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「2号、破壊光線」
改造呪霊を光線で撃ち抜く2号。
「便利ですね」
「この子で何級くらいなんだろ?」
「少なくとも一級相当かと」
七海くんもビックリな2号の威力。
褒めて褒めて、と頭を擦り付けてくるのでめちゃくちゃ撫でた。
やぁ!私、通行人名前!!
今はね七海くんと地下へ向かう途中なの!!
「オ、マエ……!?」
「やっほー、真希ちゃん」
真希ちゃんとそのおじいちゃんと、合流。
私を見て驚く真希ちゃん。
そんなお顔初めて見たので
「会いたかった……真希ちゃ」
「何、捕まって普通に合流してんだオマエ!!」
「あだっ」
スパーンッて頭を叩かれた。
一瞬呪い達がザワついた。
真希ちゃんだけじゃなく七海くんもおじいちゃんもスイッチを切り替えるように呪い達を見るが、私が視線を送れば大人しくなる。
「ごめんねぇ、心配かけて」
私の反応に真希ちゃんは複雑そうな顔をしている。
あぁ、本当に優しい子。
「………ソレは?」
「私の子達だから気にしないで。
あ、でもあまり刺激はしないでね」
全てを話すには優先事項を終わらせてから。
それを解ってるから真希ちゃんは何も聞かなかった。
「………何で来たんだよ」
「行かなきゃいけない気がしたから」
私よりも苦しそうな顔をする真希ちゃん。
野薔薇ちゃんにも相当心配かけて辛そうな顔をさせてしまった。
私は大人失格だな。
真希ちゃんに抱き付くと、少し強めに抱き締められた。
涙が出そうなくらい、嬉しかった。
こんな私でも受け入れてくれる人達がいる心強さ。
「もういいですか?行きますよ」
「七海くん、感動の再会中だよ」
「私も参加してあげますから全て終わってからにしてください」
七海くんが悠仁くんから聞いた情報を真希ちゃんと禪院家当主に話す。
「五条悟が封印か……狐につままれたようだ」
「私もです。ただ偽物とはいえ夏油さんが絡んでる。その辺りに種があるのかと。名前さん的には?」
「見た目は夏油傑だよ。中身は全くの別物だけど、何で高専の事情に詳しいのかはわからない」
記憶まで受け継いでいるとは思えないが、限り無く夏油傑に近付けているオイル。
まるで、夏油傑に成り代わるために彼をずっと観察していたみたいに。
関わる者からすれば違和感を僅かに感じられるレベル。
「ただ、アイツは気持ちが悪い」
人を小馬鹿にして、呪いも小馬鹿にしている。
「俺としてはこのまま五条家の衰退を肴に一杯…」
「やる気がねぇなら帰れよ」
「帰れ……か。それは真希オマエの方だろ。
なあ、七海1級呪術師殿」
「真希さん、これに関しては直毘人さんの言う通りに」
「酔っ払いよりは役に立つさ」
「飲んでるんですか?」
「飲んれらいよア"ッ」
「完全に酔ってる奴の返しじゃん」
大丈夫か?コレ?
駅のホームは静まり返っており、血の跡はあるものの人が見当たらない。
七海くんと真希ちゃんが何かに気付いて武具を手に取る。
柱の影から此方を覗くのは陀艮ちゃんの姿。
私より後ろにいたはずの当主さんが、いつの間にやら陀艮ちゃんを謎のシールドに閉じ込めており、思いっきりぶん殴っていた。
え?酔っぱらいなのに強くない?
睡拳?酔拳?
ってか呪術師って悟以外お酒強くない?
………あ、めぐみんは弱そう。
なーんて違う事考えてたら
殴られた勢いで陀艮ちゃんは思いっきり嘔吐。
すごい量の人骨が。
「じょうごぉ、まひとぉ、はなみぃ」
「えっ?陀艮ちゃん話せたの!?」
私一緒にいたのにずっとぶぅーぷーって鳴いてたじゃん!!!!
