髪……っ」
「そこは傑って呼ぶべきじゃないかな?」
「………オイ。何の茶番だよ」
両手を広げる前髪。
私は顔を両手で覆いながら断る。
「じゃあ、私にしときな」
「美少女……」
「優しく抱いてやる」
「トゥンク」
「オイオイオイオイ」
「おや、硝子にやられてしまったね」
美少女のイケメンオーラにやられた。
抱き付いたら抱き返してくれた。
これはもう両思いでは?
「俺の純情返せ!!」
「トキメキ☆呪術学園
〜同期のあの子とイケナイ関係〜√が解放されました」
「何だよそれ」
「私の√は?」
「〜気になるあの子は親友の彼女〜かな?」
「クソみたいなサブタイトルだな」
美少女とケラケラ笑うが、悟はプチギレ。
さっきより機嫌悪くなってるぜ。
「二人とも怪我は?」
「無いよ」
「平気」
「おつおつ。私これから報告書出してくる」
「いってら」
「ほら、一緒に行くよダーリン」
「一人で行けよ」
「「拗ねてる」」
「うっせ!!報告書くらい一人で行けんだろ」
あらあら、やりすぎた?
本格的に拗ねちゃまな悟。
「ふーん。なら一人で報告書出しながら近くのコンビニも行ってくるね」
「私お茶」
「私が付いて行こうか?」
「いや、いーよ」
前髪と美少女に手を振り教室から出る。
さーて、報告書は……あ、やべ。
報告書机に置きっぱなしだった。
くるり、と振り返れば直ぐ側に悟が。
「おろ?」
「ばーか。コレ忘れてんぞ」
「あ、ありがと。忘れてたから今取りに行こうと思って」
「ばーか」
手渡された報告書。
「悟、これ間違って無いよね?」
「あ?」
「ここ」
見て見て、と報告書を指差す。
でかい図体を屈んでくれる悟は私の指先をみる。
「何、間違えて」
チュッ、とリップ音を立てて唇を重ねる。
いつもより近い顔。
「機嫌治った?」
「……あ〜〜〜っ!!!もうっ!!
オマエ何なの!?」
「お前の彼女だよ」
「そーだけど!!俺で遊ぶな!!」
「面白いからつい」
「……ったく」
顔をうっすら赤く染めて。
古典的な手に引っ掛かる悟が可愛くて笑ってしまう。
「手」
「おやおや?繋いでくれんの?」
「仕方ねぇからコンビニも行ってやる」
「嬉しいなぁ」
「だから」
チュッ、と再び重なる唇。
今度は私がキョトンとした顔をした。
「手間賃」
「……もっと、って言ったら?」
「啼かすぞ」
「やだやだ。頭の中常に下半身と直結?」
「年頃の男なんてそんなもんだろ」
「もっとこう……あまーい展開を望みます」
「どんなのだよ」
「夕焼けの綺麗な教室で告白イベからのチュー」
「……さっきのか」
「ちなみに廊下でも可」
背の高い悟を見上げる。
チラリ、と周りを注意深く見る悟に笑う。
「笑うなよ。また邪魔されたくねーし」
「はいはい」
「で?」
「ぎゅーってして」
「はいはい」
「好き」
「知ってる」
少し背伸びをすれば、屈んでくれる。
サングラスを取ればキラキラした瞳が私を映す。
「悟」
「んっ」
柔らかな感触に目を閉じる。
重ねて、離れて。また、重ねて。
額を合わせて、笑う。
「さっさと報告書出してコンビニ行こう」
「もーちょい」
「駄目。続きはお部屋でーす」
「覚えてろよ」
「今忘れてた」
指を絡めて手を繋いで。
夕暮れの校舎を歩く。
「バカップル」
「だね」
呆れた同期二人に見送られながら
寄り添う二人。
一年の七海くんと灰原くんと派遣された二級任務。
しかし、目の前には明らかにレベチの呪霊。
驚く一年の襟を引っ張りダッシュで逃げた。
ヤバイ。
アレはヤバイヤバイヤバイ。
「先輩っ」
「喋んな舌噛むぞさっさと足を動かせ!!」
「先輩!!後ろからっ」
「黙って走るよ!!」
カッコ悪い?
そんなもん関係あるか!!
自分達の力量をわかった上でアレには敵わないと私の第六感が告げている。
山道を走って走って走って
目の前は崖。
「ヤックルどこ!?私の体力ヤバイ!!」
「先輩こそフザケナイでください!!」
「タタリ神に触れてはならぬ!!」
「先輩実は余裕ですか!?」
余裕ねーからおかしくなってんだよ!!
