通行人 番外編
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やぁ、初めまして黒尾さんです。
今回は僕が研磨と名前の幼馴染として進行させて頂きマス。
俺が引っ越して研磨と名前と知り合う前から、研磨と名前は一緒だった。
本人らに話を聞くと、両親が結婚し、子供を身ごもったはいいが、妊娠中に引っ越しやら仕事やら動きすぎて切迫となり入院。
その時に病室が一緒だった研磨の母と名前の母は共に辛い入院生活を乗り越えた同士として意気投合。
お互い出産して帰って遊ぶ約束をしたら、同じ町内だったというオチ。
そこから始まった親同士の付き合いは長く、幼少期からずっと共に育ってきた兄妹のようなもの。
だからこそ意思の疎通もするし、性格はまったく違っていてもお互い気にしない。
お互いの家を実家と呼び合うし、お互いの両親も気にしない。
共働きだからと、お互いに研磨や名前を預けていたからお互いの家に個人の部屋があるくらいだ。
まぁ、基本的には一緒に寝ていたみたいなので使っていなかったからのちの俺の予備部屋になったが、俺も一緒に雑魚寝していたから物置部屋となった。
昔は2人の言葉にしなくても通じ合う感じが羨ましかったが、気付いたら俺もこの2人のマイペースに巻き込まれていた。
引っ込み思案でゲームが好きで人と関わるのが得意じゃない研磨。
明るく騒がしく人と関わるのが得意な名前。
2で割れば丁度いい2人だが、なんだかんだ上手くやっているらしい。
研磨が得意じゃないことを名前が。
名前が得意じゃないことを研磨が。
お互いがお互いを支えあい、共に育ってきた2人は俺も入れないくらいの絆がある。
だから、いつかはこの2人がそのままくっつくんじゃないかとどこかで思っていた。
「名前、本当に何したらこんな毎回毎回荷物届くの?そろそろうざい」
「私は何もしてない。むしろ、やらかしたの宮くん。
そしてこれは悟への品なら……悟が奢ったから?」
「あれくらいの金額で毎回毎回こんなにいらないのにね」
「悟、俺これ食べたい」
「うわっ!!アップルパイじゃん」
「えっ、僕も食べる。名前切って」
「はいはい。今回誰から………臣くんか」
「佐久早からか」
僕の目の前には今、コタツに入っていくつかの段ボールを開ける研磨と名前の彼氏の五条悟くん。
何やらムスビィの飲み会に誘われ色々あって、お土産大量に送り付けられているらしい。研磨の家に。
主に宮侑からのお土産が多いが、木兎や佐久早や烏野のチビちゃんからも送られてくるので、荷物が多いこと、多いこと……。
「はい、研磨と悟の分。
クロも食べるよね?」
「………いる」
「さっきから静かでクロキモい」
「悟いるからちょっと人見知りなんじゃない?」
「僕?」
「研磨と悟が仲良しで驚いてるんでしょ。
私もお互い名前で呼んでてビックリしたもん」
「「だって同い年だし」」
まぁ、その時点でビックリしたよね。
学生の頃から大人びているな……と思ってたら、まさかの俺より年下。
なのに、俺よりデカイ。
研磨の家に荷物取りに通うようになり、そっから仲良くなったというか、打ち解けた?らしいが……
「人見知りの研磨くんをよく攻略できたネ」
「俺を珍獣扱いしないで」
「研磨は人見知りではあるけど、必要なこときちんと伝えてくれるし、必要以上の事したくないだけで別に苦労は無かったかなー」
「悟は見た目ヤバいけどわりとまともだし」
「どっちかと言えば手がかかるの……」
「手がかかるのはあっち」
「私を見るな、私を」
五条クンと研磨が名前を見ている。
名前はいつものごとく研磨の保存食作りの最中だ。
「あ、魚の干物だって。研磨いる?」
「クロ食べたら」
「俺貰っていいの?」
「僕、名前いなかったら基本外食だからさ」
「お菓子ばっか食べてたら糖尿なるよ」
「僕最強だから大丈夫」
明太子やら、お菓子やら、変な人形やら……
ムスビィの奴らまじで何送ってきてんの?