「はなみぃ
よくも、よくも花御を殺したな!!」
皮を脱ぎ捨てた陀艮ちゃん。
えっ?あの可愛かった赤ちゃんのような陀艮ちゃんが……!?
「成程、弱いハズだ。
まだ受胎だったというわけか」
「どなたですか!!?」
何あれ?象なの?タコなの?グソクムシ?
何というか……
「もう一度皮被って欲しい」
「名前さん黙ってください」
「黙れアホ」
すまん。
けど言わせてほしい……!!
陀艮ちゃん……いや、もうあれ陀艮さんだろ。
指先に水の玉らしきものを集めると、なぜか私目掛けて水の玉落としてきたからホームが一気にウォータースライダーに。
ちょっ、こちとらそんな激流に耐えられませんって。
私、こんなんでも普通の一般人!!!
………つまり?
意図していたのかしていなかったのかわからないが……陀艮ちゃんの放水により、あの場から強制リタイアさせられました役立たずです。
前回気合い入れたのにごめんね!
一般人の本気ってこんなもんだよ!!
火事場のくそ力って発揮出来ない事もあるんだね!!
水に立ち向かうには人間ってちっぽけなんだよ!!知ってる!?人は5センチの水溜まりで逝けるんだよ!?
「ゲッホ、ゴホッ」
めちゃくちゃ水飲んだし、一瞬の激流に思いっきり床に頭ぶつけて意識飛んでたんだけど……。
あれだけ啖呵切って着いてきたのにこの様です。
一般人が戦場に踏み入れるとどうなるか……こうなります。
即リタイアですよー。
やだ、恥ずかし。
まじで私恥ずかし過ぎない?
ちょっとまだ鼻にも水入ってツーンとするし、まだ噎せ込んでるし、服びちょびちょに濡れているのが不愉快だよ。
頭のタンコブ以外は無事です。
「で、これどんな状況?」
「起きたか」
目の前に宿儺さんがいる。
何度も咳き込んで喉が痛い。
まっっったく理解出来ないのだが?
私の気絶中に何が起こったの?
そんでなぜ私は宿儺さんに片手で抱かれてんの?
「勝手に死ぬな」
「え?私死んでた?」
「弱いな。死にかけていたぞ」
ハッ、と鼻で笑われてもなぁ……。
我、一般人ぞ?
陀艮さんの水流MEGAMAXに生身の人間が耐えられるのは熟練の技が必要かと。
私はまだお転婆人魚にはなれません。
まだ止まらない咳と鼻水にかなり水飲んだんだと思う。
「ここ、どこ?」
「知らん」
「ん?漏瑚さん頭どうしたの?切り取られてるぞ」
「オマエ……なぜ」
驚いた顔の漏瑚さん。
ん?何か変なことあった?
宿儺さんの腕を叩いて下ろして貰うが、足元に真新しい死体があって視線を逸らす。
「………あれ?そういや何で宿儺さんなの?」
「今更だな」
めちゃくちゃ呆れた顔をされたが、悠仁くんどうなってんの?
もしかしなくてもヤバいのでは?と思っていたら呪い達がわらわら湧き出てきた。
まるで心配していた、とでも言うようにすり寄る呪い達を一撫でする。
「加護は消えたか」
「消えちゃった」
「ケヒッ、呪いと共に歩むとでも言いかねん顔だな」
「できたら、だけどね」
宿儺さんは楽しそうに笑っている。
「オマエが宿儺のっ!!」
「黙れ」
漏瑚さんが何か言おうとしていたのをたった一言で黙らせる宿儺さん。
いつ切り取ったのかわからないうちに反対の腕まで切り取られていた。
「次は許さん」
ぼっ、と漏瑚さんの腕を燃やす宿儺さん。
まじパネェ……私何でこんな人?呪い?に気に入られてんだ?
