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初めて出会った時ーーー
綺麗な白に目を奪われた。
空と海の境目のような蒼。
こんな綺麗な人がいるのだと、驚いた。
……まぁ、すぐに口の悪さと態度の悪さに
硝子ちゃんを口説きに行ったのだが。
普通と違う私。
その心細さを癒してくれた。
怖くて認めたくなかった世界を少しずつ"好き"で溢れさせてくれた。
ーーーすき。
幼馴染が、私の世界で
私の世界を理解してくれるような誰かに恋をして、誰かを愛せるのかな?
恋愛なんて夢物語。
嫁の貰い手が見つからないなら幼馴染に引き取って貰おうとか考えていた。
なのに……あっさりと私の心を奪った。
憎まれ口も
馬鹿にされるのも
雑に撫でられるのも
男女の友情。
話しやすく素の自分でいられるのが楽だった。
気付かないでいれば、楽でいられる。
私はこの気持ちを認めたくなくて蓋をした。
不器用に手を奪われ繋がれる強引さ
優しいキス
熱を持った瞳
大切なモノを恐る恐る触る手
私を愛おしいと笑う顔が
囁かれる愛の言葉が
五条悟という一人の男が私を魅了する。
好きだ、と思って後悔した。
離れた後に気付いた恋心を消化出来ずに随分遠回りをした。
友達が話していた恋の話は私にとって夢物語で、そんな気持ちになるくらい好きになるなんて……と、どこか鼻で笑っていた。
そんな苦しいなら、止めればいい。
そんな辛いなら、最初から気付かなければいい。
そう、簡単に割り切れると思っていたのに……。
いつも探す姿。
似た人と見間違い、悲しくなる。
関わりたくても勇気が出ない。
代わりの恋など、相手も自分も傷付いた。
厄介なこの恋を終わらせるには時間が必要で……私は逃げた。
どこにでもある思い出が私を苦しめるから。
どこにでもある幻が私を追い詰めるから。
最後の賭けを期待して
それでも駄目なら
ここで終わろうと思って逃げたのに………
「素直になったら僕をやるから
名前を僕にちょーだい」
離れたくないと思った。
私が欲しくてずっと見ないフリしていた現実を受け入れてもいいと思えるくらい……
悟が愛しくて、悟に恋をした。
ーー誰にも破れない約束を交わそう
ーーずっと離さないから
「名前、愛してる」
ーー神様でも運命でも
ーー邪魔出来ないくらい
世界を嫌っていた私に
世界を好きにさせてくれた悟
沢山のものを貰った。
私は自信を持って幸せだと言える。
だけど、まだまだ幸せになりたいんだよ。
私、悟に出会って欲張りになってしまったから
皆と、悟と、幸せになりたいって思ってしまったの。
勿論悟にも幸せになってもらいたい。
願わくば、もう一度。
世界の為でもなく
人々の為でもなく
私の為だけに
あれから、呪術界は大変になった。
オイルの言葉通り、オイルによって目覚めた呪術達がこちらの怪我人や人手不足など関係無いとでも言うように襲ってくるし。
身内や知り合いやらその他諸々精神的によろしくない人選で襲って来たので主に主戦力だった子供らの精神的負担とケアが大変だった。
改造呪霊ですら心抉られたのに、生身の悪意しかない洗脳された人間に襲われるってどんな地獄?
私は私で一応呪術師(仮)と扱われているが、そもそも呪術界の一般知識の学習と呪力の安定から始まりつつも、エグい任務に放り込まれ無傷で帰って来てた。呪詛師相手もあったが、出来るなら平和な解決を!!と声を高々に語り合ったりもした。ちなみにほぼお話通じないパターンなのでそこはほら……お話合いが物理へと変化しただけさ。相棒とエクスカリバー之助から黒い火花が散った。
悟曰く、腐った蜜柑共のじぃちゃん達に悠仁くんもろとも命狙われるし。
死刑死刑うるさいし、生徒のケアやら任務やらセクハラ・パワハラ、その他諸々で………ちょっと疲れていたんだ、うん。
呼び出されて入室の挨拶がてら破壊光線撃ち込んだ私、ワルクナイヨ。
「文句あるなら最前線で戦って、戦果残しながら生き残ってから言いなよ。
過去の栄光に振りかざして高みの見物?
ハッ!!錆びた刀を武器に偉そうにされても何も怖くねーわ。
未来ある子供にばかり責任と現場押し付けてないで今だからこそテメーらが見本となって動け!!
よりよい術式残したい?使わなきゃ意味無いだろ。
そんなに大切な術式と人間様ならガラスケースに入って永久保管されながらお口チャック!!
そもそも!!
寝かせろ!!休暇よこせ!!子供達に愛のある生活を!!!!
