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五条悟とは数百年ぶりに産まれた六眼と無下限呪術の術式を持つ呪術界最強の男である。
その男児から同じ六眼と術式をあわせ持つ子を産むべく選ばれた婚約者達。
本人達の意思などは関係無く血と術式と子を遺す為に揃えられた数人の婚約者候補達。
数人の婚約者候補の中……五条悟のお気に入りは居た。
幼い頃より兄弟のように育ちながら五条悟に寄り添って生きてきた娘。
「大丈夫か、名前。
今日は天気がいいから無理すんなよ」
「ありがとうございます、悟様」
守られて当然、というような幼い顔立ちに華奢な姿。
強い術式の代わりに体力も無く身体も弱い名前は呪術界の為にと献身的に身を粉にして働き、酷ければ熱を出して寝込む。
五条悟はその度に名前の面倒を見ていた。
同級生の夏油傑も家入硝子も名前の呪術界にはいない穏やかで暖かな弱い存在に加護欲やら愛着やら諸々絆されて蝶よ花よと大事に扱った。
それとは反対にもう一人、五条悟には同じ年の婚約者がいた。
此方は京都校に在籍しているもののめったに五条悟との逢瀬は無い。
年に数回……五条悟の気が向けば顔合わせを行う程度。
名を雛菊と言った。
幼い頃に同じように育って来たものの名前との扱いは雲泥の差がある。
五条悟は雛菊を見れば表情を無くし、雛菊の話す内容を聞き流しながら適当に相槌を打つ程度。
かと思ったらさっさと理由をつけていなくなる。
同じ婚約者候補。
同じ幼馴染。
五条悟は名前だけを東京校に連れていき雛菊は一言も声を掛けられず入学してから二人が東京校に入学した事を知った。
「オマエさえ……オマエさえいなければっ!!」
雛菊は己の術式を何度も何度も勉強し、追究した。
そして一つの可能性に辿り着く。
「これで、私も……悟様にっ」
雛菊の高笑いは京都校の高専に響き渡った。
東京校と京都校の交流会。
五条悟と夏油傑は異例の強さと人数の少なさから特別に1年だが参加が認められた。
家入硝子は参加はしないものの貴重な反転術式の使い手の為に万が一を考えて同行。
名前は五条悟の独断により同行。
京都校に来た面々は早速団体戦で圧勝。
2人の最強の前に京都校は手も足も出なかったが口だけは達者だった。
「悟様、お久しゅうございます」
「あー……うん」
「雛菊様、お久しぶりですね」
「……名前様もお久しゅうございます」
「悟、彼女は?」
「京都に知り合い居たのか」
雛菊がこっそり五条悟に会いに行くと予想はしていたものの名前がいて少しだけ面白くない。
夏油傑と家入硝子が何だと雛菊を見るが五条悟はあまり口にしたくないというように口を閉じる。
雛菊は夏油傑を見ながらにこりと笑う。
「私は五条悟様の婚約者の雛菊ですわ。
どうぞよろしく」
「婚約者?
婚約者なら名前が居るだろ?」
「……家が決めた婚約者は複数居るんだよ。
ソイツはその一人」
「へー。まるで大奥だな」
「どいつもこいつも俺の子を産んで術式も六眼も引き継げたらソイツの家の地位が上がるんだから」
五条悟が雛菊を汚いものでも見るように視線を向ける。
「悟様、名前様はお疲れではないでしょうか?
今日みたいな暑い日は名前様のお身体にもよろしくないでしょ?
私が案内いたしますので名前様を休憩所へお連れしますわ」
「いい。俺が連れて行く」
「悟様、私は雛菊様と向かいます。
もうすぐ個人戦ですよね?」
「けど」
「ご武運をお祈りしております。あまりはしゃがぬように」
くすり、と笑う名前。
柔らかく微笑む名前に五条悟は頬を緩ませる。
「すぐ戻るから待ってろよ」
「はい。
悟様、傑様いってらっしゃいませ」
「いってくるね、名前。
硝子頼んだよ」
雛菊は内心舌打ちをした。
家入硝子が居ては面倒だ…が、想定内だ。
個人戦が始まる時間……ゆっくりゆっくり名前のペースに合わせて歩くフリをしながら目的の場所へ。
休憩所に案内するフリをして家入硝子を突飛ばし、名前の腕を引く。
「!?」
「アンタさえいなければ私は幸せになれんのよっ!!」
名前と共に予め術式を付与した教室に引き込む。
自分と名前が術式内に入れば準備完了。
「オマエは2度と悟様の視界に入らない!!
オマエはその身に起こる様々な苦痛に心を壊されながら狂い死ね!!」
二人分の叫び声。
家入硝子は間に合わなかった事に舌打ちしながら気絶した名前をざっと見る。
自身の目にはただの気絶に見えるが……相手がどんな術式持ちでどんな術を使ったか見当もつかない。
万が一を考えて五条悟へ連絡。
「五条!!オマエのもう一人の婚約者が名前に何かの術式を使った!!
どちらも気絶している……」
すぐ行く、と切られた電話。
二人の婚約者はピクリとも動かない。
頭がふわふわする。
ここは……なんだろう。
目が覚めると……何やら硬い床に転がされていた。
「起きたかい?」
「あ、傑様」
「悟は来ないよ」
何やらいつもとは違って恐ろしい顔をしている。
どうしたのかと頭を傾げてみるが、より眉間にシワが寄るだけ。
「キミがしでかした術式で名前が倒れた。
一体何をしたんだ?
悟の眼で見てもぐちゃぐちゃに絡まった情報しか見えないそうだ」
「傑様、私は………???」
おや?名前を告げようとしたら名前を言えない。
何度口にしてもパクパクと声が出ない。
「キミがどうにか術式を解かなきゃ最悪呪詛師認定される事になる。
今は上層部でキミの扱いをどうするか緊急で話し合われてる……それまでにどうするか決めておく事だ」
「呪詛師ですか?」
「あぁ。そうだよ雛菊嬢」
「……あら?」
よく自分の服装を見れば雛菊様が着ていた服装だ。
何かの手違いでどうやら私……名前は雛菊様の身体に精神のみ入ってしまったようだ。
困った。
このままでは雛菊様の身体がありもしない罪で呪詛師として裁かれてしまう。
それはいけない、と異議申し立てしよう。
「傑様、あの」
「悪いが名前のように呼ぶのはやめて貰えるか?
