通行人A
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それは
夢だと思い込みたいほどの悪夢だった。
オイルのところから逃げ出したのは間違いだったのか……
靴が脱げ、何度も転びそうになりながらも走る。
しかし、加護の無い私に気付き、群がる呪霊達。
手を伸ばすように触れようとする呪霊を振り払って逃げる。
捕まったら駄目だ……逃げなきゃ、逃げなきゃっ!!!
襲い掛かってくる呪い。
地面から出た手や、後ろから追ってくる手が私を掴んで転ばせる。
何度も地面に転ばされ、振り払う。
"ヨンデ"
"ネガッテ"
"ハナ、シテ"
ーーー怖い。
抑え込まれても必死に振り払えば、なんとか逃げられた。
呪い達はまるで鬼ごっこをして楽しむかのように捕まえては離し、捕まえは離し……必死に逃げる私を見て喜んでいた。
それでも逃げて、逃げて……人を見つけてホッとしたのもつかの間。
人間達は私を見て……恐怖に顔を歪ませた。
「化け物っ!!」
「キャァァアアアッ」
「く、くるなっ!!」
「悪魔!!」
なぜ?
そんな事を考えたが……答えは簡単だ。
呪い達は私の後ろにいて、私は呪いを引き連れて来たように見えるのだろう。
化物だと、悪魔だと叫ばれても涙をこらえる。
呪いを引き連れ走る私はどちらの味方かなんてパッと見てもわからないだろう。
怯える人々から逃げるように、また走り出す。
恐怖に歪み、怯えた声で言われた化け物の声が……耳から離れない。
一度地上に出たが、地上は地上で呪いが溢れていた。
私を見た生きてる人々は叫び逃げ出す。
呪いは喜びに私へ近寄る。
なるべく人を見ないように、とにかく誰か顔見知りがいないか走って行けば……
「………伊地知さん?」
血塗れで、意識のないガラスのような瞳。
出血量が酷い。
震える手でそっと首筋に触れるが……身体は冷たく、生きた鼓動を感じられない。
「人殺し!!」
「違っ」
私と伊地知さんを見た誰かが叫んだ。
怖くなってその場から逃げた私。
誰か……誰でもいい。とにかく誰か知り合いに会いたかった。
唇を噛み締め再び地下へ。
地上に残っていても下手すりゃ私が討伐対象になりかねない。
どうにか知り合いの呪術師に会わなくてはと、走って逃げる。
私は人間から逃げる。
人って……こんなにも怖かった?
私は恵まれていたんだと、ハッキリと感じた。
ミえている特殊な私を守り、絶対的な味方でいてくれる優しい幼馴染達。
バカなことをしても一緒に笑って騒いでくれる友人達。
呆れながらも傍にいて話し相手になってくれる硝子ちゃん。
大人ぶっていてもそれに付き合ってくれて慕ってくれていた高専の子供達。
こんな私を愛していると守ってくれていた悟。
私の世界は優しい人達の優しさで包まれていた。
だからこそ、悲しかった。
人々にとって呪いは悪でしかなく、それらと戦っている人達は同じ括りに入るのが。
助けられたことに感謝はしても、恐怖は消えない。
今の私は恐怖に震える人々にとって、悪でしかない。
私自身が怖いのに……何も知らない一般人からしたらもっと怖いはずだ。
ーーー得体の知れない化け物。
実際に経験しなければわからない痛みがある。
言葉にしても、感じる痛みはその時じゃないとわからない。
彼らが悪いわけじゃないとわかっていても……今は彼らの言葉が胸に突き刺さる。
現実を見ろ、とでもいうように
まだまだ悪夢は終わらない
「……真希、ちゃん?七海くん……」
「まだ生きていたのか、小娘」
漏瑚さんが燃やしていた三人の身体。
その亡骸は私が知っている。
「ほぉ……確かに夏油の言葉通りだったな」
「………どうして」
「どんなに偽善的な言葉を吐いても、オマエはこちら側の人間だったのか」
「違う!私は……っ」
「違わない。オマエ "も" 呪いだ」
にやり、と笑う漏瑚さん。
私が引き連れている呪いだけではなく、私自身すら呪いの一部だと笑う。
否定したくても、出来なかった。
何かの気配を感じとりいなくなった漏瑚さん。
残されたのは焦げた臭いのする人間だったものが三体。
「……」
私はなぜ大丈夫だと思えたのだろう。
戦場に行く者が必ず生き残る可能性なんて無いのに。
「ごめん……ごめん、なさいっ」
怖い。
怖い怖い怖い怖い。
やっぱり私には無理だった。