「オマエも簡単に死ぬな、愚か者」
「宿儺さんの許可いる?」
「オマエは俺のだ」
「いえ、違います」
勝手に記憶捏造しないでください。
私とあなたの間には何もありませんから。
「いいや、俺のだ。
オマエが望んだ願いを叶えてやった時からな」
「知らんわそんな願い。ごめんね?」
「人間の世なぞ捨てて共に来い。
オマエが傷付く世界にわざわざ行く必要はない」
じっと此方を見下ろす宿儺さん。
この物言いだと宿儺さんは私が傷付くのを良しとしていないどころか、俺が守ったるって感じだよね?
え?つか……
「宿儺さん、私のこと大事なの?」
「どうでも良い」
「え?じゃあ私もう行くよ?
いい子だからそろそろ宿儺さんも悠仁くんに身体返すんだよ」
「駄目だ」
「ストップストップ。その物騒な爪の鋭さで首刺すの良くないと思いまーす!死にます!」
「行くな」
「えー」
この我が儘っ子どうにかならない?
漏瑚さんを見たら、ポッポー寸前だ。
けど宿儺さんが威圧してるから待てくらった犬みたくなってる。
「己の力も理解しておらぬのに死地に行くなどアホの極み」
「ですね。まぁ、それでも私はアホの極みだから行きますけど」
「許さん」
悠仁くんフェイスで威圧されると怖いんだよ。
いつもニコニコ顔がデフォルトの悠仁くんやぞ?
そんな子が真顔になる瞬間ほど怖いものはないんだぞ?
「オマエが愚かな人間側につく理由などないだろう」
「めちゃくちゃあるよ」
だって私の世界を変えてくれた人々がいる。
私の大切な世界の一部である人々がいる。
「全人類、とまでは言えないけど……私は人が好き」
「………愚か者」
「私は悟の為に死んでくるよ」
「そうまでしてあの男がいいか?」
「うん。大好きだから」
愛した人の為に
大好きな人々の為に
「私は私の幸せの為に生きたい」
納得のいかない宿儺さん。
子供みたいに拗ねる姿が可愛らしく思える。
「だからいくね」
「頭が足りんのは変わらんな」
「大丈夫!次、はうまくやるから」
「次はないぞ」
「あははは!頑張ってみるから宿儺さんは安心して悠仁くんに身体を戻せばいいと思う」
「失敗して諦めろ」
「諦めないよ。だって私、諦めが悪いから」
にっ、と笑えば宿儺さんにでこぴんされる。
おまっ、呪いのでこぴん痛いんだからな!!!まじふざけんなよ!!
睨み付ければしっし、と追い払われる。
「さっさと逝け」
「心配なら心配って言ってくれたら投げキッスくらいするのに」
「いらん」
「じゃあ、またね」
「………愚か者が」
走り出す私。
どこに行けば良いのかわからないが、そもそも呪術師にとって一番戦いにくい状況は一般人がいることだ。
悟のいる地下の人間全てを運び出すのは簡単ではない。
呪霊を使ってどうにか出来そう……いや、一般人が呪いに触れたら良くないだろ。
下手すりゃ呪いに当てられ無駄に怪我人増やすだけだ。
さーて、何が出来る?何をすべきだ?と
考えながら走っていたら……
「……真希ちゃん?七海くん…おじいさん……」
倒れている三人。
明らかに重症を越えている怪我。
肉の焦げた臭いに唇を噛み締める。
今、私が従えている中で飛び抜けて強そうなのは三体。
その他は私でも祓えるようなレベルだ。
三人の様子を素早く確認する。
息は浅いものの、まだ生きている。
見た目は重度の火傷だが、完全に焼かれなかったからこそまだ今息がある。
「みんな、お願い」
力を貸してーーー
そっと真希ちゃんの手を握る。
イメージしろ。
集中して感じろ!
呪いの呪力は加護が外れた時点で何となく感じ取れている。
オーラを身に纏うイメージはハンター志望だった頃もあるから完璧にマスター済みだ。
水見式もやったけど、私はきっと特質系。
これから特別な変化出るって信じて数十年。
これからも待つよ!!キメラ後から文字数多くて流し読みしたから内容曖昧だけど、待ってるよ!!
