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「五条さんとまだ別れてないんですか?
なんて図々しい」
「またお前かよ」
面倒臭いのに絡まれている通行人名前さんだよ。
このスーツ女、本当面倒。
たまに高専に呼ばれて来たら必ず絡んでくるんですけど。
「一周回って私のこと大好きなの?ファンなの?」
「ふざけんじゃないわよ!!誰があんたなんて!!」
「毎回毎回絡みに来てやっぱ大好きだろ。
ごめんなさい。私はあんたが嫌いです」
「私も嫌いだよ!!」
ぎゃーぎゃー騒ぐスーツ女。
暇なのかな?それなら伊地知さん手伝ってやれよ。
あの人色々背負い込んで悟の無理難題をこなしちゃう優秀な人だけどいつか胃に穴開くわ。
「話聞き流すんじゃないわよ!!」
「はいはい」
「ちょっと!!本当いい加減にしなさいって!!」
「はいはい、ほら」
「………なによこれ」
「カルシウム」
「人を馬鹿にしてんじゃないわよ!!」
もう、こいつ面倒。
何してもぎゃーぎゃー言うから面倒。
「また絡まれてんなー名前」
「そうなの。パンダ、こいつどーにかできない?私のこと好きすぎだわ」
「変なこと吹き込まないでよ!!」
「お前って変なのに好かれやすいの?」
「やめて。真希ちゃんの言い方だと私の周り………あぁ、変なのばっかだわ」
「オレを見るな。オレを」
パンダこそ変なのの最前線だよな。
「まぁ、一番変なの悟だけど」
「五条さんのことそんな風に言うとかどんな頭してるの!?」
「………あんた、悟に夢見すぎだよ」
「はぁぁあああ!?」
このスーツ女、悟に会ったことあるのかな?
むしろ、話したことあるのかな?
悟と話せば話すほどゴリゴリ色んなもの削られるんだよ?
「こんぶ」
「ん?あぁ、今日ちょっと悟の代わり。
少しの間授業見ててってさ」
「見れるの勉強くらいダロ?」
「座学はやりたくねぇ」
ぶーぶーとブーイングをする棘くん、パンダ、真希ちゃん。
うん、知ってた。
君達に黙って座学しろというのが無理難題なのは前回よーくわかってる。
だからトランプしたもん。
「みんなやればできる子なのにね、憂太くん」
「あははは…」
「ってことで!!今回は座学ではなく体術をメインにいきまーす」
パチパチ、と一人で拍手するが全員がは?って顔している。
「「「でき(んの・んのか・るんですか)?」」」
「しゃけ?」
「はっはー!!
予想通りの反応ありがと!!」
そりゃあか弱い、私みたいな可憐な女性が野蛮な事とは無縁だと思うよね。
「「ないな」」「しゃけ」
「転がすぞ」
「キャー!!野蛮な大人がここに!!」
「憂太さーん、やっつけてー」
「しゃけー」
「えーっと…」
「で、悟から許可をいただいたこちら」
私の相棒と宝剣。
またの名を釘バットとバール。
「「物騒すぎんだろ」」
「おかか」
「どっちで相手してほしい?」
「素人がそんなの振りわますなよ」
「ちっちっちっ。
真希ちゃん甘い、はちみつよりスイートだよ真希ちゅわぁん」
「キメェ」
「………(ちょっとショック)」
「真希、名前のメンタルノミだからそう言ってやるなよ」
「調子乗ってるとこが腹立つ」
「ま、まぁまぁ…落ち着いて真希さん」
最近の若い子怖い。
言葉が鋭すぎて辛い。
「まぁ、武具相手なら私だな」
くるくると棍を回し、背中で止めながらにやりと笑う真希ちゃん。
笑顔が厭らしい。
「真希ちゃんエッチなお顔」
「本当シバく。ボッコボコな」
「じゃあ、私宝剣でお相手」
「殺傷力強くないですか!?」
「あのね、憂太くん。
私………この2つ以外使えないの」
「どこのヤンキーだよオマエ」
「田舎のヤンキーだな」
「しゃけ」
不思議だよね。
やっぱ、長い時間を共に戦ってきたからかな?
木刀とか……無理だった。
きっと木刀で戦えるのは白髪の気だるげなおじさん……いや、甘党のおにーさん……着流しきたね。
悟じゃないからね?
悟はほら……チートだからなんでもできる。
………けっ。
「じゃあ、やろっか」
「遠慮なく」
「うっそやん!!!」
遠慮なくって、一気に目の前にきたんだけどぉ!?
しかもニヤついてるー!!!
めちゃんこ甘く見られてるー!!
