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先輩シリーズ&通行人シリーズコラボ
「私達」
とある呪霊のせいで魂が入れ替わった二人。
つまり、先輩シリーズに通行人さんが。
「う……ん」
「目ェ覚めた?大丈夫?」
「うわっ、顔近っ!!
相変わらず顔が良すぎて喧嘩売られてる感じが凄い」
「え……」
キョトンとした顔の悟に頭を傾げる。
そもそもここなんだ?どうしてここにいるんだ?と考える。
「硝子」
「呪霊の攻撃で記憶が……いや、違うな」
「硝子ちゃーん、何で私寝てんの?
また真希ちゃんに沈められた?」
「「は?」」
あらやだ面白い。
悟と硝子ちゃん揃って……って思っていたら、突然悟に首を押さえ付けられ再びベッドへ。
どこも痛くない優しさはあるのに首抑えられて威圧されてるってどゆこと?
「おいおいおーい、悟くんやーい。
君さ、いくら私でもこれはおこだよ?おこ」
「オマエ誰だ」
「あぁん?なんだよ、いきなり喧嘩売りやがって」
「見た目も体も呪力も本人だけど、魂が違う。
……オマエ、誰だよ」
「殺意やばみ」
瞳孔開いてんぞ。
ブルブル震えたいが、悟くんを怒らせるのはよくあることなので怖いが気にしない。
気にしちゃいけない。
「さっきから何言ってるのかまるで理解できんわ」
「あ"?」
「あらやだ、こっわ!!イケメンのマジギレなんてやーねー!!
ちょっと硝子ちゃん黙ってないで……あれ?その手のメスなに?」
「先輩どこ?」
「まてまてまてまて!!!ステイ!!硝子ちゃんステイ!!!
悟よりも殺意たっっか!!!なにこの子!?」
「私の先輩の顔でアホみたいな発言するな」
「え?私のとかラブい。もっかい。もう一回呼ん………ぬぉぉおおおっ!!?」
トスッ、と真横に刺さったメス。
心臓ひゅっとなった。
そして目の前には瞳の輝きを失った硝子ちゃん。
「先輩の顔でアホな発言許さない」
黙って頷くしかなった。
あれやこれやと説明され、多分並行世界の私と先輩?だかの魂が呪霊のせいで入れ替わったらしい。なにそれ?10年バズーカ?
今から未来編でも始まるの?
あ、あさりは縦だからミルフィオーレか?
あらやだ、世界滅亡?
そんな事考えながら現実逃避していたが、鏡を見せて貰うと、そりゃーすごい美人がいた。
「何この美人」
「僕の奥さん」
「私の先輩」
「そうか、悟凄い美人を………は?奥さん?
まて、硝子ちゃんも待て」
「ってゆーか、オマエ何で僕や硝子を知ってんの?」
「そりゃー私の彼氏が悟で硝子ちゃんが友達だから」
「は?」
「あ"?」
「やだこの二人。まじ怖い」
誰がオマエみたいなアホの彼氏だよ?ふざけんのも大概にしろと言わんばかりの悟と
オマエの友達?は?寝言は永眠してから言えよ、あと私の先輩はよ返せ、と言わんばかりの硝子ちゃんの薄暗い光のない目で言われたらもうどうしようもない。
「つまり、ご都合呪霊のせいで私と先輩?の魂が入れ替わってる……かも、しれない?」
「だから早く入れ替われ」
「ってことは、先輩は私の体に入って私の世界の悟や硝子ちゃんと出会ってると」
「うわっ、最悪。
そっちの僕を殺したい」
「物騒」
こっちの先輩何したの?
何したら悟や硝子ちゃんがこんな懐くの?
「悟くーん、どうしたら戻んのコレ」
「知らね。魂を殺せば戻る?」
「無理に弄って先輩に何かある方が困るな」
「もうやだ。この二人物騒」
私滅そうとしてやがる。
…メ…テ…ヤメテヨ…
私生きたい。
「弱い呪霊の攻撃だしすぐ戻る可能性もあるんじゃ?」
「多分ね」
「じゃあ、戻るまでよろしくおねしゃーっす」
「「黙れ」」
この二人の眼力どうなってんの!?
美人な人ほど怖いんだけどぉ!!!
まじ怖い!!!誰かヘーーールプ!!
「顔面がうるさい」
「先輩の顔で変顔するな」
「クッッソ厳しい!!
この人大丈夫!?ヤンデレに愛され過ぎて大丈夫なんか!?」
プルプル震えるしかない私。
普段の力を発揮しろ?バカヤローー!!!
その瞬間メスが飛んでくるんだぞ!!
硝子ちゃんの顔でメスを的当てみたいに飛ばされてみろ………新たなる扉開くわ。
しかし私はまだその扉を開くにはレベルが足りないので黙ろう。
3.15……と覚えていない小数点を思い浮かべながらスペースキャット顔で無神を維持する。
「うぉーい!!呪霊の攻撃浴びたって大丈夫かー?」
なんか髪の毛ヤベェ奴きた。
金髪からの毛先青?しかもなぜパッツン。
髪に短冊ぶら下がってんぞ?ってレベルのパッツン。ねぇ、それどんなお洒落?レベル高すぎない?
「大和も黙ろ」
「うわっ、何で五条キレてんの?」
「先輩が魂だけ入れ替わった」
「硝子、目のハイライトどこいった?
てか魂?は?何事?」
何この陽キャ。
髪型で判断しちゃいけないな、この人こそ私の救世主かもしれない。
「助けてくださぁっい!!」
「ぶはっ!!中身違ぇ!!ウケる!!」
「「ウケねーよ」」
「さーせん」
一瞬でこの人の立場理解。
しかし、ハイライト消えた四つの瞳から解放されただけありがたい。
「ありがとうございます。
理解出来ない高度なお洒落髪の人」
「あれ?遠回しにディスられてない?」
「なぜそんな奇抜な頭なんですか?」
「鬼滅の刃にハマった」
「あー、推しの髪……いやまて。なぜそうなった」
「善逸も伊之助も捨てがたくて」
「この人頭大丈夫か」
なぜ両方やろうとした。
善逸の髪色真似するならまだしも、なぜ髪型やっちまったんだよ。
しかも毛先青……。
「地毛でそんな事する勇者初めて見た」
「髪は俺のアイデンティティー」
「大和、そろそろ黙ろう」
「わかった。わかったから五条座るんだ。
あと硝子は無言でメス磨ぐの止めよ?な?」
大和と呼ばれた人がいて良かった。
私が発言するたび闇を見せる二人の犠牲となってくれた。
この後二時間後に元の世界に戻った。
「さーとーるーくぅぅうううううんっっ」
「あ、いつものアホだ」
「だな」
「硝子ちゃぁぁあああああんっ」
泣きながら二人が怖かったと言えば鼻で笑われた。
「アホはアホのままがいいな」
「うん。オマエはこのままがいい」
「名残惜しいけど」
「だな」
「先輩何者!?猛獣係かよ!!!」
見ぬ先輩に嫉妬した。
この後、何度か入れ替わって向こうの悟と硝子ちゃんに何度も殺意持たれた。
暫く二人がトラウマになりかけたとか秘密。
next「入れ替わってる!?」
先輩シリーズ&通行人シリーズコラボ
「入れ替わってる!?」
弱いと最後の最後に気を抜いた私のミスだった。
最後の悪足掻きに放たれた攻撃。
そのあとの記憶が無くなっている。
「…………」
「目が覚めたか」
「しょー、こ?」
「頭打って違う人間に見えるか?」
この時点でおかしいと気付いた私は飛び起きた。
さらり、と流れ落ちた髪の色が違う。
着ているいつもの黒の仕事着ではなく、お洒落な洋服。
可愛らしく塗られた爪は私には縁のないもの。
「硝子?」
「私を呼び捨てにするほどパニック起こしてるのか?」
「おーい、目ェ覚めたばかり?」
「………」
ガラッと入って来た悟。
しかし、ここでも悟はゆっくりやって来た。
いや、そもそも悟なら起きるまで隣にいるだろうし、硝子の反応もおかしい。
おかしな事だらけの世界。
「目覚めたが打ち所が悪かったらしい」
「なになにー?記憶飛んだ?」
「私を呼び捨てにして髪や爪眺めてるぞ」
「枝毛探し?染めるから枝毛なんて今さらじゃーん」
あ、ここ私の知らない世界だ、と思った。
そしてどうやらあの呪霊のせいでとんでもないことになってしまったらしい。
「あの……すいませんが」
「突然の他人行儀」
「やっぱ打ち所悪かったか?」
「ごめんなさい。私、貴女方の知ってるこの体の持ち主ではありません」
「ウケるー。今時流行りのなろう系?」
「なんだそれ」
「不慮の事故や死を迎えて違う世界に転生するやつ。硝子知らないの?」
「知らん」
「多分死んではいませんが、魂が入れ替わった可能性はありますね」
「はっはっは。その設定ウケるね」
「なるほど。そーゆー設定か」
「本当にごめんなさい……」
心配されてる感じしないけど、大丈夫かな?