その呪力を私の身体へと流し、自身の中に渦巻く呪力を意識する。
「死なないで、真希ちゃん」
マイナスとマイナスを掛け合わせればプラスになる。
そんな事は小学校?いや中学か?で習ったから簡単だ!!
私なら出来る!!
今こそ発揮せよ……目覚めろ、私の特質系オーラ!!
「生きて」
パァッ、と淡い光に包まれた真希ちゃん。
焦げた肉がうっすらと元の皮膚へと戻っていく。
浅い呼吸から、大きく安定した呼吸へ。
震える手で真希ちゃんの頬に触れれば……ほんのりと温かな体温に泣きたくなった。
当主と七海くんも同じように行えば、傷は残っているもののある程度の回復は行った。
「3号!」
飛べる呪霊を呼べば待っていましたとばかりに身を屈めてくれる。
1号や2号にも手伝ってもらい、真希ちゃんと当主を乗せたところで七海くんが起きていた。
「……私は」
「七海くん、無事!?痛いとこは!?」
「名前さん……貴女、無事で」
「平気!!それより七海くんも早く乗って。硝子ちゃんのとこに」
「私よりもその二人を」
「けど」
「全員は乗れないでしょう?意識の無い二人をお願いします」
確かに七海くんの言葉通りではある。
「七海くん、絶対無理しないこと。
すぐ戻って来るから」
「………」
「絶対絶対絶対駄目だからね!!
2号、お願いだから七海くん見張ってて。無理して動き出すと思うから容赦なく七海くんに襲いかかる呪い蹴散らしてね」
ニヤニヤと頷く2号の頭を撫でる。
「名前さん」
「何!?」
「……以前、貴女が好きだったと言いましたが」
「ハイハイハイ!!!そーゆー死亡フラグやめようね!!そんなフラグ叩き折る!!」
「そこは聞いてください」
「言って死なれたらこっちの情緒どーしろと!?
そんなに私に告白したいなら、生きて告白してくんないかなぁ!?」
「ロマンの欠片も無いやり取りですね」
君は何を求めてるの!?
死に際に告白とかだいたい生き残れないやつだからね!!
そのままあと一歩でヒロインの目の前で笑顔で散っちゃうやつね!!
君は満足だろうけど、ヒロインはただのトラウマだからな!!
「ちなみにその時は悟がむちゃくちゃ圧力凄いからね!!あの人めちゃくちゃヤキモチ焼きだし、独占欲強いから七海くん嫌がらせ覚悟しながら告白してこいやっ!!」
「……ハハッ」
「笑うとこおかしいよ!?」
そのフラグいらないからね!!
そうやって数ある漫画のサブキャラは笑って逝くんだぞ?
私、知ってる!!
「好きですよ。貴女のそういうところが」
「バッカヤロー!!」
「友人として」
「知ってますぅー!!私も友人として七海くん大好きですぅー!!
だから、死んだらまじ許さん!!」
「ほら、早く二人をお願いします」
「2号!!本気で七海くん殺そうとする呪い共全員に破壊光線許可するから!!蹴散らせ!!」
"ギャゥワッ"
「覚えてろよ!!大人しくしていなかったら私七海くんにも容赦なく飛び蹴りからの鼻フックすっからね!!」
くすり、と笑っている七海くん。
3号の背に乗り浮き上がる。
「絶対死なないでよ!!」
3号が飛び立ち、外へ。
硝子ちゃんの待機する高速料金所へ。
「ごめん!!この二人よろしく!!」
学長の呪骸に二人を預け、再び3号の背に。
誰も失いたくない。
これは、私の我が儘だ。
あとがき
終わりが見えないので救済開始。
高専関係者は出来るだけ誰も死なせぬぇっ!!
