先輩シリーズ (五条)
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今まで絶っていた、親からの連絡が
学校の方に入り、何やら重要なことらしく
一度家に帰って来いとの内容だった。
「面倒」
「先輩、顔死んでますよ」
「帰らなくていーじゃん」
「私が直接電話したわけじゃないからね。
先生通してだから、帰らなきゃ……」
数日分の荷物をまとめる間
五条と夏油は我が物顔で
部屋にくつろいでいて、漫画やら読んでいる。
「いつまで?」
「2日くらいで帰ってくるさ」
「もっと早く」
「帰った内容次第かな」
「俺のために早く」
「悟……」
夏油と一緒に、
何とも言えない顔で見てしまう。
荷物をまとめ終え、私服姿のまま
次の電車やバスを調べる。
「名前」
「んー?」
「お土産、甘いやつ」
「抹茶?八ツ橋?」
「何で先輩のお土産はそれだけなんですか」
「いっぱいあるから?」
「……美味いやつでお願いします」
「任せろ」
いい時間に電車がありそうなので
荷物を掴んで部屋を出る。
「五条君も、夏油君も
いてもいいけど、荒らすなよ」
「荒らさないですよ」
「ちょっと漫画が雑になってるくらい」
「んじゃ、いってきまーす」
取られるものは部屋にないので
基本的には開けている。
何より、後輩達が勝手に出入りするので
鍵はかけていないし
任務で出払っているときも
帰ってきたら後輩達がたまにいる。
電車に乗り、実家へと久々に戻ると
驚いたことに母が寝込んでいた。
帰って来て早々に、連絡が取れなかったことに罵声をあびせられ、婚約者との事を言われ、顔を真っ赤に怒鳴り散らす父。
右から左へと聞き流し
母の容態を聞けば、重症な病ではなく
ただたんに、心労で倒れただけらしい。
アホらしいと、高専に帰る気でいたが
婚約者殿のご機嫌とりのために
5日程、本家に行けと言われ
流石に腹が立ってきた。
「たかが心労で倒れたくらいで
学校通して呼び出さないでよ」
「何だと!!」
「婚約者のことだって、全てそっちが勝手に決めたことだろう?
私が貴方達に従わなければいけない理由がどこにあるわけ?」
「名前!!この恥知らずが!!」
バシッ、と父に手を上げられる。
避けることは出来たが
あえて受ける。
「恥知らず……??ははっ」
「何が可笑しい」
「へこへこ頭下げて、本家に取り入って
娘を売り出してる恥知らずはどこの誰だよ」
「私達はお前を思ってやっているのに!!」
「それが迷惑なんだって何でわからない?
私は一度も頼んだ覚えがないし
本家との繋がりが欲しいと思ったことはない」
「名前!!」
「いつからだろうね?
あんた達が私を本家への
足掛かりの道具としか見なくなったのは……
あんた達は私が道具にしか
見えていないんだろ」
目を見開き、こちらを見る父に
言葉が通じないのは昔からだ。
「私のせいで倒れたというのだから
これぐらいのお叱りは受けてやるさ
本家にも行ってやる
けど、身内の不幸以外
今後二度と学校通して連絡してくるな」
吐き捨てるように言えば
父はまた何か言おうとしてくるが
その前に言葉を吐き捨てる。
「あんた達が精神と金銭削って
媚売って、やっと勝ち取った本家様との
繋がりくらい、迷惑料として顔出すけど
クソも使えない術式と
私を見てくれない
道具としか見ない両親なんて
いらなかったよ」
ばんっ、と扉を閉めて出ていく。
じんじん痛む頬に、再びイラつく。
舌打ちしながら、本家へと向かえば
待っていたように婚約者殿が玄関に
迎えに来ていて、部屋へと通される。
「お義母さんは大丈夫だったかい?」
「ただの心労らしいですよ」
