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「やぁ、久しいね」
馴れ馴れしい前髪が話しかけてきた!!
話す
前髪むしる←
笑う
嫌な顔をする
通行人名前の攻撃!!
通行人名前 は 嫌な顔 を し た 。
やほやほ。
久しぶりに一人で秋冬物のショッピングを楽しんでいたら怪しい袈裟の男に話かけられたよ。
「そんな顔をするなよ、名前」
「近い、うざい、離れろ」
腰を抱くな。
顎に手を添えるな。
まじでお前……キャラどこ投げ捨ててきたわけ?
「坊主なら禁欲しろよ」
「私は坊主ではないよ」
「じゃあそれコスプレ?」
「みたいなものだね。
人間は馬鹿だからそれっぽい格好をしていたら信じるだろ?」
「いや、お前みたいな胡散臭さの塊を信用するって………その人間どれだけ切羽詰まってんの?」
ケラケラ笑いだす前髪。
ねぇ、怖いんだけど。
久しぶりに会ったけど、こいつのキャラ変についていけなくて困る。
「相変わらずだね、名前」
「あんたは随分………見た目も中身もはっちゃけたな」
坊主でもないのに袈裟姿。
そんでもってロン毛にお団子。
どこのチャラ坊主だよ。
チャラチャラしててもはや似合ってる気がしてきたよ。
いや、やっぱ変。
「悟と上手くやってるのかい?」
「ん?何で知ってんの?」
「情報は大事だよ」
「個人情報保護も大事だよ!!」
腰を抱いてる腕が外れず、謎のエスコートを受けている。
街中で袈裟姿の男と言い合ってたらそりゃ問題な気もするけどな。
顔がいいからチラッチラ見られてるが、袈裟姿にギョッとされてる。
「クックックッ。
やはり悟は名前を手放せなかったんだな」
「ねぇ、さっきからキモいよ。
そのテンションついてけないんだけど」
「私もね、名前を迎えに行こうか迷ったんだ」
「聞けよ」
「術式が無くても見えて呪具が使えるならね。
他の猿共より、名前のことは評価しているんだ」
「おい、話聞けって」
「名前は人の懐に入るのが得意だったね。
私の仕事にも役立つだろうし
家族としてではなく友人として側に置くのも楽しそうだ。
きっと美々子も菜々子も懐くよ」
「聞けって言ってんだろ前髪」
ぐいっと前髪を引っ張る。
「痛いじゃないか」
「勝手に一人語ってんじゃねーよ。
まじそのテンションなんなの?パリピ?
似合わないからやめとけ」
「頭の悪い猿共と一緒にしないでくれ」
「私から見たらお前のテンションそんなもんだよ」
腰の手を叩くが、それは離れない。
にやにやする前髪に、もう一回前髪を引っ張ろうとしたら止められた。
「元気だったかい?」
「なぁ、それ今なの?あと近い」
「私も久しぶりにこっちに来てね。
一緒に散歩どうだい?」
「お前本当人の話し聞かないな。
耳にフィルター貼り付けてんの?」
「ははは、わざとに決まってるだろ」
「前髪引きちぎるぞコノヤロウ」
いい笑顔で言いきりやがった!!
こいつ、会話する気ないよね!!
足踏んだら痛いかな?草履だから踏んでやろ。
って思ったら片腕で抱き上げられた。
「み"ゃっ」
「危ないじゃないか」
「おまっ!!?片腕ってゴリラかよ!!」
「鍛えているからこれくらい平気さ」
「ちょっ!!路地入るな!!人拐い!!」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと返すから」
「信用なんねー!!!」
路地に入った途端、変な呪霊出した前髪。
マンタ?空飛ぶマンタ?
可愛いな、おい。
そのマンタに乗ってふわふわお空の旅へ。
私?
