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世界はいつも、不平等だ
「・・・は?」
悟の冷たい声が聞こえた。
夜蛾先生の淡々とした声が廊下に響く。
「何度も言わせるな
傑が集落の人間を皆殺しにし
行方をくらませた」
「聞こえてますよ
だから「は?」つったんだ」
「・・・傑の実家は既にもぬけの殻だった
ただ血痕と残穢から
恐らく両親も手にかけている」
「んなわけねぇだろ!!」
「悟
俺も・・・何が何だか分からんのだ」
いつも威厳たっぷりな先生が
声を落とし、震わせ
片手で顔を覆っている。
そんな先生を見て、悟も何も言えなくなった。
やりきれない感情を胸に
悟が隣からいなくなった。
夜蛾先生は何か言いたげな表情でこちらを見てきたが、私は頭を下げてその場から去った。
2年の時、星漿体の護衛と暗殺の任務のあとから変わってしまった。
悟は最強に成った。任務も全て1人でこなす。
硝子は元々危険な任務で外に出ることはない。
傑も元々の力量もあり、1人での任務が多くなった。
私は悟や傑のように、強いわけでもなく
硝子のように反転術式の使い手でもない。
普通の術師よりは少し腕が立つというレベル。
3年の夏は忙しかった。
昨年頻発した災害の影響もあったのだろう
蛆のように呪霊が湧いた。
それぞれが個々に動き
4人でふざけ合う日々は無くなっていた。
任務帰り、汚れた身体を洗い流すため
シャワーを浴びる。
目が回るような忙しさで
生徒だろうと二級術師はかり出される。
ぽけーっと、何をするでもなく
ベンチに座っている。
身体の汚れは落ちても
疲れまでは落ちてくれない。
何もする気が起きず、目の前の自販機を眺めながら、ずるずるとベンチに身体を横にする。
「名前」
聞きなれた低い声。
けど
久々に聞いた声。
ちらりと視線だけ上を向けば
傑がこちらを見下ろしていた。
普段はしっかりと髪を結っているのに
今は下ろしており
ラフな部屋着にサンダル姿だ。
「傑も任務終わり?」
「ああ」
「何だか久々だね」
「そうだな」
「うん・・・久々の傑だ」
自分でも情けないくらいの声が出た。
疲れすぎているのだろう
久しぶりの同級生を見ただけで
こんなにも心から安心するとは予想外だった。
「風邪を引くよ」
半袖にショートパンツ姿の私に
傑は弱々しく笑みを浮かべる。
その目の下にはくっきりと隈があり
傑も忙しく、疲れすぎているのだろう。
近くのベンチに腰かけた傑は
特に何か言うわけでもなく
膝に手をつき
頭を下げてうなだれている。
何かに思い悩むように
何かを押し殺すように
自分の知っている傑とは違う雰囲気に
ただ疲れているだけじゃないと思った。
ゆっくりと身体を起こし
傑の隣に座る
こちらをチラリと見ただけで
何も言わない
「傑、大丈夫?」
顔を覗き込めば
傑はあえて視線を反らした。
「何でもないさ」
張り付けたような笑みを見せるが
傑は笑えていなかった。
じっと見つめていれば、やはり傑は顔を背け
こちらを見てはくれなかった。
重たい身体
ゆったりとした動作で
傑の長い髪をすく
少し水気を含んだままの髪だが
指に引っ掛かることは無かった。
「・・・何だい?」
「傑はさ、頭いいから
自分で答え見つけそうだけど」
星獎体の任務の後からだろうか……
少しずつ、歯車がずれていた。
そのずれに目を向けなかった。
冷たい目をする傑がいた。
私は傑のことを知った気でいて
何も知らない。
「たまには馬鹿みたいに単純な
思考回路でもいいと思うよ
頭いいやつって難しく考え過ぎだよね」
「・・・」
「言いたくないなら、聞かない
けど、溜め込みすぎていつか傑が
壊れてしまいそうだよ」
「・・・名前」
「なーに?」
「呪術師やっていけそうか?」
辛くないか?と
呟くように聞かれた。
「んー…正直、しんどい」
祓っても祓っても、涌き出る呪霊
そして、亡くなる仲間達
