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※14巻〜のネタバレあります。
※コミック派注意
それでもOKの方、どーぞ!!
出血の多い東堂くんの腕を止血する為、自分の今着ている服を脱いできつく腕を縛る。
安心してください。中にタンクトップ着てますよ。
みすぼらしい格好となってしまっているが、人命救助に格好とか気にしてられない。
「東堂くん、治す?」
「戦線離脱しろと?」
「時と場合によっては強制」
ギュッと力の限り縛り上げる。
「最後までブラザーと共に」
「めちゃくちゃ格好いいけど、東堂くんが言うとヤバく聞こえる」
「なぜだ」
「読者の心がそう言ってる」
悠仁くんがツギハギと向き合う。
人間に近い姿だったツギハギは今は呪い本来の姿みたいだ。
陀艮ちゃんも姿が変わると強さが違った。
多分ツギハギも……。
ん?陀艮ちゃんのメタルフォーゼ is 陀艮さんショックと違って冷静だって?
だって皆、考えてくれよ……。
赤ちゃんがゲテモノに変化するのと
人間っぽい外道が真の外道に変化するのとじゃ……ねぇ?
むしろ、あぁ、やっと本来の外道の姿になったんか……くらい。
つまり!!ツギハギが人間っぽさ無くなってもだよね!!って納得。
まぁ、あれだよあれ。
好感度の差かな。
あと、私、ここでふざけちゃいけないって空気読めるよ!!!!!!!
「シスターこそ逃げ無くていいのか」
「私?」
「狙われているのはシスターだ。
五条悟が囚われた以上、シスターが奴らの手に渡る方が問題だ。
……今の状態なら尚更」
「まぁね。洗脳系の人いたら私アウト」
「じゃあ」
「けど逃げないよ」
もう、充分逃げたから。
「私はこの世界を知らない。
だから知らなきゃいけない」
残酷さも
非道さも
冷酷さも
薄汚さも
幸せな部分だけじゃなく、不幸せな部分もしっかりと目に焼き付けていかなければいけない 。
「覚悟を決めたから」
「……そうか」
「東堂くん程格好いい事出来ないけど、大人として君達の道標でありたいと思うんだ。
勿論力もつけるよ。
だから、呪術師の先輩として東堂くんは生きて」
「いい女だな。高田ちゃんには負けるが」
「高田ちゃんには負けるわ」
ファンサの神だぞ?
高田ちゃんと比べるのはあかん。
「東堂くん」
「?」
「もしも、の時は恨まれても離脱させるよ」
「………」
「死して己の偉業を誇りに逝くより、生きて己の偉業を誇りに思って」
「……あぁ」
「よし、じゃあサポートは出来る限りするから、ちゃちゃっとダーリン回収して生きて帰るよ」
「シスターこそ残念だな。色々締まらん」
フッ、と笑みを溢す東堂くん。
呪術師ならそれくらい各々のペース持ってやってなきゃ務まらんでしょ。
自分のペースが乱れたら出来ることも出来なくなる。
「シスター、行くぞ」
「OK」
こそこそと移動する私達。
悠仁くんの邪魔をしないよう、戦いから目を逸らさないよう。
地面が陥没するほどの攻撃を受けても立つ悠仁くんに、余裕そうなツギハギ。
連戦続きで体力も血も不足して体の限界が近付いているであろう悠仁くん。
野薔薇ちゃんの決めた攻撃。領域展開後の悠仁くんの攻撃により進化して余裕そうに見えても体に異変が出ているツギハギ。
どちらも限界なのだろう。
震える膝を叩き真っ直ぐにツギハギを見る悠仁くん。
体の一部がボロボロと崩れだしたツギハギも悠仁くんを見てる。
「お互い、元気いっぱいだな」
両者が動き出す。
ツギハギは左側の変形を解いてわざと悠仁くんの攻撃を受ける。
カウンターを狙うツギハギだったが……遅れて再び衝撃に襲われる。
タイミングをズラされたツギハギはカウンターの失敗。
その隙を逃さず悠仁くんは狙う。
「呪霊よ
オマエが知らんハズもあるまい」
一瞬でいい。
悠仁くんが確実に決められる一瞬を作り出す。
ツギハギの意識が東堂くんへ向けられる。
「腕なんて飾りさ。拍手とは魂の喝采!!」
東堂くんの左手はもうない。
ズチュ、と肉を潰す音が聞こえる。
ツギハギが慌てて後ろを気にするが……入れ換わっていない。
「残念だったな。
俺の「不義遊戯」はもう死んでいる」
一瞬。
東堂くんが居残り、作った一瞬を悠仁くんは無駄にしない。