振り抜かれた棍をバールで受け止める。
ちょっ、力強すぎじゃない!!?
「ゴリゴリなんだけど!!
この子、どんな握力?腕力?
ゴリゴリのゴリラなんだけど!!」
「うるせーよ」
「キャー!!!まじゴリラ!!真希ちゃん男だったら惚れてました!!」
「私はオマエみたいな大馬鹿嫌いだよ」
わーきゃー騒いでいるが、ちゃんと攻撃防いでるよ(ドヤァ)
まじでこの子早いなぁ、と余裕ぶっこいてたら隙見て足払いとかしてくるから困る。
なるべく怪我させないよーに、と細心の注意をしながら頑張る。
「へぇ、憂太よりやるじゃん」
「これでも悟いわく、二級ならイケるとお墨付きよん」
「そーかよっ!!」
バギャッって音した!!!
めちゃくちゃヤバい音した!!
この子怖い!!
「よーし、休憩しよ」
「は?これからだろ」
「おねーさんしんどい。真希ちゃん早いから脳みそと目ん玉フル稼働でしんどい。
あと、年齢的に激しい運動しんどい」
「ババアじゃねーか」
「ごふっ………クリティカルヒットよ、真希様」
そーよね。
年若いJKの君達からしたら私なんてもう三十路手前だもん……。
お肌ピチピチの時代は過ぎました。
あとはヨボヨボしていくだけです。
「あー、しんどい」
「とか言いながら息切れしてないですね」
「いつものフリか?」
「ツナマヨ」
「よーし、棘からGOサイン出たからいくぞ」
「うわっ、この子ら鬼畜!!」
再び突っ込んできた真希ちゃんをいなす。
棍を受け流して、ちょいちょい脇腹とか目掛けてツンツンする。
それを繰り返していたらだんだん真希ちゃんが苛立ってきた。
「ツンツンすんな!!!遊ぶな!!」
「はっはっはー!!」
「腹立つ!!」
「あの真希が遊ばれてるぞ」
「すごい…」
「こんぶ」
カッとなって動きにムラが出てきたところでバールの先を使い、棍を絡めて奪い取る。
真希ちゃんのようにかっこよく棍を回したら………頭ぶつけた。
「あだっ!!!」
「………馬鹿だ」
「馬鹿だな」
「しゃけ」
勢いよく回したからまじで痛い。
恐ろしく頭がぐわんっとなった。
「やっぱ私相棒か宝刀しか使えない」
「見事な頭へのヒットだったな」
「見事過ぎてもう口が塞がらん」
「しゃけ」
「ほら、こっちなら」
くるくるくるんの、ひょいっと投げて一回転してキャッチ。
ビシッとキメポーズしたら憂太くんだけが拍手してくれた。
「まぁ、武具取られたから真希の負けだな」
「負けた気しねーけどな」
「めんたいこ」
「格好がつかないってヤメテくれない?棘くん」
格好つかないのは認めよう。
まだ頭ガンガンとしていて痛いもん。
「よーし、パンダちょっと手伝って」
「なんだ?」
「今から順番にパンダが投げたところを私が狙うから受け身取るんだよ」
「どーゆーことですか?」
「ほら、呪術師って猿のようにどんな場所でも足場として使って動かなきゃ駄目じゃん?」
「「「言い方」」」「おかか」
「瓦礫とか森の中とか廃墟とか。
君達反射神経はいいだろうけど基本大事よ」
受け身大事!!
いついかなるときでも猿のように動き、猫のように着地。
「ってことで、真希ちゃんも落ちてくるところ狙っていいからね」
「おー」
「おかか!!」
「ズルくない。ズルくない」
「真希ちゃんの時は棘くんが飛び蹴りしていいからね」
「おい」
「ってことで、憂太くん」
「え"っ!?」
「逝こうか」
いい笑顔で背中を押す。
すると、パンダの目が光り、勢いよく憂太くんを放り投げた。
悲鳴を上げる憂太くんを、厭らしい顔をしながら真希ちゃんが飛び上がって棍を振るう。
咄嗟に木刀で防いでいたが、そのまま着地に失敗した。
「うわー、痛そう」
「「やれって言ったのはオマエな」」
「いててて…」
「憂太は強い子、頑張れる子!!」
へい、パンダ!!
と呼び声をかければ憂太くんを投げ飛ばす。
そして棘くんへGOサインを送れば飛び蹴りをしていたのを防いで、今度はギリギリ着地した。
数回ほどやり、次は棘くん、真希ちゃんと順番に繰り返す。
パンダ?私がバールでお相手したよ。
バールは最強の剣!!