この子普段どんな扱いなの?
伊地知くんを思い出す……いや、大和かな?
「五条くんは今何歳?」
「同い年じゃん。まじボケ?その設定いつまでやんの?」
「あー…じゃあ並行世界かな?
この体呪力はあるみたいだけど不思議な感じ……封印されてるのかな?」
何だか不思議な感覚。
首を傾げてペタペタ体を触れば二人は揃って口を開けて見ている。
「……オマエ誰?」
「私違う世界では一応貴女方の一つ先輩で呪術師をしているの」
「まじか」
「アイツ頭打って死んだ?」
「死んでないよ。なんとなく感覚があるから、多分……私のミスした任務で呪霊の攻撃かな」
ごめんなさい、祓ったと思ってたら最後の最後に消える直前に攻撃されて……と答えたら、やはりポカンとする二人。
はて?と頭を傾げるとこそこそ話し出す。
「中身違うとただの可愛い子に見えるんだけど」
「私もだ」
「アイツの性格が素材をダメにしてたってこと?」
「中身が残念ってこーゆー事か」
「うわっ、鳥肌立った」
「五条も似たようなものだろう。
中身残念だから素材を無駄にしてるところ」
「硝子酷くね?」
「だが……うん、鳥肌の気持ちはわかる」
「えーっと……私何かしたかしら?」
「「ちょっとギャップについてけない」」
腕を擦る二人に何と声をかけていいかわからない。
「この子、呪術師ではない一般人かしら?」
「まぁ一応」
「なるほど。だから呪力はあるのに不安定なのね」
「わかるんだ?」
「一応、呪術師だからね」
下手に調律するとまた入れ替わった時に、一般人の子にどんな弊害があるかわからないので自分が呪力に酔わないように最小限にしておこう。
しかし……なんとも不安定な体に、調律がしづらい。体の持ち主じゃないから魂と体のズレが原因だろう。
「一般人……のわりに、この子と二人は仲良さそうね?
窓……にしては距離感も近そうだしお友達?」
「………違和感半端ない」
「だな」
「あ、ごめんなさい。歳上面したいわけじゃないんだけど……いつも関わってる感じで接してしまって」
「それはいいんだけど……なんてゆーか…」
「見た目と中身が合ってないから別物だな」
「それ」
私からしても懐いてくれている二人が距離を置いてる感じにどことなく寂しい。
「僕の彼女」
「あら!そーなの?」
「嬉しそうだな」
「ふふふ。私も悟と一緒に居るからなんだか嬉しくて」
並行世界の体を借りている存在の子が、悟と関わりがあるだけで嬉しくなる。
私、何年経っても世界が違っても悟が好きなんだなぁと思ってしまうと恥ずかしいが、それよりも嬉しさがある。
「……なんか恥ずかしい」
「あら?照れてるの?
ふふっ、なんだか悟と同じ年でも五条くんは可愛らしいね」
「ヤメテ」
「そっちの五条はどんな感じなんだ?」
「普段はちょっとお馬鹿さんで周りを困らせる困ったさんなんだけど……頼れる格好いい男よ。
私の前では犬っぽくなっちゃうけど」
「「犬」」
「私にとっては素敵な旦那様なの」
「「は?旦那?」」
二人がまたフリーズした。
「え?お姉さん……既婚者?僕と?」
「学生時代に悟に絆されちゃって」
「は?学生?嘘だろ」
「もう今年で10年目だよ」
「「まじかよ」」
悟本人が驚いているってどういうことだろう?
結婚する気ないのかな?
扱いは雑だが、彼女であるこの子のことを大事にしてそうだし……
「意外?」
「そっちの世界の僕どんだけお姉さんに惚れてんの?」
「デロッデロに甘やかされてる自覚あるくらいには」
「うわぁ……大丈夫か?それ」
「硝子や学長や七海にはよく心配されてるけど……そんなにおかしいかな?」
「僕が言うのもアレだけど、逃げられないじゃん」
「こいつの愛がドロッドロなんて地獄だろ。
監禁されてないか?」
「そんなことないよ?
私が嫌がることはほとんどしないし」
「「されてんじゃん」」
「心配してくれてるなんて世界が違っても二人はやっぱり優しいね」
にこり、と笑って二人の頭を撫でる。
しかし二人は私の肩を掴んで真剣な表情だった。
「いい?旦那だろうが最強の僕でも息子だけは急所だから。いざとなったらそこ殴って逃げろ」
「コイツに執着されてるとか呪霊よりタチ悪いぞ。いざとなったら殺れ」
「あらやだ、物騒ね」
「こんなほわんほわんな子が僕の奥さんとか!!
しかも学生からとか!!ぜっっったいその僕病んでるって!!」
「血迷うな」
「あはは、五条くんが悟の悪口言うなんて面白い」
「頭花咲いて聞いてない!!」
「頭打った後遺症か?」
落ち着こう、と二人を宥める。
なんだか悟を選んだ時の事を思い出すな……。
「ふふっ、こんなんでも一応学生時代は悟よりも強かったのよ?
あっという間に追い越されちゃったけど」
「あ、それ嘘」
「いつも二人で私に挑んで来てね……どちらも返り討ちにしてあげてたの」
「……お姉さんとこでも、アイツは」
五条くんの言いたいことに苦笑してしまう。
彼はこの世界も違う道を進んでしまったらしい。
「初めて会った時、二人に喧嘩売られてね。
どちらも沈めたけど……悟にはやりすぎちゃって」
「ウソウソ。僕女の子に負けないもん」
「息子さんを蹴りあげちゃって」
「何て事してんだオイ」
「あの時は申し訳なかったわ……。イラッとした原因は彼の言葉だったのに」
「八つ当たりで僕の息子犠牲になるとか笑えない」
家入さん爆笑だけどね。
「そんなわけで、私もやる時はやるのよ」
「そっちの世界の僕大丈夫か心配」
「そうね……私も心配」
暴走してなければいいんだけど……。
「オイ、馬鹿大丈夫か?」
「頭打ったって聞いたゾー」
「しゃけ」
ガラガラッと開いた扉から入って来たのは二年生。
この体の持ち主は学生達からも慕われているみたい。
にこり、と笑いかけるとなぜか固まった三人。
「おい、誰だコイツ」
「双子だったか?」
「おかか…」
「頭打ってちょっと入れ替わったみたいだよ」
「「「は?」」」
「ごめんなさい。多分すぐに戻ると思うから」
「「誰だ!!」」「おかか!!」
動揺が凄いな、ほんと。
普段のこの体の持ち主がどんな性格か本当気になってしまう。
家入さんが軽く説明したことにより納得したみたいだが……
「別人だな」
「別人だ」
「しゃけ」
「えっと……そんなに違うかしら?」
「まずあの馬鹿はそんな話し方しねぇ」
「魂が違うと雰囲気も違うんダナ」
「しゃけ」
「気持ち悪ィ」
「わかる」
「しゃけ」
腕を擦る動作にそんなに……?と思ってしまう。
「戻ったらまた見に来るわ」
「オレも」
「しゃけ」
サササッといなくなってしまった二年生達。
なんだか寂しい。
「この体の持ち主がどんな子か気になって仕方ない……」
「馬鹿だよ」
「あぁ。馬鹿だ」
「具体的には?」
「学生時代に流し素麺して反省文書いたり」
「呪霊祓えないからシカトしたり」
「学長をヤクザ扱いしたり」
「生クリームでパイ投げして怒られる29歳だ」
「この子大丈夫?」
え?予想外過ぎて驚いた。
「奇行種だから」
「何やらかすかわからん」
「一般人ってそれが普通なの?」
「「ソイツだけ特別」」
一般人の常識より私もズレているけど……
うん、世の中には様々な人がいると納得しよう。
「だけど愛おしいんだよね」
五条くんの呟いた言葉に、思わずキョトンとしてしまう。
目隠しをしているが……なんとなくわかる。
「愛してるんだね」
「なま暖かい顔ヤメテ。見ないで」
「ヒューヒュー」
「硝子ヤメテ」
「もう少しだけ待ってね?