「ふふっ、お義父さんと喧嘩したのかな?」
「別に」
「綺麗な顔が勿体無い」
ぺたり、と湿布が貼られる。
にこにことしながら手当てをしてくれている婚約者殿だが、不気味に見えて仕方がない。
反転術式も使えるのに、使わないのは
あんなんでも親だから。
言い返しはするし、反発もさせてもらうが…。
婚約者殿から離れ
窓際へと移動したら
くすり、と笑われながら
救急箱を手に立つ。
「5日ほどいなくてもいいけれど
せめて1日はいてね」
「…わかりました」
「何かあったら言いにおいで」
部屋から出ていった婚約者殿に溜め息をつき
ぼーっとする。
やることのない部屋の中で
早く時間が過ぎてくれるのを待つ。
どのくらいぼーっとしていたのかはわからないが、窓際に人の気配を感じる。
この外は庭しかなかったはずだが……と
窓を開けると、ばちり、と視線が合う。
双子の女の子。
人がいるとは思っていたが
まさか子供……しかも、双子。
本家の子だろうか……と
どう対応するか迷っていたら
パタパタと廊下から足音が。
この部屋の前に止まり
控えめに声を掛けられる。
「すいません……名前さん
この辺りに双子の女児が来ませんでしたか?」
「………さあ?」
「そうでしたか。
お休みだったところ、失礼いたしました」
さっさと去っていく世話人に
ちらり、と窓の外を見れば
双子がじっとこちらを見てくる。
「お前誰だよ」
双子のきつい顔の子が、話しかけてきた。
もう一人の子は、後ろに隠れている。
「ナルシストっぽいやつの婚約者?」
「誰だよ」
「ここ、彰文様のお部屋の近くだけど……」
「婚約者の名前知らないから
私もわからないわ」
ごめんね?と言えば
きつめの子が、鼻で笑う。
生意気だなーと思いながら
本家の子とは少し違う雰囲気に
興味が湧く。
「ひっ!!」
「あ?何だよ真依」
「………お化け」
「お化け?」
気弱な子が見つめる先には
弱い四級レベルの虫のような呪い。
どこにでもいるであろう呪いだが
気弱な子……真依と言ったか。
真依は怖がり、気の強そうな子にしがみつく。
「見なけりゃいーだろ」
「見えるもん」
「無視だ無視」
「無理だよ……」
やいのやいの、騒ぎだす双子。
とりあえず、と四級へ
霊銃のごとく、指先に力を溜めてから
ばんっ、と呟いて撃つ。
ぱんっ、とはじけた呪いに
真依は驚いた顔をし
気の強そうな子は小首を傾げる。
おや?とここで気付いた。
「今の……」
「頭おかしーのか?お前」
「真希、違うよ
この人、呪術師だよ」
「へー」
「もしかして、見えてない?」
ぽろり、と溢した言葉に反応したのは
真希と言われた気の強そうな子。
「だったら何だよ」
「気を悪くしたらごめんね?
私、本家嫌いだからつい」
「奇遇だな。私も嫌いだよ」
「おや?気が合うね」
「私は真希。こっちは真依
あんたの名前は?」
にやり、と笑う真希。
生意気な女の子に
いい暇潰しになりそうだと
こちらもにこりと笑う。
「禪院 名前だよ」
「よし、名前。私らと遊べ」
「真希ちゃん、口悪すぎじゃない?」
「悪いか」
「いーや」
窓から真希を抱っこして、部屋に入れてやれば
大人しく靴を脱いでくれた。
次いで、真依を抱っこすれば、照れながら捕まってくれた。
正反対の双子に、笑みが溢れる。
「さて、何して遊ぶ?」
あれから、部屋には何も無かったので
部屋から出て、庭へと出た。
といっても、庭も遊び道具なぞ無いため
追いかけっこから始めたのだが………
「ちょ、まじか!!手加減しろよ!!名前!!」
「遊び、すなわち夢中になる。
真希ちゃん、これは真剣な勝負だよ」
「ふっっざけんな!!年齢差考えろよ!!」
「真依ちゃん、そっちいったよ!!