ツギハギに入った一撃は確かなもの。
変形が解けて悠仁くんから逃げ惑うツギハギ。
「東堂くん」
「頼む」
大人しく治療を受けてくれる東堂くん。
ただし、もうこれ以上の戦いは無理だろう。
今すぐに硝子ちゃんの元へ連れて行きたいが、そんな事を言ってられなくなった。
「助けてあげようか、真人」
東堂くんを置いていくのは、私がアイツの所に行くのは間違っていると解っていた。
解っていたけど……
「クソオイルッッ!!」
オイルが此処に居るということは、悟は……。
あの呪物がどんなものかわからないが、オイルが持っているということはわかる。
「…返せ。
五条先生を返せ!!」
走り出した悠仁くん。
ツギハギの前に出てくるオイル。
「鯰が地震と結びつけられ怪異として語られたのは江戸中期。
地中の「大鯰」が動くことで地震が起こると信じられていたんだ」
何もしていない。
オイルから呪霊が解き放たれたのはわかるが、オイルは何もしていない。
悠仁くんが突然ひっくり返った。
「落ちたと思っただろう。
端から見れば君が勝手に引っくり返っただけなんだがね。
呪霊操術の強みは手数の多さだ。
準1級以上の呪霊を複数使役し、術式を解明・攻略されようとまた新しい呪霊を放てばいい。
勿論その間を与えずに畳みかけるのもいいだろう」
百足のような呪霊が悠仁くんの体に巻き付いたところで、また鯰が。百足と共に地に叩き付けられる。
「去年の百鬼夜行。
新宿と京都に戦力を分散させなければ勝っていたのは乙骨ではなく彼だったろう。
君には関係のない話だったかな」
「…返せ!!」
「我ながら流石と言うべきか。
宿儺の器タフだね」
余裕、なのだろう。
夏油傑の体を、能力を理解して扱っているオイルは強い。
背後から手を伸ばしたツギハギだったが、触れる前にかわされた。
「知っていたさ。
だって俺は人間から生まれたんだから」
それは……ツギハギがオイルに使われる事に、だったのか。
自分達の野望の為にオイルを利用したはずがいつの間にかオイルに利用されていた事に、なのか。
ツギハギが黒い玉となっていく。
お前……マジもんのじゅじゅモンじゃないか。
何簡単にゲットされてんだツギハギ!!
「続けようか。
これからの世界の話を」
黒いモンスターボール(ツギハギ)を持ち、にこりと笑うオイル。
「「極ノ番」というものを知っているかい?
「領域」を覗いたそれぞれの術式の奥義のようなものだ。
呪霊操術極ノ番「うずまき」
取り込んだ呪霊を一つにまとめ超高密度の呪術力を相手へぶつける」
クックッと笑うオイル。
何がおかしいのかわからない。
「……何笑ってんだよ」
「いや、すまない。
急にらしいことを始めてしまったなと思って
「うずまき」の話だったね。
「うずまき」は強力だが呪霊操術の強みである手数の多さを捨てることになる。
だから始めはあまり唆られなかったんだ。
ただの低級呪霊の再利用だと思っていたからね。
でも、違った。
その真価は準1級以上の呪霊を「うずまき」に使用した時に起こる。術式の抽出だ」
先程のツギハギを黒い玉にしたものを飲み込むオイル。
バッチィ。あのオイル、バッチィぞ!!
「馬鹿だな。
君が感じた気配に私が気づかないと思ったのかい?」
空に飛ぶ魔女……いや、京都の桃ちゃんだ。
不規則に灯るランタン。
オイルはどこからともなく飛んできた攻撃を避け、避けた先で狙撃されるが呪霊で受ける身のこなし。
「狙撃銃か、いいね。
私も術師相手であれば通常兵器は積極的に取り入れるべきだと思うよ」
その後ろをスーツ姿の霞ちゃんが取る。
死角からの抜刀……だというのに真剣を素手でへし折るとか……おま、ゴリラ以上だろ。
「極ノ番ーーー「うずまき」」
ツギハギの体が渦を巻いていた。
放たれる高密度の威力の攻撃。
大地を砕き、抉り、無に。
「………シン陰か…よかったよ。
少しは蘊蓄がある奴が来てくれて」
姉さん、変態、パンダ。
霞ちゃんも桃ちゃんも今のところ皆無事だ。
正面からも駄目。意表を突くのも駄目。
なら、私はーーー
「やあ名前。
鬼ごっこは終わりかい?あぁ、かくれんぼかな?」
「後から出てくる悪役がチートって王道すぎじゃない?」
やっぱ駄目でしたぁぁあああああ!!!!