「名前、コレで何か作って」
「なに?夜のおかず?」
「うん」
「あ、じゃあコレも焼いて」
「適当に作るからね」
文句言うなよ、と先ほどの干物と明太子を持って名前に預けた。
「五条クンはさー、なんで名前と付き合ったの?」
「んー?」
「キミなら変な話選び放題じゃん」
一時期、名前が荒れていて研磨と心配していた。
それこそ、名前の心の安定のためにも幸せのためにも研磨とくっつけと本気で思ったくらいに。
けど、どんなに荒れていても研磨は名前に手をだすことなく泣いている名前の話を聞いているだけだったし、大人になって一緒に寝ても本当に一緒の布団で寝てただけ。
「俺としては、名前が幸せならそれでいーんだけど……
一度は放っておいてなんで今?って思うわけデスヨ」
にこり、と笑ってこのモヤモヤをぶつける。
幼馴染大好き同盟としては、大事な幼馴染を泣かせて放置して今更付き合いましたーとかっさらい、そして人見知りの幼馴染すら手懐けて家でまったりして、お互い呼び捨てにして和むくらい仲良しな雰囲気出されちゃ………ね?
え?ヤキモチ?
そんなんじゃねーっし!!!
そんな俺の八つ当たり……いやいや、幼馴染を思ってのマウントに五条くんは頬杖をつきながらこちらを呆れたように見る。
めちゃくちゃイケメンだな、オイ。
いや、黒尾さんも負けないから。
「キミら幼馴染って本当名前のこと大好きだよね。
名前も幼馴染好き過ぎてめちゃくちゃ妬くんだけど」
「研磨は特別枠だからなー」
「黒尾くんだったっけ?キミもだよ。
名前の馬鹿を叱ったり、面倒見てて
名前が頼る相手はだいたいキミだもん」
学生の頃からそうだったじゃん、と拗ねたように話す五条くん。
そうだったか?と研磨を見れば……オマエ、いつの間にアップルパイ2切れ目?えっ、3切れ目?嘘だろ。
「確かに昔から名前が奇想天外なことやらかしたら怒るのはクロの役目だったよね。
帰り遅くなったらクロに連絡して迎えに行くのもクロだし」
「そーだったか?研磨も居ただろ」
「居たけど連絡行くのはクロだったよ。
男だらけの飲み会だって知ればクロに怒られてたし」
「そりゃあ怒るだろ。女の子だからな」
「今でも俺に愚痴は言うけど、困った事はクロに相談してるでしょ。
沖縄行くのも、仕事でどう対応すればいいのか困った時も」
言われてみれば、そんな気がしてきた。
研磨には何でも話して(恋人とか)いたけど
なんだかんだ頼られていた事実に照れてしまう。
「名前のなかで黒尾くんも研磨も絶対に揺るがない関係だから、絶対の信頼あるし。
その関係に妬いたり嫉妬したりはするけど、辞めろなんて言わないから安心してよ 」
「………あ、そう」
「クロ、照れてる場合じゃないよ。
質問に答えてない」
「気付かないでいいでしょ、そこ」
「俺も聞いてないからね」
アップルパイを食べながらにやぁ、と笑う研磨。
うん、お前ってこーゆー時に輝くよね。
僕知ってる。
名前のことになると、意地悪くマウント取るの僕より研磨だって。
「俺の名前をあげたんだからちゃんと聞かなきゃ」
「うわっ。研磨の口から"俺の"って始めて聞いた」
「クロうるさい。
学習能力ないし、馬鹿だし、アホだし、面倒だし、うるさいし、距離近すぎてうざい馬鹿だけど」
「辛辣っ」
「俺の出来ないところ補ってくれていた大切な奴だから。
スッパリ言えないならあげないよ」
にこり、と笑っている研磨。
「………隣に居てほしいと思ったのが名前だったからだよ。
学生の頃はこっちの事情もあって離れた方がいいと思ってたし、幸せになるなら隣にいるのが僕じゃなくていいと思ってた」
頬杖付きながら名前の後ろ姿を見る五条くん。
「本気で好きだと思ったのも
本気で欲しいと思ったのも後にも先にも名前だけなんだよ」
「随分と時間かかったみたいだけどね」
「僕めちゃくちゃ忙しいから、ふとした癒しの馬鹿が欲しいと思ったのがあの時だったの」
「じゃあ学生の頃から好きだったのか」
「まぁね」
えっ、じゃあこいつら両思い拗らせて今やっと収まったってこと?
