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※残虐な表現あり
※かなりの捏造
※宿儺サマってこんなんだっけ?解釈違いです
※未熟な設定
苦情無しで
それでも大丈夫な方
お進みください。
汚い身なりをしていた。
ガリガリの身体。
泥だらけの顔。
ボサボサの髪。
ソレは笑っていた。
何年経っても色褪せない……遠い日の記憶。
長い時の中たった僅かな時間。
なのに色濃く残る記憶。
ソレは突然現れた。
「……神様?」
「失せろ」
野山を転げ回り落ちてきた汚いガキだった。
色々な場所を移り歩き
ある時は強き者を。
ある時は女を。
ある時は子供を。
戦い、襲い、喰らってきた。
自分より強い者はいない。
自分に歯向かう者は全て消してきた。
ソレはつまらない日常の中、山の中で過ごす自分の前に現れた。
突然降ってきた異端の子供。
「神様!!今日はね、お魚持ってきた」
「いらん。失せろ」
「お肉の方が良かった?」
「消えろ」
ソレは孤児だった。
しかし一人逞しく生きる力を持っていた。
それが普通ではない"力"でも、ソレにとっては便利なものくらいの認識。
「オマエは俺を畏れないのか」
「……本当に怖いモノが何かを知ってるから」
ソレは語った。
自分が産まれた村で、普通とは違う対応の差。
見えないものを見える力があるだけで差別され、化け物の一族と石を投げられたこと。
村の飢えはオマエらのせいだと家族を殺されたこと。自分だけが化け物に守られ生き残ってしまったこと。
村に何かあるたび、村から外れた山で生きるソレの元を訪れソレを虐げる。
初めて会った日は、村の畑が不作だからと追いかけられ崖から滑った所を呪霊に助けて貰っていたが、滑り落ち俺の目の前に来たらしい。
「あなたは私に石を投げない。
あなたは私の首を締めない。
殺した生き物を玄関に置かないし、あのコ達を怖がらない」
人間はオソロシイ。
「同じ姿なのに、アイツらの方が怖い」
話が通じない。
話を聞かない。
何でも悪いことは人のせい。
そして命を狩り取る化け物。
「アレらはこのコ達や獣以下だ」
同じ人なのに人を嫌う子供。
同じ人なのに人を憎む子供。
化け物を友と呼び
化け物を家族と大切にする
変わった子供だった。
ソレは呪霊達と共に山の奥地に住んでいた。
村から離れた場所に粗末な家を作り、ボロボロの布に包まれ寝食をしていた。
小さな畑を作り、野菜を。
川で魚を。
山で山菜や獣を。
下級の呪霊を使って過ごしていた。
驚くべきは理性の欠片もない呪が人の言葉を聞き、ソレに尽くしていたこと。
見返りなど求めず、ソレに従うのが当たり前のように。
使役しているわけではなさそうだが、ソレの"お願い"が至福である事のように。
ソレは珍しい存在だった。
人でありながら呪いを従える純粋で穢れの無い魂。
子供だからと思っていたが、ソレは格別だった。
「なぜ逃げない?」
「ここで産まれ、みんながここに埋まっているから」
「朽ちれば腐り土に戻る。どこにいても一緒だろ」
「家族の眠る場所がここにあるから」
粗末な墓とすら呼べないもの。
そこに埋められたただの骨。
なのにソレは愛おしそうに笑う。
「私はここ以外で生きていく術を知らないんだよ、神様。
だからここが私のお墓」
「………理解できんな」
「一人は寂しいんだよ」
寂しそうに笑いながら話すソレの思いなど自分には何もわからない。