次回「いやぁ、手を出さん方がいい。チビでも狂暴だ」
通行人、いっきまーーーす(飛び蹴りスタンバイ)
改造呪霊を光線で撃ち抜く2号。
「便利ですね」
「この子で何級くらいなんだろ?」
「少なくとも一級相当かと」
七海くんもビックリな2号の威力。
褒めて褒めて、と頭を擦り付けてくるのでめちゃくちゃ撫でた。
やぁ!私、通行人名前!!
今はね七海くんと地下へ向かう途中なの!!
「オ、マエ……!?」
「やっほー、真希ちゃん」
真希ちゃんとそのおじいちゃんと、合流。
私を見て驚く真希ちゃん。
そんなお顔初めて見たので
「会いたかった……真希ちゃ」
「何、捕まって普通に合流してんだオマエ!!」
「あだっ」
スパーンッて頭を叩かれた。
一瞬呪い達がザワついた。
真希ちゃんだけじゃなく七海くんもおじいちゃんもスイッチを切り替えるように呪い達を見るが、私が視線を送れば大人しくなる。
「ごめんねぇ、心配かけて」
私の反応に真希ちゃんは複雑そうな顔をしている。
あぁ、本当に優しい子。
「………ソレは?」
「私の子達だから気にしないで。
あ、でもあまり刺激はしないでね」
全てを話すには優先事項を終わらせてから。
それを解ってるから真希ちゃんは何も聞かなかった。
「………何で来たんだよ」
「行かなきゃいけない気がしたから」
私よりも苦しそうな顔をする真希ちゃん。
野薔薇ちゃんにも相当心配かけて辛そうな顔をさせてしまった。
私は大人失格だな。
真希ちゃんに抱き付くと、少し強めに抱き締められた。
涙が出そうなくらい、嬉しかった。
こんな私でも受け入れてくれる人達がいる心強さ。
「もういいですか?行きますよ」
「七海くん、感動の再会中だよ」
「私も参加してあげますから全て終わってからにしてください」
七海くんが悠仁くんから聞いた情報を真希ちゃんと禪院家当主に話す。
「五条悟が封印か……狐につままれたようだ」
「私もです。ただ偽物とはいえ夏油さんが絡んでる。その辺りに種があるのかと。名前さん的には?」
「見た目は夏油傑だよ。中身は全くの別物だけど、何で高専の事情に詳しいのかはわからない」
記憶まで受け継いでいるとは思えないが、限り無く夏油傑に近付けているオイル。
まるで、夏油傑に成り代わるために彼をずっと観察していたみたいに。
関わる者からすれば違和感を僅かに感じられるレベル。
「ただ、アイツは気持ちが悪い」
人を小馬鹿にして、呪いも小馬鹿にしている。
「俺としてはこのまま五条家の衰退を肴に一杯…」
「やる気がねぇなら帰れよ」
「帰れ……か。それは真希オマエの方だろ。
なあ、七海1級呪術師殿」
「真希さん、これに関しては直毘人さんの言う通りに」
「酔っ払いよりは役に立つさ」
「飲んでるんですか?」
「飲んれらいよア"ッ」
「完全に酔ってる奴の返しじゃん」
大丈夫か?コレ?
駅のホームは静まり返っており、血の跡はあるものの人が見当たらない。
七海くんと真希ちゃんが何かに気付いて武具を手に取る。
柱の影から此方を覗くのは陀艮ちゃんの姿。
私より後ろにいたはずの当主さんが、いつの間にやら陀艮ちゃんを謎のシールドに閉じ込めており、思いっきりぶん殴っていた。
え?酔っぱらいなのに強くない?
睡拳?酔拳?
ってか呪術師って悟以外お酒強くない?
………あ、めぐみんは弱そう。
なーんて違う事考えてたら
殴られた勢いで陀艮ちゃんは思いっきり嘔吐。
すごい量の人骨が。
「じょうごぉ、まひとぉ、はなみぃ」
「えっ?陀艮ちゃん話せたの!?」
私一緒にいたのにずっとぶぅーぷーって鳴いてたじゃん!!!!