低級呪霊は壁のすり抜けや擬態に特化している。だからこそ、その低級を使って気配を断ちゆっくり忍び寄っても気付かれるだろうなぁとは思っていたが……あっさり見破られるとは。
伸ばした手をオイルに捕まれた。
その瞬間、私の姿が全員に視認される。
「名前姉!?」
「名前??おま……無事だったんか!!」
悠仁くんとパンダに驚かれる。
フリフリと手を降って、再びオイルを睨む。
「おら、悟出せよ」
「ちょっ、君強引過ぎないかい?」
バレたからいいや、と懐に豪快に手を突っ込んだがすぐに引き抜かれる。
「野郎の胸元まさぐるこっちの身にもなれよ」
「君状況理解出来てる?」
「胡散臭い坊主の胸元をまさぐる美女」
「美女の定義をわかってるかい?」
「OK。その顔面変形させたるからまじで一回手を離せ」
「テレるなよ。私と君の仲だろう?」
指と指を絡めて腰を抱いてくるオイル。
「名前、浮気良くないゾ!!」
「パンダ、アンタまじビンタね」
「その尻は俺のだ!!」
「日下部アンタ何言ってんのよ!?」
「変態、アンタもまじビンタな」
姉さん、やっちまってくれ。
「大丈夫、名前を傷付けることはしないさ。
君のような存在は稀だからね。
呪霊操術の役にも立つし、何より君に興味がある」
「人の体乗っ取って好き勝手しながら愚弄するような悪趣味全開な奴に大人しくついていくとでも?」
「君の全てを受け入れると言ったろ?」
「ハッ!!
前髪相手なら考えたけどオイル相手に落ちる要素は全く無いっつの。
肥溜めの中で生き、肥溜めの中で死んでろ寄生虫」
思いっきり膝を股の間に叩き込む。
周りの男達がヒュッと息を飲んだ音が聞こえたが、オイルは余裕顔で腰を引き寄せていた手を離し膝を受け止めていた。
「やんちゃだね」
「悟を返せ」
繋いでいる手に力を入れられるが、片手で腹パンからの顎へ拳を入れる。
軽々と逸らされる拳に身を捻って手を外そうとするがゴリラだから簡単には外してもらえない。
「離せっつの。セクハラで訴えるぞ」
「君から来たのに?」
「にゃろっ」
再び抱き寄せられ、金的出来ないよう密着してくる。硬い胸板と筋肉の腕にもぞもぞと動き回るが鉄格子かな?ってレベルで動かない。
「ヤベ」
「何やってんの名前姉!?」
「馬鹿なのか!?馬鹿だった!!」
「ちょーーっと黙ろうかパンダ!!」
ふと、オイルが顔を横に向ける。
身をよじって見てみれば、そこには脹相くんが。
「やぁ、脹相」
泣き出してしまいそうな、子供のような顔をしていた。
オイルを見る顔がみるみる強張っていく。
「気づいたようだね」
「そういうことか!!加茂憲倫!!」
突如ざわつく呪術師組。
……誰?
一応空気読んでおく。
こんなことなら真面目に勉強しとけば良かった。
「加茂憲倫も数ある名の一つにすぎない。
好きに呼びなよ」
「よくも………!!よくも俺に!!
虎杖を!!弟を!!殺させようとしたな!!」
待って?
どんな状況なのこれ?
脹相くん、君めちゃくちゃ悠仁くんの事殺すマンだったじゃん。弟?なにそれ?
情報量の多さについていけていませんが?
どこからともなく現れた白い髪の女の子が脹相くんとオイルの前に。
「引っ込め三下。
これ以上私を待たせるな」
「どけ!!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!」
え?何?
どんな状況?
あとがき
あと数話で終わる予定です。
渋谷事変で区切りよく。
地獄の連発で渋谷事変の諸々ホップステップしながら書いていますが……。
さらなる地獄が本誌で待ち受けている事に絶望しかない。
きっとこれからも地獄。
それでも通行人は幸せを目指して頑張りますのよ!!!
目指せ!!完結!!
目指せ!!幸せを掴む未来!!
次回「いざとなったら溶けた鉄をぶっかけてやるさ!!」
見よ。これが本気だ!!
