最期まであなたと 2
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私の朝はまず、傑くんを起こすところから始まる。
寝室は傑くんのこだわりで大きなサイズのベッドを買ったため、一緒に寝起きしている。
美々子ちゃんと菜々子ちゃんは別の部屋で寝ているため、ここは私と傑くんの寝室だ。
袈裟姿ではなく、高専の時のようなTシャツにスウェット姿。
結っていない髪の毛姿で、あどけない寝顔を見るのが好きだ。
眠る前に傑くんを見て、起きて傑くんがいる。
それが幸せだと感じる。
「傑くん、おはよう」
「………おはよ、名前」
眠たそうに目をシパシパさせながら、こちらにすり寄ってくる傑くん。
朝は少しだけ早起きして、身嗜みを軽く整えた後に傑くんを起こし、二人でふざけ合う事がある。
傑くんが顔を洗いに行ってる間に、朝ご飯作り。
傑くんは和食派で朝しっかり食べる。
焼き魚、卵焼き、ウインナー、味噌汁、サラダ
簡単な物で済ませる。
美々子ちゃんや菜々子ちゃんは朝はパンがいいみたいなので、おかずはスクランブルエッグにウインナーにサラダ。
あとは昨夜機械にお任せしたパンが焼けたら切るだけだ。
「パンのいい匂いがする」
「傑くんが買ってくれたホームベーカリーすごくいい!!」
「私も食べてみたい」
「出来立て美味しいよ」
丁度焼けたパンを切れば、そのまま傑くんが口に運ぶ。
美味しいよ、と再び手を伸ばすので笑ってしまう。
「気に入ってもらえたなら良かった」
「売り物みたいだ」
「ありがと。二人起こしてくるね」
美々子ちゃんと菜々子ちゃんを起こしに行けば、すやすや夢の中。
可愛らしい二人の寝顔を見ながらカーテンを開ける。
「おはよう。朝だよ」
「うぅ……」
「眠い…」
「早く起きないと傑くんがパン食べちゃうよ」
のそのそと起き上がる二人を洗面所に誘導し、顔を洗わせる。
パッチリ目覚めた二人はパタパタと小走りでリビングへ。
「おはようございます、夏油様!!」
「おはようございます」
「二人共、おはよ」
みんなで席について、いただきますとご飯を食べる。
ご飯の間にコーヒーをセットしておけば、豆のいい香りが漂っている。
それぞれ食べ終わると、お皿を下げてくれるので私が洗っていると傑くんが落ちたコーヒーを淹れてくれる。
「ありがとう」
「こちらこそ」
傑くんが仕事に向かうのを三人で見送り、美々子ちゃんと菜々子ちゃんの勉強を見る。
「名前さん今日は何する?」
「何しようか?」
簡単な二人に合わせた勉強を教えて、勉強が終わると自由時間。
お菓子を作ったり、近場をブラブラしたり、お昼や夕食の手伝いをしてくれている。
「ねぇ、名前さん
名前さんのこと教えて?」
「私?」
「うん。夏油様と出会うまでの話」
「夏油様、名前さんと出会ってからの話はしてくれていたから」
「恥ずかしいなぁ……」
どんな顔で話していたんだろうと思うと、何だか照れてしまう。
「出会う前かぁ……」
「名前さんは非術師の家庭?」
「そうだよ」
「じゃあ何で呪術の事知ったの?」
「父が知り合いに詳しい人がいるって紹介されたのが、現役の呪術師の人だったの」
「へー」
「見える世界が同じ人に出会った時は嬉しかったよ。
周りに合わせようと必死になっていたけど、やっぱりボロ出ちゃうから」
必死に逃げていた。
けど、どこへ逃げても呪霊は側に居る。
見えないフリをしても、いつかは目が合う。
「挙動不審で、臆病で、目立たないように生きていたからな……
友達は居たけど、心から友達と呼べはしなかったと思ってる」
「猿と友達なんて無理だよ」
「無理」
「学校という場所がそもそも、呪霊が湧きやすいからね。
毎日必死だったよ」
引きこもっていたかった。
外に出れば、そこは死の世界に思えた。
「呪術の事を知ってから、少しだけ世界がマシに見えたよ。
鍛え始めてからはそっちに夢中だったから、あまり人と関わらなかったかなぁ」
「名前さんって努力家だよね」
「そうかな?