三人で覚悟を決めて飛び降りる。
ヤバい呪霊は山の上から獲物を逃したと佇んでいた。
山道を転げ落ちながら三人で帳の外に転がり出た。
驚く補助監督が帳を消そうとしたのを三人で声を張り上げて止める。
「「「消すな!!!」」」
あまりの迫力にチビりそうだったと当時の補助監督は語る。
こっちも必死だったから察してくれ。
「お疲れ。大変だったみたいだね」
前髪が苦笑しながら見舞いに来た。
私達三人は無事だった。
火事場のなんとやらで痛みすら気にせず山道を転げ落ちた結果………
灰原は肋骨を三本骨折、打撲。
七海は頭部打撲に腕骨折。
私は……全身打撲に足にヒビ。
今考えたらよく生きてたな、私達と三人で笑いあった。
ちなみにあのヤバそうな呪霊は白髪が引き継いだ。
「ヤバくない?
山道をノーガードで転げ落ちたらこうなる」
「普通は死ぬよ」
「まさか崖飛び降りて逃げ切れるとは思って無かった」
「凄いね」
「結果、帳の外で動けなくなったけど」
報告後、安心した後に襲ってきた痛み。
それにより私達三人は揃って気絶。
気付いたら高専に居た。
「判断が良かったね」
「あんなの一目みたらわかるわ」
ふざけんな。あんなのは命いくつあっても足りない。
それと戦う前髪と白髪はガチでヤバい。
「前髪」
「……なんだい?」
「大丈夫?アンタ」
あまり顔色が良くない。
確かに今年の呪霊祭りは良くない。忙しい。
しかも、三人も怪我したとなれば負担は前髪や白髪へ。
「夏バテさ」
「違うでしょ」
ちょっと、来い。
バシバシベッドを叩けば、遠慮がちに座る前髪。
隈は酷いし、顔色が悪いし、少し痩せた。
何より目付きが違う。
「ゾンビかよ」
「酷くないかい?」
「そんだけ酷いっつってんの」
前髪の額に手を当て熱を測る。
そこまで熱くはない。
じゃあ寝不足か?毛穴開くぞ。
「あまり近付かれると悟が妬いてしまうな」
「何で?あぁ、お前らニコイチだもんな。
前髪取ったら寂しがるとかガキかよ」
「いや、そうじゃなくて……」
「それとも前髪の方が今寂しいのか?」
「………何を、言って」
「オマエ、悟が憎らしいんだろ?」
違った?と声を掛ければ黙り込む。
星漿体任務後から白髪は明らかに実力が違った。
特級任務を軽々とやるし、前髪との任務もなくなり単独任務ばかり。
前髪も勿論強いから単独で任務に行くが……二人で最強、というには実力に差がある。
「………キミには、わからないよ」
私の気持ちなんて。
吐き捨てるように言われた言葉。
冷めた目で見つめる前髪。
しかし、ハッとしたように自分の顔を覆うと立ち上がる。
「……すまない。八つ当たりだ。
ゆっくり休んでくれ」
じゃあ、といなくなろうとする前髪に
私は容赦なくベッドの上から飛び蹴りした。
「ぐふっ」
「おいおいおーい。お話はまだ途中だろ?
なーに一人で終わった気になってんの?」
「いや、キミ……怪我人の癖に何して……」
「アンタさぁ、何大人ぶってんの?
まーだまだケツの青いガキの分際で世界知った気分?」
「………」
「アンタが何を見て、何に悩んで、何をしたくて、迷子みたいに一人で抱え込んでるのか知らんけど」
「………キミには関係無い」
「仲間にすら相談出来ないことって何?」
一応こっちは心配してんだぞ?
「そりゃあ人生色々あるけどさ、一人で全て解決出来ることなんか限られてるし一人で悩むから一人の答えしか出ないじゃん」
「これは私の問題だよ」
「アンタの問題でも、アンタ一人で解決出来てないから悩んでるんでしょ?」
「………それは」
「ほら、ゲロっちまいな。
お姉さんは心が広いから聞いても聞かなかったフリして、一人言のアドバイスしてやっから」
「お姉さんって……同じ年だろ」
「男の固い頭より、女の子の柔らかな妄想豊かな方が答えは出やすいっしょ」
ほらほら、と言えば床に転がったまま動かなくなった前髪。
仕方ない、手助けしてやろう。
「まず、前髪。
自分に心当たり無いならDNA鑑定だ」
「は?」
「心当たりがあってもDNA鑑定は大事だ。もしかしたらオマエが本命じゃないが金目当てにオマエ選ばれた可能性がある」
「……ん?」
「そりゃあオマエさんが好きで趣味に走っても仕方ない。そこをとやかく言う必要はないし、オマエだけじゃなく相手にも問題がある。だって相手もオマエを受け入れたんだから」
「待て。何の話をしてるんだ?」
「あ、相手に旦那はいるのか?それともシングルマザー?」
「ちょっと待て。本当に待ってくれ」
突然起き上がった前髪のせいで、床に転がる。
おい。頭ぶったぞ。
「痛い」
「まず聞かせてくれ。何の話をしているんだ?」
「人妻孕ませてその責任を取らされそうな事に頭抱えてる前髪へのアドバイス」
「なぜそうなった」
「好きだろ?人妻NTRもの」
「違う!!」
アイアンクロー食らった。
頭が痛い。
「あ、じゃあアレか!?