前髪の膝の中だよ。
「お前さぁ……本当…」
「悟にバレたら怒られちゃうな」
「オイ」
「聞いたんだろ?私の事」
急に真面目になった前髪。
その声は低く無機質で、先ほどまでのテンションの高さが嘘のよう。
「聞いてないよ」
「嘘だな」
「悟と道を違えたって事だけ」
「………聞いてるじゃないか」
「あんたは元気なの?」
「元気さ。あの頃よりずっと」
暫く無言が続く。
よく考えれば、前髪と二人で話すのはチョコミント以来な気がする。
「おい、前髪」
「なんだい?」
「チョコミント食べる?」
あの頃からは考えられなかったが、まさかのブームきたぞ。
夏になるとチョコミントフィーバーでスイーツやらアイスやらチョコやらオレオやら増えてきた。
前髪に持っていたチョコミント味の小枝のチョコをあげる。
「チョコミントだね」
「チョコミント味のチョコもあるぞ」
「………チョコミント味だ」
「むしろミント味のチョコでよくね?って思った」
そうだね、と笑う前髪。
「………キミは人の言葉が通じない猿と出会ったらどうする?」
「なにそれ?野生の猿は基本的話通じないだろ」
「じゃあ人で」
「今まさにお前と通じあえてないわ」
「ははは、面白いね」
「冗談じゃないから。
言葉のキャッチボールしよ」
「それが出来ない奴らもいるんだよ」
冷たい声に、こいつの情緒が心配になるわ。
「知ってるか?7のつくコンビニには
チョコミントチーズケーキってのがあるよ」
「………うわぁ」
「見た目も鮮やかな緑……青?でなかなか食欲がそそられない」
「だろうね」
「けど、私はあれウマイと思ってる」
「食べたのか」
「なかには気持ち悪くて無理だと言う人もいるし、廃棄になるらしい」
近所のコンビニのおにーさんが嘆いてた。
新作として最近毎日置いてるが、その半分は廃棄になると。
「チョコミントの良し悪しが分かれるように
話が通じない人間もなかにはいるわ」
「独特な答えだね」
「そんな一部の答えで全てを判断して
チョコミントを否定するのはナンセンスだ」
「あれ?人の話だったよね?」
「今まさに時代はチョコミント。
だから嫌っていた人間も波に乗り出してチョコミントのディスりが少なくなっていくんだ」
「チョコミントから離れようか」
「そう………パクチーのように!!!」
「突然のパクチー」
奴は突然現れ、パクチー女子なるものが増えた。
なんにでもパクチー添えたら映えとかパクチー美味しいって草モリモリ召し上がってる人々よ……そんな臭い草食ってうまいか?
「チョコミントは許せても、パクチーは許せないんだ……っ」
「キミは何と戦ってるんだ」
「パクチー味のチョコとか誰得なんだよっ!!」
「会話をしてくれ」
とまぁ、そんなわけで
「好き嫌いはあるよねって話」
「うん、唐突すぎる」
「そして廃棄されていく人々の中にもましな奴らはいるよって話」
「独特の返しに困惑しかないよ」
「私がどんな答えを返したところで
お前の中では揺るがないものがあるんでしょ?
なら私の意見なんてチョコミントとパクチー論争として聞き流しとけ」
私なんかの意見で今からどうにかなるなら、悟と決別なんかしてないだろう。
私よりも時間を共にした親友と離れてまで、自分の意思を貫くことを決めたのだから。
「悟とお前が怪獣大戦争をしようが、熱く拳で語り合おうが、夕日に向かって話そうがどーでもいい」
「ドライだねぇ」
「んで?私誘拐して悟ぶちギレさせようって魂胆?