ブラック企業も真っ青なパワハラしてくる暇あるなら社員からそれ相応の仕返しあっても仕方ないよね?仕方ないね!!
お前ら覚えとけよ!!夜寝るとき布団の中に入ったら蒟蒻まみれでぬっちゃぬちゃな不快な思いする呪いかけとくからな!!今夜ぬっちゃぬちゃになって気分めっちゃ下がれ!!
砂糖と塩間違えた玉子焼き食え!!
靴の中にちっちゃい小石毎回入って、足の裏が地味に痛くなれ!!ハゲろ!!あ、禿げてたな……仕方ねぇから髪一本生える呪いしといてやんよ。私の慈悲に感謝しながら蒟蒻まみれの布団でぬっちゃぬちゃになりやがれ!!
嫌がらせを続けるのなら……OK。
話し合おうか」
この時何徹か忘れたがプッチンプリンでした。
眠たかった。
話し合い(破壊光線)決めッぞ。
………とまぁ、上層部相手に中指立ててぶちギレた私ワルクナイヨ(遠い目)
一緒に着いてきてくれた特級のボインのお姉さん……改め、九十九由基さんは爆笑して崩れ落ちていた。
戦国お伽草子かってレベルで混沌とした呪いの時代。
何度1号の火炎放射が火を吹き上層部の腐った蜜柑を焼き蜜柑にしそうになった事か。
……生焼け蜜柑で妥協はした。
最終手段は破壊光線だが、ここはポケモン世界じゃないので破壊光線が人間に撃ち込まれるとやな感じ〜!!どころでは済まないので、人間相手には物理的なお話合いの時に使用している。
大丈夫。ちょっとお股の間スレスレに風穴開いて玉ヒュンするくらい。人には、当ててないよ。
ね?おじいちゃん達?(にっこり)
ハロウィンのあの一件で失ったものは大きかった。
呪術師を引退する者や補助監督から降りた人も多い。
それでも……生きている。
七海くんや、東堂くんなど凄腕で呪術師の最前線を離脱しても子供達に自身の経験を、と育成の方に回る人もいた。
辛かった事もいっぱいあった。
何度も危ない目にあった。
崩れて泣いて駄目になりそうな日だってあった。
それでも、耐えた。
何度も持ち直した。
時に子供達に励まされ
時に七海くんに励まされ
時に宿儺さんに励まされ
その優しさと甘い囁きに何度も心が折れかけてもう、いいんじゃないか?と諦めてしまいそうになるたび……思い浮かぶ温もりは悟だけ。
歯を食いしばり、気合いを入れ直し、折れた心と頬にマジビンタして自分を奮い立たせた。
もう、悟無しじゃ生きていけないな、なんて馬鹿みたいに笑う。
惚れたもん負けだよね、恋ってさ。
だからーーーー
「なぁーにブッサイクな顔してんのさ」
愛しの悟くんですよー、なんて
現れやがった悟の顔面に思わずマジビンタ決めた私は悪くない。
「痛っっっった!!!!
復活した恋人の頬にマジビンタする奴いる!?」
「うっっっせーーーーわ、馬鹿野郎!!!
最強最強言ってたのにお姫様よろしく捕まってんじゃないわよ!!!」
「仕方ないじゃん!!僕、悪くない!!」
「知ってるわ!!悟悪くないけど、色々大変だったんだからマジビンタくらい受けろ!!」
「色々申し訳ないな、と思ったから受けたじゃん!!」
殴り出そうとした私を後ろから羽交い締めに引き留める七海くん。
目の前では悠仁くんがストップ!!ストップって止めている。
他の生徒はだよな、って感じで見守り体制。
頬に真っ赤な紅葉を作ってむくれる悟。
「ばーか!!ばか、ばーーーかっ!!」
「はいはい」
「私、頑張った!!!」
悟を見ていたいのに、視界が歪んでいく。
本当はもっと可愛く抱きついて甘えて会いたかったと伝えたいのに。
溢れる大粒の涙を乱暴に拭う。
もう、暴れないからと七海くんに解放されるが、生徒らと共にハラハラと見守られている。
「頑張ってたね。偉い偉い」
「もっと!!私を褒めて労って!!」
「どーしてほしいのさ」
「じゃないと七海くんの胸元に飛び込んで今すぐに婚姻届出して来てやる」
「準備万端ですよ」
「七海オマエふざけんなよ」
面倒臭い彼女感半端ねぇな。
止まらない涙を拭いながら悟を見上げる。
