五条
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※五条さんが呪詛師
※夏油が高専サイド
それでもOKな方、どうぞ
噂で聞いた事があった。
五条悟という、呪術界御三家の一人で、五条家の術式……無下限呪術と数百年ぶりの六眼の持ち主がいた。
まさに、"最強"。
日本を壊せる力を持った人がいた。
その力は呪霊へと向けられ、人々は守られるはずだった。
けど……その人は何があったのか……闇の道へ堕ちたのだと。
呪術界の重鎮を一人で皆殺しにし
恩師も友も全て捨てて
闇へと堕ちてしまった在任。
彼が重罪を犯し、いなくなった後
彼の友人だったという特級呪術師が必死に呪術界を立て直したのだと記録され、語られている。
そして私達は、絶対に五条悟と戦うなと言われている。
見たこともない呪詛師相手に戦うな、と言われても……と当時は思っていた。
だが、夏油先生は真剣な表情で話した。
"一目見ればわかるよ"
その言葉が本当だったのだと知るのは
私が今、その彼と対峙しているからだ。
二級のなんてことない呪霊討伐任務だった。
終わったと思っていたら、報告のない一級呪霊の出没。
体制を整える間もなく足を潰され、突然の出来事に心が揺れる。
いつも出来ることが出来ず、ここで呆気なく朽ち果てるのかと、諦めかけた時だった。
目の前の呪霊が一瞬で消された。
何が起きたのかわからず、その場に座り込む私の目の前に現れた一人の人。
帳はまだ上がっていないのに、なぜ?とか
一瞬で一級を消してしまう力を持った呪術師の応援?とか色んなことを考えたが、その人を見て私は固まってしまった。
「オマエ、高専生?うわっ、その制服懐かし」
白銀の髪の毛がサラサラと風に流れている。
真っ黒な緩めの服装。
モデルのような長身。
サングラス越しの宝石のような瞳が怪しく光っていて……
畏怖を感じるほど、圧倒的な力の実力差を感じられるほど目の前の彼は異質だった。
「五条…悟……」
「あれ?俺のこと知ってんの?」
ニヤリ、と笑う彼。
逃げなきゃ、と思った時には遅く、近くの木に叩き付けられ首を捕らえられていた。
叩き付けられた背中が痛い。
息がつまるような痛みと、気道を圧迫しない程度に、押さえ付けられる喉元。
呼吸は苦しいわけじゃないのに、威圧だけで脳が呼吸が苦しいと勘違いしてしまう。
確実に逃がさない……という、片手だけなのに威圧感を感じてしまう。
ーーー怖い。
目の前の人は、本当に自分達と同じ人間なのか?
珍しい術式と眼を持っている、というだけでここまでの差があるのか?
まるで神にでも出会ってしまったかのような畏怖、異質、異常な彼の存在に、私は困惑してしまう。
彼の機嫌を損ねてしまえば自分は肉片も残さず消されてしまうのだと本能が言っている。
私は今、彼の気紛れで助かり
彼の気紛れで生かされている。
「あぁ、高専には傑がいるもんな。
傑元気にしてる?」
「夏油……先生、のこと?」
「アイツ先生やってんだ」
へぇ、と楽しそうに笑う五条悟。
なぜ、と思うが夏油先生と彼が同級生だった事を思い出す。
夏油先生は五条悟の事を必要以上に話さない。
ただ、私達年若い呪術師には"戦うな"と口煩く告げている。
五条悟の事を話す夏油先生は、いつも悲しい顔をしていた。
「傑は優しいからな。
俺の事どう話てんの?」
「戦うな、と」
「ははっ!!傑らしい考えだ。
アイツは年若い未来ある呪術師を育てるために俺と対峙した時は戦うなって?
弱い奴には興味無いし、刃向かわなければ俺は手を出さないってしたり顔で言ってんのが目に浮かぶよ」
「夏油先生は、ただ戦うな、としか言ってません」
「へー」
「あなたのことも、話してくれません」
「そりゃ、犯罪者の親友なんて立場悪いもんな」
くしゃりと顔を歪ませて無理矢理笑う五条悟。
親友?