やめとけ。
私の自由が奪われるからやめとけ」
「ふふっ。ははははっ!!」
「耳元で大声で笑うなアホ」
ケラケラ笑ってる前髪。
ふわふわ不安定なのに笑うともっと不安定になんだろうが。
「やっぱり名前は面白いなぁ」
「普通普通」
「………何の裏もないよ。
ただ、久しい友人を見かけたからゆっくり話がしたかったんだ」
「そーかい」
穏やかな声で話すから。
少しだけ、昔を思い出す。
「で、どこ行くの?」
「乙骨憂太を知ってるかい?」
「未成年、おさわりダメ絶対」
「そんなんじゃない」
「そうか。お前は人妻熟女寝とりが良かったもんな」
「待て。なんだその知識は」
「年と共に未成年へと興味が湧いたのかと」
「辞めてくれ」
そんなんじゃない、と怖い声を出された。
最近そんな変態に出会ったからつい。
「私は乙骨くんが気になるだけさ。
年若く特級呪術師となった彼がね」
「普通の子だよ」
「だから少し、ちょっかいかけようと思って」
「悟に怒られるよ」
「悟にもちょっかいだすから大丈夫さ」
「それ、あかんやつ」
クスクス笑う前髪は楽しそうにしている。
「名前を追いかければ良かった」
「?」
「あの頃は悟が熱を上げていたし、こんなアホ私の好みではないからね」
「なんだ。喧嘩売ってんのか」
「名前が側にいたら、私は思い悩まずもしも、の未来があったのかな」
さらさらと髪を弄ぶ前髪。
「そんなたらればの話意味ないよ」
「現実主義だなぁ」
「友人だから、今あんたは私と話してるんでしょ」
私の言葉にピタリ、と髪を弄んでいた手が止まる。
「あんたは私を友人として好んでくれた。
私もあんたを友人として好んでいた」
「そこから発展するかもしれないだろ」
「硝子ちゃんがいなかったら、私は声をかけなかった。
悟がいなかったら、ほぼ毎日顔を合わせることはなかった。
あんた達の誰か一人でも欠けていたら、私はあんたと友達にもなれずあんたの言う猿の一員だったろうさ」
「………参ったね。
アホだと思っていたら少しは賢くなったんだね。偉い偉い」
「おい」
「グリコのオマケや流しそうめんやグラウンドにアート作品を作ろうとした人間には思えないよ」
「おい、最後なんで知ってんだ」
「任務帰りたまたま見えたんだよ」
アニメの絵だったね、とクツクツ笑う前髪。
なんてこった……ハムタロスワァン!!を描いてたのがバレてただと!!
「悟にも言ったことないのに」
「あとは公園で小学生とピカピカの泥団子作ってたり」
「おい、まて」
「自販機のお釣部分を全部見て取り忘れた小銭をパクったり」
「嘘だろ」
「かつあげしていた学生ヤンキーに自販機のおでん勧めながら世間話聞いたり」
「ちょっ、ストップストップ!!」
「路上ライブで友人らと凄いノリで応援したり」
「やめて!!めっっちゃ見てる!!私のことめっっちゃ見てる!!」
「歩道橋で心配ないさって叫んでた時は心配したよ………頭の」
「恥っっっっず!!!!」
埋まりたい。
改めて言われると埋まりたい内容ばかりなんですけどぉ!!
「キミが友人で良かったよ」
「………私のHPは0よ」
「愛おしい馬鹿って名前 にピッタリだ」
「嬉しくない」
ポンポンと子供扱いする前髪。
マンタがそろそろと人気のない場所に降りていく。
前髪に抱えられながら地面に降りる。
どこかのビルの屋上らしい。
「名前」
「なに?」
「12月24日は日没後高専にも京都にも新宿にも近寄るな」
「なんで?」
「友人としての忠告だ」
マンタに再び乗る前髪。
ひらひらと手を振っていなくなった。
「………あの野郎」
ガチャガチャとドアノブを回しても開かない扉。
回りを見ても降りられない高さのビルの屋上にポツンと一人。
このビル、ドア開いてねぇじゃないか。
「次は前髪むしってやる」
ひとまず、悟に電話しよう。
助けて、さとるーまん。
「ねぇ、なんでこんなとこにいんの?」
ねぇ、なんでお前は空飛んでるの?
ってツッコミはまた今度にしよう。
こいつはチート。チートだから何でもあり。
「君の親友に聞いてくれ」
「………は?」
「たまたまなのか知らんが会ったよ」
「傑に?」
ピリッとする悟。
どうどう、と背中を叩く。
「ここに置いていかれただけで何もないよ」
「本当に?」
「チョコミントのチョコ食べながらお空のお散歩してただけ」
「何やってんのオマエ」
素で呆れられた。
だってあいつとはチョコミントの縁だもん。
仲良くチョコミントアイス食べた仲だもん。
「友人と優雅なお茶会さ」
「かっこよく言っても駄目だから」
「ちょっと片手で持ち上げられただけ」
「あ"?」
「こっわ!!!」
久々に聞いたわ、そんな低い声!!