「悟」
「……よく、頑張ったね」
手を伸ばせば悟に抱き締められる。
ずっとずっと欲しかった温もりが消えてしまわないように力強く抱き締めた。
「悟……さとるっ」
「ただいま、名前」
「う"あ"あ"あ"あ"っ」
「すんげー泣くじゃん。わぁ、僕愛されてる」
「愛してるから泣いてんだろばーーーかっ!!」
子供みたいに泣く私を、子供みたいに無邪気に笑いながら抱き絞める悟。
世界はまだまだ何も解決していないけど……
私の世界が帰って来た。
「ちゃんと顔見せて」
「やだ」
「不細工でも愛してるから」
「自分の顔がいいからってナメてんじゃねーぞコンニャロッ!!」
「もっと見せてよ。
離れていた分、僕に名前を補充させて」
好き。
大好き。
愛してる。
他の誰かじゃ埋められない空白を、埋めてくれるたった一人。
「さとる……さとる、好き。大好き」
「うん」
「……もう、2度と離れないで」
「離さないよ」
悟の大きな手で頬を包まれる。
親指で涙を拭うが、私の涙が止まることはない。
大きな手にすり寄って、悟の手に自分の手を重ねる。
悟の生きている体温にやっとホッとした。
「ちゃんと戻って来たのにおかえりくらい言ってくれないの?」
「悟……好き」
「………」
「おか」
おかえり、と口にしようとした瞬間
悟に唇を重ねられた。
生徒の前だ、とか七海くんや硝子ちゃんや伊地知くんやらその他諸々の人々も居ると言うのに……。
「ちょっ……んっ、さと……」
「…………」
「ま、って……」
「やだ。待たねーよ」
「ち、ょっ………と」
めちゃくちゃ濃厚なのしてきやがった。
思わず腕をタップしても止められない止まらない悟の熱烈なキスの嵐。
「何してんすかアンタ」
「黙ってればイチャイチャイチャイチャ長ェんだよ!!」
めぐみんと真希ちゃんの特攻により邪魔された悟は舌打ち。
「キミら、ここは空気読んで恋人の逢瀬にそっといなくなるべきでしょ」
「クソな男には渡しません」
「クズな野郎に渡せるか」
「禪院の血筋は名前のセコムか騎士なの?」
「めぐみん……真希ちゃん……」
「トキメイてんじゃねーよ」
オイコラ、と頭を握られる。
あぁ、懐かしいな。
やっと戻って来れたーーって安心出来る。
悟の封印が解けた事により、呪術界にも希望が見えてきた。
打倒オイルを目標に、決着をつける。
けど、今はもう少しだけ……
この幸せを噛み締めさせてほしい。
「おかえり、悟」
「ただいま、名前」
ーーー人は……誰もが幸せになる権利を持っている。
「名前」
「なぁに?悟」
悟復活に宴会騒ぎをしようとしている皆。
こんな時代で騒ごうなんて……と思う人々はここにはいない。
誰もが明日を願って生きる。
明日、を迎えられない日が来るのがいつ訪れるかわからないからこそ……
辛くても
悲しくても
苦しくても
明日を生き抜くために今を精一杯楽しむ。
悟が私の左手を包み込むように握り締める。
やっとおさまってきた涙と鼻水。
名を呼ばれて悟を見れば、いつの間にか目隠しを外していた。
「僕さ、誰かに恋したのも愛しいと思ったのも名前が初めてなんだよね」
「私もだよ」
「愛ほど歪んだ呪いは無いーーって、思ってる」
「そうだね」
愛は人を良くも悪くも縛り付ける。
呪術師なら、尚更重いものとなる。
「それでもオマエを呪いたい……って言ったら名前は嫌?」
左手を絡めて、私の薬指にキスを落としながら此方を覗き込むように見つめる悟。
「僕はオマエを手離したくない。
この先、何があってもオマエと共に生きたい」
「……私、厄介な体質だよ?
前髪を取り戻したら……高専の結界から出られないかもしれないよ?」
「名前は高専の山で。僕は高専で。
共に生きよう」
「………それ、プロポーズのつもり?」
「好きだろ?ジブリ」
会いに行くどころか、囲って出さないよ?
なんて笑って言うから私は吹き出した。
「僕が居れば問題無いでしょ!