必ず彼女の魂を戻すから」
何となくもう少しかな?と思う。
雑に扱っていても五条くんの選んだ人だ。
学生から慕われ、家入さんに心配され、五条くんが大事にしている。
「素敵な人なのね」
「飽きないくらい面白いよ」
「一般人なら気を使うのも大変だろうけど……
五条くんならきちんと守ってくれるから安心だね」
「僕じゃないとソイツの相手なんて出来ないからね」
「凄い自信。流石五条くん」
なんとなく意識が引っ張られる。
「五条くん、家入さん。
お話に付き合ってくれてありがとう」
信憑性の無い話なのに、疑わず受け入れてくれた後輩達は世界が違ってもいい子だ。
「バイバイ」
目が覚めると、悟の顔が見えた。
「さとる?」
「………目、覚めた?」
「うん」
頬を撫でる手にすり寄れば、ぎゅっと抱き締められる。
「戻ったみたいですね」
「硝子」
「何か違和感や変な所は無いですか?」
「無いよ。大丈夫そう」
「先輩の大丈夫は信用ならないので私が付きっきりで一晩様子見る」
「やだ。僕が見る」
いつも通りの光景なのに、なんだか懐かしくなる。
「本当に大丈夫だよ。
それよりも二人共」
「「?」」
「どうしてこのベッドメス刺さってるの?」
にこりと笑う私に対し、サッ、と視線を逸らす二人。
「いくら中身が私じゃないからって過激過ぎない?」
「だって……」
「先輩の体や顔であり得ないテンションで話すから……」
「愛され過ぎて喜べばいいのやら、叱ればいいのやら…」
私にはこちらの世界が安心する。
同じ人でも、関わり方が違うと別人に思えてしまう。
「ねーぇ、向こうの世界とやらの僕と浮気してない?」
「してないよ。
向こうの世界の五条くんにも大切な人がいるからね」
「へー」
「むしろ心配されちゃった」
「何の?」
「ドロッドロに甘やかされてるなんて逃げらんないよーって」
クスクス笑えば余計なお世話だと口を尖らせる悟。
「逃がす気なんてないからね」
「逃げ出す気もないよ」
「愛してる」
「私も愛してる」
重なる唇に硝子がため息をついた。
のちに何度か入れ替わることになるが
その度に向こうの世界の人々に身の安全を心配されることになるとは思ってもいなかった。
next「通行人が高専に通ったら」
通行人シリーズ
「通行人が高専に通ったら」
「どーもー。
ヤクザな方々に拉致られあれよあれよと呪術師とかいうブラック業者に務めることになった元一般人でーす」
「「「よろしく」」」
「クッッッソいい笑顔じゃねーかコンニャロッ!!」
ダンッと足で床を鳴らす。
見た目ヤクザな担任が親元へ行き説得しやがった。
勿論親は反対。しかし、前髪と白髪がウチの迎えに来た瞬間母親の目が変わった。
「めちゃくちゃイケメンじゃない!!」
「おい、母」
「……はっ!!これを機会に幼馴染離れしてイケメンな彼氏ゲットしなさいよ」
「オイ母ァ!!」
「お義母さん、ご安心ください」
「俺達が彼女をしっかりサポートします」
「あら……。
あんた絶対この二人のどっちか射止めなさいよ!!孫はどっち似でもイケメンよ!!」
「オイィィイイイイ!!!母親ァァアアアア!!!」
ひき止めてくれたのは父と幼馴染達だけ。
しかし母親の強行に私の荷物はあっという間に高専の寮へ。
「で?私何すんの?化け物退治?」
「いや、オマエはまずコレからだ」
「何この人形」
ぶっっさいくなのか可愛いのかよくわからん頭剥げた……サワムラーかな?あ、サワムラー髪ねぇか。
とにかくおめめきゅるんなサワムラーにカッパの皿と申し訳程度に毛が散りばった謎のぬいぐるみ。
「ペンギンだ」
「待て。色々待て。
どっからどう見てもカッパの皿ついたサワムラーじゃないか」
「「ブフッ!!」」
「………ペンギンだ」
「ペンギンになんで手グローブ付き?
足の関節も完全に蹴り入れるためのバネじゃないか」
「ペンギンだ」
このヤクザペンギン見たことないのか?
渡されたぬいぐるみを手に持つ。
「呪力を一定に保つためのものだ。
呪力が多すぎたり少なすぎると」
「?」
カッ!!と目を覚ましたサワムラーにアッパーされる。
ふらついた体を前髪が支えてくれたが…
シュッシュッ、と戦闘スタイルなサワムラー。
なにこれ?手持ちになった瞬間反抗期?
バッジ足りなかった?
「このように目が覚めて暴れる」
「はよ言えや!!!!なぜ体験させた!?」
「呪力が一定になったら次の段階へ進む」
「はい!!呪力がそもそもよぅわからん!!」
「慣れろ。感じとれ」
「ふっっっざけんごっ!!」
「ぶわっはっはっはっはっ!!!モロヒットじゃん!!」
「さ、悟……笑っては……ふっ」
「だっせー」
どうしよう、殺意しかなぁい☆
「………燃やそう」
「燃やしたら弁償だ」
「綿の1つや2ついくらでも」
「○十万だ」
「………」
「………」
優しくサワムラーを抱き締めた。
しかし五秒後には再び殴られた。
「悟、傑、硝子。
きちんと面倒見てやれ」
「「「はーい」」」
Q.呪力を一定にするコツは?
Gさん
「慣れ」
Gさん
「慣れかな」
Iさん
「びゅーんひょい、だ」
「クッッッソも役に立たねぇ」
本日何度目かわからない暴力に心が折れそう。
「いっそのことリアルファイトすべきか」
「どこ目指してんだよ」
「身体を鍛えるなら私達も協力するよ」
「脳筋かよ」
「呪力ってそもそも何?何で感じろと?
ハンターみたいにドンッて精孔抉じ開けられたら感じ取れる?」
「いいじゃん。
身体に纏う感じで安定させろよ」
「バカヤロー!さっきからやってるわ!!」
「やってそれかよ」
ケラケラ笑う白髪に気がいくと殴られた。
「何にも感じないのかい?」
「無理」
「とりあえず一定にするなら無神でいたら?」
「そんなんで一定なる?」
「感情が高まって殴られるなら、まず無神でいなよ」
「OK。無神ね、無神………」
人形を持ったまま、感情を抑えて落ち着く。
するとどうだろう?人形が……静まった!!
「王蟲が……止まった…」
「「ブフッッ!!」」
「やれば出来るじゃん」
「私に足りなかったのはナウシカの心か」
ターラララー
ター、ターラララー
「ほらね、怖くない。怖くない。
怯えていただけなんだよね?」
「やっ、やめっ……!!」
「………っ!!」
「ヤクザの元へおかえり。
大丈夫、飛べるわ。そう、いい子ね」
「「ぎゃはっはっはっはっはっ!!!」」
「馬鹿」
人形を外へぶん投げようとしたらガラッと戻ってきた担任。
「………何をしている」
「そーらを自由にとっびたっいなぁ……ってこの子が」
「飛ばない」
「いや、あの」
「もう少しハードルを上げても良さそうだな」
「嘘だろオイィィイイイっうぐっ!!」
殴られた。
その後も人形と戦いながら白髪と前髪と美少女とジブリ鑑賞会が始まり気付けばコントロール出来ていた。
next「通行人が高専に通ったら 2」
通行人シリーズ
「通行人が高専に通ったら 2」
今の状況を説明しよう!!
呪力のコントロールは出来るようになったが
必殺技がないので
武具で撲殺なう!!
「やれば出来る子……それが私!!」
「その物騒な武具じゃなければな」
「ね」
私の相棒、釘バットくん。
なぜか呪譜の巻かれた武器だったらしく、私の相棒だ。
昔は堂々と持って歩いていたら警察にお世話になったが、今はきちんとしまって歩いている。
「他の武具無かったのかよ」
「あったけどヤメタ」
「なんでだい?」
「金額がエグくて……」
数千万からの億……。
そんな代物を元一般人の私からしたら無理です。
おそれ多くて触れなかった。
「使い慣れれば平気だよ」
「君の実家金銭バグってんのかよ」
「使い方の問題だろ。
いちいち金額気にしてたらたら闘えねーよ」
「そーだけどさぁ」
ムリムリ。
やっぱムリ。
「私はこの子だけで生きていく……っ!!」
「低レベルの武具なのにね」
「相性いいのかもしれないけど……」
「見た目完全にヤバいよ」
血(呪霊の)がつき、肉片(呪霊の)がついた釘バット。
うんこ座りして顎しゃくってガンつけてみた。
「よろしくぅ」
「ブハッッッ!!!な、なんで顎!!」
「恥ずかしくないのかい?」
「あーん?」
「………ブッ」
「ポーズして。写真撮るわ」
「白髪と前髪もやれよ」
「やるやる!!」
「私もかい?」
やるんかーい。
お前らわりとノリいいよな。
三人でうんこ座りしながらガンつけているとこを美少女が撮った。
転送された写真に三人で噴き出した。
「やっっば!!」
「悟、キミ顎ヤバいよ」
「傑だって顎っっ!!」
「何でオマエら三人顎しゃくった」
「ヤンキーはケツアゴじゃん?無理だからしゃくった」
「「ブハアッッ!!」」
笑いのツボが浅いな、白髪と前髪。
「けど、本当のヤンキーは美少女だよね。
喫煙してるし」
「ん?」
「ナンデモナイデス」
美少女の目が怖かった!!!!
