先輩ifシリーズ
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臨月
赤ちゃんは予想体重3000gを越えていて
子宮口も開いてきており
お腹の張りもあるので
いつ陣痛が来てもおかしくないと言われ
陣痛が来やすいようにと
今までとは違い、動くように。
「そろそろかぁ」
「ついに、だね」
実感が湧かないが
もうすぐ産まれてくる赤ちゃんに
期待が膨らむ。
「呪霊の討伐より怖いんだけど」
「悟が産むわけじゃないのに?」
「だからだよ
自分だったら、どーにかなりそうだけど
名前や子供に何かあったら
僕は何も出来ないわけだし」
「心配症だなぁ」
「傍にいられるようにするけど
居ないときは硝子や先生に頼ってよ」
「もちろん」
悟がいないときは
基本的高専で過ごしている。
そうすれば、誰かしらいるため
一人になることはない。
日中は書類などの簡単な事務の手伝いをし
夜間は夜蛾先生の計らいで
パンダと共に過ごしている。
そして今、タイミング悪いのか
悟は出張の真っ最中だ。
「学生に戻ったみたい」
「腹パンパンだな」
「重いんだよ」
「人間って気持ち悪いな
人が人を作れるんだから」
「正直だなぁ」
「うねうね腹が動いて気持ち悪い」
表情を歪めているパンダ。
パンダらしい答えに笑ってしまう。
「悟いない時に産まれそうだな」
「パンダもそう思う?」
「悟の子だぞ
絶対悟のいない時狙うぞ」
「私もそう思ってるんだ」
「今夜か、明日か……
悟が帰って来るギリギリだな」
「または、悟が色々派手にやらかして
帰って来るのが先か……」
どっちもあり得るな
だよね
二人で頷き合う。
次の日
高専の事務仕事を手伝っているのだが
何やら生理痛のような
何とも言えぬ鈍痛がある。
最初は不規則で
前駆陣痛かと気にしないでいたのだが
何やらおさまる気配がない。
試しに時間の感覚を計ってみると
だいたい規則的に八分できていた。
「名前さん、こちらなんですが
少しよろしいですか?」
「伊地知くん、お疲れ様」
「お疲れ様です。
………名前さん?
何か顔色悪くありませんか?」
普通に接したつもりだったが
伊地知がまじまじと見てくる。
「うーんとね……
さっきから、お腹痛くて」
「え?」
「少し前から間隔測ってみたら
定期的にきてるみたいなんだよね」
「え?え?」
「まだ我慢出来るけど……
そんなに顔色悪い?」
「辛そうに見えます」
「うーん……陣痛かな?これ」
「えええぇぇぇぇっ!!
で、電話……病院!!あ、五条さん!!!」
「うん、目の前で慌てられると
逆に落ち着くね」
あわあわしている伊地知には
申し訳ないが
とりあえず病院に電話することに。
伊地知は夜蛾先生のところへ走って行った。
「名前、大丈夫か」
「一度病院に来てくれって言われました」
「………余裕そうだな」
「痛むけど、まだ今は耐えれます」
「車を用意させる。悟には?」
「帳の中にいるのか、繋がらなくて」
「同行してる者に連絡を入れておく」
「ありがとうございます」
「家入を呼ぶか?」
「うーん…何かあった時に硝子いないと
反転術式使えないって厳しくないです?」
私のは病気や怪我じゃないから、と断れば
微妙な顔をされる。
不安はあるし、心細いが
仲間に何かあった時に
硝子の力が使えないのは困る。
「後から顔を出す」
「サボっちゃ駄目ですよ、先生」
「あれ?名前これから出掛けるの?」
ひょっこりと、出てきた大和。
夜蛾先生は大和を見て
こちらを見る。
「………駄目ですよ」
「念のためだ」
「悟怒りますよ」
「私が怒られてやる」
「え?何?どーゆーこと?」
「大和、一緒に着いていけ」
「先生、俺報告書書かないと」
「どーにかなるから、今は名前と行け」
車に大和も押し込まれ、発車する車。
「どーゆー状況?」
「…………っ」
「え?なした?名前さん?」
「ウマレルっ」
「は?嘘だろ?まじで!?」
病院に着くまでの間に
痛みが急に増していき
陣痛がきている間は話せないほどに。
病院に着いて
受付に大和が説明してくれ
よろよろしながら分娩室用の部屋へ。
痛みに耐えながら
病衣に着替えさせられ
子宮口を確認されると4cm
初産だから長引くかもと言われながら
お腹にモニターをつけられる。
「旦那さん、陣痛きて
奥さんが痛がるようでしたら
お尻のここらへんを
テニスボールで力一杯押して下さいね」
「え?あ、はい……」
「点滴の用意をしてきますので
何かあったらナースコールを押して下さい」
「うん?はい」
いなくなった看護師。
大和の手にはボール。
「………俺、ここ居なきゃだめ?」
「旦那と間違われたね」
「五条に殺られるじゃん……」
「はぁ……ヤバい」
「ボールいる?」
「まだへーき」
「何だっけ?ひっひっふーしなきゃ駄目?」
「大和、黙ろう」
「……えっと、あ、飲み物買ってくる?