全て悟くんにお任せ!!」
「悟ならどうにかしてしまいそうだね」
「当たり前じゃん」
愛しい、と語る悟の目。
少し背伸びをして、悟の唇に自分の唇を重ねる。
「私と幸せになってくれる?」
「……勿論。
全世界が嫉妬するぐらい幸せにする」
「あらま、随分大きく言うのね」
「当たり前だろ。最強の僕に愛されるんだから……
結婚して。僕の奥さんになってください」
「喜んで。私と幸せになってください!」
悟の首に腕を回して抱きつけば、抱き締めてくれる。
「エンダァァァアアアアアアッ!!!」
「イヤァァアアアアアッ!!!」
「虎杖、釘崎。ヤメロ」
「だって伏黒!!!これは止めちゃ駄目だって!!」
「小僧、身体をよこせ。
今すぐにアイツを刻んでやる」
「オマエはややこしいから出てくんな!!!」
「野薔薇、オマエは賛成なのかよ」
「あんなに幸せそうな顔されたら邪魔すんのも馬鹿馬鹿しいし……名前さんに幸せになってもらいたいのは真希さんもですよね?」
「………まぁな」
「悟のこと貰ってくれんの名前くらいダロ」
「しゃけ」
「失恋だな、七海」
「とっくの昔にしてますよ。……まぁ、泣かせたら全力でぶん殴る理由は出来ましたね」
誰にも破れない約束を交わそう
ずっと離れないから
「みんなー!!僕ら、結婚しまっす!!」
神様でも
運命でも
邪魔できないくらい
「いいんですか、名前さん。
このクズが旦那って苦労しますよ?」
「マジ顔やめよ?めぐみん」
「そーだよ伏黒。
名前姉幸せに出来るの五条先生くらいだろうし、五条先生幸せに出来るのも名前姉だと思うよ」
「悠仁わかってるー!!」
「その代わり五条先生、名前姉傷つけたら術式切った状態のままで俺の全力の黒閃ね!!」
「え"っ」
きっと叶えてみせる
未来が微笑む恋の物語
「じゃあ私も黒閃決めるわ」
「魔虚羅喚びます」
「天逆鉾持ってくるな」
「ツナマヨ」
「全力でゴリラパンチだな!」
「潰させて頂きますね」
「その後私が切り落とすか」
「キミ達僕のこと何だと思ってんの?」
まだ、世界は闇に包まれている。
最大の敵を倒していないし
刺客も来るし
呪いが渦巻く世界だし
宿儺さんもいるし
私や悠仁くんの死刑は撤回されていないし
その他諸々解決していない。
けど……
私の世界は戻って来たし
私の世界の一部の皆も生きている。
この先、どうなるかはわからない。
もっと酷く辛い事が待ち受けているかもしれない。
それでもーー
「責任重大だね、ダーリン」
「沢山の人に愛されてて困るよ」
この人が一緒なら、大丈夫だと思える。
「愛してるよ、名前」
「私も、愛してる。悟」
キミと二人そっと、寄り添いながら
永久にずっとずっと笑顔のままで……。
「この物語の続きは?」
「楽しかった?」
「うん」
少しくたびれた本は何度も何度も読み聞かせた証だった。
「続きかー。続きはね、まだ完結してないんだ」
「なんで?」
「まだ、この物語は続いているからかな」
くすり、と笑う語る者。
聞いている者はふーん、と本を眺める。
「変わった本」
「だね。世界に一つしかない記録だからね」
ここに、記録を残そう。
面白可笑しく……他に誰が読むかわからないけれど。
題名はーーーそうだなぁ。
"通行人 A"
変な一般人と呪術師最強による世界が嫉妬する恋の物語だよ。
………その二人の結末?
そうだなぁ……
それはキミが読んでみればわかるよ。
あとがき
完結!!!!
読者の皆様。長きに渡り……本当にお付き合いありがとうございました!!
ちなみにこの最終話、絶対キンプリのアイプロミスの歌詞使おうって決めていました。
サビの部分聞いてめちゃくちゃ通行人と悟じゃん……!!って思って。
このイチャラブカップルは世界嫉妬するわ……とか一人で思ってました(笑)
この三章、渋谷事変と絡めようと決めて書いていましたが……まぁ、地獄。
予想外の地獄のオンパレードに手出ししたの間違えたな……と遠い目をしてしまいました。
なんてこった、ナナミン……。
真希ちゃんも野薔薇ちゃんも生死不明だし……。
救済しつつ、ギャグ入れて完結ってどうしたら出来るの?どこ目指せばいい?って思っていたので……。
渋谷事変も終わりが訪れ、そちらに合わせて無事……?無事、完結出来て良かったです。
ノリと勢いで書いてしまっているので、自分も忘れている伏線とかありまくりそう。
諸々荒いし雑過ぎるけど、ひとまずこれにて通行人シリーズは完結させようと思っています。
番外編はボチボチやっていきたいですね。
改めて通行人見返しながら、小話を書きたいと思っております。
沢山の応援と、沢山の愛おしいコメント。
本当にありがとうございます。
通行人シリーズを楽しんで頂けて書いている私としても皆さんと楽しむことが出来ました。
通行人を愛してくださった皆様、心より感謝しております。
通行人は完結いたしましたが、また連載を考えておりますので……その時はそちらも覗いてあげてください。
綺麗な白に目を奪われた。
空と海の境目のような蒼。
こんな綺麗な人がいるのだと、驚いた。
……まぁ、すぐに口の悪さと態度の悪さに
硝子ちゃんを口説きに行ったのだが。
普通と違う私。
その心細さを癒してくれた。
怖くて認めたくなかった世界を少しずつ"好き"で溢れさせてくれた。
ーーーすき。
幼馴染が、私の世界で
私の世界を理解してくれるような誰かに恋をして、誰かを愛せるのかな?
