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恋に落ち、意地悪で格好良くて最低で最高な彼氏。
そんな彼の隣を歩いて、色んなとこに行く。
色んな場所で思い出を作って笑い合う私達。
たまには喧嘩するけど……結局彼が折れて仲直り。
大好きが積み重なっていく日々。
あ、勿論嫌いなとこもある。
彼と笑いあっていられる日々が楽しくて
今日、私は綺麗なウェディングドレスを着る。
「綺麗よ、名前」
「お母さん……」
「とっても、とっても綺麗」
涙を浮かべて褒めてくれるお母さん。
私もつられて泣きそうになってしまうが……これからのイベントのためにグッと堪える。
お母さんがベールダウンを行う。
お母さんからの、最後の身支度の手伝い。
そして
独身人生への幕。
白いウェディングドレスの裾を持ってくれるスタッフ。
大きな扉の前ではクロが。
「おーおーおー。どこの美人かと思ったら」
「………なんでクロ?」
「サプラーイズ☆」
「あらやだ。寝癖はどちらへ?」
「ビシッとオールバックの俺素敵だろ?」
アイデンティティのトサカは身を潜め、オールバックのクロ。
「友人代表は研磨だろ?
だから俺も何かしたくて半分だけおじさんに譲って貰ったんだよ」
「臭い演出しちゃって」
「俺の娘じゃないけど……俺らはいつだって"家族"ダロ?
俺らの紅一点の幼馴染が旅立つ日なんだ。
俺らにきちんと見送りさせてくれよ」
ほら、と腕を差し出すクロ。
堪えた涙がジワジワと溜まってくる。
「泣くなよ。折角の美人なんだから笑え」
「本当……素敵なサプライズだよ」
天気の良く晴れた日に赤い絨毯の上をクロと歩く。
一歩一歩。
「過去」「現在」「未来」
私の人生に必ず居てくれた存在。
クロに守られて歩んできた「過去」が「現在」に繋がっている。
何度も馬鹿をする私を父のように叱ってくれたのはクロだった。
「おじさん、ありがとうございます」
「………」
「あ、駄目だ。号泣で言葉も出てない」
だばだばと涙を流す父に笑ってしまう。
クロの腕から手を抜き、父の腕へ。
沢山の人に守られて今がある。
そして、これからの私を守ってくれる最愛の人の元へ。
綺麗なステンドグラスの下には旦那様。
私の手を引き、神父の元へ。
誓いの言葉を口にして皆の前で旦那様の手でベールが上げられる。
夫婦の新しい「未来」が始まる……誓いのキス。
皆にお祝いの言葉を貰いながら旦那様の腕を組んで笑う私。
沢山の花弁を皆が散らす。
披露宴での移動の前に、再び戻って皆と教会の前と中で写真撮影。
誰もが笑顔だった。
披露宴では友人代表は研磨。
相変わらず染め直していない毛先だけ金の髪を一つに縛っているだけ。
「えっと……あの……本当はこんな役目引き受けたくなかったんですが……」
最初の一言目で言うの?それ?
「お二方、結婚おめでとう。
並びにご両家の皆様、本日は誠におめでとうございます。
ただいま司会の方から紹介いただきました研磨です。名前とは物心着いた時から幼馴染として黒尾さんと一緒に過ごしてきました。
クロはバージンロードを一緒に歩いたから、俺の大切な半身である名前を見送るために今日は友人代表……名前の理解者の一人として此処に立たせていただいています」
始めはオドオドしていたくせに……思い出でハッキリ私のことディスッてやがる。え?普通褒めない?
「これまで共に居た時間の思い出しても、何度こいつ大丈夫か?と思ったことでしょう。クラスで酢昆布テロをし、街中で叫び、某ファーストフード店でアップルパイを頼みすぎて警戒されたかと思えば、店員のお悩み相談係となり崇められている幼馴染に……何度、引いたことか。
名前との思い出を言葉にするには時間が足りないため省略いたしますが……
名前の周りには必ず人が集まってきて、名前を中心に周りも笑顔でいられる存在です。
周りを驚かせる天才で後にも先にも小・中・高と先生を困らせ反省文を大量に書いたのは名前だけだろうね。
常に体当たりで色んな人と交流していく姿は才能だと思っています。
そして遊びに全力を尽くすのはとても素晴らしいことだと尊敬しています」
いや、完全に尊敬してないでしょ。
おい、高校の友人共。
君ら爆笑し過ぎだからな!
