幼馴染は生き残りたい
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「学校はどうだい?」
「ボチボチかな」
肌寒い朝、傑と手を繋いで駅まで歩く。
律儀に登校を一緒に駅まで行ってくれる傑。
なんか……カップル感強くて嬉しくなる。
中途半端な転入生イベントをこなし、既に出来ていた女子グループからお誘いを受けつつ馴染めそうな地味……いや、失礼。
漫画が好きで話の合う友人グループに落ち着き新しい学校でもニヤニヤ推しを愛で共感しつつキャッキャッと騒ぎ、聖地秋葉原にて推しを集める日々。
控え目に言って最高かよ。
何も予定が無ければおじぃちゃんとおばぁちゃんと畑仕事をしながらダラダラ。
「……そうだ、バイトしよう」
東京だぞ。
やりたいことをやろう、と思った私の行動は早かった。
「んっ、や……やめっ」
「は?どの口が言ってるんだ?」
バチュバチュと打ち付けられる腰。
内臓を押し上げられる苦しさと与えられる快感が苦しくて頭が馬鹿になっていく。
どうしてこうなった?
傑に好き勝手されながら身体が震えて目の前がチカチカと白くなる。
綺麗だったシーツは私の諸々の液体でビチョビチョとなり身体に張り付いて気持ちが悪い。
捕まれていた両腕を離されたら力の入らない身体は自然とベッドに沈む。
もう眠たい。無理……と目を閉じかけたが……片足を持たれて傑のガッチリした身体が割って入ってくる。
逃げ出そうとしても力の入らない身体はシーツを握るのが精一杯だ。
「も、もうやだぁ!!」
「名前……私、怒ってるんだよ」
「わ、悪いことしてない!!」
「そうだね。
名前は、悪いこと何一つしていないよ」
「じゃあ」
「それとこれは関係無い」
「んひゃっ!!」
再び沈められた陰茎はズブズブと簡単に飲み込まれる。
逃げようにも片足に乗られ、片足を持ち上げられた体勢は逃げようも無い。
「お金が欲しいなら私が雇ってあげる。
だから今すぐ辞めろ」
「うぅ……」
「聞けないの?」
「やめ、る。やめるからぁっ」
「そう。いい子」
「だから、もう……っ」
「うん。いい子にはご褒美あげるから……ねっ」
「あぁっ!!」
深く深く挿入される陰茎は奥をグリグリこじ開けるように入ろうとする。
「すぐる……っ」
「なんだい?」
光悦とした表情。
割れた腹筋は汗ばんでいて
下ろした髪をかきあげる仕草は色気を増長させている。
「中、締まった」
「……っ」
嬉しそうに笑って顔を近付ける傑に答えるように顔を寄せれば嬉しそうに笑う。
……本当になぜこうなった?
バイトをしようと決めてから、友達に安心・安全でなおかつ給料のいいバイト先は無いかと聞いてみる。
友人らも推しに貢ぐ為ならと自分磨きと共に推し集めに必死なのでお金に飢えている。
私よりも土地勘もあり、いいアルバイトは無いかと相談したら……
「あるよ。可愛くて安心・安全なとこ」
「本当!?」
「今日私バイトだから一緒に来る?」
「行く!」
そうして見学に行ったのは……コスプレ喫茶だった。
店長からの指示でその日にはこんな衣裳を着てと日替わりでコスプレを楽しみつつお金を貰える。
イベントとなれば全員が同じ衣裳になるらしいが、基本給仕活動のみ。制服がコスプレなだけ。
お客はおさわりや個人的な番号交換は禁止しており、万が一そういった事がある場合……店長とのお話し合いが待っている。
ちなみに店長の見た目はどこの銀の魂に出ているの?あ、ご本人ですか?ってレベルの……西郷さんだった。
ガチムチの筋肉にパツパツのメイド服。
お、おっぱいが大きくて大変美しゅうございますね……。
その店長が店の中に立っていたら誰もがそんな馬鹿な事をしでかさない。
いや、いる。
いるけどやらかした瞬間……その男は鼻の下を伸ばしていたのが急に梅干しを食べたかのように酸っぱい顔になる。
西郷さんに密着され、少し湿ったメイド服の脇から飛び出た長い毛先と酸っぱい臭いに犯されてしまっている。
そのまま引きずられ仲良くお話合い(事務室)行きだ。
何事もなく働く店員達。
何事もなく給仕される常連達。
青ざめる初回客と私。
笑顔の店長。
酸っぱい顔のやらかした人。
……安全だな、と謎の説得力を見せ付けられた見学に私はバイトをしたいです!ここで働かせてください!と西郷さんに頭を下げたのでした。
友人が指導役となり、前世では出来なかったコスプレを楽しみ、お給料にうはうは。
私は楽しかった。
すんげぇ楽しかった。
『名前、今日なんだけど』
「ごめーん!バイトあるんだ」
『今日は暇が出来たから…』
「あ、ごめんちゃい!これから友達と出掛けるから!」
『……今日こそは』
「すまーん!急にシフト入った」
バイトが楽しすぎて週5くらい入れてた。
たまに週6。
傑にはバイト始める事を話し、メイド喫茶なんて!!と言われ安全か聞かれたが西郷さんを見せたら黙った。
そしてOKも出た。
毎日こんなことあったよー、こんなことあったよーと傑との登校最中に話し、傑も良かったね。なーんて笑って言ってた。
厄介なお客さんもいたが、西郷さんに敵う人はいなかった。
ヤベェ。この店安心・安全過ぎる……!!と、とにかく楽しかった。
学校生活も楽しい。
バイトも楽しい。
毎日ハッピージャムジャムで浮かれていた。
「アンタが名前?」
「はい?」
「人の彼氏に手ェ出してんじゃねーよ!!」
バチンッ、と叩かれた頬。
ザワツク教室。
フーフーと鼻息荒い女の子。
ついていけない私。
………何事?
友達を見るが目を逸らされる。
え?何?
私知らない間に何かしちまってた?