水でいい?」
「頼んだ」
痛みの間隔がどんどん短くなり
痛みも増していく。
腰骨をトンカチで殴られているように
ジンジンガンガンと
お腹と腰骨が痛む。
出来るだけ大きく息を吐くことを意識する。
吐き出すことを意識すれば
吸うことは勝手に出来る。
「水買ってきたぞー」
「ありがと」
「五条から連絡来た?」
「わかんない……大和、頼んだ」
「え?俺?」
「ワタシ、イマ、ヨユウ、ナイ」
自分でもわかるくらい
無表情だったが
気にする余裕は全く無かった。
赤ちゃんに酸素を届けるために
できる限り、呼吸に集中する。
痛みで止めそうになるが
そうすると赤ちゃんまで苦しくなると言われ
吸って吐くことに、集中する。
腰がメキメキと痛むが
そのたびに指圧で誤魔化す。
たまに看護師が来ては
子宮口を確認されるが
10センチまで遠い道のりに
心が折れそうになる痛み。
赤ちゃんも苦しいから頑張って!!
と看護師さんに言われるので
痛みから気を反らすように
呼吸だけに集中する。
『もしもし?』
「あ、繋がった。五条?」
『……あ"ぁ"?お前誰だよ』
「怖い声出すなよ!大和だよ!
俺もあんまり状況わかってないんだけど
簡潔に言うなら名前が産気付いた」
『今聞いた
で、大和が何で名前の携帯から
連絡してきてんの?』
「報告書書こうとしたら夜蛾先生に
車に押し込まれた」
『なるほどね名前は?』
「かれこれ二時間近く陣痛に耐えてるが
まだまだかかりそうらしく
今痛みで気絶するように寝てる」
『まじで?』
「初産だから
開くまで時間かかるっつってたぞ」
『様子変わったらすぐ教えて
今からそっち行くから』
ブチリ、と切れた電話。
大和はちらりと名前を見れば
痛みで起きたのか
再び呼吸に集中していた。
「頑張れ、名前」
何時間経ったのかわからないが
途中、意識が朦朧としていた。
痛みを誤魔化すために
呼吸に集中しているが
どうにもさっきから
何かが出そうで気持ちが悪い。
痛いには痛いのだが
出したい気持ちと
まだ開いてないからいきんじゃ駄目だろ…
いや、出したい。出る。
何か出そうな感覚に看護師を呼びたくなった。
ふと、こちらを覗き込む影に目をやれば
汗をかいた悟の姿。
「遅くなってごめん」
「さと、る……」
大きな手が、汗で湿った前髪を払う。
悟の姿に今まで我慢していた涙が
溢れそうになる。
が、それよりも今まで我慢出来ていた痛みが
急に強くなった感じがして
目の前の悟の腕を力一杯掴む。
「え?名前?」
「ちょ、待って……え、ムリ、でる」
「いや、力強いんだけど。痛いんだけど」
「……っ!!さと、悟っ」
「大丈夫?これ、どーすりゃいいの」
「な……」
「な?」
「ナース、コール……っ」
私の鬼気迫る様子に
悟が押してくれたナースコールで
看護師さんが来てくれた。
「あ、全開になってますね」
「出る……出そう………」
「今、準備するので
もう少し我慢して下さいね」
やっとか!!と思いながら
テキパキと用意する看護師。
気付けば足にカバーをされ
下は何も付けておらず
点滴をされ
看護師さんも準備が終わっていた。
「次陣痛きたら、いきんでみて下さいね」
いきみやすいようにと
捕まる棒に手を誘導され
今まで悟の腕をずっと掴んでいたが
棒を握りしめる。