大切な友人を害されて黙っていられるほど……私の気は長い方じゃ無いんだ」
傑様がお怒りになられている。
雛菊様の身体も危ういしどうしたものか……。
「自身の行いを反省して早く名前にかけた呪いをどうにかする事だね」
ガチャンと締められた扉。
異議申し立てをしようとしても真犯人をどうにかしなければ。
しかし、身体の弱い私では犯人探しに………
「あら?」
いつもなら起きているだけで体力を使うし気を抜けば倒れてしまう貧弱な身体。
酷使すれば熱が出てしまうというのに……。
雛菊様の身体は何と丈夫なことか!!!
なるほど、これが健康な肉体!!
ほぅ、と雛菊様の身体に惚れ惚れしてしまう。
立ち上がっても立ちくらみはしない。
手足を伸ばして回っても倒れない。
跳び跳ねても息が上がらない。
「素晴らしい!!
この肉体なら悟様の子を5〜6人は平気そうですね」
私の肉体だと子を一人産めればよい方。
下手すれば夜伽すら命を掛けて挑まねばならないほど貧弱な身体の為、何度悟様からのお誘いをお断りしてしまったことか。
子を孕んだとしても出産とは命懸け。
腹で育てる合間に私の肉体が持たない。
悟様も子を成す前に逝かれたとなれば跡継ぎ問題に支障もあるでしょう。
「あ……でもいけませんね。
雛菊様のお気持ちもございますのに子を産む為に存在する私と違って雛菊様には雛菊様の未来がございます」
私の一存で勝手に子を産もうなどとはよろしくない。
まずは犯人を見付けなければ雛菊様の無実を!!
………と、思っていたのですが。
私はなぜか縛り上げられ悟様に抱かれ息苦しそうにしながら此方を睨み付ける私(in雛菊様)と硝子様と傑様。それに交流会も終わったのか他の皆様まで揃っている。
何故こんなことに?雛菊様の身体が危ないのでは?
「悟様、あの……」
「黙れ。オマエ……自分が何をしたのかわかっているのか?」
聞き慣れない低い声。
はて?悟様は何を怒っていらっしゃるのか。
「名前に何をした」
「悟様、誤解です。私も彼女も何者かの術式に当てられ…」
「フザケンナッ!!
オマエは家が選んだ候補の一人でしかないのに、図々しい……っ」
「あら、それは私だけではございませんよ?
私も、その他の婚約者様も悟様が成人なさった時の為の保険。
まだ誰も正妻には決まっておりませんし、その後、婚約候補達は悟様の側室として当てられます」
私は正妻になるには身体が弱すぎる。
なので五条家での立場は弱い。
いくら母体として優秀でもこの身体の弱さでは次世代の子を成すにはポンコツ過ぎる。
なので、悟様はそんな憐れな私をペットのように可愛がっているだけ。
「黙れっつってんだろ!!」
「あの、大丈夫でしょうか?
………彼女のお顔の様子がよろしくないので早く横にしてあげた方が」
あの様子だと私の身体はポンコツを発揮しているらしい。
なのに此処にいる人々は揃いも揃って何をしたいのでしょう?
「悟……様…っ」
雛菊様(外見私)が切ない顔をしながら悟様に抱き付く。
「くる、しっ」
「名前っ!!」
「名前様、きちんと呼吸した方がよろしいですよ。吐くことに集中なさってくださいな。そのご様子だと熱も出ていると思うので脇と首を冷やして少し横になってから……」
「オマエのせいでこうなってんだろ!!
何も知らねぇ癖に……っ、名前を知ったように言うんじゃねぇよドブスがっ!!」
「悟様、女性に向かってそのようなことよくありません」
「名前の真似すんな!!」
顔を歪めて吠える悟様。
まったく、いくつになっても癇癪が過ぎる。
私の前だといくらかマシになってきたとはいえ……次期御当主がこんなんだと先が思いやられる。
現御当主様も頭を悩ませて胃痛を訴えていた。
「名前以外を選ぶ気は無い。オマエは五条家を通してオマエの家に破談を言い渡す」
「……悟様、お言葉を控えてくださいませ。
名前様は悟様と結婚は出来ませんよ?
子を成すことの出来ない名前様だけは五条家がお許しになりません」
「うるせぇっ!!」
何を言っているんだ、この人は。
人の多いこんなところで宣言しては他の婚約者の方々の耳に入るかもしれないのに。
それは即ち、優秀な候補の方々を他の家に取られてしまうということ。
ただでさえ見目は良くても暴君で我が儘で態度の悪い悟様の身勝手な部分は候補の方々に不人気だというのに……これ幸いとさっさと正式に違う方と婚約して逃げられてしまう。
私が何度も菓子折り片手に引き留めて頭を下げながら愚痴を聞いている状況なのに……っ!!
候補の方々に逃げられたら心の広い雛菊様しか残らないんだぞ!!この危うい状況をわかって……いないんだろうなぁ。
「心の広い私(雛菊様)の何処が嫌なのですか?
身体も丈夫。術式も使い勝手が良い。勉強熱心で、悟様を好いている。……貴方を裏切る方では無い私(雛菊様)こそ悟様が目をかけるべきでは?」
「オマエ……っ!!」
いや、本当に。
悟様のこの暴君さを見ても慕って下さるなんて貴重ですよ?
「いつもいつも周りに媚びて色目使って、補助監督には当たり散らしてる噂聞いてんだぞ」
「あら……」
それ、どこの悟・五条のお話でしょうか?
「自分の我が儘が通らなかったら癇癪起こして騒いでるんだってなぁ?」
それ、どこのSATORUでしょう?
「そんなクソみてぇなオマエをどこの誰が好きになるって?」
「あの、悟様ご自身の事を語られても……
そもそもこの状況は何をなさりたいのか理解出来ないのですが」
「「はぁ!?」」
「「ッッッッ!!!」」
「悟様が残念なのは今に始まった事ではございませんのに……えーっと、何が言いたいのか、サッパリ」
雛菊様と悟様のお顔が般若のように険しくなる。
その後ろや周りにいる方々は何故か震えている。
「そろそろ此方の縄を外して下さい。
女性の身体を冷たい地面の上に座らせ長々とご自身の不徳を語られても私と彼女に掛かった術は解けませんよ?」
「オマエが名前に掛けたんだろ!