「…………アンタ、戦えたの?」
「まだいたんかーい」
スーツ女仕事しろよ。
まじで伊地知さんにチクるぞ。
減俸な、減俸。
「私は一般人です」
「無理ありすぎるでしょ」
「ちょっと不思議なダンジョン制覇した一般人です」
「どんなダンジョンよ!!!」
七不思議とか神隠しとか領域とかその他諸々。
「私が見えて巻き込んじゃう人がいたから
その人らの為に生き残ろうとしたら自然と身に付いただけ」
幼馴染は毎回巻き込んで申し訳なかったけど、私一人なら生き残っていないし、幼馴染の知恵と咄嗟の判断力に助けられていた部分は大きい。
幼馴染のためなら、普段見慣れた化け物を退治するなんて気合いで充分だ。
「生き物を殴る感触も潰す感触も慣れてしまうことは怖かったけど」
力一杯振り抜けば伝わる感触。
それでも襲いかかる化け物。
「幼馴染がいなくなる方がもっと怖い」
大好きで、大切な私の宝物。
かけがえのない存在。
あの2人がいたから、今の私がいる。
「………じゃあ、その人とくっつけば良かったじゃない!!
なんで五条さんなのよ!!
あの人はあんたみたいな人間と居ていい人じゃない!!」
「またそれか」
「あんたなんかがっ!!」
目に涙を溜めて叫ぶスーツ女。
生徒達が手を止めてこちらを見る。
「なに?あんた叶わない恋でもしてんの?」
「は?」
「私に当て付けのように文句ばっかり面倒臭いなぁ。
叶わない恋だからって諦めて、本来くっつくことのない私と悟がくっついたから羨ましいのか?
羨ましいからつっかかるのか?ああん?」
黙ってしまったスーツ女。
なんだ、図星か。
「諦めたら試合終了だぞ?
お前私に突っかかってる時間あるならその男と仲深めろよ。頑張れ頑張れ」
「適当な応援するならするんじゃないわよ!!」
「えー、お前面倒臭い。
そうやって好きな男にもツンツンなの?
可愛いとか思われるわけないじゃん。馬鹿なの?」
「なっ!」
「はい、ばかー!!!ばーかばーか!!
本当のツンデレはツンツンばっかじゃないんですぅー!!
ツンツンしててもデレが可愛いけど、お前可愛いくなーい。
どうせツンツンし過ぎて後で後悔してラインやメールで謝るだけだろ?
それ別に可愛くないから。は?何こいつ?ってなるやつだから。デレは本人の目の前で恥ずかしそうに頬染めながら好き好きオーラ全開でやるんですぅー!!」
「わ、わたし……」
「素直になれないって?はっはっはー!!
笑わせるんじゃねぇぞ小娘がっ!!
素直になれないけどしゅきっ!!わかって!!なーんてわかるわけねーだろばーかばーか!!」
「うわぁ……凄い煽り方」
「あの女泣くんじゃね?」
「おかか」
「ストレス溜まってたんだね………名前さん」
スーツ女にばーかばーかと言い続けたら泣いた。
ぐすぐす泣いた。
けど私は許さないからな!!
「だって…」
「だって、でもって言い訳するくらいなら好きな男のとこ行ってキスでもしてこいよ」
「むりっ!!」
「人様の恋路をディスッてぐだぐだしながらお仕事サボるくらいなら、泣いてないでさっさと仕事するか男のとこ行け」
じゃないと伊地知さんが可哀想だから。
本当可哀想だから。
ここで男との関係に悩みながら仕事サボって私にちょっかいかけてると知った伊地知さんの頭痛と胃痛が大変だから。
「諦められないくらい好きなら諦めんなよ」
諦めて手に入るなんて贅沢
漫画のヒロインにしか特権無いからな。
「相手が来てくれるなんて思うな」
迷って泣いて後悔するより
動けるうちに
手が伸ばせるうちに
「って、私が言っても説得力無いけど」
迎えに来てもらった人間なので。
「闇の組織みたいなとこでわけわからんことに巻き込まれて死ぬ前に想いを告げて砕けろ」
「闇の組織とか言うなよ」
「おかか」
「砕けちゃ駄目だろ」
「応援してるのかしてないのかわからないね」
「憂太くんと里香ちゃんは全力で応援する」
むしろ、応援しなきゃ里香ちゃんに殺られそう。
憂太くんと話してるときに背中ゾクゾクするよ。
殺気向けられてね?ってくらいゾクゾクするよ。
なので、出来る限り憂太くんと話した後は悟がいれば悟に引っ付くよ。
ほーら、私は悟が一番なんだよぉぉおおおって事で。