「今振り返っても、思い出すのはいつも笑顔で名前には感謝と苦労でいっぱいです」
おい。
「そんな幼馴染の初めて恋をして、落ち込んで、再び出会い恋を育んできた姿をずっと見てきました。
俺らだけに見せていた弱さを、ありのままの弱さを見せられる存在に出会えた事。少しづつ離れて行く姿に俺もクロも親のような気持ちで見守ってきましたが……お二人がこうして家族となってくれたことが嬉しく思います。
馬鹿で突然何をしでかすかわからない幼馴染ですが、そんな幼馴染の手綱をしっかり握ってくれる人に出会えて良かったと思っています」
おい、研磨。
「名前がいれば楽しくて明るい家庭となることは間違いないと断言出来ます。
俺もクロも今まで一緒に過ごしてきた幼馴染が先に結婚して離れてしまうことはとても寂しい気持ちになりますが……それ以上に幼馴染が幸せに笑っている姿を見ることが出来て本当に嬉しく思っています。
名前と過ごした人生はとても楽しいものでした。
だから、これからは彼と共に笑い合って生きてね。
時々顔見せに来てくれたら俺もクロもいつだって幼馴染を歓迎するから。
幸せになってね。
今日の名前は俺が共に過ごし、見てきた中で一番綺麗だよ」
なんで、そんな穏やかな顔するのさ……。
泣かせるための言葉、狙ってる。
研磨の策士め。
「おめでとう名前。
ーーー名前をお願いします。
これにてお二人へはなむけの言葉とさせていただきます」
ボロボロに泣く私に会場が笑う。
友人達のパフォーマンスやお祝いの言葉。
両親への感謝の気持ちに父も母も私も号泣。
泣きすぎて読めなくなった手紙を彼が代わりに読んでくれた。
最後は友人が作ってくれたDVD。
学生時代の黒歴史が公開された。
笑って泣いて騒いだ披露宴。
「おめでとう」
「おめでとう」
「来てくれてありがと、二人共!」
「綺麗だったぞ」
「そうだね。綺麗だよ」
「嬉しい。友人代表スピーチもありがと」
「私は彼の親友として話しただけさ」
学生時代の四人で笑い合う。
幸せいっぱいの私。
仕事は彼の職場に。
事務作業をしていれば言い合う声。
「こら、逃げるな」
「どーしたの?」
「また任務中にやり過ぎたんだよ」
「また?」
「まったく……先生としてもう少し慎重になりな。先生が率先して破壊してどうするんだ」
「そういう前髪もこないだ色々破壊したよね?」
最強の二人は生徒を育て
新しい呪術界を作り上げていく。
「名前、愛してる」
私を愛しそうに見る蒼い瞳に映る私。
私はこの幸せな生活を死に別つまでこの人と共に過ごしていくのだと……。
そんな未来を何度考えたことか。
現実は
「ほら、見てなよ」
「っ!!」
綺麗な白のウェディングドレスなんてない。
血で黒く染まった赤いドレスを着せられ、血に濡れた赤い道を歩く。
「顔色が良くないね。
もしかして人が死ぬのは初めて見るのかい?」
呪いは呪いだ。
人を殺すことに何にも感じない。
無差別に殺されていく人々を私は見ている事しか出来ない。
「凄いね。キミがいるだけでどんどん寄ってくる」
閉じられた空間。
隣にいる奴のせいで近寄ってくることはないが
"ネガッテ"
"ミテ"
"サワッテ"
"コエ、コエ…コエ"
こいつらは願う。
私が見えているとわかって願う。
私を