恋愛なんて夢物語。
嫁の貰い手が見つからないなら幼馴染に引き取って貰おうとか考えていた。
なのに……あっさりと私の心を奪った。
憎まれ口も
馬鹿にされるのも
雑に撫でられるのも
男女の友情。
話しやすく素の自分でいられるのが楽だった。
気付かないでいれば、楽でいられる。
私はこの気持ちを認めたくなくて蓋をした。
不器用に手を奪われ繋がれる強引さ
優しいキス
熱を持った瞳
大切なモノを恐る恐る触る手
私を愛おしいと笑う顔が
囁かれる愛の言葉が
五条悟という一人の男が私を魅了する。
好きだ、と思って後悔した。
離れた後に気付いた恋心を消化出来ずに随分遠回りをした。
友達が話していた恋の話は私にとって夢物語で、そんな気持ちになるくらい好きになるなんて……と、どこか鼻で笑っていた。
そんな苦しいなら、止めればいい。
そんな辛いなら、最初から気付かなければいい。
そう、簡単に割り切れると思っていたのに……。
いつも探す姿。
似た人と見間違い、悲しくなる。
関わりたくても勇気が出ない。
代わりの恋など、相手も自分も傷付いた。
厄介なこの恋を終わらせるには時間が必要で……私は逃げた。
どこにでもある思い出が私を苦しめるから。
どこにでもある幻が私を追い詰めるから。
最後の賭けを期待して
それでも駄目なら
ここで終わろうと思って逃げたのに………
「素直になったら僕をやるから
名前を僕にちょーだい」
離れたくないと思った。
私が欲しくてずっと見ないフリしていた現実を受け入れてもいいと思えるくらい……
悟が愛しくて、悟に恋をした。
ーー誰にも破れない約束を交わそう
ーーずっと離さないから
「名前、愛してる」
ーー神様でも運命でも
ーー邪魔出来ないくらい
世界を嫌っていた私に
世界を好きにさせてくれた悟
沢山のものを貰った。
私は自信を持って幸せだと言える。
だけど、まだまだ幸せになりたいんだよ。
私、悟に出会って欲張りになってしまったから
皆と、悟と、幸せになりたいって思ってしまったの。
勿論悟にも幸せになってもらいたい。
願わくば、もう一度。
世界の為でもなく
人々の為でもなく
私の為だけに
あれから、呪術界は大変になった。
オイルの言葉通り、オイルによって目覚めた呪術達がこちらの怪我人や人手不足など関係無いとでも言うように襲ってくるし。
身内や知り合いやらその他諸々精神的によろしくない人選で襲って来たので主に主戦力だった子供らの精神的負担とケアが大変だった。
改造呪霊ですら心抉られたのに、生身の悪意しかない洗脳された人間に襲われるってどんな地獄?
私は私で一応呪術師(仮)と扱われているが、そもそも呪術界の一般知識の学習と呪力の安定から始まりつつも、エグい任務に放り込まれ無傷で帰って来てた。呪詛師相手もあったが、出来るなら平和な解決を!!と声を高々に語り合ったりもした。ちなみにほぼお話通じないパターンなのでそこはほら……お話合いが物理へと変化しただけさ。相棒とエクスカリバー之助から黒い火花が散った。
悟曰く、腐った蜜柑共のじぃちゃん達に悠仁くんもろとも命狙われるし。
死刑死刑うるさいし、生徒のケアやら任務やらセクハラ・パワハラ、その他諸々で………ちょっと疲れていたんだ、うん。
呼び出されて入室の挨拶がてら破壊光線撃ち込んだ私、ワルクナイヨ。
「文句あるなら最前線で戦って、戦果残しながら生き残ってから言いなよ。
過去の栄光に振りかざして高みの見物?
ハッ!!錆びた刀を武器に偉そうにされても何も怖くねーわ。
未来ある子供にばかり責任と現場押し付けてないで今だからこそテメーらが見本となって動け!!
よりよい術式残したい?使わなきゃ意味無いだろ。
そんなに大切な術式と人間様ならガラスケースに入って永久保管されながらお口チャック!!
そもそも!!
寝かせろ!!休暇よこせ!!子供達に愛のある生活を!!!!