「グスッ」
「あーあ、泣かした」
「名前が泣かした」
「おかか」
「虐められてたの私!!味方はいないの!?」
スーツ女が本格的に泣き出したので、真希ちゃん、パンダ、棘くんが冷めた視線を向けてくる。
憂太くん?苦笑いだよ。
「どんな男だよ」
「………年下」
「ほう」
「すっごい大人っぽい子で……私、昔その子に助けてもらって」
「ふむふむ」
「けど、任務一緒になっても酷いことしか言えなくて」
「どんだけツン全開なんだよ」
「その子も、はぁ……とかしか返事くれなくて」
「いきなり上から目線でディスられたらな」
「しゃけ」
「しかも任務前に」
「そんなクールなとこもすっごい好きで」
「呪術師かー。そんなクールな奴いたか?」
「知らね」
「おかか」
「えーっと……どんな子なんですか?」
男を特定し始めたJKDKPK。
PK?P(パンダ)K(高校生)に決まってるだろ。
P(パンツ)K(くいこむ)じゃないからな。
「クールで……物静かで……髪の毛跳ねてて…
切れ長の鋭い眼差しで……」
「「「………」」」
「呪術師としてとっても優秀で」
「へー。聞いた感じだと美人で優秀な呪術師か」
「まだあどけない少年らしさが可愛いくて」
「………なぁなぁ、ちょっと質問」
「なしたの?パンダ」
恐る恐る手を上げるパンダ。
「オマエ、いくつ?」
「女性に年齢聞くなんて失礼なパンダね!!」
「そーいやいくつだよ?私より年下っぽいけど」
「今年25よ」
「アウトーーー!!!!!」
突然のパンダの叫びに私と憂太くんはビクッとした。
両手でばってんをつくるパンダ。
真希ちゃんは片手で顔を覆い、棘くんはぶんぶん顔を横に振っている。
「なっ、なによ…」
「アウト!!未成年に手を出しちゃいけません!!」
「は?未成年?」
「その女の言ってる男………多分だけど未成年」
「しゃけ」
「はぁ!?」
ばっ、とスーツ女を見ればポッと頬を染める。
「………未成年の呪術師って?」
「そいつだけはちょっと例外でちょいちょい任務入ったりしてんだよ。
来年ここ入るけど」
「しゃけ」
「未成年に手出しはいけません!!」
「まだ出してないわよ!!」
「まだってオイ」
年下は年下でも年下すぎてびびったわ!!
「だって……可愛いじゃない!!鳴かせたいっ」
「はい、アウトー」
「本音がヤバい」
「あのクールな顔を歪ませたいんだもの!!」
「お前の性癖が歪んでるよ」
やだ。こいつ。
まじでヤバい奴だよー。
逃げてー。まだ見ぬ少年、逃げてー。
「最近は同じ任務すら外されて……私、私っ」
「そりゃ外されるだろ」
「任務前にディスる補助監督とか嫌だわ」
「おかか」
「諦められず、家に行ったらお姉さんと住んでて……二人暮らし……
今年に入ってからは一人みたいだけど」
「おーい、誰か通報しろ」
「埋めるか?」
「しゃけ」
「以前愛の手紙を郵便ポストに入れたら、お姉さんに捨てられて……」
「「「お姉さんGJ」」」
「私……ただ、好きなのにっ!!」
わぁっと泣き出すスーツ女。
私はそっと、悟に電話した。
「あ、悟?伊地知さんいる?
えっ?なんでって?
ちょっと補助監督の中にヤバいストーカーがいるから未来ある少年の人生を守るためにどうにかしたくて」
「ちょっとあんた!!さっきまで諦めんなって!!」
「未成年、ダメ。絶対」
「言ってること違うじゃない」
「ストーカー、ダメ。絶対」
「ストーカーじゃなくて、恵きゅんの安全を見守ってるだけよ!!」
「ストーカーはだいたいそう言うんだよ。
お前は純愛じゃなく歪んでるから危険。
少年に手出し禁止」
悟が伊地知さんに指示してる。
この間の問題児絶対恵に近づけんなってちょっと声がキレてる。
伊地知さんの悲鳴が聞こえたよ。
ありがとうってお礼言われて切られた。
「悟なんだって?」
「よくわかんないけどキレてた」
「だろうな」
「しゃけ」
「???」
後日、スーツ女は京都に飛ばされたと聞いた。
悟によくやったと撫でられた。
うん、よくわからないが未来ある少年の人生が守れたのでよしとしよう!!
あとがき
まさかの狙われていた少年。
スーツ女と和解フラグなんてありません。
だって通行人はギャグだから!!!!