「……あの、落ち着いて」
「人の彼氏に手を出して落ち着け?は?なめてんの?」
「いや、全く心当たりが」
「ちょっと可愛いからってやっていい事と悪いことあるだろ!」
「えぇっと」
「今すぐスグルから手を引いて2度と関わらないで!!」
ま・じ・か
私の知らないところで傑……彼女いたのか。
見たところ非術師だけど……まぁ、今まだ猿に汚染された脳じゃないもんな。
五条との仲が最有力候補だったが、まだまだ若い青春希望の傑はバイト三昧の私に呆れ果ててしまっていた?
「今すぐ連絡先消して」
「えーっと……いつからお付き合いを?」
「もう1年以上付き合ってるのにポッと転校してきた分際で…!」
「……え、二股?」
「アンタが誘惑してきたって言ってたわよ!!アバズレビッチ!!」
傑……1年も前って私とほぼ被ってねーか?
おま、東京来た瞬間彼女いたのに私にスキスキ言ってたんか。
思いがけない浮気バレ……しかも私が浮気相手だったことにショック受けた。
「……」
「今すぐ連絡先消せっつってんじゃん」
「あの、確認しても?」
「何の確認?」
「私の判断だけでは……」
キーキー騒ぎ立てる女子。
その付き人も好き勝手言ってくる。
とりあえず傑に
【あなたの彼女さんが私を浮気相手だと言って叫んでいるのだが……1年も前から二股してたの?】
と送ってみる。
直ぐに電話が来て出ると『説明しろ』と恐ろしく低い声が聞こえた。
「お宅の彼女だと名乗る方が突撃してきまして」
『名前は』
「さあ?同じ学年だと思うけど顔も今初めて見た」
『………面倒だ。放課後迎えに行くから待ってろ』
「え?でも今日バイト……」
『待ってろ。休め』
「………」
『わかったな?』
あ、これキレてんな。
何故か理不尽な怒りを向けられ此方もイライラしてくる。
傑の彼女……あぁ、面倒だからモブ女Aでいいや。
Aさんに向かって放課後話をつけようと言ってその場を終わらせた。
頬がクソ長い爪で抉られて痛い。
保健室に行って処置してもらう前に一枚写真を撮って西郷さんに送り、申し訳ないがしばらく休む事を連絡する。
西郷さんから大丈夫かと連絡が来たが、顔に傷があるなら店先に顔を出せない事を謝った。
仕事はどうにかなるからお大事にの文字。
ヒリヒリする頬に何だか情けなくなって涙が出てきた。
楽しかった時間があっという間にクソに。
ハッピージャムジャム?
アンハッピーだわ。
そして訪れた地獄の時間。
友人らに気遣われながらも苦笑いで校門へ。
ワーキャーと玄関で騒ぐ女子達は誰が声を掛けるか様子見中だ。
予想通りの校門に居る傑。
友人らもやべ、イケメンがいると騒ぎ出す。
ギャルの先輩らが声を掛けているが……無表情で黙り続ける傑に対し、青ざめてそそくさいなくなるギャル達。
……うん。あれはヤベェ。
私選択肢間違えた?いやいや、私被害者だし!と謎に気合いを入れてから魔王……いや、傑の元へ。
「で?オマエにホラ吹いたクソ女はどこだい?」
「もーすぐ来るんじゃない?」
「オマエの言い訳は後から聞く。
まずは家畜の処理からだ」
家畜?いやまて。家畜っつったぞ?
仮にも彼女だと名乗ってる人の事を家畜って……。
私が浮気相手じゃないと言われているようで安心はするが……残念な気持ちが拭えない。
「顔」
「ん?」
「打たれたのかい?」
「うん」
指先で顎を上に上げられる。
頬に貼られたガーゼに血が染み込んでいる。
顔だから、とまともに処置出来ず、とりあえずガーゼを貼られて腫れているからと冷やしただけ。
「後で硝子に言っておく。
吾朗さんと梅さんに心配かけたくないだろ?」
「………うん」
「言っておくけど私は浮気も二股もしてないよ」
「相手傑だって言ってた」
「私だという証拠は?写真や特徴とか」
「……聞いてない」
はぁ、と溜め息が頭の上から聞こえる。
うつ向いて黙る私に傑の大きな手で引き寄せられる。
「大丈夫。私がどうにかするから」
「………うん」
人に見られようが、ザワツかれようが……
傑の胸元に頭を押し付けて知らないフリしておく。
そうやっていてどれくらい経ったのか……近くに立ち止まる足音に顔を上げたらAさんと男。
「転校したてなのにもう他の男までいるの?
本当ビッチでクソな女ね。
人の彼氏寝取っておいて男に泣きつくようなクソ女最悪だわ。
貴方も騙されていて御愁傷様。見る目無いわね」
「……言いたい事はそれだけか?」
傑の恐ろしい声にビクッと周りの気温が下がった。
「生憎私はオマエのような家畜と付き合った覚えも無ければ顔を見たのも初めてだ。
彼女面して私の恋人を傷物にし、周りの生徒に晒し上げるようにして非難、罵倒したオマエを同種族扱いなんて出来ない。
理解力の足りないツルツルの使い勝手の悪い脳ミソで考えられなかったのか?
そこにいるゴミのような男はなんだ?まさかそんなゴミと私を間違えて、人違いで私の恋人を傷付けた……なんて事言わないよね?」
「……っ、アンタが恋人?話し合わせて逃げようとしてるだけでしょ!?