なにそれ。
めちゃくちゃ感動するやつ。
「ウチの子泣かせないでネ?」
「多分」
「クロ、チョロくない?」
「色々俺も言いたいことあったし
それなりに考えてたけど……
結局は研磨も俺も名前が笑っているならいっか、って思っちまうだろ」
「まぁね」
「そもそも研磨が五条クン認めてるなら俺の出番無いし」
研磨のことだから、なんだかんだ大事な幼馴染のために五条くんに意地悪の一つや2つしてそうだし。
多分やることえげつないのは俺より研磨だから。
俺らの脳は敵に回すと怖いのデス。
「研磨には既に虐められたからなー」
「虐めてない」
「虐めだよ。
僕が頭下げて居場所頼んだのに教えてくれなかったじゃん」
「下げてないし、理由も言わなかったよ」
「心の中では下げたし理由も言ったから」
「むしろは?って威嚇された」
「教えてくれないからつい」
「………ウチの子に何してんのキミ」
五条くんってなかなかいい性格ダヨネ。
僕もなかなかな性格と言われておりますが、五条くんより、かなーりマシだと思うんです。
「ヒントはあげた」
「僕が知ってるはずってヒントじゃないよ。
たまたま見てたテレビ番組で知ったからなんとかなったけどわかるわけないから」
「あー、アレ見たんだ」
「うん、見た」
僕、そのテレビ知らない。
「テレビ見てなくてもわかったと思うけど。
名前はずっと悟と沖縄行くの楽しみにしていたし、約束してたんでしょ」
「したけど、まさか沖縄行くとは思わないじゃん」
「あの単細胞の行動力考えたら簡単でしょ」
「研磨ならわかるだろーけど、五条クンには重荷じゃね?」
「それでわからないならその程度。
名前を好きだ、惚れたなんて口先だけの男なら今までの男と同類だよ」
「「…………」」
「本気なら、名前の考えることくらい簡単にわかるはずだよ」
さらっと言ってるけど……研磨さん?
「かなり無理難題じゃ?」
「そう?」
「あれの行動なんて突拍子無さすぎて、俺でもわかんないから」
「まぁ、やることなすこと唐突だからね。
けど、基本的馬鹿だから一つのことに真っ直ぐだよ」
「僕、あのテレビ局にめちゃくちゃ感謝だね」
「そもそもあの馬鹿と一緒に居るならそのくらいの理解力なきゃ無理だと思う」
「さっきから研磨私のこと馬鹿にしすぎじゃない?」
料理を持ってきた名前が机に皿を並べていく。
うん、美味しそう。
「馬鹿なのは昔からでしょ。
好きだ好きだって口に出して泣くくせに
探しに行くのは負けた気がするから嫌だとか言うし、他に好きなる努力してもやっぱり悟がいいって泣くし」
「ぎゃぁあああああっ!!!
ヤメテ!!今その黒歴史暴露する!?」
「彼氏出来ても好きになれるかわかんないとか、夜遊びして忘れようとしてたけど、いざとなったら怖じ気付いて相手殴って帰って来て悟がいいって泣き出すし。
最終的には俺巻き込んで浮気だって騒いだ男が俺に殴りかかってきて、俺に手を出すなって殴りかかるし。クロが止めに入るまで大変だったな」
「やーめーてーっ!!!」
「名前めっちゃ僕のこと大好きじゃん」
「うっさい!!