※コミック派注意
それでもOKの方、どーぞ!!
出血の多い東堂くんの腕を止血する為、自分の今着ている服を脱いできつく腕を縛る。
安心してください。中にタンクトップ着てますよ。
みすぼらしい格好となってしまっているが、人命救助に格好とか気にしてられない。
「東堂くん、治す?」
「戦線離脱しろと?」
「時と場合によっては強制」
ギュッと力の限り縛り上げる。
「最後までブラザーと共に」
「めちゃくちゃ格好いいけど、東堂くんが言うとヤバく聞こえる」
「なぜだ」
「読者の心がそう言ってる」
悠仁くんがツギハギと向き合う。
人間に近い姿だったツギハギは今は呪い本来の姿みたいだ。
陀艮ちゃんも姿が変わると強さが違った。
多分ツギハギも……。
ん?陀艮ちゃんのメタルフォーゼ is 陀艮さんショックと違って冷静だって?
だって皆、考えてくれよ……。
赤ちゃんがゲテモノに変化するのと
人間っぽい外道が真の外道に変化するのとじゃ……ねぇ?
むしろ、あぁ、やっと本来の外道の姿になったんか……くらい。
つまり!!ツギハギが人間っぽさ無くなってもだよね!!って納得。
まぁ、あれだよあれ。
好感度の差かな。
あと、私、ここでふざけちゃいけないって空気読めるよ!!!!!!!
「シスターこそ逃げ無くていいのか」
「私?」
「狙われているのはシスターだ。
五条悟が囚われた以上、シスターが奴らの手に渡る方が問題だ。
……今の状態なら尚更」
「まぁね。洗脳系の人いたら私アウト」
「じゃあ」
「けど逃げないよ」
もう、充分逃げたから。
「私はこの世界を知らない。
だから知らなきゃいけない」
残酷さも
非道さも
冷酷さも
薄汚さも
幸せな部分だけじゃなく、不幸せな部分もしっかりと目に焼き付けていかなければいけない 。
「覚悟を決めたから」
「……そうか」
「東堂くん程格好いい事出来ないけど、大人として君達の道標でありたいと思うんだ。
勿論力もつけるよ。
だから、呪術師の先輩として東堂くんは生きて」
「いい女だな。高田ちゃんには負けるが」
「高田ちゃんには負けるわ」
ファンサの神だぞ?
高田ちゃんと比べるのはあかん。
「東堂くん」
「?」
「もしも、の時は恨まれても離脱させるよ」
「………」
「死して己の偉業を誇りに逝くより、生きて己の偉業を誇りに思って」
「……あぁ」
「よし、じゃあサポートは出来る限りするから、ちゃちゃっとダーリン回収して生きて帰るよ」
「シスターこそ残念だな。色々締まらん」
フッ、と笑みを溢す東堂くん。
呪術師ならそれくらい各々のペース持ってやってなきゃ務まらんでしょ。
自分のペースが乱れたら出来ることも出来なくなる。
「シスター、行くぞ」
「OK」
こそこそと移動する私達。
悠仁くんの邪魔をしないよう、戦いから目を逸らさないよう。
地面が陥没するほどの攻撃を受けても立つ悠仁くんに、余裕そうなツギハギ。
連戦続きで体力も血も不足して体の限界が近付いているであろう悠仁くん。
野薔薇ちゃんの決めた攻撃。領域展開後の悠仁くんの攻撃により進化して余裕そうに見えても体に異変が出ているツギハギ。
どちらも限界なのだろう。
震える膝を叩き真っ直ぐにツギハギを見る悠仁くん。
体の一部がボロボロと崩れだしたツギハギも悠仁くんを見てる。
「お互い、元気いっぱいだな」
両者が動き出す。
ツギハギは左側の変形を解いてわざと悠仁くんの攻撃を受ける。
カウンターを狙うツギハギだったが……遅れて再び衝撃に襲われる。
タイミングをズラされたツギハギはカウンターの失敗。
その隙を逃さず悠仁くんは狙う。
「呪霊よ
オマエが知らんハズもあるまい」
一瞬でいい。
悠仁くんが確実に決められる一瞬を作り出す。
ツギハギの意識が東堂くんへ向けられる。
「腕なんて飾りさ。拍手とは魂の喝采!!」
東堂くんの左手はもうない。
ズチュ、と肉を潰す音が聞こえる。
ツギハギが慌てて後ろを気にするが……入れ換わっていない。
「残念だったな。
俺の「不義遊戯」はもう死んでいる」
一瞬。
東堂くんが居残り、作った一瞬を悠仁くんは無駄にしない。
ツギハギに入った一撃は確かなもの。
変形が解けて悠仁くんから逃げ惑うツギハギ。
