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※なんちゃってパロディ
※呪術関係ない
※見切り発車
この世界には不思議な力がある。
影を操る者。
人ならざるモノを使役する者。
火を操る者。水を操る者。風を操る者。
その力を持つ者を異能持ちといい、この世界では蔑まれる。
力が強大であるが故に、人々は怖れ迫害する。
それが己が産み落とした子供であろうと。
だから、国の為にと言いながら異能持ちは戦争に駆り出され、死地へ送られる。
彼ら(異能持ち)は人間ではない。
この国でも例外はなく
異能持ちは駒として扱われ
人としての尊厳はない。
そんななか………
「恵!!恵はいないの?」
「居ます」
「恵!!今日の私どう?」
「いつも通りかと」
「ならいつも通り可愛いってことね」
ふんっ、と腰に手を当て自慢気に笑う姫ーー名前は恵の呆れた視線を気にすることなく勝ち気に笑う。
従者である恵を引き連れて歩く名前はこの国の王の一人娘だ。
「まぁ、いつもより少しめかしこんでますね」
「これから傑がいらっしゃるそうよ」
「………は?俺、聞いてませんが」
「あら?聞かされて無かったの?今言ったわ」
「おい」
恵は王に使える者として育てられた。幼き頃、父親に金で売られ大人達が訓練する中一人小さな少年が必死に大人達に向かっていく姿が名前の目に止まり、名前の我が儘で従者となった。
勿論それを良く思わない者達もいたが、それを黙らせたのは名前だ。
"黙りなさい。
私が欲しいと言ったのはこの子よ。
認められないというのなら……そうね。
あなた、名前は?
ーーーそう、恵ね。いい名前。
恵の本当の実力に勝てる者がいるなら
その者を私の従者にするわ"
全力で己の力を示しなさい、と名前は笑った。
なぜ手を抜いていることを知ったのかはわからないが、恵は手を抜かずに自身の持っている不思議な力ーーー異能を発揮し、その場にいた一卒兵全員を地に沈めた。
"歓迎するわーーー私の恵。
私の盾となり矛となり、私の為に生きなさい。"
小さな王女はこの日、小さな従者を手にした。
始めは王も恵の異能持ちという存在にいい顔をしなかったのだが、名前が王を説き伏せた。
娘の我が儘に折れた王は恵が従者になることを認め、絶対に姫の期待を裏切らないよう、恵は教育を施され、力をつけ……姫を守る者としての地位を手にした。
のだが、この姫。
めちゃくちゃ自由である。
少し目を離せば窓から逃走し、街へと消える。
捕獲して戻れば俺を池に突き落としてケラケラ笑う。姫と扱うのを辞め、じゃじゃ馬姫を全力で探し、捕獲し、勉強させる。
今まで彼女に振り回されていた付き人は泣いて喜んだ。
このじゃじゃ馬姫を捕まえられる人が現れて、良かったと………。
「お父様、傑様」
「名前、来たか」
「久しぶりだね、名前」
王の横に穏やかに微笑む男ーー。
彼は軍人としても腕が立ち、軍師としても頭の切れる者だ。
一回りほど年は離れているようだが、幼い姫の面倒を見て、姫も慕っていた。
時期王はこの人ーー傑様だと言われるほどだ。
王と姫と傑様で和やかに談笑する姿は微笑ましい。
このときは誰もがこの二人がこの国を共に支え生きていくのだと思っていた。
あの地獄の夜が来るまでは。
ーーー族の襲撃だ!!