「目を逸らしちゃいけないよ」
私の嫌いな世界が私を呼ぶ。
「これがキミが呼び寄せた結果だよ」
幸せに、なんてなれない。
私はこいつらを見るたび嫌でも理解させられる。
「キミは」
大好きな人達を不幸せにする存在だと。
笑っていて欲しい人達から笑顔を奪う存在だと。
ーーー私は
「"呪い"そのものだ」
ーーー存在してはいけないのだと。
「大丈夫」
血に染まる世界から目を閉ざされる。
真っ暗になった視界は何も映さない。
「キミがどんな存在だろうと」
耳元で囁かれる
「私はキミを理解して」
甘く優しい言葉。
「大切にするよ」
私を認めてくれる。
私を受け入れてくれる。
「キミは一人じゃない」
目の前で次々と殺されていく人々。
罪の無い、何もわかっていない人々が簡単に消えていく。
見えているのに助けられない無力さ。
私は何も出来ない……
いや。
人々に害ある呪いを引き寄せる存在であり、今こうして何もせずに見殺しているのだから、私こそ葬りさられるべき罪人。
ーーー私は一人になりたくない。
なんて……考える浅ましき生き物。
目の前で笑う友人の姿をした化物に
甘く優しい言葉を耳元に囁かれ
戦っている愛しき人から視界を閉ざされる。
「退けよ、オイル」
オイルの手を振り払う。
叩かれた手に痛いなぁ、とまったくダメージなんて無いくせに擦るオイル。
「……私の言葉に落ちてくれれば楽になれるのに」
「残念だったね、オイル」
私はこの世界が嫌いだ。
私は幸せになどなれない。
私は私が嫌いだ。
私は一人が嫌いだ。
「私を口説こうなんて一億年早いわ」
この世界で好きが増えていった。
幸せを分けてくれた。
好きだと慕ってくれた。
一人じゃないと支えてくれた。
「勝手にボッチ認定しないでくれる?」
馬鹿で面倒な愚かな存在を
「お前に理解されたくもないし、大切にされようとなんて思ってない」
愛してる、と包み込む大馬鹿がいた。
「勝手にボッチ仲間にして巻き込むなよ。
寂しん坊か?元の脳ミソにお帰り」
「可愛くないね」
「はいはい、どーも」
「この光景にキミは心が折れないなんてどんなメンタルしてるんだい?」
「バッキバキに折られてるわ。
そこまで人間捨ててないし」
無関係な人々が死んでいく。
目の前で血が舞い、体の一部が弾け飛ぶ。
こんな世界を皆は何度も見てきた。
見てきた中で、心を何度も立て直してきた彼ら。
「覚悟決めてこの世界に自分から入ったんだ。
これで心折れていたら皆に申し訳ない」
「キミってただの偽善者じゃないんだね」
「全ての人を平等にって?ムリムリ。
どこの聖女だ」
「は?聖女に謝った方がいいよ」
「シバくぞオイル」
子供の皆が頑張っているのに
私が泣き言など言ってられない。
非力な己をこの時ほど恨んだことはない。
何も出来ないって事が、足手まといな自分がもどかしく、悔しい。
愛しき人が戦う姿がこんなに苦しくなると思ってなかった。
非情で無慈悲な選択。
その中でも最善を選ぶ姿。
彼もあの子達も……こうして何度も選択させられて来たのだろう。
その度に心を殺し、進んできた。
「……言葉が通じても絶対に分かり合うことは出来ないんだね」
「彼らはどこまでも呪い、だからね」
「同じ人間を犠牲にする事を考えるオイルは何かな?