良い子のみんなは20まで喫煙駄目絶対!!!!
20過ぎてもできるだけやめよう!!
「ってゆー写真」
「馬鹿ですか」
「あっはっはっはっ!!!
先輩達楽しそうですね!!」
後輩の七海くんと灰原くんに絡んでみた。
白髪と前髪と美少女が任務で、ホイホイの私はお留守番とかよくあることさ。
なので一年生と一緒に授業とかよくあることさ。
実際私は2年からの入学だったので、やることは1年と同じらしい。
まぁ、1年よりも実力下なんだよ。
「七海くん、今度一緒にヤンキーごっこしようぜ」
「嫌です」
「はい!俺もしたいです!」
「灰原くんはおめめが輝くいい子だからヤンキー似合わないなぁ」
「ハイライト消せばいけますか?」
「できんの?」
「やります!!」
スッ、とハイライトの消えた灰原くん。
そのまま笑顔を浮かべるので、七海くんと共に肩を掴んだ。
「ごめん……私が悪かった」
「灰原、止めよう」
「え?なんで?」
「灰原くんはそのまま輝かしい陽キャでいてくれ」
怖すぎたなんて言えぬぇ。
けど、三人で仲良く写真撮ったのを美少女に送った。
その後、テレビのニュースで三人が任務に行ったはずの場所が映し出された瞬間笑った。
「帳!!忘れてる!!」
「………嘘でしょう」
「バッチリ放送されてるね」
「ヤクザぶち切れ案件ですな」
「夜蛾先生の事をそんな風に言えるの貴女くらいですよ」
案の定、帰って来て三人は怒られた。
特に白髪。
「ぷぷぷ。ざまぁ」
「うっせーよ。四級以下」
「三級ですぅー!!昇級いたしましたぁ!!」
「良かったじゃないか」
「やったね!!これから先輩と任務じゃい!!」
「雑魚い任務だろ」
「私の活躍を期待して帰りを待っていてくれたまえ。
ちなみにお祝いはホールタルトケーキな」
「買っておくよ。気をつけるんだよ」
「いってらー」
任務は無事終わって帰宅したが、前髪と白髪は特別任務に行ったらしくケーキは無かった。
仕方なく美少女とコンビニスイーツ買いに行ったが、美少女は甘いの無理だから煎餅パーティーになった。
next「通行人が高専に通ったら 3」
通行人シリーズ
「通行人が高専に通ったら 3」
突然の警報に何事かとビビッた。
よくわからないまま敷地内の蝿頭の駆除。
釘バットぶん回していたら血塗れの前髪と出会った。
「だ、は?え?
きゅうきゅうしゃぁぁあああああああ!!!!」
「悪いがキミの悪ふざけに付き合ってる暇は無いんだ」
走り去る前髪に、なぜか私も後を追いかける。
「怪我大丈夫なの?」
「平気だ。キミは戻れ」
「どこ行く?走って間に合う?」
「間に合わせる」
血走る瞳。
美少女が治したとはいえ多分大怪我。
余裕の無い前髪に、私は襟を引っ張る。
「前髪」
「いっ!!」
「落ち着きなよ」
「落ち着いてる。だから邪魔しないでくれ」
「お、ち、つ、けぇぇええええ!!!」
「ぐっ」
傷口開いた?知らん。
ちょっと腹パンしただけだ。
「目的地は?わかってんの?」
「………予想してるとこはいくつかある」
「それ都内にどんだけあんの?足でいけんの?」
「呪霊がいるから問題ない」
「人多い街中で?」
「上から行くさ」
「よし、じゃあ行ってこい」
「は?」
ポカーンとする前髪にほら、はよと手を叩く。
「今のキミも行く流れでは?」
「もしかしたら役立つかもしんないけど戦闘の邪魔になる予感しかしないから待ってるぜ」
「邪魔になる、けど…」
「出来ることといえば
空気壊す事に関しては得意分野だ」
「………はっ、何だそれ」
笑みを浮かべた前髪。
その額を叩く。
「余裕持てばあんたは強いんだから!!
すーぐキレて周り見えなくなるのよくないぞ」
「すまない。わかったよ」
「ちゃんと帰って来なよ」
「あぁ」
くしゃり、と撫でられた頭。
飛び立った前髪。
戻ってきた前髪と白髪。
二人共ボロボロで沈んだ顔。
「おかえり」
怪我は?と聞けば二人とも無いと。
「美少女に見てもらいなよ」
「平気」
「じゃあ風呂入って着替えて休め」
立ち尽くしたままの二人。
チラッとしか聞いていないが、二人の任務は失敗。
護衛対象は死亡。
「腐らないでよ…」
「は?」
「お前らが生きてれば助かる人がいる。
お前らが強くなれば助かる命はある。
お前らの命を一番大切にしてよ」
失ったら全て終わり。
次、なんてない。
綺麗事と言われてもいい。
何も知らないくせに、と言われてもいい。
「失くしたものを忘れるな」
何度後悔しても、もう戻らない。
結果はどうであれ過ぎた事だ。
「今あるものを大切にしろ!!」
私にとって護衛対象よりもこの二人の方が大切だと思ってしまった。
「………ばぁーか」
「おっも」
「うるせぇ……疲れたんだよ。寝かせろ」
「その前に着替えろ、バッチィ」
ぐだっ、とのしかかる白髪。
押しても引いても動かねぇ。
「今あるもの…ね」
「前髪も行くよー。休むよー」
「………あぁ、そうだな」
「しみったれた面してんじゃないよ。
今だけ許すが明日からはいつもの俺つえーからって自信過剰でいろ」
「どんな顔だい?」
「お前らは最強なんでしょ?
なら何度負けようが再戦には勝って強者でいなよ。
ウルトラマンもレンジャーもプリキュアも強敵に一度負けても次の戦いは勝つからヒーローなんだよ。
そしてあわよくば私を守って」
「どんな例えだ」
「ほんと……まぬけだね、キミは」
その日、談話室で三人で雑魚寝した。
巨人二人にのし掛かられ寝苦しかった。
「こんなとこで寝るなよ。一応女だろ」
「……美少女は朝から美人…おはよ」
起きたら美少女に覗き込まれるとかこれなんて漫画?
どこから恋愛始まる?
「もう始まってる……
美少女の顔に胸がきゅんきゅん」
「寝惚けてんな」
「助けて。重い」
「無理」
まだ寝入ってる二人は動く様子はない。
もぞもぞ動くがなぜか絡まって動けない。
「………酷な事言ったかな」
「何が」
「失ったものを忘れるな、なんて偉そうに」
二人が何を見て、何を感じたのかも知らずに偉そうに。
「まだ、こいつら17なのに……
重たいもん背負ったなぁ」
「呪術師に年齢なんて関係ないよ」
「そーかもしれんが、まだまだガキなんだ。
強いからって人の命かかった任務放り投げられてもそのあとの情緒どーしろと」
「関係無いんだよ」
「上様の指示で動けーってか?
頭湧いた馬鹿ばっかかよ」
セクハラパワハラで訴えんぞ、と見たこと無い上様の存在を嫌悪する。
「アンタは普通だね」
「何が?」
「この世界に入ったら遅かれ早かれ生死なんてどーでもよくなる。
それに関わる私達学生も死体に見慣れて死んでも何とも思わなくなるよ」
「そう思わなきゃやってらんないからでしょ」
「情緒なんて死んでく」
美少女の言葉が重い。
美少女も違う形で死体と向き合っているから。
「綺麗事でもさ」
私はキミらに笑っていてほしいから。
「笑えないなら笑わせる。
私はキミらの帰りを待ってるし、待っていてほしい」
任務先の見知らぬ人よりも
仲間の君たちが大切だから。
「だから手始めにこいつら腹パンしてくれ、美少女」
「仲間が大切って言ったのに」
「それとこれとは話が別だわ」
「馬鹿」
「退かしてくれないなら美少女も一緒に寝よ」
「やだよ」
やだ、と言いながら一緒に居てくれる美少女。
今は少しだけ休もう。
疲れた体と心を休ませて。
また明日から頑張るために。
「私達」
とある呪霊のせいで魂が入れ替わった二人。
つまり、先輩シリーズに通行人さんが。
「う……ん」
「目ェ覚めた?大丈夫?」
「うわっ、顔近っ!!