なぜ、そんな顔をするのだろう、と思った。
世間的に彼は間違った事をして、人の道理を踏み外した。
だから、裁かれなければいけない。
「けど、そんなお優しい傑の教育じゃあオマエら呪術師は必ず限界がくるよ。
強いモノは傑だけが対処して、オマエら学生はよしよし可愛がられながら……なんて、育つものも育たねーよ」
だから、不意打ちにも対応出来ずに死んでいく。
爪が甘いんだよ、と言われカッとなる。
確かに私は報告書を信じ、不測の事態への対応が疎かとなった。
その結果、私は、生きることを諦めた。
「傑ばかりに負担背負わせて、結局甘い汁を啜ろうとする腐ったミカンが増えるだけなのに」
弱い、とはっきり身に染みて理解した。
五条悟の領域まで届かなくても、戦える自信に酔いしれていた。
その結果が、この様だ。
「オマエの術式、使い方によっては強いのに扱い方残念だな」
「どうして……」
「眼がいいもんで」
にっ、と笑う五条悟。
その瞳がキラキラと輝いていて場違いにも綺麗だと……思ってしまった。
「強そうな奴の気配したから近寄ってみたけど勘違いだったな。
シラケたわ、帰る」
「………私を、殺さないの?」
「弱い奴殺して何になんだよ。
俺弱いものイジメとか趣味じゃねーし」
そう言いながら喉元の手が外され
……なんだか、犯罪者の五条悟としてのイメージが少しだけズレてしまう。
無慈悲で、凶悪で、自分勝手な化物。
そう、伝えられていたはずだったのに…
夏油先生の辛い顔の理由。
本人を目の前にした印象のズレに、もう少しだけこの人を知りたいと思った。
「あなたのことは、高専では過去最悪の呪詛師としてしか話されていません」
「だから?」
「どの書物を見ても、数年前にあなたが現代最強な呪術師であり、高専関係者を殺して、犯罪者として高専から追われる身となった事だけ」
「だったらなんだよ」
ぐっ、と今まで無かった威圧感を感じる。
少し息苦しくなった呼吸。
それでも、私は聞いてみたかった。
「あなたと夏油先生に何があったんですか?
夏油先生はあなたを決して悪く言った事は無いし、あなたの話をするといつも悲しそうにする」
まるで、自分に罪があるかのように。
「あなたはどうして高専から追われる事になったんですか」
目の前にいる五条悟は、確かに誰も勝つことが出来ない恐ろしい程の化物だ。
聞いただけでは五条悟の凄さも、強さも曖昧だが……目の前で対峙して、初めてわかる。
恐怖が目の前に現れたとしたら、それは五条悟を表す言葉なのだと思えるくらい。
命を摘み取る死神だと言われても頷ける程だ。
けど、聞いている程凶悪な人物とは思えなかった。
たまたまとはいえ……助けられた余裕なのか、と言われるとわからない。
ただ、私には
この五条悟という人間が
凶悪な犯罪者とは思えなかった。
そんな余裕が良くなかったのか、興味を失くしていたはずの五条悟が少しだけイラついた雰囲気を醸し出す。
凍てつくような殺気に、腰が抜けそうになるのを踏ん張って立っている。
「それを聞いて何になんの?
俺の事を無罪放免だと言ってくれんの?」
「……っ」
「残念ながらドラマのような秘話があるわけでも話が隠蔽されているわけでもねーよ」
再び喉元に手を伸ばされる。
殺気に立っているのがやっとの私は、五条悟の手を受け入れてしまっている。
怖い……。
怖い怖い怖い怖い怖い!!!
恐怖に逃げ出したいと細胞がいっているのに、私の身体は機能せずに動かないまま。
「腐ったミカン共を皆殺しした。
理由?ウザイし邪魔だったからな」
「じゃあ、どうして……
どうして、夏油先生はあんな悲しい顔をっ」
「なに?さっきから傑の事気にしてるけど
傑に惚れてんの?」
「えっ!?ちがっ!!」
突拍子もない発言に、恐怖など吹き飛んで否定する。
確かに夏油先生を慕ってはいる。
それが年上に対する憧れや尊敬だけじゃなく、少しの不純な下心も含まれている事は確かだが、それが恋や愛かと問われれば違うと答えられる。
少なからず持っている下心を自覚しているせいか、顔に熱が集まれば……他者から見れば図星だと思われるだろう。
現に、五条悟は面白いモノを見付けたというように笑っている。
「へぇ」
違う、ともう一度否定しようとしたが、出来なかった。
口を開きかけた瞬間、五条悟の綺麗な顔が近付いてきて唇に柔らかい感触。
五条悟と唇が重なっている、と気付いた時には舌が入ってきてより驚く。
五条悟の胸を押そうにも、びくともしない。
喉元を圧迫していた手はいつの間にか頬を滑っている。
イラついていたはずの瞳は、欲を孕んだ熱があり怪しい光をチラつかせている。
その瞳がより綺麗に見えて、口内を好き勝手され、何が起きているのかわからず、五条悟を押していたはずの手は彼の服を握っている。
チュッと音を立てて唇が離される。
恥ずかしさと、困惑と、怒りに顔に熱が集まり涙がじわじわと溜まっていく感覚。
「いい顔すんじゃん」
「っ!!」
「傑のドコがいいの?」
「ちがっ!!や、やめっ」
「顔?性格?まさか傑、学生に手ェ出してんの?」
「ちがい、ますっ!!」
顔から肩、胸、お腹へと触れながら下がっていく手の動きに本格的にヤバいと感じ、その手を掴むが、まったくびくともしない。
手にばかり気をとられていたせいか、首筋に唇を寄せられて身体が震える。
チクリ、と痛みが走ったかと思えばその部分に手を寄せられて焼けるような熱さを感じる。
「いった!!」
「無駄足だったと思えば、面白いモノ見付けてラッキー」
「な、にをっ」
「へぇ……名前、ね」
「!?