私なんかが生きていちゃいけなかった。
望んではいけなかった。
私なんかが幸せになってはいけなかった。
「………」
伊地知さんも、真希ちゃんも、七海くんも動かない。
私の大切な世界は音を立てて崩れていく。
私の心はーーー
ポッキリと、嫌な音を立ててしまった、
どれくらい物言わぬ真希ちゃんの前にいたのかわからない。
数分かもしれないし、数時間かもしれない。
「こんなところで何をしている」
聞き覚えのある声がした。
「絶望したか?」
ケヒッ、ケヒッ、と愉快な笑い声。
ぐっ、と顔を上げられれば見えたのは宿儺さん。
「……な、んで」
「小僧なら死んだぞ」
「悠仁くんが……?」
楽しそうにニヤニヤと笑う宿儺さん。
「伏黒恵も自分の術式に殺された。
あぁ、粋の良い小娘も喧しい呪いに殺されたな」
「……めぐみん、野薔薇ちゃん……」
「五条悟は封印された」
「………さとる」
目の前が真っ暗になっていく。
私の世界はどんどん崩れ去る。
「何をそんな悲しむ必要がある」
「……だって」
「オマエは一人ではないだろう?」
うっとりとした声。
私の頬を優しく包み、目を細めて愉しそうに笑う宿儺さん。
「"一緒に居て"やる。"オマエ"が望むなら」
1人は嫌だ。
1人は寂しい。
1人は怖い。
1人にはなりたくないっ。
溢れ出る涙。
宿儺さんの濁った瞳が怪しく光る。
「捕まえた」
嬉しそうに笑う宿儺さん。
私は、私は………
そっと目を閉じて、宿儺さんの腕の中に埋まる。
もう、どうだっていい。
壊れた世界なぞ、どうなってもーーー
"駄目だよ、カミサマ"
「!?」
バチィッ、と宿儺さんの手が弾かれた。
私の目の前には、真っ白な女の子。
これは……なに?
「オマエは……」
"お姉さん、大丈夫だよ"
驚く宿儺さん。
それとは反対に、女の子は笑う。
"コレは悪い夢の中だよ"
「………ゆ、め?」
"そう、夢"
血の臭いも?
焦げた肉の臭いも?
走って血が滲み疲れた足も?
胸にぽっかり空いた虚しさも?
夢なのに……こんなにも現実のようなーーー
"夢は目覚めてもう一度正せるよ"
「……正せる?」
"お姉さんが本当にやりたいことは?"
「やり、たい……こと?」
"お姉さんの願いは?"
「私、の願いはーーー」
我が儘を言っていいのなら
幸せを望んでいいのなら
もう一度、を願えるのなら
「お願い……」
私が願う事は一つ
「悟と、皆と笑って生きたいっ」
彼らが居たから私は居られる。
居場所を与えてくれた……大切な私の宝物達。
ボロボロと情けなく大粒の涙を溢しながら叫んだ。
"皆、お姉さんの願いを叶えてあげよう"
白い女の子と共に着いてきた呪い達が淡い光を放つ。
「!?
娘……何をっ!!」
"カミサマ
私は幸せだったよ。カミサマがいてくれたから"
「何をする気だ」
"次はお姉さんの番"
私を囲うように光る呪い達。
"私達の力じゃ、少しの時間だけ"
「……」
"お姉さん"
「……」
"今度はしっかり気を強く持ってね"
ーーー呪いの感情に当てられちゃ、駄目だよ
淡い光は合わさると眩い光となって……目が開けられず、私は気絶するように気を失った。
「ハッ、面白い」
目の前にいた女が消えた。
「今は見逃してやる」
この世界から消えた女の存在。
女自身が願っても、時間や空間を歪めるほどの力は呪霊にはない。
女が人間である限り、神のような真似事などそれこそ天罰が下っても不思議じゃない。
それとも、あの時の子供の力だというのか……。
「ケヒッ」
あぁ、面白い。
この俺をどこまで楽しませることが出来るのか……
弱った女を丸め込むよりはずっとずっとタノシイ。
「次はナニをして遊べる?」
獲物は逃げる。
なら
狩る者として、追わねばならん。
血と煙と死が渦巻く世界でーーー
呪いの王は嗤った。
あとがき
バッッッドエンドーーーー!!!!
に見せかけ、まだまだ続くよ。
このままバッドエンドだと宿儺さん√とオイル√か……(遠い目)
白い女の子ちゃんは呪いかな?神様かな?
それともただの精神かな?
はてさて……何者かな?(笑)
おっと、夢小説なのに名前変換がないぞ?
そして今回シリアルすらないぞ?
次回「僕はもう十分逃げた。ようやく守らなければならないものができたんだ。君だ」
逃げ続けた通行人は今、逃げることをやめる