遠くへ行き、自分のことなど知らない者達の中に入ればソレは持ち前の愛想の良さで受け入れられるだろうに。
家庭を持ち、幸せに暮らすことだって出来るはずだ。
「私はこのコ達を無視出来ないからきっと無理だよ」
「こんな雑魚共などほっておけば良いものを」
「小さなお願いで喜んで手伝ってくれるこのコ達は優しいコだ。
例えこのコ達が人の悪意から生まれても」
「知っていたのか」
「………悪意を向けてくる人ほど、このコ達が憑いているから」
呪いが人の悪意から生まれてくると知りながら、悪意そのものに好意を返す愚か者。
「可哀想なんだ。
誰かを恨む理由がないと生きられない。
罪悪感を抱えながらも抑えきれない、愚かで可哀想な人達」
「オマエはなぜ人を恨まない」
怪我を負わされ、蔑まれ、悪意を向けられているのに。
悪意に家族を殺されたのに。
「私が居なくなった時、また他の人が犠牲になる。
何度も悪意が巡ればやがて大きな悪意は人だけじゃなく土地をも殺してしまう」
ソレは悪いことなどしていない。
ただ、人よりも世界が見えているだけ。
なのに人々は自分と違うだけで怖がり、やがて排除しようとする。
「誰かを恨むのは、呪うのはとても力がいる。
私は誰かを恨んだり呪うより……少しでも笑って生きたい」
小さな幸せを望むソレ。
食べられることに。
花が咲くことに。
生き物の命が生まれることに。
今日を生き残れることに。
「怒っているよりも、笑っていることのほうが幸せだと父が言っていたんだ」
愚かな人間だった。
偽善者な頭の足りない者。
「私は優しくないよ。
あの人達が好きじゃないからあの村の人達の為に何かしようと思わない。このコ達の力をあの人達の為に使おうと思わない」
「コイツらを使えばあの村なぞ一瞬で終わらせることが出来るのに」
「駄目だよ。
このコ達は悪意から生まれても、悪意の為に使っちゃいけない。
そんな使い方、このコ達の為にならない」
「呪いなぞ人を呪い殺すためのものだ」
「"呪う(のろう)"ことは簡単だよ。
だから私はこのコ達で"呪い(まじない)"をするんだ」
「まじない?」
「うん!!
このコ達が優しい世界を作れるように」
綺麗な花を咲かせる呪い。
来年山の恵みが豊作になる呪い。
川が綺麗になる呪い。
綺麗になれば魚が増える呪い。
「使い方次第で良くも悪くもなるって教えて貰ったから」
呪いはソレの願いを叶えようと必死になる。
ただソレが笑い、感謝の気持ちを伝えるだけなのに。
やがて呪いは悪意を減らしていき、消えていく。
しかし村からは新たな呪いが生まれ、ソレの元に来る。
ソレは呪いを少しづつ消し去る事が出来る存在だった。
呪いを引き寄せ、呪いの力を使い、呪いの力を弱め、呪いを消していく。
悪意に感謝を与え、悪意を恵みに変えてコツコツ地道に。
そんな存在を見たことも聞いたことも無かった。
だが、現にソレは呪いを使い呪いを消している。
人の身でありながら、神のような所業を行うソレ。
誰もソレの価値に気付いていない。
誰もソレの凄さに気付いていない。
俺は歓喜に震えた。
ソレは使い方次第で世界を壊すことの出来る存在だった。
人でありながら、神のように指先一つで言葉一つで全てを壊すことの出来る存在。
もしも俺の知る全ての知識を与え、俺の知識を使いながら俺の目の前に立ち塞がる存在になり得る存在。
ーーーそれは何て楽しいことだろう?
