呪縛
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壊れた携帯を手で弄ぶ直哉様。
クスクスと笑っている。
「怖いん?」
スッ……と伸ばされた手。
頬に触れる指先は優しいはずなのに。
「言うたやろ?
何もしいひんって」
頭を撫でながら先程の薄暗い雰囲気は無くなりケロリとしている。
「怖がって怯える顔……可愛らしくて好きやなぁ」
今度はうっとりとした顔をして、コロコロと表情が変わる。
「直哉様……?」
「んー?どうかした?」
「私……あの、直哉様の事……」
「あぁ、別にええよ。
名前ちゃんからの返事なんていらん」
「え?」
「名前ちゃんの心まで欲しくて囲うた結果、手に入らへんかった。
失敗して逃げられるくらいやったら最初から相手の気持ちあれこれ考えて対策するよりも
俺の気持ち押し付けて甘やかして気に入らへん全てを排除していくことにした」
ニッコリと笑って絡めた手にキスをする。
「名前ちゃんの気持ちの答えは聞かへん。
嫌われてるのわかってるのに嫌な言葉聞きたない。
そやけど俺の気持ちは押し付ける事にしたから」
「で、も……婚約破棄して…」
「婚約破棄したから知り合いに戻るって?
知り合いは話しちゃあかんの?
愛しちゃあかんの?」
「そ、れ……は…」
「名前ちゃんに振り向いて自分から戻って来て貰えるように何度も愛を囁くで。
そやから腹立つ連絡先を壊してもうた」
にこり、にこり。
あ……直哉様、怒っているんだ。
悟くん達から来る連絡が話の邪魔だった?
悟くん達と楽しそうに連絡していたのが煩わしかった?
何が、どれが悪かったのかわからない。
そもそもこうして直哉様が私に執着する理由が一目惚れだと言われても理解出来ない。
今までの事を反省するわけでもなく
これからも今までのように?
私がどんな想いを抱えていても。
私がどんな想いを告げたくても。
私の想いは聞きたくないって……
「あぁ、別に名前ちゃんに怒っとらんよ。
人の婚約者奪って、連絡しとるアホ共に怒っとるだけやから」
「………」
「名前ちゃんに怒っても仕方ない。
怒って逃げられるなら甘やかして囲うしかないやろ?」
「私……」
「あ、携帯堪忍な?わざとやないんやで」
壊れた携帯を手渡される。
画面のつかない携帯。
「これからはもう遠慮なんかしいひん」
「……直哉様…、私」
「言うたやろ。
俺を否定する言葉は聞きたない」
「でも、私はもうっ…直哉様にとって何者でもないんです!」
「聞きたない言うたやろ」
口元を直哉様の大きな手で覆われる。
なんで?
どうして……直哉様が、苦しそうな顔をするの?
「はっ!
なーんもわからんって顔しとるなぁ」
わからない。
私の気持ちは否定するのに好きだと言う。
私達の関係は終わったのに続けたいと言う。
胎だと言いながら大切だと言う。
「わからないです……。直哉様が、わかりません…っ」
「あほやなぁ、名前ちゃんは」
「私の気持ちを置いてきぼりにして、直哉様の気持ちを受け取れ、だなんて……っ」
恋をしたくてもさせてもらえない。
愛したくても愛せない。
「どうして……酷い…っ」
「酷い?どこが?」
「私がどんなに直哉様を想っても……
直哉様は私を受け入れてくれないって事じゃないですか」
「………は?」
この想いを消し去ろうとしているのに。
この想いを終わらせようとしているのに。
「酷い人……」
私を縛り付けようとする。
私にそんな価値など無いのに。
零れそうな涙を袖で拭う。
「私は直哉様に……愛されるような人間ではありません」
胎としても
禪院を背負うにしても
呪術師としても
全てにおいて隣に立てる事が出来ない。