悪魔?それともカミサマのつもり?」
「人間さ」
彼らを悪だと後ろ指をさす者がいるのなら
私は共に悪に落ちよう。
彼らを恨む者が彼らを襲うなら
私が彼らの代わりとなろう。
「ごめん、悟」
ーーー私は君との約束を守れない。
悟が領域を展開した瞬間
私の何かがピキリとヒビ入り、割れた。
「!!」
「……うっわ、まじか」
先ほどよりも呪いが集まる。
「おめでとう名前」
「クッソもめでたくないし」
最悪なタイミングで加護が解けた。
いつもと感覚は変わらないが、明らかに呪い達が反応を見せ始めている。
「陀艮、落ち着くんだ」
今まで大人しかった陀艮ちゃんですら、興奮しているのか私の身体に巻き付き締め上げる。
あまりの力に息が詰まる。
オイルの言葉にフーフーと息を粗くする陀艮ちゃん。
「そろそろ私は行くよ」
線路を歩くオイル。
陀艮ちゃんは私を捕まえて離さない。
「陀艮ちゃん」
「ブモォ」
「"お願い"」
「!!」
「"離して"」
一瞬でいい。
私のお願いに陀艮ちゃんが戸惑えばいい。
締め上げられた身体が緩んだ瞬間、私はそこから抜け出して走り出す。
「悟っ」
膝をつき、何かに囚われている悟。
悟の目の前にはツギハギとオイル。
「名前……」
走って、走って
「簡単に捕まってんじゃねーよバーカ」
こんな時まで笑っている悟。
あんた、笑ってる場合じゃないでしょ。
「悟っ!!」
「来るなよ」
笑っているが、真っ直ぐに此方を見つめる瞳。
「逃げろ」
「でも…っ」
「いいから逃げろ」
悟の言葉に胸が痛む。
チラリ、と辺りを見れば動けているのはオイルとツギハギのみ。
だが、今は悟に集中しているのかあまり興味を持たれていない。
「行け」
「………ごめんっ」
足手まといになるなら、奴らにいいように利用されるならいない方がいい。
ここは人間が多すぎる。
走り出す私にツギハギとオイルが追いかけてくる様子はない。
走る、走る、走る。
血溜まりを越えて
屍を越えて
呪いを避けて
助けを呼ぶ人を避けて
ーーー悪夢はまだ始まったばかり
あとがき
あああああっ!!!!
ここ、から!!どう!!し、よーーーー!!!
ノープラン(´・ω・`)
うわっ!シリアス!!
なんてこった!
本誌も地獄だし、なんてこった!
結婚のベールやらの話は僕勉の内容がドンピシャでぐっときたので使っております。
諸説あり、かもしれないけど参考にしたのは僕勉です。
次回「もう終わりだ、美しくなかったら生きていたって仕方がない」
通行人、絶望
そんな彼の隣を歩いて、色んなとこに行く。
色んな場所で思い出を作って笑い合う私達。
たまには喧嘩するけど……結局彼が折れて仲直り。
大好きが積み重なっていく日々。
あ、勿論嫌いなとこもある。
彼と笑いあっていられる日々が楽しくて
今日、私は綺麗なウェディングドレスを着る。
「綺麗よ、名前」
「お母さん……」
「とっても、とっても綺麗」
涙を浮かべて褒めてくれるお母さん。
私もつられて泣きそうになってしまうが……これからのイベントのためにグッと堪える。
お母さんがベールダウンを行う。
お母さんからの、最後の身支度の手伝い。
そして
独身人生への幕。
白いウェディングドレスの裾を持ってくれるスタッフ。
大きな扉の前ではクロが。
「おーおーおー。どこの美人かと思ったら」
「………なんでクロ?」
「サプラーイズ☆」
「あらやだ。寝癖はどちらへ?」
「ビシッとオールバックの俺素敵だろ?」
アイデンティティのトサカは身を潜め、オールバックのクロ。
「友人代表は研磨だろ?
だから俺も何かしたくて半分だけおじさんに譲って貰ったんだよ」
「臭い演出しちゃって」
「俺の娘じゃないけど……俺らはいつだって"家族"ダロ?
