呪縛
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天井に伸ばされた指を絡めて畳みに押さえ付ける。
無理矢理脱がせた拍子に千切られた制服。
中にシャツなど着ていないせいで成長した胸元と下着が出ている。
「こんなんいつ買ったん?」
可愛らしい下着。
こんな物を買った記憶はない。
自分で選んだ……にしては水色が嫌に目につき頭の中で思い出す空色の瞳を持つ男を思い描かされイライラする。
雑に上にズラし、本能のままデカく育った乳房を掴む。
指が肉に沈み動かせば柔らかな乳房に興奮しない男などいないだろう。
指の隙間から覗く小さな突起に目を奪われ、唇を寄せてペロリと舐める。
跳ねる身体を再び己の身体で押さえ付けて何度も舐め、吸い、歯を当てればプクリと可愛らしく立ち上がった。
顔を赤くしながらも弱々しいながら胸を押したり身を捩ってみたりする様子が可愛らしい。
何度も何度も角度を変えて唇を重ねる。
やわやわと噛みまた唇を重ね、息苦しくなって顔を背けても顔を戻し舌を入れる。
今までもキスする事はあった。
身体に触れる事もあった。
それとは違い、今まで大切に我慢していた事をヤれる興奮。
キスの苦しさからか涙が零れれば舌で舐め取り、唇を重ねて舌が絡み合うと塩辛い。
そんな一挙一動全てに興奮する。
「ふっ、直哉……様っ」
何度も何度も我慢してきた。
大切に、怖がらせないように抱こうと思っていたのにその優しさを無下にしたのは名前の方だ。
こんな形で抱いてしまう事に罪悪感はあるものの、もう遠慮などしない。
いつ自分の知らぬとこで大切にしていた名前を奪われるかわからない。
それならば、いっそ……
抵抗力が少し強くなった事に苛立つ。
タイツを脱がし下着の上から秘部に触れると身体をビクビクとしながら暴れだす。
濡れてはいない。
初めてだから仕方ないと何度も感じやすい場所を探してまさぐるが、嫌だ嫌だと下から抜け出そうともがく姿に何度も押さえ付け、その度に痛そうに顔を歪める。
嫌だ、なんて聞きたくなくて己の口で口を塞いでしまう。
大切なのに。
愛おしいのに。
好きなのに。
ーーーなんで、離れようとするん?
ボロボロと止まらない涙。
恐怖に怯えた表情。
逃げようと必死に抵抗する姿。
好かれていると思っていたのに
同じ気持ちだと思っていたのに
裏切ったのは名前なのに
どうしてそんな悲痛に顔を歪める?
ーーー泣きたいのはこっちや
自分よりも小さく柔らかい肉体。
どちらの唾液かわからないものが垂れて濡れて赤くぷっくりとした唇。
呼吸をしようと上下するたびふるふるとプリンのように揺れる乳房の真ん中にピンっと立った突起が厭らしい。
胸元が出て、捲り上げられたスカートからは普段は見ることの無い白い柔肌が露出され男を誘惑するには充分なほど艶かしい。
可愛らしかった子が艶かしい女へ。
自分の手で変わっていく姿にゴクリ、と喉がなる。
ーーー欲しい。
本能のままこの身体を貪り、好きにしたい。
早く、早く。
ペロリ、と無意識の内に己の唇を舐める。
罪悪感など、知った事か。
今はこの目の前の女を………
「……直哉、様」
「なん?」
「手、少しだけよろしいでしょうか?」
「暴れるなら…」
「違います」
理性を失くしかけた時に声を掛けられ興が削がれる。
逃げ出さないと言うのなら……ゆっくりと押さえ付けていた手を離す。
身体を浮かせて何をするのかと見守れば……先程、感情のままに叩いた頬を反転術式で治している。
「……何しとんの」
「直哉様の目に汚れが入ったままでは気が散りますでしょう?」
此方を見た名前の顔を見て……一気に興奮が覚めた。
赤くなっていた頬はみるみる治まり、いつもの白い肌へ。
興奮して頬を染めていると勝手に思っていたが……思い出すのは力任せにこの小さな柔肌を叩いた己。
ゴソゴソと自分で後ろのホックを外し、起き上がり、自分で制服を脱ぐ名前。
下だけ穿いただけの姿。
ずっと見たかった好きな子の裸。
首に腕を回され、嬉しいはずなのに……興奮どころかどんどんと頭が冷えていく。
「責任も果たせず直哉様の優しさに甘えて身勝手な事をしていた愚かな胎をお許し下さい」
「……何、言うて」
「今後直哉様の意思を尊重し必要最低限話さず胎としての務めを果たす為に精進致します。
なので、どうか……恐れ多いお願いではございますが我が一族をお許し下さい。
私の愚かな行いによる責任は私のみでお許し下さい」
ーーーこの表情の抜け落ちた子は誰や?