お情けで隣に居させて貰っていた。
なのに、もっと愛されたいと望んでしまい……その結果、壊れてしまった。
「貴方の3歩後ろを歩けるような女ではないんです」
隣を歩きたい。
付き従うのではなく一緒に歩みたい。
「ほんまに言うてる?」
「私じゃなくても……直哉様は大丈夫でしょう?」
貴方は選べる側。
私は選ばれるまで待っていなきゃいけない。
「からかう為に来たのならお帰り下さい。
婚約破棄されて嫁の貰い手に困るだろうと指を指したいのならどうぞ」
「……名前ちゃんって俺の事好きやったの?」
ポカン……と、しながら此方を見ている。
今さらだと顔を背ければ無理矢理顔を直哉様の方へ。
「教えて?俺の事好き?」
「……好きでした」
「過去系やの?」
「直哉様が私を嫌いだったのでしょう?」
「え?今の今まで愛情を囁いとったのに伝わらんの?」
「私を胎としてしか見ていなかったのは直哉様じゃないですか」
「へぇ……何や、両思いやったのに」
邪魔なのは悟君と傑君かぁ、なんて顔をニヤケさせながら笑っている。
「戻って来ぃ、名前ちゃん」
「嫌です」
「好きならええやん」
「……私、痛いのも苦しいのも嫌です」
「俺に散々打たれても好きやって言うくらいや。名前ちゃん才能あるわ。
それに名前ちゃん虐めるん楽しいから無理」
ニヤリニヤリ。
笑いながら私の頬を撫でる直哉様。
「好き。愛しとる」
トロトロと熱く蕩けた顔をしながら私に愛を伝える。
それに何も思えないほど、嫌いになれたら良かったのに……。
「名前ちゃんのオドオドした姿可愛え。
何度見ても虐めたなる」
「……嫌、です」
「ちっちゃい手ぇ繋ぎながら抱っこしてちゅーするん大好きやねん。
桜色のちっちゃいぷっくりした唇に俺の唇重ねて吸うの気持ちえぇ」
「……やっ、直哉様…っ」
「俺の膝乗って息切らしてる姿見てぐっと堪えてた俺の気持ちわかるん?」
「指……っ、食べないでっ」
何を考えているのか、恋人のように交差させ指を絡めて繋いだ手。
私の指を一本一本舌でゆっくりと愛撫するように舐める。
「名前ちゃんは何が好きなん?」
「やっ……っ」
「嫌やない」
「離…し、て」
「可愛え」
「直哉様……やっ」
恥ずかしい。どうして?右手が暖かい。
恋人のように重ねて繋がれた手に何度もキスをしながら指を食べていく。
「訂正させて」
「……?」
「名前ちゃんの気持ちも欲しなった」
「……無理、です」
婚約破棄は成立した。
近々直哉様には新しい婚約者が用意される。
「何で無理なん?」
「だって……婚約破棄…」
「名前ちゃん以外の婚約者なんぞいらん。
名前ちゃんがえぇ」
終わらせた後で惑わすように甘い言葉を吐くなんて。
「名前ちゃん」
「………」
「俺は誰とも婚約しいひん。やからもう一回俺と恋仲ならん?」
「……でも」
「今すぐ決めて欲しいとこやけど、残念……時間や」
次は東京、と告げる放送。
繋いだ手を握る力を強めて唇を寄せる。
「色々考えてアホらしくなったわ。
名前ちゃんに嫌われて無いんやったら俺にもまだ可能性あるって事やろ?」
「直哉様……」
「好きや。絶対に離さん」
東京に着いて直哉様が私の手荷物を片手で持つ。
もう片方は離さないまま。
そのまま人の流れの通りに改札を出れば……
「はぁ!?」
「……何でキミが」
「どーも、こないだぶりやね」
「「あ"?」」
待っていてくれた悟くん、傑くん、硝子ちゃん。
しかし、直哉様を見て三人の額には青筋が。
それとは正反対に直哉様はニコニコと笑っている。
「テメェ……何でここに」
「キミらのせいで名前ちゃんとの婚約駄目になったんやけど」
「ザマァ」
「自業自得だね」
「名前離せよ。煙草押し付けんぞ」
「こーっわ!