私の学生証!!」
「ほら、返す」
いつの間に抜き取られたのかと思っていたが、普通に返されて受けとる。
「傑に伝えなよ。
俺は逃げも隠れもしないから遊ぼうぜって」
くすり、と笑いながら離れていく彼。
先程までの殺気もなく、悠々としている。
「オマエが望むなら、俺が強くしてやるよ」
「そんな事、許されるわけ!!」
「その時は名前も呪詛師の一員だな」
「呪詛師になんかならない!!」
「ははっ!!
名前、またな」
ひらひらと手を振りながらいなくなった彼。
そして、帳が上がっていく。
安心感からか、へなへなと腰が抜けた。
「大丈夫ですか!?」
補助監督の声が聞こえたが、既にキャパシティを越えた私は気を失ってしまった。
目覚めた時、私は高専に戻ってきていた。
此処がドコか理解し、一連の出来事を理解した瞬間、ベッドから飛び起きてカーテンを開く。
そこには、いつもの寝不足姿の家入先生はおらず、私は職員室へと走り出した。
「夏油先生!!!」
「!!
名前、目が覚めたのかい?
いきなり動いても大丈夫か?」
「あのっ!!一級呪霊が出て、それで…」
「まずは落ち着こう。
ほら、おいで」
柔らかな夏油先生の言葉に涙が溢れる。
夏油先生に背中を押されながら座らせられ、流れ出る涙を拭っていれば、手を捕まれる。
「そんなに擦ると腫れてしまうよ」
「せんせ……」
「報告に無い一級は突然の出没だったみたいだからね」
「すいません!!此方の認識不足で学生の苗字さんを危険な目に…!!」
「伊地知のせいじゃないさ。
………よく、生きて戻って来てくれた。
ありがとう」
頭を撫でられて、首を振る。
私じゃない。
私は一級に立ち向かおうとせず
もう駄目だと諦めたのだから。
「私じゃ、ないん…ですっ」
「名前じゃないのかい?」
「私が、祓ったんじゃないんです……
私は諦めて、もう駄目だと思ってしまいました」
「………うん」
「一級の呪霊を一瞬で祓ったのは五条悟です」
「悟が……?」
夏油先生の目が見開かれ、その場に居た学長先生や補助監督らがざわめく。
「………名前、首はどうしたんだい?」
「首?」
「マーキングをされている」
「本当か、傑」
「えぇ。
簡単そうに見えますが……そう、簡単なモノでは無いでしょう。あの悟ですし」
「勘違い、という可能性は」
「私が悟の呪力の残穢を間違えるわけありません」
「マーキング……
何かの術の発動は?解けそうか…?」
「硝子でも無理でしょう」
真剣な表情で話す夏油先生と学長先生。
そこに、家入先生が呼び出されて来た。
「無理だな。
眠っている間に診たが、それは追跡用のものだとわかったくらいで解くのは困難だ」
「やっぱり」
「無茶苦茶な呪いの混ぜ合わせだ。
多分奴にしか解けない類いのものだろう」
「先生……あの、なにか危ないんでしょうか…?」
難しい、怖い顔をした先生達に自身の身に何が起きているのかわからずに恐怖に不安になっていく。
五条悟と対峙した時の恐怖は忘れられない。
もしも、彼が本気で私を呪い、高専に戻った事により、時間差で発動するものだったとしたら……?