いつも微笑んで俺の後を追い掛けて来た名前ちゃんやない。
俺に触れられ、すり寄って来た名前ちゃんやない。
名前ちゃんはこんな無機質で涙を流し続けるような子やない。
誰だ?
これは……本当に名前か?
唇を重ねて、先ほどまで自分がしていたように下手くそながら舌を入れて絡めてくる。
己の衣類に手をかけて、学生服を脱がされる。
頬に、首に、胸元に口付けて……
「止め」
こんな娘など知らない。
見た目は名前なのに…己が1度も見たことがない顔をしている。
此方に瞳は向けられているのに、ガラス玉のような瞳でどこを映しているのかわからない。
何度も己に触れる度、ポロポロと感情が抜け落ちていくように流される涙。
こんな人形を抱く趣味など無い。
バサリ、と自分が名前の顔を見なくて済むように脱がされた学生服を頭から被せる。
「ガッつく女嫌いやねん。頭冷やし」
ドクドクと心臓が脈打つ。
欲しかったはずの宝が急に目の前から消えてしまったかのような喪失感。
名前一人を置き去りにして早々と部屋から立ち去る。
「……クソッ」
ダァンッ、と壁を叩き付ける。
「何やアレッ」
全てを諦めた顔をしていた。
全ての感情を捨てた顔をしていた。
自分がどれほど大切に囲っていたのかも知らず、己を裏切ったくせに。
東京で一体何を吹き込まれたのかは知らないが……やはり行かせるべきではなかった。
己だけを見て
己だけに話して
己だけの言葉を聞き
己だけを愛すべきなのに……っ
余所の男に余計な知恵を入れられ壊された。
己の知らぬ欠陥品を抱くほど懐の広さは無い。
まずは頭を冷やさせ、名前に自分の立場を思い出させる。
「大好きやで、名前ちゃん」
ーーー俺を見ぃひん人形に興味は無い。
俺が好きになったんは花が咲いたように笑う子なんやから。
あんな冷たく無機質な子やない。
どれほど時間が経っただろう。
直哉様がいなくなり、直哉様の制服を抱き締めて泣いて目も頭も痛い。
身体が冷えてきて、このままじゃ風邪をひいてしまう。
そうすれば……直哉様に迷惑をかける。
のろのろと起き上がり、直哉様の部屋に置いてある着物に手を通す。
あれだけ泣いたのに……また涙が零れそうになる。
零れぬよう上を向いて耐える。
もう、望まない。
もう、憧れない。
もう、期待しない。
もう、諦める。
認めるしかないんだ。
私は直哉様から愛されていない。
今回の事で直哉様は酷く傷付いてしまった。もしかしたらもう呆れて飽きてしまわれた可能性もある。
今更ではあるが心を入れ換えて過ごさなくてはいけない。
人様に、直哉様に、家に私の甘えで迷惑かけてはいけない。
直哉様が優しくて甘え過ぎていた。
勘違いをしてしまった。
好きでもない女と家の都合で婚約者となり、血を術式を残す為に抱かなくてはいけない。
それは直哉様にとって苦痛である事だろう。
数ある中から選ばれただけの存在である私が、恐れ多くも直哉様から寵愛を受けられるなど……そもそもが間違えていたのだ。
数ある中から顔だけで選ばれただけ。
そこに好意などない。
直哉様が優しいから調子に乗ってしまっていた。
最初から諦めて己の立場を受け入れてしまえば良かった。
父や母のように幸せになれるなど期待して、理想と違う現実に勝手に心を痛めるなどとんだ悲劇のヒロイン気取りだ。
たかが子を産むだけの道具に寄付までして振り回され……直哉様からすればいい気分になるわけがない。
直哉様が怒って当然だ。
私に感情などいらない。
私が少し自分の立場を理解し、我慢すれば解決する。
誰にも迷惑などかからない。
期待しなければ傷付く事など無い。
受け入れてしまえば怖いものなど無い。
諦めてしまえば望む事など無い。
ほら、簡単な事。
涙は引っ込んだ。
まずはこの腫れた目をどうにかしなくてはならない。
た衣類を正し、部屋を出る。
手洗い場で顔を洗いタオルで目を抑える。
……冷たいタオルが気持ちいい。
本当は温かいタオルと交互で当てると腫れもおさまりやすいが……今の私は頭を冷やすには冷たい方が丁度いい。
「何しとんの」
タオルをズラして見れば……直哉様が壁に寄り掛かりながら見ていた。
……眉間にシワが寄っている。
部屋にいない私を見て気分が良くなかったのだろうか?