相変わらず顔が良すぎて喧嘩売られてる感じが凄い」
「え……」
キョトンとした顔の悟に頭を傾げる。
そもそもここなんだ?どうしてここにいるんだ?と考える。
「硝子」
「呪霊の攻撃で記憶が……いや、違うな」
「硝子ちゃーん、何で私寝てんの?
また真希ちゃんに沈められた?」
「「は?」」
あらやだ面白い。
悟と硝子ちゃん揃って……って思っていたら、突然悟に首を押さえ付けられ再びベッドへ。
どこも痛くない優しさはあるのに首抑えられて威圧されてるってどゆこと?
「おいおいおーい、悟くんやーい。
君さ、いくら私でもこれはおこだよ?おこ」
「オマエ誰だ」
「あぁん?なんだよ、いきなり喧嘩売りやがって」
「見た目も体も呪力も本人だけど、魂が違う。
……オマエ、誰だよ」
「殺意やばみ」
瞳孔開いてんぞ。
ブルブル震えたいが、悟くんを怒らせるのはよくあることなので怖いが気にしない。
気にしちゃいけない。
「さっきから何言ってるのかまるで理解できんわ」
「あ"?」
「あらやだ、こっわ!!イケメンのマジギレなんてやーねー!!
ちょっと硝子ちゃん黙ってないで……あれ?その手のメスなに?」
「先輩どこ?」
「まてまてまてまて!!!ステイ!!硝子ちゃんステイ!!!
悟よりも殺意たっっか!!!なにこの子!?」
「私の先輩の顔でアホみたいな発言するな」
「え?私のとかラブい。もっかい。もう一回呼ん………ぬぉぉおおおっ!!?」
トスッ、と真横に刺さったメス。
心臓ひゅっとなった。
そして目の前には瞳の輝きを失った硝子ちゃん。
「先輩の顔でアホな発言許さない」
黙って頷くしかなった。
あれやこれやと説明され、多分並行世界の私と先輩?だかの魂が呪霊のせいで入れ替わったらしい。なにそれ?10年バズーカ?
今から未来編でも始まるの?
あ、あさりは縦だからミルフィオーレか?
あらやだ、世界滅亡?
そんな事考えながら現実逃避していたが、鏡を見せて貰うと、そりゃーすごい美人がいた。
「何この美人」
「僕の奥さん」
「私の先輩」
「そうか、悟凄い美人を………は?奥さん?
まて、硝子ちゃんも待て」
「ってゆーか、オマエ何で僕や硝子を知ってんの?」
「そりゃー私の彼氏が悟で硝子ちゃんが友達だから」
「は?」
「あ"?」
「やだこの二人。まじ怖い」
誰がオマエみたいなアホの彼氏だよ?ふざけんのも大概にしろと言わんばかりの悟と
オマエの友達?は?寝言は永眠してから言えよ、あと私の先輩はよ返せ、と言わんばかりの硝子ちゃんの薄暗い光のない目で言われたらもうどうしようもない。
「つまり、ご都合呪霊のせいで私と先輩?の魂が入れ替わってる……かも、しれない?」
「だから早く入れ替われ」
「ってことは、先輩は私の体に入って私の世界の悟や硝子ちゃんと出会ってると」
「うわっ、最悪。
そっちの僕を殺したい」
「物騒」
こっちの先輩何したの?
何したら悟や硝子ちゃんがこんな懐くの?
「悟くーん、どうしたら戻んのコレ」
「知らね。魂を殺せば戻る?」
「無理に弄って先輩に何かある方が困るな」
「もうやだ。この二人物騒」
私滅そうとしてやがる。
…メ…テ…ヤメテヨ…
私生きたい。
「弱い呪霊の攻撃だしすぐ戻る可能性もあるんじゃ?」
「多分ね」
「じゃあ、戻るまでよろしくおねしゃーっす」
「「黙れ」」
この二人の眼力どうなってんの!?
美人な人ほど怖いんだけどぉ!!!
まじ怖い!!!誰かヘーーールプ!!
「顔面がうるさい」
「先輩の顔で変顔するな」
「クッッソ厳しい!!
この人大丈夫!?ヤンデレに愛され過ぎて大丈夫なんか!?」
プルプル震えるしかない私。
普段の力を発揮しろ?バカヤローー!!!
その瞬間メスが飛んでくるんだぞ!!
硝子ちゃんの顔でメスを的当てみたいに飛ばされてみろ………新たなる扉開くわ。
しかし私はまだその扉を開くにはレベルが足りないので黙ろう。
3.15……と覚えていない小数点を思い浮かべながらスペースキャット顔で無神を維持する。
「うぉーい!!呪霊の攻撃浴びたって大丈夫かー?」
なんか髪の毛ヤベェ奴きた。
金髪からの毛先青?しかもなぜパッツン。
髪に短冊ぶら下がってんぞ?ってレベルのパッツン。ねぇ、それどんなお洒落?レベル高すぎない?
「大和も黙ろ」
「うわっ、何で五条キレてんの?」
「先輩が魂だけ入れ替わった」
「硝子、目のハイライトどこいった?
てか魂?は?何事?」
何この陽キャ。
髪型で判断しちゃいけないな、この人こそ私の救世主かもしれない。
「助けてくださぁっい!!」
「ぶはっ!!中身違ぇ!!ウケる!!」
「「ウケねーよ」」
「さーせん」
一瞬でこの人の立場理解。
しかし、ハイライト消えた四つの瞳から解放されただけありがたい。
「ありがとうございます。
理解出来ない高度なお洒落髪の人」
「あれ?遠回しにディスられてない?」
「なぜそんな奇抜な頭なんですか?」
「鬼滅の刃にハマった」
「あー、推しの髪……いやまて。なぜそうなった」
「善逸も伊之助も捨てがたくて」
「この人頭大丈夫か」
なぜ両方やろうとした。
善逸の髪色真似するならまだしも、なぜ髪型やっちまったんだよ。
しかも毛先青……。
「地毛でそんな事する勇者初めて見た」
「髪は俺のアイデンティティー」
「大和、そろそろ黙ろう」
「わかった。わかったから五条座るんだ。
あと硝子は無言でメス磨ぐの止めよ?な?」
大和と呼ばれた人がいて良かった。
私が発言するたび闇を見せる二人の犠牲となってくれた。
この後二時間後に元の世界に戻った。
「さーとーるーくぅぅうううううんっっ」
「あ、いつものアホだ」
「だな」
「硝子ちゃぁぁあああああんっ」
泣きながら二人が怖かったと言えば鼻で笑われた。
「アホはアホのままがいいな」
「うん。オマエはこのままがいい」
「名残惜しいけど」
「だな」
「先輩何者!?猛獣係かよ!!!」
見ぬ先輩に嫉妬した。
この後、何度か入れ替わって向こうの悟と硝子ちゃんに何度も殺意持たれた。
暫く二人がトラウマになりかけたとか秘密。
next「入れ替わってる!?」
先輩シリーズ&通行人シリーズコラボ
「入れ替わってる!?」
弱いと最後の最後に気を抜いた私のミスだった。
最後の悪足掻きに放たれた攻撃。
そのあとの記憶が無くなっている。
「…………」
「目が覚めたか」
「しょー、こ?」
「頭打って違う人間に見えるか?」
この時点でおかしいと気付いた私は飛び起きた。
さらり、と流れ落ちた髪の色が違う。
着ているいつもの黒の仕事着ではなく、お洒落な洋服。
可愛らしく塗られた爪は私には縁のないもの。
「硝子?」
「私を呼び捨てにするほどパニック起こしてるのか?」
「おーい、目ェ覚めたばかり?」
「………」
ガラッと入って来た悟。
しかし、ここでも悟はゆっくりやって来た。
いや、そもそも悟なら起きるまで隣にいるだろうし、硝子の反応もおかしい。
おかしな事だらけの世界。
「目覚めたが打ち所が悪かったらしい」
「なになにー?記憶飛んだ?」
「私を呼び捨てにして髪や爪眺めてるぞ」
「枝毛探し?染めるから枝毛なんて今さらじゃーん」
あ、ここ私の知らない世界だ、と思った。
そしてどうやらあの呪霊のせいでとんでもないことになってしまったらしい。
「あの……すいませんが」
「突然の他人行儀」
「やっぱ打ち所悪かったか?」
「ごめんなさい。私、貴女方の知ってるこの体の持ち主ではありません」
「ウケるー。今時流行りのなろう系?」
「なんだそれ」
「不慮の事故や死を迎えて違う世界に転生するやつ。硝子知らないの?」
「知らん」
「多分死んではいませんが、魂が入れ替わった可能性はありますね」
「はっはっは。その設定ウケるね」
「なるほど。そーゆー設定か」
「本当にごめんなさい……」
心配されてる感じしないけど、大丈夫かな?