キミらに腹立って最初は名前ちゃん監禁しよかな思うとったんやけど…」
「「「殺す」」」
「実は両思いやとわかったさかい婚約は破棄になったが、恋人として今後より愛を深め合うてゆくゆくは結婚することにしたわ」
「「「はぁぁあああ!?」」」
ぎゅっ、と直哉様に引き寄せられて抱き締められる。
何の話かと慌てながら断りの言葉を口にしようとしたのだが
「直哉様っ、私…っ」
「んー?ちゅうする?」
「しなっ…ん、んんっ」
「ははっ、可愛ぇ」
唇を食べられるかのように塞がれ、舐められ、顔中に何度もキスをされる。
「って事で俺の可愛え恋人に手ェ出したら殺す」
「……なおや、さまっ」
「名前ちゃん、寂しなったらいつでも電話して来ぃ」
「あの……っ」
「今は名前ちゃんがやりたい事やり。
しゃーないから閉じ込めたりしぃひんけど……構ってくれんならいつでも襲いに行くわ」
あーん、と大きく口を開けてパクりと唇を噛まれた。
「好きやで」
「「「帰れ!!」」」
「あー、こわこわ。
言われんでも帰るわ。名前ちゃん、また」
ひらひらと手を振って駅へと戻って行った直哉様。
何が何だかわからないまま悟くんに抱き締められて傑くんにハンカチでゴシゴシ唇を拭かれる。
「クッッソ!!!やっぱり一人で帰すんじゃなかった!!」
「消毒消毒消毒消毒」
「名前、何されたの?」
「……隣ずっと座って、指絡めて、舐められて…」
「はぁあ!?舐められてたのかよ!!?」
「除菌消毒除菌消毒除菌消毒」
「……ずっと…好きって」
思い出すだけで顔が熱くなる。
だって、だって今までそんな事……言われなかったのに…っ。
今になってからそんな事を言われても困る。
「虫は潰しときゃ良かった」
「悟、今からでも遅くない。殺ろう」
「行け、クズ二人。許す」
「どうしよう……」
「頭花畑なんだろ。まともに考えんなよ」
「記憶から抹消すべきだね」
「あんな奴の事より、名前」
直哉様の事で困惑している私の両頬を掴む硝子ちゃん。
私の視界は硝子ちゃんだけになり、煙草を咥えながらニヤリと笑う。
「おかえり」
おかえり、という言葉に……
ボロボロと涙が出てきた。
私が手放したくないと思った場所。
硝子ちゃんに言われ……やっと、帰って来れたのだと胸にストンと落ちてきた。
「変な虫はいたけど……途中で連絡も無くなってしまったし心配したよ?
……けど、無事に帰って来てくれて良かったよ。
おかえり、名前」
「……携帯、壊されて…ごめ、なさっ」
「は?アイツ?
……やっぱ禪院ぶっ潰すか?」
「それより言うことあんだろ」
「そうだよ悟。アレは後回しだ」
「……おかえり」
「………っ、ただいまっ!!」
目の前の硝子ちゃんに両手を伸ばせば硝子ちゃんも両手を広げて抱き締めてくれた。
傑くんは背中を撫でてくれているし、悟くんは頭を撫でてくれた。
直哉様の事、今後の事。
考えなきゃいけないことは沢山あるけど……今は友達の側に居たい。
あとがき
中途半端なとこで終わってしまった感。
いや、まだ続きますけれど(笑)
ひとまず一区切り。
・この人何言ってるん?名前ちゃん
直哉様がご乱心なさってちょっと話通じなくて困惑。
あれ?この人どうした?
ちょっと話聞いて?ねぇ、婚約破棄されたっつってんじゃん?ねえ、聞いて……聞いて!!!!!
話通じる友人らが迎えに来てくれていて安心したようぇーん。あの人意味わかんないよえーん。
・俺ら両思いやから恋人な直哉様
頭ハッピーセット。
嫉妬から振り切ったデレに誰もがついていけてない。この度幸せな勘違いを全力疾走なう。
話ほぼ聞いてないし都合のいいところしか聞いてないからあれ?俺ら恋人から清く正しくやり直そ!って脳内ハピハピ。お花畑領域展開。
今後は糖度ハチミツ1000%な割合で溺愛。
しかし嫉妬も水飴レベルでねっちょりする。
・宇宙人に蒼ぶちかましたい悟くん
恋人?は?
両思い?はぁ?
ちゅー?はぁ"ぁ"あ"ん?
寝言はお布団で言え。塩だ、ありったけの塩持ってこい!!
・教祖がチラッとこんにちは傑くん
除菌と消毒大事だよね。
この可愛い唇を除菌と消毒するには……上書きすべきかな?
禪院って家名を今すぐ潰さなきゃ何だか背中がゾワゾワする。
・男共に任せておけない硝子ちゃん
もうこれは私が囲うしかない。
ドクズ共にこの子いいようにされるとか許さん。
女もありだと思うよ?(ニヤリ)
家入さんが本気を出す準備を始めました。
クスクスと笑っている。
「怖いん?」
スッ……と伸ばされた手。
頬に触れる指先は優しいはずなのに。
「言うたやろ?