二年生組と絡むと憂太くんが存在感消えちゃう。
ごめんよ、憂太。
なんて図々しい」
「またお前かよ」
面倒臭いのに絡まれている通行人名前さんだよ。
このスーツ女、本当面倒。
たまに高専に呼ばれて来たら必ず絡んでくるんですけど。
「一周回って私のこと大好きなの?ファンなの?」
「ふざけんじゃないわよ!!誰があんたなんて!!」
「毎回毎回絡みに来てやっぱ大好きだろ。
ごめんなさい。私はあんたが嫌いです」
「私も嫌いだよ!!」
ぎゃーぎゃー騒ぐスーツ女。
暇なのかな?それなら伊地知さん手伝ってやれよ。
あの人色々背負い込んで悟の無理難題をこなしちゃう優秀な人だけどいつか胃に穴開くわ。
「話聞き流すんじゃないわよ!!」
「はいはい」
「ちょっと!!本当いい加減にしなさいって!!」
「はいはい、ほら」
「………なによこれ」
「カルシウム」
「人を馬鹿にしてんじゃないわよ!!」
もう、こいつ面倒。
何してもぎゃーぎゃー言うから面倒。
「また絡まれてんなー名前」
「そうなの。パンダ、こいつどーにかできない?私のこと好きすぎだわ」
「変なこと吹き込まないでよ!!」
「お前って変なのに好かれやすいの?」
「やめて。真希ちゃんの言い方だと私の周り………あぁ、変なのばっかだわ」
「オレを見るな。オレを」
パンダこそ変なのの最前線だよな。
「まぁ、一番変なの悟だけど」
「五条さんのことそんな風に言うとかどんな頭してるの!?」
「………あんた、悟に夢見すぎだよ」
「はぁぁあああ!?」
このスーツ女、悟に会ったことあるのかな?
むしろ、話したことあるのかな?
悟と話せば話すほどゴリゴリ色んなもの削られるんだよ?
「こんぶ」
「ん?あぁ、今日ちょっと悟の代わり。
少しの間授業見ててってさ」
「見れるの勉強くらいダロ?」
「座学はやりたくねぇ」
ぶーぶーとブーイングをする棘くん、パンダ、真希ちゃん。
うん、知ってた。
君達に黙って座学しろというのが無理難題なのは前回よーくわかってる。
だからトランプしたもん。
「みんなやればできる子なのにね、憂太くん」
「あははは…」
「ってことで!!今回は座学ではなく体術をメインにいきまーす」
パチパチ、と一人で拍手するが全員がは?って顔している。
「「「でき(んの・んのか・るんですか)?」」」
「しゃけ?」
「はっはー!!
予想通りの反応ありがと!!」
そりゃあか弱い、私みたいな可憐な女性が野蛮な事とは無縁だと思うよね。
「「ないな」」「しゃけ」
「転がすぞ」
「キャー!!野蛮な大人がここに!!」
「憂太さーん、やっつけてー」
「しゃけー」
「えーっと…」
「で、悟から許可をいただいたこちら」
私の相棒と宝剣。
またの名を釘バットとバール。
「「物騒すぎんだろ」」
「おかか」
「どっちで相手してほしい?」
「素人がそんなの振りわますなよ」
「ちっちっちっ。
真希ちゃん甘い、はちみつよりスイートだよ真希ちゅわぁん」
「キメェ」
「………(ちょっとショック)」
「真希、名前のメンタルノミだからそう言ってやるなよ」
「調子乗ってるとこが腹立つ」
「ま、まぁまぁ…落ち着いて真希さん」
最近の若い子怖い。
言葉が鋭すぎて辛い。
「まぁ、武具相手なら私だな」
くるくると棍を回し、背中で止めながらにやりと笑う真希ちゃん。
笑顔が厭らしい。
「真希ちゃんエッチなお顔」
「本当シバく。ボッコボコな」
「じゃあ、私宝剣でお相手」
「殺傷力強くないですか!?」
「あのね、憂太くん。
私………この2つ以外使えないの」
「どこのヤンキーだよオマエ」
「田舎のヤンキーだな」
「しゃけ」
不思議だよね。
やっぱ、長い時間を共に戦ってきたからかな?
木刀とか……無理だった。
きっと木刀で戦えるのは白髪の気だるげなおじさん……いや、甘党のおにーさん……着流しきたね。
悟じゃないからね?
悟はほら……チートだからなんでもできる。
………けっ。
「じゃあ、やろっか」
「遠慮なく」
「うっそやん!!!」
遠慮なくって、一気に目の前にきたんだけどぉ!?
しかもニヤついてるー!!!
めちゃんこ甘く見られてるー!!