だから解けっつってんだよ!!」
「何のための六眼でしょうか?」
他の方々にわからなくても、貴方だけはその眼で見えるでしょうが。
そういえば傑様がわからなかったと言っていましたね。
「散々天才だ、最強だと騒いでいるのにわからないんですか?」
「う、うるせぇ!!!」
「努力が足りないのでは?」
確かに……と納得し始める周囲の方々。
「……聞いていた話より随分と性格が違うね」
「名前みたいだな」
傑様と硝子様が不思議そうにしている。
「こんなブスと名前が似てるって?
んなわけねーだろ」
「いや、似てるよ」
「五条の事を此処まで淡々とボロクソ言うとことか」
「傑様、硝子様っ!」
もしや、入れ替わっている事に気付いて?
嬉しくなって見つめれば困った顔をされる。
「名前が俺をボロクソ言うわけねーだろ」
「悟……」「五条……」
あぁ、辞めてあげてください。
普段身体がしんどすぎて口数を減らしてしまったが故に私を勘違いさせてしまうなんて……。
こんなことなら熱の合間に魘されて愚痴るのを硝子様や傑様だけじゃなく悟様の前ですべきか?
でも悟様一つ言うとすぐに拗ねて聞く耳持たないから言うことすらしんどい。
都合のいいように解釈して誤魔化すから何度も何度も同じ事を言うのがしんどい。
「悟様……何度も申し上げておりますが、都合良く解釈して私を美化するのはお辞めください」
「オマエの話じゃねーっつの!!」
「この身体は健康で話続けてもしんどくならないので言わせていただきますけど……
五条家当主になられるのであれば、まずはその言動を正してください。
いつまでも反抗的態度を取っても世界は貴方の思い通りにはなりませんよ。
確かに実力はありますが、扱いきれない力を振りかざしても周りに迷惑がかかります。
貴方の傲慢な態度と無くてもいい大雑把な破壊行為のせいで掛からなくて良い修繕費を補助監督の方々が何度も頭を下げて上の方々に取り合って貰えず胃痛と頭痛と精神を悩ませているかお分かりで?綿密な調整が出来ない?貴方の実力不足でしょうが。
貴方の言動一つで下の者達が苦労し、下げなくていい頭を下げているのですよ?貴方が本来下げなければならない頭を!!
だから常日頃から傑様にも注意されているというのに貴方ときたら………」
あら、素敵!!!
こんな一息に話しても疲れない!!!
ペラペラと回る舌に、痛まない喉!!
あぁ、なんっって素晴らしい雛菊様のお身体!!
「夜伽であっても此方が熱を出しているのに興奮していると勘違いなさって事を進めようとするのはいかがなものかと。
あぁ、だからと言って若い補助監督の方に手を出すのも控えて下さいませ。
何かと嫌味を言われるのは慣れておりますが、体調不良が常にある身体で長々と貴方との素敵な一夜の話を聞かされるのは時間の無駄ですから。
婚前前だから、なんてお年頃の貴方に言うつもりはございませんが他の健康で貴方好みの胸も尻もあるような候補の方々がいらっしゃるのだから次期当主らしく外で発散して種の無駄打ちをなさるなら相応の覚悟をしてください。
後から子供が出来ましたって報告されると他の候補の方々の時間と気苦労の日々が泡となります。彼女達にも心に決めた者や慕っている者がいるなか、五条家に選ばれた事で苦労なさっている方々もいらっしゃるのですから。
貴方ばかりが好き勝手なさると困る方々が沢山いるのですよ?あれが嫌だ、これが嫌だと癇癪を起こして反抗したいのなら早々に当主の地位につき、候補の方々を解放なさってからお好きなように振る舞ってくださいませ」
フンッ、と普段言えないことを言えば周りはポカンとする。
早々にハッとした傑様が私の縄をほどいて手を差し出してくれた。
「ありがとうございます、傑様」
「驚いた……名前、かい?」
「何故かこのような事態となっておりますが、以前の私ではない私ですね」
「……もしかして自分の事を言えない縛りが?」
「そのようです」
困りました……と言えば、元気そうで何よりだと困った顔で笑われる。
硝子様も近付いてきて困った顔をされる。
「ごめんね。すぐに気付いてあげられなくて」
「……名前、でいいんだよな?」
「仕方がないですよ。私もまさかでしたから」
「中身が入れ替わっているのかい?術式は?」
「駄目です。私自身の術式では無いので扱いきれません」
「それは困ったな」
「困りました。
けど、お二人が気付いてくださって良かったです!無実の罪で此方の身体に何かあっては申し訳無いですし……何より、あのようなガラクタの肉体ではお辛いでしょうに」
雛菊様を見ればゼーゼーと息苦しそうだ。
だから早く寝かせてあげて。
「……雛菊は溺愛されている名前に成りたかったのか?」
「流石ですよね!
悟様をお慕いする崇高な気持ち……とても素晴らしく、尊く、健気でいらっしゃるというのに悟様ときたら……」
「いや、名前。そこまでにしておけ」
「名前、悟の頭がついていけてないから一旦落ち着こう」
「……この肉体であれば悟様の子を何人産んでも頑丈で逞しく元気な子を産めると思います」
「名前、落ち着け」
「元気になりすぎた反動だな」
「硝子も止めて」
「……!!
悟様、今の私なら悟様のありすぎる欲望をどうにか出来るかもしれません!!!
いつもいつもお断り申し上げて心苦しかったのですが、この肉体ならば!!」
「「名前、落ち着こう」」
「あ、そうですよね……私ばかりの判断ではなく本人の許可無く致すのは良くありませんもの。
ですが、候補としての勤めを果たすと考えたら……」
「「名前!!」」
あら、いけない。
いくら雛菊様が悟様を慕っているとしても勝手に事を進めてはいけませんよね。
「惚れ惚れするほど健康です……。
乳房も大きく重く……肩が疲れないのでしょうか?
