先輩ifシリーズ
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※残酷な描写あり
記録 2007年 9月
■■県■■市 (旧■■村)
任務内容
村落内での神隠し、変死
その原因と思われる呪霊の祓除
久しぶりに傑との任務だった。
早々に呪霊は私が弱らせ、傑が取り込んだ。
簡単な任務に、二人もいらなかっただろうと
村長に話して立ち去ろうとしたのだが
根本の原因がいるからと譲らず案内される。
「傑、こいつら話通じないね」
「先輩、耐えてくださいね」
「暑いし、山奥だし
帰宅する道のり考えたら
さっさと帰りたい……」
「わかります」
「傑の持ってる子、空飛べる子いたっけ?」
「いますよ」
「よし、帰りはその子で帰ろう
山道辛い」
地図にも載っていない山奥の村。
車が通れない場所もあり
途中から山道を歩かされた。
行きだけでも辛いのに
帰りもなんて嫌がらせだろうか?
連れられて来たのは
一軒の家のように見えるが
人の気配がほとんど無い。
そのままついて行くと
そこには、太い木枠で作られた檻があり
その中には小さな子供が二人。
傑は眉間をかき、冷静になろうとしていた。
私は目の前の光景から目が離せない。
小さな子供は女の子だ。
殴られ過ぎたまま放置されていたのか
治る間もなく殴られているのか
顔は腫れ上がり
片方の子は片目しか開いてない。
服は血や泥に汚れ
顔だけじゃなく
手や足も傷だらけだ。
「これはなんですか?」
傑が問い詰める。
「なにとは?
この2人が一連の事件の原因でしょう?」
「違います」
「この2人は頭がおかしい
不思議な力で村人を度々襲うのです」
「事件の原因はもう私達が取り除きました」
「私の孫もこの2人に
殺されかけたことがあります」
何を言っているのかわからない。
この人達は今
私の知っている言語で話しているのだろうか?
「それはあっちがーーー」
「黙りなさい化物め」
けど、一つだけわかったのは
こいつらは、私の嫌いな人種だということ。
会話が通じない、話し合いも出来ない。
この子達を助けるには
この村人達は邪魔でしかない。
「あなた達の親もそうだった」
心の奥底に沈んでいた
真っ黒なドロドロとした闇が
どんどんと広がっていく。
「やはり赤子の内に
殺しておくべきだった」
私はーーー
コトンっ、と
村人の頭が落ちた。
「………え?」
続いてもう一人
首が落ちた。
「先輩……」
「もういいわ
どうせ話し通じないんだし」
刀についた血をはらう。
床を汚す血を汚いものでも見るように見下す。
傑が驚いた表情でこちらを見ていた。
「傑」
驚いた傑の瞳に
表情の無い私が映る。
人形みたいだな、と
光のない瞳で無表情の私がそこにいた。
「今なら立ち止まれるよ」
こちらに来るか
そちらに残るか
「私はもう、疲れた」
呪術師として、命のやりとりをするのも
誰かの命を犠牲にして、生きるのも
力があるからと
赤の他人のために命をすり減らし
仲間の骸だけが積み上がるのも
才能を持つ子を産む道具になるのも
才能が無いから蔑まれるのを見るのも
呪術師だから
この業を背負わなければならないというのなら
私はそんなものイラナイ。
「………はははっ」
「何笑ってんの」
「先輩……いや、名前」
嬉しそうに笑い出す傑。
何を思ったのか、突然抱き締められた。
「名前こそ引き返さなくていいのかい?」
「ごちゃごちゃ考えるの面倒になった」
「はははっ」
「もう、疲れたんだ。
なら、手っ取り早く楽になる道を選ぶよ」
スパンっ、と簡単に斬れた檻。
子供達が驚いた顔をしている。
"だ…だい 大丈夫…"
傑の指先から出た呪霊。
子供達は、その呪霊をしっかりと見つめていて
驚いている。
「見えてるね」
「ですね」
少し距離を置いて
子供達と同じ目線になる。
「ごめんね……痛いよね」
「「………」」
「傍に行ってもいい?