わーわーと騒がしくなる城内。
俺は彼女ーー名前姫の元へと大急ぎで向かう。
なのに…彼女は寝室にはいなかった。
火を放たれたのか、燃える城内を突き進む。
「姫!!名前姫様!!」
王の私室。
もしかしたら王と共に保護されているのでは……?と思って来たそこは、俺には地獄の光景に見えた。
つい先日、王と彼女と傑様で和やかに笑っていた空間があったのに……今は血に濡れた剣を持つ傑様。彼を見て呆然と立つ名前姫。
そして、彼女の視線の先には血に濡れ倒れる王の姿。
「傑……様。これは、一体…」
「恵くんか。
困ったね……目撃者が増えてしまった」
「傑様……アンタが王を手にかけたのか?」
「見ての通りだよ」
「なんで……」
「美々子、菜々子」
「「はい、傑様」」
傑様に育てられ、保護されていた2人の少女が音も無く現れる。
「目撃者は例外無く消すんだ」
「「分かりました」」
「消す……?アンタ、本当に何言ってんだよ!!」
少女達が名前を狙う。
俺は異能を使い影から玉犬を呼び出して少女達を退ける。
その隙に名前を抱えて王の私室から飛び出した。
族が入り込んだと騒がしくなる割りに、奇妙な事に気付く。
兵がいない。
族すら嘘だったのかと舌打ちし、この城全体が今じゃ名前の敵なのかもしれないと、最悪の事態が思い浮かぶ。
現に俺を追いかけてくる者達が集まってきて、四方八方から矢が飛んで来る。
姫に当たらぬよう逃げ回っていれば、誘導されてしまったのか……気付けば囲まれてしまった。
「チッ!!」
「悪いな恵……」
「お前ら……っ!!この人まで手にかけると言うのかよ!!」
「例外は認めない」
「ふざけんな!!」
王殺しは重罪だ。
なのに、この城全てがそれを良しとし、族のせいにして隠蔽しようとしている。
「国のためだ」
口々にそう溢す兵士に奥歯を噛み締める。
ちらり、と見た姫はいつもの活気が嘘のように表情を無くしている。
人形のように抜け落ちた表情。
何が起こったのかわからないが、このままでは自分だけじゃなく姫すら守れない最悪な状態だということ。
「姫様……覚悟を」
「ふざけんじゃねぇ!!
絶対に殺させるか……っ!!」
「おーいおいおい。おいおいおい。
なんだよこれ」
「先生、空気読んだ方がいいと思う」
「いや、無理だろ。
お宝目当てで忍び込んだのにこれ……」
月の光を浴びて煌めく銀色。
黒の目隠しをし、真っ黒な服装の長身の男。
同じく真っ黒な服装で同じくらいの年頃の少年。
こんな時に本当の族かよ、と舌打ち。
最悪の状況がますます最悪に。
「あ、先生アレお姫様?」
「ん?あ、本当だ」
「ぞ、族か!?」
「まとめて殺せ!!」
「んー?何だか物騒だ」
「あれ?俺らも巻き込まれた感じ?」
「殺せなんて、言っちゃ駄目だよ」
目隠しの男が何をしたのかわからない。
ただ、目の前に男が降り立ったと思うと……周りにいた兵士達が吹き飛ばされた。
何も武器は持っていない。
ただ、手を動かしただけ。
「そんな事言っていいのは死ぬ覚悟がある奴だけだ」
「アンタ……何者だ?」
「それ今言う必要ある?
………ふーん。オマエも異能持ち、なんだ」
「!?」
「何でわかったかって?眼がいいもんで」
目隠しをズラすと、硝子玉のようなキラキラと透き通って輝く水色のような、青のような瞳。
目を離せないほどの綺麗な瞳に釘付けとなっていたが、新たな砂利を踏む音に男はすぐに目隠しを元に戻す。
「おや?まだ始末していなかったのかい?」
「傑……っ!!」
悠々と現れた傑に奥歯を噛み締める。
まったく反応をしない姫を抱き締める力を強くする。
「オマエ何やってんだよ、傑」
「族が城を襲うなんて困ったね」
「俺らまだ何もしてませーん」
「まとめて殺せ」
「殺せ?………コレがオマエのやり方って事?」
「私は選んだだけだよ、悟」
族と知り合いのように話す傑。
何なんだ、と混乱する頭を必死に回して考える。
まずは、彼女ーー名前を生かすにはどうすれば、いいのか。
「ふーん。なるほどね」
「まさかキミが来るとは予想外だったよ」
「ここでお前ら全員ぶっ殺す事は僕一人で簡単だけどやめておこう。
悠仁」
「はいよ」
「!?」
軽々と姫と共に持ち上げられる。
俺と変わらない身長と年齢の男が、2人まとめて持ち上げられるなんて……。
「お姫様は僕が持つよ」
「りょーかい!!」
「おいっ!!その方に触るな!!」
「この二人、僕が貰うよ。
せいぜい選んだ道を後悔しないようにね、傑」
「後悔なんてしないさ」
「………馬鹿野郎が」
姫を横抱きに抱え、俺を抱えて簡単にその場を逃げ出す二人。
追手は追い付かないようで、来る気配は無かった。
「何なんだよお前らは!!