塞げ塞げ」
「え、あの……」
「真依!どけ!!」
「はっはっはっはー
真希ちゃん、ゲットだぜー!!」
「うぉっ!!」
大人げなく真希と真依と
全力の鬼ごっこをする。
真依は普通の子供と変わらないが
真希の身体能力が凄い。
下手な大人よりも素早いし
判断力も悪くない。
真希と真依の腰を片手で持ち上げ
両手に双子を抱え
そのままぐるぐる回りだす。
真依は怖がっていたが
真希は文句ばかりだ。
このくらいの子供は
こーゆーのが好きじゃないのか……??と
2人を下ろす。
「名前さん!!」
どこからか、世話人の人が駆けてきて
目の前の双子を見た途端
表情を変えて走ってきた。
何かあっただろうか?と思ったが
そういえばこの双子を探していたな、と
忘れていた。
世話人は私の前を通りすぎ
双子の前に行くと
片手を振り上げて、真希の頬を叩く。
勢いが良かったせいか
真希が軽く吹き飛び
信じられない光景に目を疑う。
「彰文様の婚約者様に
何をしているのですか!!」
「真希!!」
「仕事をサボって
名前さんにご迷惑までかけて…っ!!」
再び手を振り上げ
真依を叩こうとした。
ビクリ、と動かない真依に真希が手を伸ばすのが見え、世話人の手を、掴んでいた。
「名前さん!?」
「何、子供に手を上げてんですか」
「躾ですよ」
「子供が吹き飛ぶ力で?」
「こちらの問題ですので」
関係無い。と言われた。
「………確かに関係ありませんね」
「では、口を挟まぬようお願いいたします」
「なら、私にも
お前達の問題なんて関係無いわ」
真希に近付き、頬に手をやる。
腫れた頬を反転術式で治せば
驚く2人。
そんな2人と手を繋ぎ
スタスタ歩きだす。
「名前さん!!お待ち下さい!!」
「たかが世話役が私に指図すんな」
「彰文様に申し付けますよ」
「勝手にすれば?」
大きな舌打ちが聞こえたが
べー、と舌を出す。
「真希、真依
2人の部屋は?」
「いいのか……?私のせいで」
「言ったろ?
私、禪院家大っ嫌いなんだよ」
申し訳なさそうにする2人に
名前はにっこり笑って言えば
2人はお互いに顔を見合せ
くすり、と笑う。
「後で怒られても知らねーぞ」
「真希も後で怒られても知らないよ」
「あの、でも名前お姉ちゃん……」
「真依、お姉ちゃんは
多少の我が儘が許されてるから
大丈夫なんだよ」
「らしーから、名前のせいにしとこうぜ」
「ほら真希、お姉ちゃんっつってみ?」
「うっせーよ………名前姉」
「なぁに?」
「ありがと」
真依を撫でくりまわせば
手を払われる。
だが、また繋いでくる真希の不器用さに
笑ってしまう。
2人が住んでる場所は
あの人が住んでいた場所だった。
懐かしさと共に
あの時から変わらぬ風潮に
飽きれと失望が混み上がる。
婚約者の所には帰らず
3日程、真希と真依と過ごした。
その間に真希も真依も
当主の命令だと
真っ暗な納屋へ入れられそうになったが
そちらの都合など知るかと2人を連れ出した。
「真希、真依」
帰る日、2人は服を掴んで離さない。
2人の待遇を考えたら
連れて行きたい。
けど、今の私には2人を預かれる場所もないし、無責任に連れ出せない。
「たまに、帰ってくるよ」
「………連れてけよ」
「私はまだ学生だから、2人を連れ出せない」
2人の頭に手を乗せる。
「真希、真依」
「負けるな」
ぐりぐりと頭を撫でる。
泣きそうな2人を抱き締めた。
「あれ?名前帰って来てたの?」
「…五条君」
部屋でぼーっとしていたところ
ガチャリと入ってきた五条。
暗闇でベッドに座り込む名前に
電気を付けながら中に入って来た。
「どうかした?」
「…ちょっと、本家に帰って
胸くそ悪いの見てたから、現実逃避?」
「いつものことじゃん」
目の前にしゃがみこみ
視線を合わせてくれる五条。
そんな五条へ手を伸ばし
五条の首に腕を回す。
「……なした?」
「ちょっとだけ」
「はは。
甘えたくなった?」
「少しね」
五条の腕が、背中に回る。