高専をよく思っていない五条悟のマーキングが発動したら、自分は爆弾代わりとなってしまうのかと悪い考えばかりが浮かぶ。
「落ち着け。
別にお前に何か害があるわけでも
ほっといて何か術が発動するわけでもないぞ」
「硝子、本当かい?」
「あぁ。
例えるなら玩具を取られないように自分のモノだと印を付けたものだからな」
家入先生の言葉にポカンとする。
不安になって溢れていた涙も止まってしまう。
「名前、悟に何をされたんだい」
「何、を……」
睨むように私を見つめる夏油先生。
しかし、何をされたかと聞かれれば…
私の脳内に残るのは唇の感触と口内を好き勝手に荒らされた記憶。
恥ずかしさに顔に熱が集まり、再び涙がボロボロ出てくる。
言葉として出せず、ぱくぱくと口を開いては閉じる動作に夏油先生が頭を抱える。
「嘘だろ、あの馬鹿」
「変態か」
「硝子、名前が乱暴された形跡は?」
「無いな」
「名前、キスされたのかい?」
見事に当てられ、両手で顔を覆って泣いてしまう。顔に集まった熱が熱い。
「夏油、もう少し名前のことも考えろ。
デリカシーに欠ける」
「そうかい?
………名前、悟がそこまで気に入るなんて何をしたんだ?」
「な、なにも…」
「一先ず、名前は一人で行動させられないね」
家入先生、夏油先生、学長先生、補助監督の伊地知さんが何やら話している。
恥ずかしさと困惑に、顔の熱が早く引いてくれと願いながらふと、思い出す。
「あの、夏油先生」
「なんだい?」
「五条悟が、夏油先生に伝えてって」
「悟が?」
「俺は逃げも隠れもしないから遊ぼう……って」
その瞬間、夏油先生の眉間にシワが寄る。
「………なるほど。
喧嘩を売られたのは私か」
「五条の考えそうな事だな」
「?
あの……先生?」
「あぁ、名前は気にしなくてもいい。
あの馬鹿……」
「優しいお顔が崩れているぞ」
「おっと、いけない」
コロコロと変わる夏油先生の表情。
いつもは、五条悟の話をしていると、悲しそうだったのに…。
怒って、歪んで、呆れて。
夏油先生の本来の姿を見た気がした。
「名前……は、とにかく今は休みなさい。
後の事は私に任せて」
「あの…夏油先生」
「どうしたんだい?」
「私、強くなりたいです」
今回、己の無力さに失望した。
今のままじゃ自分は成長できないし、きっと今回みたいな突然の対応も出来ぬまま簡単に命を落とす。
「お願いします……
復帰次第、私を強くしてください」
「………これが、悟の狙いか?」
「え?」
「いや、何でもないよ。
うん…復帰したら少し厳しくいこうか」
「お願いします!!」
「わかったよ」
家入先生に病み上がりで激しく動くなと、怒られてしまった。
首筋に咲く華の印。
「強くなってよ、名前。
俺を楽しませるくらい」
ニヤリとチェシャ猫のように笑う五条悟は一人、闇夜の空に浮かびながら笑う、嗤う、ワラウ。
あとがき
続きませんっ!!!!(笑)
五条と夏油の立場を反対にしましたが、五条さんは呪霊と仲良しはしないと思う。
むしろ、興味無さそう。
呪霊と人間滅ぼす?いや、お前らが消えろよって感じ。
最強故に強い相手は求めるけど、自分に勝てないと思っているから遊び相手を探してる。
夢主の事は夏油と遊ぶ為の玩具と思っているが、反応いいからこっちにもちょっかいかけながら強くなるのを待つ。将来に期待。
世界征服はやればできるけど、面倒だからやらない。
縛られたくないから自由に生きる。
夏油先生………。
五条が離反した理由が、夏油の為だったらいいな。天内の事で親友の心を壊す上層部に嫌気がさしたから皆殺し☆みたいな。
その負い目とかあればいい。
悟が離反したのは私のせいで……って引きずりそう。
上層部まるっと消えたから、立て直すの大変。しかも特級の任務もあるから大変。そして育成も大変。
真面目に全て背負ってやろうとする不器用さん。だから、五条さんにちょっかいかけられてマジギレする。
夢主?慕ってくれている可愛い子だな、くらい。