俺らの紅一点の幼馴染が旅立つ日なんだ。
俺らにきちんと見送りさせてくれよ」
ほら、と腕を差し出すクロ。
堪えた涙がジワジワと溜まってくる。
「泣くなよ。折角の美人なんだから笑え」
「本当……素敵なサプライズだよ」
天気の良く晴れた日に赤い絨毯の上をクロと歩く。
一歩一歩。
「過去」「現在」「未来」
私の人生に必ず居てくれた存在。
クロに守られて歩んできた「過去」が「現在」に繋がっている。
何度も馬鹿をする私を父のように叱ってくれたのはクロだった。
「おじさん、ありがとうございます」
「………」
「あ、駄目だ。号泣で言葉も出てない」
だばだばと涙を流す父に笑ってしまう。
クロの腕から手を抜き、父の腕へ。
沢山の人に守られて今がある。
そして、これからの私を守ってくれる最愛の人の元へ。
綺麗なステンドグラスの下には旦那様。
私の手を引き、神父の元へ。
誓いの言葉を口にして皆の前で旦那様の手でベールが上げられる。
夫婦の新しい「未来」が始まる……誓いのキス。
皆にお祝いの言葉を貰いながら旦那様の腕を組んで笑う私。
沢山の花弁を皆が散らす。
披露宴での移動の前に、再び戻って皆と教会の前と中で写真撮影。
誰もが笑顔だった。
披露宴では友人代表は研磨。
相変わらず染め直していない毛先だけ金の髪を一つに縛っているだけ。
「えっと……あの……本当はこんな役目引き受けたくなかったんですが……」
最初の一言目で言うの?それ?
「お二方、結婚おめでとう。
並びにご両家の皆様、本日は誠におめでとうございます。
ただいま司会の方から紹介いただきました研磨です。名前とは物心着いた時から幼馴染として黒尾さんと一緒に過ごしてきました。
クロはバージンロードを一緒に歩いたから、俺の大切な半身である名前を見送るために今日は友人代表……名前の理解者の一人として此処に立たせていただいています」
始めはオドオドしていたくせに……思い出でハッキリ私のことディスッてやがる。え?普通褒めない?
「これまで共に居た時間の思い出しても、何度こいつ大丈夫か?と思ったことでしょう。クラスで酢昆布テロをし、街中で叫び、某ファーストフード店でアップルパイを頼みすぎて警戒されたかと思えば、店員のお悩み相談係となり崇められている幼馴染に……何度、引いたことか。
名前との思い出を言葉にするには時間が足りないため省略いたしますが……
名前の周りには必ず人が集まってきて、名前を中心に周りも笑顔でいられる存在です。
周りを驚かせる天才で後にも先にも小・中・高と先生を困らせ反省文を大量に書いたのは名前だけだろうね。
常に体当たりで色んな人と交流していく姿は才能だと思っています。
そして遊びに全力を尽くすのはとても素晴らしいことだと尊敬しています」
いや、完全に尊敬してないでしょ。
おい、高校の友人共。
君ら爆笑し過ぎだからな!
「今振り返っても、思い出すのはいつも笑顔で名前には感謝と苦労でいっぱいです」
おい。
「そんな幼馴染の初めて恋をして、落ち込んで、再び出会い恋を育んできた姿をずっと見てきました。
俺らだけに見せていた弱さを、ありのままの弱さを見せられる存在に出会えた事。少しづつ離れて行く姿に俺もクロも親のような気持ちで見守ってきましたが……お二人がこうして家族となってくれたことが嬉しく思います。
馬鹿で突然何をしでかすかわからない幼馴染ですが、そんな幼馴染の手綱をしっかり握ってくれる人に出会えて良かったと思っています」
おい、研磨。
「名前がいれば楽しくて明るい家庭となることは間違いないと断言出来ます。
俺もクロも今まで一緒に過ごしてきた幼馴染が先に結婚して離れてしまうことはとても寂しい気持ちになりますが……それ以上に幼馴染が幸せに笑っている姿を見ることが出来て本当に嬉しく思っています。
名前と過ごした人生はとても楽しいものでした。
だから、これからは彼と共に笑い合って生きてね。
時々顔見せに来てくれたら俺もクロもいつだって幼馴染を歓迎するから。
