妊娠
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「七海、あのさ」
「何ですか」
「別れるのと、記憶無くすのと、逃亡されるのどれがいい?」
「何言ってるんですか貴女は」
恋人との短い時間の逢瀬の最中に告げた言葉に、七海の眉間にシワが寄った。
「だから、別れるのと、記憶無くすのと、逃亡されるのどれがいい?って」
「すいません。貴女の言葉が足りないのを配慮して聞くべきでした。
つまり私と離れたいって事でいいですか?」
「いやー出来れば離れたくはないかな」
「意味が分かりません」
「七海、お馬鹿さん」
「ぶん殴りますよ」
キャー、こわーいなどとふざける彼女に七海は盛大なため息をついた。
冷静を装いたいが、いかんせん自分もショックを受けている。
好きだと告げ、共に過ごした時間は短いかもしれないが、上手くやっていたと思っていたのは自分だけだったのかもしれない。
付き合えた事に舞い上がって、一人はしゃいでいたわけでもないが、浮かれすぎていたのかもしれないと自問自答する。
そんな七海の奥底にある葛藤など気にせず、爆弾を放り投げられた。
「あのね、七海」
「………何ですか」
「妊娠した」
「妊娠……妊娠?は?」
「今3ヶ月だって」
「一応聞きますが、名前が、ですか?」
「私、妊娠、3ヶ月」
イェイ、と三本の指を立てる恋人に、七海は深いため息をついた。
思い当たる事はある。
それにしても、伝えられるノリの軽さと、なぜ離れようとするのかがわからず頭を抱えてしまう。
「だから別れよ」
「だから、の意味が分かりません」
「だから、だよ。
七海は五条さんにも期待されてるし、信頼されてる一級呪術師だよ。
後輩達からも尊敬されてるし、忙しいし」
「それとこれとは関係無いですよね」
「実家からお見合い話も来ててさぁ
とりあえず黙って逃げ出そうと思ったんだよね」
「聞いてませんよ。お見合い話なんて」
「今言った」
「………」
「七海は呪術界に必要な人材。
だけど私は未来の無いポンコツ二級呪術師。
一人くらい減っても痛手にはならないから」
「私が一般家庭だからですか」
「違う違う。
私が七海の邪魔になりたくないから」
情報量に頭の中で処理しきれずにいる。
「今まで自由にしていたけれど、そろそろ限界みたいだし」
「私じゃ駄目ですか?」
「七海の負担になりたくない」
何を言い出すのかと思えば………。
呆れればいいのか、怒ればいいのか。
いつでも元気で、ちょっと抜けていて、突拍子もないことをしでかす彼女は、懐かしい友人とどこか似ている。
彼女がそう、真似ているのかわからないが……学生時代を思い出せば、元々騒がしかったと思い返す。
御三家とまではいかないが、呪術師を排出している家系の彼女にお見合い話は昔からあったこと。
あれこれと理由をつけてはのらりくらり逃げていた。
自分と付き合うことで、無くなったのだと勝手に思い込んでいたのだが……それこそ浮かれすぎた結果だろう。
「私の負担か迷惑かは私が決めることですよ」
「七海……」
「いるんですか?ここに」
恐る恐るお腹に触れる。
まだまだへこんでいるお腹に変化は無く、本当に授かっているのかもわからない。
「………見る?」
「は?」
「エコー写真貰ったの」
「………見せて貰えますか」
手渡された写真は白黒。
小さな袋の中に豆粒のような人っぽい形をしているようにも見える。
これが頭で、これがお腹だと指差す彼女からの言葉に、それっぽく見えてくる不思議。
「もう心臓動いていてね、心臓凄く速いんだよ」
「こんな小さくても動いているんだ」
「だから………だから、ね」
「七海……っ」
楽しそうに話していたはずなのに、だんだんと泣きそうになる彼女。
陽気に振る舞っていても彼女だって怖かったはずだ。
来ない月もの。
市販薬での結果。
慣れない婦人科。
きっと、自分の知識で知るものと違い、彼女も不慣れな出来事に混乱していたのだろう。
その結果が、冒頭の台詞だったとしても……気付かない自分にも非がある。
「不安でしたよね。すいません」
「ごめん……七海っ
困らせるつもりなんか、無くて……っ」
「貴女に困らせられる事なんて慣れてます」
「ひっど!!」
「迷惑かけたくないなんて、学生時代一人で呪霊に突っ込み派手に怪我するような貴女の回収を何度してきたと思ってるんですか」
「うっ……」
「成人したからと飲みに行って酔い潰れた貴女の回収とか」
「ううっ…」
「あぁ、吐瀉物の処理もしましたね。
あとは脱ぎ散らかす癖があるので、服も下着も畳みますし」
「すみません……」
「貴女の迷惑なんて慣れているんですよ。
今さら迷惑だ、困らせた、負担だなんて考えた挙げ句、人の記憶無くそうとしたり、逃亡したり、別れようって考えになるなんて……」
「本当に申し訳ございません……」
「やっと貴女と向き合えて、貴女と……
名前と付き合えて舞い上がっていたんです。
名前が嫌じゃ無いのなら、離れようとしないでください」
学生時代から気になっていた。
しかし、自分に呪術師は向かないと逃げ出した。
その間も名前は戻れとは言わずに連絡をくれて、一般社会の愚痴を聞いてくれて笑っていた。
拗れた想いを押さえ込んでも、彼女が笑う度触れたくなり、我慢出来ずに想いを伝えて、晴れて恋人となった時から浮かれている自分がいた。
ソファーに座る彼女の足元に膝をつき、彼女の手を取る。
「名前が良ければ私の妻となり、お腹の子と共に守らせて下さい。
長生きする、という約束は出来ませんが……
生きている限り貴女と子供を幸せにする努力をします」
「なっ、七海!?」
「順番が逆になってしまいましたが……
結婚しましょう」
「……いいの?」
「貴女こそ私でいいんですか?」
「………っ!!