我慢出来ずに幼女に悪戯してしまった!?」
「違う!!」
「えーっと、ナースだと思ってた彼女が実はキャバ嬢だった!!」
「合ってるけど違う!!誰に聞いたそれ!?」
「まじかよ。適当に言ったのに。
んじゃ、実家の親が仲良くて新しく兄弟が出来たから仲良く出来るかわからない、とか?」
「違う!!」
ゼーハーと息荒くする前髪。
「じゃあ何?」
「……キミは非呪術師をどう思う」
「パンピー」
「………そうじゃ、なくて」
「どうも思わないけど?」
「は?」
きょとん、とした前髪。
あれ?何でそんなビックリしてんの?
「キミ……幼馴染や友達、非呪術師だろ?」
「そうだね」
「その人らをどうも思わない?」
「正解に言えば、私の大切な人以外どーでもいい。
勿論幼馴染や友人らは大切だけど、関わりもないようなそこらのパンピーを大切な人と同等の価値は無いと思ってる」
私、そんなに優しい人間に見えるのかな?
「困ってる人に手を差し出すくらいはするかもしれないけど」
「………」
「こっちの世界基準で考えるとしたら……
自分の命と相手の命が天秤にかけられるとしたら……多分私は私の命を選ぶよ。
相手の命が、大切なもの以外なら」
自分の命を掛けてまで、救った命に何の意味がある?
それは自己満足。
「強い奴は選べるかもしれないけど、弱い私は他人を守れるほどの選択肢なんかないわ。
見知らぬ他人の肉壁になれとかそれこそ私の意味って何?
呪術師って弱かったらパンピーの肉壁となって死ぬのが名誉なの?
なら、そんな名誉いらん。
私は自分の命を誰かの為に使うより自分の為に使いたいからね」
「……結果、非呪術師の為に使うことになったら?キミは後悔しないのかい?」
「さあ?
その時の私が選んだのなら後悔しないのかも」
「むちゃくちゃだなぁ」
はぁ、とため息をつき目の前に胡座をかく前髪。
ちらり、と此方を見ては再びため息。
バシバシと自分の膝を叩く前髪に頭を傾げる。
「何?」
「ここに来て」
「やだーエッチなことするつもり!?」
「いいから黙って来い」
「ウ、ウス……」
低い声の前髪に黙って彼の膝に乗る。
お腹に回る腕にビクッとする。
特に何かあるわけでもなく……と思っていたら首に顔を埋める前髪。
「おいっ!!」
「呪霊が不味い」
「へ?」
「非呪術師が好きになれない」
「ん?アンタ守らなきゃ〜っていい子ちゃんムーブかましてなかった?」
「そう、思ってたんだ……いや、思い込もうと言い聞かせてた」
ぎゅっ、と力の籠る腕。
話すたび首筋がくすぐったいが、黙って聞く。
「呪術師を蔑ろにする非呪術師に吐き気がする。
奴らのために仲間が危険に晒され、死んでいくのに奴らが生み出す呪霊は増えていく……
その吐瀉物を絞った雑巾のような呪いを祓って飲み込んでいく毎日に嫌気が出てきたんだ」
「………ふーん」
「ゴールの見えないこの道に積み上がるのは呪術師の屍ばかり」
吐瀉物を絞った雑巾ってなに?
絞る勇気ねーよ。
吐瀉物って普通新聞紙じゃね?
そもそも呪霊って美味しそうだとは思って無かったけど……ゲロなの?ま?
「何が正しいのかわからないんだ」
「ふむふむ」
「……聞いてるかい?」
「うぐっ」
締め上げられた。
おまっ、私も吐瀉物出すぞ。
「アンタって潔癖というか、真面目というか……」
「なんだよ」
「辞めちまえ、呪術師」
「は?」
「呪詛師になれって意味じゃないよ?