「娘」
「なぁに?神様」
「オマエに知識を与えてやる」
オマエは力の使い方を学べ。
そして魅せてみろ。
一匹では取るに足らぬ雑魚の力を最大限に引き出して扱い、幾千もの魑魅魍魎を束ね扱う呪いの姫よ。
文字を教え、知識を与え、呪いの扱いを教えた。
幾年もの月日を生きた中、つまらない代わり映えのない日々を彩る小さな気紛れ。
自分で作る玩具を壊してみたい欲。
ソレは小さな頭でどんどんと吸収していった。
そして俺の望むように呪いの扱い方を学んでいった。
「神様は凄いのね!!色々な知識がある」
「当たり前だ」
「私の知らない事ばかり!!」
何も知らず、俺を神だと崇めながら笑う無邪気なソレ。
あまりにも平和で穏やかな日々だから俺もソレに絆され忘れていた。
人間は脆く、醜く、愚かなことを。
ソレの知識を増やすために都へと足を運ぶようになり、その土地から離れていた。
その日も変わらぬソレの呑気な笑顔があると思っていた。
なのに
木々が、森が、山が震えている。
ソレの呪いにより豊かとなっていた土地が怒りを宿している。
ただ事ではないとソレの元に足を運び……その足はすぐに止まった。
燃えている宿。
血が溜まり、土が血で穢れ。
沢山の呪霊達が騒いでいる。
俺の目の前には、血肉が飛び散り赤黒く染まった地面。人の形など残っている者がいないが一体何人の死体でここら一帯が血に染まったのかはわからない。
そんな中、唯一残っているのはボロボロな姿をよりボロボロにし、腕も足も曲がらぬ方向に捻られ血に染まるソレがいた。
「……何があった」
"ムラビト"
"ムスメムスメムスメムスメムスメムスメ"
"ワナ"
理性が無くてもソレを奪われた呪霊共は怒りに染まっている。
"宿儺サマ
村ノ人間ガ宿ノ周リニ罠ヲ張リ
矢デ火ヲ放チ娘ヲ……愚カナ人間共ハ我々ガ"
「そうか」
雑魚の中にいた珍しく理性ある呪霊。
ソレに近寄れば香る鉄の臭い。
裸足の小さな足首に食い込む獣を捕らえるための罠。
何度も殴られ、逃げられぬように細い手足を捻られた痕。
元の顔などわからぬほど腫れた頬。
燃える家の側にいたせいで所々皮膚が焼けただれている。
ソレの命はもう尽きようとしていた。
パキリッ、とソレを捕らえている鎖を壊す。
そして抱き上げ簡単な治癒を施す。
「生きているか」
俺の問いかけに薄く目を開けるソレ。
「…ミ……サ、マ」
「生きたいか」
「………」
「恨め。憎め。命じろ。
オマエにはその資格がある」
見た目や傷は元に戻したというのに……ソレは笑わない。
ぼーっと虚無を見つめ、命の炎を小さくしていく。
「お……ね…、ぃ」
〈お願い〉
小さく告げられた願いは俺の望むものではなかった。
「………叶えてやる。
俺はオマエの"カミサマ"だからな」
僅かな年月しか生きられなかったソレは
最期に俺の腕の中でその命を止めた。
「………行くぞ、雑魚共」
あの村の全て焼き尽くせ。
あの村の人間全て残虐に殺してしまえ。
痛みで泣き叫んでも痛みを味あわせ
逃げ惑い助けを呼ばせながら絶望を与え
死にたいと思っても死なせず
「鏖殺だ」
奪い、壊し、踏みつけ、燃やし……
自分の気紛れ一つで無くした村。
「つまらん」
腹を満たし、欲を満たし、思い残すことなどないはずなのに……ポッカリと開いた穴。
元が汚いのにもっと汚くボロボロになったソレ。
生命の活動はもう止まっているのに、未練がましく抱いているソレの亡骸。
「脆いな」
己の腕に抱えたソレはとても軽かった。
生き物特有の暖かさなど感じられず、骨と皮しかないソレは俺が少し力を入れれば砕け散ってしまう。
「………生きたいか」
問いかけに反応はない。
ボサボサの汚い髪をどかしてやれば、見えたのは未練などないかのように幸せそうに眠るソレ。
「願え」
この自分に叶えられない願いなどない。
だから望め。
だから叫べ。
だから求めろ。
「オマエの願いを叶えてやる」
………なのに