「はなみぃ
よくも、よくも花御を殺したな!!」
皮を脱ぎ捨てた陀艮ちゃん。
えっ?あの可愛かった赤ちゃんのような陀艮ちゃんが……!?
「成程、弱いハズだ。
まだ受胎だったというわけか」
「どなたですか!!?」
何あれ?象なの?タコなの?グソクムシ?
何というか……
「もう一度皮被って欲しい」
「名前さん黙ってください」
「黙れアホ」
すまん。
けど言わせてほしい……!!
陀艮ちゃん……いや、もうあれ陀艮さんだろ。
指先に水の玉らしきものを集めると、なぜか私目掛けて水の玉落としてきたからホームが一気にウォータースライダーに。
ちょっ、こちとらそんな激流に耐えられませんって。
私、こんなんでも普通の一般人!!!
………つまり?
意図していたのかしていなかったのかわからないが……陀艮ちゃんの放水により、あの場から強制リタイアさせられました役立たずです。
前回気合い入れたのにごめんね!
一般人の本気ってこんなもんだよ!!
火事場のくそ力って発揮出来ない事もあるんだね!!
水に立ち向かうには人間ってちっぽけなんだよ!!知ってる!?人は5センチの水溜まりで逝けるんだよ!?
「ゲッホ、ゴホッ」
めちゃくちゃ水飲んだし、一瞬の激流に思いっきり床に頭ぶつけて意識飛んでたんだけど……。
あれだけ啖呵切って着いてきたのにこの様です。
一般人が戦場に踏み入れるとどうなるか……こうなります。
即リタイアですよー。
やだ、恥ずかし。
まじで私恥ずかし過ぎない?
ちょっとまだ鼻にも水入ってツーンとするし、まだ噎せ込んでるし、服びちょびちょに濡れているのが不愉快だよ。
頭のタンコブ以外は無事です。
「で、これどんな状況?」
「起きたか」
目の前に宿儺さんがいる。
何度も咳き込んで喉が痛い。
まっっったく理解出来ないのだが?
私の気絶中に何が起こったの?
そんでなぜ私は宿儺さんに片手で抱かれてんの?
「勝手に死ぬな」
「え?私死んでた?」
「弱いな。死にかけていたぞ」
ハッ、と鼻で笑われてもなぁ……。
我、一般人ぞ?
陀艮さんの水流MEGAMAXに生身の人間が耐えられるのは熟練の技が必要かと。
私はまだお転婆人魚にはなれません。
まだ止まらない咳と鼻水にかなり水飲んだんだと思う。
「ここ、どこ?」
「知らん」
「ん?漏瑚さん頭どうしたの?切り取られてるぞ」
「オマエ……なぜ」
驚いた顔の漏瑚さん。
ん?何か変なことあった?
宿儺さんの腕を叩いて下ろして貰うが、足元に真新しい死体があって視線を逸らす。
「………あれ?そういや何で宿儺さんなの?」
「今更だな」
めちゃくちゃ呆れた顔をされたが、悠仁くんどうなってんの?
もしかしなくてもヤバいのでは?と思っていたら呪い達がわらわら湧き出てきた。
まるで心配していた、とでも言うようにすり寄る呪い達を一撫でする。
「加護は消えたか」
「消えちゃった」
「ケヒッ、呪いと共に歩むとでも言いかねん顔だな」
「できたら、だけどね」
宿儺さんは楽しそうに笑っている。
「オマエが宿儺のっ!!」
「黙れ」
漏瑚さんが何か言おうとしていたのをたった一言で黙らせる宿儺さん。
いつ切り取ったのかわからないうちに反対の腕まで切り取られていた。
「次は許さん」
ぼっ、と漏瑚さんの腕を燃やす宿儺さん。
まじパネェ……私何でこんな人?呪い?に気に入られてんだ?