こっちには証拠があるんだから!!」
「へぇ」
ほら!!と見せられたのは……バイト先のチェキだ。
確かに私だ。すぐるくんへ!!と書いている。
視線を逸らす男を見て……思い出すのは先日の事。
お客さんの中でいやにしつこく絡んできて、馴れ馴れしくチェキを撮った後も離してくれず……すぐに店長のワキの餌食となった男がいた。
……イケメン風に見せかけた一味足りない顔の男だった気がした。
「これ、お店のチェキだ」
「私服だね」
「これは先日行った清楚系週間の時だよ」
「本当かい?」
「毎回自撮りしてるからバイトの日の格好は保存してあるよ」
「後で全て見せてね」
先日行ったアンケートで自宅デートを楽しみたいと希望があり、開催された私服day。
店長好みで揃えられた私服コーデだ。
「ふざけた言い訳並べてんじゃねーよ!!」
「ところでその隣の男は?キミこそ男連れで何様だい?」
「私の彼氏に決まってんだろ!!」
「……だ、そうだが名前。見覚えは?」
「この間バイト先を出禁になった人だと思う」
以前から従業員にセクハラを働き次やらかしたらブラックリストに入る客だったから、事前に教えて貰っていた。
そして見事、先週ブラックリスク入りした。
「私に悪戯行為をして流石に何度も給仕と問題起こしているからって店長がこの間話し合いの末、契約書書いて顔写真撮られて店は出禁になったんだけど……
同じ学校の人だっていうの今初めて知った……」
「人の事馬鹿にすんのもいい加減にっ!!」
「黙れ」
傑の一言で辺り一帯が凍り付く。
「ごちゃごちゃうるさい家畜は黙ってろ」
「か、ちくって……っ」
「おい、オマエ」
「!!」
「口が無いのか?返事くらい出来ないならその飾り私が塞いでやろうか?」
「な………に……」
「オマエの名前はすぐるで、その家畜と1年程付き合っているということでいいな?」
「……そう、だけど」
「奇遇だね。
私も名前がすぐるで彼女と1年程前から交際しているんだ」
声は明るいのに顔は真顔。
氷点下が続く。
「うちの彼女、キミのこと知らないって話しているんだけど?」
「……っ!!」
「まさかとは思うが……キミ達のイザコザに巻き込んだ、なんて事無いよね?」
「……っ、その女が悪いんだよ!!
イチイチ客の態度に大袈裟に反応しやがって!!お陰で俺はいい見世物扱い!!しかも店から追い出されて出入り禁止になったのもその女が!!」
突然大声を出してきた男。
「先輩や友人にセクハラ紛いな行動、プライベートな番号の交換、出待ちの行動を禁止されているという店のルールを破ってしていたのは貴方です。
私もただの接客程度なら我慢出来たけれどお尻触られたり肩組んだり抱き付いてきたりといった行動をして店長が出て来たのは自業自得では?」
「思わせ振りな態度取って誘惑したのはそっちだろ!!」
私何でこんなことに巻き込まれてんの?
勘違いで私が天敵になったって事?
「つまり……
勝手に勘違いしたクソが浮気バレしたから腹いせに名前を利用して?
家畜ごときが私の恋人を怒鳴り付け傷物にし泣かせたって事でいいかな?」
「その女が思わせ振りな態度を取るから!」
「メールの証拠もあるんだっけ?
名前はクソとメールなんてしていないから浮気相手は他にいるってことだね。
で?思わせ振り?
接客態度を勝手に勘違いしたのはそこのクソだろ?」
「……っ」
「で?勘違いだったわけだが………
私の恋人に何か言うことは?」
男女どちらも気まずそうにそっぽを向く。
男が女の腕を引き傑の前を早足に抜け出そうとする。
「正義気取りで女の前でいい奴ぶってんじゃねーよ!!」
「行こ」
「……なるほど。謝る気は無いわけだ」
男の襟首を掴んで地面に転がす。
女もつられて転がっていたところに傑の足が男の顔面スレスレにダンッと叩き付けられる。
「困ったな。
キミのせいで私の彼女は浮気相手というあらぬ疑いをかけられ、私は彼女から二股したクソ野郎扱いされたんだ」
「な、にすんだよ!」
「謝罪も出来ないなら家畜以下だね。
まともな人語を理解出来ない・話せないならその口いらないんじゃないか?」
「んぐっ!!」
男の前にしゃがみ口元を掴む傑。
もごもごしながら抜け出そうとするが、傑相手に抜け出そうなんて無謀だ。
「この後病院に行って診断書貰ってキミ達を警察に訴えてもいいんだよ?
此方は怪我させられているんだから」
「け、警察って……そんな…」
「大事にしたのはキミ達だろ?」
にこり、と笑うが………目が笑っていない。
「あぁ、名前丁度いいや。そこにある石くれないか?」
「石?」
足元にあるのは私には大きすぎる石の塊。
はい、と手渡すとガキッと片手で割った。
もう一度言おう。割った。
小粒となった石同士を握り……ゴリゴリ手の中で擦り合わせる度砂が出てくる。
砂が、出て、くる!!!!!
石が砂になった光景に……周りは静かになった。
「さて、もう一度言うよ。
悪いことしたらどうするって習ったかな?」
「わ、悪かったわね……」
「ごめっ」
「ん?聞こえないな」
「悪かったって言ってんでしょ!!」
「は?それが謝る態度か?」
再び低くなる声にビクリと身体を震わせる二人。
「ご、ごめんってば…」
「しゅいまへ…」
「あぁ、すまない。私が口を押さえていたせいでまともな謝罪の言葉を言えなかったのか」
「すいませ…」
「は?」
「「申し訳ございませんでしたっ」」
「私、言ったよな?
謝るなら誠意を見せて謝ってくれないか?