この子普段どんな扱いなの?
伊地知くんを思い出す……いや、大和かな?
「五条くんは今何歳?」
「同い年じゃん。まじボケ?その設定いつまでやんの?」
「あー…じゃあ並行世界かな?
この体呪力はあるみたいだけど不思議な感じ……封印されてるのかな?」
何だか不思議な感覚。
首を傾げてペタペタ体を触れば二人は揃って口を開けて見ている。
「……オマエ誰?」
「私違う世界では一応貴女方の一つ先輩で呪術師をしているの」
「まじか」
「アイツ頭打って死んだ?」
「死んでないよ。なんとなく感覚があるから、多分……私のミスした任務で呪霊の攻撃かな」
ごめんなさい、祓ったと思ってたら最後の最後に消える直前に攻撃されて……と答えたら、やはりポカンとする二人。
はて?と頭を傾げるとこそこそ話し出す。
「中身違うとただの可愛い子に見えるんだけど」
「私もだ」
「アイツの性格が素材をダメにしてたってこと?」
「中身が残念ってこーゆー事か」
「うわっ、鳥肌立った」
「五条も似たようなものだろう。
中身残念だから素材を無駄にしてるところ」
「硝子酷くね?」
「だが……うん、鳥肌の気持ちはわかる」
「えーっと……私何かしたかしら?」
「「ちょっとギャップについてけない」」
腕を擦る二人に何と声をかけていいかわからない。
「この子、呪術師ではない一般人かしら?」
「まぁ一応」
「なるほど。だから呪力はあるのに不安定なのね」
「わかるんだ?」
「一応、呪術師だからね」
下手に調律するとまた入れ替わった時に、一般人の子にどんな弊害があるかわからないので自分が呪力に酔わないように最小限にしておこう。
しかし……なんとも不安定な体に、調律がしづらい。体の持ち主じゃないから魂と体のズレが原因だろう。
「一般人……のわりに、この子と二人は仲良さそうね?
窓……にしては距離感も近そうだしお友達?」
「………違和感半端ない」
「だな」
「あ、ごめんなさい。歳上面したいわけじゃないんだけど……いつも関わってる感じで接してしまって」
「それはいいんだけど……なんてゆーか…」
「見た目と中身が合ってないから別物だな」
「それ」
私からしても懐いてくれている二人が距離を置いてる感じにどことなく寂しい。
「僕の彼女」
「あら!そーなの?」
「嬉しそうだな」
「ふふふ。私も悟と一緒に居るからなんだか嬉しくて」
並行世界の体を借りている存在の子が、悟と関わりがあるだけで嬉しくなる。
私、何年経っても世界が違っても悟が好きなんだなぁと思ってしまうと恥ずかしいが、それよりも嬉しさがある。
「……なんか恥ずかしい」
「あら?照れてるの?
ふふっ、なんだか悟と同じ年でも五条くんは可愛らしいね」
「ヤメテ」
「そっちの五条はどんな感じなんだ?」
「普段はちょっとお馬鹿さんで周りを困らせる困ったさんなんだけど……頼れる格好いい男よ。
私の前では犬っぽくなっちゃうけど」
「「犬」」
「私にとっては素敵な旦那様なの」
「「は?旦那?」」
二人がまたフリーズした。
「え?お姉さん……既婚者?僕と?」
「学生時代に悟に絆されちゃって」
「は?学生?嘘だろ」
「もう今年で10年目だよ」
「「まじかよ」」
悟本人が驚いているってどういうことだろう?
結婚する気ないのかな?
扱いは雑だが、彼女であるこの子のことを大事にしてそうだし……
「意外?」
「そっちの世界の僕どんだけお姉さんに惚れてんの?」
「デロッデロに甘やかされてる自覚あるくらいには」
「うわぁ……大丈夫か?それ」
「硝子や学長や七海にはよく心配されてるけど……そんなにおかしいかな?」
「僕が言うのもアレだけど、逃げられないじゃん」
「こいつの愛がドロッドロなんて地獄だろ。
監禁されてないか?」
「そんなことないよ?
私が嫌がることはほとんどしないし」
「「されてんじゃん」」
「心配してくれてるなんて世界が違っても二人はやっぱり優しいね」
にこり、と笑って二人の頭を撫でる。
しかし二人は私の肩を掴んで真剣な表情だった。
「いい?旦那だろうが最強の僕でも息子だけは急所だから。いざとなったらそこ殴って逃げろ」
「コイツに執着されてるとか呪霊よりタチ悪いぞ。いざとなったら殺れ」
「あらやだ、物騒ね」
「こんなほわんほわんな子が僕の奥さんとか!!
しかも学生からとか!!ぜっっったいその僕病んでるって!!」
「血迷うな」
「あはは、五条くんが悟の悪口言うなんて面白い」
「頭花咲いて聞いてない!!」
「頭打った後遺症か?」
落ち着こう、と二人を宥める。
なんだか悟を選んだ時の事を思い出すな……。
「ふふっ、こんなんでも一応学生時代は悟よりも強かったのよ?
あっという間に追い越されちゃったけど」
「あ、それ嘘」
「いつも二人で私に挑んで来てね……どちらも返り討ちにしてあげてたの」
「……お姉さんとこでも、アイツは」
五条くんの言いたいことに苦笑してしまう。
彼はこの世界も違う道を進んでしまったらしい。
「初めて会った時、二人に喧嘩売られてね。
どちらも沈めたけど……悟にはやりすぎちゃって」
「ウソウソ。僕女の子に負けないもん」
「息子さんを蹴りあげちゃって」
「何て事してんだオイ」
「あの時は申し訳なかったわ……。イラッとした原因は彼の言葉だったのに」
「八つ当たりで僕の息子犠牲になるとか笑えない」
家入さん爆笑だけどね。
「そんなわけで、私もやる時はやるのよ」
「そっちの世界の僕大丈夫か心配」
「そうね……私も心配」
暴走してなければいいんだけど……。
「オイ、馬鹿大丈夫か?」
「頭打ったって聞いたゾー」
「しゃけ」
ガラガラッと開いた扉から入って来たのは二年生。
この体の持ち主は学生達からも慕われているみたい。
にこり、と笑いかけるとなぜか固まった三人。
「おい、誰だコイツ」
「双子だったか?」
「おかか…」
「頭打ってちょっと入れ替わったみたいだよ」
「「「は?」」」
「ごめんなさい。多分すぐに戻ると思うから」
「「誰だ!!」」「おかか!!」
動揺が凄いな、ほんと。
普段のこの体の持ち主がどんな性格か本当気になってしまう。
家入さんが軽く説明したことにより納得したみたいだが……
「別人だな」
「別人だ」
「しゃけ」
「えっと……そんなに違うかしら?」
「まずあの馬鹿はそんな話し方しねぇ」
「魂が違うと雰囲気も違うんダナ」
「しゃけ」
「気持ち悪ィ」
「わかる」
「しゃけ」
腕を擦る動作にそんなに……?と思ってしまう。
「戻ったらまた見に来るわ」
「オレも」
「しゃけ」
サササッといなくなってしまった二年生達。
なんだか寂しい。
「この体の持ち主がどんな子か気になって仕方ない……」
「馬鹿だよ」
「あぁ。馬鹿だ」
「具体的には?」
「学生時代に流し素麺して反省文書いたり」
「呪霊祓えないからシカトしたり」
「学長をヤクザ扱いしたり」
「生クリームでパイ投げして怒られる29歳だ」
「この子大丈夫?」
え?予想外過ぎて驚いた。
「奇行種だから」
「何やらかすかわからん」
「一般人ってそれが普通なの?」
「「ソイツだけ特別」」
一般人の常識より私もズレているけど……
うん、世の中には様々な人がいると納得しよう。
「だけど愛おしいんだよね」
五条くんの呟いた言葉に、思わずキョトンとしてしまう。
目隠しをしているが……なんとなくわかる。
「愛してるんだね」
「なま暖かい顔ヤメテ。見ないで」
「ヒューヒュー」
「硝子ヤメテ」
「もう少しだけ待ってね?
