夏油
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※グロい表現あり
それでも良い方のみどうぞ
学生時代、不思議な体験をした。
テレビを見てアイドルを
人の多い街並みの中の1人を
好きだな、とか
格好いい、とか
気楽に口にしながら
友達と学校で騒いでいた。
いつもと同じ毎日がくることを疑わなかったし
"また明日"
と、当たり前に言っていた言葉が
当たり前ではないのだと
今日この日、初めて気付いた。
ナニ、かはわからない。
けれど
ナニカ、はそこにいた。
「ひっ・・・ふっ・・・ひゅっ」
恐怖で呼吸の仕方を忘れ
不規則になりながらも必死に息をする。
必死に息を押し殺し
出来る限りの音を消したかったが
自分の意思とは反対に、喉がきゅっと鳴る。
自分の本能なのかわからないが
視界がやけに広く見える。
壁を背に、辺り全体を見て
ナニカ、から見つかっても逃げられるように。
いつも通り学校へ行き
いつも通り友達と騒ぎ
いつも通り学校から帰る予定だった
いつもと違ったのは
先生に帰るときに捕まり
面倒な用事を頼まれた
友達と文句を言いながらも
親しい先生からの雑用は
お菓子を貰って取引された
「だるー」
「お菓子で釣られるなよー」
「それ、こっちのセリフな」
何の資料か知らないが
ホチキスで冊子にまとめる作業
もらったお菓子や、自分のお菓子を食べながら
早く終わらそうとしつつもだらだらと。
「えー、何してんの??」
「「雑用」」
「まじで!?ウケっし!!」
別の友人が通りかかり
ケラケラ笑いながらこちらを指差す。
手伝ってと言えば、嫌だと言われ
にやにやとしながらこちらを見る。
「早く帰らないと
タソガレさんに連れていかれるから」
「何それ?」
「最近先輩が次々に失踪してるとか」
「物騒だな、おい」
「噂だけどね・・・2人も早く帰りなよ」
また明日ね、と
手を降っていなくなる友人を見送り
友人の残した物騒な噂が気になる。
「タソガレさんって聞いたことある?」
「クラスの子も話してたな
"タソガレさんに会ったら
捻り上げられるぞ"
ってさ」
「都市伝説とか?」
「知らんけど
黄昏時に現れるからタソガレさんらしい」
「そーなんだ」
パチン、パチンとホチキスの音だけが響く。
先ほどまではグランドの部活の掛け声や
隣のクラスの話し声などが
ざわざわと聞こえていたのに
ふと、こんなにホチキスの音って
響くだろうか?と気になってしまう。
「ねぇ」
「何」
「何か、静かすぎない?」
一度気になってしまうと
変に意識してしまう
ホチキスから目を離し、目の前の友人を見上げれば
友人も周りを見て不思議そうにしている。
「あいつが変なこと言うから」
「ね」
2人でひきつったように笑う。
けど、頭のなかで警報が鳴っている気がした。
理解したくないのに
何かが起こっている。
作業の手を止めて
一度よく、周りへと注意を向ける。
自分達が出している音以外
全ての音が消えていた。
まるで、自分達しかいないかのようで・・・
「・・・帰ろ」
友人が呟く
異常な事態に、頼まれ事が・・・とか
そんなことよりも
今はただ、この異常な空間から逃げ出したかった。
静かに頷き、雑に紙の束をまとめておく。
鞄を手にとり、早々と教室から出てみれば
驚くほど静かな廊下。
いつもなら誰かかしらいるのに
誰もいない。
私も友人も
ありえない非常事態に
言葉を失う
ぺたり、ぺたり
静かな空間に
何かの音は、よく響いた
ぺたり、ぺたり、ぺたり
裸足で床を歩くような音
とても小さな音なはずなのに
それは、よく響いていた
そして、廊下の曲がり角から
ソレは現れた
異形の姿
カエルのような出で立ちだが
長い手足
淀んだ目は、どこを見ているかわからない。
「ゆーぐれ ゆーぐれぇ」
わかるのは
自分たちは、ありえないものと遭遇している
ということ。
呼吸が止まり
それから目が離せない
ソレは、こちらを見ると
ゆっくりと狙いを定めるように
ゆっくりと近付いてくる
ぺたり、ぺたりとゆっくりとした足取りから
ぺたぺたと足早に変わった瞬間
本能的に鞄を投げ捨てて友人と走った
玄関に向かおうとしたはずなのに
学校内のいたるところに
小さなナニカからがいる