アイツと……傑と何の関係があるんだ!!」
「ちょっ!?暴れないでくんない!?」
「悠仁、落とせば?」
「えー?いいの?」
「おまっ!?」
簡単に首を突かれて気絶した俺。
目が覚めた時にはどこかわからない小屋の中で
名前と共に寝かされていた。
「ここ、は……」
「あ、目が覚めた?」
俺を抱えていた少年が姿を現す。
その手には湯気の立つ美味しそうな食事。
「腹減ったかなーと思って」
「いらねぇ」
「王族の口に合うかわかんないけど、ウマイと思う」
「いらねぇっつってんだろ」
「そう警戒すんなよ」
ポリポリと頭をかく少年。
こんなアホそうな見た目だが……俺よりは強いとわかる。
だが、名前だけは……。
「………ん」
「名前?」
「あ、女の子も目が覚めた?」
「ここ……」
「俺、悠仁!!
ここは先生が作った隠れ里」
「隠れ里……?」
「うん。俺もそうだけど、ちょっと変わった力がある人達が集まって出来た場所。
勿論力がない人もいるけど……基本的には孤児だったり、街にいられなくなった人達の集まり」
「…………」
「お姫様も目付き悪い付き人の人もまずはゆっくり休んで、いっぱい飯食って元気になろ。
色々何か事情あるみたいだけど、まずは元気にならないと」
にかっ、と呑気に笑う悠仁。
目の前に差し出されたスープをじっと見つめる名前。
「………なんで?」
「ん?」
「どうして……助けたの?」
「名前……っ」
「私なんてお父様と共に朽ちてしまえば良かったのよ……」
「それは困る」
「あ、先生」
いつの間にいたのか、ドアに寄りかかっていた目隠しの男。
スタスタとこちらに歩み寄るので、名前を守るために背に庇う。
しかし、目隠し男は名前の目の前にしゃがみこんだ。
「アンタは王族だ。
王はこの国の為、民の為に生きろよ」
「だけど……っ」
「アンタはまだ何も知らない。
民の事も、国の事も、世界の事も。
悲しい?苦しい?
今まで美味しい暖かい食事を与えられ
綺麗な衣服を着て
暖かい布団やお風呂に入れる贅沢な不自由ない暮らしをしていたオマエは何も知らないだろ」
「オマエっ!!それ以上姫を侮辱するならっ」
「父親が殺されたくらいでピーピー泣いて絶望するくらいじゃ本当の絶望じゃないよ」
「………」
「オマエは王族の血を引く娘なんでしょ?
なら、知らなきゃ。
オマエが生きている限り生きて全てに目を向けろ。
本当の悲しみを。
本当の苦しみを。
本当の絶望をしているのはオマエじゃなく、民だということを」
じっと、名前を見つめ淡々と話す目隠し男。
名前は黙って涙を流す。
「王族の義務を捨てて死にたいって言うならホラ」
カランっ、と投げられたのは一本のナイフ。
「今すぐ首掻ききって死になよ」
「駄目だ!!」
「オマエは黙ろうね」
がっ、と頭を床に叩き付けられる。
動けないよう背中を踏みつけられれば無力な俺は身動きすらとれない。
「…………」
「名前っ!!やめろ!!」
震える手でナイフを持つ名前。
「ソレを使えば楽になれるよ」
「………っ」
「あぁ、そんな持ち方じゃ駄目だね。
こうして、しっかり持たなきゃ」
「やめっ!!くっっ玉犬!!」
影から犬を産み出す。
背中の目隠し男を退かし、名前の持つナイフを握る。
痛みと共に血が流れ出る。
「恵……っ、血が」
「ふざけんな!!
アンタは死なせないし、死のうとすんな!!」
「恵……」
「王を殺したあんな奴が王座に居座るなんて反吐が出るが……アンタが自分の命を自分で捨てるのはもっと許さねぇ!」
「どう、して……っ」
「俺を生かしてオマエを守るために側に選んだのは名前だろ!!