非呪術師は嫌いだし、助けたくない。
クソみたいな呪いの塊不味い思いしながら飲み込んでメンタルやられて
自分が今まで信じてきた呪術師を壊したくないなら辞めればいーじゃん」
「そんな……簡単に」
「どっちか選ばなきゃいけないなら、どっちも選ばず捨てなよ。
それでも納得出来ないなら……極論で選ぶしかないね」
「極論?」
「殺すか、見捨てるか」
「………キミって狂ってるって言われないかい?」
「奇行が多いとは言われるかな」
ドン引かれるのかよ。
「私としては見捨てていいと思うけどな」
「その心は?」
「仲間の命見捨てて、見知らぬ奴らの命を助けろなんて私は無理。
それなら一般人見捨てるわ」
「……きっぱりしてるね」
「私、この世界が嫌いでさぁ」
「は?」
「大事なものが少なくて、その大事なもの一つ一つが私の世界なんだ」
家族、幼馴染。
友人も大切だけど、今が楽しいだけで連絡が途切れてしまえば疎遠になる。
私の事情を話せていない。話しても受け入れてくれるのは多分数少ない。
そうなっていくと、本当に大事だと言えるのは家族と幼馴染くらい。
「私の命を掛けて守りたいものが決まってるから、私は迷わないよ」
「……凄いね、キミは」
はは、とから笑いする前髪。
見上げてみれば泣きそうな顔をして笑っている。
「どうすればいいと思う?」
「決めるのはアンタだ」
「厳しいね」
「誰かに言われてその道を進むのは楽だよ。
後悔も憎しみもその人のせいに出来る理由になるから。
でも、アンタはそんな事したくないから悩んでる。
誰かに言われても、選んだのは自分だからって自分を追い込む」
「………」
「だから、呪術師辞めて平和に暮らしなよ。
何も考えず、ゆっくり休んで。
そしてまた考えればいい。
自分がどうしたいのか」
前髪の頭をポンポン撫でる。
身体は大きいのに、迷子の子供みたいだ。
「私は特級だから簡単に辞めさせて貰えないよ」
「平気平気。
その時は白髪に全て押し付けて逃げよ。
親友だとか言いながら親友の様子も気付かずにいるアホにぶん投げろ」
「悟キレそうだなぁ」
「その時はアンタもキレるでしょ。
お前らどっちも短気なんだから」
拳で語り合えよ。男だろ。
そう言えば、困った顔をしながら笑う前髪。
「逃げる時に着いてきて……って言ったら?」
「寂しん坊か」
「あぁ。一人は寂しいよ」
「……仕方ないからお供してあげる。
私の身を守って、金銭面頼むぞ。
そんで……
普通の高校生活しよっか」
「いいね、それ。
愛の逃避行みたいで青春っぽい。
定番の海が見えるような田舎目指すかい?」
「いいじゃん。わかってる」
二人で顔を見合わせ、馬鹿みたいだ、と声を出して笑った。
そして、聞いてくれ。
地味にさっきの飛び蹴りで捻った。
あれ?痛いわ。ヤバい。ズキンズキンしてきた。
「へ、ヘルプ……ヘルプだ、前髪っ!!」
「その前にどけてくれないか?重い」
「乙女になんて事を!!」
「いいから。ほら、退いてくれ」
退いて、なんて言いながら抱き上げてくれる。
携帯で美少女を呼び出してくれた。
「何やった馬鹿」
「ごめんなさい……この子も反省していますので」
「は?」
「さーせん」
治してもらい、痛みは無くなった。
しかし、美少女から拳骨を貰った。
「七海や灰原よりアンタが一番重症だったから絶対安静なのに」
「足の骨折だけじゃないのかい?」
「ストップ、ストップだ美少女」
「肋三本折れて肋が内臓突き刺していたし、右の指3本折れて砕けてた。
頭ぶつけていたし、額切れて血が止まらなかったし、足のヒビと全身打撲。
一歩間違えていたら死んでたっつの」
「………」
「無言やめてよー。無事だったからいーじゃーん」
「キミって奴は……本当に……」
米神を押さえる前髪。
「生きてりゃOK。その他掠り傷だ」
「漢前過ぎやしないかい?」
「人生楽しく!!これ私の目標だから」
にっ、と笑えば呆れた顔の二人。
次回「通行人が高専に通ったら 5」
通行人が高専に行ったら 5
あらすじ
任務で怪我したら
同期に相談され
八つ当たりされた。
結論、飛び蹴りした。
「レディーファイっ」
美少女により振り下ろされたフラッグ。
その瞬間、白髪が前髪を殴った。
勿論前髪も白髪を殴り返した。
バキッゴキッって聞こえる殴り合い。
「何事?」
「オマエだろ、原因」
「ホワイ?」
私?ナンノコト?