「申し訳ございません。お見苦しい姿ばかりで」
「何しとったんか聞いとる」
「瞼を冷やしてました」
タオルを持ち直哉様の前に立つ。
鋭く私を睨み付ける直哉様に私は笑かける。
「今、部屋に戻ります。逃げたりいたしません」
「当たり前やろ」
「東京の高専、辞めます。
直哉様が望んでくださるなら京都へ移ります。
望まれないのなら……禪院家にて下働きをさせて頂きたいと思っております」
「は?何考えとるの?」
「……何も」
頭を下げて直哉様の言葉を待つ。
私が考えるから多分良くないんだと思う。
思考を捨ててしまい直哉様に委ねるなんて都合良く直哉様を利用していると思われるかもしれない。
でも、私はもう疲れてしまった。
自分で考えても直哉様の為にならない。
ならば、いっそのこと考えるのを辞めてしまえばいい。
「直哉様のご意志に従います」
私は馬鹿だから……アレコレ考えて結果良くない事ばかりしている。
迷惑かけてしまうくらいなら、最初から従っていた方がずっといい。
「ふーん……名前ちゃん、俺が言うたら全部従うん?」
「はい」
「じゃあキスしてくれん?」
目を細めてこちらを眺める直哉様。
直哉様の胸元に手を置き、背伸びをするが届かない。
じっと此方を見下ろす直哉様の胸元を少しだけ引っ張る。
「なん?」
「届かないです」
「だから?」
「……直哉様、お世話をお掛けしますが少しだけ屈んで欲しいです」
「俺が屈まないとダメなん?」
少しも屈んでくれそうにない。
踏み台なんて無いしどうしようかと思って直哉様を見上げる。
「……直哉様」
何を考えているかわからない。
じっと探るように、試すように私を見ている。
「直哉様にとって私は……必要ですか?」
こんなこと、聞かない方がいい。
けどきっとこの答え次第で私は心を決められる。
「そんなん名前ちゃんに関係あるん?」
……ほら、やっぱり。
直哉様にとって私は私ではない。
数ある婚約者候補の一人。
子を産むための名前のついた道具。
私じゃなくても良かった。
直哉様の襟を少し強く引けば頭の位置が下がる。
その瞬間に重ねるだけの口付けを一つ。
鼻先が触れ合うほど近い。
直哉様の顔に手を伸ばし、また唇を重ねる。
何度も何度も自分の唇を押し付けるのに直哉様は反応しない。
もう一度……と顔を寄せるが口に手を当てられて止められる。
「直哉様……?」
「名前ちゃん自分がどんな顔しとるかわかっとる?」
「え?」
「泣きながらキスするほど俺が嫌なん?」
直哉様に言われて初めて気付く。
もう枯れてしまったと思っていたのに……まだ、出るのか。
ハラハラ、ハラハラ。
流れる涙。
「腹立たつわッ」
「っっ!!」
髪の毛を捕まれ床に叩き付けられた。
痛みに耐えるがすぐに髪を引かれて上を向かされる。
「何が気に入らんの?