そのオマエが俺より先に死ぬなんて許さねぇって言ってんだ!!」
ナイフを遠くに投げ捨てれば、再びじわじわと涙を溢れさせ流す名前。
「あーあ、泣かした」
「女の子泣かしちゃ駄目だろ」
「オマエら黙ってろよ」
名前はその後、しばらく静かに過ごしていた。
この隠れ里の人達と慣れない家事の手伝いをし、召し使いのように不慣れながらもこなそうと頑張る姿。
俺は悟と言う目隠し男によって、体術を指導されながら悠仁と呼ばれる少年に地面に転がされる。
地面に転がる俺を洗濯物を持ちながらしゃがみこみ見下ろす名前。
「恵……あなた、そんな弱かったの?」
「違う。コイツらが化物なんだ」
「………恵より強い人っていたのね」
「そりゃあいるだろ」
「………私、知らないことばかりだわ」
洗濯の仕方。ご飯の仕込みの仕方。火の起こし方。
普段は召し使いがしていることを、ここの人達は子供でも理解し出来ている。
「食べられず命を落とす者。
奪われ虐げられる者。
………力の無い者達は選ぶ事すらできないのね」
「そうだな」
「私、この国はとても平和だと思っていたわ」
「………」
「幸せで平和だったのは、私が王族だったからなのね」
くしゃり、と表情を歪ませる名前。
彼女は大事に大事に育てられてきた。
国に関わる事を知らず、不自由なく。
「そうさ。
キミは王族だから幸せだった」
「………アナタは」
「ここの生活は大変だろ?
今まで何もしてこなかったから子供より何も知らないお姫様」
「そうね。毎日が刺激的よ」
「くくっ、刺激的ねぇ」
「ねぇ。
アナタは傑から私を持ち去ったんでしょ?」
「成り行きでね」
「じゃあ、私はアナタのものってことよね」
「一応そーなるかな」
「私に生きる力を教えてくれる?
戦い方、野宿の仕方、外での生き方……
アナタにとって使える駒として、私を育てて」
「………アナタ何言ってんだ」
何を言うのかと思えば……。
懐からなぜかナイフを取り出す名前にぎょっとして、ナイフを取り上げようとする。
しかし、強い意思のある瞳で見つめられ動きが止まる。
ザッ、と長い髪を切り落とす名前。
目隠し男を見上げる姿は、こないだまで人形のように意思を無くした人とは思えないほど強い意思が宿っていた。
「アナタの望む私にして頂戴」
「くっくっくっ。
僕がヤダって言ったら?」
「あら?アナタは嫌なんて言わないでしょ?」
小首を傾げ、にこりと笑う名前。
「アナタは言ったわ。私は知らなきゃいけないと。
私も知りたい。
民を。国を。そして……なぜ傑がお父様を殺す必要があったのかを。
けど、今の私がここより外に出るには何もかもが足手まといで何も出来ない。
恵ばかりに頼っていられない。
自分の足で立って歩くのならまずは私に必要な術をアナタから教わりたいわ」
「僕、厳しいよ」
「望むところよ」
ポカン、として名前を見上げる俺を名前はどうしたのかと頭を傾げている。
「………名前が、そんな事しなくても俺が」
「駄目よ。
私が自分でやらなきゃいけないことなの」
「危ないことはしなくていい。それは俺の役目だ」
「私が危ないことしないよう、止められるように強くなりなさい。
じゃないと私は強くなるわよ、恵」
「………だけどっ」
「一緒に世界を見るわよ。そして知らなきゃ」
あぁ、綺麗だ。
幼い頃、俺が欲しいと言った時と同じ顔をしながら笑う名前。
異端児だった俺を望んでくれるーー俺の主。
「………どこまでも、ついていく」
「勿論よ。恵は私の、なんだから」
「覚悟は決まったみたいだね。
バシバシいくからそのつもりで」
これは、1人の王女の旅路。
民を見つめ
国を見つめ
異能を見つめ
世界を見つめる
王への道を行く彼女の物語。
あとがき
暁のヨナを読み返してテンションあがって書いたなんちゃってパロディ。
しかし、あそこまで盛大な物語はちょっと無理なので、それっぽくだけ(笑)
呪霊と戦わないけど、異能として戦えそうだよねって話。
傑めちゃくちゃ民族衣装似合いそうwww
夢主→お姫様。
恵→従者
傑→王の兄弟の子供。悟とは幼い頃街に行って知り合った友達。いつか国を変えると誓った仲。
みみ、なな→孤児。傑に拾われた。異能持ち。
悟→隠れ里の長。強い異能持ち。迫害され捨てられ異能持ちを迫害する王族に強い恨みを持っていたが、傑と出会って緩和。
自分のような子を集めているうちに、村に住む人が多くなった。
傑が中から国を変えるなら、外から変えようと思ってた。
悠仁→孤児。悟に拾われた。力持ち。
五条さんwww
坊っちゃん悟じゃなく、坊っちゃん傑。
立場逆転してて面白い。
続く……いや、ちょっと無理(笑
設定がまとまっていないくらいガバガバwww
続き!!って声があったら続く……かも?