はて?と頭を傾げたら美少女は少しワクワクしながら此方を見ている。
「夏油と逃避行の予定立ててたろ」
「あぁ、(仮)のやつか」
「二人で駆け落ちでもすんの?」
「うん。やってやるかーとは話した」
「まじかよ」
ニヤニヤする美少女。
で?なぜあぁなる?
「五条が話聞いて焼いてたぞ」
「何で?」
「オマエと夏油が付き合って駆け落ちするって聞いたから」
「何の話?」
「耳の穴詰まってんのかよ」
「いや、だって付き合って無いし」
「まじ?」
「イエス」
こくり、と頷く。
そっと顔を逸らす美少女。
「前髪がこのまま呪術師無理かもって人生悩んでたからじゃあ上に責任ぶん投げて逃げようねー、それって逃避行みたーいって話したけど」
「ノリ軽っ」
「それで何で白髪怒るの?
私に向かって前髪を取りやがって!!って文句言うならわかるけど」
「そこはあれじゃん?惚れた弱み」
「まるで白髪が私の事好きみたいな言い方だねー」
「は?」
「無いでしょ。あの白髪が私を?ナイナイ」
バキャッといい音が入った。
そしてドサドサと二人が倒れ込む。
「青春だねぇ」
「キミのせいだけど」
「なぜ?わぁ、男前じゃん前髪」
「痛いから触らないでくれないか?」
うりうりと前髪の傷口をつつけば、手を握られて止められた。
なので反対の手でカメラで写真を撮っていく。
「こら、止めてくれ」
「ハハハ。スッキリした?」
「そもそも殴られた理由がわからないのにスッキリもしないよ」
「イチャイチャしてんじゃねーぞ!!リア充!!」
「うわっ、怖っ」
白髪に吠えられた。
白髪の顔面ボコボコ姿も撮っておく。
「ちなみにこれ何の喧嘩?」
「オマエらが付き合った事言わねーからだろ!!」
「付き合って無いが?」
「付き合って無いよ?」
「………は?」
ポカーンとする白髪。
その噂どこ情報?
「夏油さーん!!先輩とお付き合いしたって本当ですか!!」
「オマエもかい?灰原」
「保健室で抱き合って愛を語りながら逃避行の予定立てていたとお聞きしましたが?」
「七海くん、それ誰情報?」
「「一年の伊地知くんから」」
誰だよ伊地知!!
誤解も解いて美少女がボコボコの二人を治す。
「………まじで付き合ってねーのかよ」
「無いよ」
「本当に?」
「しつこいよ、悟」
「どんだけ前髪取られたく無いの?
寂しん坊過ぎるっしょ」
「傑にオマエを取られたくねーんだよ」
「私の事大好きかよ」
「……別に、そんなんじゃねーし」
「だよね。
ほら、美少女の勘違い勘違い」
「硝子、何言った」
「美少女を威嚇すんなし。
白髪が私のこと大好きって言ってたけどないわーって話。
だって好きなら普通もっと優しいし、こう……キュンッとくるシチュエーションあるじゃん?」
全員が残念なものを見る目を向けてくる。
「キュンッとくるシチュエーションって何?」
「例えば重いもの持ってくれたり」
「やってんだろ」
「お前文句多いだろ。誰が頼んでもいないのに人の荷物奪って腕がはち切れそうとか言われなきゃならんのだ」
「持ってやってんのに文句言うなよ」
「バッカ野郎!!荷物持って片手を開けて手を繋ぐまでがキュンッポイントだろ!!
文句言うとか論外じゃボケェッ」
「知るかよ!!クッソ重たい荷物持って何でデケェ荷物の手引きまでしなきゃなんねーんだよ!!」
「お前がクソ!!」
中指立てておく。
良い子の皆さんは真似しないように。
「あとは!?」
「何で食い気味なの?あと……誉めるときに撫でたり?」
「してんだろ」
「オマエは見下しながら頭わし掴んで馬鹿にするの間違いだ」
「次」
「えーっと……灰原、パス」
「いっぱい食べる子が可愛いと思います!!」
「OK。いっぱい幸せそうに食べる子にキュンッとするって事ね」
「デブになんぞ」
「そーゆーとこだぞ白髪ぁ!!!」
まったくキュンッ!!をわかってない!!
「いいか!!