君たちの傷を治すには
君たちに触れたいんだけど」
お互いに顔を見合わせて
小さく頷いてくれた。
「名前、その子達を頼めるかい?」
「………頼まれてる間、君は?」
「私の選択した答えを出しに」
「良くも悪くも真面目だね……傑は」
にっこりと笑いながら出て行った傑。
子供達に反転術式を使えば
傷は治っていく。
しかし、心に刻まれた傷は
ずっと残り続ける。
「………あの」
「ん?」
「さっきの人は………」
「あぁ、今頃掃除をしてるよ」
「掃除?」
「君たちを傷付け、蔑ろにし
こんなとこに閉じ込めた人達全員のお掃除」
物言わぬ死体を避けて歩く。
子供達も一緒になってついてくる。
「君たちは生きたい?」
外の世界は悲鳴が響いている。
しかし、一つ……また一つと
響いている声が消えている。
「死を望むなら死ねばいい。
この世界は理不尽で出来ているからね」
逃げようとする人はみな
呪霊達によって肉片へと変えられる。
「けど、君たちが生きたいと望むなら」
子供達に手を伸ばす。
「魔の道で良ければ
一緒に来るかい?」
迷うことなく頷き、手を掴んだ2人。
そんな2人の手を繋ぎながら
血に染まっていく道を歩き出す。
・担当者
(高専4年 禪院 名前、高専3年 夏油 傑)
派遣から5日後
旧■■村の住民112名の死亡が確認される
・全て呪霊による被害と思われたが
2名は呪具による切り傷。
呪具保有者の禪院 名前と断定。
残り110名は残穢から夏油 傑の呪霊操術と断定
・禪院名前と夏油傑は逃走
呪術規定9条に基づき
呪詛師として処刑対象となる
「名前」
「んー?」
傑に呼ばれるが今目を離せない。
膝の中には菜々子がいて
美々子が背中からぶら下がっている。
そして、今しているのは
テレビゲームだ。
「……あ、名前さん
そこ!!そこ宝箱ある!!」
「敵きたよ」
「ちょ、まてまて
今回復したいから待って、まじで」
「……何をしてるんだ」
「マ○オ」
呆れたように溜め息をつく傑。
「名前、私は少し出てくるよ」
「んー」
「夏油様、お出かけ?」
「少しね。何か欲しいものはあるかい?」
「えっと……いえ、大丈夫です」
「お気をつけて」
「傑、この子達用のお菓子よろしく」
二人がえっ、と申し訳なさそうな顔をするので
膝の中にいる菜々子の頭に顎を乗せる。
「子供が遠慮するな」
「い、痛い……痛いですっ」
「わかったよ
名前、何か言伝はあるかい?」
傑の言葉に
色々浮かんだが……
選んだ道を否定する気がした。
「無い」
「………そうか」
「気をつけて」
「行ってくるよ」
傑は悟に会いに行ったのだろう。
もしも会えなければ、それで終わり。
「名前さん」
「なしたー?」
「名前さんは会いに行かなくて
いいんですか……?」
ちょうど、ゲームオーバーとなってしまったため、コントローラから手を放す。
「会えるときは会えるし
会えない時は会えないからいいんだ」
「………でも」
「成りゆきで傑と一緒に居るからね
けど、私は傑の手伝いをする気はない」
「………」
「呪術師でもないし
呪詛師扱いされてるけど
無闇やたらと殺す気はないしなー」
「名前さん、ニート?」
「ニートになるんです?」
「この子ら酷い」
ニートニートと言われ
どこかで仕事探すかな……と
少し本気で考えた。
が、高専時代の蓄えはそれなりにある。
「とりあえず、ニートでいっか」
「「えー」」
「傑に養って貰おう」
「名前さん、夏油様のお嫁さんになる!?」
「ならないよ」
「養って貰うなら、お嫁さんじゃないの?」
「えーっと……うーん……
あ、ヒモだよ、ヒモ」
「「ヒモ?」」
「よし、菜々子と美々子場所交換ね。
次何するー?」
純粋な子供の疑問はスルーして
ゲームを開始した。