ほら、ご飯食べますよ!!」
顔を真っ赤にしていなくなる名前をケラケラ笑いながら追いかけていく五条くん。
「研磨、大変だったんだな」
「愚痴聞くのも泣き言聞くのも俺の役目だけど、困った時に頼るのはクロの役目。
昔はクロが羨ましかったけど、今なら俺じゃなくて良かったと思うよ」
「は?」
「俺じゃ頼りなくて解決できなかったから」
懐かしむように話す研磨。
研磨にも研磨なりの悩みがあったんだと
今になって知るとは思わなかった。
「頼りになって、理解力もあって、泣ける場所が出来て少し寂しく思うけど」
俺や研磨の役目は、五条くんが引き受けた。
名前の相手だからかなり振り回されるし、苦労すると思う。
「悟、うっさい!!」
「僕も大好き」
「う、うっさい!!」
「可愛い可愛い」
「うーーーっ」
名前の頭を撫でながら笑う五条くんは嬉しそうだし、顔を赤くしながらも満更でもないように拗ねる名前。
幼馴染の顔ではなく、女の子としての顔。
「俺らの幼馴染の立場は絶対揺るがないから」
「………だな」
「そこ!!
ご飯準備手伝って、研磨はアップルパイやめなさい!!何切れ目!?」
「もう全部食べた」
「嘘でしょ!?私の分は?」
「残してるに決まってるでしょ」
「ならよし」
わいわい皆で食卓を囲んで食べる。
いつか、それぞれが家庭を持つことになっても、この集まりは変わらないと思えば悪いもんじゃないと思えた。
「嘘だろ……五条って下戸!?」
「あ、悟に飲ませたの?」
「一口で倒れたんだけど!!ビビりました!!」
「うわ、研磨も寝てるじゃん」
「研磨も下戸だからな」
名前が食べ終わった食器洗ってる間に五条(って呼ぶことになった)を酒に誘えば、まさかの一口でダウン。
研磨もダウン。
僕、まだ一杯目なんだけど……まだまだ呑みたい。
「付き合うよ、クロ」
「まじか」
「悟がいいもの買ってくれたから」
「うわっ……大吟醸のいいやつじゃん。
五条って何者?超金持ち?」
「有り余るくらいには金持ちかな。
私の連休中の交通費いらないって言っても出してくれてるし、ムスビィの食事代だってスマートに支払ってたし」
ちなみにムスビィの食事代10万軽く超えてたからね、と呟く名前。
いや、10万軽く越える食事代ってなに?
スマートに出されたらそりゃ贈り物もされるわ。
「あ、ウマイ」
「ね。おいしー」
「五条いいやつじゃん」
「うん。たまにクズ野郎だけど凄いいい男」
「良かったな」
「研磨にもクロにも心配かけてばかりでごめんね」
「随分としおらしいじゃん」
「そりゃ迷惑や心配かけてた自覚はあるから」
ぐいぐい呑む名前。
高級品もーちょい味わおうよ。
「五条にあんま迷惑かけんなよ」
「迷惑かけること前提?」
「嫌になったら俺も研磨もいるからな」
「最高の助っ人だね」
くすり、と笑う名前。
幼馴染として三人で育ち、今は別々の道を歩んでいて、お互いにパートナーがいる。
少しの寂しさと、大人になっていく自覚。
けれど、変わらないものがある。
「クロも彼女困らせちゃだめだよ」
「うっ……」
「喧嘩したならちゃんと謝って明日は帰りな」
「うわ、バレてた?」
「喧嘩したらいつも研磨のとこ逃げてくるじゃん」
「あー……」
よくお分かりで……。
「オマエこそ、そろそろこっち戻るのか?」
「まぁ、来年かな」
「来年か」
「こっちで声掛けてくれてるとこあるからさ。
沖縄は名残惜しいけど、悟と一緒に居たいし」
「そっか」
「もう少しだけ恋人気分を味わいながら好き場所で仕事したいから」
「………愛だねぇ」
「愛ですよ」
お互いに笑って酒を呑む。
そのまま酔い潰れた俺に毛布を掛けてくれた名前は朝起きたら五条に抱かれながら寝ていた。
そのまま朝、二人で起きて帰って行ったのを見送りまた研磨と雑魚寝する。
「お似合いだよな」
「だね」
俺らの幼馴染が笑っていてくれて幸せなら
それでいい。
どうか幸せに笑っていてくれと願う。