キュンッはな、大事なんだぞ!!」
「何の話だったっけ?」
「さあ?」
「帰っていいですかね?」
「いつもと違うギャップ
ふとした仕草
狙っていても出せないもの……それがキュンッだ!!」
「だから?」
「キュンッが増えれば増えるほど夢中になるし、好きが増えていく!!」
「へー」
「キュンッの無いとこに恋など生まれぬわ!!」
「じゃあどうしたら俺にキュンとしてくれんの?」
覗き込むように見てくる白髪。
「あ、今のは可愛い」
「は?可愛いって言われても嬉しくねーよ」
「お前背がチョモランマだから話づらいんだよ」
「あ"?」
「そんくらい屈んでくれたら話しやすいし、チューしやすい」
「はぁ!?」
「悟とキスしたいのかい?」
「しない。彼女的に背が高い人とチューしたいなーって時に屈んでくれたらやりやすいじゃん」
「キュンどこいった?」
「さあ?」
ボーッとしてる白髪なした?
不気味だからほっとこ。
「前髪、こないだ言ってた水族館いつにするー?」
「キミと違って私忙しいんだが」
「美少女と明後日買い物行くけど来る?」
「仕方ないね」
あそこ行こう、ここ行こうと三人で話していたら突然頭に重みが。
「俺も行く」
「重たい」
「俺も!!行く!」
「うっせーよ白髪!!」
人の頭の上で叫ぶんじゃぬぇ!!
肘でガスガス後ろの白髪の腹筋を痛め付ける。
が、無下限のせいで当たらない。
「このクソ白髪!!」
「肘おきに丁度いいんだよ」
「OK。貴様は私に喧嘩を売っているな?
喜べ。今すぐに買い取ったからその白髪全て刈り取って売りさばいてくるから頭出せ」
「普通に嫌だっつの」
「はい。バリカンです」
「よくやった七海くん」
「何で七海がバリカン持ってんだよ」
「使うと思ったので」
「七海くん、どんなのがいいかな?
逆モヒカン?逆剃り込み?逆刈り上げ?」
「そうですね……チョンマゲは?」
「ってことだから頭差し出しやがれ」
「ふっざけんなよブス」
カーン、と美少女がコングを鳴らす。
その瞬間私と白髪は走り出した。
「待てゴラァッ!!」
「やーだね」
「やれやれ。子供だね」
「馬鹿なだけだろ」
今日も高専は平和です。
次「もしも高専で付き合ったら」
もしも通行人が高専行ったら
【もしも高専で夏油と付き合ったら】
「美少女」
「何?」
「男って何で癒されると思う?」
「女」
「わかった」
硝子は 何も 聞かなかった。
「ねーねー七海くん」
「何ですか?」
「男って何で癒される?」
「……リラックスして眠れればいいかと」
「アロマとかは?」
「好みがあると思うので万人受けはしないかと」
「リラックスねぇ……」
「肌触りのいい物とかある方がいいかと」
「肌触りね、肌触り……」
七海は 色々 聞きたかったが スルーした。
「灰原くん」
「どうしました?」
「男って何で癒される?」
「おっぱいです!!」
「……おっぱい…」
「はい!!」
灰原は 何も 疑わなかった。
「白髪」
「何だよ」
「男って何で癒される?」
「そりゃーセッ「黙れ小僧!!」んだよ」
「ここ全年齢だぞ」
「男なんて疲れたら抜いてスッキリするのが癒しに決まってんじゃん」
「お前に聞いたのが間違いだったわ」
「傑オススメのAV貸してやろうか?」
「本当黙ってろ」
白髪を 殴り つけた。
「って事で、どうぞ」
「意味がわからないんだが」
傑の部屋のベッドに座り、両手を広げてみる。
コイツ何考えてる?とでも言うようにジト目を向けるなんて……
「彼女に向ける視線じゃないだろ」
「その彼女が理解不能の行動ばかりだからな。
こないだはそうやってて抱き付いたらスライム背中に入れられたし」
「傑だって入れてきたじゃん」
「小学生みたいにスライム作って悟と散々スライムまみれになった後だったろう」
「傑も小学生みたいなもんじゃん。楽しかったろ?」
「その前は冷やしまくった手をシャツの中に入れてきたし」
「そんなこともあったね」
ケラケラ笑えば困った顔をして着替えだす傑。
「いい身体だねー、おにーさん」
「はいはい、どーも」
「お疲れですかー?」
「そうだね。現在進行形で疲れるよ」
「癒しいりませんかー?」
「癒し?」
「①、ぱふぱふ
②、膝枕
③、胸枕
さあ、どれがいい?」
「………は?」
「皆に男が癒されるのは?って聞いたらそれかなーと思って」
さあ、どれがいい?と着替えてる途中のまま固まった傑。
「傑さぁ、また最近疲れてんじゃん?