言葉だけなら簡単だからね」
訳:土下座しろ
青ざめながら土下座をして頭を地面につける二人。
「「申し訳ございませんでした」」
「……聞こえないな」
「「も、申し訳ございませんでした!!」」
「名前、聞こえた?聞こえないよね?」
「あの……傑、そろそろやめてあげて?」
可哀想過ぎてなんかもういいよ。
「2度と店に近寄るな。
2度と名前に関わるな。
これは約束だ……破ったらどうなるかわかるね?」
ボンタン姿の塩顔イケメンに凄まれた2人は頭を縦に振る人形となった。
「さて……まずは硝子のところ行こう。
多分高専に居るから」
「……傑、ごめんね」
「名前は悪くないよ」
傑に手を引かれて歩く。
帰宅途中ずっと黙っていた。
関係者意外立ち入り禁止のため、傑が硝子ちゃんを呼び出してくれる。
「うわ、なした?」
「すまないが硝子……吾朗さんと梅さんに心配かけないためにも傷どうにか出来ないか?」
「襲われた?ちゃんと見とけよ」
「悪いね」
傑は悪くないのに……。
硝子ちゃんの手は暖かくてすぐに治ったとかえってきた。
傑によって優しくガーゼを剥がされ、傷痕をなぞっていく。
「痛みは?」
「無いよ。家入さん、ありがとう」
「夏油、ワンカートンな」
「わかったよ」
さっさと戻って行った硝子ちゃん。
そしておじぃちゃんの家へ……行かずになぜか街へ。
「傑?」
黙って連れていかれた場所は……お察し、ラブなホテル。
ホテル備え付けのソファーに座り……重々しい溜め息。
「携帯」
「……浮気なんてしてないよ」
「違う。店の制服」
早くしろと目が座っている傑に恐る恐る手渡す。
初めてのバイトの日はメイド。
数日間の研修業務中はメイド服で新人であることを示すらしい。
メイド服もバリエーションがあったのでミニ、ロングどちらも着た。
店長はいつまでも初心を忘れないためにメイド服が戦闘服らしい。
そして一週間後には色々なコスチュームを着回した。
真顔でかこかこと進めていく。
怖い。めっちゃ怖い。
バイトをしてだいたい三週間……全ての衣裳を見た傑は重々しい溜め息をついた。
「コスプレ喫茶とは聞いていたけど……」
「駄目、だった?」
「駄目じゃないけど何で私に送って来ないの?」
「いや……恥ずかしいから?」
「接客するのに?」
「それとこれとは……」
コテン、と寄りかかってきた傑。
「……心配かけてごめん」
「名前は悪くないよ」
「ありがと」
傑の頬にキスをする。
今回は本当に……何事かよくわからないまま責められて、結果勘違いでしたなんて最悪だ。
一人なら泣き寝入りしていたかもしれない。
優しく微笑み、頭を撫でながら抱き締めてくれる傑。
「どういたしまして。
……なんて言うと思った?」
「え"?」
突然視界が傑と天井だけに。
頭と背中にソファーの感触が。
「ちょっ、ちょっと待って!!何で脱がすの!?」
「うるさい」
「待って待って!!」
パンツ、スカートと一気に脱がされ適当に放り投げられる。
シャツのボタンを外されブレザーと共に脱ぎ捨てられ、最後の砦だったブラも簡単に取り払われる。
この間わずか3分。
抵抗なんて全く無意味。
全裸になった私の上にのし掛かる傑の指は既にあそこを弄り出す。
「な、んで!?」
「知ってるかい、名前。
私達がこうやって触れあうの1ヶ月……いや、2ヶ月ぶりなんだよ」
「えーっと?」
「引っ越しや任務やバイトが重なって断られ続けているんだ」
「ご、ごめんね?」
「バイト、バイト、バイト。
働く楽しみはいいことだが……少し私を疎かにし過ぎじゃないか?」
「……でも、おじぃちゃん家で会ってるし、毎朝一緒だし」
「そうだね。ヤるだけが恋人じゃないから私も多目に見ていたが………
こんなにも愛しているのに私の気持ちを疑うなんてどうなんだい?」
「んひゃっ!!」
濡れやすい私は弄られてすぐに傑を受け入れられる。
少しキツイものの傑に慣れてしまった私の中は久しぶりの傑を喜んで受け入れてしまう。
「悲しかったよ。
1年も前から二股していると思われたなんて」
「だ、だって」
「名前にとって私の気持ちは他人に言われる事を信じてしまうほど信じられていないとわかったよ」
「んっ、んんっ」
ゆっくり、ゆっくり。
奥を広げていく。
「以前も身体に教え込んでいるのに……まだわかっていないんだね。
それともわざとかな?激しくされたかった?」
「ち、ちがっ」
「お望み通り激しくしてあげるから安心して。
ちゃんとよぉーーーーく、私の愛情を伝えてあげるから」
「ごめっ、ごめんなさっ!!ァッ、ンァッ」
奥を小刻みに何度かつつかれる。
「愛してるよ、名前。
だから……覚悟しなよ、変態」
「本当に馬鹿だね」
「……おまた、痛い」
まだ中に入ってる気がする。
ジンジンしているあそこがムズムズする。
痛みすら快感に繋がりかねない程抱き潰された。
動けない私を整えてから背負って帰る傑はツヤツヤしている。
「ねぇ、傑」
「どうかしたかい?」
「バイト……続けたい」
「なるほど。まだ足りなかった?」
指先をグリッ、と下着に押し付けられる。
背負われているので簡単に押し潰されるあそこにピクンッと身体が揺れる。
「ま、待って!!そうじゃなくって!!」
「バイトをする理由は?」
「……遊ぶお金は勿論欲しいけど」
「なら私が支払うよ」
「……コスプレってお金掛かるからなかなか手出し出来ないし。
けどお店だと店長に頼んだら、かつらもカラコンも用意してくれてお金かからないで楽しめるし」
「ふーん」
「おじぃちゃんとおばぁちゃんが色々してくれるから、たまには二人にプレゼント渡したいし」
今のバイトは正直とっても楽しい。
お給料もいいし、私の趣味も満たされる。
安心・安全な店長もいる。
だからこそ辞めたくはない。
「……吾朗さんと梅さんの話を出されたら断りにくいだろ」
「傑に毎回コスプレしながらエッチなポーズ送るから……駄目?」
「許可しよう」
即答で返ってきた返事に笑ってしまう。
傑もクスクス笑っている。
「店の場所教えて。
硝子連れて行くから」
「竈門さんと五条さんは?」
「危険だから駄目。迷惑かけるだろあの二人」
「納得」
「バイトが楽しいのはいいけれど私との時間も大切にしてくれ」
「……ごめん」
「次は無いよ」
嫉妬深い彼氏は頼りになるけど扱いに気をつけなきゃいけないと学んだ。
あとがき
バイトに嫉妬しつつ、勘違いモブに制裁する話。
若干ヤの雰囲気しかない。
後日あいつやベーのと付き合っていると噂される。
コスプレ喫茶行ったこと無いので妄想と捏造です。
おまけ
「お帰りなさいませ、お嬢様、お坊っちゃま方」
「ただいま、私の可愛い指揮官さん」
「たっだいまー!!可愛い!可愛いねぇ!!