フワフワの五条の髪が頬にあたる。
五条の匂いが、近い。
いつからか、五条は可愛い後輩だけでは無くなった。
五条からのアプローチに絆されたのかもしれないし、もしかしたら初めて見たときから気になっていたのかもしれない。
「名前さー俺にしておけば?」
「やだよ」
「何でだよ」
五条が、好きだ。
後輩としても、一人の男としても。
「五条はいつか、私を越えるよ」
「すぐ越えるさ」
「その時、私は置いていかれちゃう」
並んで、戦えない。
守られるだけの存在にはなりたくない。
置いていかれないために、力をつけたのに
傍に居て欲しい人は居なくなった。
「私は、置いていかれるのが嫌だから」
「……名前」
顔を上げると、五条の顔が近くにあった。
少しムスッとした顔に笑ってしまう。
捨てて来たと思ったのに
情なんて、持たないと思ったのに……
真希と真依を捨てられないと思った。
非情になれると思った。
「本家に、子供がいた」
「…………」
「術式を持たないからと
大人に蔑ろにされ、子供達に馬鹿にされ
めちゃくちゃ胸くそ悪かった」
「名前には関係無いことだろ」
「関係無い。
関係無いけど、知ってしまった」
あの家の、術式を持たない者への仕打ちは
知っていたはず。
知っていたのに、わかってなかった。
彼は大人だったから、気にしてなかった。
子供の彼女達を見て
現実の残酷さを知った。
「ごめん……ごめん、五条」
私はきっと、彼女達を
見捨てられない。
足掻く努力はしても
全員が幸せになれる道を
私は見つけられそうにない。
なら、私は
自分の気持ちを棄てることを選ぶ。
五条の背中に回されている腕に力が入る。
馬鹿な私を
許さなくていいから
どうか、私を嫌いになって。
なのに、私の腕は
五条を離せないでいる。
この日、私は
恋を知ると同時に
愛を棄てた。
あとがき
詰め込みました。
詰め込みましたが、グダグダです。
すみません。
よし、頑張って進めよう
進めて、番外編頑張ろう(笑)
ただ、真希にお姉ちゃんって
言わせたかった話(笑)
学校の方に入り、何やら重要なことらしく
一度家に帰って来いとの内容だった。
「面倒」
「先輩、顔死んでますよ」
「帰らなくていーじゃん」
「私が直接電話したわけじゃないからね。
先生通してだから、帰らなきゃ……」
数日分の荷物をまとめる間
五条と夏油は我が物顔で
部屋にくつろいでいて、漫画やら読んでいる。
「いつまで?」
「2日くらいで帰ってくるさ」
「もっと早く」
「帰った内容次第かな」
「俺のために早く」
「悟……」
夏油と一緒に、
何とも言えない顔で見てしまう。
荷物をまとめ終え、私服姿のまま
次の電車やバスを調べる。
「名前」
「んー?」
「お土産、甘いやつ」
「抹茶?八ツ橋?」
「何で先輩のお土産はそれだけなんですか」
「いっぱいあるから?」
「……美味いやつでお願いします」
「任せろ」
いい時間に電車がありそうなので
荷物を掴んで部屋を出る。
「五条君も、夏油君も
いてもいいけど、荒らすなよ」
「荒らさないですよ」
「ちょっと漫画が雑になってるくらい」
「んじゃ、いってきまーす」
取られるものは部屋にないので
基本的には開けている。
何より、後輩達が勝手に出入りするので
鍵はかけていないし
任務で出払っているときも
帰ってきたら後輩達がたまにいる。
電車に乗り、実家へと久々に戻ると
驚いたことに母が寝込んでいた。
帰って来て早々に、連絡が取れなかったことに罵声をあびせられ、婚約者との事を言われ、顔を真っ赤に怒鳴り散らす父。
右から左へと聞き流し
母の容態を聞けば、重症な病ではなく
ただたんに、心労で倒れただけらしい。
アホらしいと、高専に帰る気でいたが
婚約者殿のご機嫌とりのために
5日程、本家に行けと言われ
流石に腹が立ってきた。
「たかが心労で倒れたくらいで
学校通して呼び出さないでよ」
「何だと!!」
「婚約者のことだって、全てそっちが勝手に決めたことだろう?