けどマーキングされて気にしすぎておや?いやいや、私は先生で彼女は生徒……となってしまう。五条の策にまんまとハマるチョロい人。
夢主は巻き込まれて可哀想な子(笑)
あれ?この世界きっと幸せじゃね?と思った(笑)
※夏油が高専サイド
それでもOKな方、どうぞ
噂で聞いた事があった。
五条悟という、呪術界御三家の一人で、五条家の術式……無下限呪術と数百年ぶりの六眼の持ち主がいた。
まさに、"最強"。
日本を壊せる力を持った人がいた。
その力は呪霊へと向けられ、人々は守られるはずだった。
けど……その人は何があったのか……闇の道へ堕ちたのだと。
呪術界の重鎮を一人で皆殺しにし
恩師も友も全て捨てて
闇へと堕ちてしまった在任。
彼が重罪を犯し、いなくなった後
彼の友人だったという特級呪術師が必死に呪術界を立て直したのだと記録され、語られている。
そして私達は、絶対に五条悟と戦うなと言われている。
見たこともない呪詛師相手に戦うな、と言われても……と当時は思っていた。
だが、夏油先生は真剣な表情で話した。
"一目見ればわかるよ"
その言葉が本当だったのだと知るのは
私が今、その彼と対峙しているからだ。
二級のなんてことない呪霊討伐任務だった。
終わったと思っていたら、報告のない一級呪霊の出没。
体制を整える間もなく足を潰され、突然の出来事に心が揺れる。
いつも出来ることが出来ず、ここで呆気なく朽ち果てるのかと、諦めかけた時だった。
目の前の呪霊が一瞬で消された。
何が起きたのかわからず、その場に座り込む私の目の前に現れた一人の人。
帳はまだ上がっていないのに、なぜ?とか
一瞬で一級を消してしまう力を持った呪術師の応援?とか色んなことを考えたが、その人を見て私は固まってしまった。
「オマエ、高専生?うわっ、その制服懐かし」
白銀の髪の毛がサラサラと風に流れている。
真っ黒な緩めの服装。
モデルのような長身。
サングラス越しの宝石のような瞳が怪しく光っていて……
畏怖を感じるほど、圧倒的な力の実力差を感じられるほど目の前の彼は異質だった。
「五条…悟……」
「あれ?俺のこと知ってんの?」
ニヤリ、と笑う彼。
逃げなきゃ、と思った時には遅く、近くの木に叩き付けられ首を捕らえられていた。
叩き付けられた背中が痛い。
息がつまるような痛みと、気道を圧迫しない程度に、押さえ付けられる喉元。
呼吸は苦しいわけじゃないのに、威圧だけで脳が呼吸が苦しいと勘違いしてしまう。
確実に逃がさない……という、片手だけなのに威圧感を感じてしまう。
ーーー怖い。
目の前の人は、本当に自分達と同じ人間なのか?
珍しい術式と眼を持っている、というだけでここまでの差があるのか?
まるで神にでも出会ってしまったかのような畏怖、異質、異常な彼の存在に、私は困惑してしまう。
彼の機嫌を損ねてしまえば自分は肉片も残さず消されてしまうのだと本能が言っている。
私は今、彼の気紛れで助かり
彼の気紛れで生かされている。
「あぁ、高専には傑がいるもんな。
傑元気にしてる?」
「夏油……先生、のこと?」
「アイツ先生やってんだ」
へぇ、と楽しそうに笑う五条悟。
なぜ、と思うが夏油先生と彼が同級生だった事を思い出す。
夏油先生は五条悟の事を必要以上に話さない。
ただ、私達年若い呪術師には"戦うな"と口煩く告げている。
五条悟の事を話す夏油先生は、いつも悲しい顔をしていた。
「傑は優しいからな。
俺の事どう話てんの?」
「戦うな、と」
「ははっ!!傑らしい考えだ。
アイツは年若い未来ある呪術師を育てるために俺と対峙した時は戦うなって?
弱い奴には興味無いし、刃向かわなければ俺は手を出さないってしたり顔で言ってんのが目に浮かぶよ」
「夏油先生は、ただ戦うな、としか言ってません」
「へー」
「あなたのことも、話してくれません」
「そりゃ、犯罪者の親友なんて立場悪いもんな」
くしゃりと顔を歪ませて無理矢理笑う五条悟。
親友?