最期に願ったのは
「っしょ……ぃテ、………サマ」
〈一緒にいて、カミサマ〉
愚かで弱く醜い生き物。
一人は寂しいと言った。
小さな小さなソレは俺が遊ぶ前に壊されてしまった。
「オマエに呪いを与えてやる」
ーーーどんなに時を刻んでも
「この呪いの王が呪うのだから」
ーーーオマエを見つける
「生涯解けることのない呪いをな」
ーーー緣を
「だから今は眠れ」
もう動かないはずのソレ。
再び見た寝顔は口元が小さく上がっていた。
ソレはもう2度と動かないゴミとなった。
【来世では長く生きろ】
ーーー俺が側に居てやる。
永き時を眠り、目覚めた先に居た玩具。
あの時の小娘よりも生意気で可愛気の無い小娘。
厄介なモノばかり引き寄せる偽善者。
アレになど似ても似つかない。
アレの代わりになどならない。
アレよりも喧しい。
だが、巡った魂はアレのもの。
小僧の目を通し、耳を通し、拾った情報。
「俺のモノに手を出すとはいい度胸だ」
ーーー次は手放さない。
あとがき
宿儺さんの本誌の活躍やばすぎる。
あんなの惚れるって。
めぐみんと宿儺さんのカプ推しさん達が大変なことになってましたね。
そんななか私は宿儺さんのうちわぶんぶん振り回していたレベルの夢女です。
流石は女の子何人も食べてきただけある色男だ……あんなの惚れない人いないって。
指名No.1はやることが違いますな。
宿儺さんが興味を持って執着する理由を書きましたが……うん、シリアス似合わないなぁ。
宿儺さんにとって名も無き小娘に執着ってゆーよりも、その力に執着。
だから通行人が小娘さんと同じ力を持つから興味あるよー的な。
しかし恋とか愛とか知らないから力に執着してるだけで、呪うほど気に入ってたとゆー捕捉。
次は逃がさんとガチめに狙ってます。
捕捉2
通行人の能力開示!!
簡単に言えば
お願いして達成して褒めてたら勝手に除霊的な。
呪霊専門のマイナスイオン的な存在。
しかし文献に残されても悪意ある内容しか残っていない。なので現時点で通行人の本当の能力知ってるのは宿儺さんのみ。
そしてマイナスイオンがどこぞの厄介な神様に封印されている。
厄介が厄介に絡み付きトラブって絡まってるので通行人は逃げられない!!
次回「前のほうがいいもん………(べー)」
転校先より前のとこがいいもん。
おかしな場所より元の場所に返してよー。
お仕事したくないので働きません!!
※かなりの捏造
※宿儺サマってこんなんだっけ?解釈違いです
※未熟な設定
苦情無しで
それでも大丈夫な方
お進みください。
汚い身なりをしていた。
ガリガリの身体。
泥だらけの顔。
ボサボサの髪。
ソレは笑っていた。
何年経っても色褪せない……遠い日の記憶。
長い時の中たった僅かな時間。
なのに色濃く残る記憶。
ソレは突然現れた。
「……神様?」
「失せろ」
野山を転げ回り落ちてきた汚いガキだった。
色々な場所を移り歩き
ある時は強き者を。
ある時は女を。
ある時は子供を。
戦い、襲い、喰らってきた。
自分より強い者はいない。
自分に歯向かう者は全て消してきた。
ソレはつまらない日常の中、山の中で過ごす自分の前に現れた。
突然降ってきた異端の子供。
「神様!!今日はね、お魚持ってきた」
「いらん。失せろ」
「お肉の方が良かった?」
「消えろ」
ソレは孤児だった。
しかし一人逞しく生きる力を持っていた。
それが普通ではない"力"でも、ソレにとっては便利なものくらいの認識。
「オマエは俺を畏れないのか」
「……本当に怖いモノが何かを知ってるから」
ソレは語った。
自分が産まれた村で、普通とは違う対応の差。
見えないものを見える力があるだけで差別され、化け物の一族と石を投げられたこと。
村の飢えはオマエらのせいだと家族を殺されたこと。自分だけが化け物に守られ生き残ってしまったこと。
村に何かあるたび、村から外れた山で生きるソレの元を訪れソレを虐げる。