傑が帰って来た頃には
二人とも寝てしまい
布団に運んでやる。
「寝たのかい?」
「うん
どーだった?再開は」
「硝子にはガキと言われ
悟にはキレられたよ」
「だろうね」
「二人とも名前の心配をしていた」
傑が名前の髪の毛をすく。
傑を見上げると
困ったように笑っていた。
「優しい子達だね」
「けど、名前はこちらを選んだんだろ?」
「傑に協力する気はないよ」
「それでもいいさ
名前が私のそばに居てくれるなら」
チュッ、と啄むように
顔中にキスをする傑。
その後、ぎゅっと抱き締める。
「傑」
「なんだい?」
「そのハーフアップ姿、前より好きだよ」
「遊ぶなよ」
「セーラームーンさせてよ」
「名前がヤらせてくれるなら」
「バーカ」
くすり、と笑うと
傑も笑っていた。
その後、傑が法衣なんてどこからか
持ってきて胡散臭い宗教の教祖様姿に
指をさしながら大笑いした。
傑がにっこり笑って圧力をかけてきたが
ヤバい宗教の教祖にしか見えず
笑いのツボに入ってしまった。
9年後
傑が高専を落とすべく
家族を使って東京・京都で百鬼夜行を開催。
私は参加する気がなかったが
悟の足止めをお願いされたが
戦わないことを条件に
その場に居ることを了承した。
高いビルの屋上。
早めに開催された百鬼夜行では
それぞれが争っている。
「無駄な争いだねぇ」
風が寒い。
家族達は大きな怪我は
今のところ無さそうだが
ミゲルが一番のMVPだろう。
片目とはいえ、悟に目を使わせ
悟の動きに合わせてカウンターを入れている。
「ミゲル、凄い凄い」
「貴方も仕事をしたら?」
「おや?傑の秘書さん」
「夏油様のために少しは動いたら?」
「傑のためには無理かな」
険しい顔をして、睨み付けてくる秘書。
いいように思われてはいないので
もう慣れてはいる。
「私は傑の理想を手伝う気は無いから」
「………貴方」
何かが吹き飛んでいき
視線を向ければ
そこには尻餅をついているミゲル。
派手に吹き飛ばされ
脳が揺れているのか
すぐに立ち上がれずにいる。
その近くには美々子と菜々子もいて
立ち上がる。
「そろそろ撤退かな」
「まだ時間が…!!」
「悟相手によく持った方だよ
あと10分……撤退した方が身のためだよ」
秘書が何か言いたげだったが
二人のところに向かうと
大きな呪霊が近付いて来ていて
悟が一瞬で消し飛ばした。
「ミゲル、大丈夫かい?」
「!?」
「名前カ……大丈夫ニ見エルナラ
オ前ノ目ハ節穴ダゾ」
「美々子、菜々子
今のうちに撤退しな」
「名前さん!!でも!!」
「命を無駄にするんじゃない」
二人がパタパタと走って行くのを見て
悟を見れば、不機嫌な表情でこちらを見てる。
「やっと目の前に現れる気になったんだ?」
「別に隠れていたわけでも
逃げてたわけでもないよ?」
「傑に足止めするようにでも言われた?」
「言われたけど、断った。
私、傑の理想?大義?なんて
どーでもいいし」
「は?
じゃあ、何で高専からいなくなったんだよ」
更にイラついた様子の悟。
「……あの日」
「?」
「あの日、全てがどーでもいいと思った」
「…それだけの理由で非術師を殺したのか」
「アイツらは私の嫌いな奴らと
似ていたからね……
呪術師の自分に嫌気がさして
手っ取り早くいなくなる理由としては
いい駒だったんだ」
にっこりと笑うと
悟のピリピリとした空気が増す。
高専に置いてきた生徒達も傑のことも
気になって仕方ないのだろう。
「傑は高専だよ」
「やっぱりか」
「オイ、名前!!」
「ミゲルもその紐無くなる前に
離脱しておけば?
悟相手によくやったよ」
「僕が行かせるとでも?」
「私らの相手よりも
生徒の方が心配なんでしょ?」
「ねぇ、名前は何がしたいの?
