最期まであなたと 2
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目覚めた時に見えた、見慣れない天井。
起き上がろうとしても、腕が縛られていて動かせないことに気付く。
縛られた両手は背中にあり、頭がボーッとする。
「目が覚めました?」
にっこり笑うのは、昔の後輩に似ていると思った彼。
彼は傑くんに目を付けられていたはずだ。
あぁ、しくじった。
傑くんに迷惑をかけて、心配かけてしまっているな……と思うものの、何で此処に彼といるんだと思い出そうとしても頭がボーッとする。
「どこで気付きました?
俺、案外上手く近付いていたと思いますけど」
「………」
「あれ?ちょっと薬強すぎました?
すいません。急いでたので」
頬を撫でる手は優しいのに、目の奥は怪しい光を持っている。
「夏油一派に入れたら仕事も金も沢山入るのに……。
隙が無いし、最近俺自身が狙われて来たみたいなので離れるついでに浚っちゃいました!!」
少しずつ思い出してきた。
買い物も終わり、家の中に入ろうとした時に傑くんの声で声を掛けられた。
振り向いた瞬間に布を押し当てられ、そのまま意識が落ちた。
「名前さんってさーあの連中から比べると普通過ぎるよね。
何で夏油一派が……いや、夏油が大切にしてるかわかんない」
「………こ…え」
「声?夏油の声?
俺さ声似せるのちょっとした特技なんだよね!!
……それっぽく聞こえるだろ?」
にやりと笑う彼に、自分に呆れてしまう。
少しずつはっきりしてきたが、此処が何処かの一室だということ。
両腕はしっかりと縛られており、片足にはご丁寧に鎖。
「ごめんね。一応夏油と一緒に居るわけだし強かったら嫌だからしっかり拘束させてもらったよ」
「………どうして?」
「ん?」
「何で私を連れ出したの?」
危険を犯してまであの場所に来て、私を浚った。
生きて逃げるならば、そんなことする必要なんて無かったはずだ。
私が傑くんと共にそれっぽく教祖様をしているならまだしも、私は一切関与していない。
それこそ、あの宗教にくる人々の中で私を知る人々なんてほとんどいないくらいだ。
「一応、部下の人達の中では名前さん有名だよ?
外出の度に護衛付けられて夏油一派が護る華だったり、囲いの姫とかまぁ、色んな呼び名で」
「………」
「余程大切にされてるんだね。
名前さんを探る人、ほとんど消されたんだよ」
「………そう」
「知らなかった?
まぁ、だいたい良からぬ下心持ってたり
夏油をどうにかするための切り札に使おうとしていたからね」
ケラケラと笑う彼。
何がそんなに楽しいのか聞きたいが、守られていた事に、大切にされている事に感謝した。
私が今日まで傑くんに無理を言って外に出させてもらっていたのは、傑くんの加護下にあったからだ。
傑くんが以前からあまり外出を好まない言い方をしていた意味がよーくわかった。
守られ過ぎて、平和ボケしてしまっていた。
「貴方は?」
「俺さ、最初は皆と同じように切り札に使えればいいかなって思ってたよ。
買い物の護衛もちょくちょく変えられていたのは、きっと名前さんに何の感情も持たせない為だろうね」
「私に取り入っても意味ないのに」
「違うよ。
名前さんが普通だから、側に居たくなる」
「………」
「こんな汚れた世界に居て、汚れてない存在。
汚い所を見せずに囲われてる存在。
一度関わってみたら、自分も普通に居られるんじゃないかと勘違いしてしまう心地よさ」
「私はそんな存在じゃないよ」
「俺達は汚れているからさ、羨ましくなるんだ。
綺麗な存在を見ると手を伸ばしたくなるんだよね。
現に、夏油を慕っていたくせに名前さんに触れようとした奴は消されちゃったし」
優しく優しく。
壊れ物を扱うかのように、髪や頬を撫でる彼。
「夏油から奪いたくなった」
「帰して」
「やだ」
「私は傑くんと居たいの」
「駄目。言ったでしょ?