名前ちゃんエロッ!!キャワッ!!」
「軍人?うわー胸元エロ。谷間見えそうじゃん」
「華、五条。この店でセクハラ認定されたら追い出されるみたいだぞ」
「……お嬢様、お坊っちゃま。
ルールを守れないお方はあちらの新人メイドがお付きになられるのでご了承下さい」
「「………………」」
「あちらの新人メイドだと大きなお胸と魅惑の香りに包まれて天にも昇る極上の世界を体験出来ますので」
「「お断りします」」
「ボチボチかな」
肌寒い朝、傑と手を繋いで駅まで歩く。
律儀に登校を一緒に駅まで行ってくれる傑。
なんか……カップル感強くて嬉しくなる。
中途半端な転入生イベントをこなし、既に出来ていた女子グループからお誘いを受けつつ馴染めそうな地味……いや、失礼。
漫画が好きで話の合う友人グループに落ち着き新しい学校でもニヤニヤ推しを愛で共感しつつキャッキャッと騒ぎ、聖地秋葉原にて推しを集める日々。
控え目に言って最高かよ。
何も予定が無ければおじぃちゃんとおばぁちゃんと畑仕事をしながらダラダラ。
「……そうだ、バイトしよう」
東京だぞ。
やりたいことをやろう、と思った私の行動は早かった。
「んっ、や……やめっ」
「は?どの口が言ってるんだ?」
バチュバチュと打ち付けられる腰。
内臓を押し上げられる苦しさと与えられる快感が苦しくて頭が馬鹿になっていく。
どうしてこうなった?
傑に好き勝手されながら身体が震えて目の前がチカチカと白くなる。
綺麗だったシーツは私の諸々の液体でビチョビチョとなり身体に張り付いて気持ちが悪い。
捕まれていた両腕を離されたら力の入らない身体は自然とベッドに沈む。
もう眠たい。無理……と目を閉じかけたが……片足を持たれて傑のガッチリした身体が割って入ってくる。
逃げ出そうとしても力の入らない身体はシーツを握るのが精一杯だ。
「も、もうやだぁ!!」
「名前……私、怒ってるんだよ」
「わ、悪いことしてない!!」
「そうだね。
名前は、悪いこと何一つしていないよ」
「じゃあ」
「それとこれは関係無い」
「んひゃっ!!」
再び沈められた陰茎はズブズブと簡単に飲み込まれる。
逃げようにも片足に乗られ、片足を持ち上げられた体勢は逃げようも無い。
「お金が欲しいなら私が雇ってあげる。
だから今すぐ辞めろ」
「うぅ……」
「聞けないの?」
「やめ、る。やめるからぁっ」
「そう。いい子」
「だから、もう……っ」
「うん。いい子にはご褒美あげるから……ねっ」
「あぁっ!!」
深く深く挿入される陰茎は奥をグリグリこじ開けるように入ろうとする。
「すぐる……っ」
「なんだい?」
光悦とした表情。
割れた腹筋は汗ばんでいて
下ろした髪をかきあげる仕草は色気を増長させている。
「中、締まった」
「……っ」
嬉しそうに笑って顔を近付ける傑に答えるように顔を寄せれば嬉しそうに笑う。
……本当になぜこうなった?
バイトをしようと決めてから、友達に安心・安全でなおかつ給料のいいバイト先は無いかと聞いてみる。
友人らも推しに貢ぐ為ならと自分磨きと共に推し集めに必死なのでお金に飢えている。
私よりも土地勘もあり、いいアルバイトは無いかと相談したら……
「あるよ。可愛くて安心・安全なとこ」
「本当!?」
「今日私バイトだから一緒に来る?」
「行く!」
そうして見学に行ったのは……コスプレ喫茶だった。
店長からの指示でその日にはこんな衣裳を着てと日替わりでコスプレを楽しみつつお金を貰える。
イベントとなれば全員が同じ衣裳になるらしいが、基本給仕活動のみ。制服がコスプレなだけ。
お客はおさわりや個人的な番号交換は禁止しており、万が一そういった事がある場合……店長とのお話し合いが待っている。
ちなみに店長の見た目はどこの銀の魂に出ているの?あ、ご本人ですか?ってレベルの……西郷さんだった。
ガチムチの筋肉にパツパツのメイド服。
お、おっぱいが大きくて大変美しゅうございますね……。
その店長が店の中に立っていたら誰もがそんな馬鹿な事をしでかさない。
いや、いる。
いるけどやらかした瞬間……その男は鼻の下を伸ばしていたのが急に梅干しを食べたかのように酸っぱい顔になる。
西郷さんに密着され、少し湿ったメイド服の脇から飛び出た長い毛先と酸っぱい臭いに犯されてしまっている。
そのまま引きずられ仲良くお話合い(事務室)行きだ。
何事もなく働く店員達。
何事もなく給仕される常連達。
青ざめる初回客と私。
笑顔の店長。
酸っぱい顔のやらかした人。
……安全だな、と謎の説得力を見せ付けられた見学に私はバイトをしたいです!ここで働かせてください!と西郷さんに頭を下げたのでした。
友人が指導役となり、前世では出来なかったコスプレを楽しみ、お給料にうはうは。
私は楽しかった。
すんげぇ楽しかった。
『名前、今日なんだけど』
「ごめーん!バイトあるんだ」
『今日は暇が出来たから…』
「あ、ごめんちゃい!これから友達と出掛けるから!」
『……今日こそは』
「すまーん!急にシフト入った」
バイトが楽しすぎて週5くらい入れてた。
たまに週6。
傑にはバイト始める事を話し、メイド喫茶なんて!!と言われ安全か聞かれたが西郷さんを見せたら黙った。
そしてOKも出た。
毎日こんなことあったよー、こんなことあったよーと傑との登校最中に話し、傑も良かったね。なーんて笑って言ってた。
厄介なお客さんもいたが、西郷さんに敵う人はいなかった。
ヤベェ。この店安心・安全過ぎる……!!と、とにかく楽しかった。
学校生活も楽しい。
バイトも楽しい。
毎日ハッピージャムジャムで浮かれていた。
「アンタが名前?」
「はい?」
「人の彼氏に手ェ出してんじゃねーよ!!」
バチンッ、と叩かれた頬。
ザワツク教室。
フーフーと鼻息荒い女の子。
ついていけない私。
………何事?
友達を見るが目を逸らされる。
え?何?
私知らない間に何かしちまってた?