仲良くお喋りしてる暇無いんだけど」
「おや?残念」
まぁまぁ時間稼ぎにはなっただろう。
私もいなくなろうと
悟に背を向ける。
「………名前」
「何だい?」
「僕は名前が好きだったよ」
「………知ってる」
「だから、傑といなくなって
伝言すら無いなんて傷付いた」
悟の言葉に、ふっ、と吹き出す。
「私も悟が好きだよ」
好きだった。
いや、今でも好きなのかもしれない。
「だからこそ、私は君を憎みたくなかった」
お兄さんを殺した悟を
今でも許せない私がいる。
「愛より醜い呪いは無いね」
「悟が一生独身でいることを願うよ」
「嫌な呪いかけないでよ」
「硝子と傑によろしく」
「何て?」
「"来世で会おう"って」
笑って手を振れば
悟は呆れた顔をしていた。
それぞれが散り散りになり
傑は帰って来なかったし
傑が家族と呼んでいた者達の
行方もわからない。
家を借りて、だらだらと
部屋に籠ってのんびりとした生活する。
ピンポーン
チャイムが鳴り
誰だろうとドアを開けば
何者かに抱き締められる。
「ただいま、名前」
「………なーんでわかったかな」
「愛の力かな?」
「死んだんじゃなかったの?」
「勝手に殺すなよ」
もぞもぞと抜け出し
見上げれば
以前と違うのは
額の縫い傷のようなもの
「まぁ、死んでも来世は遠いから
今世で会いに来たんだよ」
「………愛が重い」
「またしばらく、よろしく頼むよ」
「私の平穏どこ行った」
「私や悟に目をつけられた時点で
名前は巻き込まれる運命なんだよ」
ケラケラと笑う傑に
仕方ない、と絆されてしまっている私は
もはや、手遅れなのだろう。
あとがき
そして、呪霊と戯れる名前さん。
呪霊連中からは
傑の金魚の糞扱いだが
こちらに害がないなら
それでいいよ…という感じ。
傑に振り回されつつ
ニートの道へ。
引きこもってないが
何もしたくないから
私に迷惑かけないなら
好きにやってくれ……状態(笑)
闇落ちしたら
ニートの道www
呪詛師していたら祓われちゃうから
人殺したいわけでもないので
ニートになってしまう名前さん。
ただし、傑が構うから
引きこもれない。
たまに構って攻撃して
うざ絡みする真人を
軽く浄化しちゃったり…
続きは力尽きた(笑)
記録 2007年 9月
■■県■■市 (旧■■村)
任務内容
村落内での神隠し、変死
その原因と思われる呪霊の祓除
久しぶりに傑との任務だった。
早々に呪霊は私が弱らせ、傑が取り込んだ。
簡単な任務に、二人もいらなかっただろうと
村長に話して立ち去ろうとしたのだが
根本の原因がいるからと譲らず案内される。
「傑、こいつら話通じないね」
「先輩、耐えてくださいね」
「暑いし、山奥だし
帰宅する道のり考えたら
さっさと帰りたい……」
「わかります」
「傑の持ってる子、空飛べる子いたっけ?」
「いますよ」
「よし、帰りはその子で帰ろう
山道辛い」
地図にも載っていない山奥の村。
車が通れない場所もあり
途中から山道を歩かされた。
行きだけでも辛いのに
帰りもなんて嫌がらせだろうか?
連れられて来たのは
一軒の家のように見えるが
人の気配がほとんど無い。
そのままついて行くと
そこには、太い木枠で作られた檻があり
その中には小さな子供が二人。
傑は眉間をかき、冷静になろうとしていた。
私は目の前の光景から目が離せない。
小さな子供は女の子だ。
殴られ過ぎたまま放置されていたのか
治る間もなく殴られているのか
顔は腫れ上がり
片方の子は片目しか開いてない。
服は血や泥に汚れ
顔だけじゃなく
手や足も傷だらけだ。
「これはなんですか?」
傑が問い詰める。
「なにとは?
この2人が一連の事件の原因でしょう?」
「違います」
「この2人は頭がおかしい
不思議な力で村人を度々襲うのです」
「事件の原因はもう私達が取り除きました」
「私の孫もこの2人に
殺されかけたことがあります」
何を言っているのかわからない。
この人達は今
私の知っている言語で話しているのだろうか?