振り抜かれた棍をバールで受け止める。
ちょっ、力強すぎじゃない!!?
「ゴリゴリなんだけど!!
この子、どんな握力?腕力?
ゴリゴリのゴリラなんだけど!!」
「うるせーよ」
「キャー!!!まじゴリラ!!真希ちゃん男だったら惚れてました!!」
「私はオマエみたいな大馬鹿嫌いだよ」
わーきゃー騒いでいるが、ちゃんと攻撃防いでるよ(ドヤァ)
まじでこの子早いなぁ、と余裕ぶっこいてたら隙見て足払いとかしてくるから困る。
なるべく怪我させないよーに、と細心の注意をしながら頑張る。
「へぇ、憂太よりやるじゃん」
「これでも悟いわく、二級ならイケるとお墨付きよん」
「そーかよっ!!」
バギャッって音した!!!
めちゃくちゃヤバい音した!!
この子怖い!!
「よーし、休憩しよ」
「は?これからだろ」
「おねーさんしんどい。真希ちゃん早いから脳みそと目ん玉フル稼働でしんどい。
あと、年齢的に激しい運動しんどい」
「ババアじゃねーか」
「ごふっ………クリティカルヒットよ、真希様」
そーよね。
年若いJKの君達からしたら私なんてもう三十路手前だもん……。
お肌ピチピチの時代は過ぎました。
あとはヨボヨボしていくだけです。
「あー、しんどい」
「とか言いながら息切れしてないですね」
「いつものフリか?」
「ツナマヨ」
「よーし、棘からGOサイン出たからいくぞ」
「うわっ、この子ら鬼畜!!」
再び突っ込んできた真希ちゃんをいなす。
棍を受け流して、ちょいちょい脇腹とか目掛けてツンツンする。
それを繰り返していたらだんだん真希ちゃんが苛立ってきた。
「ツンツンすんな!!!遊ぶな!!」
「はっはっはー!!」
「腹立つ!!」
「あの真希が遊ばれてるぞ」
「すごい…」
「こんぶ」
カッとなって動きにムラが出てきたところでバールの先を使い、棍を絡めて奪い取る。
真希ちゃんのようにかっこよく棍を回したら………頭ぶつけた。
「あだっ!!!」
「………馬鹿だ」
「馬鹿だな」
「しゃけ」
勢いよく回したからまじで痛い。
恐ろしく頭がぐわんっとなった。
「やっぱ私相棒か宝刀しか使えない」
「見事な頭へのヒットだったな」
「見事過ぎてもう口が塞がらん」
「しゃけ」
「ほら、こっちなら」
くるくるくるんの、ひょいっと投げて一回転してキャッチ。
ビシッとキメポーズしたら憂太くんだけが拍手してくれた。
「まぁ、武具取られたから真希の負けだな」
「負けた気しねーけどな」
「めんたいこ」
「格好がつかないってヤメテくれない?棘くん」
格好つかないのは認めよう。
まだ頭ガンガンとしていて痛いもん。
「よーし、パンダちょっと手伝って」
「なんだ?」
「今から順番にパンダが投げたところを私が狙うから受け身取るんだよ」
「どーゆーことですか?」
「ほら、呪術師って猿のようにどんな場所でも足場として使って動かなきゃ駄目じゃん?」
「「「言い方」」」「おかか」
「瓦礫とか森の中とか廃墟とか。
君達反射神経はいいだろうけど基本大事よ」
受け身大事!!
いついかなるときでも猿のように動き、猫のように着地。
「ってことで、真希ちゃんも落ちてくるところ狙っていいからね」
「おー」
「おかか!!」
「ズルくない。ズルくない」
「真希ちゃんの時は棘くんが飛び蹴りしていいからね」
「おい」
「ってことで、憂太くん」
「え"っ!?」
「逝こうか」
いい笑顔で背中を押す。
すると、パンダの目が光り、勢いよく憂太くんを放り投げた。
悲鳴を上げる憂太くんを、厭らしい顔をしながら真希ちゃんが飛び上がって棍を振るう。
咄嗟に木刀で防いでいたが、そのまま着地に失敗した。
「うわー、痛そう」
「「やれって言ったのはオマエな」」
「いててて…」
「憂太は強い子、頑張れる子!!」
へい、パンダ!!
と呼び声をかければ憂太くんを投げ飛ばす。
そして棘くんへGOサインを送れば飛び蹴りをしていたのを防いで、今度はギリギリ着地した。
数回ほどやり、次は棘くん、真希ちゃんと順番に繰り返す。
パンダ?私がバールでお相手したよ。
バールは最強の剣!!