「……あの、落ち着いて」
「人の彼氏に手を出して落ち着け?は?なめてんの?」
「いや、全く心当たりが」
「ちょっと可愛いからってやっていい事と悪いことあるだろ!」
「えぇっと」
「今すぐスグルから手を引いて2度と関わらないで!!」
ま・じ・か
私の知らないところで傑……彼女いたのか。
見たところ非術師だけど……まぁ、今まだ猿に汚染された脳じゃないもんな。
五条との仲が最有力候補だったが、まだまだ若い青春希望の傑はバイト三昧の私に呆れ果ててしまっていた?
「今すぐ連絡先消して」
「えーっと……いつからお付き合いを?」
「もう1年以上付き合ってるのにポッと転校してきた分際で…!」
「……え、二股?」
「アンタが誘惑してきたって言ってたわよ!!アバズレビッチ!!」
傑……1年も前って私とほぼ被ってねーか?
おま、東京来た瞬間彼女いたのに私にスキスキ言ってたんか。
思いがけない浮気バレ……しかも私が浮気相手だったことにショック受けた。
「……」
「今すぐ連絡先消せっつってんじゃん」
「あの、確認しても?」
「何の確認?」
「私の判断だけでは……」
キーキー騒ぎ立てる女子。
その付き人も好き勝手言ってくる。
とりあえず傑に
【あなたの彼女さんが私を浮気相手だと言って叫んでいるのだが……1年も前から二股してたの?】
と送ってみる。
直ぐに電話が来て出ると『説明しろ』と恐ろしく低い声が聞こえた。
「お宅の彼女だと名乗る方が突撃してきまして」
『名前は』
「さあ?同じ学年だと思うけど顔も今初めて見た」
『………面倒だ。放課後迎えに行くから待ってろ』
「え?でも今日バイト……」
『待ってろ。休め』
「………」
『わかったな?』
あ、これキレてんな。
何故か理不尽な怒りを向けられ此方もイライラしてくる。
傑の彼女……あぁ、面倒だからモブ女Aでいいや。
Aさんに向かって放課後話をつけようと言ってその場を終わらせた。
頬がクソ長い爪で抉られて痛い。
保健室に行って処置してもらう前に一枚写真を撮って西郷さんに送り、申し訳ないがしばらく休む事を連絡する。
西郷さんから大丈夫かと連絡が来たが、顔に傷があるなら店先に顔を出せない事を謝った。
仕事はどうにかなるからお大事にの文字。
ヒリヒリする頬に何だか情けなくなって涙が出てきた。
楽しかった時間があっという間にクソに。
ハッピージャムジャム?
アンハッピーだわ。
そして訪れた地獄の時間。
友人らに気遣われながらも苦笑いで校門へ。
ワーキャーと玄関で騒ぐ女子達は誰が声を掛けるか様子見中だ。
予想通りの校門に居る傑。
友人らもやべ、イケメンがいると騒ぎ出す。
ギャルの先輩らが声を掛けているが……無表情で黙り続ける傑に対し、青ざめてそそくさいなくなるギャル達。
……うん。あれはヤベェ。
私選択肢間違えた?いやいや、私被害者だし!と謎に気合いを入れてから魔王……いや、傑の元へ。
「で?オマエにホラ吹いたクソ女はどこだい?」
「もーすぐ来るんじゃない?」
「オマエの言い訳は後から聞く。
まずは家畜の処理からだ」
家畜?いやまて。家畜っつったぞ?
仮にも彼女だと名乗ってる人の事を家畜って……。
私が浮気相手じゃないと言われているようで安心はするが……残念な気持ちが拭えない。
「顔」
「ん?」
「打たれたのかい?」
「うん」
指先で顎を上に上げられる。
頬に貼られたガーゼに血が染み込んでいる。
顔だから、とまともに処置出来ず、とりあえずガーゼを貼られて腫れているからと冷やしただけ。
「後で硝子に言っておく。
吾朗さんと梅さんに心配かけたくないだろ?」
「………うん」
「言っておくけど私は浮気も二股もしてないよ」
「相手傑だって言ってた」
「私だという証拠は?写真や特徴とか」
「……聞いてない」
はぁ、と溜め息が頭の上から聞こえる。
うつ向いて黙る私に傑の大きな手で引き寄せられる。
「大丈夫。私がどうにかするから」
「………うん」
人に見られようが、ザワツかれようが……
傑の胸元に頭を押し付けて知らないフリしておく。
そうやっていてどれくらい経ったのか……近くに立ち止まる足音に顔を上げたらAさんと男。
「転校したてなのにもう他の男までいるの?
本当ビッチでクソな女ね。
人の彼氏寝取っておいて男に泣きつくようなクソ女最悪だわ。
貴方も騙されていて御愁傷様。見る目無いわね」
「……言いたい事はそれだけか?」
傑の恐ろしい声にビクッと周りの気温が下がった。
「生憎私はオマエのような家畜と付き合った覚えも無ければ顔を見たのも初めてだ。
彼女面して私の恋人を傷物にし、周りの生徒に晒し上げるようにして非難、罵倒したオマエを同種族扱いなんて出来ない。
理解力の足りないツルツルの使い勝手の悪い脳ミソで考えられなかったのか?
そこにいるゴミのような男はなんだ?まさかそんなゴミと私を間違えて、人違いで私の恋人を傷付けた……なんて事言わないよね?」
「……っ、アンタが恋人?話し合わせて逃げようとしてるだけでしょ!?