「東堂くん」
「頼む」
大人しく治療を受けてくれる東堂くん。
ただし、もうこれ以上の戦いは無理だろう。
今すぐに硝子ちゃんの元へ連れて行きたいが、そんな事を言ってられなくなった。
「助けてあげようか、真人」
東堂くんを置いていくのは、私がアイツの所に行くのは間違っていると解っていた。
解っていたけど……
「クソオイルッッ!!」
オイルが此処に居るということは、悟は……。
あの呪物がどんなものかわからないが、オイルが持っているということはわかる。
「…返せ。
五条先生を返せ!!」
走り出した悠仁くん。
ツギハギの前に出てくるオイル。
「鯰が地震と結びつけられ怪異として語られたのは江戸中期。
地中の「大鯰」が動くことで地震が起こると信じられていたんだ」
何もしていない。
オイルから呪霊が解き放たれたのはわかるが、オイルは何もしていない。
悠仁くんが突然ひっくり返った。
「落ちたと思っただろう。
端から見れば君が勝手に引っくり返っただけなんだがね。
呪霊操術の強みは手数の多さだ。
準1級以上の呪霊を複数使役し、術式を解明・攻略されようとまた新しい呪霊を放てばいい。
勿論その間を与えずに畳みかけるのもいいだろう」
百足のような呪霊が悠仁くんの体に巻き付いたところで、また鯰が。百足と共に地に叩き付けられる。
「去年の百鬼夜行。
新宿と京都に戦力を分散させなければ勝っていたのは乙骨ではなく彼だったろう。
君には関係のない話だったかな」
「…返せ!!」
「我ながら流石と言うべきか。
宿儺の器タフだね」
余裕、なのだろう。
夏油傑の体を、能力を理解して扱っているオイルは強い。
背後から手を伸ばしたツギハギだったが、触れる前にかわされた。
「知っていたさ。
だって俺は人間から生まれたんだから」
それは……ツギハギがオイルに使われる事に、だったのか。
自分達の野望の為にオイルを利用したはずがいつの間にかオイルに利用されていた事に、なのか。
ツギハギが黒い玉となっていく。
お前……マジもんのじゅじゅモンじゃないか。
何簡単にゲットされてんだツギハギ!!
「続けようか。
これからの世界の話を」
黒いモンスターボール(ツギハギ)を持ち、にこりと笑うオイル。
「「極ノ番」というものを知っているかい?
「領域」を覗いたそれぞれの術式の奥義のようなものだ。
呪霊操術極ノ番「うずまき」
取り込んだ呪霊を一つにまとめ超高密度の呪術力を相手へぶつける」
クックッと笑うオイル。
何がおかしいのかわからない。
「……何笑ってんだよ」
「いや、すまない。
急にらしいことを始めてしまったなと思って
「うずまき」の話だったね。
「うずまき」は強力だが呪霊操術の強みである手数の多さを捨てることになる。
だから始めはあまり唆られなかったんだ。
ただの低級呪霊の再利用だと思っていたからね。
でも、違った。
その真価は準1級以上の呪霊を「うずまき」に使用した時に起こる。術式の抽出だ」
先程のツギハギを黒い玉にしたものを飲み込むオイル。
バッチィ。あのオイル、バッチィぞ!!
「馬鹿だな。
君が感じた気配に私が気づかないと思ったのかい?」
空に飛ぶ魔女……いや、京都の桃ちゃんだ。
不規則に灯るランタン。
オイルはどこからともなく飛んできた攻撃を避け、避けた先で狙撃されるが呪霊で受ける身のこなし。
「狙撃銃か、いいね。
私も術師相手であれば通常兵器は積極的に取り入れるべきだと思うよ」
その後ろをスーツ姿の霞ちゃんが取る。
死角からの抜刀……だというのに真剣を素手でへし折るとか……おま、ゴリラ以上だろ。
「極ノ番ーーー「うずまき」」
ツギハギの体が渦を巻いていた。
放たれる高密度の威力の攻撃。
大地を砕き、抉り、無に。
「………シン陰か…よかったよ。
少しは蘊蓄がある奴が来てくれて」
姉さん、変態、パンダ。
霞ちゃんも桃ちゃんも今のところ皆無事だ。
正面からも駄目。意表を突くのも駄目。
なら、私はーーー
「やあ名前。
鬼ごっこは終わりかい?あぁ、かくれんぼかな?」
「後から出てくる悪役がチートって王道すぎじゃない?」
やっぱ駄目でしたぁぁあああああ!!!!