何もしいひんって」
頭を撫でながら先程の薄暗い雰囲気は無くなりケロリとしている。
「怖がって怯える顔……可愛らしくて好きやなぁ」
今度はうっとりとした顔をして、コロコロと表情が変わる。
「直哉様……?」
「んー?どうかした?」
「私……あの、直哉様の事……」
「あぁ、別にええよ。
名前ちゃんからの返事なんていらん」
「え?」
「名前ちゃんの心まで欲しくて囲うた結果、手に入らへんかった。
失敗して逃げられるくらいやったら最初から相手の気持ちあれこれ考えて対策するよりも
俺の気持ち押し付けて甘やかして気に入らへん全てを排除していくことにした」
ニッコリと笑って絡めた手にキスをする。
「名前ちゃんの気持ちの答えは聞かへん。
嫌われてるのわかってるのに嫌な言葉聞きたない。
そやけど俺の気持ちは押し付ける事にしたから」
「で、も……婚約破棄して…」
「婚約破棄したから知り合いに戻るって?
知り合いは話しちゃあかんの?
愛しちゃあかんの?」
「そ、れ……は…」
「名前ちゃんに振り向いて自分から戻って来て貰えるように何度も愛を囁くで。
そやから腹立つ連絡先を壊してもうた」
にこり、にこり。
あ……直哉様、怒っているんだ。
悟くん達から来る連絡が話の邪魔だった?
悟くん達と楽しそうに連絡していたのが煩わしかった?
何が、どれが悪かったのかわからない。
そもそもこうして直哉様が私に執着する理由が一目惚れだと言われても理解出来ない。
今までの事を反省するわけでもなく
これからも今までのように?
私がどんな想いを抱えていても。
私がどんな想いを告げたくても。
私の想いは聞きたくないって……
「あぁ、別に名前ちゃんに怒っとらんよ。
人の婚約者奪って、連絡しとるアホ共に怒っとるだけやから」
「………」
「名前ちゃんに怒っても仕方ない。
怒って逃げられるなら甘やかして囲うしかないやろ?」
「私……」
「あ、携帯堪忍な?わざとやないんやで」
壊れた携帯を手渡される。
画面のつかない携帯。
「これからはもう遠慮なんかしいひん」
「……直哉様…、私」
「言うたやろ。
俺を否定する言葉は聞きたない」
「でも、私はもうっ…直哉様にとって何者でもないんです!」
「聞きたない言うたやろ」
口元を直哉様の大きな手で覆われる。
なんで?
どうして……直哉様が、苦しそうな顔をするの?
「はっ!
なーんもわからんって顔しとるなぁ」
わからない。
私の気持ちは否定するのに好きだと言う。
私達の関係は終わったのに続けたいと言う。
胎だと言いながら大切だと言う。
「わからないです……。直哉様が、わかりません…っ」
「あほやなぁ、名前ちゃんは」
「私の気持ちを置いてきぼりにして、直哉様の気持ちを受け取れ、だなんて……っ」
恋をしたくてもさせてもらえない。
愛したくても愛せない。
「どうして……酷い…っ」
「酷い?どこが?」
「私がどんなに直哉様を想っても……
直哉様は私を受け入れてくれないって事じゃないですか」
「………は?」
この想いを消し去ろうとしているのに。
この想いを終わらせようとしているのに。
「酷い人……」
私を縛り付けようとする。
私にそんな価値など無いのに。
零れそうな涙を袖で拭う。
「私は直哉様に……愛されるような人間ではありません」
胎としても
禪院を背負うにしても
呪術師としても
全てにおいて隣に立てる事が出来ない。
お情けで隣に居させて貰っていた。
なのに、もっと愛されたいと望んでしまい……その結果、壊れてしまった。
「貴方の3歩後ろを歩けるような女ではないんです」