羨ましいから夏油から奪いたくなったって」
「私は傑くん以外いらない」
「俺が欲しいの。名前さんを」
うっとりとした眼差し。
もぞもぞと動こうとしても、拘束された腕はがっちりと縛られているし、動くたびに足が鎖と擦れる。
「無理に動いたら痛むよ?」
「帰して!!」
「駄目だって。
どうせ此処もすぐバレるだろうからまた移動しなきゃ」
「傑くんはすぐに見付けてくれる。
だから今すぐに帰して」
「見付からないように、逃げるのは得意なんだ」
だから今もこうして生きてるんだよ。
そう言いながら笑う彼に、顔を歪めてしまう。
「ご飯何か買ってくるからいいこで待っててね」
ガチャリと閉められた扉。
もぞもぞと動きにくいが、何とか身体を起き上がらせれば、部屋はベッドのみ。
ベッドの柵に鎖が巻き付けられ、鍵はない。
紐をどうにか出来るような物もなく、窓はあるがしっかり縛られた腕で鍵は開けられない。
どうしたものかと、悪足掻きではあるが紐を指先で弄ってみる。
縄抜けや、関節外しなんて出来ないので、弄るだけだ。
縄が食い込むだけでどうしようもない。
「………傑くん、怒ってるだろうなぁ」
傑くんは穏やかに笑っている印象が強いが、気の長い方ではない。
そんな彼に大切にされて、甘やかされている自覚はある。
帰った後が大変な事になりそうだ、と思ってしまう。
「帰ったら……暫く出歩けないかもな」
「そうだね」
ガチャリと、私に返事を返すように開いた扉。
そこには傑くんが立っていて、目を丸くして見つめてしまう。
私を見て、眉間にシワを寄せながら大股で近付き、身体に触れる。
物を収納出来る呪霊がナイフを吐き出せば、縄を切ってくれる。
やっと自由になった腕を傑くんに向かって伸ばす。
「ありがとう、傑くん」
「無用心だよ」
「家の前で傑くんの声がしたから、油断しちゃった」
「あれは私も驚いたよ」
ぎゅっ、と傑くんを抱き締めれば、同じくらい力強く抱き締め返してくれる。
来てくれると疑わなかったが、人質なんて初めての経験に心臓が速く、強がっていても恐怖を感じていたらしい。
チャリ……と鳴る足の鎖。
「本当、いい趣味してるよ」
「………取れる?」
「呪霊に溶かさせようか」
数ある呪霊の中から、溶解液のようなものを吐き出す呪霊を選び、鎖に吐き出せばジュワリと鎖が溶けた。
足元ギリギリだと危ないからと、ベッドと繋がった部分だけ溶かされ、足にぶら下がった鎖。
「後で足を傷付けないように取ってもらおうか」
「鍵は?」
「本人が持っていたのかもしれないからね」
にこりと笑った傑くん。
最後まで伝えられなかったが、彼はもう肉体すら残さずいないのだろう。
「ごめんね、心配かけて」
「名前が発信器身に付けててくれて良かったよ」
「心配性だと笑ってたけど、役立ったね」
「役立たない方がいいんだけど」
服のポケットから取り出した小さな機器。
いつも持ち歩くように言われ、外出時は必ず忘れないようにしている。
「呪霊を護衛につけていても、祓える人間がいたなら意味無いからね」
「気付かれなくて良かった……」
「腕にも足にも跡がついて……
もっと苦しめてから殺せば良かったな」
「このくらい自分ですぐ治すよ」
「私から名前を奪おうとするのも
治せるとはいえ傷付けるのも気に入らないよ」
明らかにイラついている傑くん。
軽々と抱き抱えられて、部屋から出される。
ムスッとしたまま呪霊に乗り、さっさと家へ帰る傑くんに今は何も言わない方が良さそうだと、身体を傑くんに預ければ、傑くんの匂いに包まれてホッとする。
「眠いのかい?」
「………少し」
「寝てていいよ」
「………傑くん」
「なんだい」
「起きたとき……隣に居て欲しい」
「居るよ。起きた後も」
だんだんと落ちてきた瞼。
抵抗せず、傑くんに身を任せて眠りに落ちる。
ここは、世界一安全な居場所。
あとがき
ちょっと夏油がヤバい奴になってしまった……。
夏油のことだから誘拐されてもすぐ見つけそう。
自分の出来ることを把握しているからこそ、発信器とか盗聴機とか使って持たせてそう。
そして犯人は苦しめるよりさっさと消しそう。
起き上がろうとしても、腕が縛られていて動かせないことに気付く。
縛られた両手は背中にあり、頭がボーッとする。
「目が覚めました?」
にっこり笑うのは、昔の後輩に似ていると思った彼。
彼は傑くんに目を付けられていたはずだ。
あぁ、しくじった。
傑くんに迷惑をかけて、心配かけてしまっているな……と思うものの、何で此処に彼といるんだと思い出そうとしても頭がボーッとする。
「どこで気付きました?