一直線だから周りが見えてないと言われたことあるけど……努力家、かぁ」
頑張らなきゃ置いていかれると必死だった。
私が思い描いていたものより、高専は特殊で実力が無いと駄目だったから。
「学校って……どんなところ?」
美々子ちゃんの言葉に、菜々子ちゃんは少しだけ顔を歪める。
「猿の掃き溜めでしょ」
「名前さんは、学校どうだった?」
「高専は楽しかったな」
「小学校と中学校は?」
「小学校も中学校も静かに目立た……いや、ごめん。中学校は目立ってたかも」
「?」
「小学校は静かに目立たないようにしてたけど、中学校の時には武術習ってから……
ちょっと呪霊から逃げるときに一般人を蹴散らしちゃって……」
「え?名前さんが?」
「その後から、不本意ながら伸してたら
姉御とか言われたりもしてね……
登校途中に呪霊と追いかけっこしたり
不良から逃げて遅刻したり……
中学の時はある意味素行が悪く見られたかも」
「嘘だぁ!!」
「本当だよ、菜々子ちゃん。
学校は……楽しめ無かった事多いけれど
特別授業は楽しかったかな」
「特別授業って?」
「宿泊研修とか、修学旅行とか」
「猿と一緒とか無理」
「見たことない景色に触れたり
行ったこと無い場所へ行ったり……
世界は広いんだって思った」
地元の世界だけじゃなく
歩み出せば世界は無限に広がる。
「………そうなんだ」
「テレビで見るのと、実物じゃ違うんだなって思ったよ」
テレビで知識は付いても、実際に見た違いに感動する。
世界は知らないことばかりだ。
「高専は特殊な学校だったけれど、私の人生で一番楽しいと思えた時間」
友と呼べる人がいた。
一緒に笑える仲間がいた。
愛しい人に出会えた。
「名前さんは……夏油様と出会った事後悔してる?」
「してないよ」
「どうして?」
「私にとって、呪術界の方が息がしやすかった。
傑くんが声を掛けてくれたから、私は今も生きてる」
あの日の気まぐれが無かったら
私はきっともっと早くに命を落としていたはずだ。
「傑くんと出会えて、私は良かったよ」
心からそう思える。
硝子ちゃんや五条くんという友達と別れることになっても、私は傑くんを選んだ。
「美々子ちゃんや菜々子ちゃんと会えたしね」
二人の頭を撫でると、二人はどこか気まずそうにしている。
どうしたのかと頭を傾げると、二人揃って抱き付いてきた。
「………名前さんのバカ」
「でも、好き」
「ありがと?」
バカって言われたけど、好きって言われた……と、考えていたが、二人が抱きついて来てくれたので、二人を抱き締める。
「ただいま」
「おかえりなさい!!夏油様!!」
「おかえりなさいっ」
嬉しそうに傑くんに駆け寄る二人。
私も近付いておかえりなさい、と返すと傑くんに額にキスされる。
「随分仲良くしていたね」
「二人にヤキモチ?」
「私よりも名前と長い時間一緒なのは羨ましいよ」
「夏油様」
「ん?」
「あのね、お耳貸してください」
「内緒話かい?」
二人が話しやすいように、としゃがむ傑くん。
私は夕食の準備をしようと楽しそうに笑う三人を残してキッチンへ。
話終えたのかパタパタと走って来て、二人がエプロンを引っ張る。
「お手伝いする!!」
「何すればいい?」
「ありがとう。じゃあ……」
親子のように、姉妹のように。
慕ってくれるようになった二人と楽しく夕御飯を作る。
そして4人でご飯を食べて、お風呂に入り
テレビを見たり少しだけまったりと過ごした後、眠る。
「すっかり懐いたね」
「二人共とてもいい子だよ」
「すまないね。面倒を任せっきりで」
「大丈夫。頼って貰えて嬉しい」
ベッドに入り、今日の何気ない1日を傑くんと話す。
たまに二人でふざけあい、抱き締めあって眠る。
「あのね、夏油様」
「名前さんって夏油様の言うとおりの人だった」
「そうだろ」
「優しすぎて、温かい」
「普通、な人」
「………今でも名前が嫌かい?」
「ううん、好き」
「好きです」
「大丈夫って言ったろ」
「「はい!!」」
君を知りたい。
優しすぎて、温かい君を。
あとがき
最後のは内緒話の内容。
美々子と菜々子って学校行ってなさそう。
けど、夏油のことだからしっかり勉強はさせていそう。
けど、制服?らしきもの着てたし通信なのかなぁ……