※呪術関係ない
※見切り発車
この世界には不思議な力がある。
影を操る者。
人ならざるモノを使役する者。
火を操る者。水を操る者。風を操る者。
その力を持つ者を異能持ちといい、この世界では蔑まれる。
力が強大であるが故に、人々は怖れ迫害する。
それが己が産み落とした子供であろうと。
だから、国の為にと言いながら異能持ちは戦争に駆り出され、死地へ送られる。
彼ら(異能持ち)は人間ではない。
この国でも例外はなく
異能持ちは駒として扱われ
人としての尊厳はない。
そんななか………
「恵!!恵はいないの?」
「居ます」
「恵!!今日の私どう?」
「いつも通りかと」
「ならいつも通り可愛いってことね」
ふんっ、と腰に手を当て自慢気に笑う姫ーー名前は恵の呆れた視線を気にすることなく勝ち気に笑う。
従者である恵を引き連れて歩く名前はこの国の王の一人娘だ。
「まぁ、いつもより少しめかしこんでますね」
「これから傑がいらっしゃるそうよ」
「………は?俺、聞いてませんが」
「あら?聞かされて無かったの?今言ったわ」
「おい」
恵は王に使える者として育てられた。幼き頃、父親に金で売られ大人達が訓練する中一人小さな少年が必死に大人達に向かっていく姿が名前の目に止まり、名前の我が儘で従者となった。
勿論それを良く思わない者達もいたが、それを黙らせたのは名前だ。
"黙りなさい。
私が欲しいと言ったのはこの子よ。
認められないというのなら……そうね。
あなた、名前は?
ーーーそう、恵ね。いい名前。
恵の本当の実力に勝てる者がいるなら
その者を私の従者にするわ"
全力で己の力を示しなさい、と名前は笑った。
なぜ手を抜いていることを知ったのかはわからないが、恵は手を抜かずに自身の持っている不思議な力ーーー異能を発揮し、その場にいた一卒兵全員を地に沈めた。
"歓迎するわーーー私の恵。
私の盾となり矛となり、私の為に生きなさい。"
小さな王女はこの日、小さな従者を手にした。
始めは王も恵の異能持ちという存在にいい顔をしなかったのだが、名前が王を説き伏せた。
娘の我が儘に折れた王は恵が従者になることを認め、絶対に姫の期待を裏切らないよう、恵は教育を施され、力をつけ……姫を守る者としての地位を手にした。
のだが、この姫。
めちゃくちゃ自由である。
少し目を離せば窓から逃走し、街へと消える。
捕獲して戻れば俺を池に突き落としてケラケラ笑う。姫と扱うのを辞め、じゃじゃ馬姫を全力で探し、捕獲し、勉強させる。
今まで彼女に振り回されていた付き人は泣いて喜んだ。
このじゃじゃ馬姫を捕まえられる人が現れて、良かったと………。
「お父様、傑様」
「名前、来たか」
「久しぶりだね、名前」
王の横に穏やかに微笑む男ーー。
彼は軍人としても腕が立ち、軍師としても頭の切れる者だ。
一回りほど年は離れているようだが、幼い姫の面倒を見て、姫も慕っていた。
時期王はこの人ーー傑様だと言われるほどだ。
王と姫と傑様で和やかに談笑する姿は微笑ましい。
このときは誰もがこの二人がこの国を共に支え生きていくのだと思っていた。
あの地獄の夜が来るまでは。
ーーー族の襲撃だ!!