その上から悟が手を握りしめてくれて
勇気が出る。
耐えるだけだった痛みからの解放に
ゾーンに入ったように
痛みはあるものの
耐えるだけより痛くない。
周りの会話がよく聞こえ
先生が来て、看護師が説明している。
陣痛がくると
大きく息を吸い込み
力一杯お腹に力を込める。
息を止めているせいで
いきむのを止めると
はっはっはっ、と呼吸が乱れる。
しっかり呼吸して!!と看護師に言われ
大きく深呼吸をする。
何回かいきむが
赤ちゃんが出る様子はなく
力を込めるのに目を閉じると
看護師さんに目を閉じないで!!と言われ
汗で握りしめた棒から手が滑りそうになる。
悟の手にも力が入っているのか
悟の手のおかげで
滑っていないようにも感じられる。
赤ちゃんの頭が見えてきてるから
次頑張って!!の声に
陣痛がじわじわときたのを感じ
大きく息を吸い込み
出来る限りの力を込める。
ズルン、と何かが出て
パンパンだったお腹がへこむ。
おんぎゃー、おんぎゃーと
手足をばたつかせながら
泣く赤ちゃん。
看護師さんがこちらに顔を見せてくれる。
「おめでとうございます
元気な男の子ですよ」
見せられた赤ちゃんに
今まで痛かったはずなのに
身体はまったく痛くなくて
へこんだお腹が寂しくて
それ以上に、やっと会えた赤ちゃんが
嬉しくて、涙が出た。
「名前」
悟の指が溢れた涙を拭いてくれる。
「ありがと。お疲れ様」
「悟っ」
産後の処置をするためと、悟は一度外へ出され
終わったからと悟が再び入ってきたのと
同じくらいに、赤ちゃんを手渡される。
産後一時間はここにいて
そのあとにベットに移動しますと言われ
看護師もいなくなる。
「ちっちゃい……」
「ちっちゃいな」
「あ、目開けた」
「名前と同じ紫だな」
「この子、絶対将来イケメンだわ」
「僕と名前の子だからね」
悟が連写のごとく
写真を撮っている。
「悟、撮りすぎじゃない?」
「名前が撮れない分も」
「悟、抱っこしてみたら?」
「え?」
「ほら、私動けないんだから」
首しっかり持ってねと
悟に手渡すと
ガチン、と固まってしまった悟。
「………重い」
「三キロも無いんだけどね」
「軽いけど……小さいのに、重いな」
少しだけ
少しだけ悟の目に涙が浮かぶ。
悟の携帯を借りて
パシャリと撮る。
「名前、初の家族写真撮ろ」
「ねぇ、私ボロボロなんだけど」
「いーじゃん。かっこいいよ」
ケラケラ笑いながら
先ほどまで固まっていたとは思えないくらい
赤ん坊を片手に抱き
携帯片手に自撮りする悟。
決め顔するあたり、悟らしいと
笑ってしまった。
ありがとう、私達のところに来てくれて。
ありがとう、無事に産まれてくれて。
幸せな一歩が
これから始まる。
あとがき
ありがとうございました!!
悟みたいな旦那が
まじで欲しいツナたまです。
妊娠、出産は
みんな同じではありません。
赤ちゃんに個性があるように
妊娠も出産も個性が出ます。
入院は辛いしストレスもありますが、産後休めなくなるママへの最後のゆっくりできる時間。
楽しいマタニティー生活もあれば
初めから大変なマタニティー生活もありますが
必ず終わりがきて
可愛い我が子に出会えますよ。
伊地知くんが五条と七海の後輩なのは
わかっているのに
補助監督って別クラスあるの……??