「…………アンタ、戦えたの?」
「まだいたんかーい」
スーツ女仕事しろよ。
まじで伊地知さんにチクるぞ。
減俸な、減俸。
「私は一般人です」
「無理ありすぎるでしょ」
「ちょっと不思議なダンジョン制覇した一般人です」
「どんなダンジョンよ!!!」
七不思議とか神隠しとか領域とかその他諸々。
「私が見えて巻き込んじゃう人がいたから
その人らの為に生き残ろうとしたら自然と身に付いただけ」
幼馴染は毎回巻き込んで申し訳なかったけど、私一人なら生き残っていないし、幼馴染の知恵と咄嗟の判断力に助けられていた部分は大きい。
幼馴染のためなら、普段見慣れた化け物を退治するなんて気合いで充分だ。
「生き物を殴る感触も潰す感触も慣れてしまうことは怖かったけど」
力一杯振り抜けば伝わる感触。
それでも襲いかかる化け物。
「幼馴染がいなくなる方がもっと怖い」
大好きで、大切な私の宝物。
かけがえのない存在。
あの2人がいたから、今の私がいる。
「………じゃあ、その人とくっつけば良かったじゃない!!
なんで五条さんなのよ!!
あの人はあんたみたいな人間と居ていい人じゃない!!」
「またそれか」
「あんたなんかがっ!!」
目に涙を溜めて叫ぶスーツ女。
生徒達が手を止めてこちらを見る。
「なに?あんた叶わない恋でもしてんの?」
「は?」
「私に当て付けのように文句ばっかり面倒臭いなぁ。
叶わない恋だからって諦めて、本来くっつくことのない私と悟がくっついたから羨ましいのか?
羨ましいからつっかかるのか?ああん?」
黙ってしまったスーツ女。
なんだ、図星か。
「諦めたら試合終了だぞ?
お前私に突っかかってる時間あるならその男と仲深めろよ。頑張れ頑張れ」
「適当な応援するならするんじゃないわよ!!」
「えー、お前面倒臭い。
そうやって好きな男にもツンツンなの?
可愛いとか思われるわけないじゃん。馬鹿なの?」
「なっ!」
「はい、ばかー!!!ばーかばーか!!
本当のツンデレはツンツンばっかじゃないんですぅー!!
ツンツンしててもデレが可愛いけど、お前可愛いくなーい。
どうせツンツンし過ぎて後で後悔してラインやメールで謝るだけだろ?
それ別に可愛くないから。は?何こいつ?ってなるやつだから。デレは本人の目の前で恥ずかしそうに頬染めながら好き好きオーラ全開でやるんですぅー!!」
「わ、わたし……」
「素直になれないって?はっはっはー!!
笑わせるんじゃねぇぞ小娘がっ!!
素直になれないけどしゅきっ!!わかって!!なーんてわかるわけねーだろばーかばーか!!」
「うわぁ……凄い煽り方」
「あの女泣くんじゃね?」
「おかか」
「ストレス溜まってたんだね………名前さん」
スーツ女にばーかばーかと言い続けたら泣いた。
ぐすぐす泣いた。
けど私は許さないからな!!
「だって…」
「だって、でもって言い訳するくらいなら好きな男のとこ行ってキスでもしてこいよ」
「むりっ!!」
「人様の恋路をディスッてぐだぐだしながらお仕事サボるくらいなら、泣いてないでさっさと仕事するか男のとこ行け」
じゃないと伊地知さんが可哀想だから。
本当可哀想だから。
ここで男との関係に悩みながら仕事サボって私にちょっかいかけてると知った伊地知さんの頭痛と胃痛が大変だから。
「諦められないくらい好きなら諦めんなよ」
諦めて手に入るなんて贅沢
漫画のヒロインにしか特権無いからな。
「相手が来てくれるなんて思うな」
迷って泣いて後悔するより
動けるうちに
手が伸ばせるうちに
「って、私が言っても説得力無いけど」
迎えに来てもらった人間なので。
「闇の組織みたいなとこでわけわからんことに巻き込まれて死ぬ前に想いを告げて砕けろ」
「闇の組織とか言うなよ」
「おかか」
「砕けちゃ駄目だろ」
「応援してるのかしてないのかわからないね」
「憂太くんと里香ちゃんは全力で応援する」
むしろ、応援しなきゃ里香ちゃんに殺られそう。
憂太くんと話してるときに背中ゾクゾクするよ。
殺気向けられてね?ってくらいゾクゾクするよ。
なので、出来る限り憂太くんと話した後は悟がいれば悟に引っ付くよ。
ほーら、私は悟が一番なんだよぉぉおおおって事で。
「グスッ」
「あーあ、泣かした」