「悟や傑のように、圧倒的な力がない
硝子のように、反転術式が使えるわけじゃない
私はまぁまぁ使える程度の術師だからさ」
代わりはいくらでもいる。
自分に出来ることは限りがある。
「正義のヒーローのように
全人類が救えるわけじゃないし
見知らぬ非術師のために命をかけたいと思えないけど……」
それでも術師をやっているのは
「仲間の死は、もっと嫌だなぁ」
私が術師を辞めて
私の代わりに任務に行った誰かが
私の代わりに命を落とす
「非術師は嫌い」
彼らのためじゃない
私が呪術師をしているのは
「私を認めてくれた、仲間がいるから
私は呪術師をやってるんだよ」
傑のきょとん顔に、くすりと笑みが零れる。
「ふふ、傑間抜け顔」
「名前が非術師を嫌いなんて、初めて知ったよ」
「私苛められっ子だったからさー
高専に来るまで全員術霊に殺られてしまえー
くらいの感覚の持ち主だよ?」
「それは・・・」
「私は呪詛師のが向いてるかも」
にやりと笑えば、傑は複雑そうな顔をする。
私はたまたま呪霊に閉じ込められ
祓いに来た夜蛾先生と出会い
手を差しのべられた。
先生に出会っていなければ
きっと道は違えていただろう。
「単純だよ
私が苦しかった時に手を差しのべてくれたのが先生だった
だから私は先生についていくだけだよ」
たとえ、嫌いな人間を守ることになっても
自分のなかに矛盾があっても
「非術師と仲間
どちらかが危険になった時
私は迷わず仲間を助けるよ」
傑は何とも言えない顔をしていた。
傑の考える"弱者生存"とは
まったく違う考えを持っていた私に
幻滅してしまっただろうか?
傑は正しい
だが、正しいから納得できるかといえば
私は出来なかった。
「傑」
隣から立ち上がり、傑の目の前に立つ。
なでなで。と
何とも言えない表情の傑の頭を撫でる。
「正論は時に
自分の首を締めてしまうよ」
正しいから、何をしても許されるわけじゃない。
正しいから、何かしていいわけじゃない。
「さて、私は少し部屋で休むよ」
「ああ・・・」
「傑もきちんと休むんだよ?
顔に隈がある」
「わかったよ」
「傑」
「何だい?」
「もっと、気楽に生きた方がいいよ」
悟は自由過ぎるけどね、と言えば
確かにな、と笑みがこぼれた。
その翌日、後輩の、灰原が死んだ。
傑に懐いていた、真っ直ぐな子だった。
何が引き金だったのかはわからない。
私の言葉も、少なくとも影響はあったのかもしれないし
今となってはわからない。
ただ、傑が非術師を殺し
呪詛師となり
高専からいなくなったという事実だけ。
悟は私や硝子に
傑に出会ったら連絡しろと言い
傑を探している。
それから数日も経たないうちに
硝子からメールがあった。
新宿に傑がいたと。
悟には連絡済みだということ。
人の多い新宿
硝子のメールから、直ぐに足を向けてみれば
真っ黒な私服姿で
きっちりまとめていた髪は
上だけを簡単にお団子にまとめ
襟足は下ろしている姿の姿
「悟には会えたのかな?」
「会えたよ」
にっこりと笑う傑は
憑き物でも落ちたかのように
晴れ晴れとしている
「一応聞くけど、一緒にこないか?」
「高専裏切って、犯罪者に?」
「術師だけの世界を作るんだ」
傑の言葉に、少しだけ心が揺れる。
「名前の考えなら、私と一緒に来た方が
いいとは思わないかい?」
「・・・理想の世界だね」
非術師は嫌い
「・・・先生の手を握る前なら
喜んで一緒に行ったのにな」
私の世界を救ったのは、夜蛾先生だ。
「残念」
「傑」
「何だい?」
「私にとって、傑はまだ仲間だよ」
きっと、傑と非術師のどちらかが危なくなって
助けなきゃいけないとき
私は迷わず傑を選ぶだろう
「私の世界の一部だよ」
「・・・それは、嬉しいね」
じゃあ、そんな状況を作って
名前を仲間に引き入れようか
なーんて軽く言うものだから
笑ってしまう
「傑を助けたあとに
先生に殺されることを選ぶから