必ず彼女の魂を戻すから」
何となくもう少しかな?と思う。
雑に扱っていても五条くんの選んだ人だ。
学生から慕われ、家入さんに心配され、五条くんが大事にしている。
「素敵な人なのね」
「飽きないくらい面白いよ」
「一般人なら気を使うのも大変だろうけど……
五条くんならきちんと守ってくれるから安心だね」
「僕じゃないとソイツの相手なんて出来ないからね」
「凄い自信。流石五条くん」
なんとなく意識が引っ張られる。
「五条くん、家入さん。
お話に付き合ってくれてありがとう」
信憑性の無い話なのに、疑わず受け入れてくれた後輩達は世界が違ってもいい子だ。
「バイバイ」
目が覚めると、悟の顔が見えた。
「さとる?」
「………目、覚めた?」
「うん」
頬を撫でる手にすり寄れば、ぎゅっと抱き締められる。
「戻ったみたいですね」
「硝子」
「何か違和感や変な所は無いですか?」
「無いよ。大丈夫そう」
「先輩の大丈夫は信用ならないので私が付きっきりで一晩様子見る」
「やだ。僕が見る」
いつも通りの光景なのに、なんだか懐かしくなる。
「本当に大丈夫だよ。
それよりも二人共」
「「?」」
「どうしてこのベッドメス刺さってるの?」
にこりと笑う私に対し、サッ、と視線を逸らす二人。
「いくら中身が私じゃないからって過激過ぎない?」
「だって……」
「先輩の体や顔であり得ないテンションで話すから……」
「愛され過ぎて喜べばいいのやら、叱ればいいのやら…」
私にはこちらの世界が安心する。
同じ人でも、関わり方が違うと別人に思えてしまう。
「ねーぇ、向こうの世界とやらの僕と浮気してない?」
「してないよ。
向こうの世界の五条くんにも大切な人がいるからね」
「へー」
「むしろ心配されちゃった」
「何の?」
「ドロッドロに甘やかされてるなんて逃げらんないよーって」
クスクス笑えば余計なお世話だと口を尖らせる悟。
「逃がす気なんてないからね」
「逃げ出す気もないよ」
「愛してる」
「私も愛してる」
重なる唇に硝子がため息をついた。
のちに何度か入れ替わることになるが
その度に向こうの世界の人々に身の安全を心配されることになるとは思ってもいなかった。
next「通行人が高専に通ったら」
通行人シリーズ
「通行人が高専に通ったら」
「どーもー。
ヤクザな方々に拉致られあれよあれよと呪術師とかいうブラック業者に務めることになった元一般人でーす」
「「「よろしく」」」
「クッッッソいい笑顔じゃねーかコンニャロッ!!」
ダンッと足で床を鳴らす。
見た目ヤクザな担任が親元へ行き説得しやがった。
勿論親は反対。しかし、前髪と白髪がウチの迎えに来た瞬間母親の目が変わった。
「めちゃくちゃイケメンじゃない!!」
「おい、母」
「……はっ!!これを機会に幼馴染離れしてイケメンな彼氏ゲットしなさいよ」
「オイ母ァ!!」
「お義母さん、ご安心ください」
「俺達が彼女をしっかりサポートします」
「あら……。
あんた絶対この二人のどっちか射止めなさいよ!!孫はどっち似でもイケメンよ!!」
「オイィィイイイイ!!!母親ァァアアアア!!!」
ひき止めてくれたのは父と幼馴染達だけ。
しかし母親の強行に私の荷物はあっという間に高専の寮へ。
「で?私何すんの?化け物退治?」
「いや、オマエはまずコレからだ」
「何この人形」
ぶっっさいくなのか可愛いのかよくわからん頭剥げた……サワムラーかな?あ、サワムラー髪ねぇか。
とにかくおめめきゅるんなサワムラーにカッパの皿と申し訳程度に毛が散りばった謎のぬいぐるみ。
「ペンギンだ」
「待て。色々待て。
どっからどう見てもカッパの皿ついたサワムラーじゃないか」
「「ブフッ!!」」
「………ペンギンだ」
「ペンギンになんで手グローブ付き?
足の関節も完全に蹴り入れるためのバネじゃないか」
「ペンギンだ」
このヤクザペンギン見たことないのか?
渡されたぬいぐるみを手に持つ。
「呪力を一定に保つためのものだ。
呪力が多すぎたり少なすぎると」
「?」
カッ!!と目を覚ましたサワムラーにアッパーされる。
ふらついた体を前髪が支えてくれたが…
シュッシュッ、と戦闘スタイルなサワムラー。
なにこれ?手持ちになった瞬間反抗期?
バッジ足りなかった?
「このように目が覚めて暴れる」
「はよ言えや!!!!なぜ体験させた!?」
「呪力が一定になったら次の段階へ進む」
「はい!!呪力がそもそもよぅわからん!!」
「慣れろ。感じとれ」
「ふっっっざけんごっ!!」
「ぶわっはっはっはっはっ!!!モロヒットじゃん!!」
「さ、悟……笑っては……ふっ」
「だっせー」
どうしよう、殺意しかなぁい☆
「………燃やそう」
「燃やしたら弁償だ」
「綿の1つや2ついくらでも」
「○十万だ」
「………」
「………」
優しくサワムラーを抱き締めた。
しかし五秒後には再び殴られた。
「悟、傑、硝子。
きちんと面倒見てやれ」
「「「はーい」」」
Q.呪力を一定にするコツは?
Gさん
「慣れ」
Gさん
「慣れかな」
Iさん
「びゅーんひょい、だ」
「クッッッソも役に立たねぇ」
本日何度目かわからない暴力に心が折れそう。
「いっそのことリアルファイトすべきか」
「どこ目指してんだよ」
「身体を鍛えるなら私達も協力するよ」
「脳筋かよ」
「呪力ってそもそも何?何で感じろと?
ハンターみたいにドンッて精孔抉じ開けられたら感じ取れる?」
「いいじゃん。
身体に纏う感じで安定させろよ」
「バカヤロー!さっきからやってるわ!!」
「やってそれかよ」
ケラケラ笑う白髪に気がいくと殴られた。
「何にも感じないのかい?」
「無理」
「とりあえず一定にするなら無神でいたら?」
「そんなんで一定なる?」
「感情が高まって殴られるなら、まず無神でいなよ」
「OK。無神ね、無神………」
人形を持ったまま、感情を抑えて落ち着く。
するとどうだろう?人形が……静まった!!
「王蟲が……止まった…」
「「ブフッッ!!」」
「やれば出来るじゃん」
「私に足りなかったのはナウシカの心か」
ターラララー
ター、ターラララー
「ほらね、怖くない。怖くない。
怯えていただけなんだよね?」
「やっ、やめっ……!!」
「………っ!!」
「ヤクザの元へおかえり。
大丈夫、飛べるわ。そう、いい子ね」
「「ぎゃはっはっはっはっはっ!!!」」
「馬鹿」
人形を外へぶん投げようとしたらガラッと戻ってきた担任。
「………何をしている」
「そーらを自由にとっびたっいなぁ……ってこの子が」
「飛ばない」
「いや、あの」
「もう少しハードルを上げても良さそうだな」
「嘘だろオイィィイイイっうぐっ!!」
殴られた。
その後も人形と戦いながら白髪と前髪と美少女とジブリ鑑賞会が始まり気付けばコントロール出来ていた。
next「通行人が高専に通ったら 2」
通行人シリーズ
「通行人が高専に通ったら 2」
今の状況を説明しよう!!
呪力のコントロールは出来るようになったが
必殺技がないので
武具で撲殺なう!!
「やれば出来る子……それが私!!」
「その物騒な武具じゃなければな」
「ね」
私の相棒、釘バットくん。
なぜか呪譜の巻かれた武器だったらしく、私の相棒だ。
昔は堂々と持って歩いていたら警察にお世話になったが、今はきちんとしまって歩いている。
「他の武具無かったのかよ」
「あったけどヤメタ」
「なんでだい?」
「金額がエグくて……」
数千万からの億……。
そんな代物を元一般人の私からしたら無理です。
おそれ多くて触れなかった。
「使い慣れれば平気だよ」
「君の実家金銭バグってんのかよ」
「使い方の問題だろ。
いちいち金額気にしてたらたら闘えねーよ」
「そーだけどさぁ」
ムリムリ。
やっぱムリ。
「私はこの子だけで生きていく……っ!!」
「低レベルの武具なのにね」
「相性いいのかもしれないけど……」
「見た目完全にヤバいよ」
血(呪霊の)がつき、肉片(呪霊の)がついた釘バット。
うんこ座りして顎しゃくってガンつけてみた。
「よろしくぅ」
「ブハッッッ!!!な、なんで顎!!」
「恥ずかしくないのかい?」
「あーん?」
「………ブッ」
「ポーズして。写真撮るわ」
「白髪と前髪もやれよ」
「やるやる!!」
「私もかい?」
やるんかーい。
お前らわりとノリいいよな。
三人でうんこ座りしながらガンつけているとこを美少女が撮った。
転送された写真に三人で噴き出した。
「やっっば!!」
「悟、キミ顎ヤバいよ」
「傑だって顎っっ!!」
「何でオマエら三人顎しゃくった」
「ヤンキーはケツアゴじゃん?無理だからしゃくった」
「「ブハアッッ!!」」
笑いのツボが浅いな、白髪と前髪。
「けど、本当のヤンキーは美少女だよね。
喫煙してるし」
「ん?」
「ナンデモナイデス」
美少女の目が怖かった!!!!