「オマエも簡単に死ぬな、愚か者」
「宿儺さんの許可いる?」
「オマエは俺のだ」
「いえ、違います」
勝手に記憶捏造しないでください。
私とあなたの間には何もありませんから。
「いいや、俺のだ。
オマエが望んだ願いを叶えてやった時からな」
「知らんわそんな願い。ごめんね?」
「人間の世なぞ捨てて共に来い。
オマエが傷付く世界にわざわざ行く必要はない」
じっと此方を見下ろす宿儺さん。
この物言いだと宿儺さんは私が傷付くのを良しとしていないどころか、俺が守ったるって感じだよね?
え?つか……
「宿儺さん、私のこと大事なの?」
「どうでも良い」
「え?じゃあ私もう行くよ?
いい子だからそろそろ宿儺さんも悠仁くんに身体返すんだよ」
「駄目だ」
「ストップストップ。その物騒な爪の鋭さで首刺すの良くないと思いまーす!死にます!」
「行くな」
「えー」
この我が儘っ子どうにかならない?
漏瑚さんを見たら、ポッポー寸前だ。
けど宿儺さんが威圧してるから待てくらった犬みたくなってる。
「己の力も理解しておらぬのに死地に行くなどアホの極み」
「ですね。まぁ、それでも私はアホの極みだから行きますけど」
「許さん」
悠仁くんフェイスで威圧されると怖いんだよ。
いつもニコニコ顔がデフォルトの悠仁くんやぞ?
そんな子が真顔になる瞬間ほど怖いものはないんだぞ?
「オマエが愚かな人間側につく理由などないだろう」
「めちゃくちゃあるよ」
だって私の世界を変えてくれた人々がいる。
私の大切な世界の一部である人々がいる。
「全人類、とまでは言えないけど……私は人が好き」
「………愚か者」
「私は悟の為に死んでくるよ」
「そうまでしてあの男がいいか?」
「うん。大好きだから」
愛した人の為に
大好きな人々の為に
「私は私の幸せの為に生きたい」
納得のいかない宿儺さん。
子供みたいに拗ねる姿が可愛らしく思える。
「だからいくね」
「頭が足りんのは変わらんな」
「大丈夫!次、はうまくやるから」
「次はないぞ」
「あははは!頑張ってみるから宿儺さんは安心して悠仁くんに身体を戻せばいいと思う」
「失敗して諦めろ」
「諦めないよ。だって私、諦めが悪いから」
にっ、と笑えば宿儺さんにでこぴんされる。
おまっ、呪いのでこぴん痛いんだからな!!!まじふざけんなよ!!
睨み付ければしっし、と追い払われる。
「さっさと逝け」
「心配なら心配って言ってくれたら投げキッスくらいするのに」
「いらん」
「じゃあ、またね」
「………愚か者が」
走り出す私。
どこに行けば良いのかわからないが、そもそも呪術師にとって一番戦いにくい状況は一般人がいることだ。
悟のいる地下の人間全てを運び出すのは簡単ではない。
呪霊を使ってどうにか出来そう……いや、一般人が呪いに触れたら良くないだろ。
下手すりゃ呪いに当てられ無駄に怪我人増やすだけだ。
さーて、何が出来る?何をすべきだ?と
考えながら走っていたら……
「……真希ちゃん?七海くん…おじいさん……」
倒れている三人。
明らかに重症を越えている怪我。
肉の焦げた臭いに唇を噛み締める。
今、私が従えている中で飛び抜けて強そうなのは三体。
その他は私でも祓えるようなレベルだ。
三人の様子を素早く確認する。
息は浅いものの、まだ生きている。
見た目は重度の火傷だが、完全に焼かれなかったからこそまだ今息がある。
「みんな、お願い」
力を貸してーーー
そっと真希ちゃんの手を握る。
イメージしろ。
集中して感じろ!
呪いの呪力は加護が外れた時点で何となく感じ取れている。
オーラを身に纏うイメージはハンター志望だった頃もあるから完璧にマスター済みだ。
水見式もやったけど、私はきっと特質系。
これから特別な変化出るって信じて数十年。
これからも待つよ!!キメラ後から文字数多くて流し読みしたから内容曖昧だけど、待ってるよ!!