何の対抗意識なのか、ひょいっと片腕で持ち上げられる。
前髪も軽々と子供を片手で抱き上げるように持ち上げたが……なんで悟も子供を抱き上げるようなやり方なの?
持ち上げられた方が怖いの!!
触るとこってか、掴むとこが肩しかないのよ!?
しかも190オーバーに抱き上げられてみろ。
そこは2mオーバーの世界だぞ?
怖いに決まってるだろ。
悟の頭が胸元にある。
お布団の中なら安心できるが、2mの世界は遠慮したい。
「呪術界にはゴリラしかいないの?」
「は?なんで?」
「腕力おかしい奴らばっか」
「大丈夫。ちゃんと重いよ」
「大丈夫の使い方間違ってるわボケ」
悟の登頂部をベチコーンと叩く。
そのまま下痢ツボを押す。
「イテテテ。酷いな、本当のことなのに」
「残念すぎる」
「なぁ」
「ん?」
「傑何か言ってた?」
「12月24日に日没後は高専にも京都にも新宿にも近寄るなって」
「………そう」
「友人としての忠告だってさ」
下にある悟の顔を見れば何か考えているらしい。
難しい顔をしながら黙ってしまった悟の頬を摘まむ。
「なにしてんの」
「難しい顔してたから」
「………はぁ」
「溜め息って酷いな」
「変なのと縁があるから困ったなって思っただけ」
ツンツン悟の頬をつつけば手を封じられた。
「アイツのことだからオマエに嘘は言わないだろうな」
「なに?」
「24日、絶対家から出ないで」
「………わかった」
真剣な悟に私は頷く。
漫画やアニメのヒロインなら、きっと黙って出掛けて止めようと必死になるのだろうが、生憎私はそんなんじゃない。
ただの一般人がどうにかできる問題じゃないから。
私では止められないところにこの2人は来てしまっている。
「………なに」
よしよし、と悟の頭を撫でる。
ピリッとしていた悟が少しだけ和らいだ気がした。
「私は悟を置いていかないから
ちゃんと帰っておいで」
「………あぁ」
「周りが変わっても私は変わらないよ」
「………ありがと」
絶対とは言い切れない。
周りが悟を置いていくのなら私が側にいよう。
ビルの屋上の柵に飛び乗る悟。
体がふわっと揺れて慌てて悟の首にしがみつく。
「ねぇ、苦しいんだけど」
「怖い怖い怖い怖い」
「おっぱい当たってるよ」
「それどころじゃない!!」
「アイツと空中散歩とかズルいから僕ともしようよ」
「地面!!カムバック地面!!」
騒がしい私に悟が笑う。
どうなってるのか知らないが、空中を歩くこの男に教えたい。
未確認生物扱いされたくなかったら地面を歩こうと。
「名前」
「なにぃ!?」
「好き」
「………キュンッとするけど今の状況ヒュンッと心臓が止まりそうになるからまじで降ろして」
「えー。ロマンチックなのに?」
「この状況はロマンチックではない。絶対」
「はいはい。
じゃあ地面降りますよー」
「地面降りたらちゃんと手を繋いで歩いてくれ」
「わかったよ」
くすり、と笑う悟のこめかみに唇を当てる。
きょとんと此方を見る悟。
「私も好きだよ」
「………なんでそう、不意打ちで可愛いことするかなぁ」
「好きだろ?こんな私が」
「好きだよ。馬鹿で可愛いオマエが」
「一言余計」
「犯罪者に誘拐されて仲良くお空デートして廃ビルに置き去りにされる馬鹿はオマエくらいだよ」
「なんも言えねぇ」
2人で顔を見合わせて笑う。
どうか、お願い。
この笑顔が消えませんように。
あとがき
0巻の宣戦布告後。
美々菜々がクレープ食べてる間に拉致したと思ってくれたらいーな。
たまたま見かけたから他の家族に自由行動を伝えて拉致した夏油くん。
そのあと優雅なお散歩タイム。
で、そろそろ遅くなったから美々菜々お家に連れて帰らなきゃ、と人気の無いとこに放置。
のちに悟が来るから大丈夫と信用して放置。
クズである。
馴れ馴れしい前髪が話しかけてきた!!