わーわーと騒がしくなる城内。
俺は彼女ーー名前姫の元へと大急ぎで向かう。
なのに…彼女は寝室にはいなかった。
火を放たれたのか、燃える城内を突き進む。
「姫!!名前姫様!!」
王の私室。
もしかしたら王と共に保護されているのでは……?と思って来たそこは、俺には地獄の光景に見えた。
つい先日、王と彼女と傑様で和やかに笑っていた空間があったのに……今は血に濡れた剣を持つ傑様。彼を見て呆然と立つ名前姫。
そして、彼女の視線の先には血に濡れ倒れる王の姿。
「傑……様。これは、一体…」
「恵くんか。
困ったね……目撃者が増えてしまった」
「傑様……アンタが王を手にかけたのか?」
「見ての通りだよ」
「なんで……」
「美々子、菜々子」
「「はい、傑様」」
傑様に育てられ、保護されていた2人の少女が音も無く現れる。
「目撃者は例外無く消すんだ」
「「分かりました」」
「消す……?アンタ、本当に何言ってんだよ!!」
少女達が名前を狙う。
俺は異能を使い影から玉犬を呼び出して少女達を退ける。
その隙に名前を抱えて王の私室から飛び出した。
族が入り込んだと騒がしくなる割りに、奇妙な事に気付く。
兵がいない。
族すら嘘だったのかと舌打ちし、この城全体が今じゃ名前の敵なのかもしれないと、最悪の事態が思い浮かぶ。
現に俺を追いかけてくる者達が集まってきて、四方八方から矢が飛んで来る。
姫に当たらぬよう逃げ回っていれば、誘導されてしまったのか……気付けば囲まれてしまった。
「チッ!!」
「悪いな恵……」
「お前ら……っ!!この人まで手にかけると言うのかよ!!」
「例外は認めない」
「ふざけんな!!」
王殺しは重罪だ。
なのに、この城全てがそれを良しとし、族のせいにして隠蔽しようとしている。
「国のためだ」
口々にそう溢す兵士に奥歯を噛み締める。
ちらり、と見た姫はいつもの活気が嘘のように表情を無くしている。
人形のように抜け落ちた表情。
何が起こったのかわからないが、このままでは自分だけじゃなく姫すら守れない最悪な状態だということ。
「姫様……覚悟を」
「ふざけんじゃねぇ!!
絶対に殺させるか……っ!!」
「おーいおいおい。おいおいおい。
なんだよこれ」
「先生、空気読んだ方がいいと思う」
「いや、無理だろ。
お宝目当てで忍び込んだのにこれ……」
月の光を浴びて煌めく銀色。
黒の目隠しをし、真っ黒な服装の長身の男。
同じく真っ黒な服装で同じくらいの年頃の少年。
こんな時に本当の族かよ、と舌打ち。
最悪の状況がますます最悪に。
「あ、先生アレお姫様?」
「ん?あ、本当だ」
「ぞ、族か!?」
「まとめて殺せ!!」
「んー?何だか物騒だ」
「あれ?俺らも巻き込まれた感じ?」
「殺せなんて、言っちゃ駄目だよ」
目隠しの男が何をしたのかわからない。
ただ、目の前に男が降り立ったと思うと……周りにいた兵士達が吹き飛ばされた。
何も武器は持っていない。
ただ、手を動かしただけ。
「そんな事言っていいのは死ぬ覚悟がある奴だけだ」
「アンタ……何者だ?」
「それ今言う必要ある?
………ふーん。オマエも異能持ち、なんだ」
「!?」
「何でわかったかって?眼がいいもんで」
目隠しをズラすと、硝子玉のようなキラキラと透き通って輝く水色のような、青のような瞳。
目を離せないほどの綺麗な瞳に釘付けとなっていたが、新たな砂利を踏む音に男はすぐに目隠しを元に戻す。
「おや?まだ始末していなかったのかい?」
「傑……っ!!」
悠々と現れた傑に奥歯を噛み締める。
まったく反応をしない姫を抱き締める力を強くする。
「オマエ何やってんだよ、傑」
「族が城を襲うなんて困ったね」
「俺らまだ何もしてませーん」
「まとめて殺せ」
「殺せ?………コレがオマエのやり方って事?」
「私は選んだだけだよ、悟」
族と知り合いのように話す傑。
何なんだ、と混乱する頭を必死に回して考える。
まずは、彼女ーー名前を生かすにはどうすれば、いいのか。
「ふーん。なるほどね」
「まさかキミが来るとは予想外だったよ」
「ここでお前ら全員ぶっ殺す事は僕一人で簡単だけどやめておこう。
悠仁」
「はいよ」
「!?」
軽々と姫と共に持ち上げられる。
俺と変わらない身長と年齢の男が、2人まとめて持ち上げられるなんて……。
「お姫様は僕が持つよ」
「りょーかい!!」
「おいっ!!その方に触るな!!」
「この二人、僕が貰うよ。
せいぜい選んだ道を後悔しないようにね、傑」
「後悔なんてしないさ」
「………馬鹿野郎が」
姫を横抱きに抱え、俺を抱えて簡単にその場を逃げ出す二人。
追手は追い付かないようで、来る気配は無かった。
「何なんだよお前らは!!