ちゃんと食べてる?ちゃんと寝てる?」
「まぁ……ボチボチ…」
「食べたくないのに無理に食べさせるのもおかしいし、まずは乱れた自律神経どーにかすんのに癒されるのが一番かなーと思って」
「……で、3択?」
「うむ」
情報が追い付いていないらしい傑はどこか遠くを見ながら棒立ち。
私は素晴らしい肉体を見れていいのだが……
「おーいで、傑」
両手を広げてみたら、そのまま倒れこむように抱き付いてきた。
思わず私までベッドに転がる。
私の腰に腕を回し、胸に顔を埋めてグリグリしている。
「おっぱい枕ご希望ですかー?」
「全部」
「全部入りましたー!
では、ご希望通りこのままぱふぱふしましょーか?」
「いや……このままで」
「はーい!では、お客様。こちらの当店人気のタオルケットをお掛けくださーい」
「……気持ちいいね」
「でしょ?」
ふわっふわのタオルケットを上半身裸の傑にかけてやる。
お顔にもふわっふわで包むとくすぐったそうに
笑う傑。
「くすぐったいよ」
「七海くんがね、肌触り良いものあってリラックスしながら寝るのが癒されるって」
「へぇ」
「灰原くんはおっぱいって言ってた」
「灰原が?」
「曇りなき眼でした」
「あの子時々ぶっ飛んでるからなぁ」
クスクス笑いながらこれは灰原の助言のおかげか、っておっぱいにすり寄る傑。
頭を撫でれば気持ちいいのか目を閉じている。
「ちなみに硝子と悟は?」
「美少女は女って答えてた」
「シンプル」
「白髪は……頭が常に下半身と繋がってる」
「なるほど」
「あと、傑オススメのAVを」
「後で悟と話し合わなきゃいけないなぁ」
「人妻か?団地妻か?尻?」
「止めてくれ」
「次の映画鑑賞会それね。感想文も真面目に書いて提出すること」
「正気かい?」
「それくらい馬鹿な事してれば難しい事考え無くて済むでしょ?」
まだ私達は学生何だから。
「馬鹿な事、全力で楽しんで笑っていた方がいいよ」
眉間のシワを伸ばすように指先でぐりぐりとする。
泣き出しそうな顔でくしゃりと笑った傑。
「そんなに切羽詰まってるように見えたかい?」
「おぅ。その内誰か殺りそうなくらいには」
「……まさか」
「だから私、考えました。
可愛い彼女セラピーで癒そうと」
「可愛い?」
「前髪引きちぎっぞ」
「嘘だよ。可愛い可愛い」
「……傑」
「ん?」
「癒されそう?」
傑の顔を覗いてみる。
おっぱいに埋まっていてあんまり見えないが。
「癒されるよ」
「なら良かった」
「ついでに疲れている下半身のマッサージも頼みたいくらいだ」
「おっさんかよ」
二人で笑う。
目を細め、強ばっていた顔が少しだけ緩む。
「……ありがと」
この後、白髪がノックもしないでゲームしようぜ!!って乗り込んでくるまで
ベッドで抱き締めあって横になっていた。
白髪?勿論邪魔しやがったから傑の枕ぶん投げてやった。
次→悟ver
もしも通行人が高専行ったら
【もしも高専で悟と付き合ったら】
「ねぇーねぇねぇねぇ」
「重たい」
190レベルの大男に後ろからバックハグされつつ全体重乗せられたら重たいに決まってんだろ。
「暇。構って」
「私報告書ある」
「適当に書いとけよ」
「嫌だよ」
重たい大男を離し、自分の席に座って報告書に手をつける。
隣の席に座ってじーっと此方を見つめる悟。
「なぁ」
「んー」
「キスしたい」
「へぇ」
「オイ」
「うっせぇ。今仕事中だ」
「あっそ!!」
拗ねた。
この大男、拗ねよった。
まぁいっかとほっといて報告書を書き上げる。
ちなみに前髪と美少女はそれぞれ任務でいない。
夕焼けに照らされる教室。
恋仲の男女………廊下に二つの影。
ふむ。
席から立ち上がって、悟の席の前へ。
「さーとーるーくん」
「んだよ」
「…………」
「黙るなら話しかけんな」
おーおー、拗ねておる。
顔を腕に埋めている悟の頭をつんつんした。
「何だよ」
やっと顔を上げた悟は不機嫌です!!って顔。
「悟くん……好き」
「は?」
「好き。好きだよ」
胸に手を当て、恥ずかしそうに。
潤んだ瞳で見つめる。
「この気持ちを悟くんに伝えるには……どうしたら、いいかな?」
「……は?え?」
「悟くん……私、胸が苦しいんだっ」
「ちょ……っ」
「お願い……私の気持ちを受け取って欲しいの」
手を伸ばし、悟の頬に。
「お、れも……好き、だっつの」
「もっと。もっと言って」
「好き」
「やだ。もっと」
「好き、だっつってんじゃん」
「……私はもっと、好き」
両手で悟の横の視界を塞ぐ。
私だけが見えるように。
目を見開き驚く悟に顔を寄せていく。
あと、少し。
ガラッ、と扉が開いた。
「おつー。あ、悪ぃ」
「あれ?邪魔したかい?二人とも」
「「気にせずどーぞ」」
ニヤニヤ、ニヤニヤ。
前髪と美少女が此方を見ている。
「私のこと……弄んだの!?」
「待って。何の話?」
「酷い……っ!!信じてたのに!!」
「待て待て待て待て」
突然ぶわっと泣き真似を始めた私に困惑する悟。
「可哀想に……ほら、こっちにおいで」
「傑」
「貴方を選べば私は……!!」
「キミが苦しむ事は無い。全ての責を私が背負うよ」
「前髪……っ」
「そこは傑って呼ぶべきじゃないかな?」
「………オイ。何の茶番だよ」
両手を広げる前髪。
私は顔を両手で覆いながら断る。
「じゃあ、私にしときな」
「美少女……」
「優しく抱いてやる」
「トゥンク」
「オイオイオイオイ」
「おや、硝子にやられてしまったね」
美少女のイケメンオーラにやられた。
抱き付いたら抱き返してくれた。
これはもう両思いでは?