話す
前髪むしる←
笑う
嫌な顔をする
通行人名前の攻撃!!
通行人名前 は 嫌な顔 を し た 。
やほやほ。
久しぶりに一人で秋冬物のショッピングを楽しんでいたら怪しい袈裟の男に話かけられたよ。
「そんな顔をするなよ、名前」
「近い、うざい、離れろ」
腰を抱くな。
顎に手を添えるな。
まじでお前……キャラどこ投げ捨ててきたわけ?
「坊主なら禁欲しろよ」
「私は坊主ではないよ」
「じゃあそれコスプレ?」
「みたいなものだね。
人間は馬鹿だからそれっぽい格好をしていたら信じるだろ?」
「いや、お前みたいな胡散臭さの塊を信用するって………その人間どれだけ切羽詰まってんの?」
ケラケラ笑いだす前髪。
ねぇ、怖いんだけど。
久しぶりに会ったけど、こいつのキャラ変についていけなくて困る。
「相変わらずだね、名前」
「あんたは随分………見た目も中身もはっちゃけたな」
坊主でもないのに袈裟姿。
そんでもってロン毛にお団子。
どこのチャラ坊主だよ。
チャラチャラしててもはや似合ってる気がしてきたよ。
いや、やっぱ変。
「悟と上手くやってるのかい?」
「ん?何で知ってんの?」
「情報は大事だよ」
「個人情報保護も大事だよ!!」
腰を抱いてる腕が外れず、謎のエスコートを受けている。
街中で袈裟姿の男と言い合ってたらそりゃ問題な気もするけどな。
顔がいいからチラッチラ見られてるが、袈裟姿にギョッとされてる。
「クックックッ。
やはり悟は名前を手放せなかったんだな」
「ねぇ、さっきからキモいよ。
そのテンションついてけないんだけど」
「私もね、名前を迎えに行こうか迷ったんだ」
「聞けよ」
「術式が無くても見えて呪具が使えるならね。
他の猿共より、名前のことは評価しているんだ」
「おい、話聞けって」
「名前は人の懐に入るのが得意だったね。
私の仕事にも役立つだろうし
家族としてではなく友人として側に置くのも楽しそうだ。
きっと美々子も菜々子も懐くよ」
「聞けって言ってんだろ前髪」
ぐいっと前髪を引っ張る。
「痛いじゃないか」
「勝手に一人語ってんじゃねーよ。
まじそのテンションなんなの?パリピ?
似合わないからやめとけ」
「頭の悪い猿共と一緒にしないでくれ」
「私から見たらお前のテンションそんなもんだよ」
腰の手を叩くが、それは離れない。
にやにやする前髪に、もう一回前髪を引っ張ろうとしたら止められた。
「元気だったかい?」
「なぁ、それ今なの?あと近い」
「私も久しぶりにこっちに来てね。
一緒に散歩どうだい?」
「お前本当人の話し聞かないな。
耳にフィルター貼り付けてんの?」
「ははは、わざとに決まってるだろ」
「前髪引きちぎるぞコノヤロウ」
いい笑顔で言いきりやがった!!
こいつ、会話する気ないよね!!
足踏んだら痛いかな?草履だから踏んでやろ。
って思ったら片腕で抱き上げられた。
「み"ゃっ」
「危ないじゃないか」
「おまっ!!?片腕ってゴリラかよ!!」
「鍛えているからこれくらい平気さ」
「ちょっ!!路地入るな!!人拐い!!」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと返すから」
「信用なんねー!!!」
路地に入った途端、変な呪霊出した前髪。
マンタ?空飛ぶマンタ?
可愛いな、おい。
そのマンタに乗ってふわふわお空の旅へ。
私?