アイツと……傑と何の関係があるんだ!!」
「ちょっ!?暴れないでくんない!?」
「悠仁、落とせば?」
「えー?いいの?」
「おまっ!?」
簡単に首を突かれて気絶した俺。
目が覚めた時にはどこかわからない小屋の中で
名前と共に寝かされていた。
「ここ、は……」
「あ、目が覚めた?」
俺を抱えていた少年が姿を現す。
その手には湯気の立つ美味しそうな食事。
「腹減ったかなーと思って」
「いらねぇ」
「王族の口に合うかわかんないけど、ウマイと思う」
「いらねぇっつってんだろ」
「そう警戒すんなよ」
ポリポリと頭をかく少年。
こんなアホそうな見た目だが……俺よりは強いとわかる。
だが、名前だけは……。
「………ん」
「名前?」
「あ、女の子も目が覚めた?」
「ここ……」
「俺、悠仁!!
ここは先生が作った隠れ里」
「隠れ里……?」
「うん。俺もそうだけど、ちょっと変わった力がある人達が集まって出来た場所。
勿論力がない人もいるけど……基本的には孤児だったり、街にいられなくなった人達の集まり」
「…………」
「お姫様も目付き悪い付き人の人もまずはゆっくり休んで、いっぱい飯食って元気になろ。
色々何か事情あるみたいだけど、まずは元気にならないと」
にかっ、と呑気に笑う悠仁。
目の前に差し出されたスープをじっと見つめる名前。
「………なんで?」
「ん?」
「どうして……助けたの?」
「名前……っ」
「私なんてお父様と共に朽ちてしまえば良かったのよ……」
「それは困る」
「あ、先生」
いつの間にいたのか、ドアに寄りかかっていた目隠しの男。
スタスタとこちらに歩み寄るので、名前を守るために背に庇う。
しかし、目隠し男は名前の目の前にしゃがみこんだ。
「アンタは王族だ。
王はこの国の為、民の為に生きろよ」
「だけど……っ」
「アンタはまだ何も知らない。
民の事も、国の事も、世界の事も。
悲しい?苦しい?
今まで美味しい暖かい食事を与えられ
綺麗な衣服を着て
暖かい布団やお風呂に入れる贅沢な不自由ない暮らしをしていたオマエは何も知らないだろ」
「オマエっ!!それ以上姫を侮辱するならっ」
「父親が殺されたくらいでピーピー泣いて絶望するくらいじゃ本当の絶望じゃないよ」
「………」
「オマエは王族の血を引く娘なんでしょ?
なら、知らなきゃ。
オマエが生きている限り生きて全てに目を向けろ。
本当の悲しみを。
本当の苦しみを。
本当の絶望をしているのはオマエじゃなく、民だということを」
じっと、名前を見つめ淡々と話す目隠し男。
名前は黙って涙を流す。
「王族の義務を捨てて死にたいって言うならホラ」
カランっ、と投げられたのは一本のナイフ。
「今すぐ首掻ききって死になよ」
「駄目だ!!」
「オマエは黙ろうね」
がっ、と頭を床に叩き付けられる。
動けないよう背中を踏みつけられれば無力な俺は身動きすらとれない。
「…………」
「名前っ!!やめろ!!」
震える手でナイフを持つ名前。
「ソレを使えば楽になれるよ」
「………っ」
「あぁ、そんな持ち方じゃ駄目だね。
こうして、しっかり持たなきゃ」
「やめっ!!くっっ玉犬!!」
影から犬を産み出す。
背中の目隠し男を退かし、名前の持つナイフを握る。
痛みと共に血が流れ出る。
「恵……っ、血が」
「ふざけんな!!
アンタは死なせないし、死のうとすんな!!」
「恵……」
「王を殺したあんな奴が王座に居座るなんて反吐が出るが……アンタが自分の命を自分で捨てるのはもっと許さねぇ!」
「どう、して……っ」
「俺を生かしてオマエを守るために側に選んだのは名前だろ!!