その呪力を私の身体へと流し、自身の中に渦巻く呪力を意識する。
「死なないで、真希ちゃん」
マイナスとマイナスを掛け合わせればプラスになる。
そんな事は小学校?いや中学か?で習ったから簡単だ!!
私なら出来る!!
今こそ発揮せよ……目覚めろ、私の特質系オーラ!!
「生きて」
パァッ、と淡い光に包まれた真希ちゃん。
焦げた肉がうっすらと元の皮膚へと戻っていく。
浅い呼吸から、大きく安定した呼吸へ。
震える手で真希ちゃんの頬に触れれば……ほんのりと温かな体温に泣きたくなった。
当主と七海くんも同じように行えば、傷は残っているもののある程度の回復は行った。
「3号!」
飛べる呪霊を呼べば待っていましたとばかりに身を屈めてくれる。
1号や2号にも手伝ってもらい、真希ちゃんと当主を乗せたところで七海くんが起きていた。
「……私は」
「七海くん、無事!?痛いとこは!?」
「名前さん……貴女、無事で」
「平気!!それより七海くんも早く乗って。硝子ちゃんのとこに」
「私よりもその二人を」
「けど」
「全員は乗れないでしょう?意識の無い二人をお願いします」
確かに七海くんの言葉通りではある。
「七海くん、絶対無理しないこと。
すぐ戻って来るから」
「………」
「絶対絶対絶対駄目だからね!!
2号、お願いだから七海くん見張ってて。無理して動き出すと思うから容赦なく七海くんに襲いかかる呪い蹴散らしてね」
ニヤニヤと頷く2号の頭を撫でる。
「名前さん」
「何!?」
「……以前、貴女が好きだったと言いましたが」
「ハイハイハイ!!!そーゆー死亡フラグやめようね!!そんなフラグ叩き折る!!」
「そこは聞いてください」
「言って死なれたらこっちの情緒どーしろと!?
そんなに私に告白したいなら、生きて告白してくんないかなぁ!?」
「ロマンの欠片も無いやり取りですね」
君は何を求めてるの!?
死に際に告白とかだいたい生き残れないやつだからね!!
そのままあと一歩でヒロインの目の前で笑顔で散っちゃうやつね!!
君は満足だろうけど、ヒロインはただのトラウマだからな!!
「ちなみにその時は悟がむちゃくちゃ圧力凄いからね!!あの人めちゃくちゃヤキモチ焼きだし、独占欲強いから七海くん嫌がらせ覚悟しながら告白してこいやっ!!」
「……ハハッ」
「笑うとこおかしいよ!?」
そのフラグいらないからね!!
そうやって数ある漫画のサブキャラは笑って逝くんだぞ?
私、知ってる!!
「好きですよ。貴女のそういうところが」
「バッカヤロー!!」
「友人として」
「知ってますぅー!!私も友人として七海くん大好きですぅー!!
だから、死んだらまじ許さん!!」
「ほら、早く二人をお願いします」
「2号!!本気で七海くん殺そうとする呪い共全員に破壊光線許可するから!!蹴散らせ!!」
"ギャゥワッ"
「覚えてろよ!!大人しくしていなかったら私七海くんにも容赦なく飛び蹴りからの鼻フックすっからね!!」
くすり、と笑っている七海くん。
3号の背に乗り浮き上がる。
「絶対死なないでよ!!」
3号が飛び立ち、外へ。
硝子ちゃんの待機する高速料金所へ。
「ごめん!!この二人よろしく!!」
学長の呪骸に二人を預け、再び3号の背に。
誰も失いたくない。
これは、私の我が儘だ。
あとがき
終わりが見えないので救済開始。
高専関係者は出来るだけ誰も死なせぬぇっ!!
次回「いやぁ、手を出さん方がいい。チビでも狂暴だ」
通行人、いっきまーーーす(飛び蹴りスタンバイ)