七海がいいっ!!七海と離れたくないっ
七海と……結婚、したいよぉ」
わー、と泣き出して首もとに勢いよく抱きついてくる彼女。
若干首が締まったとか今はおいといて、大泣きする彼女を抱き締める。
「逃げないで下さいよ」
「ずーっと七海といるぅ」
「はいはい」
「七海、大好きぃっ」
「ありがとうございます」
馬鹿で、陽気で、元気な私と正反対の彼女。
そんな彼女に何度も救われ
そんな彼女を好きになった事に後悔は無い。
「挨拶に行かないといけませんね」
「うちの娘はやらーんって言われたら?」
「認められるまで……じゃ遅いので
勝手に貰いますとお伝えしますよ」
「七海ってたまに自分勝手だよね」
「早く貴女を私と同じ名字にしたいので」
「…………七海、好き」
願わくば、彼女と子供に幸運を。
あとがき
七海視点となってしまいましたが……
七海のデキ婚かぁ。
きっちりしてそうで、案外抜けてそう。
あ、何か年下。同級生。年上とパターン別に書きたくなってきた。
余裕あったら書こう。
「何ですか」
「別れるのと、記憶無くすのと、逃亡されるのどれがいい?」
「何言ってるんですか貴女は」
恋人との短い時間の逢瀬の最中に告げた言葉に、七海の眉間にシワが寄った。
「だから、別れるのと、記憶無くすのと、逃亡されるのどれがいい?って」
「すいません。貴女の言葉が足りないのを配慮して聞くべきでした。
つまり私と離れたいって事でいいですか?」
「いやー出来れば離れたくはないかな」
「意味が分かりません」
「七海、お馬鹿さん」
「ぶん殴りますよ」
キャー、こわーいなどとふざける彼女に七海は盛大なため息をついた。
冷静を装いたいが、いかんせん自分もショックを受けている。
好きだと告げ、共に過ごした時間は短いかもしれないが、上手くやっていたと思っていたのは自分だけだったのかもしれない。
付き合えた事に舞い上がって、一人はしゃいでいたわけでもないが、浮かれすぎていたのかもしれないと自問自答する。
そんな七海の奥底にある葛藤など気にせず、爆弾を放り投げられた。
「あのね、七海」
「………何ですか」
「妊娠した」
「妊娠……妊娠?は?」
「今3ヶ月だって」
「一応聞きますが、名前が、ですか?」
「私、妊娠、3ヶ月」
イェイ、と三本の指を立てる恋人に、七海は深いため息をついた。
思い当たる事はある。
それにしても、伝えられるノリの軽さと、なぜ離れようとするのかがわからず頭を抱えてしまう。
「だから別れよ」
「だから、の意味が分かりません」
「だから、だよ。
七海は五条さんにも期待されてるし、信頼されてる一級呪術師だよ。
後輩達からも尊敬されてるし、忙しいし」
「それとこれとは関係無いですよね」
「実家からお見合い話も来ててさぁ
とりあえず黙って逃げ出そうと思ったんだよね」
「聞いてませんよ。お見合い話なんて」
「今言った」
「………」
「七海は呪術界に必要な人材。
だけど私は未来の無いポンコツ二級呪術師。
一人くらい減っても痛手にはならないから」
「私が一般家庭だからですか」
「違う違う。
私が七海の邪魔になりたくないから」
情報量に頭の中で処理しきれずにいる。
「今まで自由にしていたけれど、そろそろ限界みたいだし」
「私じゃ駄目ですか?」
「七海の負担になりたくない」
何を言い出すのかと思えば………。
呆れればいいのか、怒ればいいのか。
いつでも元気で、ちょっと抜けていて、突拍子もないことをしでかす彼女は、懐かしい友人とどこか似ている。
彼女がそう、真似ているのかわからないが……学生時代を思い出せば、元々騒がしかったと思い返す。
御三家とまではいかないが、呪術師を排出している家系の彼女にお見合い話は昔からあったこと。
あれこれと理由をつけてはのらりくらり逃げていた。
自分と付き合うことで、無くなったのだと勝手に思い込んでいたのだが……それこそ浮かれすぎた結果だろう。