それとも、普通に呪術師と一緒なの?と
疑問しかない(笑)
さらっといる捏造(笑)
ちなみに大和は
悟が来た途端に、悟にサンキュとか言われて
廊下に追い出された(笑)
ポカンとしていたら、先生がきて
そのうちに産声聞こえ
1人廊下で感動していた(笑)
悟が出てきて、無事産まれたと聞いて
俺、みんなに知らせてくる!!と
泣きながら病院からダッシュで帰った裏話(笑)
今後ポチポチと
ゆっくりなペースで
番外編を
書いていくと思います。
お付き合いいただき
ありがとうございました
赤ちゃんは予想体重3000gを越えていて
子宮口も開いてきており
お腹の張りもあるので
いつ陣痛が来てもおかしくないと言われ
陣痛が来やすいようにと
今までとは違い、動くように。
「そろそろかぁ」
「ついに、だね」
実感が湧かないが
もうすぐ産まれてくる赤ちゃんに
期待が膨らむ。
「呪霊の討伐より怖いんだけど」
「悟が産むわけじゃないのに?」
「だからだよ
自分だったら、どーにかなりそうだけど
名前や子供に何かあったら
僕は何も出来ないわけだし」
「心配症だなぁ」
「傍にいられるようにするけど
居ないときは硝子や先生に頼ってよ」
「もちろん」
悟がいないときは
基本的高専で過ごしている。
そうすれば、誰かしらいるため
一人になることはない。
日中は書類などの簡単な事務の手伝いをし
夜間は夜蛾先生の計らいで
パンダと共に過ごしている。
そして今、タイミング悪いのか
悟は出張の真っ最中だ。
「学生に戻ったみたい」
「腹パンパンだな」
「重いんだよ」
「人間って気持ち悪いな
人が人を作れるんだから」
「正直だなぁ」
「うねうね腹が動いて気持ち悪い」
表情を歪めているパンダ。
パンダらしい答えに笑ってしまう。
「悟いない時に産まれそうだな」
「パンダもそう思う?」
「悟の子だぞ
絶対悟のいない時狙うぞ」
「私もそう思ってるんだ」
「今夜か、明日か……
悟が帰って来るギリギリだな」
「または、悟が色々派手にやらかして
帰って来るのが先か……」
どっちもあり得るな
だよね
二人で頷き合う。
次の日
高専の事務仕事を手伝っているのだが
何やら生理痛のような
何とも言えぬ鈍痛がある。
最初は不規則で
前駆陣痛かと気にしないでいたのだが
何やらおさまる気配がない。
試しに時間の感覚を計ってみると
だいたい規則的に八分できていた。
「名前さん、こちらなんですが
少しよろしいですか?」
「伊地知くん、お疲れ様」
「お疲れ様です。
………名前さん?
何か顔色悪くありませんか?」
普通に接したつもりだったが
伊地知がまじまじと見てくる。
「うーんとね……
さっきから、お腹痛くて」
「え?」
「少し前から間隔測ってみたら
定期的にきてるみたいなんだよね」
「え?え?」
「まだ我慢出来るけど……
そんなに顔色悪い?」
「辛そうに見えます」
「うーん……陣痛かな?これ」
「えええぇぇぇぇっ!!
で、電話……病院!!あ、五条さん!!!」
「うん、目の前で慌てられると
逆に落ち着くね」
あわあわしている伊地知には
申し訳ないが
とりあえず病院に電話することに。
伊地知は夜蛾先生のところへ走って行った。
「名前、大丈夫か」
「一度病院に来てくれって言われました」
「………余裕そうだな」
「痛むけど、まだ今は耐えれます」
「車を用意させる。悟には?」
「帳の中にいるのか、繋がらなくて」
「同行してる者に連絡を入れておく」
「ありがとうございます」
「家入を呼ぶか?」
「うーん…何かあった時に硝子いないと
反転術式使えないって厳しくないです?」
私のは病気や怪我じゃないから、と断れば
微妙な顔をされる。
不安はあるし、心細いが
仲間に何かあった時に
硝子の力が使えないのは困る。
「後から顔を出す」
「サボっちゃ駄目ですよ、先生」
「あれ?名前これから出掛けるの?」
ひょっこりと、出てきた大和。
夜蛾先生は大和を見て
こちらを見る。
「………駄目ですよ」
「念のためだ」
「悟怒りますよ」
「私が怒られてやる」
「え?何?どーゆーこと?」
「大和、一緒に着いていけ」
「先生、俺報告書書かないと」
「どーにかなるから、今は名前と行け」
車に大和も押し込まれ、発車する車。
「どーゆー状況?」
「…………っ」
「え?なした?名前さん?」
「ウマレルっ」
「は?嘘だろ?まじで!?」
病院に着くまでの間に
痛みが急に増していき
陣痛がきている間は話せないほどに。
病院に着いて
受付に大和が説明してくれ
よろよろしながら分娩室用の部屋へ。
痛みに耐えながら
病衣に着替えさせられ
子宮口を確認されると4cm
初産だから長引くかもと言われながら
お腹にモニターをつけられる。
「旦那さん、陣痛きて
奥さんが痛がるようでしたら
お尻のここらへんを
テニスボールで力一杯押して下さいね」
「え?あ、はい……」
「点滴の用意をしてきますので
何かあったらナースコールを押して下さい」
「うん?はい」
いなくなった看護師。
大和の手にはボール。
「………俺、ここ居なきゃだめ?」
「旦那と間違われたね」
「五条に殺られるじゃん……」
「はぁ……ヤバい」
「ボールいる?」
「まだへーき」
「何だっけ?ひっひっふーしなきゃ駄目?」
「大和、黙ろう」
「……えっと、あ、飲み物買ってくる?