私には無い物ですし、悟様好みだとは思うのですが」
「辞めてあげよう。あの二人そろそろ限界だから」
「あぁ、身体が心配なら側で見ていてくださって私が変なことをしないように名前様(雛菊様)もご一緒の寝所に!!」
「「辞めてあげて」」
傑様と硝子様の説得によりまずは入れ替わりの術をどうにかすることを優先することに。
雛菊様(in私)と私(in雛菊様)は東京の高専預かりとなり日々解呪方法を考えている。
何故か悟様はあの後べそべそしながらすがり付いてきたが……何かあったでしょうか?
ちなみに雛菊様は私のポンコツな肉体のせいで寝込んでしまっている。
「術式も扱えない私など蠅頭と代わりありません……。
任務には行け無いのでせめて補助監督のお仕事を……」
「お願いだから黙って居てくれ」
「では、彼女の許可を頂き悟様との子作りを……」
「やだ。絶対シねぇ!!」
「困りました……」
「名前イカれてんな」
「硝子様、呪術界に産まれ育ってまともな感性の持ち主など稀少ですよ。
それこそ彼女のような真っ直ぐに人を思いやれる存在こそ稀ですもの」
「思考回路が5周廻ってぶっ壊れてんな」
「此処まで慈悲?深いと逆に稀少なんじゃないか?」
「ありがとうございます!」
「「褒めてない褒めてない」」
いつまでも雛菊様に熱と苦しみを与え続け意識を朦朧とさせてしまう肉体を貸し続けるなんて心が痛む。
話によると雛菊様が掛けた術式なので、雛菊様自身が解かなければこのままらしい。
が、肝心の雛菊様は倒れてしまい意識が無いし、あっても熱に悩まされて身動き一つ取れずベッドから動けない。
「使えねぇ…」
「悟様、申し訳ございません。肉体が脆弱なばかりに健康でいらした方にはお辛いのかと。
熱に悩まされて身動き出来ない今だからこそ、真の健康を目指し鍛え上げたい所ではあるのですが」
「変態な思考回路だね」
「もうこのままの名前と結婚しちまえばいいだろ」
「嫌だ!!中身は名前だけど……っ」
歯切れ悪く言葉を濁す。
チラチラと私の顔を見ては気まずそうに顔を逸らす。
「……悟様、もしや」
「……そうだよ。俺は…」
「外見だけで人の好き嫌いを…?」
「違う!!いや、違わないのかもしれねーけどっ」
「最低だな」
「クーズ」
「傑にだけは言われたくねぇっ!!」
雛菊様は凛々しいお顔をしている。
いつもは目元を強調した素敵なメイクをしているが、私はずっとお付きの人が正式の場で少し化粧をしてくれる程度しか触れる機会が無かったので羨ましい。
申し訳ないが、今は基礎化粧のみでほとんど素っぴんだ。
「五条家現当主様が貴方様の要望を聞いて集められた方々ですのに……何がご不満が?」
「………名前、じゃねぇじゃん」
「私はどちらかと言えば悟様のご要望から外れておりますのに」
「俺は!!名前がっ!!」
「あら、ありがたいですねぇ。
ですが悟様の望む胸元も尻もございませんよ?」
「それは俺が育てれば!!」
「育つには些か成長期を過ぎてしまったので申し訳無いです」
「オマエ実は俺の事嫌いなの!?」
「まさか!!
悟様を面倒に思った事はあっても、このポンコツを選んで可愛がって頂いている身としてなぜ嫌いに?」
はて?
嫌いならばさっさと離れるしこんな口うるさく言わない。
「悟様に拾われなければ私など離縁されても良い所」
「名前……」
「悟様の愛玩動物として精一杯頑張ります!」
「違う!!」
「あら、もうこんな時間……お薬のお時間ですので私は行きますね」
雛菊様にお薬を作らねば。
己の体調で薬を調合しなければならないので雛菊様を起こして話を聞かなければいけず、眠っているところを起こすのは申し訳ないが、この薬を忘れると後々大変になってしまうから。
「……悟、もうこのままでいいんじゃないか?」
「健康だしノリノリで子作りしてくれるってさ」
「違う!!俺は名前の弱いところ含めて守りたくて!!」
「「弱い?」」
「俺だけが全てだって慕って支えてくれる名前が……」
「あながち間違いじゃないな」
「本人愛玩動物感覚だけどね」
「儚くて……」
「「儚いとは?」」
「………今まで俺が見てきた俺のか弱くて可愛い名前が…」
「鋼メンタルだね」
「図太いイカれた女だろ」
「あああああああっ!!!!」
頭を抱えながら今までの思い出が崩れる悟に傑と硝子は指を指して爆笑した。
あとがき
身体は軟弱、心は鋼の夢主。
めっちゃ鋼メンタルの彼女の漫画をオススメしたい。
皆様「ふつつかな悪女」してる漫画読んで!!
※今回の話は私が考えた設定ではございません
※とある漫画の設定を呪術に当てはめて書いております
※ふつつかな呪術パロディー?
悟が可哀想な扱いwww
悟→
婚約者達は見た目と地位が欲しいんだろ?うっぜー。
夢主すきすき。俺の事わかってくれるのは夢主だけ。
夢主→
瀕死の時こそ己を越える最高の状態。
死に際こそ己の力を最大限に解放出来る!!しんどい!!けどコレを乗り越えた先にまだ見ぬ己の真髄がそこに!!
弱いなら鍛えてみせようこのボディ。
身体が弱いので子供が出来そうにも無いので菓子折り持ちながら他の婚約者達に頭を下げて回っている。
お願いだから誰か子供作って!!
悟の事は可愛い手のかかる弟と思っている。
恋愛感情?ありませんね!
婚約者候補の方々→
五条家からの圧力により此方から破談出来ないし、したら自分達は五条家から破談された使えない娘と烙印を押されてしまう。
顔と地位と金があっても無理。
夢主が頭を下げて頑張るから渋々耐えているが子作り?ノーセンキュー。
オメーとだけは結婚したくねぇ!!!