こっちには証拠があるんだから!!」
「へぇ」
ほら!!と見せられたのは……バイト先のチェキだ。
確かに私だ。すぐるくんへ!!と書いている。
視線を逸らす男を見て……思い出すのは先日の事。
お客さんの中でいやにしつこく絡んできて、馴れ馴れしくチェキを撮った後も離してくれず……すぐに店長のワキの餌食となった男がいた。
……イケメン風に見せかけた一味足りない顔の男だった気がした。
「これ、お店のチェキだ」
「私服だね」
「これは先日行った清楚系週間の時だよ」
「本当かい?」
「毎回自撮りしてるからバイトの日の格好は保存してあるよ」
「後で全て見せてね」
先日行ったアンケートで自宅デートを楽しみたいと希望があり、開催された私服day。
店長好みで揃えられた私服コーデだ。
「ふざけた言い訳並べてんじゃねーよ!!」
「ところでその隣の男は?キミこそ男連れで何様だい?」
「私の彼氏に決まってんだろ!!」
「……だ、そうだが名前。見覚えは?」
「この間バイト先を出禁になった人だと思う」
以前から従業員にセクハラを働き次やらかしたらブラックリストに入る客だったから、事前に教えて貰っていた。
そして見事、先週ブラックリスク入りした。
「私に悪戯行為をして流石に何度も給仕と問題起こしているからって店長がこの間話し合いの末、契約書書いて顔写真撮られて店は出禁になったんだけど……
同じ学校の人だっていうの今初めて知った……」
「人の事馬鹿にすんのもいい加減にっ!!」
「黙れ」
傑の一言で辺り一帯が凍り付く。
「ごちゃごちゃうるさい家畜は黙ってろ」
「か、ちくって……っ」
「おい、オマエ」
「!!」
「口が無いのか?返事くらい出来ないならその飾り私が塞いでやろうか?」
「な………に……」
「オマエの名前はすぐるで、その家畜と1年程付き合っているということでいいな?」
「……そう、だけど」
「奇遇だね。
私も名前がすぐるで彼女と1年程前から交際しているんだ」
声は明るいのに顔は真顔。
氷点下が続く。
「うちの彼女、キミのこと知らないって話しているんだけど?」
「……っ!!」
「まさかとは思うが……キミ達のイザコザに巻き込んだ、なんて事無いよね?」
「……っ、その女が悪いんだよ!!
イチイチ客の態度に大袈裟に反応しやがって!!お陰で俺はいい見世物扱い!!しかも店から追い出されて出入り禁止になったのもその女が!!」
突然大声を出してきた男。
「先輩や友人にセクハラ紛いな行動、プライベートな番号の交換、出待ちの行動を禁止されているという店のルールを破ってしていたのは貴方です。
私もただの接客程度なら我慢出来たけれどお尻触られたり肩組んだり抱き付いてきたりといった行動をして店長が出て来たのは自業自得では?」
「思わせ振りな態度取って誘惑したのはそっちだろ!!」
私何でこんなことに巻き込まれてんの?
勘違いで私が天敵になったって事?
「つまり……
勝手に勘違いしたクソが浮気バレしたから腹いせに名前を利用して?
家畜ごときが私の恋人を怒鳴り付け傷物にし泣かせたって事でいいかな?」
「その女が思わせ振りな態度を取るから!」
「メールの証拠もあるんだっけ?
名前はクソとメールなんてしていないから浮気相手は他にいるってことだね。
で?思わせ振り?
接客態度を勝手に勘違いしたのはそこのクソだろ?」
「……っ」
「で?勘違いだったわけだが………
私の恋人に何か言うことは?」
男女どちらも気まずそうにそっぽを向く。
男が女の腕を引き傑の前を早足に抜け出そうとする。
「正義気取りで女の前でいい奴ぶってんじゃねーよ!!」
「行こ」
「……なるほど。謝る気は無いわけだ」
男の襟首を掴んで地面に転がす。
女もつられて転がっていたところに傑の足が男の顔面スレスレにダンッと叩き付けられる。
「困ったな。
キミのせいで私の彼女は浮気相手というあらぬ疑いをかけられ、私は彼女から二股したクソ野郎扱いされたんだ」
「な、にすんだよ!」
「謝罪も出来ないなら家畜以下だね。
まともな人語を理解出来ない・話せないならその口いらないんじゃないか?」
「んぐっ!!」
男の前にしゃがみ口元を掴む傑。
もごもごしながら抜け出そうとするが、傑相手に抜け出そうなんて無謀だ。
「この後病院に行って診断書貰ってキミ達を警察に訴えてもいいんだよ?
此方は怪我させられているんだから」
「け、警察って……そんな…」
「大事にしたのはキミ達だろ?」
にこり、と笑うが………目が笑っていない。
「あぁ、名前丁度いいや。そこにある石くれないか?」
「石?」
足元にあるのは私には大きすぎる石の塊。
はい、と手渡すとガキッと片手で割った。
もう一度言おう。割った。
小粒となった石同士を握り……ゴリゴリ手の中で擦り合わせる度砂が出てくる。
砂が、出て、くる!!!!!
石が砂になった光景に……周りは静かになった。
「さて、もう一度言うよ。
悪いことしたらどうするって習ったかな?」
「わ、悪かったわね……」
「ごめっ」
「ん?聞こえないな」
「悪かったって言ってんでしょ!!」
「は?それが謝る態度か?」
再び低くなる声にビクリと身体を震わせる二人。
「ご、ごめんってば…」
「しゅいまへ…」
「あぁ、すまない。私が口を押さえていたせいでまともな謝罪の言葉を言えなかったのか」
「すいませ…」
「は?」
「「申し訳ございませんでしたっ」」
「私、言ったよな?
謝るなら誠意を見せて謝ってくれないか?