「それはあっちがーーー」
「黙りなさい化物め」
けど、一つだけわかったのは
こいつらは、私の嫌いな人種だということ。
会話が通じない、話し合いも出来ない。
この子達を助けるには
この村人達は邪魔でしかない。
「あなた達の親もそうだった」
心の奥底に沈んでいた
真っ黒なドロドロとした闇が
どんどんと広がっていく。
「やはり赤子の内に
殺しておくべきだった」
私はーーー
コトンっ、と
村人の頭が落ちた。
「………え?」
続いてもう一人
首が落ちた。
「先輩……」
「もういいわ
どうせ話し通じないんだし」
刀についた血をはらう。
床を汚す血を汚いものでも見るように見下す。
傑が驚いた表情でこちらを見ていた。
「傑」
驚いた傑の瞳に
表情の無い私が映る。
人形みたいだな、と
光のない瞳で無表情の私がそこにいた。
「今なら立ち止まれるよ」
こちらに来るか
そちらに残るか
「私はもう、疲れた」
呪術師として、命のやりとりをするのも
誰かの命を犠牲にして、生きるのも
力があるからと
赤の他人のために命をすり減らし
仲間の骸だけが積み上がるのも
才能を持つ子を産む道具になるのも
才能が無いから蔑まれるのを見るのも
呪術師だから
この業を背負わなければならないというのなら
私はそんなものイラナイ。
「………はははっ」
「何笑ってんの」
「先輩……いや、名前」
嬉しそうに笑い出す傑。
何を思ったのか、突然抱き締められた。
「名前こそ引き返さなくていいのかい?」
「ごちゃごちゃ考えるの面倒になった」
「はははっ」
「もう、疲れたんだ。
なら、手っ取り早く楽になる道を選ぶよ」
スパンっ、と簡単に斬れた檻。
子供達が驚いた顔をしている。
"だ…だい 大丈夫…"
傑の指先から出た呪霊。
子供達は、その呪霊をしっかりと見つめていて
驚いている。
「見えてるね」
「ですね」
少し距離を置いて
子供達と同じ目線になる。
「ごめんね……痛いよね」
「「………」」
「傍に行ってもいい?
君たちの傷を治すには
君たちに触れたいんだけど」
お互いに顔を見合わせて
小さく頷いてくれた。
「名前、その子達を頼めるかい?」
「………頼まれてる間、君は?」
「私の選択した答えを出しに」
「良くも悪くも真面目だね……傑は」
にっこりと笑いながら出て行った傑。
子供達に反転術式を使えば
傷は治っていく。
しかし、心に刻まれた傷は
ずっと残り続ける。
「………あの」
「ん?」
「さっきの人は………」
「あぁ、今頃掃除をしてるよ」
「掃除?」
「君たちを傷付け、蔑ろにし
こんなとこに閉じ込めた人達全員のお掃除」
物言わぬ死体を避けて歩く。
子供達も一緒になってついてくる。
「君たちは生きたい?」
外の世界は悲鳴が響いている。
しかし、一つ……また一つと
響いている声が消えている。
「死を望むなら死ねばいい。
この世界は理不尽で出来ているからね」
逃げようとする人はみな
呪霊達によって肉片へと変えられる。
「けど、君たちが生きたいと望むなら」
子供達に手を伸ばす。
「魔の道で良ければ
一緒に来るかい?」
迷うことなく頷き、手を掴んだ2人。
そんな2人の手を繋ぎながら
血に染まっていく道を歩き出す。
・担当者
(高専4年 禪院 名前、高専3年 夏油 傑)
派遣から5日後
旧■■村の住民112名の死亡が確認される
・全て呪霊による被害と思われたが
2名は呪具による切り傷。
呪具保有者の禪院 名前と断定。
残り110名は残穢から夏油 傑の呪霊操術と断定
・禪院名前と夏油傑は逃走
呪術規定9条に基づき
呪詛師として処刑対象となる
「名前」
「んー?」
傑に呼ばれるが今目を離せない。
膝の中には菜々子がいて
美々子が背中からぶら下がっている。
そして、今しているのは
テレビゲームだ。
「……あ、名前さん
そこ!!そこ宝箱ある!!」
「敵きたよ」
「ちょ、まてまて
今回復したいから待って、まじで」
「……何をしてるんだ」
「マ○オ」
呆れたように溜め息をつく傑。
「名前、私は少し出てくるよ」
「んー」
「夏油様、お出かけ?」
「少しね。何か欲しいものはあるかい?」
「えっと……いえ、大丈夫です」
「お気をつけて」
「傑、この子達用のお菓子よろしく」
二人がえっ、と申し訳なさそうな顔をするので
膝の中にいる菜々子の頭に顎を乗せる。
「子供が遠慮するな」