俺、案外上手く近付いていたと思いますけど」
「………」
「あれ?ちょっと薬強すぎました?
すいません。急いでたので」
頬を撫でる手は優しいのに、目の奥は怪しい光を持っている。
「夏油一派に入れたら仕事も金も沢山入るのに……。
隙が無いし、最近俺自身が狙われて来たみたいなので離れるついでに浚っちゃいました!!」
少しずつ思い出してきた。
買い物も終わり、家の中に入ろうとした時に傑くんの声で声を掛けられた。
振り向いた瞬間に布を押し当てられ、そのまま意識が落ちた。
「名前さんってさーあの連中から比べると普通過ぎるよね。
何で夏油一派が……いや、夏油が大切にしてるかわかんない」
「………こ…え」
「声?夏油の声?
俺さ声似せるのちょっとした特技なんだよね!!
……それっぽく聞こえるだろ?」
にやりと笑う彼に、自分に呆れてしまう。
少しずつはっきりしてきたが、此処が何処かの一室だということ。
両腕はしっかりと縛られており、片足にはご丁寧に鎖。
「ごめんね。一応夏油と一緒に居るわけだし強かったら嫌だからしっかり拘束させてもらったよ」
「………どうして?」
「ん?」
「何で私を連れ出したの?」
危険を犯してまであの場所に来て、私を浚った。
生きて逃げるならば、そんなことする必要なんて無かったはずだ。
私が傑くんと共にそれっぽく教祖様をしているならまだしも、私は一切関与していない。
それこそ、あの宗教にくる人々の中で私を知る人々なんてほとんどいないくらいだ。
「一応、部下の人達の中では名前さん有名だよ?
外出の度に護衛付けられて夏油一派が護る華だったり、囲いの姫とかまぁ、色んな呼び名で」
「………」
「余程大切にされてるんだね。
名前さんを探る人、ほとんど消されたんだよ」
「………そう」
「知らなかった?
まぁ、だいたい良からぬ下心持ってたり
夏油をどうにかするための切り札に使おうとしていたからね」
ケラケラと笑う彼。
何がそんなに楽しいのか聞きたいが、守られていた事に、大切にされている事に感謝した。
私が今日まで傑くんに無理を言って外に出させてもらっていたのは、傑くんの加護下にあったからだ。
傑くんが以前からあまり外出を好まない言い方をしていた意味がよーくわかった。
守られ過ぎて、平和ボケしてしまっていた。
「貴方は?」
「俺さ、最初は皆と同じように切り札に使えればいいかなって思ってたよ。
買い物の護衛もちょくちょく変えられていたのは、きっと名前さんに何の感情も持たせない為だろうね」
「私に取り入っても意味ないのに」
「違うよ。
名前さんが普通だから、側に居たくなる」
「………」
「こんな汚れた世界に居て、汚れてない存在。
汚い所を見せずに囲われてる存在。
一度関わってみたら、自分も普通に居られるんじゃないかと勘違いしてしまう心地よさ」
「私はそんな存在じゃないよ」
「俺達は汚れているからさ、羨ましくなるんだ。
綺麗な存在を見ると手を伸ばしたくなるんだよね。
現に、夏油を慕っていたくせに名前さんに触れようとした奴は消されちゃったし」
優しく優しく。
壊れ物を扱うかのように、髪や頬を撫でる彼。
「夏油から奪いたくなった」
「帰して」
「やだ」
「私は傑くんと居たいの」
「駄目。言ったでしょ?