幸せになってね。
今日の名前は俺が共に過ごし、見てきた中で一番綺麗だよ」
なんで、そんな穏やかな顔するのさ……。
泣かせるための言葉、狙ってる。
研磨の策士め。
「おめでとう名前。
ーーー名前をお願いします。
これにてお二人へはなむけの言葉とさせていただきます」
ボロボロに泣く私に会場が笑う。
友人達のパフォーマンスやお祝いの言葉。
両親への感謝の気持ちに父も母も私も号泣。
泣きすぎて読めなくなった手紙を彼が代わりに読んでくれた。
最後は友人が作ってくれたDVD。
学生時代の黒歴史が公開された。
笑って泣いて騒いだ披露宴。
「おめでとう」
「おめでとう」
「来てくれてありがと、二人共!」
「綺麗だったぞ」
「そうだね。綺麗だよ」
「嬉しい。友人代表スピーチもありがと」
「私は彼の親友として話しただけさ」
学生時代の四人で笑い合う。
幸せいっぱいの私。
仕事は彼の職場に。
事務作業をしていれば言い合う声。
「こら、逃げるな」
「どーしたの?」
「また任務中にやり過ぎたんだよ」
「また?」
「まったく……先生としてもう少し慎重になりな。先生が率先して破壊してどうするんだ」
「そういう前髪もこないだ色々破壊したよね?」
最強の二人は生徒を育て
新しい呪術界を作り上げていく。
「名前、愛してる」
私を愛しそうに見る蒼い瞳に映る私。
私はこの幸せな生活を死に別つまでこの人と共に過ごしていくのだと……。
そんな未来を何度考えたことか。
現実は
「ほら、見てなよ」
「っ!!」
綺麗な白のウェディングドレスなんてない。
血で黒く染まった赤いドレスを着せられ、血に濡れた赤い道を歩く。
「顔色が良くないね。
もしかして人が死ぬのは初めて見るのかい?」
呪いは呪いだ。
人を殺すことに何にも感じない。
無差別に殺されていく人々を私は見ている事しか出来ない。
「凄いね。キミがいるだけでどんどん寄ってくる」
閉じられた空間。
隣にいる奴のせいで近寄ってくることはないが
"ネガッテ"
"ミテ"
"サワッテ"
"コエ、コエ…コエ"
こいつらは願う。
私が見えているとわかって願う。
私を
「目を逸らしちゃいけないよ」
私の嫌いな世界が私を呼ぶ。
「これがキミが呼び寄せた結果だよ」
幸せに、なんてなれない。
私はこいつらを見るたび嫌でも理解させられる。
「キミは」
大好きな人達を不幸せにする存在だと。
笑っていて欲しい人達から笑顔を奪う存在だと。
ーーー私は
「"呪い"そのものだ」
ーーー存在してはいけないのだと。
「大丈夫」
血に染まる世界から目を閉ざされる。
真っ暗になった視界は何も映さない。
「キミがどんな存在だろうと」
耳元で囁かれる
「私はキミを理解して」
甘く優しい言葉。
「大切にするよ」
私を認めてくれる。
私を受け入れてくれる。
「キミは一人じゃない」
目の前で次々と殺されていく人々。
罪の無い、何もわかっていない人々が簡単に消えていく。
見えているのに助けられない無力さ。
私は何も出来ない……
いや。
人々に害ある呪いを引き寄せる存在であり、今こうして何もせずに見殺しているのだから、私こそ葬りさられるべき罪人。
ーーー私は一人になりたくない。
なんて……考える浅ましき生き物。
目の前で笑う友人の姿をした化物に
甘く優しい言葉を耳元に囁かれ
戦っている愛しき人から視界を閉ざされる。
「退けよ、オイル」
オイルの手を振り払う。
叩かれた手に痛いなぁ、とまったくダメージなんて無いくせに擦るオイル。
「……私の言葉に落ちてくれれば楽になれるのに」
「残念だったね、オイル」
私はこの世界が嫌いだ。
私は幸せになどなれない。
私は私が嫌いだ。
私は一人が嫌いだ。
「私を口説こうなんて一億年早いわ」
この世界で好きが増えていった。
幸せを分けてくれた。
好きだと慕ってくれた。
一人じゃないと支えてくれた。
「勝手にボッチ認定しないでくれる?」
馬鹿で面倒な愚かな存在を