やっぱり傑とは行けないな」
「歪んでいるね」
「今さらだよ」
くつくつと笑いながら
隣を過ぎていく傑
「生きろよ」
「・・・出来る限りね」
振り返れば、すでに傑は人混みに消えていた。
私も歩き出す。
高専に帰れば
階段でうつむき、座っている悟がいた。
階段の上からは夜蛾先生が降りてきてる。
先生は悟の近くで立ち止まり
少し会話をした後に
こちらを見て、ゆったりとした足取りのまま
先生だけがこちらに歩いてきた。
「会ったのか」
「はい」
「行かなかったのか」
「はい」
先生を見上げれば
やはり先生は何か言いたげな表情のままだった。
「とても魅力的なお誘いでしたが
私を救ったのは傑じゃありません」
「・・・・・・」
「私よりももっとひどく扱われている術師は
この世にどれくらいいて
何人が手を差しのべてくれる人に
出会えるのでしょう?」
夜蛾先生の顔をしっかりと見つめる。
「傑に救われる人もいるでしょう
傑の世界に救われる人もいるでしょう
でも」
それは私ではない。
「薄情だと思ってください
私は正義のヒーローにはなれません」
「お前も、手のかかる難しい生徒だよ」
「ははっ
悟、傑よりはマシだと思いますけど」
歩き出した夜蛾先生の後を追う。
「先生」
「何だ」
私は、非術師が嫌いだ
悟が聞いたら、怒り狂う気もするが
誰かに言うつもりはない。
狭く小さな私の世界。
「私が裏切った時は」
私を救ってくれた、先生
私を仲間にしてくれた、同級生達
「先生が終わらせてくださいね」
にっこりと笑う私に
夜蛾先生は一度立ち止まり
硬い拳を握りそのまま私の頭を小突く。
痛くはなかったけれど
それが、先生の答えだと受けとる。
私の世界
それは、私を認めてくれた術師達
そんな、彼らを救うことが
私にとっての正義
あとがき
傑信者がいるなら
ナイスガイな先生信者もいると思われる。
そして、地獄の世代と一緒なら
多少イカレた思考回路じゃん?と
なった結果でした
傑夢書いてたはずなのにな??笑
「・・・は?」
悟の冷たい声が聞こえた。
夜蛾先生の淡々とした声が廊下に響く。
「何度も言わせるな
傑が集落の人間を皆殺しにし
行方をくらませた」
「聞こえてますよ
だから「は?」つったんだ」
「・・・傑の実家は既にもぬけの殻だった
ただ血痕と残穢から
恐らく両親も手にかけている」
「んなわけねぇだろ!!」
「悟
俺も・・・何が何だか分からんのだ」
いつも威厳たっぷりな先生が
声を落とし、震わせ
片手で顔を覆っている。
そんな先生を見て、悟も何も言えなくなった。
やりきれない感情を胸に
悟が隣からいなくなった。
夜蛾先生は何か言いたげな表情でこちらを見てきたが、私は頭を下げてその場から去った。
2年の時、星漿体の護衛と暗殺の任務のあとから変わってしまった。
悟は最強に成った。任務も全て1人でこなす。
硝子は元々危険な任務で外に出ることはない。
傑も元々の力量もあり、1人での任務が多くなった。
私は悟や傑のように、強いわけでもなく
硝子のように反転術式の使い手でもない。
普通の術師よりは少し腕が立つというレベル。
3年の夏は忙しかった。
昨年頻発した災害の影響もあったのだろう
蛆のように呪霊が湧いた。
それぞれが個々に動き
4人でふざけ合う日々は無くなっていた。
任務帰り、汚れた身体を洗い流すため
シャワーを浴びる。
目が回るような忙しさで
生徒だろうと二級術師はかり出される。
ぽけーっと、何をするでもなく
ベンチに座っている。
身体の汚れは落ちても
疲れまでは落ちてくれない。
何もする気が起きず、目の前の自販機を眺めながら、ずるずるとベンチに身体を横にする。
「名前」
聞きなれた低い声。
けど
久々に聞いた声。
ちらりと視線だけ上を向けば
傑がこちらを見下ろしていた。
普段はしっかりと髪を結っているのに
今は下ろしており
ラフな部屋着にサンダル姿だ。
「傑も任務終わり?」
「ああ」