水でいい?」
「頼んだ」
痛みの間隔がどんどん短くなり
痛みも増していく。
腰骨をトンカチで殴られているように
ジンジンガンガンと
お腹と腰骨が痛む。
出来るだけ大きく息を吐くことを意識する。
吐き出すことを意識すれば
吸うことは勝手に出来る。
「水買ってきたぞー」
「ありがと」
「五条から連絡来た?」
「わかんない……大和、頼んだ」
「え?俺?」
「ワタシ、イマ、ヨユウ、ナイ」
自分でもわかるくらい
無表情だったが
気にする余裕は全く無かった。
赤ちゃんに酸素を届けるために
できる限り、呼吸に集中する。
痛みで止めそうになるが
そうすると赤ちゃんまで苦しくなると言われ
吸って吐くことに、集中する。
腰がメキメキと痛むが
そのたびに指圧で誤魔化す。
たまに看護師が来ては
子宮口を確認されるが
10センチまで遠い道のりに
心が折れそうになる痛み。
赤ちゃんも苦しいから頑張って!!
と看護師さんに言われるので
痛みから気を反らすように
呼吸だけに集中する。
『もしもし?』
「あ、繋がった。五条?」
『……あ"ぁ"?お前誰だよ』
「怖い声出すなよ!大和だよ!
俺もあんまり状況わかってないんだけど
簡潔に言うなら名前が産気付いた」
『今聞いた
で、大和が何で名前の携帯から
連絡してきてんの?』
「報告書書こうとしたら夜蛾先生に
車に押し込まれた」
『なるほどね名前は?』
「かれこれ二時間近く陣痛に耐えてるが
まだまだかかりそうらしく
今痛みで気絶するように寝てる」
『まじで?』
「初産だから
開くまで時間かかるっつってたぞ」
『様子変わったらすぐ教えて
今からそっち行くから』
ブチリ、と切れた電話。
大和はちらりと名前を見れば
痛みで起きたのか
再び呼吸に集中していた。
「頑張れ、名前」
何時間経ったのかわからないが
途中、意識が朦朧としていた。
痛みを誤魔化すために
呼吸に集中しているが
どうにもさっきから
何かが出そうで気持ちが悪い。
痛いには痛いのだが
出したい気持ちと
まだ開いてないからいきんじゃ駄目だろ…
いや、出したい。出る。
何か出そうな感覚に看護師を呼びたくなった。
ふと、こちらを覗き込む影に目をやれば
汗をかいた悟の姿。
「遅くなってごめん」
「さと、る……」
大きな手が、汗で湿った前髪を払う。
悟の姿に今まで我慢していた涙が
溢れそうになる。
が、それよりも今まで我慢出来ていた痛みが
急に強くなった感じがして
目の前の悟の腕を力一杯掴む。
「え?名前?」
「ちょ、待って……え、ムリ、でる」
「いや、力強いんだけど。痛いんだけど」
「……っ!!さと、悟っ」
「大丈夫?これ、どーすりゃいいの」
「な……」
「な?」
「ナース、コール……っ」
私の鬼気迫る様子に
悟が押してくれたナースコールで
看護師さんが来てくれた。
「あ、全開になってますね」
「出る……出そう………」
「今、準備するので
もう少し我慢して下さいね」
やっとか!!と思いながら
テキパキと用意する看護師。
気付けば足にカバーをされ
下は何も付けておらず
点滴をされ
看護師さんも準備が終わっていた。
「次陣痛きたら、いきんでみて下さいね」
いきみやすいようにと
捕まる棒に手を誘導され
今まで悟の腕をずっと掴んでいたが
棒を握りしめる。
その上から悟が手を握りしめてくれて
勇気が出る。
耐えるだけだった痛みからの解放に
ゾーンに入ったように
痛みはあるものの
耐えるだけより痛くない。
周りの会話がよく聞こえ
先生が来て、看護師が説明している。
陣痛がくると
大きく息を吸い込み