「い、痛い……痛いですっ」
「わかったよ
名前、何か言伝はあるかい?」
傑の言葉に
色々浮かんだが……
選んだ道を否定する気がした。
「無い」
「………そうか」
「気をつけて」
「行ってくるよ」
傑は悟に会いに行ったのだろう。
もしも会えなければ、それで終わり。
「名前さん」
「なしたー?」
「名前さんは会いに行かなくて
いいんですか……?」
ちょうど、ゲームオーバーとなってしまったため、コントローラから手を放す。
「会えるときは会えるし
会えない時は会えないからいいんだ」
「………でも」
「成りゆきで傑と一緒に居るからね
けど、私は傑の手伝いをする気はない」
「………」
「呪術師でもないし
呪詛師扱いされてるけど
無闇やたらと殺す気はないしなー」
「名前さん、ニート?」
「ニートになるんです?」
「この子ら酷い」
ニートニートと言われ
どこかで仕事探すかな……と
少し本気で考えた。
が、高専時代の蓄えはそれなりにある。
「とりあえず、ニートでいっか」
「「えー」」
「傑に養って貰おう」
「名前さん、夏油様のお嫁さんになる!?」
「ならないよ」
「養って貰うなら、お嫁さんじゃないの?」
「えーっと……うーん……
あ、ヒモだよ、ヒモ」
「「ヒモ?」」
「よし、菜々子と美々子場所交換ね。
次何するー?」
純粋な子供の疑問はスルーして
ゲームを開始した。
傑が帰って来た頃には
二人とも寝てしまい
布団に運んでやる。
「寝たのかい?」
「うん
どーだった?再開は」
「硝子にはガキと言われ
悟にはキレられたよ」
「だろうね」
「二人とも名前の心配をしていた」
傑が名前の髪の毛をすく。
傑を見上げると
困ったように笑っていた。
「優しい子達だね」
「けど、名前はこちらを選んだんだろ?」
「傑に協力する気はないよ」
「それでもいいさ
名前が私のそばに居てくれるなら」
チュッ、と啄むように
顔中にキスをする傑。
その後、ぎゅっと抱き締める。
「傑」
「なんだい?」
「そのハーフアップ姿、前より好きだよ」
「遊ぶなよ」
「セーラームーンさせてよ」
「名前がヤらせてくれるなら」
「バーカ」
くすり、と笑うと
傑も笑っていた。
その後、傑が法衣なんてどこからか
持ってきて胡散臭い宗教の教祖様姿に
指をさしながら大笑いした。
傑がにっこり笑って圧力をかけてきたが
ヤバい宗教の教祖にしか見えず
笑いのツボに入ってしまった。
9年後
傑が高専を落とすべく
家族を使って東京・京都で百鬼夜行を開催。
私は参加する気がなかったが
悟の足止めをお願いされたが
戦わないことを条件に
その場に居ることを了承した。
高いビルの屋上。
早めに開催された百鬼夜行では
それぞれが争っている。
「無駄な争いだねぇ」
風が寒い。
家族達は大きな怪我は
今のところ無さそうだが
ミゲルが一番のMVPだろう。
片目とはいえ、悟に目を使わせ
悟の動きに合わせてカウンターを入れている。
「ミゲル、凄い凄い」
「貴方も仕事をしたら?」
「おや?傑の秘書さん」
「夏油様のために少しは動いたら?」
「傑のためには無理かな」
険しい顔をして、睨み付けてくる秘書。
いいように思われてはいないので
もう慣れてはいる。
「私は傑の理想を手伝う気は無いから」
「………貴方」
何かが吹き飛んでいき
視線を向ければ
そこには尻餅をついているミゲル。
派手に吹き飛ばされ
脳が揺れているのか
すぐに立ち上がれずにいる。
その近くには美々子と菜々子もいて
立ち上がる。
「そろそろ撤退かな」
「まだ時間が…!!」
「悟相手によく持った方だよ
あと10分……撤退した方が身のためだよ」
秘書が何か言いたげだったが
二人のところに向かうと
大きな呪霊が近付いて来ていて
悟が一瞬で消し飛ばした。
「ミゲル、大丈夫かい?」
「!?」
「名前カ……大丈夫ニ見エルナラ
オ前ノ目ハ節穴ダゾ」
「美々子、菜々子
今のうちに撤退しな」
「名前さん!!でも!!」
「命を無駄にするんじゃない」
二人がパタパタと走って行くのを見て
悟を見れば、不機嫌な表情でこちらを見てる。
「やっと目の前に現れる気になったんだ?」
「別に隠れていたわけでも
逃げてたわけでもないよ?」
「傑に足止めするようにでも言われた?」
「言われたけど、断った。
私、傑の理想?大義?なんて
どーでもいいし」
「は?