雛菊→
幼い頃から乙女フィルターにより初恋を拗らせているだけ。
根はいいこだが、産まれが身分違いなので周りから卑下され馬鹿にされ疎まれてきた。
夢主になれば愛されると思って決行したもののあまりのポンコツな肉体にダウン。
何この身体……自由が、自由が効かない……っ。
多分一番可哀想なのはこの子。
その男児から同じ六眼と術式をあわせ持つ子を産むべく選ばれた婚約者達。
本人達の意思などは関係無く血と術式と子を遺す為に揃えられた数人の婚約者候補達。
数人の婚約者候補の中……五条悟のお気に入りは居た。
幼い頃より兄弟のように育ちながら五条悟に寄り添って生きてきた娘。
「大丈夫か、名前。
今日は天気がいいから無理すんなよ」
「ありがとうございます、悟様」
守られて当然、というような幼い顔立ちに華奢な姿。
強い術式の代わりに体力も無く身体も弱い名前は呪術界の為にと献身的に身を粉にして働き、酷ければ熱を出して寝込む。
五条悟はその度に名前の面倒を見ていた。
同級生の夏油傑も家入硝子も名前の呪術界にはいない穏やかで暖かな弱い存在に加護欲やら愛着やら諸々絆されて蝶よ花よと大事に扱った。
それとは反対にもう一人、五条悟には同じ年の婚約者がいた。
此方は京都校に在籍しているもののめったに五条悟との逢瀬は無い。
年に数回……五条悟の気が向けば顔合わせを行う程度。
名を雛菊と言った。
幼い頃に同じように育って来たものの名前との扱いは雲泥の差がある。
五条悟は雛菊を見れば表情を無くし、雛菊の話す内容を聞き流しながら適当に相槌を打つ程度。
かと思ったらさっさと理由をつけていなくなる。
同じ婚約者候補。
同じ幼馴染。
五条悟は名前だけを東京校に連れていき雛菊は一言も声を掛けられず入学してから二人が東京校に入学した事を知った。
「オマエさえ……オマエさえいなければっ!!」
雛菊は己の術式を何度も何度も勉強し、追究した。
そして一つの可能性に辿り着く。
「これで、私も……悟様にっ」
雛菊の高笑いは京都校の高専に響き渡った。
東京校と京都校の交流会。
五条悟と夏油傑は異例の強さと人数の少なさから特別に1年だが参加が認められた。
家入硝子は参加はしないものの貴重な反転術式の使い手の為に万が一を考えて同行。
名前は五条悟の独断により同行。
京都校に来た面々は早速団体戦で圧勝。
2人の最強の前に京都校は手も足も出なかったが口だけは達者だった。
「悟様、お久しゅうございます」
「あー……うん」
「雛菊様、お久しぶりですね」
「……名前様もお久しゅうございます」
「悟、彼女は?」
「京都に知り合い居たのか」
雛菊がこっそり五条悟に会いに行くと予想はしていたものの名前がいて少しだけ面白くない。
夏油傑と家入硝子が何だと雛菊を見るが五条悟はあまり口にしたくないというように口を閉じる。
雛菊は夏油傑を見ながらにこりと笑う。
「私は五条悟様の婚約者の雛菊ですわ。
どうぞよろしく」
「婚約者?
婚約者なら名前が居るだろ?」
「……家が決めた婚約者は複数居るんだよ。
ソイツはその一人」
「へー。まるで大奥だな」
「どいつもこいつも俺の子を産んで術式も六眼も引き継げたらソイツの家の地位が上がるんだから」
五条悟が雛菊を汚いものでも見るように視線を向ける。
「悟様、名前様はお疲れではないでしょうか?
今日みたいな暑い日は名前様のお身体にもよろしくないでしょ?
私が案内いたしますので名前様を休憩所へお連れしますわ」
「いい。俺が連れて行く」
「悟様、私は雛菊様と向かいます。
もうすぐ個人戦ですよね?」
「けど」
「ご武運をお祈りしております。あまりはしゃがぬように」
くすり、と笑う名前。
柔らかく微笑む名前に五条悟は頬を緩ませる。
「すぐ戻るから待ってろよ」
「はい。
悟様、傑様いってらっしゃいませ」
「いってくるね、名前。
硝子頼んだよ」
雛菊は内心舌打ちをした。
家入硝子が居ては面倒だ…が、想定内だ。
個人戦が始まる時間……ゆっくりゆっくり名前のペースに合わせて歩くフリをしながら目的の場所へ。
休憩所に案内するフリをして家入硝子を突飛ばし、名前の腕を引く。
「!?」
「アンタさえいなければ私は幸せになれんのよっ!!」
名前と共に予め術式を付与した教室に引き込む。
自分と名前が術式内に入れば準備完了。
「オマエは2度と悟様の視界に入らない!!
オマエはその身に起こる様々な苦痛に心を壊されながら狂い死ね!!」
二人分の叫び声。
家入硝子は間に合わなかった事に舌打ちしながら気絶した名前をざっと見る。
自身の目にはただの気絶に見えるが……相手がどんな術式持ちでどんな術を使ったか見当もつかない。
万が一を考えて五条悟へ連絡。
「五条!!オマエのもう一人の婚約者が名前に何かの術式を使った!!
どちらも気絶している……」
すぐ行く、と切られた電話。
二人の婚約者はピクリとも動かない。
頭がふわふわする。
ここは……なんだろう。
目が覚めると……何やら硬い床に転がされていた。
「起きたかい?」
「あ、傑様」
「悟は来ないよ」
何やらいつもとは違って恐ろしい顔をしている。
どうしたのかと頭を傾げてみるが、より眉間にシワが寄るだけ。
「キミがしでかした術式で名前が倒れた。
一体何をしたんだ?
悟の眼で見てもぐちゃぐちゃに絡まった情報しか見えないそうだ」
「傑様、私は………???」
おや?名前を告げようとしたら名前を言えない。
何度口にしてもパクパクと声が出ない。
「キミがどうにか術式を解かなきゃ最悪呪詛師認定される事になる。
今は上層部でキミの扱いをどうするか緊急で話し合われてる……それまでにどうするか決めておく事だ」
「呪詛師ですか?」
「あぁ。そうだよ雛菊嬢」
「……あら?」
よく自分の服装を見れば雛菊様が着ていた服装だ。
何かの手違いでどうやら私……名前は雛菊様の身体に精神のみ入ってしまったようだ。
困った。
このままでは雛菊様の身体がありもしない罪で呪詛師として裁かれてしまう。
それはいけない、と異議申し立てしよう。
「傑様、あの」
「悪いが名前のように呼ぶのはやめて貰えるか?