低級呪霊は壁のすり抜けや擬態に特化している。だからこそ、その低級を使って気配を断ちゆっくり忍び寄っても気付かれるだろうなぁとは思っていたが……あっさり見破られるとは。
伸ばした手をオイルに捕まれた。
その瞬間、私の姿が全員に視認される。
「名前姉!?」
「名前??おま……無事だったんか!!」
悠仁くんとパンダに驚かれる。
フリフリと手を降って、再びオイルを睨む。
「おら、悟出せよ」
「ちょっ、君強引過ぎないかい?」
バレたからいいや、と懐に豪快に手を突っ込んだがすぐに引き抜かれる。
「野郎の胸元まさぐるこっちの身にもなれよ」
「君状況理解出来てる?」
「胡散臭い坊主の胸元をまさぐる美女」
「美女の定義をわかってるかい?」
「OK。その顔面変形させたるからまじで一回手を離せ」
「テレるなよ。私と君の仲だろう?」
指と指を絡めて腰を抱いてくるオイル。
「名前、浮気良くないゾ!!」
「パンダ、アンタまじビンタね」
「その尻は俺のだ!!」
「日下部アンタ何言ってんのよ!?」
「変態、アンタもまじビンタな」
姉さん、やっちまってくれ。
「大丈夫、名前を傷付けることはしないさ。
君のような存在は稀だからね。
呪霊操術の役にも立つし、何より君に興味がある」
「人の体乗っ取って好き勝手しながら愚弄するような悪趣味全開な奴に大人しくついていくとでも?」
「君の全てを受け入れると言ったろ?」
「ハッ!!
前髪相手なら考えたけどオイル相手に落ちる要素は全く無いっつの。
肥溜めの中で生き、肥溜めの中で死んでろ寄生虫」
思いっきり膝を股の間に叩き込む。
周りの男達がヒュッと息を飲んだ音が聞こえたが、オイルは余裕顔で腰を引き寄せていた手を離し膝を受け止めていた。
「やんちゃだね」
「悟を返せ」
繋いでいる手に力を入れられるが、片手で腹パンからの顎へ拳を入れる。
軽々と逸らされる拳に身を捻って手を外そうとするがゴリラだから簡単には外してもらえない。
「離せっつの。セクハラで訴えるぞ」
「君から来たのに?」
「にゃろっ」
再び抱き寄せられ、金的出来ないよう密着してくる。硬い胸板と筋肉の腕にもぞもぞと動き回るが鉄格子かな?ってレベルで動かない。
「ヤベ」
「何やってんの名前姉!?」
「馬鹿なのか!?馬鹿だった!!」
「ちょーーっと黙ろうかパンダ!!」
ふと、オイルが顔を横に向ける。
身をよじって見てみれば、そこには脹相くんが。
「やぁ、脹相」
泣き出してしまいそうな、子供のような顔をしていた。
オイルを見る顔がみるみる強張っていく。
「気づいたようだね」
「そういうことか!!加茂憲倫!!」
突如ざわつく呪術師組。
……誰?
一応空気読んでおく。
こんなことなら真面目に勉強しとけば良かった。
「加茂憲倫も数ある名の一つにすぎない。
好きに呼びなよ」
「よくも………!!よくも俺に!!
虎杖を!!弟を!!殺させようとしたな!!」
待って?
どんな状況なのこれ?
脹相くん、君めちゃくちゃ悠仁くんの事殺すマンだったじゃん。弟?なにそれ?
情報量の多さについていけていませんが?
どこからともなく現れた白い髪の女の子が脹相くんとオイルの前に。
「引っ込め三下。
これ以上私を待たせるな」
「どけ!!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!」
え?何?
どんな状況?
あとがき
あと数話で終わる予定です。
渋谷事変で区切りよく。
地獄の連発で渋谷事変の諸々ホップステップしながら書いていますが……。
さらなる地獄が本誌で待ち受けている事に絶望しかない。
きっとこれからも地獄。
それでも通行人は幸せを目指して頑張りますのよ!!!
目指せ!!完結!!
目指せ!!幸せを掴む未来!!
次回「いざとなったら溶けた鉄をぶっかけてやるさ!!」
見よ。これが本気だ!!