あとがき
子供の頃かなり捏造www
黒尾さん視点で、研磨のおうちに集まる幼馴染。
そこに馴染む五条さん(笑)
今回は僕が研磨と名前の幼馴染として進行させて頂きマス。
俺が引っ越して研磨と名前と知り合う前から、研磨と名前は一緒だった。
本人らに話を聞くと、両親が結婚し、子供を身ごもったはいいが、妊娠中に引っ越しやら仕事やら動きすぎて切迫となり入院。
その時に病室が一緒だった研磨の母と名前の母は共に辛い入院生活を乗り越えた同士として意気投合。
お互い出産して帰って遊ぶ約束をしたら、同じ町内だったというオチ。
そこから始まった親同士の付き合いは長く、幼少期からずっと共に育ってきた兄妹のようなもの。
だからこそ意思の疎通もするし、性格はまったく違っていてもお互い気にしない。
お互いの家を実家と呼び合うし、お互いの両親も気にしない。
共働きだからと、お互いに研磨や名前を預けていたからお互いの家に個人の部屋があるくらいだ。
まぁ、基本的には一緒に寝ていたみたいなので使っていなかったからのちの俺の予備部屋になったが、俺も一緒に雑魚寝していたから物置部屋となった。
昔は2人の言葉にしなくても通じ合う感じが羨ましかったが、気付いたら俺もこの2人のマイペースに巻き込まれていた。
引っ込み思案でゲームが好きで人と関わるのが得意じゃない研磨。
明るく騒がしく人と関わるのが得意な名前。
2で割れば丁度いい2人だが、なんだかんだ上手くやっているらしい。
研磨が得意じゃないことを名前が。
名前が得意じゃないことを研磨が。
お互いがお互いを支えあい、共に育ってきた2人は俺も入れないくらいの絆がある。
だから、いつかはこの2人がそのままくっつくんじゃないかとどこかで思っていた。
「名前、本当に何したらこんな毎回毎回荷物届くの?そろそろうざい」
「私は何もしてない。むしろ、やらかしたの宮くん。
そしてこれは悟への品なら……悟が奢ったから?」
「あれくらいの金額で毎回毎回こんなにいらないのにね」
「悟、俺これ食べたい」
「うわっ!!アップルパイじゃん」
「えっ、僕も食べる。名前切って」
「はいはい。今回誰から………臣くんか」
「佐久早からか」
僕の目の前には今、コタツに入っていくつかの段ボールを開ける研磨と名前の彼氏の五条悟くん。
何やらムスビィの飲み会に誘われ色々あって、お土産大量に送り付けられているらしい。研磨の家に。
主に宮侑からのお土産が多いが、木兎や佐久早や烏野のチビちゃんからも送られてくるので、荷物が多いこと、多いこと……。
「はい、研磨と悟の分。
クロも食べるよね?」
「………いる」
「さっきから静かでクロキモい」
「悟いるからちょっと人見知りなんじゃない?」
「僕?」
「研磨と悟が仲良しで驚いてるんでしょ。
私もお互い名前で呼んでてビックリしたもん」
「「だって同い年だし」」
まぁ、その時点でビックリしたよね。
学生の頃から大人びているな……と思ってたら、まさかの俺より年下。
なのに、俺よりデカイ。
研磨の家に荷物取りに通うようになり、そっから仲良くなったというか、打ち解けた?らしいが……
「人見知りの研磨くんをよく攻略できたネ」
「俺を珍獣扱いしないで」
「研磨は人見知りではあるけど、必要なこときちんと伝えてくれるし、必要以上の事したくないだけで別に苦労は無かったかなー」
「悟は見た目ヤバいけどわりとまともだし」
「どっちかと言えば手がかかるの……」
「手がかかるのはあっち」
「私を見るな、私を」
五条クンと研磨が名前を見ている。
名前はいつものごとく研磨の保存食作りの最中だ。
「あ、魚の干物だって。研磨いる?」
「クロ食べたら」
「俺貰っていいの?」
「僕、名前いなかったら基本外食だからさ」
「お菓子ばっか食べてたら糖尿なるよ」
「僕最強だから大丈夫」
明太子やら、お菓子やら、変な人形やら……
ムスビィの奴らまじで何送ってきてんの?