初めて会った日は、村の畑が不作だからと追いかけられ崖から滑った所を呪霊に助けて貰っていたが、滑り落ち俺の目の前に来たらしい。
「あなたは私に石を投げない。
あなたは私の首を締めない。
殺した生き物を玄関に置かないし、あのコ達を怖がらない」
人間はオソロシイ。
「同じ姿なのに、アイツらの方が怖い」
話が通じない。
話を聞かない。
何でも悪いことは人のせい。
そして命を狩り取る化け物。
「アレらはこのコ達や獣以下だ」
同じ人なのに人を嫌う子供。
同じ人なのに人を憎む子供。
化け物を友と呼び
化け物を家族と大切にする
変わった子供だった。
ソレは呪霊達と共に山の奥地に住んでいた。
村から離れた場所に粗末な家を作り、ボロボロの布に包まれ寝食をしていた。
小さな畑を作り、野菜を。
川で魚を。
山で山菜や獣を。
下級の呪霊を使って過ごしていた。
驚くべきは理性の欠片もない呪が人の言葉を聞き、ソレに尽くしていたこと。
見返りなど求めず、ソレに従うのが当たり前のように。
使役しているわけではなさそうだが、ソレの"お願い"が至福である事のように。
ソレは珍しい存在だった。
人でありながら呪いを従える純粋で穢れの無い魂。
子供だからと思っていたが、ソレは格別だった。
「なぜ逃げない?」
「ここで産まれ、みんながここに埋まっているから」
「朽ちれば腐り土に戻る。どこにいても一緒だろ」
「家族の眠る場所がここにあるから」
粗末な墓とすら呼べないもの。
そこに埋められたただの骨。
なのにソレは愛おしそうに笑う。
「私はここ以外で生きていく術を知らないんだよ、神様。
だからここが私のお墓」
「………理解できんな」
「一人は寂しいんだよ」
寂しそうに笑いながら話すソレの思いなど自分には何もわからない。
遠くへ行き、自分のことなど知らない者達の中に入ればソレは持ち前の愛想の良さで受け入れられるだろうに。
家庭を持ち、幸せに暮らすことだって出来るはずだ。
「私はこのコ達を無視出来ないからきっと無理だよ」
「こんな雑魚共などほっておけば良いものを」
「小さなお願いで喜んで手伝ってくれるこのコ達は優しいコだ。
例えこのコ達が人の悪意から生まれても」
「知っていたのか」
「………悪意を向けてくる人ほど、このコ達が憑いているから」
呪いが人の悪意から生まれてくると知りながら、悪意そのものに好意を返す愚か者。
「可哀想なんだ。
誰かを恨む理由がないと生きられない。
罪悪感を抱えながらも抑えきれない、愚かで可哀想な人達」
「オマエはなぜ人を恨まない」
怪我を負わされ、蔑まれ、悪意を向けられているのに。
悪意に家族を殺されたのに。
「私が居なくなった時、また他の人が犠牲になる。
何度も悪意が巡ればやがて大きな悪意は人だけじゃなく土地をも殺してしまう」
ソレは悪いことなどしていない。
ただ、人よりも世界が見えているだけ。
なのに人々は自分と違うだけで怖がり、やがて排除しようとする。
「誰かを恨むのは、呪うのはとても力がいる。
私は誰かを恨んだり呪うより……少しでも笑って生きたい」
小さな幸せを望むソレ。
食べられることに。
花が咲くことに。
生き物の命が生まれることに。
今日を生き残れることに。
「怒っているよりも、笑っていることのほうが幸せだと父が言っていたんだ」
愚かな人間だった。
偽善者な頭の足りない者。
「私は優しくないよ。
あの人達が好きじゃないからあの村の人達の為に何かしようと思わない。このコ達の力をあの人達の為に使おうと思わない」
「コイツらを使えばあの村なぞ一瞬で終わらせることが出来るのに」
「駄目だよ。
このコ達は悪意から生まれても、悪意の為に使っちゃいけない。
そんな使い方、このコ達の為にならない」
「呪いなぞ人を呪い殺すためのものだ」
「"呪う(のろう)"ことは簡単だよ。
だから私はこのコ達で"呪い(まじない)"をするんだ」
「まじない?」
「うん!!