大切な友人を害されて黙っていられるほど……私の気は長い方じゃ無いんだ」
傑様がお怒りになられている。
雛菊様の身体も危ういしどうしたものか……。
「自身の行いを反省して早く名前にかけた呪いをどうにかする事だね」
ガチャンと締められた扉。
異議申し立てをしようとしても真犯人をどうにかしなければ。
しかし、身体の弱い私では犯人探しに………
「あら?」
いつもなら起きているだけで体力を使うし気を抜けば倒れてしまう貧弱な身体。
酷使すれば熱が出てしまうというのに……。
雛菊様の身体は何と丈夫なことか!!!
なるほど、これが健康な肉体!!
ほぅ、と雛菊様の身体に惚れ惚れしてしまう。
立ち上がっても立ちくらみはしない。
手足を伸ばして回っても倒れない。
跳び跳ねても息が上がらない。
「素晴らしい!!
この肉体なら悟様の子を5〜6人は平気そうですね」
私の肉体だと子を一人産めればよい方。
下手すれば夜伽すら命を掛けて挑まねばならないほど貧弱な身体の為、何度悟様からのお誘いをお断りしてしまったことか。
子を孕んだとしても出産とは命懸け。
腹で育てる合間に私の肉体が持たない。
悟様も子を成す前に逝かれたとなれば跡継ぎ問題に支障もあるでしょう。
「あ……でもいけませんね。
雛菊様のお気持ちもございますのに子を産む為に存在する私と違って雛菊様には雛菊様の未来がございます」
私の一存で勝手に子を産もうなどとはよろしくない。
まずは犯人を見付けなければ雛菊様の無実を!!
………と、思っていたのですが。
私はなぜか縛り上げられ悟様に抱かれ息苦しそうにしながら此方を睨み付ける私(in雛菊様)と硝子様と傑様。それに交流会も終わったのか他の皆様まで揃っている。
何故こんなことに?雛菊様の身体が危ないのでは?
「悟様、あの……」
「黙れ。オマエ……自分が何をしたのかわかっているのか?」
聞き慣れない低い声。
はて?悟様は何を怒っていらっしゃるのか。
「名前に何をした」
「悟様、誤解です。私も彼女も何者かの術式に当てられ…」
「フザケンナッ!!
オマエは家が選んだ候補の一人でしかないのに、図々しい……っ」
「あら、それは私だけではございませんよ?
私も、その他の婚約者様も悟様が成人なさった時の為の保険。
まだ誰も正妻には決まっておりませんし、その後、婚約候補達は悟様の側室として当てられます」
私は正妻になるには身体が弱すぎる。
なので五条家での立場は弱い。
いくら母体として優秀でもこの身体の弱さでは次世代の子を成すにはポンコツ過ぎる。
なので、悟様はそんな憐れな私をペットのように可愛がっているだけ。
「黙れっつってんだろ!!」
「あの、大丈夫でしょうか?
………彼女のお顔の様子がよろしくないので早く横にしてあげた方が」
あの様子だと私の身体はポンコツを発揮しているらしい。
なのに此処にいる人々は揃いも揃って何をしたいのでしょう?
「悟……様…っ」
雛菊様(外見私)が切ない顔をしながら悟様に抱き付く。
「くる、しっ」
「名前っ!!」
「名前様、きちんと呼吸した方がよろしいですよ。吐くことに集中なさってくださいな。そのご様子だと熱も出ていると思うので脇と首を冷やして少し横になってから……」
「オマエのせいでこうなってんだろ!!
何も知らねぇ癖に……っ、名前を知ったように言うんじゃねぇよドブスがっ!!」
「悟様、女性に向かってそのようなことよくありません」
「名前の真似すんな!!」
顔を歪めて吠える悟様。
まったく、いくつになっても癇癪が過ぎる。
私の前だといくらかマシになってきたとはいえ……次期御当主がこんなんだと先が思いやられる。
現御当主様も頭を悩ませて胃痛を訴えていた。
「名前以外を選ぶ気は無い。オマエは五条家を通してオマエの家に破談を言い渡す」
「……悟様、お言葉を控えてくださいませ。
名前様は悟様と結婚は出来ませんよ?
子を成すことの出来ない名前様だけは五条家がお許しになりません」
「うるせぇっ!!」
何を言っているんだ、この人は。
人の多いこんなところで宣言しては他の婚約者の方々の耳に入るかもしれないのに。
それは即ち、優秀な候補の方々を他の家に取られてしまうということ。
ただでさえ見目は良くても暴君で我が儘で態度の悪い悟様の身勝手な部分は候補の方々に不人気だというのに……これ幸いとさっさと正式に違う方と婚約して逃げられてしまう。
私が何度も菓子折り片手に引き留めて頭を下げながら愚痴を聞いている状況なのに……っ!!
候補の方々に逃げられたら心の広い雛菊様しか残らないんだぞ!!この危うい状況をわかって……いないんだろうなぁ。
「心の広い私(雛菊様)の何処が嫌なのですか?
身体も丈夫。術式も使い勝手が良い。勉強熱心で、悟様を好いている。……貴方を裏切る方では無い私(雛菊様)こそ悟様が目をかけるべきでは?」
「オマエ……っ!!」
いや、本当に。
悟様のこの暴君さを見ても慕って下さるなんて貴重ですよ?
「いつもいつも周りに媚びて色目使って、補助監督には当たり散らしてる噂聞いてんだぞ」
「あら……」
それ、どこの悟・五条のお話でしょうか?
「自分の我が儘が通らなかったら癇癪起こして騒いでるんだってなぁ?」
それ、どこのSATORUでしょう?
「そんなクソみてぇなオマエをどこの誰が好きになるって?」
「あの、悟様ご自身の事を語られても……
そもそもこの状況は何をなさりたいのか理解出来ないのですが」
「「はぁ!?」」
「「ッッッッ!!!」」
「悟様が残念なのは今に始まった事ではございませんのに……えーっと、何が言いたいのか、サッパリ」
雛菊様と悟様のお顔が般若のように険しくなる。
その後ろや周りにいる方々は何故か震えている。
「そろそろ此方の縄を外して下さい。
女性の身体を冷たい地面の上に座らせ長々とご自身の不徳を語られても私と彼女に掛かった術は解けませんよ?」
「オマエが名前に掛けたんだろ!