「名前、コレで何か作って」
「なに?夜のおかず?」
「うん」
「あ、じゃあコレも焼いて」
「適当に作るからね」
文句言うなよ、と先ほどの干物と明太子を持って名前に預けた。
「五条クンはさー、なんで名前と付き合ったの?」
「んー?」
「キミなら変な話選び放題じゃん」
一時期、名前が荒れていて研磨と心配していた。
それこそ、名前の心の安定のためにも幸せのためにも研磨とくっつけと本気で思ったくらいに。
けど、どんなに荒れていても研磨は名前に手をだすことなく泣いている名前の話を聞いているだけだったし、大人になって一緒に寝ても本当に一緒の布団で寝てただけ。
「俺としては、名前が幸せならそれでいーんだけど……
一度は放っておいてなんで今?って思うわけデスヨ」
にこり、と笑ってこのモヤモヤをぶつける。
幼馴染大好き同盟としては、大事な幼馴染を泣かせて放置して今更付き合いましたーとかっさらい、そして人見知りの幼馴染すら手懐けて家でまったりして、お互い呼び捨てにして和むくらい仲良しな雰囲気出されちゃ………ね?
え?ヤキモチ?
そんなんじゃねーっし!!!
そんな俺の八つ当たり……いやいや、幼馴染を思ってのマウントに五条くんは頬杖をつきながらこちらを呆れたように見る。
めちゃくちゃイケメンだな、オイ。
いや、黒尾さんも負けないから。
「キミら幼馴染って本当名前のこと大好きだよね。
名前も幼馴染好き過ぎてめちゃくちゃ妬くんだけど」
「研磨は特別枠だからなー」
「黒尾くんだったっけ?キミもだよ。
名前の馬鹿を叱ったり、面倒見てて
名前が頼る相手はだいたいキミだもん」
学生の頃からそうだったじゃん、と拗ねたように話す五条くん。
そうだったか?と研磨を見れば……オマエ、いつの間にアップルパイ2切れ目?えっ、3切れ目?嘘だろ。
「確かに昔から名前が奇想天外なことやらかしたら怒るのはクロの役目だったよね。
帰り遅くなったらクロに連絡して迎えに行くのもクロだし」
「そーだったか?研磨も居ただろ」
「居たけど連絡行くのはクロだったよ。
男だらけの飲み会だって知ればクロに怒られてたし」
「そりゃあ怒るだろ。女の子だからな」
「今でも俺に愚痴は言うけど、困った事はクロに相談してるでしょ。
沖縄行くのも、仕事でどう対応すればいいのか困った時も」
言われてみれば、そんな気がしてきた。
研磨には何でも話して(恋人とか)いたけど
なんだかんだ頼られていた事実に照れてしまう。
「名前のなかで黒尾くんも研磨も絶対に揺るがない関係だから、絶対の信頼あるし。
その関係に妬いたり嫉妬したりはするけど、辞めろなんて言わないから安心してよ 」
「………あ、そう」
「クロ、照れてる場合じゃないよ。
質問に答えてない」
「気付かないでいいでしょ、そこ」
「俺も聞いてないからね」
アップルパイを食べながらにやぁ、と笑う研磨。
うん、お前ってこーゆー時に輝くよね。
僕知ってる。
名前のことになると、意地悪くマウント取るの僕より研磨だって。
「俺の名前をあげたんだからちゃんと聞かなきゃ」
「うわっ。研磨の口から"俺の"って始めて聞いた」
「クロうるさい。
学習能力ないし、馬鹿だし、アホだし、面倒だし、うるさいし、距離近すぎてうざい馬鹿だけど」
「辛辣っ」
「俺の出来ないところ補ってくれていた大切な奴だから。
スッパリ言えないならあげないよ」
にこり、と笑っている研磨。
「………隣に居てほしいと思ったのが名前だったからだよ。
学生の頃はこっちの事情もあって離れた方がいいと思ってたし、幸せになるなら隣にいるのが僕じゃなくていいと思ってた」
頬杖付きながら名前の後ろ姿を見る五条くん。
「本気で好きだと思ったのも
本気で欲しいと思ったのも後にも先にも名前だけなんだよ」
「随分と時間かかったみたいだけどね」
「僕めちゃくちゃ忙しいから、ふとした癒しの馬鹿が欲しいと思ったのがあの時だったの」
「じゃあ学生の頃から好きだったのか」
「まぁね」
えっ、じゃあこいつら両思い拗らせて今やっと収まったってこと?