「名前が泣かした」
「おかか」
「虐められてたの私!!味方はいないの!?」
スーツ女が本格的に泣き出したので、真希ちゃん、パンダ、棘くんが冷めた視線を向けてくる。
憂太くん?苦笑いだよ。
「どんな男だよ」
「………年下」
「ほう」
「すっごい大人っぽい子で……私、昔その子に助けてもらって」
「ふむふむ」
「けど、任務一緒になっても酷いことしか言えなくて」
「どんだけツン全開なんだよ」
「その子も、はぁ……とかしか返事くれなくて」
「いきなり上から目線でディスられたらな」
「しゃけ」
「しかも任務前に」
「そんなクールなとこもすっごい好きで」
「呪術師かー。そんなクールな奴いたか?」
「知らね」
「おかか」
「えーっと……どんな子なんですか?」
男を特定し始めたJKDKPK。
PK?P(パンダ)K(高校生)に決まってるだろ。
P(パンツ)K(くいこむ)じゃないからな。
「クールで……物静かで……髪の毛跳ねてて…
切れ長の鋭い眼差しで……」
「「「………」」」
「呪術師としてとっても優秀で」
「へー。聞いた感じだと美人で優秀な呪術師か」
「まだあどけない少年らしさが可愛いくて」
「………なぁなぁ、ちょっと質問」
「なしたの?パンダ」
恐る恐る手を上げるパンダ。
「オマエ、いくつ?」
「女性に年齢聞くなんて失礼なパンダね!!」
「そーいやいくつだよ?私より年下っぽいけど」
「今年25よ」
「アウトーーー!!!!!」
突然のパンダの叫びに私と憂太くんはビクッとした。
両手でばってんをつくるパンダ。
真希ちゃんは片手で顔を覆い、棘くんはぶんぶん顔を横に振っている。
「なっ、なによ…」
「アウト!!未成年に手を出しちゃいけません!!」
「は?未成年?」
「その女の言ってる男………多分だけど未成年」
「しゃけ」
「はぁ!?」
ばっ、とスーツ女を見ればポッと頬を染める。
「………未成年の呪術師って?」
「そいつだけはちょっと例外でちょいちょい任務入ったりしてんだよ。
来年ここ入るけど」
「しゃけ」
「未成年に手出しはいけません!!」
「まだ出してないわよ!!」
「まだってオイ」
年下は年下でも年下すぎてびびったわ!!
「だって……可愛いじゃない!!鳴かせたいっ」
「はい、アウトー」
「本音がヤバい」
「あのクールな顔を歪ませたいんだもの!!」
「お前の性癖が歪んでるよ」
やだ。こいつ。
まじでヤバい奴だよー。
逃げてー。まだ見ぬ少年、逃げてー。
「最近は同じ任務すら外されて……私、私っ」
「そりゃ外されるだろ」
「任務前にディスる補助監督とか嫌だわ」
「おかか」
「諦められず、家に行ったらお姉さんと住んでて……二人暮らし……
今年に入ってからは一人みたいだけど」
「おーい、誰か通報しろ」
「埋めるか?」
「しゃけ」
「以前愛の手紙を郵便ポストに入れたら、お姉さんに捨てられて……」
「「「お姉さんGJ」」」
「私……ただ、好きなのにっ!!」
わぁっと泣き出すスーツ女。
私はそっと、悟に電話した。
「あ、悟?伊地知さんいる?
えっ?なんでって?
ちょっと補助監督の中にヤバいストーカーがいるから未来ある少年の人生を守るためにどうにかしたくて」
「ちょっとあんた!!さっきまで諦めんなって!!」
「未成年、ダメ。絶対」
「言ってること違うじゃない」
「ストーカー、ダメ。絶対」
「ストーカーじゃなくて、恵きゅんの安全を見守ってるだけよ!!」
「ストーカーはだいたいそう言うんだよ。
お前は純愛じゃなく歪んでるから危険。
少年に手出し禁止」
悟が伊地知さんに指示してる。
この間の問題児絶対恵に近づけんなってちょっと声がキレてる。
伊地知さんの悲鳴が聞こえたよ。
ありがとうってお礼言われて切られた。
「悟なんだって?」
「よくわかんないけどキレてた」
「だろうな」
「しゃけ」
「???」
後日、スーツ女は京都に飛ばされたと聞いた。
悟によくやったと撫でられた。
うん、よくわからないが未来ある少年の人生が守れたのでよしとしよう!!
あとがき
まさかの狙われていた少年。
スーツ女と和解フラグなんてありません。
だって通行人はギャグだから!!!!
二年生組と絡むと憂太くんが存在感消えちゃう。
ごめんよ、憂太。