それを避けて逃げていれば
いつの間にか友人とはぐれていた
走って走って
脇腹が痛い
喉が渇く
肺が痛い
けど、立ち止まっても
すぐに動かないといけない気がして
上へ行ったり
下へ行ったり
廊下がとても長く感じてしまう
同じところを何度も通っている気がしたが
何とか玄関近くまで着いたらしい
静まり、いつの間にか暗くなった外
しかし、学校の中は明るく見える不思議
あとは外に出られたらと
人知れずほっと息をついたのに
ソレは視界に入ってきた
ぽつん、と玄関に置かれた
小さなナニカ
少し距離があるとはいえ
歩いていた歩みがソレを見た瞬間止まった
ソレを私は知っていた
理解したくないのに
ソレは嫌でも視界に入り
よーく見えてしまう
ソレ、は友人だった
虚ろな表情で
こちらを見つめている
鼻からは血が流れ
身体は異様にコンパクトにまとめられている
首から下は手も足も身体も
ぐちゃぐちゃと乱雑に混ざりあい
元々の大きさと反比例して
小さくまとめられている
まるで、だるまのようだ
玄関の前に
虚ろな顔のまま
廊下は血の水たまりが出来ていて
先ほどまで一緒に作業していたはずの友人は
だるま姿でそこにいた
ぺたり、ぺたり
「ゆーぐれぇ、ゆーぐれぇぇ」
ぺたり、ぺたり
友人から目が離せないのに
後ろからきたナニカの気配がする。
「ゆ"ーぐれ"ぇえ」
ぺたり、と
すぐ後ろにナニカはいる
なのに、友人の虚ろな目から
視線が外せない
肩に、ナニカの手が置かれた瞬間
焼けるような熱さがあったが
すぐにぶわりと風が吹き
ナニカの気配が無くなった
「うわー、これ手遅れじゃん」
「硝子」
「無理。これは私の手に負えねーわ」
場違いな声がする
友人がいるところからぞろぞろと三人の男女が現れる。
真っ黒な服にボタンが付いていて
制服らしきものに見えるが
統一性は無さそうだった。
サングラスをかけた白い頭の長身の男が
友人を見ながら表情を歪めている。
ボブショーとの女の子が
友人を見ながら顔色一つ変えずに淡々としてる。
何も考えられず
ただただ目の前の出来事に
理解が追い付かない
「大丈夫かい?」
視界が真っ暗になった。
温かい何かに、視界を塞がれていることに気付いた。
そして、温かい何かは、人の手だということを段々と理解する。
優しい声が耳から脳へと染み渡る。
すると、止まっていた脳が
だんだんと動き出す。
血液のように入ってきた情報の数々を
理解しようと、頭の中で色々なことがめぐる。
「友人は・・・助からないんですよね?」
色々なことがあったのに
色々なことを考えているのに
カラカラの口から出た言葉はそれだった。
「・・・すまない」
彼の言葉が全てなのだと理解したとたんに
人の温かさのせいなのか
自分は助かった安心感からなのか
涙が止まらない
身体から一気に力が抜けて
その場に崩れ落ちる前に
その人は私の身体を支え、ゆっくりと廊下に座らせてくれた。
友人が視界に入らないよう
その人は私の目の前でしゃがむ。
髪を一つにまとめ
前髪が視界にかからない位置に垂れ下がり
切れ長の瞳は真っ直ぐにこちらを見ている。
「助けられず、すまない」
しっかりと視線を合わせ
真っ直ぐこちらを見ているその人は
その人が悪いわけじゃないはずなのに
申し訳なさそうだった。
「傑、さっさと終わらそうぜ」
「ああ・・・硝子、頼めるか」
「はいはーい」
そこからは早かった。
男の人2人は校内へと消えていき
私は女の人に身体をあちこち触られ
痛いところはないかと聞かれる。
ずっと走っていて、足がガクガクするだけで
怪我という怪我はしていないはずだ。
女の人は、ナニカが触れた私の肩を触っていて
熱かった肩の熱がどんどんと引いていく。
悲鳴のようなものが聞こえたような気もしたが
ぼーっと、何も考えられない頭では
映画を早送りしているような出来事だった。
気付いた時には全て終わっていた。
途中から私は気を失ったらしく
目が覚めた時には病院にいた。
両親は泣きながら無事を喜んでくれた。
テレビにもニュースになったが
どうやら私が体験した事実とは異なり
友人と私は帰宅途中に何者かに襲われ
怪我をして倒れていたのを発見されたと。
友人は行方不明となっているらしい。
警察が来て話を聞かれたが
夢のような話を信じてもらえるとは思わず