私が貴方達に従わなければいけない理由がどこにあるわけ?」
「名前!!この恥知らずが!!」
バシッ、と父に手を上げられる。
避けることは出来たが
あえて受ける。
「恥知らず……??ははっ」
「何が可笑しい」
「へこへこ頭下げて、本家に取り入って
娘を売り出してる恥知らずはどこの誰だよ」
「私達はお前を思ってやっているのに!!」
「それが迷惑なんだって何でわからない?
私は一度も頼んだ覚えがないし
本家との繋がりが欲しいと思ったことはない」
「名前!!」
「いつからだろうね?
あんた達が私を本家への
足掛かりの道具としか見なくなったのは……
あんた達は私が道具にしか
見えていないんだろ」
目を見開き、こちらを見る父に
言葉が通じないのは昔からだ。
「私のせいで倒れたというのだから
これぐらいのお叱りは受けてやるさ
本家にも行ってやる
けど、身内の不幸以外
今後二度と学校通して連絡してくるな」
吐き捨てるように言えば
父はまた何か言おうとしてくるが
その前に言葉を吐き捨てる。
「あんた達が精神と金銭削って
媚売って、やっと勝ち取った本家様との
繋がりくらい、迷惑料として顔出すけど
クソも使えない術式と
私を見てくれない
道具としか見ない両親なんて
いらなかったよ」
ばんっ、と扉を閉めて出ていく。
じんじん痛む頬に、再びイラつく。
舌打ちしながら、本家へと向かえば
待っていたように婚約者殿が玄関に
迎えに来ていて、部屋へと通される。
「お義母さんは大丈夫だったかい?」
「ただの心労らしいですよ」
「ふふっ、お義父さんと喧嘩したのかな?」
「別に」
「綺麗な顔が勿体無い」
ぺたり、と湿布が貼られる。
にこにことしながら手当てをしてくれている婚約者殿だが、不気味に見えて仕方がない。
反転術式も使えるのに、使わないのは
あんなんでも親だから。
言い返しはするし、反発もさせてもらうが…。
婚約者殿から離れ
窓際へと移動したら
くすり、と笑われながら
救急箱を手に立つ。
「5日ほどいなくてもいいけれど
せめて1日はいてね」
「…わかりました」
「何かあったら言いにおいで」
部屋から出ていった婚約者殿に溜め息をつき
ぼーっとする。
やることのない部屋の中で
早く時間が過ぎてくれるのを待つ。
どのくらいぼーっとしていたのかはわからないが、窓際に人の気配を感じる。
この外は庭しかなかったはずだが……と
窓を開けると、ばちり、と視線が合う。
双子の女の子。
人がいるとは思っていたが
まさか子供……しかも、双子。
本家の子だろうか……と
どう対応するか迷っていたら
パタパタと廊下から足音が。
この部屋の前に止まり
控えめに声を掛けられる。
「すいません……名前さん
この辺りに双子の女児が来ませんでしたか?」
「………さあ?」
「そうでしたか。
お休みだったところ、失礼いたしました」
さっさと去っていく世話人に
ちらり、と窓の外を見れば
双子がじっとこちらを見てくる。
「お前誰だよ」
双子のきつい顔の子が、話しかけてきた。
もう一人の子は、後ろに隠れている。
「ナルシストっぽいやつの婚約者?」
「誰だよ」
「ここ、彰文様のお部屋の近くだけど……」
「婚約者の名前知らないから
私もわからないわ」
ごめんね?と言えば
きつめの子が、鼻で笑う。
生意気だなーと思いながら
本家の子とは少し違う雰囲気に
興味が湧く。
「ひっ!!」
「あ?何だよ真依」
「………お化け」
「お化け?」
気弱な子が見つめる先には
弱い四級レベルの虫のような呪い。
どこにでもいるであろう呪いだが
気弱な子……真依と言ったか。
真依は怖がり、気の強そうな子にしがみつく。
「見なけりゃいーだろ」
「見えるもん」
「無視だ無視」
「無理だよ……」
やいのやいの、騒ぎだす双子。
とりあえず、と四級へ
霊銃のごとく、指先に力を溜めてから
ばんっ、と呟いて撃つ。
ぱんっ、とはじけた呪いに
真依は驚いた顔をし
気の強そうな子は小首を傾げる。
おや?とここで気付いた。
「今の……」
「頭おかしーのか?お前」
「真希、違うよ
この人、呪術師だよ」
「へー」
「もしかして、見えてない?」
ぽろり、と溢した言葉に反応したのは
真希と言われた気の強そうな子。
「だったら何だよ」
「気を悪くしたらごめんね?