「お前に理解されたくもないし、大切にされようとなんて思ってない」
愛してる、と包み込む大馬鹿がいた。
「勝手にボッチ仲間にして巻き込むなよ。
寂しん坊か?元の脳ミソにお帰り」
「可愛くないね」
「はいはい、どーも」
「この光景にキミは心が折れないなんてどんなメンタルしてるんだい?」
「バッキバキに折られてるわ。
そこまで人間捨ててないし」
無関係な人々が死んでいく。
目の前で血が舞い、体の一部が弾け飛ぶ。
こんな世界を皆は何度も見てきた。
見てきた中で、心を何度も立て直してきた彼ら。
「覚悟決めてこの世界に自分から入ったんだ。
これで心折れていたら皆に申し訳ない」
「キミってただの偽善者じゃないんだね」
「全ての人を平等にって?ムリムリ。
どこの聖女だ」
「は?聖女に謝った方がいいよ」
「シバくぞオイル」
子供の皆が頑張っているのに
私が泣き言など言ってられない。
非力な己をこの時ほど恨んだことはない。
何も出来ないって事が、足手まといな自分がもどかしく、悔しい。
愛しき人が戦う姿がこんなに苦しくなると思ってなかった。
非情で無慈悲な選択。
その中でも最善を選ぶ姿。
彼もあの子達も……こうして何度も選択させられて来たのだろう。
その度に心を殺し、進んできた。
「……言葉が通じても絶対に分かり合うことは出来ないんだね」
「彼らはどこまでも呪い、だからね」
「同じ人間を犠牲にする事を考えるオイルは何かな?
悪魔?それともカミサマのつもり?」
「人間さ」
彼らを悪だと後ろ指をさす者がいるのなら
私は共に悪に落ちよう。
彼らを恨む者が彼らを襲うなら
私が彼らの代わりとなろう。
「ごめん、悟」
ーーー私は君との約束を守れない。
悟が領域を展開した瞬間
私の何かがピキリとヒビ入り、割れた。
「!!」
「……うっわ、まじか」
先ほどよりも呪いが集まる。
「おめでとう名前」
「クッソもめでたくないし」
最悪なタイミングで加護が解けた。
いつもと感覚は変わらないが、明らかに呪い達が反応を見せ始めている。
「陀艮、落ち着くんだ」
今まで大人しかった陀艮ちゃんですら、興奮しているのか私の身体に巻き付き締め上げる。
あまりの力に息が詰まる。
オイルの言葉にフーフーと息を粗くする陀艮ちゃん。
「そろそろ私は行くよ」
線路を歩くオイル。
陀艮ちゃんは私を捕まえて離さない。
「陀艮ちゃん」
「ブモォ」
「"お願い"」
「!!」
「"離して"」
一瞬でいい。
私のお願いに陀艮ちゃんが戸惑えばいい。
締め上げられた身体が緩んだ瞬間、私はそこから抜け出して走り出す。
「悟っ」
膝をつき、何かに囚われている悟。
悟の目の前にはツギハギとオイル。
「名前……」
走って、走って
「簡単に捕まってんじゃねーよバーカ」
こんな時まで笑っている悟。
あんた、笑ってる場合じゃないでしょ。
「悟っ!!」
「来るなよ」
笑っているが、真っ直ぐに此方を見つめる瞳。
「逃げろ」
「でも…っ」
「いいから逃げろ」
悟の言葉に胸が痛む。
チラリ、と辺りを見れば動けているのはオイルとツギハギのみ。
だが、今は悟に集中しているのかあまり興味を持たれていない。
「行け」
「………ごめんっ」
足手まといになるなら、奴らにいいように利用されるならいない方がいい。
ここは人間が多すぎる。
走り出す私にツギハギとオイルが追いかけてくる様子はない。
走る、走る、走る。
血溜まりを越えて
屍を越えて
呪いを避けて
助けを呼ぶ人を避けて
ーーー悪夢はまだ始まったばかり
あとがき
あああああっ!!!!
ここ、から!!どう!!し、よーーーー!!!
ノープラン(´・ω・`)
うわっ!シリアス!!
なんてこった!
本誌も地獄だし、なんてこった!
結婚のベールやらの話は僕勉の内容がドンピシャでぐっときたので使っております。
諸説あり、かもしれないけど参考にしたのは僕勉です。
次回「もう終わりだ、美しくなかったら生きていたって仕方がない」
通行人、絶望