ブラック企業も真っ青なパワハラしてくる暇あるなら社員からそれ相応の仕返しあっても仕方ないよね?仕方ないね!!
お前ら覚えとけよ!!夜寝るとき布団の中に入ったら蒟蒻まみれでぬっちゃぬちゃな不快な思いする呪いかけとくからな!!今夜ぬっちゃぬちゃになって気分めっちゃ下がれ!!
砂糖と塩間違えた玉子焼き食え!!
靴の中にちっちゃい小石毎回入って、足の裏が地味に痛くなれ!!ハゲろ!!あ、禿げてたな……仕方ねぇから髪一本生える呪いしといてやんよ。私の慈悲に感謝しながら蒟蒻まみれの布団でぬっちゃぬちゃになりやがれ!!
嫌がらせを続けるのなら……OK。
話し合おうか」
この時何徹か忘れたがプッチンプリンでした。
眠たかった。
話し合い(破壊光線)決めッぞ。
………とまぁ、上層部相手に中指立ててぶちギレた私ワルクナイヨ(遠い目)
一緒に着いてきてくれた特級のボインのお姉さん……改め、九十九由基さんは爆笑して崩れ落ちていた。
戦国お伽草子かってレベルで混沌とした呪いの時代。
何度1号の火炎放射が火を吹き上層部の腐った蜜柑を焼き蜜柑にしそうになった事か。
……生焼け蜜柑で妥協はした。
最終手段は破壊光線だが、ここはポケモン世界じゃないので破壊光線が人間に撃ち込まれるとやな感じ〜!!どころでは済まないので、人間相手には物理的なお話合いの時に使用している。
大丈夫。ちょっとお股の間スレスレに風穴開いて玉ヒュンするくらい。人には、当ててないよ。
ね?おじいちゃん達?(にっこり)
ハロウィンのあの一件で失ったものは大きかった。
呪術師を引退する者や補助監督から降りた人も多い。
それでも……生きている。
七海くんや、東堂くんなど凄腕で呪術師の最前線を離脱しても子供達に自身の経験を、と育成の方に回る人もいた。
辛かった事もいっぱいあった。
何度も危ない目にあった。
崩れて泣いて駄目になりそうな日だってあった。
それでも、耐えた。
何度も持ち直した。
時に子供達に励まされ
時に七海くんに励まされ
時に宿儺さんに励まされ
その優しさと甘い囁きに何度も心が折れかけてもう、いいんじゃないか?と諦めてしまいそうになるたび……思い浮かぶ温もりは悟だけ。
歯を食いしばり、気合いを入れ直し、折れた心と頬にマジビンタして自分を奮い立たせた。
もう、悟無しじゃ生きていけないな、なんて馬鹿みたいに笑う。
惚れたもん負けだよね、恋ってさ。
だからーーーー
「なぁーにブッサイクな顔してんのさ」
愛しの悟くんですよー、なんて
現れやがった悟の顔面に思わずマジビンタ決めた私は悪くない。
「痛っっっった!!!!
復活した恋人の頬にマジビンタする奴いる!?」
「うっっっせーーーーわ、馬鹿野郎!!!
最強最強言ってたのにお姫様よろしく捕まってんじゃないわよ!!!」
「仕方ないじゃん!!僕、悪くない!!」
「知ってるわ!!悟悪くないけど、色々大変だったんだからマジビンタくらい受けろ!!」
「色々申し訳ないな、と思ったから受けたじゃん!!」
殴り出そうとした私を後ろから羽交い締めに引き留める七海くん。
目の前では悠仁くんがストップ!!ストップって止めている。
他の生徒はだよな、って感じで見守り体制。
頬に真っ赤な紅葉を作ってむくれる悟。
「ばーか!!ばか、ばーーーかっ!!」
「はいはい」
「私、頑張った!!!」
悟を見ていたいのに、視界が歪んでいく。
本当はもっと可愛く抱きついて甘えて会いたかったと伝えたいのに。
溢れる大粒の涙を乱暴に拭う。
もう、暴れないからと七海くんに解放されるが、生徒らと共にハラハラと見守られている。
「頑張ってたね。偉い偉い」
「もっと!!私を褒めて労って!!」
「どーしてほしいのさ」
「じゃないと七海くんの胸元に飛び込んで今すぐに婚姻届出して来てやる」
「準備万端ですよ」
「七海オマエふざけんなよ」
面倒臭い彼女感半端ねぇな。
止まらない涙を拭いながら悟を見上げる。