だから解けっつってんだよ!!」
「何のための六眼でしょうか?」
他の方々にわからなくても、貴方だけはその眼で見えるでしょうが。
そういえば傑様がわからなかったと言っていましたね。
「散々天才だ、最強だと騒いでいるのにわからないんですか?」
「う、うるせぇ!!!」
「努力が足りないのでは?」
確かに……と納得し始める周囲の方々。
「……聞いていた話より随分と性格が違うね」
「名前みたいだな」
傑様と硝子様が不思議そうにしている。
「こんなブスと名前が似てるって?
んなわけねーだろ」
「いや、似てるよ」
「五条の事を此処まで淡々とボロクソ言うとことか」
「傑様、硝子様っ!」
もしや、入れ替わっている事に気付いて?
嬉しくなって見つめれば困った顔をされる。
「名前が俺をボロクソ言うわけねーだろ」
「悟……」「五条……」
あぁ、辞めてあげてください。
普段身体がしんどすぎて口数を減らしてしまったが故に私を勘違いさせてしまうなんて……。
こんなことなら熱の合間に魘されて愚痴るのを硝子様や傑様だけじゃなく悟様の前ですべきか?
でも悟様一つ言うとすぐに拗ねて聞く耳持たないから言うことすらしんどい。
都合のいいように解釈して誤魔化すから何度も何度も同じ事を言うのがしんどい。
「悟様……何度も申し上げておりますが、都合良く解釈して私を美化するのはお辞めください」
「オマエの話じゃねーっつの!!」
「この身体は健康で話続けてもしんどくならないので言わせていただきますけど……
五条家当主になられるのであれば、まずはその言動を正してください。
いつまでも反抗的態度を取っても世界は貴方の思い通りにはなりませんよ。
確かに実力はありますが、扱いきれない力を振りかざしても周りに迷惑がかかります。
貴方の傲慢な態度と無くてもいい大雑把な破壊行為のせいで掛からなくて良い修繕費を補助監督の方々が何度も頭を下げて上の方々に取り合って貰えず胃痛と頭痛と精神を悩ませているかお分かりで?綿密な調整が出来ない?貴方の実力不足でしょうが。
貴方の言動一つで下の者達が苦労し、下げなくていい頭を下げているのですよ?貴方が本来下げなければならない頭を!!
だから常日頃から傑様にも注意されているというのに貴方ときたら………」
あら、素敵!!!
こんな一息に話しても疲れない!!!
ペラペラと回る舌に、痛まない喉!!
あぁ、なんっって素晴らしい雛菊様のお身体!!
「夜伽であっても此方が熱を出しているのに興奮していると勘違いなさって事を進めようとするのはいかがなものかと。
あぁ、だからと言って若い補助監督の方に手を出すのも控えて下さいませ。
何かと嫌味を言われるのは慣れておりますが、体調不良が常にある身体で長々と貴方との素敵な一夜の話を聞かされるのは時間の無駄ですから。
婚前前だから、なんてお年頃の貴方に言うつもりはございませんが他の健康で貴方好みの胸も尻もあるような候補の方々がいらっしゃるのだから次期当主らしく外で発散して種の無駄打ちをなさるなら相応の覚悟をしてください。
後から子供が出来ましたって報告されると他の候補の方々の時間と気苦労の日々が泡となります。彼女達にも心に決めた者や慕っている者がいるなか、五条家に選ばれた事で苦労なさっている方々もいらっしゃるのですから。
貴方ばかりが好き勝手なさると困る方々が沢山いるのですよ?あれが嫌だ、これが嫌だと癇癪を起こして反抗したいのなら早々に当主の地位につき、候補の方々を解放なさってからお好きなように振る舞ってくださいませ」
フンッ、と普段言えないことを言えば周りはポカンとする。
早々にハッとした傑様が私の縄をほどいて手を差し出してくれた。
「ありがとうございます、傑様」
「驚いた……名前、かい?」
「何故かこのような事態となっておりますが、以前の私ではない私ですね」
「……もしかして自分の事を言えない縛りが?」
「そのようです」
困りました……と言えば、元気そうで何よりだと困った顔で笑われる。
硝子様も近付いてきて困った顔をされる。
「ごめんね。すぐに気付いてあげられなくて」
「……名前、でいいんだよな?」
「仕方がないですよ。私もまさかでしたから」
「中身が入れ替わっているのかい?術式は?」
「駄目です。私自身の術式では無いので扱いきれません」
「それは困ったな」
「困りました。
けど、お二人が気付いてくださって良かったです!無実の罪で此方の身体に何かあっては申し訳無いですし……何より、あのようなガラクタの肉体ではお辛いでしょうに」
雛菊様を見ればゼーゼーと息苦しそうだ。
だから早く寝かせてあげて。
「……雛菊は溺愛されている名前に成りたかったのか?」
「流石ですよね!
悟様をお慕いする崇高な気持ち……とても素晴らしく、尊く、健気でいらっしゃるというのに悟様ときたら……」
「いや、名前。そこまでにしておけ」
「名前、悟の頭がついていけてないから一旦落ち着こう」
「……この肉体であれば悟様の子を何人産んでも頑丈で逞しく元気な子を産めると思います」
「名前、落ち着け」
「元気になりすぎた反動だな」
「硝子も止めて」
「……!!
悟様、今の私なら悟様のありすぎる欲望をどうにか出来るかもしれません!!!
いつもいつもお断り申し上げて心苦しかったのですが、この肉体ならば!!」
「「名前、落ち着こう」」
「あ、そうですよね……私ばかりの判断ではなく本人の許可無く致すのは良くありませんもの。
ですが、候補としての勤めを果たすと考えたら……」
「「名前!!」」
あら、いけない。
いくら雛菊様が悟様を慕っているとしても勝手に事を進めてはいけませんよね。
「惚れ惚れするほど健康です……。
乳房も大きく重く……肩が疲れないのでしょうか?