「私の負担か迷惑かは私が決めることですよ」
「七海……」
「いるんですか?ここに」
恐る恐るお腹に触れる。
まだまだへこんでいるお腹に変化は無く、本当に授かっているのかもわからない。
「………見る?」
「は?」
「エコー写真貰ったの」
「………見せて貰えますか」
手渡された写真は白黒。
小さな袋の中に豆粒のような人っぽい形をしているようにも見える。
これが頭で、これがお腹だと指差す彼女からの言葉に、それっぽく見えてくる不思議。
「もう心臓動いていてね、心臓凄く速いんだよ」
「こんな小さくても動いているんだ」
「だから………だから、ね」
「七海……っ」
楽しそうに話していたはずなのに、だんだんと泣きそうになる彼女。
陽気に振る舞っていても彼女だって怖かったはずだ。
来ない月もの。
市販薬での結果。
慣れない婦人科。
きっと、自分の知識で知るものと違い、彼女も不慣れな出来事に混乱していたのだろう。
その結果が、冒頭の台詞だったとしても……気付かない自分にも非がある。
「不安でしたよね。すいません」
「ごめん……七海っ
困らせるつもりなんか、無くて……っ」
「貴女に困らせられる事なんて慣れてます」
「ひっど!!」
「迷惑かけたくないなんて、学生時代一人で呪霊に突っ込み派手に怪我するような貴女の回収を何度してきたと思ってるんですか」
「うっ……」
「成人したからと飲みに行って酔い潰れた貴女の回収とか」
「ううっ…」
「あぁ、吐瀉物の処理もしましたね。
あとは脱ぎ散らかす癖があるので、服も下着も畳みますし」
「すみません……」
「貴女の迷惑なんて慣れているんですよ。
今さら迷惑だ、困らせた、負担だなんて考えた挙げ句、人の記憶無くそうとしたり、逃亡したり、別れようって考えになるなんて……」
「本当に申し訳ございません……」
「やっと貴女と向き合えて、貴女と……
名前と付き合えて舞い上がっていたんです。
名前が嫌じゃ無いのなら、離れようとしないでください」
学生時代から気になっていた。
しかし、自分に呪術師は向かないと逃げ出した。
その間も名前は戻れとは言わずに連絡をくれて、一般社会の愚痴を聞いてくれて笑っていた。
拗れた想いを押さえ込んでも、彼女が笑う度触れたくなり、我慢出来ずに想いを伝えて、晴れて恋人となった時から浮かれている自分がいた。
ソファーに座る彼女の足元に膝をつき、彼女の手を取る。
「名前が良ければ私の妻となり、お腹の子と共に守らせて下さい。
長生きする、という約束は出来ませんが……
生きている限り貴女と子供を幸せにする努力をします」
「なっ、七海!?」
「順番が逆になってしまいましたが……
結婚しましょう」
「……いいの?」
「貴女こそ私でいいんですか?」
「………っ!!
七海がいいっ!!七海と離れたくないっ
七海と……結婚、したいよぉ」
わー、と泣き出して首もとに勢いよく抱きついてくる彼女。
若干首が締まったとか今はおいといて、大泣きする彼女を抱き締める。
「逃げないで下さいよ」
「ずーっと七海といるぅ」
「はいはい」
「七海、大好きぃっ」
「ありがとうございます」
馬鹿で、陽気で、元気な私と正反対の彼女。
そんな彼女に何度も救われ
そんな彼女を好きになった事に後悔は無い。
「挨拶に行かないといけませんね」
「うちの娘はやらーんって言われたら?」
「認められるまで……じゃ遅いので
勝手に貰いますとお伝えしますよ」
「七海ってたまに自分勝手だよね」
「早く貴女を私と同じ名字にしたいので」
「…………七海、好き」
願わくば、彼女と子供に幸運を。
あとがき
七海視点となってしまいましたが……
七海のデキ婚かぁ。
きっちりしてそうで、案外抜けてそう。
あ、何か年下。同級生。年上とパターン別に書きたくなってきた。
余裕あったら書こう。