「何だか久々だね」
「そうだな」
「うん・・・久々の傑だ」
自分でも情けないくらいの声が出た。
疲れすぎているのだろう
久しぶりの同級生を見ただけで
こんなにも心から安心するとは予想外だった。
「風邪を引くよ」
半袖にショートパンツ姿の私に
傑は弱々しく笑みを浮かべる。
その目の下にはくっきりと隈があり
傑も忙しく、疲れすぎているのだろう。
近くのベンチに腰かけた傑は
特に何か言うわけでもなく
膝に手をつき
頭を下げてうなだれている。
何かに思い悩むように
何かを押し殺すように
自分の知っている傑とは違う雰囲気に
ただ疲れているだけじゃないと思った。
ゆっくりと身体を起こし
傑の隣に座る
こちらをチラリと見ただけで
何も言わない
「傑、大丈夫?」
顔を覗き込めば
傑はあえて視線を反らした。
「何でもないさ」
張り付けたような笑みを見せるが
傑は笑えていなかった。
じっと見つめていれば、やはり傑は顔を背け
こちらを見てはくれなかった。
重たい身体
ゆったりとした動作で
傑の長い髪をすく
少し水気を含んだままの髪だが
指に引っ掛かることは無かった。
「・・・何だい?」
「傑はさ、頭いいから
自分で答え見つけそうだけど」
星獎体の任務の後からだろうか……
少しずつ、歯車がずれていた。
そのずれに目を向けなかった。
冷たい目をする傑がいた。
私は傑のことを知った気でいて
何も知らない。
「たまには馬鹿みたいに単純な
思考回路でもいいと思うよ
頭いいやつって難しく考え過ぎだよね」
「・・・」
「言いたくないなら、聞かない
けど、溜め込みすぎていつか傑が
壊れてしまいそうだよ」
「・・・名前」
「なーに?」
「呪術師やっていけそうか?」
辛くないか?と
呟くように聞かれた。
「んー…正直、しんどい」
祓っても祓っても、涌き出る呪霊
そして、亡くなる仲間達
「悟や傑のように、圧倒的な力がない
硝子のように、反転術式が使えるわけじゃない
私はまぁまぁ使える程度の術師だからさ」
代わりはいくらでもいる。
自分に出来ることは限りがある。
「正義のヒーローのように
全人類が救えるわけじゃないし
見知らぬ非術師のために命をかけたいと思えないけど……」
それでも術師をやっているのは
「仲間の死は、もっと嫌だなぁ」
私が術師を辞めて
私の代わりに任務に行った誰かが
私の代わりに命を落とす
「非術師は嫌い」
彼らのためじゃない
私が呪術師をしているのは
「私を認めてくれた、仲間がいるから
私は呪術師をやってるんだよ」
傑のきょとん顔に、くすりと笑みが零れる。
「ふふ、傑間抜け顔」
「名前が非術師を嫌いなんて、初めて知ったよ」
「私苛められっ子だったからさー
高専に来るまで全員術霊に殺られてしまえー
くらいの感覚の持ち主だよ?」
「それは・・・」
「私は呪詛師のが向いてるかも」
にやりと笑えば、傑は複雑そうな顔をする。
私はたまたま呪霊に閉じ込められ
祓いに来た夜蛾先生と出会い
手を差しのべられた。
先生に出会っていなければ
きっと道は違えていただろう。
「単純だよ
私が苦しかった時に手を差しのべてくれたのが先生だった
だから私は先生についていくだけだよ」
たとえ、嫌いな人間を守ることになっても
自分のなかに矛盾があっても
「非術師と仲間
どちらかが危険になった時
私は迷わず仲間を助けるよ」
傑は何とも言えない顔をしていた。
傑の考える"弱者生存"とは
まったく違う考えを持っていた私に
幻滅してしまっただろうか?
傑は正しい
だが、正しいから納得できるかといえば
私は出来なかった。
「傑」
隣から立ち上がり、傑の目の前に立つ。
なでなで。と
何とも言えない表情の傑の頭を撫でる。
「正論は時に
自分の首を締めてしまうよ」
正しいから、何をしても許されるわけじゃない。
正しいから、何かしていいわけじゃない。
「さて、私は少し部屋で休むよ」
「ああ・・・」
「傑もきちんと休むんだよ?