「悟」
「……よく、頑張ったね」
手を伸ばせば悟に抱き締められる。
ずっとずっと欲しかった温もりが消えてしまわないように力強く抱き締めた。
「悟……さとるっ」
「ただいま、名前」
「う"あ"あ"あ"あ"っ」
「すんげー泣くじゃん。わぁ、僕愛されてる」
「愛してるから泣いてんだろばーーーかっ!!」
子供みたいに泣く私を、子供みたいに無邪気に笑いながら抱き絞める悟。
世界はまだまだ何も解決していないけど……
私の世界が帰って来た。
「ちゃんと顔見せて」
「やだ」
「不細工でも愛してるから」
「自分の顔がいいからってナメてんじゃねーぞコンニャロッ!!」
「もっと見せてよ。
離れていた分、僕に名前を補充させて」
好き。
大好き。
愛してる。
他の誰かじゃ埋められない空白を、埋めてくれるたった一人。
「さとる……さとる、好き。大好き」
「うん」
「……もう、2度と離れないで」
「離さないよ」
悟の大きな手で頬を包まれる。
親指で涙を拭うが、私の涙が止まることはない。
大きな手にすり寄って、悟の手に自分の手を重ねる。
悟の生きている体温にやっとホッとした。
「ちゃんと戻って来たのにおかえりくらい言ってくれないの?」
「悟……好き」
「………」
「おか」
おかえり、と口にしようとした瞬間
悟に唇を重ねられた。
生徒の前だ、とか七海くんや硝子ちゃんや伊地知くんやらその他諸々の人々も居ると言うのに……。
「ちょっ……んっ、さと……」
「…………」
「ま、って……」
「やだ。待たねーよ」
「ち、ょっ………と」
めちゃくちゃ濃厚なのしてきやがった。
思わず腕をタップしても止められない止まらない悟の熱烈なキスの嵐。
「何してんすかアンタ」
「黙ってればイチャイチャイチャイチャ長ェんだよ!!」
めぐみんと真希ちゃんの特攻により邪魔された悟は舌打ち。
「キミら、ここは空気読んで恋人の逢瀬にそっといなくなるべきでしょ」
「クソな男には渡しません」
「クズな野郎に渡せるか」
「禪院の血筋は名前のセコムか騎士なの?」
「めぐみん……真希ちゃん……」
「トキメイてんじゃねーよ」
オイコラ、と頭を握られる。
あぁ、懐かしいな。
やっと戻って来れたーーって安心出来る。
悟の封印が解けた事により、呪術界にも希望が見えてきた。
打倒オイルを目標に、決着をつける。
けど、今はもう少しだけ……
この幸せを噛み締めさせてほしい。
「おかえり、悟」
「ただいま、名前」
ーーー人は……誰もが幸せになる権利を持っている。
「名前」
「なぁに?悟」
悟復活に宴会騒ぎをしようとしている皆。
こんな時代で騒ごうなんて……と思う人々はここにはいない。
誰もが明日を願って生きる。
明日、を迎えられない日が来るのがいつ訪れるかわからないからこそ……
辛くても
悲しくても
苦しくても
明日を生き抜くために今を精一杯楽しむ。
悟が私の左手を包み込むように握り締める。
やっとおさまってきた涙と鼻水。
名を呼ばれて悟を見れば、いつの間にか目隠しを外していた。
「僕さ、誰かに恋したのも愛しいと思ったのも名前が初めてなんだよね」
「私もだよ」
「愛ほど歪んだ呪いは無いーーって、思ってる」
「そうだね」
愛は人を良くも悪くも縛り付ける。
呪術師なら、尚更重いものとなる。
「それでもオマエを呪いたい……って言ったら名前は嫌?」
左手を絡めて、私の薬指にキスを落としながら此方を覗き込むように見つめる悟。
「僕はオマエを手離したくない。
この先、何があってもオマエと共に生きたい」
「……私、厄介な体質だよ?
前髪を取り戻したら……高専の結界から出られないかもしれないよ?」
「名前は高専の山で。僕は高専で。
共に生きよう」
「………それ、プロポーズのつもり?」
「好きだろ?ジブリ」
会いに行くどころか、囲って出さないよ?
なんて笑って言うから私は吹き出した。
「僕が居れば問題無いでしょ!