何で俺の言うこと聞けへんの?」
「ご、ごめんなさっ」
「謝るだけなら誰でも出来るわ」
フーフーと獣のように怒る直哉様。
なぜ泣き出したかなんて私ですらわからないのに。
欠陥品の身体は全て欠陥品。
拳を握られ振り落とされる腕に痛みに備えて身を縮める。
その時
バキバキッと塀が壊される音。
そして何かに抉られた地面。
「何事やっ!!」
バタバタと慌ただしくなる。
控えていた禪院家の者達が続々と集まる。
「どーもぉー。
夜分遅くにすいませーん」
じゃりじゃりと申し訳なさも何もなく堂々とポケットに手を突っ込みながら歩いてくる。
「うちの可愛い同級生が拉致られたって連絡入ったんで助けに来たんだけど、門前払いされたから善意で近場の呪霊倒してたら勢い余ったわ」
「ちょこまか逃げ惑うから困っちゃったね」
黒い学生服姿が二人。
白と黒が月夜に照らされている。
「「名前」」
ーーー夢、だろうか?
「迎えに来た」
「私達と帰ろう」
にこりと笑う二人組に涙が溢れる。
もう、望まないと決めたのに。
二人の姿を見て心が揺れる。
「自分ら……此処が何処で何したかわかっとる?」
「そっちこそ何してんだよ」
「その怪我……キミがやってない、とか言わないよね?」
「俺のモンどうしようと勝手やろ」
「「は?」」
もう、憧れないと決めたのに。
楽しかった日々が頭を巡る。
「理解力の無い馬鹿の躾や。
ただの同級生の自分らが怒る事やない」
「俺言ったじゃん。
名前に何かあったら殺すって」
「まずはその髪を掴む手……どうしようか?」
もう、期待しないと決めたのに。
傑くんの呪霊が直哉様の手を払い、私から直哉様を引き離す。
「……後ろ楯も無い一般がっ!!」
「傑、ディスられてんぞ」
「御三家ともあろう血筋のお方はどうやら血筋に拘り七光り頼りみたいだね」
「それ俺に言ってる?」
「悟も常識に欠けているけど実力はあるから」
「オイ前髪引き千切んぞ」
「実力も無いし七光り頼りでふんぞり返るなんてダサいねって話さ」
「なるほど。けど後で殴る」
もう、諦めると決めたのに。
戻りたいって願ってしまう。
「自分ら…っ」
「名前、選べよ」
「私達と帰るか、ここに居残るか」
「名前の返事次第で俺らは動く」
真っ直ぐに私を見つめる4つの瞳。
選ぶ?
私に選ぶ権利など無いのに……。
唇を噛み締め両手を握る。
選ぶなど出来ない。
私には、この道しか無い。
無い、けれど……
「母胎になるしか道が無いなんて思うなよ。
俺らは名前がどうしたいか聞いてんだから」
「名前ちゃん、聞いたらアカン」
「私達は名前自身の心に願う声が聞きたいんだ」
「名前ちゃんならわかるやろ?」
「ずっとそうやって心殺して生きてるのに死んだまま過ごすのか?
そうやってて名前は幸せなのかよ」
「好き勝手言うなぁ」
「名前……教えてくれないか?キミの言葉で」
「名前ちゃん!!」
直哉様の声が響く。
私の、心の声。
私のやりたいこと。
私の幸せ。
「………わたし、は…」
願うなら
叶うなら
望んでいいのなら
憧れていいのなら
期待していいのなら
諦めなくていいのならっっ!!
「しあわせに……っ!!なり、たいっ!!」
声に出して叫んだ。
あとがき
vs禪院家①
見事なすれ違いお疲れ様です。
長くなりそうなので小分けにいきましょう。
良い子の皆様は夜分に人の家に壁破壊して乗り込んではいけません。
そんなダイナミックな方法警察沙汰だよ☆
・18禁体験させられそうだった名前ちゃん
メンタルブレイク連続コンボにもうHPは限りなく0よっ!!