なぜ、そんな顔をするのだろう、と思った。
世間的に彼は間違った事をして、人の道理を踏み外した。
だから、裁かれなければいけない。
「けど、そんなお優しい傑の教育じゃあオマエら呪術師は必ず限界がくるよ。
強いモノは傑だけが対処して、オマエら学生はよしよし可愛がられながら……なんて、育つものも育たねーよ」
だから、不意打ちにも対応出来ずに死んでいく。
爪が甘いんだよ、と言われカッとなる。
確かに私は報告書を信じ、不測の事態への対応が疎かとなった。
その結果、私は、生きることを諦めた。
「傑ばかりに負担背負わせて、結局甘い汁を啜ろうとする腐ったミカンが増えるだけなのに」
弱い、とはっきり身に染みて理解した。
五条悟の領域まで届かなくても、戦える自信に酔いしれていた。
その結果が、この様だ。
「オマエの術式、使い方によっては強いのに扱い方残念だな」
「どうして……」
「眼がいいもんで」
にっ、と笑う五条悟。
その瞳がキラキラと輝いていて場違いにも綺麗だと……思ってしまった。
「強そうな奴の気配したから近寄ってみたけど勘違いだったな。
シラケたわ、帰る」
「………私を、殺さないの?」
「弱い奴殺して何になんだよ。
俺弱いものイジメとか趣味じゃねーし」
そう言いながら喉元の手が外され
……なんだか、犯罪者の五条悟としてのイメージが少しだけズレてしまう。
無慈悲で、凶悪で、自分勝手な化物。
そう、伝えられていたはずだったのに…
夏油先生の辛い顔の理由。
本人を目の前にした印象のズレに、もう少しだけこの人を知りたいと思った。
「あなたのことは、高専では過去最悪の呪詛師としてしか話されていません」
「だから?」
「どの書物を見ても、数年前にあなたが現代最強な呪術師であり、高専関係者を殺して、犯罪者として高専から追われる身となった事だけ」
「だったらなんだよ」
ぐっ、と今まで無かった威圧感を感じる。
少し息苦しくなった呼吸。
それでも、私は聞いてみたかった。
「あなたと夏油先生に何があったんですか?
夏油先生はあなたを決して悪く言った事は無いし、あなたの話をするといつも悲しそうにする」
まるで、自分に罪があるかのように。
「あなたはどうして高専から追われる事になったんですか」
目の前にいる五条悟は、確かに誰も勝つことが出来ない恐ろしい程の化物だ。
聞いただけでは五条悟の凄さも、強さも曖昧だが……目の前で対峙して、初めてわかる。
恐怖が目の前に現れたとしたら、それは五条悟を表す言葉なのだと思えるくらい。
命を摘み取る死神だと言われても頷ける程だ。
けど、聞いている程凶悪な人物とは思えなかった。
たまたまとはいえ……助けられた余裕なのか、と言われるとわからない。
ただ、私には
この五条悟という人間が
凶悪な犯罪者とは思えなかった。
そんな余裕が良くなかったのか、興味を失くしていたはずの五条悟が少しだけイラついた雰囲気を醸し出す。
凍てつくような殺気に、腰が抜けそうになるのを踏ん張って立っている。
「それを聞いて何になんの?
俺の事を無罪放免だと言ってくれんの?」
「……っ」
「残念ながらドラマのような秘話があるわけでも話が隠蔽されているわけでもねーよ」
再び喉元に手を伸ばされる。
殺気に立っているのがやっとの私は、五条悟の手を受け入れてしまっている。
怖い……。
怖い怖い怖い怖い怖い!!!
恐怖に逃げ出したいと細胞がいっているのに、私の身体は機能せずに動かないまま。
「腐ったミカン共を皆殺しした。
理由?ウザイし邪魔だったからな」
「じゃあ、どうして……
どうして、夏油先生はあんな悲しい顔をっ」
「なに?さっきから傑の事気にしてるけど
傑に惚れてんの?」
「えっ!?ちがっ!!」
突拍子もない発言に、恐怖など吹き飛んで否定する。
確かに夏油先生を慕ってはいる。
それが年上に対する憧れや尊敬だけじゃなく、少しの不純な下心も含まれている事は確かだが、それが恋や愛かと問われれば違うと答えられる。
少なからず持っている下心を自覚しているせいか、顔に熱が集まれば……他者から見れば図星だと思われるだろう。
現に、五条悟は面白いモノを見付けたというように笑っている。
「へぇ」
違う、ともう一度否定しようとしたが、出来なかった。
口を開きかけた瞬間、五条悟の綺麗な顔が近付いてきて唇に柔らかい感触。
五条悟と唇が重なっている、と気付いた時には舌が入ってきてより驚く。
五条悟の胸を押そうにも、びくともしない。
喉元を圧迫していた手はいつの間にか頬を滑っている。
イラついていたはずの瞳は、欲を孕んだ熱があり怪しい光をチラつかせている。
その瞳がより綺麗に見えて、口内を好き勝手され、何が起きているのかわからず、五条悟を押していたはずの手は彼の服を握っている。
チュッと音を立てて唇が離される。
恥ずかしさと、困惑と、怒りに顔に熱が集まり涙がじわじわと溜まっていく感覚。
「いい顔すんじゃん」
「っ!!」
「傑のドコがいいの?」
「ちがっ!!や、やめっ」
「顔?性格?まさか傑、学生に手ェ出してんの?」
「ちがい、ますっ!!」
顔から肩、胸、お腹へと触れながら下がっていく手の動きに本格的にヤバいと感じ、その手を掴むが、まったくびくともしない。
手にばかり気をとられていたせいか、首筋に唇を寄せられて身体が震える。
チクリ、と痛みが走ったかと思えばその部分に手を寄せられて焼けるような熱さを感じる。
「いった!!」
「無駄足だったと思えば、面白いモノ見付けてラッキー」
「な、にをっ」
「へぇ……名前、ね」
「!?