前髪の膝の中だよ。
「お前さぁ……本当…」
「悟にバレたら怒られちゃうな」
「オイ」
「聞いたんだろ?私の事」
急に真面目になった前髪。
その声は低く無機質で、先ほどまでのテンションの高さが嘘のよう。
「聞いてないよ」
「嘘だな」
「悟と道を違えたって事だけ」
「………聞いてるじゃないか」
「あんたは元気なの?」
「元気さ。あの頃よりずっと」
暫く無言が続く。
よく考えれば、前髪と二人で話すのはチョコミント以来な気がする。
「おい、前髪」
「なんだい?」
「チョコミント食べる?」
あの頃からは考えられなかったが、まさかのブームきたぞ。
夏になるとチョコミントフィーバーでスイーツやらアイスやらチョコやらオレオやら増えてきた。
前髪に持っていたチョコミント味の小枝のチョコをあげる。
「チョコミントだね」
「チョコミント味のチョコもあるぞ」
「………チョコミント味だ」
「むしろミント味のチョコでよくね?って思った」
そうだね、と笑う前髪。
「………キミは人の言葉が通じない猿と出会ったらどうする?」
「なにそれ?野生の猿は基本的話通じないだろ」
「じゃあ人で」
「今まさにお前と通じあえてないわ」
「ははは、面白いね」
「冗談じゃないから。
言葉のキャッチボールしよ」
「それが出来ない奴らもいるんだよ」
冷たい声に、こいつの情緒が心配になるわ。
「知ってるか?7のつくコンビニには
チョコミントチーズケーキってのがあるよ」
「………うわぁ」
「見た目も鮮やかな緑……青?でなかなか食欲がそそられない」
「だろうね」
「けど、私はあれウマイと思ってる」
「食べたのか」
「なかには気持ち悪くて無理だと言う人もいるし、廃棄になるらしい」
近所のコンビニのおにーさんが嘆いてた。
新作として最近毎日置いてるが、その半分は廃棄になると。
「チョコミントの良し悪しが分かれるように
話が通じない人間もなかにはいるわ」
「独特な答えだね」
「そんな一部の答えで全てを判断して
チョコミントを否定するのはナンセンスだ」
「あれ?人の話だったよね?」
「今まさに時代はチョコミント。
だから嫌っていた人間も波に乗り出してチョコミントのディスりが少なくなっていくんだ」
「チョコミントから離れようか」
「そう………パクチーのように!!!」
「突然のパクチー」
奴は突然現れ、パクチー女子なるものが増えた。
なんにでもパクチー添えたら映えとかパクチー美味しいって草モリモリ召し上がってる人々よ……そんな臭い草食ってうまいか?
「チョコミントは許せても、パクチーは許せないんだ……っ」
「キミは何と戦ってるんだ」
「パクチー味のチョコとか誰得なんだよっ!!」
「会話をしてくれ」
とまぁ、そんなわけで
「好き嫌いはあるよねって話」
「うん、唐突すぎる」
「そして廃棄されていく人々の中にもましな奴らはいるよって話」
「独特の返しに困惑しかないよ」
「私がどんな答えを返したところで
お前の中では揺るがないものがあるんでしょ?
なら私の意見なんてチョコミントとパクチー論争として聞き流しとけ」
私なんかの意見で今からどうにかなるなら、悟と決別なんかしてないだろう。
私よりも時間を共にした親友と離れてまで、自分の意思を貫くことを決めたのだから。
「悟とお前が怪獣大戦争をしようが、熱く拳で語り合おうが、夕日に向かって話そうがどーでもいい」
「ドライだねぇ」
「んで?私誘拐して悟ぶちギレさせようって魂胆?