・種からやり直せ直哉くん
情緒不安定。
けどヘタレなので最後まで決められない。
if時空なら確実に18禁へ
・レベル14の二人
ビッグバンテラおこサンシャインヴィーナスバベルキレキレマスター
訳:ブッ殺☆
・待機硝子ちゃん
ヤれ(いっけなぁ〜い★殺意★殺意★)
無理矢理脱がせた拍子に千切られた制服。
中にシャツなど着ていないせいで成長した胸元と下着が出ている。
「こんなんいつ買ったん?」
可愛らしい下着。
こんな物を買った記憶はない。
自分で選んだ……にしては水色が嫌に目につき頭の中で思い出す空色の瞳を持つ男を思い描かされイライラする。
雑に上にズラし、本能のままデカく育った乳房を掴む。
指が肉に沈み動かせば柔らかな乳房に興奮しない男などいないだろう。
指の隙間から覗く小さな突起に目を奪われ、唇を寄せてペロリと舐める。
跳ねる身体を再び己の身体で押さえ付けて何度も舐め、吸い、歯を当てればプクリと可愛らしく立ち上がった。
顔を赤くしながらも弱々しいながら胸を押したり身を捩ってみたりする様子が可愛らしい。
何度も何度も角度を変えて唇を重ねる。
やわやわと噛みまた唇を重ね、息苦しくなって顔を背けても顔を戻し舌を入れる。
今までもキスする事はあった。
身体に触れる事もあった。
それとは違い、今まで大切に我慢していた事をヤれる興奮。
キスの苦しさからか涙が零れれば舌で舐め取り、唇を重ねて舌が絡み合うと塩辛い。
そんな一挙一動全てに興奮する。
「ふっ、直哉……様っ」
何度も何度も我慢してきた。
大切に、怖がらせないように抱こうと思っていたのにその優しさを無下にしたのは名前の方だ。
こんな形で抱いてしまう事に罪悪感はあるものの、もう遠慮などしない。
いつ自分の知らぬとこで大切にしていた名前を奪われるかわからない。
それならば、いっそ……
抵抗力が少し強くなった事に苛立つ。
タイツを脱がし下着の上から秘部に触れると身体をビクビクとしながら暴れだす。
濡れてはいない。
初めてだから仕方ないと何度も感じやすい場所を探してまさぐるが、嫌だ嫌だと下から抜け出そうともがく姿に何度も押さえ付け、その度に痛そうに顔を歪める。
嫌だ、なんて聞きたくなくて己の口で口を塞いでしまう。
大切なのに。
愛おしいのに。
好きなのに。
ーーーなんで、離れようとするん?
ボロボロと止まらない涙。
恐怖に怯えた表情。
逃げようと必死に抵抗する姿。
好かれていると思っていたのに
同じ気持ちだと思っていたのに
裏切ったのは名前なのに
どうしてそんな悲痛に顔を歪める?
ーーー泣きたいのはこっちや
自分よりも小さく柔らかい肉体。
どちらの唾液かわからないものが垂れて濡れて赤くぷっくりとした唇。
呼吸をしようと上下するたびふるふるとプリンのように揺れる乳房の真ん中にピンっと立った突起が厭らしい。
胸元が出て、捲り上げられたスカートからは普段は見ることの無い白い柔肌が露出され男を誘惑するには充分なほど艶かしい。
可愛らしかった子が艶かしい女へ。
自分の手で変わっていく姿にゴクリ、と喉がなる。
ーーー欲しい。
本能のままこの身体を貪り、好きにしたい。
早く、早く。
ペロリ、と無意識の内に己の唇を舐める。
罪悪感など、知った事か。
今はこの目の前の女を………
「……直哉、様」
「なん?」
「手、少しだけよろしいでしょうか?」
「暴れるなら…」
「違います」
理性を失くしかけた時に声を掛けられ興が削がれる。
逃げ出さないと言うのなら……ゆっくりと押さえ付けていた手を離す。
身体を浮かせて何をするのかと見守れば……先程、感情のままに叩いた頬を反転術式で治している。
「……何しとんの」
「直哉様の目に汚れが入ったままでは気が散りますでしょう?」
此方を見た名前の顔を見て……一気に興奮が覚めた。
赤くなっていた頬はみるみる治まり、いつもの白い肌へ。
興奮して頬を染めていると勝手に思っていたが……思い出すのは力任せにこの小さな柔肌を叩いた己。
ゴソゴソと自分で後ろのホックを外し、起き上がり、自分で制服を脱ぐ名前。
下だけ穿いただけの姿。
ずっと見たかった好きな子の裸。
首に腕を回され、嬉しいはずなのに……興奮どころかどんどんと頭が冷えていく。
「責任も果たせず直哉様の優しさに甘えて身勝手な事をしていた愚かな胎をお許し下さい」
「……何、言うて」
「今後直哉様の意思を尊重し必要最低限話さず胎としての務めを果たす為に精進致します。
なので、どうか……恐れ多いお願いではございますが我が一族をお許し下さい。
私の愚かな行いによる責任は私のみでお許し下さい」
ーーーこの表情の抜け落ちた子は誰や?