隣を歩きたい。
付き従うのではなく一緒に歩みたい。
「ほんまに言うてる?」
「私じゃなくても……直哉様は大丈夫でしょう?」
貴方は選べる側。
私は選ばれるまで待っていなきゃいけない。
「からかう為に来たのならお帰り下さい。
婚約破棄されて嫁の貰い手に困るだろうと指を指したいのならどうぞ」
「……名前ちゃんって俺の事好きやったの?」
ポカン……と、しながら此方を見ている。
今さらだと顔を背ければ無理矢理顔を直哉様の方へ。
「教えて?俺の事好き?」
「……好きでした」
「過去系やの?」
「直哉様が私を嫌いだったのでしょう?」
「え?今の今まで愛情を囁いとったのに伝わらんの?」
「私を胎としてしか見ていなかったのは直哉様じゃないですか」
「へぇ……何や、両思いやったのに」
邪魔なのは悟君と傑君かぁ、なんて顔をニヤケさせながら笑っている。
「戻って来ぃ、名前ちゃん」
「嫌です」
「好きならええやん」
「……私、痛いのも苦しいのも嫌です」
「俺に散々打たれても好きやって言うくらいや。名前ちゃん才能あるわ。
それに名前ちゃん虐めるん楽しいから無理」
ニヤリニヤリ。
笑いながら私の頬を撫でる直哉様。
「好き。愛しとる」
トロトロと熱く蕩けた顔をしながら私に愛を伝える。
それに何も思えないほど、嫌いになれたら良かったのに……。
「名前ちゃんのオドオドした姿可愛え。
何度見ても虐めたなる」
「……嫌、です」
「ちっちゃい手ぇ繋ぎながら抱っこしてちゅーするん大好きやねん。
桜色のちっちゃいぷっくりした唇に俺の唇重ねて吸うの気持ちえぇ」
「……やっ、直哉様…っ」
「俺の膝乗って息切らしてる姿見てぐっと堪えてた俺の気持ちわかるん?」
「指……っ、食べないでっ」
何を考えているのか、恋人のように交差させ指を絡めて繋いだ手。
私の指を一本一本舌でゆっくりと愛撫するように舐める。
「名前ちゃんは何が好きなん?」
「やっ……っ」
「嫌やない」
「離…し、て」
「可愛え」
「直哉様……やっ」
恥ずかしい。どうして?右手が暖かい。
恋人のように重ねて繋がれた手に何度もキスをしながら指を食べていく。
「訂正させて」
「……?」
「名前ちゃんの気持ちも欲しなった」
「……無理、です」
婚約破棄は成立した。
近々直哉様には新しい婚約者が用意される。
「何で無理なん?」
「だって……婚約破棄…」
「名前ちゃん以外の婚約者なんぞいらん。
名前ちゃんがえぇ」
終わらせた後で惑わすように甘い言葉を吐くなんて。
「名前ちゃん」
「………」
「俺は誰とも婚約しいひん。やからもう一回俺と恋仲ならん?」
「……でも」
「今すぐ決めて欲しいとこやけど、残念……時間や」
次は東京、と告げる放送。
繋いだ手を握る力を強めて唇を寄せる。
「色々考えてアホらしくなったわ。
名前ちゃんに嫌われて無いんやったら俺にもまだ可能性あるって事やろ?」
「直哉様……」
「好きや。絶対に離さん」
東京に着いて直哉様が私の手荷物を片手で持つ。
もう片方は離さないまま。
そのまま人の流れの通りに改札を出れば……
「はぁ!?」
「……何でキミが」
「どーも、こないだぶりやね」
「「あ"?」」
待っていてくれた悟くん、傑くん、硝子ちゃん。
しかし、直哉様を見て三人の額には青筋が。
それとは正反対に直哉様はニコニコと笑っている。
「テメェ……何でここに」
「キミらのせいで名前ちゃんとの婚約駄目になったんやけど」
「ザマァ」
「自業自得だね」
「名前離せよ。煙草押し付けんぞ」
「こーっわ!