私、本家嫌いだからつい」
「奇遇だな。私も嫌いだよ」
「おや?気が合うね」
「私は真希。こっちは真依
あんたの名前は?」
にやり、と笑う真希。
生意気な女の子に
いい暇潰しになりそうだと
こちらもにこりと笑う。
「禪院 名前だよ」
「よし、名前。私らと遊べ」
「真希ちゃん、口悪すぎじゃない?」
「悪いか」
「いーや」
窓から真希を抱っこして、部屋に入れてやれば
大人しく靴を脱いでくれた。
次いで、真依を抱っこすれば、照れながら捕まってくれた。
正反対の双子に、笑みが溢れる。
「さて、何して遊ぶ?」
あれから、部屋には何も無かったので
部屋から出て、庭へと出た。
といっても、庭も遊び道具なぞ無いため
追いかけっこから始めたのだが………
「ちょ、まじか!!手加減しろよ!!名前!!」
「遊び、すなわち夢中になる。
真希ちゃん、これは真剣な勝負だよ」
「ふっっざけんな!!年齢差考えろよ!!」
「真依ちゃん、そっちいったよ!!
塞げ塞げ」
「え、あの……」
「真依!どけ!!」
「はっはっはっはー
真希ちゃん、ゲットだぜー!!」
「うぉっ!!」
大人げなく真希と真依と
全力の鬼ごっこをする。
真依は普通の子供と変わらないが
真希の身体能力が凄い。
下手な大人よりも素早いし
判断力も悪くない。
真希と真依の腰を片手で持ち上げ
両手に双子を抱え
そのままぐるぐる回りだす。
真依は怖がっていたが
真希は文句ばかりだ。
このくらいの子供は
こーゆーのが好きじゃないのか……??と
2人を下ろす。
「名前さん!!」
どこからか、世話人の人が駆けてきて
目の前の双子を見た途端
表情を変えて走ってきた。
何かあっただろうか?と思ったが
そういえばこの双子を探していたな、と
忘れていた。
世話人は私の前を通りすぎ
双子の前に行くと
片手を振り上げて、真希の頬を叩く。
勢いが良かったせいか
真希が軽く吹き飛び
信じられない光景に目を疑う。
「彰文様の婚約者様に
何をしているのですか!!」
「真希!!」
「仕事をサボって
名前さんにご迷惑までかけて…っ!!」
再び手を振り上げ
真依を叩こうとした。
ビクリ、と動かない真依に真希が手を伸ばすのが見え、世話人の手を、掴んでいた。
「名前さん!?」
「何、子供に手を上げてんですか」
「躾ですよ」
「子供が吹き飛ぶ力で?」
「こちらの問題ですので」
関係無い。と言われた。
「………確かに関係ありませんね」
「では、口を挟まぬようお願いいたします」
「なら、私にも
お前達の問題なんて関係無いわ」
真希に近付き、頬に手をやる。
腫れた頬を反転術式で治せば
驚く2人。
そんな2人と手を繋ぎ
スタスタ歩きだす。
「名前さん!!お待ち下さい!!」
「たかが世話役が私に指図すんな」
「彰文様に申し付けますよ」
「勝手にすれば?」
大きな舌打ちが聞こえたが
べー、と舌を出す。
「真希、真依
2人の部屋は?」
「いいのか……?私のせいで」
「言ったろ?