いつも微笑んで俺の後を追い掛けて来た名前ちゃんやない。
俺に触れられ、すり寄って来た名前ちゃんやない。
名前ちゃんはこんな無機質で涙を流し続けるような子やない。
誰だ?
これは……本当に名前か?
唇を重ねて、先ほどまで自分がしていたように下手くそながら舌を入れて絡めてくる。
己の衣類に手をかけて、学生服を脱がされる。
頬に、首に、胸元に口付けて……
「止め」
こんな娘など知らない。
見た目は名前なのに…己が1度も見たことがない顔をしている。
此方に瞳は向けられているのに、ガラス玉のような瞳でどこを映しているのかわからない。
何度も己に触れる度、ポロポロと感情が抜け落ちていくように流される涙。
こんな人形を抱く趣味など無い。
バサリ、と自分が名前の顔を見なくて済むように脱がされた学生服を頭から被せる。
「ガッつく女嫌いやねん。頭冷やし」
ドクドクと心臓が脈打つ。
欲しかったはずの宝が急に目の前から消えてしまったかのような喪失感。
名前一人を置き去りにして早々と部屋から立ち去る。
「……クソッ」
ダァンッ、と壁を叩き付ける。
「何やアレッ」
全てを諦めた顔をしていた。
全ての感情を捨てた顔をしていた。
自分がどれほど大切に囲っていたのかも知らず、己を裏切ったくせに。
東京で一体何を吹き込まれたのかは知らないが……やはり行かせるべきではなかった。
己だけを見て
己だけに話して
己だけの言葉を聞き
己だけを愛すべきなのに……っ
余所の男に余計な知恵を入れられ壊された。
己の知らぬ欠陥品を抱くほど懐の広さは無い。
まずは頭を冷やさせ、名前に自分の立場を思い出させる。
「大好きやで、名前ちゃん」
ーーー俺を見ぃひん人形に興味は無い。
俺が好きになったんは花が咲いたように笑う子なんやから。
あんな冷たく無機質な子やない。
どれほど時間が経っただろう。
直哉様がいなくなり、直哉様の制服を抱き締めて泣いて目も頭も痛い。
身体が冷えてきて、このままじゃ風邪をひいてしまう。
そうすれば……直哉様に迷惑をかける。
のろのろと起き上がり、直哉様の部屋に置いてある着物に手を通す。
あれだけ泣いたのに……また涙が零れそうになる。
零れぬよう上を向いて耐える。
もう、望まない。
もう、憧れない。
もう、期待しない。
もう、諦める。
認めるしかないんだ。
私は直哉様から愛されていない。
今回の事で直哉様は酷く傷付いてしまった。もしかしたらもう呆れて飽きてしまわれた可能性もある。
今更ではあるが心を入れ換えて過ごさなくてはいけない。
人様に、直哉様に、家に私の甘えで迷惑かけてはいけない。
直哉様が優しくて甘え過ぎていた。
勘違いをしてしまった。
好きでもない女と家の都合で婚約者となり、血を術式を残す為に抱かなくてはいけない。
それは直哉様にとって苦痛である事だろう。
数ある中から選ばれただけの存在である私が、恐れ多くも直哉様から寵愛を受けられるなど……そもそもが間違えていたのだ。
数ある中から顔だけで選ばれただけ。
そこに好意などない。
直哉様が優しいから調子に乗ってしまっていた。
最初から諦めて己の立場を受け入れてしまえば良かった。
父や母のように幸せになれるなど期待して、理想と違う現実に勝手に心を痛めるなどとんだ悲劇のヒロイン気取りだ。
たかが子を産むだけの道具に寄付までして振り回され……直哉様からすればいい気分になるわけがない。
直哉様が怒って当然だ。
私に感情などいらない。
私が少し自分の立場を理解し、我慢すれば解決する。
誰にも迷惑などかからない。
期待しなければ傷付く事など無い。
受け入れてしまえば怖いものなど無い。
諦めてしまえば望む事など無い。
ほら、簡単な事。
涙は引っ込んだ。
まずはこの腫れた目をどうにかしなくてはならない。
た衣類を正し、部屋を出る。
手洗い場で顔を洗いタオルで目を抑える。
……冷たいタオルが気持ちいい。
本当は温かいタオルと交互で当てると腫れもおさまりやすいが……今の私は頭を冷やすには冷たい方が丁度いい。
「何しとんの」
タオルをズラして見れば……直哉様が壁に寄り掛かりながら見ていた。
……眉間にシワが寄っている。
部屋にいない私を見て気分が良くなかったのだろうか?