なにそれ。
めちゃくちゃ感動するやつ。
「ウチの子泣かせないでネ?」
「多分」
「クロ、チョロくない?」
「色々俺も言いたいことあったし
それなりに考えてたけど……
結局は研磨も俺も名前が笑っているならいっか、って思っちまうだろ」
「まぁね」
「そもそも研磨が五条クン認めてるなら俺の出番無いし」
研磨のことだから、なんだかんだ大事な幼馴染のために五条くんに意地悪の一つや2つしてそうだし。
多分やることえげつないのは俺より研磨だから。
俺らの脳は敵に回すと怖いのデス。
「研磨には既に虐められたからなー」
「虐めてない」
「虐めだよ。
僕が頭下げて居場所頼んだのに教えてくれなかったじゃん」
「下げてないし、理由も言わなかったよ」
「心の中では下げたし理由も言ったから」
「むしろは?って威嚇された」
「教えてくれないからつい」
「………ウチの子に何してんのキミ」
五条くんってなかなかいい性格ダヨネ。
僕もなかなかな性格と言われておりますが、五条くんより、かなーりマシだと思うんです。
「ヒントはあげた」
「僕が知ってるはずってヒントじゃないよ。
たまたま見てたテレビ番組で知ったからなんとかなったけどわかるわけないから」
「あー、アレ見たんだ」
「うん、見た」
僕、そのテレビ知らない。
「テレビ見てなくてもわかったと思うけど。
名前はずっと悟と沖縄行くの楽しみにしていたし、約束してたんでしょ」
「したけど、まさか沖縄行くとは思わないじゃん」
「あの単細胞の行動力考えたら簡単でしょ」
「研磨ならわかるだろーけど、五条クンには重荷じゃね?」
「それでわからないならその程度。
名前を好きだ、惚れたなんて口先だけの男なら今までの男と同類だよ」
「「…………」」
「本気なら、名前の考えることくらい簡単にわかるはずだよ」
さらっと言ってるけど……研磨さん?
「かなり無理難題じゃ?」
「そう?」
「あれの行動なんて突拍子無さすぎて、俺でもわかんないから」
「まぁ、やることなすこと唐突だからね。
けど、基本的馬鹿だから一つのことに真っ直ぐだよ」
「僕、あのテレビ局にめちゃくちゃ感謝だね」
「そもそもあの馬鹿と一緒に居るならそのくらいの理解力なきゃ無理だと思う」
「さっきから研磨私のこと馬鹿にしすぎじゃない?」
料理を持ってきた名前が机に皿を並べていく。
うん、美味しそう。
「馬鹿なのは昔からでしょ。
好きだ好きだって口に出して泣くくせに
探しに行くのは負けた気がするから嫌だとか言うし、他に好きなる努力してもやっぱり悟がいいって泣くし」
「ぎゃぁあああああっ!!!
ヤメテ!!今その黒歴史暴露する!?」
「彼氏出来ても好きになれるかわかんないとか、夜遊びして忘れようとしてたけど、いざとなったら怖じ気付いて相手殴って帰って来て悟がいいって泣き出すし。
最終的には俺巻き込んで浮気だって騒いだ男が俺に殴りかかってきて、俺に手を出すなって殴りかかるし。クロが止めに入るまで大変だったな」
「やーめーてーっ!!!」
「名前めっちゃ僕のこと大好きじゃん」
「うっさい!!