力一杯お腹に力を込める。
息を止めているせいで
いきむのを止めると
はっはっはっ、と呼吸が乱れる。
しっかり呼吸して!!と看護師に言われ
大きく深呼吸をする。
何回かいきむが
赤ちゃんが出る様子はなく
力を込めるのに目を閉じると
看護師さんに目を閉じないで!!と言われ
汗で握りしめた棒から手が滑りそうになる。
悟の手にも力が入っているのか
悟の手のおかげで
滑っていないようにも感じられる。
赤ちゃんの頭が見えてきてるから
次頑張って!!の声に
陣痛がじわじわときたのを感じ
大きく息を吸い込み
出来る限りの力を込める。
ズルン、と何かが出て
パンパンだったお腹がへこむ。
おんぎゃー、おんぎゃーと
手足をばたつかせながら
泣く赤ちゃん。
看護師さんがこちらに顔を見せてくれる。
「おめでとうございます
元気な男の子ですよ」
見せられた赤ちゃんに
今まで痛かったはずなのに
身体はまったく痛くなくて
へこんだお腹が寂しくて
それ以上に、やっと会えた赤ちゃんが
嬉しくて、涙が出た。
「名前」
悟の指が溢れた涙を拭いてくれる。
「ありがと。お疲れ様」
「悟っ」
産後の処置をするためと、悟は一度外へ出され
終わったからと悟が再び入ってきたのと
同じくらいに、赤ちゃんを手渡される。
産後一時間はここにいて
そのあとにベットに移動しますと言われ
看護師もいなくなる。
「ちっちゃい……」
「ちっちゃいな」
「あ、目開けた」
「名前と同じ紫だな」
「この子、絶対将来イケメンだわ」
「僕と名前の子だからね」
悟が連写のごとく
写真を撮っている。
「悟、撮りすぎじゃない?」
「名前が撮れない分も」
「悟、抱っこしてみたら?」
「え?」
「ほら、私動けないんだから」
首しっかり持ってねと
悟に手渡すと
ガチン、と固まってしまった悟。
「………重い」
「三キロも無いんだけどね」
「軽いけど……小さいのに、重いな」
少しだけ
少しだけ悟の目に涙が浮かぶ。
悟の携帯を借りて
パシャリと撮る。
「名前、初の家族写真撮ろ」
「ねぇ、私ボロボロなんだけど」
「いーじゃん。かっこいいよ」
ケラケラ笑いながら
先ほどまで固まっていたとは思えないくらい
赤ん坊を片手に抱き
携帯片手に自撮りする悟。
決め顔するあたり、悟らしいと
笑ってしまった。
ありがとう、私達のところに来てくれて。
ありがとう、無事に産まれてくれて。
幸せな一歩が
これから始まる。
あとがき
ありがとうございました!!
悟みたいな旦那が
まじで欲しいツナたまです。
妊娠、出産は
みんな同じではありません。
赤ちゃんに個性があるように
妊娠も出産も個性が出ます。
入院は辛いしストレスもありますが、産後休めなくなるママへの最後のゆっくりできる時間。
楽しいマタニティー生活もあれば
初めから大変なマタニティー生活もありますが
必ず終わりがきて
可愛い我が子に出会えますよ。
伊地知くんが五条と七海の後輩なのは
わかっているのに
補助監督って別クラスあるの……??
それとも、普通に呪術師と一緒なの?と
疑問しかない(笑)
さらっといる捏造(笑)
ちなみに大和は
悟が来た途端に、悟にサンキュとか言われて
廊下に追い出された(笑)
ポカンとしていたら、先生がきて
そのうちに産声聞こえ
1人廊下で感動していた(笑)
悟が出てきて、無事産まれたと聞いて
俺、みんなに知らせてくる!!と
泣きながら病院からダッシュで帰った裏話(笑)
今後ポチポチと
ゆっくりなペースで
番外編を
書いていくと思います。
お付き合いいただき
ありがとうございました