友人と帰っている途中から
記憶がない、ということにした。
数日、検査のために入院と言われて
意味のない検査をされた。
ぼーっと、病院の中庭で空を見上げる。
何か悪い夢でも見ているかのようで
あの事は私の都合のいい夢だったんじゃないかと思ったが
友人は行方不明のままだ。
じゃり、と
目の前に誰かが立ち止まる。
ゆっくりとそちらを見ると
夢の中で出会った男の人がいた。
「やあ」
にこりと笑いながら、こちらに寄ってくる。
ぺこりと頭を下げれば
ここいいかい?とベンチを指さされ
小さく頷けば、彼は隣に座った。
「色々と説明する前に
貴方が気を失ってしまってね」
彼が言ったのは
あの学校には呪がいて
何人か行方不明となってきたので
呪いを祓うために行ったが手遅れだったこと。
他の行方不明の生徒も亡くなっていたこと。
他にも色々言われたが
反対の耳から抜けていくように
夢物語のような話
「・・・大丈夫かい?」
「・・・行方不明の人は
今後も行方不明のままなんですか?」
「こんなオカルト染みた話を
世間が認知するとは思えないからね」
「ですね」
実際私も、彼が現れなかったら
夢物語だったんじゃないかと思ったところだ。
「私、口封じとかされるんですか?」
「しないよ」
「高専?というとこに行かされるとかは?」
「ないね」
君にコレは見えないだろう?と
彼が肩を指差す先には何もいない。
けど、きっとナニカはいるのだろう。
「身の危険やその場の状況で一時的に見える人はいるし
それをきっかけに見えるようになってしまう者はいるけどね」
「私に才能が開花することは無いってことですね」
へにゃりと笑えば、彼は眉を下げた。
友人のいなくなったあの学校で
私は今までと違った
いつも通りに戻るのだろう。
「わざわざお話にきてくれてありがとうございます」
「お大事に」
「・・・あの」
「何か?」
「・・・いいえ」
「では、失礼するよ」
呆気ないほど足早といなくなってしまったその人。
見えない私は、退院後
両親の気遣いもあり、学校を転校したが
あの学校でないとわかっていても
学校の玄関を通るたび
友人のことを思い出してしまった。
これが
私の学生時代の摩訶不思議な出来事である。
そしてあれから5年経った
学校の玄関というものに恐怖があった私は
早々に就職した。
小さな会社で荒波に揉まれつつ
何だかんだやっている。
「そーいえば苗字さんさ、オカルト的なものに興味ない?」
「えー、オカルトですか?」
「何かに憑かれていたら絶対にとってくれるって噂なのさ」
「それ、ヤバい宗教じゃないですか先輩」
「最近私ちょっと変なこと多いからさ
お願いだから一緒にきてくれない?」
「付いていくだけなら、まぁ・・・」
休みの日
先輩に連れていかれたのは
立派な会館
結構な人が来ていて
来ている人達はみな、笑顔だった。
私の目には張り付けたような笑顔にしか見えず
何だか怖かった。
中に入ったあとは
個別の部屋に案内され、先輩と座る。
「緊張するー」
「先輩、やっぱ帰りませんか?」
ここは何だか、あの時の学校と似た感じがあった。
薄気味の悪い、何とも言えない怖さ。
私は、この怖さを知っている。
「せっかくだから教祖様に会っていこーよ
ここの教祖様、若くていい男らしいし」
「・・・そっちが目当てじゃないですよね?」
「肩が重いし、変なことが起こるのは本当!!」
お祓い行っても効果無いからさーと
先輩も真面目に悩んでいるようだが
私は早くここから出たかった。
「・・・私、先に出て待ってていいですか?」
「え、一緒にいてよ」
「ここ・・・」
「お待たせしました」
気味が悪いと言おうとした時に扉が開く。
中に入ってきた僧衣を着た男。
私を見てにっこりと微笑むその人に
目を奪われる。
先輩が耳元でキャーキャーと騒いでいるのも
その人が先輩と話
ナニカを取ったのも
肩が軽くなったと喜んでいるのも
全てが早送りのように過ぎていく。
ここは、だめだ
「また何かありましたらお越しください」
「はい!!ありがとうございました」
「あぁ、お連れさんと
少しだけお話がしたいのですがよろしいでしょうか?」
「苗字??」
「何やら先ほどから顔色が悪いので
少しだけ見させていただくだけですよ」
「苗字さんにも何かが!?