「申し訳ございません。お見苦しい姿ばかりで」
「何しとったんか聞いとる」
「瞼を冷やしてました」
タオルを持ち直哉様の前に立つ。
鋭く私を睨み付ける直哉様に私は笑かける。
「今、部屋に戻ります。逃げたりいたしません」
「当たり前やろ」
「東京の高専、辞めます。
直哉様が望んでくださるなら京都へ移ります。
望まれないのなら……禪院家にて下働きをさせて頂きたいと思っております」
「は?何考えとるの?」
「……何も」
頭を下げて直哉様の言葉を待つ。
私が考えるから多分良くないんだと思う。
思考を捨ててしまい直哉様に委ねるなんて都合良く直哉様を利用していると思われるかもしれない。
でも、私はもう疲れてしまった。
自分で考えても直哉様の為にならない。
ならば、いっそのこと考えるのを辞めてしまえばいい。
「直哉様のご意志に従います」
私は馬鹿だから……アレコレ考えて結果良くない事ばかりしている。
迷惑かけてしまうくらいなら、最初から従っていた方がずっといい。
「ふーん……名前ちゃん、俺が言うたら全部従うん?」
「はい」
「じゃあキスしてくれん?」
目を細めてこちらを眺める直哉様。
直哉様の胸元に手を置き、背伸びをするが届かない。
じっと此方を見下ろす直哉様の胸元を少しだけ引っ張る。
「なん?」
「届かないです」
「だから?」
「……直哉様、お世話をお掛けしますが少しだけ屈んで欲しいです」
「俺が屈まないとダメなん?」
少しも屈んでくれそうにない。
踏み台なんて無いしどうしようかと思って直哉様を見上げる。
「……直哉様」
何を考えているかわからない。
じっと探るように、試すように私を見ている。
「直哉様にとって私は……必要ですか?」
こんなこと、聞かない方がいい。
けどきっとこの答え次第で私は心を決められる。
「そんなん名前ちゃんに関係あるん?」
……ほら、やっぱり。
直哉様にとって私は私ではない。
数ある婚約者候補の一人。
子を産むための名前のついた道具。
私じゃなくても良かった。
直哉様の襟を少し強く引けば頭の位置が下がる。
その瞬間に重ねるだけの口付けを一つ。
鼻先が触れ合うほど近い。
直哉様の顔に手を伸ばし、また唇を重ねる。
何度も何度も自分の唇を押し付けるのに直哉様は反応しない。
もう一度……と顔を寄せるが口に手を当てられて止められる。
「直哉様……?」
「名前ちゃん自分がどんな顔しとるかわかっとる?」
「え?」
「泣きながらキスするほど俺が嫌なん?」
直哉様に言われて初めて気付く。
もう枯れてしまったと思っていたのに……まだ、出るのか。
ハラハラ、ハラハラ。
流れる涙。
「腹立たつわッ」
「っっ!!」
髪の毛を捕まれ床に叩き付けられた。
痛みに耐えるがすぐに髪を引かれて上を向かされる。
「何が気に入らんの?