キミらに腹立って最初は名前ちゃん監禁しよかな思うとったんやけど…」
「「「殺す」」」
「実は両思いやとわかったさかい婚約は破棄になったが、恋人として今後より愛を深め合うてゆくゆくは結婚することにしたわ」
「「「はぁぁあああ!?」」」
ぎゅっ、と直哉様に引き寄せられて抱き締められる。
何の話かと慌てながら断りの言葉を口にしようとしたのだが
「直哉様っ、私…っ」
「んー?ちゅうする?」
「しなっ…ん、んんっ」
「ははっ、可愛ぇ」
唇を食べられるかのように塞がれ、舐められ、顔中に何度もキスをされる。
「って事で俺の可愛え恋人に手ェ出したら殺す」
「……なおや、さまっ」
「名前ちゃん、寂しなったらいつでも電話して来ぃ」
「あの……っ」
「今は名前ちゃんがやりたい事やり。
しゃーないから閉じ込めたりしぃひんけど……構ってくれんならいつでも襲いに行くわ」
あーん、と大きく口を開けてパクりと唇を噛まれた。
「好きやで」
「「「帰れ!!」」」
「あー、こわこわ。
言われんでも帰るわ。名前ちゃん、また」
ひらひらと手を振って駅へと戻って行った直哉様。
何が何だかわからないまま悟くんに抱き締められて傑くんにハンカチでゴシゴシ唇を拭かれる。
「クッッソ!!!やっぱり一人で帰すんじゃなかった!!」
「消毒消毒消毒消毒」
「名前、何されたの?」
「……隣ずっと座って、指絡めて、舐められて…」
「はぁあ!?舐められてたのかよ!!?」
「除菌消毒除菌消毒除菌消毒」
「……ずっと…好きって」
思い出すだけで顔が熱くなる。
だって、だって今までそんな事……言われなかったのに…っ。
今になってからそんな事を言われても困る。
「虫は潰しときゃ良かった」
「悟、今からでも遅くない。殺ろう」
「行け、クズ二人。許す」
「どうしよう……」
「頭花畑なんだろ。まともに考えんなよ」
「記憶から抹消すべきだね」
「あんな奴の事より、名前」
直哉様の事で困惑している私の両頬を掴む硝子ちゃん。
私の視界は硝子ちゃんだけになり、煙草を咥えながらニヤリと笑う。
「おかえり」
おかえり、という言葉に……
ボロボロと涙が出てきた。
私が手放したくないと思った場所。
硝子ちゃんに言われ……やっと、帰って来れたのだと胸にストンと落ちてきた。
「変な虫はいたけど……途中で連絡も無くなってしまったし心配したよ?
……けど、無事に帰って来てくれて良かったよ。
おかえり、名前」
「……携帯、壊されて…ごめ、なさっ」
「は?アイツ?
……やっぱ禪院ぶっ潰すか?」
「それより言うことあんだろ」
「そうだよ悟。アレは後回しだ」
「……おかえり」
「………っ、ただいまっ!!」
目の前の硝子ちゃんに両手を伸ばせば硝子ちゃんも両手を広げて抱き締めてくれた。
傑くんは背中を撫でてくれているし、悟くんは頭を撫でてくれた。
直哉様の事、今後の事。
考えなきゃいけないことは沢山あるけど……今は友達の側に居たい。
あとがき
中途半端なとこで終わってしまった感。
いや、まだ続きますけれど(笑)
ひとまず一区切り。
・この人何言ってるん?名前ちゃん
直哉様がご乱心なさってちょっと話通じなくて困惑。
あれ?この人どうした?
ちょっと話聞いて?ねぇ、婚約破棄されたっつってんじゃん?ねえ、聞いて……聞いて!!!!!
話通じる友人らが迎えに来てくれていて安心したようぇーん。あの人意味わかんないよえーん。
・俺ら両思いやから恋人な直哉様
頭ハッピーセット。
嫉妬から振り切ったデレに誰もがついていけてない。この度幸せな勘違いを全力疾走なう。
話ほぼ聞いてないし都合のいいところしか聞いてないからあれ?俺ら恋人から清く正しくやり直そ!って脳内ハピハピ。お花畑領域展開。
今後は糖度ハチミツ1000%な割合で溺愛。
しかし嫉妬も水飴レベルでねっちょりする。
・宇宙人に蒼ぶちかましたい悟くん
恋人?は?
両思い?はぁ?
ちゅー?はぁ"ぁ"あ"ん?
寝言はお布団で言え。塩だ、ありったけの塩持ってこい!!
・教祖がチラッとこんにちは傑くん
除菌と消毒大事だよね。
この可愛い唇を除菌と消毒するには……上書きすべきかな?
禪院って家名を今すぐ潰さなきゃ何だか背中がゾワゾワする。
・男共に任せておけない硝子ちゃん
もうこれは私が囲うしかない。
ドクズ共にこの子いいようにされるとか許さん。
女もありだと思うよ?(ニヤリ)
家入さんが本気を出す準備を始めました。