そのオマエが俺より先に死ぬなんて許さねぇって言ってんだ!!」
ナイフを遠くに投げ捨てれば、再びじわじわと涙を溢れさせ流す名前。
「あーあ、泣かした」
「女の子泣かしちゃ駄目だろ」
「オマエら黙ってろよ」
名前はその後、しばらく静かに過ごしていた。
この隠れ里の人達と慣れない家事の手伝いをし、召し使いのように不慣れながらもこなそうと頑張る姿。
俺は悟と言う目隠し男によって、体術を指導されながら悠仁と呼ばれる少年に地面に転がされる。
地面に転がる俺を洗濯物を持ちながらしゃがみこみ見下ろす名前。
「恵……あなた、そんな弱かったの?」
「違う。コイツらが化物なんだ」
「………恵より強い人っていたのね」
「そりゃあいるだろ」
「………私、知らないことばかりだわ」
洗濯の仕方。ご飯の仕込みの仕方。火の起こし方。
普段は召し使いがしていることを、ここの人達は子供でも理解し出来ている。
「食べられず命を落とす者。
奪われ虐げられる者。
………力の無い者達は選ぶ事すらできないのね」
「そうだな」
「私、この国はとても平和だと思っていたわ」
「………」
「幸せで平和だったのは、私が王族だったからなのね」
くしゃり、と表情を歪ませる名前。
彼女は大事に大事に育てられてきた。
国に関わる事を知らず、不自由なく。
「そうさ。
キミは王族だから幸せだった」
「………アナタは」
「ここの生活は大変だろ?
今まで何もしてこなかったから子供より何も知らないお姫様」
「そうね。毎日が刺激的よ」
「くくっ、刺激的ねぇ」
「ねぇ。
アナタは傑から私を持ち去ったんでしょ?」
「成り行きでね」
「じゃあ、私はアナタのものってことよね」
「一応そーなるかな」
「私に生きる力を教えてくれる?
戦い方、野宿の仕方、外での生き方……
アナタにとって使える駒として、私を育てて」
「………アナタ何言ってんだ」
何を言うのかと思えば……。
懐からなぜかナイフを取り出す名前にぎょっとして、ナイフを取り上げようとする。
しかし、強い意思のある瞳で見つめられ動きが止まる。
ザッ、と長い髪を切り落とす名前。
目隠し男を見上げる姿は、こないだまで人形のように意思を無くした人とは思えないほど強い意思が宿っていた。
「アナタの望む私にして頂戴」
「くっくっくっ。
僕がヤダって言ったら?」
「あら?アナタは嫌なんて言わないでしょ?」
小首を傾げ、にこりと笑う名前。
「アナタは言ったわ。私は知らなきゃいけないと。
私も知りたい。
民を。国を。そして……なぜ傑がお父様を殺す必要があったのかを。
けど、今の私がここより外に出るには何もかもが足手まといで何も出来ない。
恵ばかりに頼っていられない。
自分の足で立って歩くのならまずは私に必要な術をアナタから教わりたいわ」
「僕、厳しいよ」
「望むところよ」
ポカン、として名前を見上げる俺を名前はどうしたのかと頭を傾げている。
「………名前が、そんな事しなくても俺が」
「駄目よ。
私が自分でやらなきゃいけないことなの」
「危ないことはしなくていい。それは俺の役目だ」
「私が危ないことしないよう、止められるように強くなりなさい。
じゃないと私は強くなるわよ、恵」
「………だけどっ」
「一緒に世界を見るわよ。そして知らなきゃ」
あぁ、綺麗だ。
幼い頃、俺が欲しいと言った時と同じ顔をしながら笑う名前。
異端児だった俺を望んでくれるーー俺の主。
「………どこまでも、ついていく」
「勿論よ。恵は私の、なんだから」
「覚悟は決まったみたいだね。
バシバシいくからそのつもりで」
これは、1人の王女の旅路。
民を見つめ
国を見つめ
異能を見つめ
世界を見つめる
王への道を行く彼女の物語。
あとがき
暁のヨナを読み返してテンションあがって書いたなんちゃってパロディ。
しかし、あそこまで盛大な物語はちょっと無理なので、それっぽくだけ(笑)
呪霊と戦わないけど、異能として戦えそうだよねって話。
傑めちゃくちゃ民族衣装似合いそうwww
夢主→お姫様。
恵→従者
傑→王の兄弟の子供。悟とは幼い頃街に行って知り合った友達。いつか国を変えると誓った仲。
みみ、なな→孤児。傑に拾われた。異能持ち。
悟→隠れ里の長。強い異能持ち。迫害され捨てられ異能持ちを迫害する王族に強い恨みを持っていたが、傑と出会って緩和。
自分のような子を集めているうちに、村に住む人が多くなった。
傑が中から国を変えるなら、外から変えようと思ってた。
悠仁→孤児。悟に拾われた。力持ち。
五条さんwww
坊っちゃん悟じゃなく、坊っちゃん傑。
立場逆転してて面白い。
続く……いや、ちょっと無理(笑
設定がまとまっていないくらいガバガバwww
続き!!って声があったら続く……かも?