やめとけ。
私の自由が奪われるからやめとけ」
「ふふっ。ははははっ!!」
「耳元で大声で笑うなアホ」
ケラケラ笑ってる前髪。
ふわふわ不安定なのに笑うともっと不安定になんだろうが。
「やっぱり名前は面白いなぁ」
「普通普通」
「………何の裏もないよ。
ただ、久しい友人を見かけたからゆっくり話がしたかったんだ」
「そーかい」
穏やかな声で話すから。
少しだけ、昔を思い出す。
「で、どこ行くの?」
「乙骨憂太を知ってるかい?」
「未成年、おさわりダメ絶対」
「そんなんじゃない」
「そうか。お前は人妻熟女寝とりが良かったもんな」
「待て。なんだその知識は」
「年と共に未成年へと興味が湧いたのかと」
「辞めてくれ」
そんなんじゃない、と怖い声を出された。
最近そんな変態に出会ったからつい。
「私は乙骨くんが気になるだけさ。
年若く特級呪術師となった彼がね」
「普通の子だよ」
「だから少し、ちょっかいかけようと思って」
「悟に怒られるよ」
「悟にもちょっかいだすから大丈夫さ」
「それ、あかんやつ」
クスクス笑う前髪は楽しそうにしている。
「名前を追いかければ良かった」
「?」
「あの頃は悟が熱を上げていたし、こんなアホ私の好みではないからね」
「なんだ。喧嘩売ってんのか」
「名前が側にいたら、私は思い悩まずもしも、の未来があったのかな」
さらさらと髪を弄ぶ前髪。
「そんなたらればの話意味ないよ」
「現実主義だなぁ」
「友人だから、今あんたは私と話してるんでしょ」
私の言葉にピタリ、と髪を弄んでいた手が止まる。
「あんたは私を友人として好んでくれた。
私もあんたを友人として好んでいた」
「そこから発展するかもしれないだろ」
「硝子ちゃんがいなかったら、私は声をかけなかった。
悟がいなかったら、ほぼ毎日顔を合わせることはなかった。
あんた達の誰か一人でも欠けていたら、私はあんたと友達にもなれずあんたの言う猿の一員だったろうさ」
「………参ったね。
アホだと思っていたら少しは賢くなったんだね。偉い偉い」
「おい」
「グリコのオマケや流しそうめんやグラウンドにアート作品を作ろうとした人間には思えないよ」
「おい、最後なんで知ってんだ」
「任務帰りたまたま見えたんだよ」
アニメの絵だったね、とクツクツ笑う前髪。
なんてこった……ハムタロスワァン!!を描いてたのがバレてただと!!
「悟にも言ったことないのに」
「あとは公園で小学生とピカピカの泥団子作ってたり」
「おい、まて」
「自販機のお釣部分を全部見て取り忘れた小銭をパクったり」
「嘘だろ」
「かつあげしていた学生ヤンキーに自販機のおでん勧めながら世間話聞いたり」
「ちょっ、ストップストップ!!」
「路上ライブで友人らと凄いノリで応援したり」
「やめて!!めっっちゃ見てる!!私のことめっっちゃ見てる!!」
「歩道橋で心配ないさって叫んでた時は心配したよ………頭の」
「恥っっっっず!!!!」
埋まりたい。
改めて言われると埋まりたい内容ばかりなんですけどぉ!!
「キミが友人で良かったよ」
「………私のHPは0よ」
「愛おしい馬鹿って名前 にピッタリだ」
「嬉しくない」
ポンポンと子供扱いする前髪。
マンタがそろそろと人気のない場所に降りていく。
前髪に抱えられながら地面に降りる。
どこかのビルの屋上らしい。
「名前」
「なに?」
「12月24日は日没後高専にも京都にも新宿にも近寄るな」
「なんで?」
「友人としての忠告だ」
マンタに再び乗る前髪。
ひらひらと手を振っていなくなった。
「………あの野郎」
ガチャガチャとドアノブを回しても開かない扉。
回りを見ても降りられない高さのビルの屋上にポツンと一人。
このビル、ドア開いてねぇじゃないか。
「次は前髪むしってやる」
ひとまず、悟に電話しよう。
助けて、さとるーまん。
「ねぇ、なんでこんなとこにいんの?」
ねぇ、なんでお前は空飛んでるの?
ってツッコミはまた今度にしよう。
こいつはチート。チートだから何でもあり。
「君の親友に聞いてくれ」
「………は?」
「たまたまなのか知らんが会ったよ」
「傑に?」
ピリッとする悟。
どうどう、と背中を叩く。
「ここに置いていかれただけで何もないよ」
「本当に?」
「チョコミントのチョコ食べながらお空のお散歩してただけ」
「何やってんのオマエ」
素で呆れられた。
だってあいつとはチョコミントの縁だもん。
仲良くチョコミントアイス食べた仲だもん。
「友人と優雅なお茶会さ」
「かっこよく言っても駄目だから」
「ちょっと片手で持ち上げられただけ」
「あ"?」
「こっわ!!!」
久々に聞いたわ、そんな低い声!!