言葉だけなら簡単だからね」
訳:土下座しろ
青ざめながら土下座をして頭を地面につける二人。
「「申し訳ございませんでした」」
「……聞こえないな」
「「も、申し訳ございませんでした!!」」
「名前、聞こえた?聞こえないよね?」
「あの……傑、そろそろやめてあげて?」
可哀想過ぎてなんかもういいよ。
「2度と店に近寄るな。
2度と名前に関わるな。
これは約束だ……破ったらどうなるかわかるね?」
ボンタン姿の塩顔イケメンに凄まれた2人は頭を縦に振る人形となった。
「さて……まずは硝子のところ行こう。
多分高専に居るから」
「……傑、ごめんね」
「名前は悪くないよ」
傑に手を引かれて歩く。
帰宅途中ずっと黙っていた。
関係者意外立ち入り禁止のため、傑が硝子ちゃんを呼び出してくれる。
「うわ、なした?」
「すまないが硝子……吾朗さんと梅さんに心配かけないためにも傷どうにか出来ないか?」
「襲われた?ちゃんと見とけよ」
「悪いね」
傑は悪くないのに……。
硝子ちゃんの手は暖かくてすぐに治ったとかえってきた。
傑によって優しくガーゼを剥がされ、傷痕をなぞっていく。
「痛みは?」
「無いよ。家入さん、ありがとう」
「夏油、ワンカートンな」
「わかったよ」
さっさと戻って行った硝子ちゃん。
そしておじぃちゃんの家へ……行かずになぜか街へ。
「傑?」
黙って連れていかれた場所は……お察し、ラブなホテル。
ホテル備え付けのソファーに座り……重々しい溜め息。
「携帯」
「……浮気なんてしてないよ」
「違う。店の制服」
早くしろと目が座っている傑に恐る恐る手渡す。
初めてのバイトの日はメイド。
数日間の研修業務中はメイド服で新人であることを示すらしい。
メイド服もバリエーションがあったのでミニ、ロングどちらも着た。
店長はいつまでも初心を忘れないためにメイド服が戦闘服らしい。
そして一週間後には色々なコスチュームを着回した。
真顔でかこかこと進めていく。
怖い。めっちゃ怖い。
バイトをしてだいたい三週間……全ての衣裳を見た傑は重々しい溜め息をついた。
「コスプレ喫茶とは聞いていたけど……」
「駄目、だった?」
「駄目じゃないけど何で私に送って来ないの?」
「いや……恥ずかしいから?」
「接客するのに?」
「それとこれとは……」
コテン、と寄りかかってきた傑。
「……心配かけてごめん」
「名前は悪くないよ」
「ありがと」
傑の頬にキスをする。
今回は本当に……何事かよくわからないまま責められて、結果勘違いでしたなんて最悪だ。
一人なら泣き寝入りしていたかもしれない。
優しく微笑み、頭を撫でながら抱き締めてくれる傑。
「どういたしまして。
……なんて言うと思った?」
「え"?」
突然視界が傑と天井だけに。
頭と背中にソファーの感触が。
「ちょっ、ちょっと待って!!何で脱がすの!?」
「うるさい」
「待って待って!!」
パンツ、スカートと一気に脱がされ適当に放り投げられる。
シャツのボタンを外されブレザーと共に脱ぎ捨てられ、最後の砦だったブラも簡単に取り払われる。
この間わずか3分。
抵抗なんて全く無意味。
全裸になった私の上にのし掛かる傑の指は既にあそこを弄り出す。
「な、んで!?」
「知ってるかい、名前。
私達がこうやって触れあうの1ヶ月……いや、2ヶ月ぶりなんだよ」
「えーっと?」
「引っ越しや任務やバイトが重なって断られ続けているんだ」
「ご、ごめんね?」
「バイト、バイト、バイト。
働く楽しみはいいことだが……少し私を疎かにし過ぎじゃないか?」
「……でも、おじぃちゃん家で会ってるし、毎朝一緒だし」
「そうだね。ヤるだけが恋人じゃないから私も多目に見ていたが………
こんなにも愛しているのに私の気持ちを疑うなんてどうなんだい?」
「んひゃっ!!」
濡れやすい私は弄られてすぐに傑を受け入れられる。
少しキツイものの傑に慣れてしまった私の中は久しぶりの傑を喜んで受け入れてしまう。
「悲しかったよ。
1年も前から二股していると思われたなんて」
「だ、だって」
「名前にとって私の気持ちは他人に言われる事を信じてしまうほど信じられていないとわかったよ」
「んっ、んんっ」
ゆっくり、ゆっくり。
奥を広げていく。
「以前も身体に教え込んでいるのに……まだわかっていないんだね。
それともわざとかな?激しくされたかった?」
「ち、ちがっ」
「お望み通り激しくしてあげるから安心して。
ちゃんとよぉーーーーく、私の愛情を伝えてあげるから」
「ごめっ、ごめんなさっ!!ァッ、ンァッ」
奥を小刻みに何度かつつかれる。
「愛してるよ、名前。
だから……覚悟しなよ、変態」
「本当に馬鹿だね」
「……おまた、痛い」
まだ中に入ってる気がする。
ジンジンしているあそこがムズムズする。
痛みすら快感に繋がりかねない程抱き潰された。
動けない私を整えてから背負って帰る傑はツヤツヤしている。
「ねぇ、傑」
「どうかしたかい?」
「バイト……続けたい」
「なるほど。まだ足りなかった?」
指先をグリッ、と下着に押し付けられる。
背負われているので簡単に押し潰されるあそこにピクンッと身体が揺れる。
「ま、待って!!そうじゃなくって!!」
「バイトをする理由は?」
「……遊ぶお金は勿論欲しいけど」
「なら私が支払うよ」
「……コスプレってお金掛かるからなかなか手出し出来ないし。
けどお店だと店長に頼んだら、かつらもカラコンも用意してくれてお金かからないで楽しめるし」
「ふーん」
「おじぃちゃんとおばぁちゃんが色々してくれるから、たまには二人にプレゼント渡したいし」
今のバイトは正直とっても楽しい。
お給料もいいし、私の趣味も満たされる。
安心・安全な店長もいる。
だからこそ辞めたくはない。
「……吾朗さんと梅さんの話を出されたら断りにくいだろ」
「傑に毎回コスプレしながらエッチなポーズ送るから……駄目?」
「許可しよう」
即答で返ってきた返事に笑ってしまう。
傑もクスクス笑っている。
「店の場所教えて。
硝子連れて行くから」
「竈門さんと五条さんは?」
「危険だから駄目。迷惑かけるだろあの二人」
「納得」
「バイトが楽しいのはいいけれど私との時間も大切にしてくれ」
「……ごめん」
「次は無いよ」
嫉妬深い彼氏は頼りになるけど扱いに気をつけなきゃいけないと学んだ。
あとがき
バイトに嫉妬しつつ、勘違いモブに制裁する話。
若干ヤの雰囲気しかない。
後日あいつやベーのと付き合っていると噂される。
コスプレ喫茶行ったこと無いので妄想と捏造です。
おまけ
「お帰りなさいませ、お嬢様、お坊っちゃま方」
「ただいま、私の可愛い指揮官さん」
「たっだいまー!!可愛い!可愛いねぇ!!
名前ちゃんエロッ!!キャワッ!!」
「軍人?うわー胸元エロ。谷間見えそうじゃん」
「華、五条。この店でセクハラ認定されたら追い出されるみたいだぞ」
「……お嬢様、お坊っちゃま。
ルールを守れないお方はあちらの新人メイドがお付きになられるのでご了承下さい」
「「………………」」
「あちらの新人メイドだと大きなお胸と魅惑の香りに包まれて天にも昇る極上の世界を体験出来ますので」
「「お断りします」」