ほら、ご飯食べますよ!!」
顔を真っ赤にしていなくなる名前をケラケラ笑いながら追いかけていく五条くん。
「研磨、大変だったんだな」
「愚痴聞くのも泣き言聞くのも俺の役目だけど、困った時に頼るのはクロの役目。
昔はクロが羨ましかったけど、今なら俺じゃなくて良かったと思うよ」
「は?」
「俺じゃ頼りなくて解決できなかったから」
懐かしむように話す研磨。
研磨にも研磨なりの悩みがあったんだと
今になって知るとは思わなかった。
「頼りになって、理解力もあって、泣ける場所が出来て少し寂しく思うけど」
俺や研磨の役目は、五条くんが引き受けた。
名前の相手だからかなり振り回されるし、苦労すると思う。
「悟、うっさい!!」
「僕も大好き」
「う、うっさい!!」
「可愛い可愛い」
「うーーーっ」
名前の頭を撫でながら笑う五条くんは嬉しそうだし、顔を赤くしながらも満更でもないように拗ねる名前。
幼馴染の顔ではなく、女の子としての顔。
「俺らの幼馴染の立場は絶対揺るがないから」
「………だな」
「そこ!!
ご飯準備手伝って、研磨はアップルパイやめなさい!!何切れ目!?」
「もう全部食べた」
「嘘でしょ!?私の分は?」
「残してるに決まってるでしょ」
「ならよし」
わいわい皆で食卓を囲んで食べる。
いつか、それぞれが家庭を持つことになっても、この集まりは変わらないと思えば悪いもんじゃないと思えた。
「嘘だろ……五条って下戸!?」
「あ、悟に飲ませたの?」
「一口で倒れたんだけど!!ビビりました!!」
「うわ、研磨も寝てるじゃん」
「研磨も下戸だからな」
名前が食べ終わった食器洗ってる間に五条(って呼ぶことになった)を酒に誘えば、まさかの一口でダウン。
研磨もダウン。
僕、まだ一杯目なんだけど……まだまだ呑みたい。
「付き合うよ、クロ」
「まじか」
「悟がいいもの買ってくれたから」
「うわっ……大吟醸のいいやつじゃん。
五条って何者?超金持ち?」
「有り余るくらいには金持ちかな。
私の連休中の交通費いらないって言っても出してくれてるし、ムスビィの食事代だってスマートに支払ってたし」
ちなみにムスビィの食事代10万軽く超えてたからね、と呟く名前。
いや、10万軽く越える食事代ってなに?
スマートに出されたらそりゃ贈り物もされるわ。
「あ、ウマイ」
「ね。おいしー」
「五条いいやつじゃん」
「うん。たまにクズ野郎だけど凄いいい男」
「良かったな」
「研磨にもクロにも心配かけてばかりでごめんね」
「随分としおらしいじゃん」
「そりゃ迷惑や心配かけてた自覚はあるから」
ぐいぐい呑む名前。
高級品もーちょい味わおうよ。
「五条にあんま迷惑かけんなよ」
「迷惑かけること前提?」
「嫌になったら俺も研磨もいるからな」
「最高の助っ人だね」
くすり、と笑う名前。
幼馴染として三人で育ち、今は別々の道を歩んでいて、お互いにパートナーがいる。
少しの寂しさと、大人になっていく自覚。
けれど、変わらないものがある。
「クロも彼女困らせちゃだめだよ」
「うっ……」
「喧嘩したならちゃんと謝って明日は帰りな」
「うわ、バレてた?」
「喧嘩したらいつも研磨のとこ逃げてくるじゃん」
「あー……」
よくお分かりで……。
「オマエこそ、そろそろこっち戻るのか?」
「まぁ、来年かな」
「来年か」
「こっちで声掛けてくれてるとこあるからさ。
沖縄は名残惜しいけど、悟と一緒に居たいし」
「そっか」
「もう少しだけ恋人気分を味わいながら好き場所で仕事したいから」
「………愛だねぇ」
「愛ですよ」
お互いに笑って酒を呑む。
そのまま酔い潰れた俺に毛布を掛けてくれた名前は朝起きたら五条に抱かれながら寝ていた。
そのまま朝、二人で起きて帰って行ったのを見送りまた研磨と雑魚寝する。
「お似合いだよな」
「だね」
俺らの幼馴染が笑っていてくれて幸せなら
それでいい。
どうか幸せに笑っていてくれと願う。
あとがき
子供の頃かなり捏造www
黒尾さん視点で、研磨のおうちに集まる幼馴染。
そこに馴染む五条さん(笑)