顔に隈がある」
「わかったよ」
「傑」
「何だい?」
「もっと、気楽に生きた方がいいよ」
悟は自由過ぎるけどね、と言えば
確かにな、と笑みがこぼれた。
その翌日、後輩の、灰原が死んだ。
傑に懐いていた、真っ直ぐな子だった。
何が引き金だったのかはわからない。
私の言葉も、少なくとも影響はあったのかもしれないし
今となってはわからない。
ただ、傑が非術師を殺し
呪詛師となり
高専からいなくなったという事実だけ。
悟は私や硝子に
傑に出会ったら連絡しろと言い
傑を探している。
それから数日も経たないうちに
硝子からメールがあった。
新宿に傑がいたと。
悟には連絡済みだということ。
人の多い新宿
硝子のメールから、直ぐに足を向けてみれば
真っ黒な私服姿で
きっちりまとめていた髪は
上だけを簡単にお団子にまとめ
襟足は下ろしている姿の姿
「悟には会えたのかな?」
「会えたよ」
にっこりと笑う傑は
憑き物でも落ちたかのように
晴れ晴れとしている
「一応聞くけど、一緒にこないか?」
「高専裏切って、犯罪者に?」
「術師だけの世界を作るんだ」
傑の言葉に、少しだけ心が揺れる。
「名前の考えなら、私と一緒に来た方が
いいとは思わないかい?」
「・・・理想の世界だね」
非術師は嫌い
「・・・先生の手を握る前なら
喜んで一緒に行ったのにな」
私の世界を救ったのは、夜蛾先生だ。
「残念」
「傑」
「何だい?」
「私にとって、傑はまだ仲間だよ」
きっと、傑と非術師のどちらかが危なくなって
助けなきゃいけないとき
私は迷わず傑を選ぶだろう
「私の世界の一部だよ」
「・・・それは、嬉しいね」
じゃあ、そんな状況を作って
名前を仲間に引き入れようか
なーんて軽く言うものだから
笑ってしまう
「傑を助けたあとに
先生に殺されることを選ぶから
やっぱり傑とは行けないな」
「歪んでいるね」
「今さらだよ」
くつくつと笑いながら
隣を過ぎていく傑
「生きろよ」
「・・・出来る限りね」
振り返れば、すでに傑は人混みに消えていた。
私も歩き出す。
高専に帰れば
階段でうつむき、座っている悟がいた。
階段の上からは夜蛾先生が降りてきてる。
先生は悟の近くで立ち止まり
少し会話をした後に
こちらを見て、ゆったりとした足取りのまま
先生だけがこちらに歩いてきた。
「会ったのか」
「はい」
「行かなかったのか」
「はい」
先生を見上げれば
やはり先生は何か言いたげな表情のままだった。
「とても魅力的なお誘いでしたが
私を救ったのは傑じゃありません」
「・・・・・・」
「私よりももっとひどく扱われている術師は
この世にどれくらいいて
何人が手を差しのべてくれる人に
出会えるのでしょう?」
夜蛾先生の顔をしっかりと見つめる。
「傑に救われる人もいるでしょう
傑の世界に救われる人もいるでしょう
でも」
それは私ではない。
「薄情だと思ってください
私は正義のヒーローにはなれません」
「お前も、手のかかる難しい生徒だよ」
「ははっ
悟、傑よりはマシだと思いますけど」
歩き出した夜蛾先生の後を追う。
「先生」
「何だ」
私は、非術師が嫌いだ
悟が聞いたら、怒り狂う気もするが
誰かに言うつもりはない。
狭く小さな私の世界。
「私が裏切った時は」
私を救ってくれた、先生
私を仲間にしてくれた、同級生達
「先生が終わらせてくださいね」
にっこりと笑う私に
夜蛾先生は一度立ち止まり
硬い拳を握りそのまま私の頭を小突く。
痛くはなかったけれど
それが、先生の答えだと受けとる。
私の世界
それは、私を認めてくれた術師達
そんな、彼らを救うことが
私にとっての正義
あとがき
傑信者がいるなら
ナイスガイな先生信者もいると思われる。
そして、地獄の世代と一緒なら
多少イカレた思考回路じゃん?と
なった結果でした
傑夢書いてたはずなのにな??笑