私の学生証!!」
「ほら、返す」
いつの間に抜き取られたのかと思っていたが、普通に返されて受けとる。
「傑に伝えなよ。
俺は逃げも隠れもしないから遊ぼうぜって」
くすり、と笑いながら離れていく彼。
先程までの殺気もなく、悠々としている。
「オマエが望むなら、俺が強くしてやるよ」
「そんな事、許されるわけ!!」
「その時は名前も呪詛師の一員だな」
「呪詛師になんかならない!!」
「ははっ!!
名前、またな」
ひらひらと手を振りながらいなくなった彼。
そして、帳が上がっていく。
安心感からか、へなへなと腰が抜けた。
「大丈夫ですか!?」
補助監督の声が聞こえたが、既にキャパシティを越えた私は気を失ってしまった。
目覚めた時、私は高専に戻ってきていた。
此処がドコか理解し、一連の出来事を理解した瞬間、ベッドから飛び起きてカーテンを開く。
そこには、いつもの寝不足姿の家入先生はおらず、私は職員室へと走り出した。
「夏油先生!!!」
「!!
名前、目が覚めたのかい?
いきなり動いても大丈夫か?」
「あのっ!!一級呪霊が出て、それで…」
「まずは落ち着こう。
ほら、おいで」
柔らかな夏油先生の言葉に涙が溢れる。
夏油先生に背中を押されながら座らせられ、流れ出る涙を拭っていれば、手を捕まれる。
「そんなに擦ると腫れてしまうよ」
「せんせ……」
「報告に無い一級は突然の出没だったみたいだからね」
「すいません!!此方の認識不足で学生の苗字さんを危険な目に…!!」
「伊地知のせいじゃないさ。
………よく、生きて戻って来てくれた。
ありがとう」
頭を撫でられて、首を振る。
私じゃない。
私は一級に立ち向かおうとせず
もう駄目だと諦めたのだから。
「私じゃ、ないん…ですっ」
「名前じゃないのかい?」
「私が、祓ったんじゃないんです……
私は諦めて、もう駄目だと思ってしまいました」
「………うん」
「一級の呪霊を一瞬で祓ったのは五条悟です」
「悟が……?」
夏油先生の目が見開かれ、その場に居た学長先生や補助監督らがざわめく。
「………名前、首はどうしたんだい?」
「首?」
「マーキングをされている」
「本当か、傑」
「えぇ。
簡単そうに見えますが……そう、簡単なモノでは無いでしょう。あの悟ですし」
「勘違い、という可能性は」
「私が悟の呪力の残穢を間違えるわけありません」
「マーキング……
何かの術の発動は?解けそうか…?」
「硝子でも無理でしょう」
真剣な表情で話す夏油先生と学長先生。
そこに、家入先生が呼び出されて来た。
「無理だな。
眠っている間に診たが、それは追跡用のものだとわかったくらいで解くのは困難だ」
「やっぱり」
「無茶苦茶な呪いの混ぜ合わせだ。
多分奴にしか解けない類いのものだろう」
「先生……あの、なにか危ないんでしょうか…?」
難しい、怖い顔をした先生達に自身の身に何が起きているのかわからずに恐怖に不安になっていく。
五条悟と対峙した時の恐怖は忘れられない。
もしも、彼が本気で私を呪い、高専に戻った事により、時間差で発動するものだったとしたら……?