「俺の純情返せ!!」
「トキメキ☆呪術学園
〜同期のあの子とイケナイ関係〜√が解放されました」
「何だよそれ」
「私の√は?」
「〜気になるあの子は親友の彼女〜かな?」
「クソみたいなサブタイトルだな」
美少女とケラケラ笑うが、悟はプチギレ。
さっきより機嫌悪くなってるぜ。
「二人とも怪我は?」
「無いよ」
「平気」
「おつおつ。私これから報告書出してくる」
「いってら」
「ほら、一緒に行くよダーリン」
「一人で行けよ」
「「拗ねてる」」
「うっせ!!報告書くらい一人で行けんだろ」
あらあら、やりすぎた?
本格的に拗ねちゃまな悟。
「ふーん。なら一人で報告書出しながら近くのコンビニも行ってくるね」
「私お茶」
「私が付いて行こうか?」
「いや、いーよ」
前髪と美少女に手を振り教室から出る。
さーて、報告書は……あ、やべ。
報告書机に置きっぱなしだった。
くるり、と振り返れば直ぐ側に悟が。
「おろ?」
「ばーか。コレ忘れてんぞ」
「あ、ありがと。忘れてたから今取りに行こうと思って」
「ばーか」
手渡された報告書。
「悟、これ間違って無いよね?」
「あ?」
「ここ」
見て見て、と報告書を指差す。
でかい図体を屈んでくれる悟は私の指先をみる。
「何、間違えて」
チュッ、とリップ音を立てて唇を重ねる。
いつもより近い顔。
「機嫌治った?」
「……あ〜〜〜っ!!!もうっ!!
オマエ何なの!?」
「お前の彼女だよ」
「そーだけど!!俺で遊ぶな!!」
「面白いからつい」
「……ったく」
顔をうっすら赤く染めて。
古典的な手に引っ掛かる悟が可愛くて笑ってしまう。
「手」
「おやおや?繋いでくれんの?」
「仕方ねぇからコンビニも行ってやる」
「嬉しいなぁ」
「だから」
チュッ、と再び重なる唇。
今度は私がキョトンとした顔をした。
「手間賃」
「……もっと、って言ったら?」
「啼かすぞ」
「やだやだ。頭の中常に下半身と直結?」
「年頃の男なんてそんなもんだろ」
「もっとこう……あまーい展開を望みます」
「どんなのだよ」
「夕焼けの綺麗な教室で告白イベからのチュー」
「……さっきのか」
「ちなみに廊下でも可」
背の高い悟を見上げる。
チラリ、と周りを注意深く見る悟に笑う。
「笑うなよ。また邪魔されたくねーし」
「はいはい」
「で?」
「ぎゅーってして」
「はいはい」
「好き」
「知ってる」
少し背伸びをすれば、屈んでくれる。
サングラスを取ればキラキラした瞳が私を映す。
「悟」
「んっ」
柔らかな感触に目を閉じる。
重ねて、離れて。また、重ねて。
額を合わせて、笑う。
「さっさと報告書出してコンビニ行こう」
「もーちょい」
「駄目。続きはお部屋でーす」
「覚えてろよ」
「今忘れてた」
指を絡めて手を繋いで。
夕暮れの校舎を歩く。
「バカップル」
「だね」
呆れた同期二人に見送られながら
寄り添う二人。