何で俺の言うこと聞けへんの?」
「ご、ごめんなさっ」
「謝るだけなら誰でも出来るわ」
フーフーと獣のように怒る直哉様。
なぜ泣き出したかなんて私ですらわからないのに。
欠陥品の身体は全て欠陥品。
拳を握られ振り落とされる腕に痛みに備えて身を縮める。
その時
バキバキッと塀が壊される音。
そして何かに抉られた地面。
「何事やっ!!」
バタバタと慌ただしくなる。
控えていた禪院家の者達が続々と集まる。
「どーもぉー。
夜分遅くにすいませーん」
じゃりじゃりと申し訳なさも何もなく堂々とポケットに手を突っ込みながら歩いてくる。
「うちの可愛い同級生が拉致られたって連絡入ったんで助けに来たんだけど、門前払いされたから善意で近場の呪霊倒してたら勢い余ったわ」
「ちょこまか逃げ惑うから困っちゃったね」
黒い学生服姿が二人。
白と黒が月夜に照らされている。
「「名前」」
ーーー夢、だろうか?
「迎えに来た」
「私達と帰ろう」
にこりと笑う二人組に涙が溢れる。
もう、望まないと決めたのに。
二人の姿を見て心が揺れる。
「自分ら……此処が何処で何したかわかっとる?」
「そっちこそ何してんだよ」
「その怪我……キミがやってない、とか言わないよね?」
「俺のモンどうしようと勝手やろ」
「「は?」」
もう、憧れないと決めたのに。
楽しかった日々が頭を巡る。
「理解力の無い馬鹿の躾や。
ただの同級生の自分らが怒る事やない」
「俺言ったじゃん。
名前に何かあったら殺すって」
「まずはその髪を掴む手……どうしようか?」
もう、期待しないと決めたのに。
傑くんの呪霊が直哉様の手を払い、私から直哉様を引き離す。
「……後ろ楯も無い一般がっ!!」
「傑、ディスられてんぞ」
「御三家ともあろう血筋のお方はどうやら血筋に拘り七光り頼りみたいだね」
「それ俺に言ってる?」
「悟も常識に欠けているけど実力はあるから」
「オイ前髪引き千切んぞ」
「実力も無いし七光り頼りでふんぞり返るなんてダサいねって話さ」
「なるほど。けど後で殴る」
もう、諦めると決めたのに。
戻りたいって願ってしまう。
「自分ら…っ」
「名前、選べよ」
「私達と帰るか、ここに居残るか」
「名前の返事次第で俺らは動く」
真っ直ぐに私を見つめる4つの瞳。
選ぶ?
私に選ぶ権利など無いのに……。
唇を噛み締め両手を握る。
選ぶなど出来ない。
私には、この道しか無い。
無い、けれど……
「母胎になるしか道が無いなんて思うなよ。
俺らは名前がどうしたいか聞いてんだから」
「名前ちゃん、聞いたらアカン」
「私達は名前自身の心に願う声が聞きたいんだ」
「名前ちゃんならわかるやろ?」
「ずっとそうやって心殺して生きてるのに死んだまま過ごすのか?
そうやってて名前は幸せなのかよ」
「好き勝手言うなぁ」
「名前……教えてくれないか?キミの言葉で」
「名前ちゃん!!」
直哉様の声が響く。
私の、心の声。
私のやりたいこと。
私の幸せ。
「………わたし、は…」
願うなら
叶うなら
望んでいいのなら
憧れていいのなら
期待していいのなら
諦めなくていいのならっっ!!
「しあわせに……っ!!なり、たいっ!!」
声に出して叫んだ。
あとがき
vs禪院家①
見事なすれ違いお疲れ様です。
長くなりそうなので小分けにいきましょう。
良い子の皆様は夜分に人の家に壁破壊して乗り込んではいけません。
そんなダイナミックな方法警察沙汰だよ☆
・18禁体験させられそうだった名前ちゃん
メンタルブレイク連続コンボにもうHPは限りなく0よっ!!
・種からやり直せ直哉くん
情緒不安定。
けどヘタレなので最後まで決められない。
if時空なら確実に18禁へ
・レベル14の二人
ビッグバンテラおこサンシャインヴィーナスバベルキレキレマスター
訳:ブッ殺☆
・待機硝子ちゃん
ヤれ(いっけなぁ〜い★殺意★殺意★)