妊娠
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「最近体調悪そうだけど大丈夫かい?」
傑に心配されるが、ぐったりとソファーに横になったまま動けない。
環境の変化に体調を崩したのかと思っていたが、そんなか弱くないことは自分がよくわかっている。
「ん……」
「熱っぽい?」
「眠い……だるい」
「無理せず休んでくれ」
ポンポン、と傑に撫でられるのが気持ちいい。
傑は心配そうにしていたが、仕事へと向かった。
傑と共に高専から離反し、二人で何とかやってきた。
順調に安定して呪いと金を集められるようになり、怪しい宗教となっているが家族も増えてやっと落ち着いて来た矢先の事だった。
日々の疲れが知らぬ内にどっと来たのか、何にせよ疲れが取れないような、気持ち悪さがある。
体力だけはまだ、現役だと思っていたのに……と考えて悲しくなった。
まだ現役だ。年とか思いたくない。
ぐでぇ……と、一人ソファーでうとうとしながら眠ろうとしたところに傑の秘書が入って来た。
「あら、呑気ですこと」
「うわ……」
「夏油様は働かれているというのに貴女は居眠りですか?良いご身分だこと」
「君、本当傑以外にはキッツイよね」
「貴女が夏油様の大切な方じゃなければもっとキツく当たりたいところですけど」
怖い女だ……と呟けば、睨まれる。
いつもなら喧嘩上等と、秘書と口喧嘩するのだが……今はやはりそれどころじゃない。
気持ち悪さに視界を閉ざそうと腕で目元を隠せば少しだけ気が紛れた気がした。
「体調もしっかり管理出来てないの?」
「んー」
「まったく。貴女のせいで夏油様の仕事が増えたらどうするのよ。
熱は計ったの?いつから具合悪いのよ」
「君、意外と面倒見いいよね」
「うるさいわね。質問に答えなさいよ」
「熱は計ってない。
いつからだ……
1週間ぐらい前からはだるさあったかも」
「ほっといて悪化するなんて馬鹿なの?」
「忙しく動いてたから……あーきっとあれだ。
生理前の症候群だ」
「あっそ」
たまに重たいのが来る前に、体調が悪くなることがあるからそれだ……と思って、ふと我に帰る。
前回生理来たの何時だった……と、おもむろに手帳を開いてみるが、来た日を必ず記入しているのに、ここ2〜3ヶ月に記入が無い。
心当たりはあるが、まさか……と疑わずにはいられない。
私の不審な行動に眉をしかめる秘書。
「貴女まさか」
「秘書ちゃん、ちょっと薬局行ってくるわ」
「嘘でしょ」
「まだ確信無いから傑には内緒で。
もし探してたら誤魔化しておいて」
返事も聞かずに外へ出る。
薬局で売ってる一つ入りのものを購入し、近くのトイレで試してみたら見事に結果が出た。
そのまま近くの婦人科へ足を運べば、まさかのおめでただった。
初めての診察にドキドキしっぱなしで、傑以外の異物を入れられ気持ち悪かったが……
画面に映る小さな命と、鼓動に感動してしまった。
無理を言って記念に動画を撮らせてもらい、写真まで貰った。
色んな検査と、必要な物の説明、そして次回の予約をして戻ると、傑と出会った。
「名前、どこか行ってたのかい?」
「………うん」
「体調は良くなった?」
「暫く続くって」
「?」
「病院行って来た」
「そこまで悪かったなら、誰かに付き添わせたのに」
「傑」
「なんだい?」
「はい、これ」
「?
写真………は?」
傑の表情が固まった。
ついでに、動画も流して見せれば
口を開いたままこちらを見る傑。
見事な間抜け面だ。
「おめでとう。妊娠9週だってさ」
「………悪質な悪戯じゃ無いよね」
「こんな手の込んだ悪戯はしないよ」
「………居るのかい。ここに」
そっと、大きな手でお腹に触れる傑。
泣きそうな、困ったような表情に笑ってしまう。
「何て顔してるの」
「…………私は」
「産んでもいーい?」
「名前は嫌じゃないのかい………?」
「嫌なら最初から着いて来てない」
傑に抱きつけば、恐る恐る手を回してくれる。
「傑に父親になれとか、籍入れようって言わないから側に居てもいいかな?」
「私はそんな薄情な男に見えるかい?」
「今背負ってる物の他に、私達まで背負わなくていいよ」
「そんな弱い男じゃないんだけどな」
「私が傑と同等で居たいの」
「………名前」
「傑の罪も、傑の悲しみも、傑の願いも……
全て半分は私も背負うって約束したもの」
「本当、君って奴は……男前だよ」
くしゃりと表情を歪ませた傑に笑う。
肩に頭を乗せる傑を抱き締めれば、抱き締め返してくれる。
「名前、私と結婚してくれないかい?」
「えー」
「そこははいって言ってくれないか?
不確かな関係はもう終わりにしよう」
「いいの?」
「名前は私と共に堕ちてくれるだろ?」
「傑が願うなら」
「なら、永遠に共犯者になっておくれ。
私の罪を共に分かち合い
私が罰を受ける時も共に
地獄まで付き添ってくれないかい?」
「最っ高にイカれたプロポーズだね」
「断らないでくれよ」
「喜んで、共に堕ちるよ」
二人で手を繋いで戻ると、傑がなぜか婚姻届を持っていて、いつ渡そうかタイミングを伺っていたらしい。
今書いてしまえ、と二人で記入しているところを秘書に見られてめちゃくちゃ嫌な顔をされた。
そんな彼女を指差して笑えば、しぶしぶおめでとうと言ってくれたので、ありがとうと返した。
あとがき
傑って結婚とか妊娠とか気乗りしないイメージある。
自分が非術師の家庭の出だから産まれてくる子が呪力無い猿だったら……とか考えて、あまり気乗りしなさそう。
自分の恋愛事情より、まずは呪術師の世界作ろうぜ!!自分の事は後回しだ!!って感じだからかなぁ。