私、禪院家大っ嫌いなんだよ」
申し訳なさそうにする2人に
名前はにっこり笑って言えば
2人はお互いに顔を見合せ
くすり、と笑う。
「後で怒られても知らねーぞ」
「真希も後で怒られても知らないよ」
「あの、でも名前お姉ちゃん……」
「真依、お姉ちゃんは
多少の我が儘が許されてるから
大丈夫なんだよ」
「らしーから、名前のせいにしとこうぜ」
「ほら真希、お姉ちゃんっつってみ?」
「うっせーよ………名前姉」
「なぁに?」
「ありがと」
真依を撫でくりまわせば
手を払われる。
だが、また繋いでくる真希の不器用さに
笑ってしまう。
2人が住んでる場所は
あの人が住んでいた場所だった。
懐かしさと共に
あの時から変わらぬ風潮に
飽きれと失望が混み上がる。
婚約者の所には帰らず
3日程、真希と真依と過ごした。
その間に真希も真依も
当主の命令だと
真っ暗な納屋へ入れられそうになったが
そちらの都合など知るかと2人を連れ出した。
「真希、真依」
帰る日、2人は服を掴んで離さない。
2人の待遇を考えたら
連れて行きたい。
けど、今の私には2人を預かれる場所もないし、無責任に連れ出せない。
「たまに、帰ってくるよ」
「………連れてけよ」
「私はまだ学生だから、2人を連れ出せない」
2人の頭に手を乗せる。
「真希、真依」
「負けるな」
ぐりぐりと頭を撫でる。
泣きそうな2人を抱き締めた。
「あれ?名前帰って来てたの?」
「…五条君」
部屋でぼーっとしていたところ
ガチャリと入ってきた五条。
暗闇でベッドに座り込む名前に
電気を付けながら中に入って来た。
「どうかした?」
「…ちょっと、本家に帰って
胸くそ悪いの見てたから、現実逃避?」
「いつものことじゃん」
目の前にしゃがみこみ
視線を合わせてくれる五条。
そんな五条へ手を伸ばし
五条の首に腕を回す。
「……なした?」
「ちょっとだけ」
「はは。
甘えたくなった?」
「少しね」
五条の腕が、背中に回る。
フワフワの五条の髪が頬にあたる。
五条の匂いが、近い。
いつからか、五条は可愛い後輩だけでは無くなった。
五条からのアプローチに絆されたのかもしれないし、もしかしたら初めて見たときから気になっていたのかもしれない。
「名前さー俺にしておけば?」
「やだよ」
「何でだよ」
五条が、好きだ。
後輩としても、一人の男としても。
「五条はいつか、私を越えるよ」
「すぐ越えるさ」
「その時、私は置いていかれちゃう」
並んで、戦えない。
守られるだけの存在にはなりたくない。
置いていかれないために、力をつけたのに
傍に居て欲しい人は居なくなった。
「私は、置いていかれるのが嫌だから」
「……名前」
顔を上げると、五条の顔が近くにあった。
少しムスッとした顔に笑ってしまう。
捨てて来たと思ったのに
情なんて、持たないと思ったのに……
真希と真依を捨てられないと思った。
非情になれると思った。
「本家に、子供がいた」
「…………」
「術式を持たないからと
大人に蔑ろにされ、子供達に馬鹿にされ
めちゃくちゃ胸くそ悪かった」
「名前には関係無いことだろ」
「関係無い。
関係無いけど、知ってしまった」
あの家の、術式を持たない者への仕打ちは
知っていたはず。
知っていたのに、わかってなかった。
彼は大人だったから、気にしてなかった。
子供の彼女達を見て
現実の残酷さを知った。
「ごめん……ごめん、五条」
私はきっと、彼女達を
見捨てられない。
足掻く努力はしても
全員が幸せになれる道を
私は見つけられそうにない。
なら、私は
自分の気持ちを棄てることを選ぶ。
五条の背中に回されている腕に力が入る。
馬鹿な私を
許さなくていいから
どうか、私を嫌いになって。
なのに、私の腕は
五条を離せないでいる。
この日、私は
恋を知ると同時に
愛を棄てた。
あとがき
詰め込みました。
詰め込みましたが、グダグダです。
すみません。
よし、頑張って進めよう
進めて、番外編頑張ろう(笑)
ただ、真希にお姉ちゃんって
言わせたかった話(笑)