高専をよく思っていない五条悟のマーキングが発動したら、自分は爆弾代わりとなってしまうのかと悪い考えばかりが浮かぶ。
「落ち着け。
別にお前に何か害があるわけでも
ほっといて何か術が発動するわけでもないぞ」
「硝子、本当かい?」
「あぁ。
例えるなら玩具を取られないように自分のモノだと印を付けたものだからな」
家入先生の言葉にポカンとする。
不安になって溢れていた涙も止まってしまう。
「名前、悟に何をされたんだい」
「何、を……」
睨むように私を見つめる夏油先生。
しかし、何をされたかと聞かれれば…
私の脳内に残るのは唇の感触と口内を好き勝手に荒らされた記憶。
恥ずかしさに顔に熱が集まり、再び涙がボロボロ出てくる。
言葉として出せず、ぱくぱくと口を開いては閉じる動作に夏油先生が頭を抱える。
「嘘だろ、あの馬鹿」
「変態か」
「硝子、名前が乱暴された形跡は?」
「無いな」
「名前、キスされたのかい?」
見事に当てられ、両手で顔を覆って泣いてしまう。顔に集まった熱が熱い。
「夏油、もう少し名前のことも考えろ。
デリカシーに欠ける」
「そうかい?
………名前、悟がそこまで気に入るなんて何をしたんだ?」
「な、なにも…」
「一先ず、名前は一人で行動させられないね」
家入先生、夏油先生、学長先生、補助監督の伊地知さんが何やら話している。
恥ずかしさと困惑に、顔の熱が早く引いてくれと願いながらふと、思い出す。
「あの、夏油先生」
「なんだい?」
「五条悟が、夏油先生に伝えてって」
「悟が?」
「俺は逃げも隠れもしないから遊ぼう……って」
その瞬間、夏油先生の眉間にシワが寄る。
「………なるほど。
喧嘩を売られたのは私か」
「五条の考えそうな事だな」
「?
あの……先生?」
「あぁ、名前は気にしなくてもいい。
あの馬鹿……」
「優しいお顔が崩れているぞ」
「おっと、いけない」
コロコロと変わる夏油先生の表情。
いつもは、五条悟の話をしていると、悲しそうだったのに…。
怒って、歪んで、呆れて。
夏油先生の本来の姿を見た気がした。
「名前……は、とにかく今は休みなさい。
後の事は私に任せて」
「あの…夏油先生」
「どうしたんだい?」
「私、強くなりたいです」
今回、己の無力さに失望した。
今のままじゃ自分は成長できないし、きっと今回みたいな突然の対応も出来ぬまま簡単に命を落とす。
「お願いします……
復帰次第、私を強くしてください」
「………これが、悟の狙いか?」
「え?」
「いや、何でもないよ。
うん…復帰したら少し厳しくいこうか」
「お願いします!!」
「わかったよ」
家入先生に病み上がりで激しく動くなと、怒られてしまった。
首筋に咲く華の印。
「強くなってよ、名前。
俺を楽しませるくらい」
ニヤリとチェシャ猫のように笑う五条悟は一人、闇夜の空に浮かびながら笑う、嗤う、ワラウ。
あとがき
続きませんっ!!!!(笑)
五条と夏油の立場を反対にしましたが、五条さんは呪霊と仲良しはしないと思う。
むしろ、興味無さそう。
呪霊と人間滅ぼす?いや、お前らが消えろよって感じ。
最強故に強い相手は求めるけど、自分に勝てないと思っているから遊び相手を探してる。
夢主の事は夏油と遊ぶ為の玩具と思っているが、反応いいからこっちにもちょっかいかけながら強くなるのを待つ。将来に期待。
世界征服はやればできるけど、面倒だからやらない。
縛られたくないから自由に生きる。
夏油先生………。
五条が離反した理由が、夏油の為だったらいいな。天内の事で親友の心を壊す上層部に嫌気がさしたから皆殺し☆みたいな。
その負い目とかあればいい。
悟が離反したのは私のせいで……って引きずりそう。
上層部まるっと消えたから、立て直すの大変。しかも特級の任務もあるから大変。そして育成も大変。
真面目に全て背負ってやろうとする不器用さん。だから、五条さんにちょっかいかけられてマジギレする。
夢主?慕ってくれている可愛い子だな、くらい。
けどマーキングされて気にしすぎておや?いやいや、私は先生で彼女は生徒……となってしまう。五条の策にまんまとハマるチョロい人。
夢主は巻き込まれて可哀想な子(笑)
あれ?この世界きっと幸せじゃね?と思った(笑)