じゃあ、何で高専からいなくなったんだよ」
更にイラついた様子の悟。
「……あの日」
「?」
「あの日、全てがどーでもいいと思った」
「…それだけの理由で非術師を殺したのか」
「アイツらは私の嫌いな奴らと
似ていたからね……
呪術師の自分に嫌気がさして
手っ取り早くいなくなる理由としては
いい駒だったんだ」
にっこりと笑うと
悟のピリピリとした空気が増す。
高専に置いてきた生徒達も傑のことも
気になって仕方ないのだろう。
「傑は高専だよ」
「やっぱりか」
「オイ、名前!!」
「ミゲルもその紐無くなる前に
離脱しておけば?
悟相手によくやったよ」
「僕が行かせるとでも?」
「私らの相手よりも
生徒の方が心配なんでしょ?」
「ねぇ、名前は何がしたいの?
仲良くお喋りしてる暇無いんだけど」
「おや?残念」
まぁまぁ時間稼ぎにはなっただろう。
私もいなくなろうと
悟に背を向ける。
「………名前」
「何だい?」
「僕は名前が好きだったよ」
「………知ってる」
「だから、傑といなくなって
伝言すら無いなんて傷付いた」
悟の言葉に、ふっ、と吹き出す。
「私も悟が好きだよ」
好きだった。
いや、今でも好きなのかもしれない。
「だからこそ、私は君を憎みたくなかった」
お兄さんを殺した悟を
今でも許せない私がいる。
「愛より醜い呪いは無いね」
「悟が一生独身でいることを願うよ」
「嫌な呪いかけないでよ」
「硝子と傑によろしく」
「何て?」
「"来世で会おう"って」
笑って手を振れば
悟は呆れた顔をしていた。
それぞれが散り散りになり
傑は帰って来なかったし
傑が家族と呼んでいた者達の
行方もわからない。
家を借りて、だらだらと
部屋に籠ってのんびりとした生活する。
ピンポーン
チャイムが鳴り
誰だろうとドアを開けば
何者かに抱き締められる。
「ただいま、名前」
「………なーんでわかったかな」
「愛の力かな?」
「死んだんじゃなかったの?」
「勝手に殺すなよ」
もぞもぞと抜け出し
見上げれば
以前と違うのは
額の縫い傷のようなもの
「まぁ、死んでも来世は遠いから
今世で会いに来たんだよ」
「………愛が重い」
「またしばらく、よろしく頼むよ」
「私の平穏どこ行った」
「私や悟に目をつけられた時点で
名前は巻き込まれる運命なんだよ」
ケラケラと笑う傑に
仕方ない、と絆されてしまっている私は
もはや、手遅れなのだろう。
あとがき
そして、呪霊と戯れる名前さん。
呪霊連中からは
傑の金魚の糞扱いだが
こちらに害がないなら
それでいいよ…という感じ。
傑に振り回されつつ
ニートの道へ。
引きこもってないが
何もしたくないから
私に迷惑かけないなら
好きにやってくれ……状態(笑)
闇落ちしたら
ニートの道www
呪詛師していたら祓われちゃうから
人殺したいわけでもないので
ニートになってしまう名前さん。
ただし、傑が構うから
引きこもれない。
たまに構って攻撃して
うざ絡みする真人を
軽く浄化しちゃったり…
続きは力尽きた(笑)