羨ましいから夏油から奪いたくなったって」
「私は傑くん以外いらない」
「俺が欲しいの。名前さんを」
うっとりとした眼差し。
もぞもぞと動こうとしても、拘束された腕はがっちりと縛られているし、動くたびに足が鎖と擦れる。
「無理に動いたら痛むよ?」
「帰して!!」
「駄目だって。
どうせ此処もすぐバレるだろうからまた移動しなきゃ」
「傑くんはすぐに見付けてくれる。
だから今すぐに帰して」
「見付からないように、逃げるのは得意なんだ」
だから今もこうして生きてるんだよ。
そう言いながら笑う彼に、顔を歪めてしまう。
「ご飯何か買ってくるからいいこで待っててね」
ガチャリと閉められた扉。
もぞもぞと動きにくいが、何とか身体を起き上がらせれば、部屋はベッドのみ。
ベッドの柵に鎖が巻き付けられ、鍵はない。
紐をどうにか出来るような物もなく、窓はあるがしっかり縛られた腕で鍵は開けられない。
どうしたものかと、悪足掻きではあるが紐を指先で弄ってみる。
縄抜けや、関節外しなんて出来ないので、弄るだけだ。
縄が食い込むだけでどうしようもない。
「………傑くん、怒ってるだろうなぁ」
傑くんは穏やかに笑っている印象が強いが、気の長い方ではない。
そんな彼に大切にされて、甘やかされている自覚はある。
帰った後が大変な事になりそうだ、と思ってしまう。
「帰ったら……暫く出歩けないかもな」
「そうだね」
ガチャリと、私に返事を返すように開いた扉。
そこには傑くんが立っていて、目を丸くして見つめてしまう。
私を見て、眉間にシワを寄せながら大股で近付き、身体に触れる。
物を収納出来る呪霊がナイフを吐き出せば、縄を切ってくれる。
やっと自由になった腕を傑くんに向かって伸ばす。
「ありがとう、傑くん」
「無用心だよ」
「家の前で傑くんの声がしたから、油断しちゃった」
「あれは私も驚いたよ」
ぎゅっ、と傑くんを抱き締めれば、同じくらい力強く抱き締め返してくれる。
来てくれると疑わなかったが、人質なんて初めての経験に心臓が速く、強がっていても恐怖を感じていたらしい。
チャリ……と鳴る足の鎖。
「本当、いい趣味してるよ」
「………取れる?」
「呪霊に溶かさせようか」
数ある呪霊の中から、溶解液のようなものを吐き出す呪霊を選び、鎖に吐き出せばジュワリと鎖が溶けた。
足元ギリギリだと危ないからと、ベッドと繋がった部分だけ溶かされ、足にぶら下がった鎖。
「後で足を傷付けないように取ってもらおうか」
「鍵は?」
「本人が持っていたのかもしれないからね」
にこりと笑った傑くん。
最後まで伝えられなかったが、彼はもう肉体すら残さずいないのだろう。
「ごめんね、心配かけて」
「名前が発信器身に付けててくれて良かったよ」
「心配性だと笑ってたけど、役立ったね」
「役立たない方がいいんだけど」
服のポケットから取り出した小さな機器。
いつも持ち歩くように言われ、外出時は必ず忘れないようにしている。
「呪霊を護衛につけていても、祓える人間がいたなら意味無いからね」
「気付かれなくて良かった……」
「腕にも足にも跡がついて……
もっと苦しめてから殺せば良かったな」
「このくらい自分ですぐ治すよ」
「私から名前を奪おうとするのも
治せるとはいえ傷付けるのも気に入らないよ」
明らかにイラついている傑くん。
軽々と抱き抱えられて、部屋から出される。
ムスッとしたまま呪霊に乗り、さっさと家へ帰る傑くんに今は何も言わない方が良さそうだと、身体を傑くんに預ければ、傑くんの匂いに包まれてホッとする。
「眠いのかい?」
「………少し」
「寝てていいよ」
「………傑くん」
「なんだい」
「起きたとき……隣に居て欲しい」
「居るよ。起きた後も」
だんだんと落ちてきた瞼。
抵抗せず、傑くんに身を任せて眠りに落ちる。
ここは、世界一安全な居場所。
あとがき
ちょっと夏油がヤバい奴になってしまった……。
夏油のことだから誘拐されてもすぐ見つけそう。
自分の出来ることを把握しているからこそ、発信器とか盗聴機とか使って持たせてそう。
そして犯人は苦しめるよりさっさと消しそう。