このコ達が優しい世界を作れるように」
綺麗な花を咲かせる呪い。
来年山の恵みが豊作になる呪い。
川が綺麗になる呪い。
綺麗になれば魚が増える呪い。
「使い方次第で良くも悪くもなるって教えて貰ったから」
呪いはソレの願いを叶えようと必死になる。
ただソレが笑い、感謝の気持ちを伝えるだけなのに。
やがて呪いは悪意を減らしていき、消えていく。
しかし村からは新たな呪いが生まれ、ソレの元に来る。
ソレは呪いを少しづつ消し去る事が出来る存在だった。
呪いを引き寄せ、呪いの力を使い、呪いの力を弱め、呪いを消していく。
悪意に感謝を与え、悪意を恵みに変えてコツコツ地道に。
そんな存在を見たことも聞いたことも無かった。
だが、現にソレは呪いを使い呪いを消している。
人の身でありながら、神のような所業を行うソレ。
誰もソレの価値に気付いていない。
誰もソレの凄さに気付いていない。
俺は歓喜に震えた。
ソレは使い方次第で世界を壊すことの出来る存在だった。
人でありながら、神のように指先一つで言葉一つで全てを壊すことの出来る存在。
もしも俺の知る全ての知識を与え、俺の知識を使いながら俺の目の前に立ち塞がる存在になり得る存在。
ーーーそれは何て楽しいことだろう?
「娘」
「なぁに?神様」
「オマエに知識を与えてやる」
オマエは力の使い方を学べ。
そして魅せてみろ。
一匹では取るに足らぬ雑魚の力を最大限に引き出して扱い、幾千もの魑魅魍魎を束ね扱う呪いの姫よ。
文字を教え、知識を与え、呪いの扱いを教えた。
幾年もの月日を生きた中、つまらない代わり映えのない日々を彩る小さな気紛れ。
自分で作る玩具を壊してみたい欲。
ソレは小さな頭でどんどんと吸収していった。
そして俺の望むように呪いの扱い方を学んでいった。
「神様は凄いのね!!色々な知識がある」
「当たり前だ」
「私の知らない事ばかり!!」
何も知らず、俺を神だと崇めながら笑う無邪気なソレ。
あまりにも平和で穏やかな日々だから俺もソレに絆され忘れていた。
人間は脆く、醜く、愚かなことを。
ソレの知識を増やすために都へと足を運ぶようになり、その土地から離れていた。
その日も変わらぬソレの呑気な笑顔があると思っていた。
なのに
木々が、森が、山が震えている。
ソレの呪いにより豊かとなっていた土地が怒りを宿している。
ただ事ではないとソレの元に足を運び……その足はすぐに止まった。
燃えている宿。
血が溜まり、土が血で穢れ。
沢山の呪霊達が騒いでいる。
俺の目の前には、血肉が飛び散り赤黒く染まった地面。人の形など残っている者がいないが一体何人の死体でここら一帯が血に染まったのかはわからない。
そんな中、唯一残っているのはボロボロな姿をよりボロボロにし、腕も足も曲がらぬ方向に捻られ血に染まるソレがいた。
「……何があった」
"ムラビト"
"ムスメムスメムスメムスメムスメムスメ"
"ワナ"
理性が無くてもソレを奪われた呪霊共は怒りに染まっている。
"宿儺サマ
村ノ人間ガ宿ノ周リニ罠ヲ張リ
矢デ火ヲ放チ娘ヲ……愚カナ人間共ハ我々ガ"
「そうか」
雑魚の中にいた珍しく理性ある呪霊。
ソレに近寄れば香る鉄の臭い。
裸足の小さな足首に食い込む獣を捕らえるための罠。
何度も殴られ、逃げられぬように細い手足を捻られた痕。
元の顔などわからぬほど腫れた頬。
燃える家の側にいたせいで所々皮膚が焼けただれている。
ソレの命はもう尽きようとしていた。
パキリッ、とソレを捕らえている鎖を壊す。
そして抱き上げ簡単な治癒を施す。
「生きているか」
俺の問いかけに薄く目を開けるソレ。
「…ミ……サ、マ」
「生きたいか」
「………」
「恨め。憎め。命じろ。
オマエにはその資格がある」
見た目や傷は元に戻したというのに……ソレは笑わない。