全て悟くんにお任せ!!」
「悟ならどうにかしてしまいそうだね」
「当たり前じゃん」
愛しい、と語る悟の目。
少し背伸びをして、悟の唇に自分の唇を重ねる。
「私と幸せになってくれる?」
「……勿論。
全世界が嫉妬するぐらい幸せにする」
「あらま、随分大きく言うのね」
「当たり前だろ。最強の僕に愛されるんだから……
結婚して。僕の奥さんになってください」
「喜んで。私と幸せになってください!」
悟の首に腕を回して抱きつけば、抱き締めてくれる。
「エンダァァァアアアアアアッ!!!」
「イヤァァアアアアアッ!!!」
「虎杖、釘崎。ヤメロ」
「だって伏黒!!!これは止めちゃ駄目だって!!」
「小僧、身体をよこせ。
今すぐにアイツを刻んでやる」
「オマエはややこしいから出てくんな!!!」
「野薔薇、オマエは賛成なのかよ」
「あんなに幸せそうな顔されたら邪魔すんのも馬鹿馬鹿しいし……名前さんに幸せになってもらいたいのは真希さんもですよね?」
「………まぁな」
「悟のこと貰ってくれんの名前くらいダロ」
「しゃけ」
「失恋だな、七海」
「とっくの昔にしてますよ。……まぁ、泣かせたら全力でぶん殴る理由は出来ましたね」
誰にも破れない約束を交わそう
ずっと離れないから
「みんなー!!僕ら、結婚しまっす!!」
神様でも
運命でも
邪魔できないくらい
「いいんですか、名前さん。
このクズが旦那って苦労しますよ?」
「マジ顔やめよ?めぐみん」
「そーだよ伏黒。
名前姉幸せに出来るの五条先生くらいだろうし、五条先生幸せに出来るのも名前姉だと思うよ」
「悠仁わかってるー!!」
「その代わり五条先生、名前姉傷つけたら術式切った状態のままで俺の全力の黒閃ね!!」
「え"っ」
きっと叶えてみせる
未来が微笑む恋の物語
「じゃあ私も黒閃決めるわ」
「魔虚羅喚びます」
「天逆鉾持ってくるな」
「ツナマヨ」
「全力でゴリラパンチだな!」
「潰させて頂きますね」
「その後私が切り落とすか」
「キミ達僕のこと何だと思ってんの?」
まだ、世界は闇に包まれている。
最大の敵を倒していないし
刺客も来るし
呪いが渦巻く世界だし
宿儺さんもいるし
私や悠仁くんの死刑は撤回されていないし
その他諸々解決していない。
けど……
私の世界は戻って来たし
私の世界の一部の皆も生きている。
この先、どうなるかはわからない。
もっと酷く辛い事が待ち受けているかもしれない。
それでもーー
「責任重大だね、ダーリン」
「沢山の人に愛されてて困るよ」
この人が一緒なら、大丈夫だと思える。
「愛してるよ、名前」
「私も、愛してる。悟」
キミと二人そっと、寄り添いながら
永久にずっとずっと笑顔のままで……。
「この物語の続きは?」
「楽しかった?」
「うん」
少しくたびれた本は何度も何度も読み聞かせた証だった。
「続きかー。続きはね、まだ完結してないんだ」
「なんで?」
「まだ、この物語は続いているからかな」
くすり、と笑う語る者。
聞いている者はふーん、と本を眺める。
「変わった本」
「だね。世界に一つしかない記録だからね」
ここに、記録を残そう。
面白可笑しく……他に誰が読むかわからないけれど。
題名はーーーそうだなぁ。
"通行人 A"
変な一般人と呪術師最強による世界が嫉妬する恋の物語だよ。
………その二人の結末?
そうだなぁ……
それはキミが読んでみればわかるよ。
あとがき
完結!!!!
読者の皆様。長きに渡り……本当にお付き合いありがとうございました!!
ちなみにこの最終話、絶対キンプリのアイプロミスの歌詞使おうって決めていました。
サビの部分聞いてめちゃくちゃ通行人と悟じゃん……!!って思って。
このイチャラブカップルは世界嫉妬するわ……とか一人で思ってました(笑)
この三章、渋谷事変と絡めようと決めて書いていましたが……まぁ、地獄。
予想外の地獄のオンパレードに手出ししたの間違えたな……と遠い目をしてしまいました。
なんてこった、ナナミン……。
真希ちゃんも野薔薇ちゃんも生死不明だし……。
救済しつつ、ギャグ入れて完結ってどうしたら出来るの?どこ目指せばいい?って思っていたので……。
渋谷事変も終わりが訪れ、そちらに合わせて無事……?無事、完結出来て良かったです。
ノリと勢いで書いてしまっているので、自分も忘れている伏線とかありまくりそう。
諸々荒いし雑過ぎるけど、ひとまずこれにて通行人シリーズは完結させようと思っています。
番外編はボチボチやっていきたいですね。
改めて通行人見返しながら、小話を書きたいと思っております。
沢山の応援と、沢山の愛おしいコメント。
本当にありがとうございます。
通行人シリーズを楽しんで頂けて書いている私としても皆さんと楽しむことが出来ました。
通行人を愛してくださった皆様、心より感謝しております。
通行人は完結いたしましたが、また連載を考えておりますので……その時はそちらも覗いてあげてください。