やってもらった方がいいって!!」
断る間もなく、先輩はその人に私を預け
早々に部屋から出ていく
その人はにっこりと微笑みながら
こちらに近付いてくる
「お久しぶりですね」
「・・・」
「ちゃんと開花してたじゃないか」
目の前に立つこの人は危険だと
頭の警報が鳴り響く
「覚えていたんですね」
「記憶力はいい方だからね」
「私、あれから化け物を見たことないんですけどね」
「違うだろ?」
そっと伸ばされた手は
私の目尻を優しく撫でる
「見えないんじゃない」
見ないようにしてるんだろ?
と、わかっているような口振り
目尻から頬へと手が滑り
頬を包み込む大きな手
じんわりと、温かい温度が伝わり
昔の美化された記憶にある
温かい温度が広がっていく
「二級レベルの呪なら簡単に捻り上げることができるんじゃないかな?」
「知りません」
「大丈夫だよ」
君のそれは、おかしなことじゃない
囁かれるように言われた言葉に
目を見開く
「時間があるときにまたおいで」
頬から離れた手が
ぽんぽん、と頭に乗る
先ほどまでの張り付けたような
冷たい笑顔ではなく
優しい笑顔でこちらを見ているその人
「またね」
そのあと
先輩のところにどうやって戻ったのかとか
先輩が興奮して話す内容とか
色々とどうでもよくなって
私の視界の中には
ナニカが、いて
それは当たり前のように見えている。
先輩の肩にはまた違うナニカ
それはこちらに手を伸ばしてきて
次の瞬間には
ごとり
と、地面に落ち
落ちたそばからぼろぼろと身体が消えていく
だるまのようになったソレ
私はきっと
あの人のところに行くのだろう
当たり前の毎日から抜け出して
当たり前じゃない非日常に
あの人に触れられた目尻が頬が熱い
私は私の中で
当たり前の普通の日常に別れを告げた
あとがき
無駄に長くなった
そして、携帯だから
無駄に書き出すと時間かかる(笑)
名前変換少なくてすいません
本当は傑と名前呼びあいたかったのですが
色々詰めこむと
長編になるぞ・・・と(笑)
簡単に説明すると
彼女は初めから見えていて
見えないフリが上手すぎたと
見えることは普通じゃないと
普通でいなきゃいけないと
思い込んでいたため
必死に見えないフリをしたら
女優なみにwww
ヤバい呪い見てもスルーしますが
内心パニックで、勝手に術式発動状態
結果、呪霊ごと無機物を捻り上げ
帰り道とかが多かったから
タソガレさんと名付けられ噂が一人歩き
学校でのことは
偶然起こったことだが
一緒に逃げているうちに
友人が呪霊につかまり
無意識に術式発動して
友人を巻き込んでしまうことに
ごじょらは夢主が術式使ったことに
気付いていても
見えていないことを徹底していた
夢主の嘘に騙されたらいいな(笑)
呪詛師になるまで書きたかったのですが
長くなったので
また似た設定で書ければいーなーと思います
ありがとうございました