ぼーっと虚無を見つめ、命の炎を小さくしていく。
「お……ね…、ぃ」
〈お願い〉
小さく告げられた願いは俺の望むものではなかった。
「………叶えてやる。
俺はオマエの"カミサマ"だからな」
僅かな年月しか生きられなかったソレは
最期に俺の腕の中でその命を止めた。
「………行くぞ、雑魚共」
あの村の全て焼き尽くせ。
あの村の人間全て残虐に殺してしまえ。
痛みで泣き叫んでも痛みを味あわせ
逃げ惑い助けを呼ばせながら絶望を与え
死にたいと思っても死なせず
「鏖殺だ」
奪い、壊し、踏みつけ、燃やし……
自分の気紛れ一つで無くした村。
「つまらん」
腹を満たし、欲を満たし、思い残すことなどないはずなのに……ポッカリと開いた穴。
元が汚いのにもっと汚くボロボロになったソレ。
生命の活動はもう止まっているのに、未練がましく抱いているソレの亡骸。
「脆いな」
己の腕に抱えたソレはとても軽かった。
生き物特有の暖かさなど感じられず、骨と皮しかないソレは俺が少し力を入れれば砕け散ってしまう。
「………生きたいか」
問いかけに反応はない。
ボサボサの汚い髪をどかしてやれば、見えたのは未練などないかのように幸せそうに眠るソレ。
「願え」
この自分に叶えられない願いなどない。
だから望め。
だから叫べ。
だから求めろ。
「オマエの願いを叶えてやる」
………なのに
最期に願ったのは
「っしょ……ぃテ、………サマ」
〈一緒にいて、カミサマ〉
愚かで弱く醜い生き物。
一人は寂しいと言った。
小さな小さなソレは俺が遊ぶ前に壊されてしまった。
「オマエに呪いを与えてやる」
ーーーどんなに時を刻んでも
「この呪いの王が呪うのだから」
ーーーオマエを見つける
「生涯解けることのない呪いをな」
ーーー緣を
「だから今は眠れ」
もう動かないはずのソレ。
再び見た寝顔は口元が小さく上がっていた。
ソレはもう2度と動かないゴミとなった。
【来世では長く生きろ】
ーーー俺が側に居てやる。
永き時を眠り、目覚めた先に居た玩具。
あの時の小娘よりも生意気で可愛気の無い小娘。
厄介なモノばかり引き寄せる偽善者。
アレになど似ても似つかない。
アレの代わりになどならない。
アレよりも喧しい。
だが、巡った魂はアレのもの。
小僧の目を通し、耳を通し、拾った情報。
「俺のモノに手を出すとはいい度胸だ」
ーーー次は手放さない。
あとがき
宿儺さんの本誌の活躍やばすぎる。
あんなの惚れるって。
めぐみんと宿儺さんのカプ推しさん達が大変なことになってましたね。
そんななか私は宿儺さんのうちわぶんぶん振り回していたレベルの夢女です。
流石は女の子何人も食べてきただけある色男だ……あんなの惚れない人いないって。
指名No.1はやることが違いますな。
宿儺さんが興味を持って執着する理由を書きましたが……うん、シリアス似合わないなぁ。
宿儺さんにとって名も無き小娘に執着ってゆーよりも、その力に執着。
だから通行人が小娘さんと同じ力を持つから興味あるよー的な。
しかし恋とか愛とか知らないから力に執着してるだけで、呪うほど気に入ってたとゆー捕捉。
次は逃がさんとガチめに狙ってます。
捕捉2
通行人の能力開示!!
簡単に言えば
お願いして達成して褒めてたら勝手に除霊的な。
呪霊専門のマイナスイオン的な存在。
しかし文献に残されても悪意ある内容しか残っていない。なので現時点で通行人の本当の能力知ってるのは宿儺さんのみ。
そしてマイナスイオンがどこぞの厄介な神様に封印されている。
厄介が厄介に絡み付きトラブって絡まってるので通行人は逃げられない!!
次回「前のほうがいいもん………(べー)」
転校先より前のとこがいいもん。
おかしな場所より元の場所に返してよー。
お仕事したくないので働きません!!