私には無い物ですし、悟様好みだとは思うのですが」
「辞めてあげよう。あの二人そろそろ限界だから」
「あぁ、身体が心配なら側で見ていてくださって私が変なことをしないように名前様(雛菊様)もご一緒の寝所に!!」
「「辞めてあげて」」
傑様と硝子様の説得によりまずは入れ替わりの術をどうにかすることを優先することに。
雛菊様(in私)と私(in雛菊様)は東京の高専預かりとなり日々解呪方法を考えている。
何故か悟様はあの後べそべそしながらすがり付いてきたが……何かあったでしょうか?
ちなみに雛菊様は私のポンコツな肉体のせいで寝込んでしまっている。
「術式も扱えない私など蠅頭と代わりありません……。
任務には行け無いのでせめて補助監督のお仕事を……」
「お願いだから黙って居てくれ」
「では、彼女の許可を頂き悟様との子作りを……」
「やだ。絶対シねぇ!!」
「困りました……」
「名前イカれてんな」
「硝子様、呪術界に産まれ育ってまともな感性の持ち主など稀少ですよ。
それこそ彼女のような真っ直ぐに人を思いやれる存在こそ稀ですもの」
「思考回路が5周廻ってぶっ壊れてんな」
「此処まで慈悲?深いと逆に稀少なんじゃないか?」
「ありがとうございます!」
「「褒めてない褒めてない」」
いつまでも雛菊様に熱と苦しみを与え続け意識を朦朧とさせてしまう肉体を貸し続けるなんて心が痛む。
話によると雛菊様が掛けた術式なので、雛菊様自身が解かなければこのままらしい。
が、肝心の雛菊様は倒れてしまい意識が無いし、あっても熱に悩まされて身動き一つ取れずベッドから動けない。
「使えねぇ…」
「悟様、申し訳ございません。肉体が脆弱なばかりに健康でいらした方にはお辛いのかと。
熱に悩まされて身動き出来ない今だからこそ、真の健康を目指し鍛え上げたい所ではあるのですが」
「変態な思考回路だね」
「もうこのままの名前と結婚しちまえばいいだろ」
「嫌だ!!中身は名前だけど……っ」
歯切れ悪く言葉を濁す。
チラチラと私の顔を見ては気まずそうに顔を逸らす。
「……悟様、もしや」
「……そうだよ。俺は…」
「外見だけで人の好き嫌いを…?」
「違う!!いや、違わないのかもしれねーけどっ」
「最低だな」
「クーズ」
「傑にだけは言われたくねぇっ!!」
雛菊様は凛々しいお顔をしている。
いつもは目元を強調した素敵なメイクをしているが、私はずっとお付きの人が正式の場で少し化粧をしてくれる程度しか触れる機会が無かったので羨ましい。
申し訳ないが、今は基礎化粧のみでほとんど素っぴんだ。
「五条家現当主様が貴方様の要望を聞いて集められた方々ですのに……何がご不満が?」
「………名前、じゃねぇじゃん」
「私はどちらかと言えば悟様のご要望から外れておりますのに」
「俺は!!名前がっ!!」
「あら、ありがたいですねぇ。
ですが悟様の望む胸元も尻もございませんよ?」
「それは俺が育てれば!!」
「育つには些か成長期を過ぎてしまったので申し訳無いです」
「オマエ実は俺の事嫌いなの!?」
「まさか!!
悟様を面倒に思った事はあっても、このポンコツを選んで可愛がって頂いている身としてなぜ嫌いに?」
はて?
嫌いならばさっさと離れるしこんな口うるさく言わない。
「悟様に拾われなければ私など離縁されても良い所」
「名前……」
「悟様の愛玩動物として精一杯頑張ります!」
「違う!!」
「あら、もうこんな時間……お薬のお時間ですので私は行きますね」
雛菊様にお薬を作らねば。
己の体調で薬を調合しなければならないので雛菊様を起こして話を聞かなければいけず、眠っているところを起こすのは申し訳ないが、この薬を忘れると後々大変になってしまうから。
「……悟、もうこのままでいいんじゃないか?」
「健康だしノリノリで子作りしてくれるってさ」
「違う!!俺は名前の弱いところ含めて守りたくて!!」
「「弱い?」」
「俺だけが全てだって慕って支えてくれる名前が……」
「あながち間違いじゃないな」
「本人愛玩動物感覚だけどね」
「儚くて……」
「「儚いとは?」」
「………今まで俺が見てきた俺のか弱くて可愛い名前が…」
「鋼メンタルだね」
「図太いイカれた女だろ」
「あああああああっ!!!!」
頭を抱えながら今までの思い出が崩れる悟に傑と硝子は指を指して爆笑した。
あとがき
身体は軟弱、心は鋼の夢主。
めっちゃ鋼メンタルの彼女の漫画をオススメしたい。
皆様「ふつつかな悪女」してる漫画読んで!!
※今回の話は私が考えた設定ではございません
※とある漫画の設定を呪術に当てはめて書いております
※ふつつかな呪術パロディー?
悟が可哀想な扱いwww
悟→
婚約者達は見た目と地位が欲しいんだろ?うっぜー。
夢主すきすき。俺の事わかってくれるのは夢主だけ。
夢主→
瀕死の時こそ己を越える最高の状態。
死に際こそ己の力を最大限に解放出来る!!しんどい!!けどコレを乗り越えた先にまだ見ぬ己の真髄がそこに!!
弱いなら鍛えてみせようこのボディ。
身体が弱いので子供が出来そうにも無いので菓子折り持ちながら他の婚約者達に頭を下げて回っている。
お願いだから誰か子供作って!!
悟の事は可愛い手のかかる弟と思っている。
恋愛感情?ありませんね!
婚約者候補の方々→
五条家からの圧力により此方から破談出来ないし、したら自分達は五条家から破談された使えない娘と烙印を押されてしまう。
顔と地位と金があっても無理。
夢主が頭を下げて頑張るから渋々耐えているが子作り?ノーセンキュー。
オメーとだけは結婚したくねぇ!!!
雛菊→
幼い頃から乙女フィルターにより初恋を拗らせているだけ。
根はいいこだが、産まれが身分違いなので周りから卑下され馬鹿にされ疎まれてきた。
夢主になれば愛されると思って決行したもののあまりのポンコツな肉体にダウン。
何この身体……自由が、自由が効かない……っ。
多分一番可哀想なのはこの子。