良い子のみんなは20まで喫煙駄目絶対!!!!
20過ぎてもできるだけやめよう!!
「ってゆー写真」
「馬鹿ですか」
「あっはっはっはっ!!!
先輩達楽しそうですね!!」
後輩の七海くんと灰原くんに絡んでみた。
白髪と前髪と美少女が任務で、ホイホイの私はお留守番とかよくあることさ。
なので一年生と一緒に授業とかよくあることさ。
実際私は2年からの入学だったので、やることは1年と同じらしい。
まぁ、1年よりも実力下なんだよ。
「七海くん、今度一緒にヤンキーごっこしようぜ」
「嫌です」
「はい!俺もしたいです!」
「灰原くんはおめめが輝くいい子だからヤンキー似合わないなぁ」
「ハイライト消せばいけますか?」
「できんの?」
「やります!!」
スッ、とハイライトの消えた灰原くん。
そのまま笑顔を浮かべるので、七海くんと共に肩を掴んだ。
「ごめん……私が悪かった」
「灰原、止めよう」
「え?なんで?」
「灰原くんはそのまま輝かしい陽キャでいてくれ」
怖すぎたなんて言えぬぇ。
けど、三人で仲良く写真撮ったのを美少女に送った。
その後、テレビのニュースで三人が任務に行ったはずの場所が映し出された瞬間笑った。
「帳!!忘れてる!!」
「………嘘でしょう」
「バッチリ放送されてるね」
「ヤクザぶち切れ案件ですな」
「夜蛾先生の事をそんな風に言えるの貴女くらいですよ」
案の定、帰って来て三人は怒られた。
特に白髪。
「ぷぷぷ。ざまぁ」
「うっせーよ。四級以下」
「三級ですぅー!!昇級いたしましたぁ!!」
「良かったじゃないか」
「やったね!!これから先輩と任務じゃい!!」
「雑魚い任務だろ」
「私の活躍を期待して帰りを待っていてくれたまえ。
ちなみにお祝いはホールタルトケーキな」
「買っておくよ。気をつけるんだよ」
「いってらー」
任務は無事終わって帰宅したが、前髪と白髪は特別任務に行ったらしくケーキは無かった。
仕方なく美少女とコンビニスイーツ買いに行ったが、美少女は甘いの無理だから煎餅パーティーになった。
next「通行人が高専に通ったら 3」
通行人シリーズ
「通行人が高専に通ったら 3」
突然の警報に何事かとビビッた。
よくわからないまま敷地内の蝿頭の駆除。
釘バットぶん回していたら血塗れの前髪と出会った。
「だ、は?え?
きゅうきゅうしゃぁぁあああああああ!!!!」
「悪いがキミの悪ふざけに付き合ってる暇は無いんだ」
走り去る前髪に、なぜか私も後を追いかける。
「怪我大丈夫なの?」
「平気だ。キミは戻れ」
「どこ行く?走って間に合う?」
「間に合わせる」
血走る瞳。
美少女が治したとはいえ多分大怪我。
余裕の無い前髪に、私は襟を引っ張る。
「前髪」
「いっ!!」
「落ち着きなよ」
「落ち着いてる。だから邪魔しないでくれ」
「お、ち、つ、けぇぇええええ!!!」
「ぐっ」
傷口開いた?知らん。
ちょっと腹パンしただけだ。
「目的地は?わかってんの?」
「………予想してるとこはいくつかある」
「それ都内にどんだけあんの?足でいけんの?」
「呪霊がいるから問題ない」
「人多い街中で?」
「上から行くさ」
「よし、じゃあ行ってこい」
「は?」
ポカーンとする前髪にほら、はよと手を叩く。
「今のキミも行く流れでは?」
「もしかしたら役立つかもしんないけど戦闘の邪魔になる予感しかしないから待ってるぜ」
「邪魔になる、けど…」
「出来ることといえば
空気壊す事に関しては得意分野だ」
「………はっ、何だそれ」
笑みを浮かべた前髪。
その額を叩く。
「余裕持てばあんたは強いんだから!!
すーぐキレて周り見えなくなるのよくないぞ」
「すまない。わかったよ」
「ちゃんと帰って来なよ」
「あぁ」
くしゃり、と撫でられた頭。
飛び立った前髪。
戻ってきた前髪と白髪。
二人共ボロボロで沈んだ顔。
「おかえり」
怪我は?と聞けば二人とも無いと。
「美少女に見てもらいなよ」
「平気」
「じゃあ風呂入って着替えて休め」
立ち尽くしたままの二人。
チラッとしか聞いていないが、二人の任務は失敗。
護衛対象は死亡。
「腐らないでよ…」
「は?」
「お前らが生きてれば助かる人がいる。
お前らが強くなれば助かる命はある。
お前らの命を一番大切にしてよ」
失ったら全て終わり。
次、なんてない。
綺麗事と言われてもいい。
何も知らないくせに、と言われてもいい。
「失くしたものを忘れるな」
何度後悔しても、もう戻らない。
結果はどうであれ過ぎた事だ。
「今あるものを大切にしろ!!」
私にとって護衛対象よりもこの二人の方が大切だと思ってしまった。
「………ばぁーか」
「おっも」
「うるせぇ……疲れたんだよ。寝かせろ」
「その前に着替えろ、バッチィ」
ぐだっ、とのしかかる白髪。
押しても引いても動かねぇ。
「今あるもの…ね」
「前髪も行くよー。休むよー」
「………あぁ、そうだな」
「しみったれた面してんじゃないよ。
今だけ許すが明日からはいつもの俺つえーからって自信過剰でいろ」
「どんな顔だい?」
「お前らは最強なんでしょ?
なら何度負けようが再戦には勝って強者でいなよ。
ウルトラマンもレンジャーもプリキュアも強敵に一度負けても次の戦いは勝つからヒーローなんだよ。
そしてあわよくば私を守って」
「どんな例えだ」
「ほんと……まぬけだね、キミは」
その日、談話室で三人で雑魚寝した。
巨人二人にのし掛かられ寝苦しかった。
「こんなとこで寝るなよ。一応女だろ」
「……美少女は朝から美人…おはよ」
起きたら美少女に覗き込まれるとかこれなんて漫画?
どこから恋愛始まる?
「もう始まってる……
美少女の顔に胸がきゅんきゅん」
「寝惚けてんな」
「助けて。重い」
「無理」
まだ寝入ってる二人は動く様子はない。
もぞもぞ動くがなぜか絡まって動けない。
「………酷な事言ったかな」
「何が」
「失ったものを忘れるな、なんて偉そうに」
二人が何を見て、何を感じたのかも知らずに偉そうに。
「まだ、こいつら17なのに……
重たいもん背負ったなぁ」
「呪術師に年齢なんて関係ないよ」
「そーかもしれんが、まだまだガキなんだ。
強いからって人の命かかった任務放り投げられてもそのあとの情緒どーしろと」
「関係無いんだよ」
「上様の指示で動けーってか?
頭湧いた馬鹿ばっかかよ」
セクハラパワハラで訴えんぞ、と見たこと無い上様の存在を嫌悪する。
「アンタは普通だね」
「何が?」
「この世界に入ったら遅かれ早かれ生死なんてどーでもよくなる。
それに関わる私達学生も死体に見慣れて死んでも何とも思わなくなるよ」
「そう思わなきゃやってらんないからでしょ」
「情緒なんて死んでく」
美少女の言葉が重い。
美少女も違う形で死体と向き合っているから。
「綺麗事でもさ」
私はキミらに笑っていてほしいから。
「笑えないなら笑わせる。
私はキミらの帰りを待ってるし、待っていてほしい」
任務先の見知らぬ人よりも
仲間の君たちが大切だから。
「だから手始めにこいつら腹パンしてくれ、美少女」
「仲間が大切って言ったのに」
「それとこれとは話が別だわ」
「馬鹿」
「退かしてくれないなら美少女も一緒に寝よ」
「やだよ」
やだ、と言いながら一緒に居てくれる美少女。
今は少しだけ休もう。
疲れた体と心を休ませて。
また明日から頑張るために。