何の対抗意識なのか、ひょいっと片腕で持ち上げられる。
前髪も軽々と子供を片手で抱き上げるように持ち上げたが……なんで悟も子供を抱き上げるようなやり方なの?
持ち上げられた方が怖いの!!
触るとこってか、掴むとこが肩しかないのよ!?
しかも190オーバーに抱き上げられてみろ。
そこは2mオーバーの世界だぞ?
怖いに決まってるだろ。
悟の頭が胸元にある。
お布団の中なら安心できるが、2mの世界は遠慮したい。
「呪術界にはゴリラしかいないの?」
「は?なんで?」
「腕力おかしい奴らばっか」
「大丈夫。ちゃんと重いよ」
「大丈夫の使い方間違ってるわボケ」
悟の登頂部をベチコーンと叩く。
そのまま下痢ツボを押す。
「イテテテ。酷いな、本当のことなのに」
「残念すぎる」
「なぁ」
「ん?」
「傑何か言ってた?」
「12月24日に日没後は高専にも京都にも新宿にも近寄るなって」
「………そう」
「友人としての忠告だってさ」
下にある悟の顔を見れば何か考えているらしい。
難しい顔をしながら黙ってしまった悟の頬を摘まむ。
「なにしてんの」
「難しい顔してたから」
「………はぁ」
「溜め息って酷いな」
「変なのと縁があるから困ったなって思っただけ」
ツンツン悟の頬をつつけば手を封じられた。
「アイツのことだからオマエに嘘は言わないだろうな」
「なに?」
「24日、絶対家から出ないで」
「………わかった」
真剣な悟に私は頷く。
漫画やアニメのヒロインなら、きっと黙って出掛けて止めようと必死になるのだろうが、生憎私はそんなんじゃない。
ただの一般人がどうにかできる問題じゃないから。
私では止められないところにこの2人は来てしまっている。
「………なに」
よしよし、と悟の頭を撫でる。
ピリッとしていた悟が少しだけ和らいだ気がした。
「私は悟を置いていかないから
ちゃんと帰っておいで」
「………あぁ」
「周りが変わっても私は変わらないよ」
「………ありがと」
絶対とは言い切れない。
周りが悟を置いていくのなら私が側にいよう。
ビルの屋上の柵に飛び乗る悟。
体がふわっと揺れて慌てて悟の首にしがみつく。
「ねぇ、苦しいんだけど」
「怖い怖い怖い怖い」
「おっぱい当たってるよ」
「それどころじゃない!!」
「アイツと空中散歩とかズルいから僕ともしようよ」
「地面!!カムバック地面!!」
騒がしい私に悟が笑う。
どうなってるのか知らないが、空中を歩くこの男に教えたい。
未確認生物扱いされたくなかったら地面を歩こうと。
「名前」
「なにぃ!?」
「好き」
「………キュンッとするけど今の状況ヒュンッと心臓が止まりそうになるからまじで降ろして」
「えー。ロマンチックなのに?」
「この状況はロマンチックではない。絶対」
「はいはい。
じゃあ地面降りますよー」
「地面降りたらちゃんと手を繋いで歩いてくれ」
「わかったよ」
くすり、と笑う悟のこめかみに唇を当てる。
きょとんと此方を見る悟。
「私も好きだよ」
「………なんでそう、不意打ちで可愛いことするかなぁ」
「好きだろ?こんな私が」
「好きだよ。馬鹿で可愛いオマエが」
「一言余計」
「犯罪者に誘拐されて仲良くお空デートして廃ビルに置き去りにされる馬鹿はオマエくらいだよ」
「なんも言えねぇ」
2人で顔を見合わせて笑う。
どうか、お願い。
この笑顔が消えませんように。
あとがき
0巻の宣戦布告後。
美々菜々がクレープ食べてる間に拉致したと思ってくれたらいーな。
たまたま見かけたから他の家族に自由行動を伝えて拉致した夏油くん。
そのあと優雅なお散歩タイム。
で、そろそろ遅くなったから美々菜々お家に連れて帰らなきゃ、と人気の無いとこに放置。
のちに悟が来るから大丈夫と信用して放置。
クズである。